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博士(医学)阿部雅一 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)阿部雅一 学位論文題名

HTLV − I 感 染 症 の ラ ッ ト モ デ ル

―HAMラ ッ ト 病 の 超 微 形 態 学 的 観 察 一

学位論文内容の要旨

    【はじめに】

HTI´V‑I (HumanTcellleukemia virus  つ は1980年 代初頭ヒ トの最初 のレト ロ ウ イ少 ス と して 分離同定 され、そゲ  :人T細胞 白血病の 病因ウイ ルスとし て 確 立 さ れ た が 、 近 年 脊 髄 症 (KllN ‑I‑associated  pastic paraparesis, HAMff SP),関節症,細気管支肺胞炎,ミ參ぎ震饗毟瞿裂 関与して い ることが明 らかにな ってきた 。これま でHA:NtVJCSPに特徴 的な病理所見は脊 髄 白質のり・ンバ球・マクロファージの浸潤を伴った慢性進行性炎症と白質変性 が 主座を占め るとされ てきたが その疾患 発症機序 は依然と して明らかではなく

、 その病因解明のため動物モデルの開発が強く望まれてきた。筆者らはHTI,V‑I 関 連 疾患 発 症 機序 の 解明 を 目 的に 以 前 より 作 製し 解 析 を進 め てき た7系 統 の HnーV一I持続 感 染 ラッ ト のう ち 、WKAH系ラ ッ ト1系統 に の み後 肢 の痙 性 麻 痺 を 呈 し神 経 病 理学 的 にも ヒ トHAMff SPに類 似す る脊髄病 変を示す モデル動 物 HAMラ ット 病 の 作製 に 初め て 成 功し た 。 筆者 はこのHAMモデル動 物の脊髄 ・末 梢 神 経 病 変 の 超 微 形 態 学 的 観 察 を 行 い 、HAlvWSPの 発 症 機 序 を 考察 す る 。     【材料と方法】

HAMラットの作製

  生 後 4カ 月 齢 のWKAI‑VHkm(WKAH)系 ラ ッ ト5頭 に 尾 静 脈 よ り107個 の Hn,V.I産生 ヒ トT細 胞株 で あるMr.2細胞 を2週 間隔で2度 静脈内接 種した。

電子顕微鏡学的観察

HAMラ ット 病 を 発症し たラット 並びに正常 コントロ ールラッ トを2.5% グルタ ー ルアルデヒ ド、4%パ ラホ少ム アルデヒ ドを含ん だO.1Mリン 酸緩衝固定液に よ る潅流固定 を行い脊 髄、坐骨 神経の横 断切片を 作製した 。後固定、水洗、脱 水 を経て、ーn812に包埋し た.超薄 切片は酢 酸ウラン 、クエン 酸鉛による染色 後、電子顕龍E察を行った。

    【結果】

持続感染系の成立とHAMラット病の発症

  Mr一2を 接 種 後1カ 月 の 時 点 でPCR法 に よ り5頭 す べ て のWKAHラ ッ ト の 末 梢 血 リン パ 球 にHnN‐Iプロウイ ´レスDNAを検 出しInーV.I持続感染 の成立を 確認した。

  こ れらはすべ て約15カ月 の潜伏期 を経て歩 行障害を おこし徐 々に後肢の痙性 麻 痺 が 進 行 し た た め 月 齢24カ 月 の 時 点で 潅 流固 定 し 電顕 的 検索 を 行 った 。

(2)

超微形態学的観察:脊髄

  トルイジンプルー染色を施したsemithin sectionを光顕的に観察すると頚髄か ら腰髄上部 にかけ白 質を中心 とする病 変が認められた。左右ほぼ対称性で、髄 鞘崩壊、空 胞変性、 マクロフ アージの 浸潤、アストロサイトの増生よりなり、

白質周辺帯、特に前索・側索に最も強かった。

  電顕的観察 では、胸 髄を中心 として神経線維の脱落と脱髄線維が見られた。

多数のmyebdcbrils等を胞体内に入れたマクロファージが浸潤していた。また、

菲薄 化 じた 髄 鞘 に囲 まれた空 胞がみら れ、一部 にマクロ ファージ の空胞内 浸 潤を伴うも のも見ら れた。リ ンパ球等 の炎症性細胞の浸潤は見られなかった。

また、髄鞘 再生や、 アストロ サイトの 増生も見られた。軸索は比較的構造が保 た れ て い た 。 病 変 部 位 に は C型 ウ イ ル ス は 認 め ち れ な か っ た 。

、病変部にはapoptotic bodyを貪食するマクロファー 周囲に多 く見ぢれ た。さらにはアポトーシス初期像 ロサ イ ト も観 察 され 、 ア ポト ー シスが 比較的選 択 におこっていることが示唆された。

超微形態学 的観察: 坐骨神経

坐骨 神 経・ 脛 骨 神経 でも脱髄線 維が多く 見られ、 空胞変性 ・髄鞘解 離の所見 も観察され た。髄鞘 は不規則 に解離を 起こし大小の空隙には膜様構造物、変性 産物がみら れた。ま た、空胞 内や脱髄 線維に接して変性したミエリン等を貪食 するマクロ ファージ の浸潤も 見られた 。軸索は比較的保たれていた。シュワン 細胞、マク ロファー ジ等にウ イルス粒 子は見られなかった。また、アボトーシ スに陥った シュワン 細胞カ| 観察され た。

    【考察】

  HAMラ ット 病 の神 経 病 理学 的 所見 は 光 顕的 に 胸髄 を 中 心と し た 前側 索周 辺 帯にみら れる左右 対称性のぴ まん性白 質変性で あり、空 胞変性とマクロファー ジの浸潤 に特徴づ けられ、. この病変 局在はヒ トHAM[1'SPに非常に類似してい る。  今回の超 微形態学 的観察によ り脊髄や 末梢神経 病変の形 成過程が初めて明ら かにされ た。病変 の高度な部 位では著 明な髄鞘 崩壊ない しは脱髄像が認められ た。髄鞘 は不規則 に解離を起 こし大小 様々な空 隙には膜 様構造物、変性産物が みられ、 空胞内に はマクロフ ァージが しばしば 認められ る。アストロサイトの 増生も高 度であり 、崩壊した 髄鞘周辺 へのマク ロファー ジの浸潤も著明である

。病変は 髄鞘の崩 壊が主体で あり、髄 鞘の解離 ならぴに マクロファージの浸潤 により空 胞形成に 至る変性過 程である 。

IrrLV‑Iを は じめとす るレトロ ウイルス はヒトや 動物に対 して多彩な 疾患を発 症さ せ 、と く に 類似 の 中 枢神 経 障害 はhumanlmmunodemcienCyvir聡 凹V)、羊

・ヤギのusna/n弧emvirus、マ ウスのmudnclcukemiaurus(MuLV)などのレトロ ウイルス による感 染症でも引 き起こさ れること が知られ ており、後天性免疫不 全症 候 群( 」 恤S)でみ られる空 胞性脊髄 症では中 部から下部 胸髄にか けての 脊髄に多 数の空胞 化変性に特 徴づけら れる白質 変性がみ られる。病変の強い部 位で は マク ロ ファージ および多 核巨細胞 の集簇が 認められ、mヽ倣子が 確認さ れている 。

  HAMラ ット 病 に見 ら れ る脊 髄 病変 はmV感 染 に 見ら れ る空 胞 化 脊髄 症 にきわ めて よ く似 て い る。mV空胞 性 脊髄 症 と 異な り多核巨 細胞がみら れず浸潤 する マクロフ ァージに はこれまで の検索で はウイル ス粒子、 あるぃはウイルス抗原 が証 明 され て い ない が 、mLV‐I持 続 感染 ラッ トに見ら れる病変で あること か らこれら の病変形 成にはウイ ルス感染 と関係す る何らか の共通した機序の存在 を想定で きる。

  こ の 点に 関し て重要と 思われる 所見はHAMラ ′ット病 において、 髄鞘の腫 大

、軽微な 髄鞘解離 が認められ る空胞変 性の軽度 な病変に 既にマクロファージの

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浸潤がみられることと、アポトーシス.が誘導されたシュワン細胞や、オリデン ド ロサ イト が観 察さ れることであり、病理形成に重要な役割を果たしていると 考えられる。

  HAMラ ッ ト 病 で のア ポ ト ー シ ス 誘導 の機 序は 現在 のと ころ 充分 に明 らか で はなぃが、血vitroでりンホトキシンや Dmロによる培養オリゴデンドロサイト に アポ トー シス が誘 導されるとの報告や、一酸化窒素が多発性硬化症の脱髄性 脊 髄病 変に おい てオ リゴデンドロサイトの細胞死をきたす可能性があることが 明 らか にさ れて いる 。HAMラッ ト病 では 比較 的初 期から脊髄病変にマクロファ ー ジが 多数 浸潤 する ことが確認されており、マクロファージがこれらの液性因 子 を産 生し これ によ ってオリゴデンドロサイトないしはシュワン細胞にアポト ーシスが誘導されている可能性が示唆される。

我 々 が 開 発 し たHAM屈SPモ デ ル 、HA爾 ラ ッ ト 病 は ヒ . トHAMパSP、あ るい は

」岨)S脳症と多くの類似点があるIことが明らかとなった。HnーV‐I感染からHAM 発 症に 至る 過程 に関 与する宿主要因、ウイ少ス側要因、脱髄機序を解析する上 に極めて有用なモデルと考えられる。

    【 結論 】

HAM屈SPの ラット モデ 少,HAMラッ トの 脊髄・ 末梢 神経 病変 にお ける超微形態 学 的観 察・ 検討 を行 い以 下の 結果 を得 た。

1. 胸 髄 を 中 心 とし た前 側索 周辺 帯の ぴま ん性 白質 変性部 位で は軸 索の 障害 に 比較 し著明な脱髄像、髄鞘再生、グリオーシス、軸索変性や、変性したミエ リ ンを 貪食するマクロファージの浸潤等が確認された。ミエリンの障害が高度 な 部位 で独 多く の空 胞化 変性 が認 めら れた。

2. ア ポ ト ー シ スを 起こ した オリ デン ドロ サイ トや シュワ ン細 胞、 オリ ゴデ ン ド ロ サ イ ト 由 来 と 考 え ら れ る}?totCbodyを 貪食 するマ クロ ファ ージ が観 察 さ れ 、H`Mラ ッ ト病 の 初 期 病Eし て オ リ ゴ デ ンド ロ サ イ ト や シ ュ ワ ン 細 胞 等 の ア ポ ト ー シ ス 誘 導 の 可 能 性 が 強 い と 考 え ら れ た 。 3.HAMラ ッ ト 病 で の オ リ ゴ デ ン ド ロ サ イ ト や シュ ワン細 胞等 のア ボト ーシ ス は冊 晒aなどの サイ トカ イン や一 酸化窒素などによる誘導等が推察された。

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授

副査一教授 副査    教授

宮崎   保 加藤正道 田代邦雄

     学位論文題名

HTLV ―I 感染症のラットモデル

―HAMラッ ト 病の 超 微形 態 学的 観 察―

【研究目的】

WflーV‑I (HumanTcellleuke血avi111stypeDは1980年代初頭においてヒトの最初の レトロウイルスとして分離同定され、その後、成人T細胞自血病の病因ウイルスと して確立されたが、近年、脊髄症(HAMパSP)、関節症,細気管支肺胞炎等に深く 関与していることが明らかになってきた。mLV‐I関連疾患発症機序の解明を目的 に 作製し た7系統 のmLV‐I持続感 染ラットの うちWKAH系ラット1系統 にのみ後 肢の痙性麻痺を呈し、ヒトHAM厂rSPに類似する脊髄病変を示すモデル動物H`Mラ ット病の作製に初めて成功し既に報告した。そこで本研究ではその脊髄・末梢神経 病 変 の 超 微 形 態 学 的 観 察 を 行 い HAMTSPの 発 症 機 序 を 考 察 し た 。

    【材料と方法】

HAMラットの作製

  生後4カ月齢のWKAH/Hkro(WKAH)系ラ ット5頭に尾静脈より107個のHTLV・I 産 生 ヒ トT,細 胞 株 で あ るMT‑2細 胞 を2週 間 隔 で 、2度 、 静 脈 内 接 種 した 。 電子顕微鏡学的観察

  HAMラット病を発症したラット並びに正常コントロールラットを潅流固定し、後 固定、水洗、脱水を経て、Epon812に包埋した。超薄切片は酢酸ウラン、クエン酸鉛 による染色後、電子顕微鏡学的に観察した。

    【結果】

超微形態学的観察:脊髄

  トルイジンプルー染色を施したsemithinsecdonを光顕的に観察すると頚髄から腰 髄上部にかけ左右ほぼ対称性の白質周辺帯、特に前索・側索に最も強い白質変性像 が観察された。

  電顕的観察では、胸髄を中心として神経線維の脱落と脱髄、マクロフアージの浸

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潤が認められた。さらに、菲薄化した髄鞘に囲まれた空胞がみられ、一部にマクロ ファージの空胞内浸潤も認められた。リンパ球等の炎症性細胞の浸潤は認められな かった。一方、髄鞘再生や、アストロサイトの増生が認められた。軸索の構造は比 較 的 保 た れ て い た 。 病 変 部 位 に はC型 ウ イ ル ス は 認 め ら れ な か っ た 。 特に注目すべき所見として、病変部にはapoptotic bodyを貪食するマクロフアージが 散見され、さらにapoptosis初期像と考えられるオリゴデンドロサイトも観察され た。

超微形態学的観察:坐骨神経

坐骨神経でも空胞変性・脱髄の所見も観察された。髄鞘は不規則に解離を起こし 大小の空隙には膜様構造物、変性産物が認められた。また、変性したミエリン等を 貪食するマクロファージの浸潤も見られた。一方、軸索は比較的保たれていた。シ ユワン細胞、マクロファージ等にウイルス粒子は見られなかった。また、apoptosis に陥ったシュワン細胞が観察された。

    【考案及ぴ結語】

HANWSPのラットモデル,HAMラットの脊髄・末梢神経病変における超微形態学的 観察・検討を行い以下の結果を得た。

1.胸髄を中心とした前側索周辺帯のぴまん性白質変性部位では軸索の障害に比較 して著明な脱髄像、髄鞘再生、グリオ―シス、軸索変性や、変性したミエリンを貪 食するマクロファージの浸潤等が確認された。ミエリンの障害が高度な部位では多 くの空胞化変性が認められた。

2.apoptosisを起こしたオリゴデンドロサイトやシュワン細胞、オリゴデンドロ サイト由来と考えられるapoptotic bodyを貪食するマクロファージが観察され、

HAMラット病の初期病変としてオリゴデンドロサイトやシュワン細胞等のapoptosis 誘導の可能性が強いと考えられた。

3.HAMラッ ト病でのオ リゴデンド口サイトやシュワン細胞等のapoptosisはTNF aな ど の サ イ ト カ イ ン や 一 酸 化 窒 素 な ど に よ る 誘 導 な ど が 推 察 さ れ た 。 我々が開発 したHAMff SPモデル、HAMラット病はヒトHAIVWSP、あるいはAIDS脳 症と多くの類似点があることが明らかとなり、HTLV‑I感染からHAM発症に至る過 程に関与する宿主要因、ウイ少ス側要因、脱髄機序を解析する上で極めて有用なモ デルと考えられる。

  以上より、 本研究は博 士(医学)の学位論文とし妥当なものと判断される。

参照

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