走 能 力 の 異 な る 集 団 の 身 体 特 性 ―一 般 高 校 生 男 子― 出
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(2) 149. 走能 力の異 な る集団の身体 特性 る。 一 般 に,走. 選 手 の 場 合 に は,短. 表1平. 距離あ るいは. 均 値及 び標準偏差. 長 距 離 走 の い ず れ か に 特 に 優 れ て い る と考 え ら れ る の で,両 は,特. 走 能 力 に劣 る あ る い は 優 れ る者 の 存 在. に 一 般 集 団 にお い て見 られ る も の で あ ろ. う。 これ ら一 般 の 走 能 力 の 異 な る 集 団 は,そ 独 自 の 身 体 特 性 を も ち,短. れぞ れ. 距 離 及 び長 距離 走 選 手. の も の と も 異 な る こ とが 考 え ら れ る。 これ 迄,走. トレー ニ ン グを 積 んだ選 手 の身 体 特. 性 に 関 し て は,浅. 川1)2),田 中 ら28)29),田中25》26)27),. 平 田6)を は じ め とす る人 達20124)に よ っ て,種. 々の. 立 場 か ら研 究 さ れ て 来 た 。 し か し,前 述 し た 一 般 の走 能 力 の 異 な る 集 団 の 身 体 特 性 に 関 して は 十 分 明 ら か に さ れ て い る とは 言 い が た い。 本 研 究 の 目的 は,一 般 高 校 男 子 の 中 か ら,走 力 の 異 な る4集. 団 を 選 出 し,こ. の4群. 能. の身 体 特 性. を 明 らか に す る こ とで あ っ た。 II.方 1.標. 法. 本. 被 検 者 は,15〜18歳 166名 で,平 2.テ. の 健康 な 一 般 高 校 生 男 子. 均 年 齢 は16.9歳 で あ っ た 。. ス ト項 目. ・ 走 能 力:短. 距 離 走 能 力 と し て100m走,長. 走 能 力 と し て10km走. 距離. を 選 択 した(表1)。100m. 走 テ ス トは,第4種. 日本 陸 連 公 認 陸 上 競 技 場 を. 利 用 し て,10km走. テ ス トは 日本 陸 連 公 認 長 距. 離 競 走 路 に 準 ず る方 法 に 従 っ て 計 測 さ れ た ロ ー ド レー ス コ ー ス を 利 用 し て 行 な わ れ た 。 ・体 格:身. 長,座. 高,体. 重,及. び 上 腕 背 部,肩. 甲. 骨 下 部,腹. 部 の3皮. 脂 厚 を 計 測 した。 ま た,体. 脂 肪 率,体. 密 度,除. 脂 肪 体 重,体. Brozekら3)及 した(表1)。. 表 面 積. も. び 長 嶺 ら20)の 式 を 利 用 し て 算 出. 心 拍 数 ・肺 活量)を 代 表 す る19項 目 を 選 択 し. な お,皮. た。. 脂 厚 は 栄 研式 皮脂 厚 計 で. ス ク ワ ッ トジャ ンプは,両. 計測 した 。 ・体 力:静. 的 筋 力(背. 筋 力 ,握. 力),筋 持 久 力(懸. 垂 ・ス ク ワ ッ トジ ャ ン プ ・仰 臥 脚 上 げ),パ. 手 を後頭 部 で 組 み 片. 膝 立 姿 勢 か ら空 中 に ジ ャ ン プ し,立 て る膝 を 交 代. ワー. させ て し ゃが み込 み,ま た ジ ャ ンプす る と い う動. (垂 直 跳 ・走 り幅 跳 ・立 幅 跳 ・ハ ン ドボ ー ル 投),. 作 を連 続 す る。2分 間 に 出 来 た 回数 を測 定 値 と し. 柔 軟 性(上. た。. 体 反 ら し ・立 位 体 前 屈),平 衡 性(片. 足 爪 先 立),協 応 性(ジ. グ ザ グ ド リブ ル),敏 捷 性. (サ イ ドス テ ッ プ ・バ ー ピ ー テ ス ト ・50mシ トル ラ ン),心 肺 機 能(ス. ャ. テ ッ プ テ ス ト、 ・安 静 時. 仰 臥 脚 上 げ は,両 手 を 後 頭 部で 組 み仰 臥 姿 勢 を と り,両 脚 を上げ る(踵 が 床 か ら15cm)。 脚 上 げ 持続 時 間 を測 定値 と した(最. 高3分)。. 中.
(3) 150. 出村,松 沢,塚. 立 巾跳 は,両 足 を揃 え た立 位 姿 勢 か ら前 方 に出. 両 走 ス ピー ドがX‑0.255SD以 い群(S),X+0.255SD以. 来 るだ け遠 く跳 べ る距離 を測 定 した 。 片足爪 先立 は,両. 谷. 手 を腰 に とっ た 直 立 姿 勢 か. (F),そ の中間 に属 す る者 を 中位 群(M)と. ら,片 足 を前 方 に上 げ させ,10秒 後 に 支 持脚 の踵. ら に,100m走. を 上 げ させ た(最 高2分 間)。. に属 した者 が10km走. パ ー・ピー テス トは,直 立 姿勢 か ら両 手 を足先 の. 下 に属 す る者 を遅 上 に属 す る者 を速 い群. に お いて,S,M,及. し,さ びFの 各 群. の各群 に ど の 程 度移 行 した. か を示 した も の で あ る。. 床 上 につけ て し ゃ が み 込 み,次 に 両 足 を後方 へ突. 図か ら,100m及. び10km走. 共 に遅 い群 に 属 し. き 出す(腕 立伏 せ 姿 勢),再 び両 足 を 縮 め て しゃが. た者(SS)は32名,ま. た,両 走 共 に速 い群 に属 し. み 姿 勢を と り,起 立 す る。 この動 作 を10秒 間 に反. た者(FF)は36名. 復 して実施 うる回 数 を測定 値 と し た。 50mシ ャ トル ラ ン は,壁 か ら5m離 れ た地点 に. 群 及びF群 に属 した全 体 のそ れ ぞ れ49.2%,58.1. で,こ れ は100m走. にお いてS. 線 を引 き,そ の 間 を5往 復す るの に要 した時 間 を. %に 相 当す る。100m走 では,S群 に属 したが10 km走 で はF群 に 属 した者(SF)は18名,こ の逆. 計 測 した。. の ケー スの者(FS)は14名. 安 静時心 拍 数 は,座 居 姿勢 を と らせ,手 首 の橈. お いてS群 及 びF群. で,こ. れ は100m走. に. に属 した全 体 の そ れぞ れ22.6. 骨 動 脈 に指 を当 て が って1分 間 計 測 した注1)。. %,27.7%に. 他 のテ ス トの方 法 に つ いては,文 部 省15)のスポ ー ツテス ト,壮 年 体 力 テス トの実 施 方 法 に 従 っ. 述 の4群 につ い て,走. 能 力 の差 異 を. 検 定 した もの で あ る。表 か ら,FF群. は短距 離 及. た。. び 長 距離 の 両 走 能 力 に優 れ る集 団 で あ り,SS群 は. な お,測 定 は 昭 和57年9月. 〜10月 の 主 に体育 の. 表2は,前. 両 走 能 力に劣 る集 団 で あ り,SF群. は短 距離 走 能. 力 には劣 るが 長 距 離 走 能 力に は 優 れ る 集 団 で あ. 授 業時 間を利 用 して 行 なわ れ た。 III.結. 相 当 す る。. り,そ してFS群. 果. は短 距離走 能 力 に は優 れ るが長. 距 離 走能 力 に は 劣 る集 団 であ る と考 え られ る。 ま 1.走. た,SS群. 能 力 の 異 な る 集団. 図1は,100m及. び10㎞. はSF群. て 劣 り,FS群. 走 テ ス トに 基 づ き,. に比べ て短 距 離 走 能 力 に お い. に 比 べ て長 距離 走 能 力 にお い て劣. 図1走 能 力 の 異 な る4集 団 注:S:遅 い群F:速 い 群M:中 位 群SS:両 走 共 に遅 い 群FF:両 走 共 に速 い群 FS:100m走 は 速 い が10㎞ 走 は遅 い群SF:100m走 は 遅 い が10km走 は速 い群 速 い群:X+0.255SD以 注1)以. 上 に属 す る者. 上 の テ ス トの 詳 細 な 方 法 に つ い て は,川. 遅 い 群:X‑0255SD以. 端 ら14),松. 下 に属 す る者. 浦16)17),松 井 ら19),名. 取 ら21)の 文 献 を 参 照 。.
(4) 走 能 力の異なる集 団の身体 特性. 表2走. 表3走. 能 力の比 較 検 定結 果. 能 力 の 異 な る4群 の 形 態 ・体 力比較. 151.
(5) 152. 出村,松 沢,塚. る と考 え られ る。. 谷. 体 密 度 は,SS群. 2.体 格 ・体 力 比 較. 重 はSS群. 前 述 の結 果 か ら,SS,SF,FS,及. とSF,FS,FFの3群. とSF,FFの2群. 体 力 項 目 で は,ス. で,本 研究 で は こ の4群 の体 格 ・体 力 の比 較 を行. 跳,立. な うこ とに した。. ー ピ ーテ ス ト ,及. テ ス ト変 量(測 定値)に. 間 に有 意 な 差 異 が認. め ら れ た。. びFFの4群. は そ れぞ れ走 能 力 の異 な る集 団 と考 え ら れ る の. 表3は,各. 間 に,体. つ い て,前. 幅 跳,ジ. FS,FFの3群. ク ワ ッ トジ ャ ン プ,走. グ ザ グ ド リブ ル,片. び シ ャ トル ラ ン は,SS群. 間 に,そ. 述 の4群 の差 異 の 検 定 結 果 を示 した もの で あ る。. ドボ ー ル 投,及. 表4は,一. の2群. して 懸 垂,垂. び 反 復 横 跳 び は,SS群. り幅. 足 爪 先 立,バ とSF,. 直 跳,ハ. ン. とFS,FF. 間 に有 意 な 差 異 が 認 め られ た 。 ま た,ス. テ. め られ た変 量 に つ い て多重 比較 検 定8)(Ryan法). ッ プ テ ス ト及 び 安 静 時 心 拍 数 に 関 し て は,SS群. と. を行 な った結 果 を 示 した もので あ る。 表3か. SF,FFの2群. 要 因 分 散 分 析 の結 果,有 意 な 差 異 が認. 体 格面 で は,身 長,座. ら,. 高,胸 囲,除 脂 肪 体重,体. 表 面 積,体 力面 で は,背 筋 力 と握 力(静. 的筋 力),. 上 体 反 らし と立 位 体 前屈(柔 軟 性),及 び 肺 活量 に 有 意 な差 異が 認 め られ なか った が,他. の全 ての項. 目 に つ い て はFS群. とFF,SFの2群. 差 が 認 め られ た。 一方 ,懸 垂,垂 直 跳,走 ブ ル,及. り幅 跳,ジ. び 反 復 横 跳 に つ い て は,FF群. 間 に も有 意 な 差 異 が 認 め られ た 。. 目 に有意 な差 異 が 認 め られ た。 表4か. 間 に 有 意 差 が 認 め ら れ,前. ら,体 格 で は,皮 脂 厚,体 脂 肪 率,及 び 表4多. 重比 較 検 定結 果. 者 の項. 間 に も有 意. グザ グ ド リ とSF群.
(6) 走能力の異 な る集団の身体特性 3.体 力 プ ロ フ ィール 表5は,表1に. 示 した30変 量 間 の相 関 行列 を求. め,こ れ に因 子分 析 法 を適 用 して 得 られ た 因 子 パ 表5因. 子 パ タ ー ン行 列. 153. ター ン行 列 を示 した もの で あ る。 抽 出 され た6因 子 の全 分 散 量 に対 す る貢 献 度 は70.3%で あ っ た こ とか ら,30変 量 に よっ て捉 え られ る体 格 ・体 力 領 域 の約70%が. こ の6因 子 に よ っ て説 明 され る と考. え られ る。 各 因 子 はそ れ ぞ れF1:量. ・周 育,F2:. 筋 力,F3:長. 育,F4:心. 捷性,F6:柔. 軟 性 因 子 と解 釈 され よ う。 主 と して. 肺 機 能,F5:パ. ワー ・敏. 内容 妥 当 性 な い し構 成妥 当 性 の 立場 か ら選 択 され た表1の30変. 量 はそ れぞ れ 前 述 の6能 力 因 子 を 定. 義 して い る と考 え られ る注2)。 図2は,各. 群 にお け る体 力 要 因 の相対 的 発 達 程. 度 を比 較 す る ため に,走 能 力 の異 な る4群 に つ い て平 均 因 子 得 点 注3)を求 め,プ. ロ ッ トし,体 力 プ ロ. フ ィー ル を描 いた もので あ る。 表4の 下 部 は,一 要 因分 散 分 析 の 結果,有 意 性 の 認 め られ た 因 子 に つ い て多 重 比 較 検定 を行 な っ た 結果 を示 した も の で あ る。 長育,柔. 軟 性,及 び静 的 筋 力 の3因 子 に は 有 意. な差 異が 認 め られ なか っ た が,量 とSF,FS,FFの3群 FS群. とSF及. びFF群. 性 は,SS群 とFS群. ・周 育 は,SS群. 間 に,.心 肺機 能 はSS及 に,そ. とSF,FS,FFの3群. び. してパ ワー ・敏 捷 間,及 びSF群. 間 に 有 意 な差異 が 認 め られた。. 以 上 の 結 果 は,前 述 の測 定 値 を 手がか り と して 得 られ た 結 果 とほぼ一 致 し て い る と考 え られ る。 図2を 体 力 要 素 の発 達 バ ラ ンス注4)とい う観 点 か ら,4群. の 体 力 プ ロフ ィ ー ル を見 る と,SS群. の. 場 合,他 の 要 因 に比べ て,量 ・周 育 は大 で あ る が, パ ワー ・敏 捷 性 は 著 し く劣 り,心 肺 機能 も劣 っ て い る・FF群. は,量. 軟性 に比 べ て,パ. ・周 育 及 び 長育 の体 格 面,柔 ワー ・敏 捷 性,心 肺機 能,あ. いは筋 力 が 発 達 してい る。SF群. る. の場合 は,量 ・周. 育が や や 劣 り,心 肺 機能 が や や 発 達 してい る が, 全 体 的 に体 格 ・体 力要 因 の 調 和 が とれ てい る。 FS群 は,心. 肺 機能 が や や 劣 るが,長 育 が 大 で. あ り,パ ワ ー ・敏 捷性,柔 軟 性 が 発達 して い る と 考 え られ る。. 注2)表5の 負 荷 量 は いず れ も1%水 準 で有 意 。 従 って 負 荷量 を示 した 変 量 と因 子 とは 有 意 な相 関 が あ る。 注3)完 全 推 定 法18)によ り各 因 子 の 推定 式 を 求 め,こ れ を利 用 して各 個 人 の 因子 得点 を 算 出 し,4群 の平 均 因 子 得点 を求めた。 注4)各. 体 力 要 素 相互 間 の 発 達 関 係.
(7) 出村,松. 154. IV.考. 察. 一般 に短 距 離 及 び 長 距離 ト レー ニ ン グ者 の皮 脂. 沢,塚 谷. され る。 走選 手 の形 態 及 び体 型 に関 して は,平 田6)7),田 中28)29)及 び,田. 中27)の報 告 が あ る。 一般 的 な 特. 厚 は うす い と言 わ れ てい る22)26)。また,北 川 ら11). 徴 として,短 距 離 選 手 は筋 肉 太 りの標 準型 で,長. は,一 般 の肥 満 者 の場 合,肥 満 の 影 響 が持 久走 な. 距離 選手 は や や 小柄 で痩 型 と言 わ れ て い る25)。. ど におい て顕 著 に な る と報 告 して い る。小 野23)は, 一 般 の中学 男 子 に お い て,皮 脂 厚 の 厚 い者 ほ ど持. 考 察す る と,長 距離 走 能 力 に優 れ る 者(FF及. 久 走能 力 に劣 る こ とを考 察 して い る。 以上 の報 告. SF群)は,両. 者 の発育 バ ラ ン ス が比 較 的 とれ て い. か ら,走 トレ ー ニ ン グ者 は体 脂 肪 が 少 な く,ま. るが,FS群. の 場 合,長 育 が 量 ・周育 に比 べ て 大. た,一 般 人 の 場 合,長 距離走 能 力 に劣 る者 は体 脂. で あ り,SS群. 肪 が多 い こ とが 推 測 され る。 今 回 の結 果 では,SS. に比 べ て大 で,肥 満 型 に近 い こ とが 考 え られ る。. 群 と他 の3群. との 体 脂肪 に有 意 差 が 認 め ら れ た. 図2を 量 ・周 育 と長育 の両 体 格 因子 に限 定 して び. の場 合は逆 に 量 ・周 育 の方 が 長 育. 以上 の こ とか ら,SS群. の体 型 は 走選 手 に は 見. 間 に は 有 意差 が 認 め. られ ない体 型 で あ り,一 般 の走 能 力 の異 な る他 の. 従 って,今 回 の結 果 か ら見 る限 り,距 離 の差 異. 群 とも異 な る体 型 で あ ろ う と考 え られ る。 一方 ,小 野 ら221は,長 期 間 持 久 走 トレー ニ ン グ. が,FS群. とSF及. びFF群. られ なか っ た 。 に 関係 な く走 能 力 に劣 る者 は体 脂 肪 が 多 いが,長. を積 んだ 高 令 者 の体 力分 析 を 行 な い,肺 活量1秒. 距離 走能 力 に 劣 っ て も短距離 走 能 力 に優れ る者 の. 率 及び反 復 横 跳 は 同年令 水 準 よ り優 れ て い るが,. 体 脂肪 は必 ず し も多 い とは言 え な い と 考 え ら れ. 握 力,垂 直 跳,上 体 反 ら し,立 位 体 前屈,及 び 静. る。 また,SS群. 的筋 持 久 力 は 必 ず しも よ くな か った こ とを報 告 し. の場 合,走 能 力 の 劣 る要 因 の1. つ として体 脂 肪 の多 いこ とが 影 響 して い る と推 測. てい る。 こ れ は 持 久走 トレー ニ ン グ者 と一般 人 と.
(8) 走能力の異な る集団の身体特性 の 比較 で あ るが,今. 回 の結 果 で は,一. 般 の走能 力. 155. SS及 びFF群. の プ ロフ ィー ル は選 手 の もの と は. の異 な る集 団 間 にお いて も,静 的 筋 力 や柔 軟性 に. 異 な って い る と考 え られ る。 す な わ ち,短. は 差 異 が認 め られ なか った。 こ の理 由 の1つ と し. 離 走 能 力 に 劣 るSS群 は,量 ・周 育 は大 で あ るが,. て,特 に一 般 集 団 の場 合,静 的 筋 力 や 柔軟 性 は 走. 短距離 及 び長 距 離 走 の成就 に そ れ ぞ れ重 要 と考 え. 運 動 の成就 に 関 与 す る重 要 な 能 力 で は ない こ とが. られ るパ ワ ー ・敏 捷性,心 肺 機 能 が 共 に劣 っ て お り,両 走 能 力 に優 れ るFF群. 考 え られ る。 今 回 の結 果 か ら心 肺 機能 に関 し て は,長 距 離 走 能 力 に優 れ て い る者(SF及 (SS及 びFS)に ー,敏 捷性,筋. びFF)の. ・長 距. の 場 合 には前 述 の い. ず れの能 力 に も優 れ て い る。FF群. に属す る者 が,. 方 が劣 る者. 更 に トレー ニ ン グを積 む こ とに よっ て,短 距 離 あ. 比 べ て発達 して お り,ま た,パ ワ 持 久 力 に関 して は,長 ・短距 離 走. るいは長 距 離 を 専 門 とす る選 手 へ と成 長 して い く もの と推測 さ れ る。. 能 力 に劣 る者 の方 が両 走能 力 に優 れ る者 あ る い は. V.ま. と. め. い ず れか に優 れ る者 に比べ て劣 っ て い るこ とが 推 優 れ る者. 本 研 究 の 目的 は,一 般 の 高 校 生 男 子集 団 の 中 か. 比 べ て,パ ワ ー や敏 捷性 が 劣. ら走 能 力 の 異 な る集 団,す なわ ち,100m及 び10 kmの 両走 能 力 に優 れ て い る者(FF),劣 る者(SS),. 測 され,短 距 離 走 能 力 に劣 る者(SF)は (FFあ. るい はFS)に. っ てい るこ とが 推 測 され る。SF群. がSS群. に比. べ て,パ ワーや 敏 捷 性 にお い て勝 っ た のは,長 距. 100m走. 離 走 能 力 に優 れ て い る とい う こ と よ りも,短 距 離. る者(FS),そ. 走 能 力 にお い て もSF群. この4群 の身 体 的 特 性 を 明 らか に す るこ とで あ っ. の方 がSS群. に比べ て勝. っ て い るこ とに よ る もの と考 え ら れ る(表2参 照)。. 能 力 は 優 れ て い るが10km走. 能力には劣. の逆 の ケー ス の者(SF)を. 選 出 し,. た。 主 な結 果 を ま とめ る と次 の通 りで あ る。. 以 上 の結 果 は,一 般 に長 距 離 ト レー ニ ング者 の. 1.SS群. は 他 の3群 に比 べ て,体 脂肪 が 多 く,. 心 肺 機 能が 発 達 して い る2)26)と言 わ れ て い る こ. 量 ・周 育 が 大 で あ るが,協 応 性,平. と,一 般 集 団 を 対 象 とした走 パ フ オ ーマ ンス と前. 動 的筋 力 が 劣 っ て い る。. 述 の体 力要 因 と の相 関分 析4)5)9)10)12)17)25)の 結果 か ら類 推 して妥 当 な結 果 であ ろ う と考 え られ る。 従 って,選 手 の場 合 と同様,一 般 の集 団の場 合. 2.短 距 離 走 能 力 に優 れ る者(FF及 劣 る者(SS及. びSF)に. びSF)は 劣 る者(SS及. が,概. が発達 して い る。. 優 れ,短 距 離 走 能 力 に優 れ る者 は パ ワーや 敏捷 性 に優 れ て い る と言 え よ う。 ま た,SS群. は 他 の群 に比 べ て,主. 比 べ て,パ. びFS)は ワーや敏 捷 性. が発達 して お り,長 距離 走 能 力 に優 れ る者(FF及. も特 別 トレー ニ ン グを行 な っ て い る訳 で は な い して長 距 離 走 能 力 に優 れ る者 は心肺 機能 に. 衡性,下 肢 の. 3.長 育,静. びFS)に 比 べ て,心 肺 機 能. 的筋 力,柔 軟 性 につ い ては,走 能. 力 の異 な る4群 間 に差 異 は な い 。 と し て重 心. 4.走 能 力 の 異 な る4群 は,そ れ ぞ れ独 自 の体. の移 動 が伴 う体 力 テス トにお い て 劣 っ てい た(表. 力 プ ロ フ ィ ー ル を 有 して お り,FS及. 4)。SS群. 場合 は,そ れ ぞ れ 短距離 及 び 長 距 離 走選 手 の タ イ. は,体 脂 肪 が多 い群 と考 え られ た こ と. か ら,こ の 影響 が 移 動 を伴 う体 力 テ ス トに も反 映. 周育 が大 で あ るが,心 肺 機 能,パ. 異 な る4群 の 体 格 ・体 力 プ ロフ ィ ー ル は異 な り,. 劣 っ てお り,FF群. そ れ ぞれ 独 自 の身 体 特 性 を有 して い るこ とが 推 測. 体格 面 及 び 柔 軟 性 に比 べ て,パ. さ れ る。. 肺機 能,筋 の プ ロフ ィ ー ル は そ れ ぞ れ 短. 距離 走及 び 長 距 離 走選 手 の も の と類 似 して い る と 考 え られ るが,特. に一 般集 団 に お い て 見 ら れ る. の. プ と類 似 し て い る。. した と考 え られ る。 一 方 ,体 力 プ ロ フ ィールの 結 果 か ら,走 能 力 の. FS群 及 びSF群. びSF群. 5.SS群. の 場 合,他 の体 力要 因 に比 べ て,量. ・. ワー,敏 捷 性 が. の場 合 は,長 育,量. ・周 育 の. ワー,敏 捷 性,心. 力 が 発 達 してい る。 (受付. 昭和59年4月11日).
(9) 出村,松. 156. 文 1) 浅 川 桂 次,鈴. 沢,塚 谷 (1969):体. 献. 木 義 明,鎌 田喜 雄(1956):運. 動選手 の. テ ス ト―. 大 呼 吸量 と運 動 能 力 との 関 係 に. 16). つ い て,体 力 科 学,5(5),172‑175.. 3) Broek,. J., Grande,. Keys,. A.(1963):. composition:. Densitometric. assumptions.. of. selected running. J. T.. alysis. some. and. 17). of body. physiological performance,. relationship. variables. and. 法,体 20). Fractional during. utilization. distance. of. running,. 7) Hirata,. Physique. J. Sports. Med. and Phys.. 育 と心 理 の た め の推 計 学,日. athlete,. 本 千 恵 子,油 座 信 男(1979):8ケ. 月の. 激 しい運 動 が 体 組 成及 び 体 力 に 及 ぼ す 影響に 関 す る. 下 充 正(1981):最. 大 酸 素 摂取 量 と身 体. 組 成 か ら見 た 肥 満 者 の呼 吸循 環 系 機 能,30(3),131‑ 136. 下 充 正,山 本 恵 三,青 年 男女 の 身 体 組. 成,最 大 酸 素 摂 取 量 お よび2,400m走,体. 育 学 研 究,. 21,335‑340.. 久走鍛 練. 力科学,63‑70. 京,. George Allen and Unwin Ltd, Landon. 長 距 離 走 者 の 呼吸 循 環 系 機 能. 並 び に形 態 特 徴,筑 波 大 学 修 士 論 文. 田 中 喜 代 次(1978):ラ ヤ ー ド ・1マ. ン ニ ン グ ス コ ア847以 上 の880. イ ル ・長 距 離 ラ ン ナ ー の 心 肺 機 能,体. 育 学 研 究,81‑90.. 慎 一(1979):中. 上 競 技 の コ ー チ ン グ(I),総 修 館,東. 町 四 郎,緒. 論 ・. 京,3‑537.. 方 維 弘,鈴. 野 勝 己,菊 地 和 夫,出. 村. 長 距離 ラ ンナ ーの 呼 吸循 環 系 機 能 及. び 形 態 的 特 徴,日 本体 育 学 会 第30回 大会 号,285.. 之 助,山. 崎. 田純 三,堀. 清 記,千 賀康 利,大 槻 寅. 武(1979):ス. ポ ーツ マ ンの 体格 及 び 体. 型 に関 す る研 究―. 競 技 種 目別 に よる運 動選 手 の体. 格 の 差 異 に つ い て―,体. 金 原 勇 編(1976):陸 トラ ッ ク編,大. 博(1972):持. J. M.(1964): The Physique of Olympic. 28) 田中 信 雄,辻. 14) 川 端 愛 義,水. 栄,木 村邦 彦(1970):. 田. 27) 田中 喜 代 次,松 浦 義 行,浅. 力 科 学,28,34‑46.. 薫,宮. 代. 京,259‑. 満 を 考 え 直 そ う,不 味 堂,東. 25) 田中 喜 代 次(1980):中. 26). 育 学 研 究,26,111‑118.. 13). 小 野 三 嗣(1978):肥. 24) Tanner,. 敏 捷 性 ・筋 力 ・パ ワーか ら見 た 短 距 離疾 走 能 力,体. 12) 北 川. 修 館,東. 中高 年 者 の 体 力 に関 す る研 究,体 23). 本 文 化 科 学 者,東 京,241‑243.. 薫,宮. ポ ー ツ と エ ネ ル ギ ー ・栄 養,現. 22) 小野 三 嗣,横 山 芳江,倉. and age of Tokyo. 9) 生 田香 明,根 木 哲 郎,栗 原 崇 志,播 本 定彦(1981):. 11) 北 川. 育 の 科 学社,42‑159.. 長 嶺 晋 吉(1979)ス. 60‑65.. 8) 岩 原 信 九 郎(1977):教. 研 究,体. 育測 定. 283.. Fit. 6, 207-222.. 10) 池 上 晴 夫,水. 野忠 文,江 橋 慎 四 郎(1982):体. 最 新 体 力 測 定 法,同 文 書 院,44‑282.. 格 体 力判 定 法,大 洋社,岐 阜.. Champions,. 味 堂,東. 動 科 学 に お け る因子 分 析 法,不. 21) 名 取 礼 二,小 川 義雄,横 堀. Med. Sci. Sports, 5, 248-252.. Olympic. 京,. 京,391‑414.. 19) 松 井 三 雄,水. distance. 6) 平 田欽 逸(1976):体. K.(1966):. 倉 書 店,東. 動 能 力 の 因 子 構 造,不. の ス ポ ー ツ 科 学 講 座,第2巻,大. capacity. 力. 一法 規,東 京.. 力 測 定 法,朝. 松 浦 義 行(1969):運. 味 堂,東. between. J. Sports Med. & Physical. D. L.(1973):. the aerobic. 松 浦 義 行(1983):体. 18) 松 浦 義 行(1972):行. quantitative. Fit., 7, 61-66. 5) Costill,. そ の実 施 と活 用―,第. 京,120‑139,170.. Ann, N Y., 110, 113-140.. 4) Costill, D. L.(1967): The. 京,36‑. 159‑193.. F., Anderson,. review. 江 堂,東. 15) 文 部 省 ス ポ ーツ課 内 社 会 体 育 研 究 会編(1979):体. 体 勢 につ い て,体 力 科学,5(5),165‑171. 2) 浅 川 桂 次(1956):最. 力 測 定 と 健 康 診 断,南. 252.. 29) 田中 信 雄,千. 賀康 利,黛. 力 科 学,26(3),114‑123. 誠,辻 田純 三,堀. 清. 記(1980)大 学 生 の体 格,体 型 に 及 ぼ す身体 運 動 の 影 木慎 次 郎 編. 響,215‑232..
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