貨幣価値と経済の安定
その他のタイトル The Value of Money and Economic Stability
著者 安田 信一
雑誌名 關西大學商學論集
巻 7
号 6
ページ 488‑517
発行年 1963‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/10112/00021646
貨幣価値と経済の安定︵安田︶
貨幣価値と経済の安定
貨 幣 価 値 の 基 礎 と し て の 物 価 の 概 念
貨幣価値とは一般には貨幣の購買力を意味し︑したがってそれは物価と密接不可分の関係にある︒すなわち物価
の騰貴は貨幣価値の低下を︑物価の下落は貨幣価値の騰貴をあらわす︒このことはそれ自体としては正当であり︑
なんらの疑問も存在しない︒それではこの場合に意味する物価とは何かであるが︑その物価とはいうまでもなく消
費者物価である︒すなわち物価には卸売物価と消費者物価とがあるが︑家計の立場からするならばこの物価は当然
に消費者物価である︒
貨幣価値の基礎となる物価が消費者物価であることは明瞭であるが︑このように明瞭なことを特に述べるのはす
でに一定の事実を前提としている︒すなわち現実の問題としては卸売物価と消費者物価とが騰落の方向において異
なるか︑または騰貴もしくは下落の方向においては同一であるが︑その割合においてかなりの相違がある場合にの
み貨幣価値の基礎としての物価の概念を明確にする必要があるのであって︑そうでない場合には理論的には別とし
て︑現実問題としてはその概念を明確にすることはかならずしも必要ではないであろう︒そして現実の問題として
は第二次大戦前までは短期的には別としても︑長期的には第1表ならびに第2表が示すように卸売物価と消費者物 安
田信 一六
‑489
一 七
ーであった︒すなわちわが国では卸売物価は大正一一年から同一三年まで騰貴したが︑同一四年以後昭和六年まで
は低下を続け︑また生計費は大正一︱年から昭和六年までは毎年低下し︑かつ卸売物価ならびに生計費は昭和七年
から同一︱年までは毎年騰貴した︒これに対してアメリカでは卸売物価は一九二二年から二四年を例外として二五
年までは毎年騰貴し︑二六年以後は二八年を例外として三二年までは毎年低下したのであり︑消費者物価もまた同
様に一九二二年から二六年までは毎年騰貴し︑二七年以後三三年までは毎年低下を続け︑
貨幣価値と経済の安定︵安田︶
かつ
卸売
物価
は一
=二
年以
してその結果はわが国においての卸売物価と生計費︑アメリカにおいての卸売物価と消費者物価との動向はほぼ同
第1表 物価指数(日本)
大正11年=100
卸売物価(東京) 生 計 費
大正11年(1922) 100.o 100.0 12年(1923) 101.7 95.3 13年(1924) 105.4 96.6 14年(1925) 103.0 95.5 15年(1926) 91.3 96.4 昭和2年(1927) 86.7 94.9 3年(1928) 87.3 92.4 4年(1929) 84.8 89.8 5年(1930) 69.9 81.0 6年(1931) 59.0 72.2 7年(1932) 65.5 72.7 8年(1933) 75.1 74.8 9年(1934) 76.6 77.3 10年(1935) 78.5 80.2
I 11年(1936) 81.8 82.2
本表は大内兵衛監修 日本統計研究会編 日本経済統
計 集 昭 和33年252頁(卸売物価指数), 258頁(生計費
指数)による。但し生計費指数は大正11年から昭和8
年までは上田指数,昭和 9年以後は朝日指数を上田指 数に結びつけた。なお本表では原統計の諸指数を大正 11年を100とする指数に換算した。
10
0として示したのである︒そ れ人\大正一1 の卸売物価と消費者物価とを︑そ
年 ︑
一九二二年を 年から三九年までの期間において 表はアメリカにおいての一九 における卸売物価と生計費︑第2 ︱一年から昭和︱一年までの期間 第1表はわが国においての大正 実には存在しなかった︒ ぽ一致したので︑前述の必要は現 価の騰落の時期ならびに割合はほ
490
対して、二六年には消費者物価は七•四彩騰貴し、
であるのに対して︑消費者物価ほ一
0 ・
一彩低水準であって︑これらの年における卸売物価と消費者物価とはその
変動割合はほぼ同一である︒これに対して卸売物価ならぴに消費者物価がもっとも低水準であった年を両物価が高
水準であった年と比較するとつぎのようになる︒わが国で卸売物価ならびに生計費が最低であった年は昭和六年で
第2表 物価指数(アメリカ)
1922年=100 貨幣価値と経済の安定︵安田︶
また三七年には二二年と比較して卸売物価は一0•八形低水準
年1922 卸 売 物 価100.0 消費者物価100.023 104.0 102.8 24 101.4 103.9 25 107.0 106.6 26 103.4 107.4 27 98.7 105.2 28 100.0 103.6 29 98.6 103.1 30 89.3 99.7 31 75.5 89.6 32 67.0 80.0 33 68.1 77.0 34 77.5 81.4 35 82.7 84.3 36 83.6 86.2 37 89.2 89.9 38 81.3 87.6 39 79.7 87.4 本表は EconomicAlmanac 1958, P. 62(消費者
物価指数), P.67(卸売物価指数)による。但し原表と
異なって両物価指数とも1922年=100とした。
較して七.0彩騰貴しているのに 二五年には卸売物価が二二年と比
一九
ては一九二六年︑三七年をそれぞ なわち卸売物価については一九 はそれ人\の物価が各時期におい ほぼ同一である︒またアメリカでてもっとも高水準であった年︑す五年︑三七年︑消費者物価に関し
れ一九二二年と比較すると︑ ぞれ低下してをり︑その低下率は 後︑消費者物価は三三年以後はともに三七年まで毎年騰貴し︑三八年︑三九年は両物価ともに下落している︒
一八
つぎ
にわが国では卸売物価︑生計費を大正一︱年と昭和︱一年とについて比較すると︑昭和︱一年には卸売物価は一八
・ニ彩︑生計費は一七・八彩それ
491
あるが︑卸売物価については大正︱一年ならびに一三年と昭和六年とを比較すると︑昭和六年にはそれぞれ四一・
0%︑四四.0彩低下してをり︑
正︱一年と昭和六年とを比較すると︑昭和六年には二七・八%低下してをり︑昭和六年と同一︱年とを比較すると
一三・ニ%騰貴している︒またアメリカでは卸売物価が最低であったのは一九三二年であるが︑二五年と比較する
と三七•四飴低下してをり、
あった一九三三年を二六年と比較すると二八・三%低下しているが︑三三年と三七年とを比較すると一六・八%騰
貴している︒以上において述べたことを要約すると︑
おけるそれ人\の期間に関してはつぎのようにいうことができる︒卸売物価と消費者物価︵または生計費︶との変
動方向︑ならびに変動割合は長期的にはほぼ同一で︑
よりも高率である︒
4 また昭和六年と同一―年とを比較すると三八•四%騰貴しているが、生計費は大
また三二年と三七年とを比較すると三三・一%騰貴しているが︑消費者物価が最低で
貨幣価値の基礎となる物価は本来的には消費者物価であるが︑第二次大戦前におけるわが国ならびにアメリカに
おける事実からするならば︑長期的には現実の問題としては消費者物価に限定する必要はなく︑卸売物価であるも
差支えはない︒けれども第二次大戦後︑殊に近年においては第3表に示すように各国とも消費者物価と卸売物価と
が離反傾向を示しているので︑貨幣価値の基礎となる物価が消費者物価であるということを明確にすることは現実
の問題として必要となった︒
第3表が示すように一九五五年以後わが国をはじめとしてアメリカ︑イギリスの三国とも物価は騰貴傾向にあり︑
卸売物価ならびに消費者物価は騰貴し︑殊に消費者物価は騰貴している︒そして一九五五年を基準とするとこれら
貨幣価値と経済の安定︵安田︶
一九
わが国ならびにアメリカについては第1表ならびに第2
表に
ただ短期的には卸売物価の変動割合は消費者物価の変動割合
第3表 物 価 指 数
誓日腐 I鷹本費 喜
i
塁ア 塁メ I喜リ 費カ畜I
誓イ 旦ギI喜リ ス1955年(昭和30年) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 56年(昭和31年) 104.4 100.9 103.2 101.5 104.3 104.7 57年(昭和32年) 107.5 103.9 106.2 105.0 107.6 108.6 58年(昭和33年) 100.5 104.9 107.7 107.9 108.3 .111.9 (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) 59年(昭和糾年) 101.5 106.2 107.9 108.8 108.7 112.5
(101.0) (100.9) (100.2) (100.8) (100.4) (100.5) 60年(昭和35年) 106.4 110.3 108.0 110.5 110.1 113.7
(105.9) (105.1) (100.3) (102.4) (101. 7) (101.6) 61年(昭和36年) 107.4 116.0 107.6 111.7 113.1 117.6
(106.9) (110.6) (99.9) (103.5) (104.4) (105.1) 62年(昭和37年) 107.0 123.7 107.9 112.7 114.6 122.4
(106.5) (117.0) (100.2) (104.4) (105.8) (109.4)
貨幣価値と経済の安定︵安田︶
本表の中わが国については卸売物価(日銀調査), 消費者物価(総理府統計局調
査,東京都)は戦前基準物価(経済月報1962年12月号付表3),アメリカについてほ 労働省調査による卸売物価,消費者物価 (Surveyof Current Business, Oct. 19
62), イギリスに関しては卸売物価については商務省調査により, かつ本表では製
造品全体の国内販売価格, 消費者物価は労働省調査による (Monthly Digest of Statistics)。 な お1962年はアメリカの消費者物価のみは1‑8月平均,他の物価は すべて1‑9月平均である。 また原表ではわが国の物価は昭和9‑11年=1, アメ
リカの物価は1957‑9年=100, イギリスでは卸売物価は1954年=100,消費者物価 は195咋 1月15'日=100, 1956年1月17日=100(但し1952年1月15日=100とすると 1956年1月17日=153)とするが本表ではすべて1955年=100に換算,また( )の中 は1958年=100に換算
%、卸売物価は六•五彩騰貴 年には消費者物価は一七.o 率であるのほわが国で︑六 ると物価騰貴率がもっとも高 ︱ニ・七彩の騰貴にとどまる︒つぎに一九五八年を基準とす 価は七・九%︑消費者物価は 率がもっとも低率で︑卸売物 し︑またアメリカは物価騰貴 消費者物価はニ――-•七彩騰貴 .0%
の騰貴にとどまるが︑ ぐのはわが国で卸売物価は七 ニニ•四%騰貴し、これに次 は一四•六形、消費者物価は リスで︑六二年には卸売物価 もっとも高率であるのほイギ の三国の中で物価の騰貴率が 二0
493
Pa
is
h
そして
Pa
is
h
の立場においては貨幣的要因の作用による
は貨
いうまでもなく物価は種々の は物価安定の概念をつぎのように規定しているが︑彼は物価安定についてのこの概念規定を通して第一︱一の 九五九年以来のわが国の物価が︑卸売物価ならびに消費者物価ともに︑これらの三国の中でもっとも高率であることは注目すべき現象であり︑殊に消費者物価の急激な騰貴は経済全体の問題として重視しなければならない︒
物価という場合には現実には卸売物価︑消費者物価︑またはそれらの物価を細分化した資本財価格︑消費財価格︑
サービス価格を意味するが︑物価にはなお卸売物価︑消費者物価と対立する第一一一の物価を考えることができる︒
物価を主張しているのである︒すなわち彼は物価安定の概念を規定するに際しては︑彼は間接税および補助金によ
る物価への積極︑消極の影響を除外すべきことを主張し︑その結果として要素費用においての国民貨幣所得が国民
実質所得と同一割合で増加する状態を物価の安定している状態であると述べている︒
原因によって変動するが︑そのもっとも重要な原因は貨幣的要因の作用である︒そしてこのことから
Pa
is
h
幣的要因の作用を明確化するために︑彼は物価安定の概念を規定するに際しては︑貨幣的要因以外の原因による物
価の変動を除外することが必要であると考え︑そのもっとも重要な要因として間接税ならびに補助金の作用による
物価への影響を除外すべきことを主張したのであろうd
物価への影響を明確化するということは重要なことではあるが︑
価とは一般的には経済の総合デフレクーが不変であるということである︒換言すれば彼は物価を経済の総合デフレ
貨幣価値と経済の安定︵安田︶ 一応彼の立場を離れて考えると︑彼の主張する物 物価が今日騰貴傾向にあることはわが国のみではなく︑アメリカ︑ かに0・ニ彩、消費者物価は四•四彩騰貴している。
イギリスの三国に共通の現象ではあるが︑ し、これに次ぐのはイギリスで卸売物価は五・八彩、消費者物価は九•四形騰貴し、アメリカでは御売物価はわず
価の安定が貨幣価値の安定であるとする︒
Pa
is
h
の物価とは右のように経済の総合デフレクーである︒
貨幣
価値
と経
済の
安定
︵安
田︶
クーにもとめたのである︒
物価ならびに消費者物価が安定している場合にはもとより物価の安定とはなるが︑卸売物価または消費者物価のい
ずれかが騰貴するも︑他の物価が低下し︑この両物価の騰貴と低下とが相殺せられて︑経済全体としての総合デフ
レクーが不変である場合にも物価安定ということになる︒経済主体としての企業と家計の両者を考え︑経済全体の
立場からの物価安定の概念としてはこの物価安定の概念はもとより意味を有する︒けれどもこの物価安定の概念は
卸売物価または消費者物価のいずれか一物価が騰貴するもその騰貴率は僅少で︑
り︑両物価間の騰貴ならびに下落においての差がわずかである場合にのみ意味を有し︑その差が高率であるときに
は妥当ではない︒この小稿ではこのような理由から家計に重点をおく貨幣価値の安定という立場において消費者物
山
P. W. P ai s h , St ud ie s i n a
n i n fl a t io n a ry ec on om ic s, 1
96 2, p .6 2
②
Pa is h も
述べ
るよ
うに
イソ
フレ
ーツ
ョソ
は貨
幣的
現象
であ
る ( i b i d ,
pp .2 9
ー
30
)︒
した
がっ
て彼
は物
価問
題の
考察
にお
い
ても
貨幣
的要
因の
作用
に重
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おき
︑そ
の結
果と
して
彼は
物価
安定
につ
いて
も前
述の
よう
な概
念規
定を
した
ので
ある
︒ 経 済 成 長 と 卸 売 物 価
︑ 消 費 者 物 価
かつ他の物価の下落率も僅少であ
およそ経済の成長とともに種々の財貨ならびにサービスの価格が相対的には変化し︑財貨の価格と比較してサー
ビスの価格が上昇することは今日一般に認められた事実である︒いうまでもなく卸売物価と消売者物価とはたんに したがってこの立場においては物価安定とは卸売
‑495
調査の段階を異にするだけではなく︑卸売物価の中には資本財の価格と消費財の価格とが含まれるが︑消費者物価
は消費財の価格とサービスの価格とから構成せられている︒したがって経済成長とともに消費者物価が卸売物価よ
1 2 1
りも騰貴することは当然ということができるであろう︒わが国経済においては国民総生産は昭和三0年価格で︑昭
和三0年(‑九五五年︶八一八八九億円︑三三年(‑九五八年︶九六0三六億円︑三六年一四七八七七億円であっ
て︑三六年における国民総生産を三0年および三三年における国民総生産と比較すると︑それぞれ八
O ・
六彩︑五
四.
0彩
増加
し︑
六一年四四七九億ドルで︑国民総生産を六一年について︑ またアメリカでは国民総生産は一九五四年ドルで五五年三九二七億ドル︑五八年四0
一三
億ド
ル︑
五八年と比較すると一四・三形︑
加し︑さらにイギリスでは一九五八年価格で要素費用国内総生産は一九五五年一九四億ボソド︑五六年一九七億ボ
五八年と比較するとニ―-•四形、
︱一
・七
彩︑
ンド︑五八年二
00
億ボンド︑六一年ニニ0億ポンドで︑要素費用国内総生産を六一年について五四年︑五六年︑
図
1 O
・0
彩増加している︒第3表に示したように一九五五年から六
二年までの期間においてはわが国︑
アメ
リカ
︑
五五
年︑
イギリスの三国とも卸売物価ならびに消費者物価は騰貴し︑
国とも消費者物価の騰貴率は卸売物価の騰貴率を超えるが︑前述のようにこの期間には各国の経済は成長し︑
この経済の成長にともなってサービスの価格は財貨の価格よりも上昇するので︑第3表に示した期間において消費
者物価が卸売物価よりも騰貴するのは当然の現象ということができる︒
経済の成長とともに財貨ならびにサービスに対する需要は増加し︑賃金率は上昇する︒そして財貨については労
働生産性は上昇するので︑賃金率の上昇が直ちにその生産費の上昇となることはなく︑労働生産性の上昇割合と賃
または低下することとなり︑かつ生産費に金率の上昇割合とによって財貨の生産費が上昇するか︑不変であるか︑
貨弊価値と経済の安定︵安田︶ かつ各
かつ
――•六彩増
し︑またイギリスでは五六年と比較して六一年には 貨弊価値と経済の安定︵安田︶
おける動向は長期的には価格に反映する︒これに対してサービスは︑
メリカならびにイギリスにおける事実に関して第4
表に
示す
︒
きる︒そして第3表に示したように消費
一・ニ%騰貴しているが︑
第4表
ア メ リ カ イ ギ リ ス
賃金率 サービス 賃 金 率 サ ー ビ ス 価 格価 格 1955 100.0 100.0
56 104.5 102.2 100.0 100.0 57 107.7 106.1 104.8 105.7 58 109.1 109.7 108.6 110.6 59 116.9 112.4 111.4 112.2 60 117.3 115.5 114.3 116.0 61 120.7 117.7 119.0 121.9 本表の中アメリカに関しては原表は賃金率について は製造業における週当り賃金収入(労働省調査)で;
Statistical Abstract 1961, p.219および Survey, Oct. 1962, S‑14,サービス価格(労働省調査)は 1957
‑9年=100とする指数で, Survey, Oct. 1962, p.19 による。 そしてこれを 1955年=100とする指数に換 算。またイギリスについては原表は賃金率に関しては 1956年1月31日=100とする全産業の賃金指数で,
Monthly Digest. Jan. 1960, p.130および April19 62, p.130サービス価格は1956年1月17日=100とする 指数で, Monthly Digest, April, 1962, p.132によ
る。そしてこれを1956年=100とする指数に換算
その中消費財価格は五五年と比較 年と比較して六一年には︱ニ・七形騰貴 者物価は全体としてはアメリカでは五五 なることを実証しているということがで 率の騰貴が直ちにサービス価格の騰貴と いてほぼ比例している︒このことは賃金 おいては若干の相違はあるが︑各年につ 年または五六年から六一年までの期間に 物価の中でのサービス価格とは一九五五 イギリスにおいては貨幣賃金率と消費者 第4表が示すようにアメリカならびに その種類によって異なるが︑
生産性の上昇がきわめて困難であるので︑賃金率の騰貴は直ちにその産出費用の騰貴となり︑価格はこれに応じて
1 4 1
騰貴する3
このことは今日においては周知の事実であるが︑なおそのことを明確にするがために︑
は五六年から六一年までの期間における︑消費者物価においてのサービス価格と貨幣賃金率との関係について︑
ニ四
一九五五年また
ァ
一般的には労働
497
第5表
かに0•八彩、
における高率の騰貴にもとづく︒
貨弊価値と経済の安定︵安田︶
卸売物価(日本)
1955年=100
消費財 生産財 全 体
昭和30年(1955年) 100.0 100.0 100.0 32年(1957年) 100.7 113.0 107.5 33年(1958年) 97.7 102.2 100.5 3眸 (1961年) 103.7 110.5 107.4 317年‑(919月6砕平均芍 104.4 109.0 107.0 本表は戦前基準物価指数(日銀調査)(経済月 報1962年12月号付表3)により, かつ昭和30年
=100に換算
して卸売物価は第3表から明らかなように︑
二五
においての消費財価格の騰貴率は消費者物価全体の騰貴率と比較す 卸売物価の中での消費財価格の騰貴率から推定すれば︑消費者物価 の差は高率であり︑かつ卸売物価の中での消費財価格と︑消費者物 少
で︑
したがって卸売物価の騰貴の大部分は生産財価格の騰貴にも
とづく︒第3表から明らかなようにわが国では昭和三0年︑殊に昭
和三三年以来今日までの消費者物価と卸売物価との騰貴率において
価の中での消費財価格との騰貴率が同一率であるべき理由はないが︑ の
第
5表に示したように卸売物価の中での消費財価格の騰貴率は僅 格との昭和三0年(‑九五五年︶を一00とする指数であるが︑こ 第5表はわが国における卸売物価の中での消費財価格と生産財価 固してアメリカでは六一年には八•四彩騰貴し、またイギリスでは九•四形騰貴していると推定せられる。これに対
アメリカでは一九五五年に対して六一年には七•六彩、
イギリスでは一.0彩にすぎないのであって︑
との騰貴率におけるアメリカにおいての差四・一彩︑ イギリスでは五六年に対して六一年には八•四彩騰貴している。すなわちアメリカならびにイギリスにおいては五五年または五六年と六一年とを消費者物価の中での消費財価格と卸売物価とを比較すると︑その騰貴率の差はアメリカではわず
したがってこの両年における消費者物価と卸売物価
イギリスにおいての差ニ・八形の差の大部分はサービス価格
︑ ︒
ぅカ 以上において述べたことは周知の事実である︒それでは上述の事実を理論的に分析すればどのようになるであろ
山拙著経済成長•発展と産業構造昭和三二年一三六ー七頁、改訂版昭和三五年一三七ー八頁。
②卸売物価は卸売段階においての諸財貨の価格で︑消費財の価格も生産財の価格もその対象となるが︑消費者物価は消費段
階においての価格で︑したがって生産財の価格は含まれず︑消費財︑および消費需要を充足するサービスの価格がその対象
となる︒すなわち両物価はその調査段階においての価格の相違のみではなく︑対象を異にし︑したがって例えば生産財の価
格騰貴は卸売物価の騰貴の原因となるが︑消費者物価には直接に関係はなく︑また消費需要を充足するサービスの価格騰貴
は消費者物価を騰貴する一原因とはなるが︑卸売物価には直接に影響しない︵日本経済新聞社編経済指標の見方︵上︶日
経文庫一七六ー七頁︶o.
③わが国については昭和三五年度国民所得白書第四︑3
︑第
2表︵一七八ー九頁︶および昭和一1
一七
年度
年次
経済
報告
付表
1
ー山
(‑
=二
六頁
︶︑
アメ
リカ
につ
いて
は Su rv ey of Cu rr en t Business,
c O t. 1 9 6 2, p . 1 2 S . , 1 2 ︑イギリスに関しては H. M. S. O. , M on th ly Di ge st o f S t at i s ti c s , J an . 1 9 6 0, p. 1̀ Ap ri l, 1 9 6 2, p .1
によ
る︵
旧
lし一九五五年の国内総生産は一九
五四年価格で示されているので︑五八年価格に換算︶︒
④ 拙 著 前 掲 書
︱
‑ 1一六ー七頁改訂版一三七ー八頁 固アメリカについては
Su rv ey ,0 ct . 1 96 2 , p . 1 9 , S .6
においての一九五七ー九年
11
10
0とする価格指数から計算︑またイ
でき
る︒
貨弊価値と経済の安定︵安田︶
るとかなり低率であると推定せられる︒またこの間においてのわが国の現金給与は産業全体としては労働者一人当 り一ヶ月平均昭和三
0
年における一八一七九円から同三三年ニ︱︱六一円︑同一二六年二六六二六円と増加し︑昭和
囮三0年を一00
とすると同三六年には一四六・五︑昭和三三年を一
00
とすると︱二五・八である︒以上の事実か らすればわが国における消費者物価の今日におけるような騰貴はその大部分をサービス価格の騰貴に帰することが
二六
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ギリスに関しては消費者物価指数においてのサービスのウェイトは五・八彩であるので
(M on th ly Di ge st ,
Ap
ri
l
19 62 , p. 13 3)
消費者物価の騰貴率とサービス価格の騰貴率とから消費者物価においての消費財価格の騰貴率を推定⑥労働者﹁毎月勤労統計﹂による現金給与総額による︒但し昭和三0年においての現金給与総額は経済企画庁内国調査課の
推定
︵経
済月
報一
九五
八年
一
0月
号付
表一
六︑
一九
六二
年付
表一
八︶
︒
ケインズが﹁一般理論﹂において述べているように投資がおこなわれ︑それにともなって所得が増加するも︑過
少雇用の下ではこれまでと同一の︑または若干騰貴した貨幣賃金率において労働することを希望する多数の非自発
的失業が存在するので︑これまでと同一または若干騰貴した産出費用で︑所得の増加に応じて財貨・サービスの産
出を増加することができる︒したがって過少雇用の下においては投資が増加するも︑物価はほとんど騰貴しないか︑
または騰貴するとしても僅少にとどまる︒そして投資が次第に増加して︑財貨︑
トル・ネックの現象があらわれると︑投資による所得増加に対して財貨︑
することが困難となるか︑ サービスの産出の側面においてボ
サービスの中には部分的には産出を増加
またはかなり騰貴した産出費用においてのみ応ずることができるようになる︒したがっ
て投資の増加によって︑このボトル・ネックがあらわれるようになると物価はかなり騰貴するようになる︒そして
さらにその後に投資が増加して完全雇用の段階に到達し︑これを超えるときには︑投資の増加による所得増加に対
して財貨・サービスの産出を増加することがきわめて困難となるか︑
増加に応じて物価が騰貴する︒ または全く不可能となり︑
山ケインズの所謂真正インフレーションである︒ したがって所得の
ミルダルはヴィクセルの累積的過程についてつぎのように説明する︒周知のようにヴィクセルは自然利子と貨幣
貨弊
価値
と経
済の
安定
︵安
田︶
経 済 成 長 と ヴ ィ ク セ ル の 累 積 的 過 程
二七