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中国における教師教育に関する研究—需給の将来予測分析を通して [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)中国における教師教育に関する研究―需給の将来予測分析を通して キーワード:師範教育変遷,需要予測,供給予測,地域間格差,専門養成型,開放教育型 発達・社会システム 専攻 袁 冬霞 1.目次. 本研究は、師範大学が教師養成機関として、どのように. 序 章. 養成の量的・質的水準を維持、向上するかについて、本. 第一節 研究の課題と方法. 研究の課題として、設定した。その際、方法論として、. 第二節 中国における教師養成教育をめぐる諸問題、背. 日本で発達している教員需給予測モデルを応用して、中. 景. 国における将来の教師需給を予測することとした。この. 第一章 中国における師範教育の変遷. 日本の教員予測モデルは中国にどの程度適用可能であり、. 第一節 中国における師範教育変遷のプロセス. 参考になりうるのか、また、予測してみた中国の将来教. 第二節 1990 年代における教師教育の実態. 師予測にはどんな特色が見られ、どのような結果が生じ. 第三節 現代中国における師範教育改革の動向. るのか、それを通して、将来の中国における教師教育の. 第二章 2010 年までの全国の教師需要及び地域別の教. あり方が見つけられるのか、を問題点として、また、教. 師需要 第一節 教師需要の推計方法 第二節 将来の児童生徒数及び地域間格差. 師養成に関する量的・質的の課題を含めて教師教育に関 する研究をおこなった。 本研究の基本的な背景は以下の通りである。中国は、. 第三節 将来の教師需要及び地域間格差. 義務教育の普及によって就学率は徐々に上昇した。今日. 第四節 まとめ―需要の量的把握と格差分析. の中国は、高等教育大衆化に入ろうとしている。1999. 第三章 教師の計画的養成と教師供給の地域間格差. 年の高等教育の就学率は 10.5%に達した。師範大学の学. 第一節 教師供給の制度的構造. 校数は 221 校であり、大学総数(1041 校)の約 21.2%. 第二節 2010 年までの教師養成機関の最適規模. を占めている。こう見ると、教師養成の主要な機関とし. 第三節 教師養成と供給の事例―遼寧省における師範教. ての師範大学は高等教育に占める比率が高いと見られる。. 育の実態. しかし、PT 比(教師一人あたり児童生徒数である)で. 第四節 供給分析の結論―教師の計画養成の複雑さに対. みると、小学校は 23.1 人であり、中学校は 18.2 人であ. 応する教師養成システムの高度化と弾力的な配. った。先進国の教師一人あたり学生数よりかなり低い。. 置. 中国社会科学院人口研究所が行った中国の人口予測によ. 第四章 中国における師範教育発展の方向性に関する 検討. ると、21 世紀初期には、中国の教育を受ける人口は 3.2 ‐3.5 億人に達する。従って、本研究の課題とする教師. 第一節 市場経済と教育格差. の需給に対して、質的な改善を含めてさまざまの課題が. 第二節 教師教育の現代的課題. 待ち受けていると思われるのである。. 第三節 まとめ 終 章 まとめと今後の課題. 本論文の構成は以下の通りである。序章については、 中国における教師養成をめぐる諸問題及び社会的な背景 を研究の問題意識として、理論的枠組みと研究方法を設 定した。中国では、教師教育は教育の中でもっとも重要. 2.概 要 本研究は、 中国における将来教師需要と供給を分析し、. な要素として位置づけられている。特に、初めての法律 として『中華人民共和国教師法』が 1993 年 10 月 31 日に. それを通して教師需給が地域別にどのように現れている. 第八回全国人民代表大会の常務委員会の第四回会議で採. のかを検討する。更なるそうした検討した結果を踏まえ. 択され、1994 年 1 月 1 日に施行された。同時に、市場経. て、今日中国における教師養成のあり方また教師教育の. 済の確立によって、教師養成教育に関するあり方につい. 展望に一つの示唆を提供する試みを目的とするものであ. ていろいろな議論がなされてきた。李之欽(1987)は、. る。. 師範大学は個性(師範的性格)を発揮するとともに、共.

(2) 通性(大学としてあるべき学術性)を重視し、両方とも. 一方、共産党の革命根拠地にある中華ソビエト政権が. 欠くことができないと論じた。王秋来(1986)は高等教. 1931 年に誕生し、抗日革命根拠地において学校の教師を. 育である師範大学は高い学術的な水準がなければ、大学. 養成した。教育の普及を図るための教師養成機関を創設. となる資格が認められないと述べた。また、黄志勝. し、教師養成と幹部の研修を重視した。. (1987)は師範大学の学術的水準を高めるために、総合. 3)建国以後の中国の教師教育については、三つの段階. 大学に倣って、総合大学の教科書を採用し、他方で、師. に分けて検討した。つまり、第一期(1949 年∼1958 年). 範大学の養成目標を総合大学にも取り入れるべきである. の発展・充実した時期、第二期(1958 年∼1978 年)の教. ことを示した。そのような議論中で、教師養成機関とし. 師教育の曲折期及び第三期(1978 年∼現在)の改革と開. ての師範大学は養成目標だけではなく、内容や教育形態. 放を迎える時期である。. の見直しが求められている。. 第二章においては、全国の教師需要及び地域別に教師. 第一章においては、歴史的考察の手法を用いて、師範. 需要について考察した。つまり、教師実績数を統計した. 教育変遷のプロセスの考察を行い、各時期の特徴を以下. 上で、地域別に児童生徒数、教師数、教師養成機関の規. のように、明らかにした。. 模と配置を検討し、小学校、中学校、高校における予測. 1)清朝末期の師範教育は、1897 年上海に創立された 南洋公学師範学院と、1904 年に制定された「 奏定学堂. した教師需要結果に基づいて、 地域別の特徴を検討した。 その結果、以下のことが明らかになった。. 章程 (癸卯学制 )」 のもとで新設された京師大学堂で始. 1)一類地域!"#は、将来児童生徒数の減少によって、. められた。中国の師範教育は、日本の教育制度をモデル. 小学校、中学校、高校の教師需要は減少しつつある。と. とすることによって、専門養成的師範学校制度を誕生さ. りわけ、現在の中学校、高校の教師が過剰になるため、. せることになった。ここでは、清末期における日本型師. 2002 年から、2010 年までに年ごとに、教師補充数はほ. 範教育制度の特徴をまとめた。つまり、①師範学堂卒業. とんどマイナスとなると見込まれる。. 生のみが正式の教師と認められる閉鎖制、②初級、優級. 2)二類地域では、山東省を除けば、他の四つの省に. 師範学堂の二段階制、③一般学校より優れた学資支給の. おける教師需要は緩慢である。小学校の教師需要に関し. 特典、他方、④卒業後の服務義務制、⑤教育内容には儒. ては、山東省と江蘇省は過剰となるが、他の省では、教. 教的色彩が強く、 「忠孝」 「尊孔」を中心とした封建的価. 師補充数は年ごとに 5 千人程度であると見込まれる。中. 値体系を固守するため、読径・講経の時間が全課程の 4. 学校では、2005 年までに、教師補充数は 5 千人程度で. 分の 1 を占めていた。また、⑥教育課程は「中学為体、. あるが、その以後、教師補充数は減少しつつあると見込. 西学為用」の考え方から、 「忠君」 「尊孔」の儒教主義モ. まれる。高校教師補充数の変動は、中学校と同じようで. ラル注入のための教科に、国家強盛に役に立つと見られ. ある。. る近代的諸教科を付け加えることによって構成されてい. 3)三類地域は将来児童生徒数が増加の傾向にあると. た。このほか、⑦指導技術訓練のための教育実習、それ. 見込まれるため、 教師需要は他の三つの地域より、 多い。. を可能にする附属学校の併設や、⑧師範生を厳しく管理. とりわけ、小学校の教師補充数は 2010 年までに増加し. するため、厳罰処分の規制を定めると同時に、優待奨励. つつある。 しかし、 中学校と高校では、 教師補充数は 2005. の規則を制定し、⑨教師の資格を定め、試験検定と無試. 年以後、減少の方向に向かうと見込まれる。. 験検定を実施すると共に、教師優遇章程を制定したとい う九つの特徴である。 2)民国時代には、師範教育の体制と構造には大きな. 4)四類地域では教師需要はもっとも多い地域であり、 教育段階別にからみると、いずれの学校教師補充数は増 加する必要がる。. 変化が生じた。師範教育は、独立した制度であることが. 第三章においては、教師の計画的養成と教師供給の地. 廃止され、中・高等師範学校の独自性も失われた。さら. 域間格差について検討を行い、以下のことが明らかにな. に、1927 年以後、中国は共産党と国民党との二つの政権. った。. の併存する時代となり、教師教育にそれぞれの政権の影. 1)現在の中国では、教師供給の主な課題は教師養成. 響を強く帯びた特徴が現れた。初期の国民党政府は三民. 機関の調整ということである。初等教育段階の教師養成. 主義(民主、民権、民生)の教育思想の普及に努めた。. に関しては、将来児童生徒数の減少により、中等師範学. また、義務教育の早急な実現及び教師養成を計画的に進. 校を削減すること、 中等教育段階の教師養成に関しては、. めるために 1932 年の学校・簡易師範科を設立し、郷村師. 師範大学を量的に維持し、質的に向上させることなどが. 範学校を創立するなど、 教師の量的確保も重点をおいた。. 課題となっている。.

(3) 2)教師の計画養成の複雑さに対応する教師養成シス. るため、結果の信頼性について、第三者等の検証によっ. テムの高度化と弾力的な配置が必要である。その方法と. て確認していく必要がある。また、本研究は 3 年間をわ. しては、中等師範学校、高等師範大学における地域別に. たって作成したため、新しい将来人口推計値と教師数の. 調整することによって、教師養成のレベルの向上を果た. データを十分に加えなく、新たに教師需要推計を行えた. せるのである。. ことができなかった。従って、このような問題点は今後. 第四章においては、中国における師範教育発展の方向 性に関しては、三つの課題を中心して検討を行い、以下 のことを明らかにした。. の課題として指摘しておきたい。 ところで、より重要な課題として、第二に、中国で再 び提起されている教師教育理念としての「専門養成型」. 1)市場経済と教育については主に市場経済の導入に. と「開放教育型」をめぐる問題に対するインプリケーシ. よって、教育界にもたらされた影響にはプラス・マイナ. ョンを考えてみたい。この問題点の考察については、本. ス両面があることが明らかになった。ここでは、著者は. 研究では「専門養成型」と「開放教育型」に関する論争. 国家財政の行きづまりの解決手段としての急激な地方分. 及びその歴史変遷の考察に基づいて、中国の教師養成が. 権化、 「学校主権」への移行に伴う教育格差の問題、それ. 「開放教育的」な体制に移行する可能性しか検討できな. が中国の全民族の資質の向上に障害を与えている点を指. かった。 改めて考えてみれば、 そこで提起された問題は、. 摘した。要するに、市場経済の実施自体は一概に否定さ. 広くは教育学のレゾンデートルを問うことであり、限定. れるべきものではないが、それによって生ずる格差の拡. していえば教員養成とはなにか、教師教育とは何かとい. 大、さらにその格差是正をどう考え、その方策をどう実. う根本問題に通底する問題でもある。今後、中国におい. 現するかも同時に考慮する必要があると考える。その解. て、一方で市場経済は一層拡大、深化するであろう。他. 決の手段として、教育における国家主義と市場主義を市. 方で、社会主義という国家イデオロギー、さらにナショ. 民社会の再建、創造によって超克しようとする言説がみ. ナリズムと教育との問題も急速に浮上するだろう。教師. られるが、それが、一定の有効性をもつと思われる。. 養成教育は長くの展望をもって中国社会の発展や国民の. 2)教師教育の「専門養成型」と「開放教育型」につ. 資質向上と直接にかかわる重要な事業として位置づけら. いては、現時点の中国では「開放教育的」な教師教育を. れなくてはならない。この点を勘案するだけでも教師養. 全面的に直ちに実施する条件はまだ十分に整備されてい. 成教育の発展に対する本研究の現実的な意味づけが明ら. ないため、その早急な実現は不可能である。しかし、高. かになってくるだろう。従って、今後、本研究の結果を. い専門的な水準及び社会の変化に対応可能な教師の資質、. 如何に中国の教育分野に活かしていくのか、特に「教師. 能力を育成するために、 「教師の資格要件をたかめ、 他学. 需給予測に関する研究」をどう政策科学的に展開してい. 科や他学校間の履修単位性を実施、教師の就職後の数次. くのかが課題となるであろう。. にわたるリカレント教育の実施など」早急に実施される べき課題となっている。 3)中国の開放教育的な教員養成体制への転換のため. 3.主要参考文献. に必要な四つの条件を考察したが、その中の高等教育全. 1.阿部 洋 1988 年, 「お雇い日本人教習の研究―ア. 体の連携によって開放教育的な教員養成を行おうとする. ジアの教育近代化と日本人―」 『国立教育研究紀要』. 方向性が政策的にも打ち出されており、重要な方向性で. 第 115 集. あると考えられる。 本研究では、中国各地域における教師養成教育がど のような将来的方向性を持つのかを、教師需給の地域間 格差を分析の試みを通して明らかにし、中国の教師教育. 2.山崎 博敏 1997 年, 『教員採用の過去と未来』玉 川大学出版社 3.潮木 守一 1985 年, 『教員需要の将来展望』福村 出版社. 発展の可能性を考察することを課題とした。今後の研究. 4.陳 永明 1991 年, 『中日両国教師教育制度に関す. 課題としては、第一に、教師需給予測の精緻化である。. る比較研究』国際経済研究センター,『国際経済研. 本研究では、用いられた需給予測モデルは第二章で述べ. 究』. たように、日本の教員予測のモデル(潮木 1992、山崎 1996)と中国の教員予測の方法(上海智力研究所 2000) を参考として行ったものであるが、データの入力、プロ グラムの作成、推計結果の編集、分析など単独研究であ. 5.馬越 徹 1989 年, 『現代アジアの教育―その伝統 と革新』東信堂 6.陳 学恂 1994 年, 『中国教育史研究』華東師範大 学出版社.

(4) 7.余 立 1994 年, 『中国高等教育史』 (下冊)華東師 範大学出版社 8.葉 立群 1993 年, 『師範教育学』福建省教育出版 社 9.饒 浩 1987 年, 「中国高等師範教育的未来特点」 『遼寧師範大学学報』 ,第 3 期 10.魏 新 1998 年, 『教育研究』 「市場経済下高等教 育的運行体制和政府的管理」 ,第 3 期. !"#. 中国における経済発達レベル別地域分類は北京師範大. 学教育経済研究センター( 『教育研究』1998,第 6 期)に より、下記の表の通りである。 一類地域 二類地域. 北京、上海、天津 遼寧、江蘇、浙江、山東、広東. 河北、山西、黒龍江、吉林、安徽、福建、河 三類地域 南、湖北、湖南、四川、新疆 内蒙古、江西、貴州、雲南、チベット、広西、 四類地域 海南、陜西、甘粛、青海、寧夏. この表は地区 GDP、産業増加比率、就職人口比率、一 人あたり GDP、非農業人口比率、一人あたり収入によっ て、分類したものである。.

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