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博 士 ( 工 学 ) 坂 井

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 坂 井    忍

     学 位 論 文 題 名

地 域 の 地 震 被 害 予 測 の た め の 国 際 汎 用 モ デ ル の 構 築

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  地 震被 害現 象の 特徴 とし て希 少性 、不 可知 性、 複合性が上げら れるが、これらは地震危険度を 事前 に予 測し 、地 震防 災へ と繋 げて 行く 場合 の大 きな障害ともな っている。本研究は、これらの 地震 被害 の特 徴か ら生 じる 諸問 題に 対し てー つの 解答を与えよう とするものである。被害地震が 希に しか 起き ない ため の不 都合 に対 する 対策 とし ては、国・地域 の依存性をできるだけ排除した 汎用 性の 高い 被害 予測 モデ ルを 構築 する こと で、 世界的に偏在す る傾向にある被害資料の共有化 を実現する。地震の発生を正確に予測で,きないこと (不可知性)に対しては、中・長期的な展望 に立 脚し た地 震防 災対 策の みな らず 地震 直後 の緊 急対応にも役立 てることができる被害予測モデ ルの 適用 方法 を展 開す る。 また 、地 震被 害の 複合 性・多様性につ いては、従来の実験式的な被害 予測 モデ ルの アプ ロー チを 避け 、被 災事 象の 発生 メカニズムにで きるだけ忠実な理論モデル・半 実験 式を 構築 する こと によ り、 他の 被害 項目 や後 続する被害項目 への連結を可能とさせる。本論 にお いて は地 震動 の評 価お よび 建物 の被 害予 測に 主眼を置くが、 それをもとに発生する死傷者の 予測モデルヘの連結についても扱う。

  本論文は6章より成り、 以下に各章の要約を述べる。

  第1章 では 、希 少性 、 不可 知性 、複 合性 のそ れぞ れに つい て、 地震 工学 が抱 える問題点と本研 究で提案するモデルの特徴を述べ、本研究の位置付け・・を行うとともに、本論文の構成と概要を述 ぺている。

  第2章 では 、提 案す る 地震 危険 度予 測モ デル が地 震動 入力 評価 モデ ルと 建物 被害評価モデルの 2っ から 成る こと を最 初 に述 ベ、 次に 、提 案モ デル 構築 のた めの 準備 作業 とし て、それぞれの評 価モ デル に関 係す る既 存資 料を 、で きる だけ 多く の国についてカ パーできるように収集し、共通 のフオーマットで整理している。

  地 震動 入力 評価 につ いて は、 主に 、地 域差 が最 も大きい距離減 衰モデルに関して既存評価式を 収集 し整 理し てい る。 既存 評価 式が 存在 する 場合 には代表的なも のを選択し、無い場合には既往 地震 の震 度分 布図 から 距離 減衰 モデ ルを 読み 取る な どの2段 構え で資 料収 集を 行い、23ケ国につ いてカバーしている。

  建 物の 被害 につ いて は、 建物 種別 ・地 域に よっ て被害程度の記 載方法が異なるとぃう問題があ る の で 、 統一 的な 被害 指標 とし てダ メー ジ・ イン デッ クス を 定義 し、 これ をMM震度 階の 関数 と して 表わ す被 害関 数を 共通 のフ オー マッ トと して 提案している。 この被害関数は建物の強さを表

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す指標と靱性を表す指標で定義されている。13,ケ国について被災資料を収集・整理し、それぞれ の国について建物種別ごとに被害関数を求めている。

  第3章では、第2章で整理した距離減衰式および被害関数の資料を基に、それらがまだ得られ ていない国・地域、建物種別について距離減衰式あるいは被害関数を推定する手法を展開し、そ れらを統合する形で、全世界に適用できる汎用性の高い建物被害評価モデルをパソコン上に構築 している。

  まず距離減衰式の推定にあたっては、既存の距離減衰式をフんジィ集合論におけるメンバーシ ップ関数に置き換えて数値の集合として扱うことにより、式の形が異なっても算定が可能となろ ように工夫し、資料の得られていない地域も含め評価できるようにしている。これに震央付近に おける震度の評価式および地盤による地震動増幅の評価式を繋げて、地震動入カモデルを構築し ている。

  建物の被害関数を求めるにあたっては、まず耐震性能を考慮しながら建物種別を24種類に分類 し、被害関数の2つの指標(強度と靱性)を建物分類ごとに決定している。2′」の指標の値の決 定は、第2章で求めた被害関数の整理結果を基本とし、既存資料の乏しい建物分類についても評 価できるよう工夫している。すなわち、2つの指標の取り得る範囲を建物種別ごとにファジィ集 合のメンバーシップ関数で表現し、さらに施工レベルや階高、築年などの建物の質にかかわろ要 因を指定することでその範囲が絞られていくようにしている。この絞リ込みの部分ではファジィ 推論を用い、定性的な評価の取り入れに役立てるとともに、所望の入カデータに欠損がある場合 でも、状況に応じて算定できるように配慮している。

  以上の地震動入力評価と被害関数評価の2つモデルを統合する形でバーソナルコンピュー夕上 に構築している。地震のマグニチュード、震央距離、地盤種別、地域の建物種別に関するデ一夕 を入カすることにより、既往地震被害資料の無い地域においても、震度および建物の被害率を推 定できるようになっている。

  第4章では、第3章で構築したモデルの検証を、1980年以降に発生した6つの被害地震につい て行っている。

  検証の対象として、1980年アルジェリア地震、1980年イタリア南部地震、1988年アルメニア 地震、1988年インド〓ネバール国境地震、1992年エジプト地震、1992年トルコ地震を選び、そ れぞれの地震について建物の被害を算定し実際の被害との比較を通じて、評価の対象となる圏の 地域 特性が多 様かつ精 粗におい て様々であ ってもモ デルが適 用できる ことを示しているぃ   第5章では、地震防災対策への適用方法を展開している。適用の対象都市として、耐震性の低 い組積造家屋が大半を占め、地域地震防災が急務とされているトルコのブルサ市を選び、また、

地域防災計画における諸施策の効果を評価するために、建物被害予測のみならず、これに、建物 崩壊に伴う死者発生予測モデルおよび時間経過に伴う生存率の減少予測モデルを付加していろ、

  まず始めに、ブルサ市の地震危険度評価を短・中,長期的展望に立って行なっている。っまり 死者予測モデルを構築して提案モデルに接続し、1985年現在の同市の建物およぴ死者の地震危険 度が2000年までにどのように変化するかを示し、地震危険度のマイクロゾーニングを建物被害と

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死者について行い、優先的に改善すべき危険地区を指摘している。そして、それに対して土地利 用の制限や建築基準の改正を行った場合の効果を、異なる4っのシナリオについて評価し、それ ぞれの減災効果を比較している。

  さらに、地震直後の緊急対応に役立てるために、倒壊建物に閉じ込められた人々の生存率が時 間経過と共に変化する様子を予測するモデルを構築し、提案モデルに連結してブルサ市の事例に 適用している。地震直後の緊急活動の参考資料として、事後経過日数ごとの救命可能性を具体的 な数字で出カしている。

  第6章は結論であり、各章の要約を総括している。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

地域の地震被害予測のための国際汎用モデルの構築.

  地震による今世紀の死者は既に150万人を超えており、近年においても地震発生の度に多数 の死者が発生している。これは、先進国におぃては都市を中心に被害の様相が複雑になってきて いること、発展途上国では建物の耐震化がなかなか進まないことなどによる。これらの災害を軽 減するための地震防災計画の策定には将来発生が懸念される地震に対する被害想定が基本となる。

そのために既往の被災事例が参照されるが、地震の発生は地域を限定した場合希有な事象であり、

地震災害に関る地域依存性も著しく、世界各国に同一基準で適用できる予測モデルの構築が困難 であった。本論文では、この点に着目し、地震工学的データの整備されていない国にも適用でき る よ う な 汎 用 性 の 高 い 地 震 被 害 評 価 モデ ル を提 案し てお り、6章か ら構 成さ れて いる 。   第1章は序論であり、本研究で提案するモデルの特徴を述べ、本研究の位置付けを行うととも に、本論文の構成と概要を述ぺている。

  第、2章では、提案する地震危険度予測モデルが地震動入力評価モデルと建物被害評価モデルの 2っから成ることを最初に述ベ、次に、提案モデル構築のための準備作業として、それぞれの評 価 モデ ルに 関係 する既 存資 料を 、そ れぞ れ23ケ国、13ケ国について収集・整理している。

  第3章では、第2章で整理した地震動の距離減衰式およぴ構造種別ごとの被害関数の資料を基 に、それらがまだ得られていない国・地域、建物種別について距離減衰式あるいは被害関数を推 定する手法を展開し、全世界を適用対象とする汎用性の高い建物被害評価モデルをバソコン上に 構築している。まず距離減衰式の推定にあたっては、既存の距離減衰式をファジィ集合論におけ るメンバーシップ関数に置き換えて数値の集合として扱うことにより、式の形が異なっても統一

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史 二

攻 幸

洋 祐

   

味 山

   

鏡 石

城 岡

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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的な扱いが可能となるように工夫し、資料の得られていない地域も含め評価できるようにしてい る。建物の被害関数を求めるにあたっては、まず耐震性能を考慮しながら建物種別を24種類に分 類し、被害関数のパラメータの取り得る値の範囲を建物分類ごとにメンバーシップ関数で表現し、

さらに施工レベルや階商、築年などの建物の質に関る要因を指定することでその範囲が絞られて いくように工夫している。この絞り込みの段階ではフんジィ推論を用い、定性的な評価項目の数 値化に役立てるとともに、所望の入カデータに欠損がある場合でも、状況に応じて算定できるよ うにしている。以上をコンピュー夕上に具体的に実現し、入カデータとして想定地震のマグニチ ユードと震源位置、地域データとして対象地域の表層地盤種別、建物の属性を指定することによ り 、予想され る地域の 震度およ ぴ建物の 被害率を 出カする ようなモデ ルを構築している。

  第4章では、第3章で構築したモデルの検証を、1980年以降に発生した6例の既往被害地震に     ′,

ついて行っている。検証の対象として、1980年アルジェリア地震、1980年イタリア南部地震、

1988年 アルメニア 地震、198g年インド〓ネパール国境地震、1992年エジプト地震、1992年ト ルコ・エルジンジャン地震を選んでいる。それぞれの地震について建物の被害を算定し実際の被 害との比較を通じて、評価の対象となる国の地域特性が多様かつ入手可能なデータが精粗におい て様々であってもモデルが適用できることを示している。

  第5章では、建物の倒壊により発生する死傷者の発生過程を時系列でモデル化して提案モデル の拡張性を示し、さらに本モデルを具体的な都市に適用して地震防災対策への多面的な適用可能 性を示している。具体的には、適用の対象都市として、耐震性の低い組積造家屋が大半を占め地 域地震防災が急務とされているトルコのブルサ市を選び、1985年現在の同市の建物および死者の 地震に対する危険度が2000年までにどのように変化するかを評価し、それらの地域分布を示し、

優先的に改善すぺき危険地区を指摘している。さらに、それに対して土地利用の制限や建築基準 の改正を行った場合の効果を、異なる4つのシナリオについてそれぞれ評価・比較している。ま た、地震直後の緊急対応に役立てるために、倒壊建物に閉じ込められた人々の生存率が時間経過 と共に変化する様子を予測するモデルを提案モデルに連結してブルサ市の事例に適用し、地震直 後の緊急活動の参考資料として、事後経過日数ごとの救命可能性を具体的な数字で出カしている。

  第6章は結論であり、各章の要約を総括している。

以上のように本論文は、地域の地震被害予測法に関して、国・地域を越えた汎用性を有する 統一モデルを提案・構築しており、地震工学の進歩に寄与するところ大である。

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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参照

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