• 検索結果がありません。

課題先延ばし行動における集団同一性の機能 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "課題先延ばし行動における集団同一性の機能 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

課題先延ばし行動における集団同一性の機能

キーワード:課題先延ばし、集団同一性、学習動機 行動システム専攻心理学コース 金 芸花 問題と目的 日常生活で、普通先延ばし傾向がある人が小さいサ イズの集団チームに入って、タスクを完成する時、以 前より早めにタスクを始めたり、締め切りの結構前ま でにタスクを完成したりする傾向がある。個人が集団 に入って、集団アイデンティティを形成する時、個人 は所属した集団に対して高いプライドを持つようにな って個人が集団成員として所属集団のもつアイデンテ ィティを獲得し,行動や態度においてその集団成員と しての自覚を持つようになると先行研究では指摘され ている。本研究では、集団同一性と課題先延ばし行動 の負の相関関係を予測し、学習動機を説明変数として 検討することを目指している。 先延ばし行動元々の意味は明日まで待つという意味 で、二つの方面に分けられている。①戦略的。結果が まだ分からない時は先延ばし行動をしてチャンスを待 っている。これはもっと価値がある選択しである。② 今すぐやる必要があるけど、その事から逃避する。こ の選択しはネガティブな結果が出やすいし、問題行為 になる可能性が高い。先延ばし行動は時間の枠が設定 されている課題の遂行、または達成を、その枠を意識 しているのにもかかわらず理由もなく延期することで、 ネガティブな感情を伴うことが多い行動である。(向 後・野嶋,2004)本研究では、先延ばし行動に困ってい る人の研究を続けようと思い、先延ばしを問題行為で 研究する。 先延ばし行動に影響を与える様々な要因の中で、い くつかの要因に着目した。例えば、学習・遂行達成へ の不安、完全主義傾向、自己効力感など。全部の要因 に周りの目線を意識している原因が見られている。社 会で生活している我々は、無意識的に周りの目線に意 識するようになっている。人の周りに対する意識が先 延ばし行動に影響すると考えられる。人々は集団に入 って、集団メンバーに対する信頼や協力的ステレオタ イプを持つようになる。それから集団メンバーに信頼 し始めて協力的行動が生まれる。( Brewer ,1979) 集 団メンバーに対する期待あるいは信頼がメンバーの協 力傾向を高める。(Yamagishi ,1986,1988 )要すると、 学習チームに入ったみんなは、効力的になりやすいし、 学習チームの評価を上げるために効力しようとしてい る。元々先延ばし傾向がある人でも、集団に入って効 力しようとする思いが生じて、以前より先延ばしをし なくなって、早めに行動するようになるだろう。 なぜ人は集団に入ると変わるかは社会的アイデンティ ティで説明できる。個人が集団に入って自分が集団に たいするプライドがますます高くなっていて、自分が 集団メンバーとして集団にたいするアイデンティティ をもらえるし、行動や態度は全部この集団のメンバー としての自覚を持つようになる。この集団アイデンテ ィティをもらえることが集団の同一性と考えられてい る。(Tajfel, 1979) Kagan(1958)は同一性の文脈から,学習動機づけとし

(2)

ての役割を概念として,その理論を再構成している。要 すると、学習過程で、見習う者は習うモデル対して勉 強しようとする認知とモデルと類似性があると認知す る。そしてそのモデルを模倣して勉強に努力する。こ れらの同一性が知的な学習場面で生起することを考え て、Kagan(1971)は現場の教師をモデルとして、実際 の学級集団で同一性の問題について検討した。要する と、学生が教師に対する同一性が内発的動機に影響し て、学習に自発的に動機づけられたと解釈できる。学 習チームの課題学習の動機は学習動機と考えられ、集 団同一性が学習動機を上げるだろう。 学校と職場に問わず、学習は何処でも、どの時間で も、行われると思い、学習の問題は非常に重要な課題 だと思う。本研究は学習チームを前提として、学習チ ームのメンバーの同一性と先延ばし行動の関連を見る のを目指している。仮説 1、課題先延ばしと集団同一性 は負の相関である。仮説 2、課題先延ばしと集団同一性 の負の相関は学習動機を媒介する。 方法 調査対象の年齢と性別はランダムであり、300 名の中 回答に不備のなかった 282 名を最終的な分析対象とし た。参加者に場面設定の内容を読ませてから 3 個の質 問紙を書いてもらった。場面設定の内容理解度を確か めるために質問紙の最後に「前提の内容は良く想像で きました?」と聞いて、300 名の参加者の中「はい」と 答えた 282 名の質問紙で分析を行った。 場面設定:今まで学校に通いながら、いろんな学習 チームに入って学習チームのみんなと一緒に学習目標 を達成したと思っています。前提:ある課題を完成す るために、5人くらいの学習チームに入って一緒に手 伝いながら課題を完成すると想像してください。チー ムメンバーそれぞれ課題を一つ出します。学習チーム のパフォーマンスはチームメンバーそれぞれ出した課 題のみによって評価されます。チームメンバーはお互 いに信頼で、協力の関係です。評価が一番高いチーム がいくつのチームの前で課題を発表します。今回の質 問紙では、学習チームに入ってからの状態を聞きたい と思います。 (1)課題先延ばし行動 藤田(2005)が作成した課題先延ばし行動傾向尺度 から「課題先延ばし因子」9項目を使用した。評定は 自分の行動について「全く当てはまらない」から「非 常によく当てはまる」までの 7 件法で,得点が高いほ ど先延ばし傾向が高いことを示す。 (2)集団同一性 唐沢(1991)の日本語版集団同一視尺度(12 項目版) を参考にして,調査対象者の学習チームに対する集団 同一視の程度を回答させた。評定は「全く当てはまら ない」から「非常によく当てはまる」までの 7 件法で, 得点が高いほど集団同一性が高いことを示す。 (3)学習動機 学習動機尺度の関係志向と自尊志向の 8 項目を用い た。(市川, 2001)評定は「全く当てはまらない」から 「非常によく当てはまる」までの 7 件法で,得点が高 いほど学習動機が強いことを示す。 結果 学習動機の因子分析の結果、先行研究の通り、尺度 に内的一貫性があることが明らかになった。 集団同一性と課題先延ばしを検討するために、相関 分析を行った。図1は、課題先延ばし(α=.896)と

(3)

集団同一性(α=.892)との相関を示したものである。 その結果、集団同一性における課題先延ばし(r=-.33, p<.01)については、有意な負の相関が見られた。こ れらの結果は、所属している学習チームに対する集団 同一性が高いほど、個人は先延ばし行動をしにくいこ とを表している。仮設1は支持された。 図1 課題先延ばしと集団同一性の相関 集団同一性と課題先延ばしの関連をより精緻化させ、 擬似相関の解釈を回避できるために、学習動機の媒介 効果を検討した。その結果,集団同一性と課題先延ば しの直接効果は(β= -.33, p < .01)有意であった。 次に,媒介変数を投入した結果,集団同一性と課題先 延ばしの直接効果は(β= .38, p < .01)有意であっ た。集団同一性と学習動機のパス係数は(β= .21, p < .01)で有意であり,学習動機と課題先延ばしのパス 係数は(β= .24, p < .01)で有意であった。媒介ル ートと直接ルートで反対の効果があったのが、相殺さ れて非有意になっている。Sobel 検定法の標準誤差は. 027、p < .05 であった。学習動機は集団同一性と課題 先延ばしの部分媒介であった。学習チームの集団同一 性が学習動機の増大を引き起こして、それによって課 題先延ばし行動がしにくくなることを示している。し かし、部分媒介で、学習動機の以外の要因も一緒に先 延ばし行動に影響すると明示している。図 2 に部分媒 介モデルの媒介分析の結果を示している。 図 2 学習動機の媒介分析 考察 本研究の目的は、①集団同一性と課題先延ばし行動 の関連、②集団同一性と課題先延ばし行動における学 習動機の媒介効果について検討することであった。 藤田(2005)が作成した大学生用の学習課題先延ば し行動測定尺度を参考に、学習チームに合わない「約 束事への遅延」因子 4 項目を削除した「課題先延ばし」 因子 9 項目を因子分析して尺度に内的一貫性があるこ とが明らかになったので、そのまま分析を行った。そ の結果、仮説 1 は支持され、集団同一性と課題先延ば し行動との間に有意な負の相関がみられた。この結果 は、個人が集団に入って集団同一性が形成すると、課 題先延ばし行動を行いにくいことを示している。問題 でも述べたように、これまでの先延ばしの研究の大部 分は、学習・遂行達成への不安、完全主義、自信の欠 如などのような個人個人のレベルの研究が指摘されて いる。しかし今回の研究は、個人を集団に連れて行っ て先行研究の上で、集団同一性が課題先延ばし行動を 抑制する要因になることを明らかした。 社会的アイデンティティ理論を参考すると、我々は 集団になっている時点から内集団に対するステレオタ イプが無意識に個人に影響をすると主張している。ま た、( Brewer ,1979)は、集団メンバーとの間に信頼が

(4)

生じてみんな協力的行動を始めると述べている。個人 が集団に入って自分が集団に所属しているのを意識し たり、内集団をうまく協力して外集団と区別したり、 さらに個人と集団のパフォーマンス向上の促進に影響 する。(Haslam,2006;Tajfel,1978;1974; 1969)本研 究では、場面設定で、学習チーム唯一の目標はいい課 題を出してみんなの前で発表することだと決まってい るし、みんな内集団の評価を上げようとする意識でき ると予測し、その意識が課題先延ばし行動に影響する と考えられる。(Tajfel,1974,1978) 市川(2001)が作成した学習動機尺度を参考に、学 習チームに関連があると思う関係志向と自尊志向の 8 項目を本研究の課題に合わせて用いた。因子分析の結 果、尺度に内的一貫性があることが明らかになったの で分析を行った。その結果、学習動機は集団同一性と 課題先延ばしの部分媒介とみられた。 問題で述べたように、個人が集団に入って集団同一性 が強くなるとともに内集団の評価を高めると意識して いる。(Levine,1987)本研究の場面設定によると、内 集団の評価は出した課題のみによって高めることがで きるし、メンバーお互いに協力関係だと示している。 また、先行研究によると、行動を始めるのを決める重 要な原因は動機づけであり、動機づけの強さが行動に 違う影響をすると示している。本研究の学習行動に向 って、学習動機が影響すると予測し、その学習動機が 強くなるとともに学習行動が早めに始まると考えられ る。要すると、集団同一性高まるによって、学習動機 に影響させて学習行動が始まるとみられる。本研究で は課題を出してから学習行動を行う前までの先延ばし した時間を短縮することで先延ばし行動に影響をさせ ようとした。その結果、学習動機は集団同一性と課題 先延ばしの部分媒介となった。予測と違ったのはまだ 不足点があったとみられる。 まず、理論的に設定した仮説なので、本当に現実場 ではどうなのかはもう一度検討する必要がある。理論 の重ねはほかの全く違う新しい理論が現実から出る可 能性は十分にある。次に、本研究では、質問紙に場面 設定をしたので、参加者一人一人が場面設定内容に理 解度が違った可能性もある。いろんな要因から統制し て場面設定し、質問紙の最後に確かめる質問をしたが、 場面設定方法の制限は抜けられない。コモンメソッド 問題の解消手段で、匿名性―匿名性を保持することに よって、回答にあたって、自分自身を好ましく見せよ うとする動機をおさえる;質問順序―質問順序を回答 者によって逆順に尋ねる;尺度の改良―曖昧な表現の 除去、シンプルかつ具体的な質問、複雑な文法を使わ ない、単一因子検定などを使ったのが足りなかったと 思えられる。 今後、個人が集団に入ってからの影響因子はまだ検 討の余地が残されているだろう。完全媒介ができる因 子か一緒に複数の媒介になる可能性はある。また、先 延ばし研究を個人レベルのではなくて、集団レベルの 研究に導くことができるだろう。垂澤・広瀬(2006) は,集団で行う実験の回数によって,あるいは集団へ の所属期間が長くなることによって、集団メンバーの 所属集団への自尊心や愛着が高まることが示されてい る。集団同一性の程度の異なる効果で影響するだろう。 主要引用文献 藤田正(2008).大学生の完全主義傾向と先延ばし行動 の関係について,奈良教育大学教育実践総合センター 研究紀要,17,125-128.

参照

関連したドキュメント

*ホバークラフト 記念祭で,幼稚 園児や小学生を乗 せられるものを作 ろうということで 始めた。右写真の 上は人は乗れない

自ら将来の課題を探究し,その課題に対して 幅広い視野から柔軟かつ総合的に判断を下す 能力 (課題探究能力)

一般社団法人日本自動車機械器具工業会 一般社団法人日本自動車機械工具協会 一般社団法人日本自動車工業会

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の

目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例

 工学の目的は社会における課題の解決で す。現代社会の課題は複雑化し、柔軟、再構