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本研究の萱量土目的

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)藤野忠敬 学位論文題名

音響的手法を用いたキュウリエソ資源の 定量的モニタリングに関する研究

学位論文内容の要旨

本研究の萱量土目的

   多くの水産資源が崩壊した原因として,資源管理において生態系の生物間作用や状態 変化が考慮されてこなかったことがあげられる.このことから,近年,生態系べースの 資 源 管 理 (Ecosystem‑based management) を 行 う 必 要 性 が 論 じ ら れ て い る .   Ecosystem‑based management を行うためには,生態系の主要構成生物を定量的にモニ タリングすることが不可欠である.これらの生物の中で,遊泳カを持つマイクロネクト ンの定量化は従来困難であったが,音響的手法はこれを可能にする手段として期待され ている.音響的手法を生物量推定に適応するためには,対象生物の音響反射特性を明ら か に し , 音 響 的 に 対 象 生 物 を 判 別 す る 手 法 を 確 立 す る こ と が 必 要 と な る ,    本研究では,日本海の生態系で重要な役割を果たしている魚類マイクロネクトン,キ ユウリエソ(Maurolicus japonicus) を対象とし,その音響による定量的モニタリング手 法を確立し,これまで不明であった本種の分布特性を明らかにすることを目的とする,

さらに,本種の資源量推定,資源の長期的な変動を基に,本種の定量的モニタリングを

行 う 意 義 に っ い て Ecosystem‑based management の 観 点 か ら 議 論 す る ,

童 饗 的 主 法 に よ る モ ニ タ リ ン グ の 翌 題 Q 二 空 ニ 竺 ッ ト ス ト レ ン グ ス

   音響的手法では,分布密度を知るために,体長との関数として一個体あたりの音波の

反射強度(ターゲットストレングス:TS) を把握することが重要となる.TS は,同じ

個体でも周波数や姿勢により変化するため,調査で適用する周波数にっいて姿勢の影響

を考慮した体長ーTS の関係式を求める必要がある.本研究では,最も使用頻度の高い

38kHz と120kHz の2 周波数にっいて,実験的な方法と理論的な方法を併用することに

より,姿勢がTS に及ばす影響および体長とTS の関係を調べた.その結果,キュウリ

エソは鰾の大きさと形状の特性から,38 ,120kHz では姿勢がTS に及ばす影響が少ない

ことが明らかとなった.また,TS の深度特性を考慮した理論的な方法により,本種の

生息深度帯別の体長‑TS の関係式を求めることができた,

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童饗 的主法に よるモニ タリング の認擾@ 二麁鍾剴 別

  現場 で収集さ れた音響 データは ,様々な 海洋生物 からの反射情報を含んでおり,その 中か ら対象生 物の反射 情報を抽 出しなけ れぱなら ない.したがって,対象生物を抽出す る方 法(魚種 判別)が 必要とな る.キュ ウリエソ については,反射強度に一定の閾値を 設定 し,複数 の条件設 定を行う 方法が用 いられて いた,しかし,この方法では季節によ って 魚群密度 が変化し た場合に 対応でき ない,そ こで,本研究では魚群密度の変化に対 応 す る方 法 と して 海 中の 反 射 強度 の 最大 値 を 信号 毎 に抽出 し,その10分 の1の反射 強 度を 閾値とし て設定す る判別方 法を考案 し,従来 の手法と比較した.その結果,本手法 は, あらゆる 周波数へ の対応が 可能であ り,異な る海域や季節において使用するのに適 して いる点で 従来の方 法より優 れている と判断さ れた,

隠睦釐疊 周塑塰壇 !三塑け るキュウ リエソ堕 金査縫性

  本研究で 求めた体 長‑TSの関係 式と魚種 判別法を 用いて,2000〜2005年の,主 に春季 と夏季に 隠岐諸島 周辺海域 で収集し た音響デ ータから ,隠岐諸島を挟んだ東西海域,沿 岸と沖合のキュウリエソの水平的な分布特性を調べた.その結果,両季節に共通して,隠 岐諸島の 東側の分 布密度は ,西側に 比べて1.2〜4.6倍高かった.また,沿岸と沖合の分 布には明 確な季節 変化がみ られ,春 季は沿岸 に集中, 夏季は沿岸から沖合に魚群が広く 分散した .さらに ,これに ともない 本種の分 布密度は ,沿岸よりの陸棚斜面部で,沖合 に比べて1.1〜20.3倍高く なった. こうした 水平的な 分布特性 は,隠岐諸 島の東側 海域 の複雑な 海洋環境 と,本種 の主餌生 物となる 動物プラ ンクトンの分布域の季節変化の影 響を受け たものと 考えられ る,

  隠 岐 諸島 東 海 域で は ,2000〜2002年 の春季, 夏季およ び秋季の データを用 いて昼夜 の鉛 直 分 布特 性 を 調べ た .こ の 結 果, 昼 間キ ュ ウ リエ ソ は150〜200mを 中心とし て分 布してい ることが わかった .一方, 夜間では これより 浅い深度帯に本種が出現し,全て の季節で日周鉛直移動(Diurnal Vertical Migration:DVM)が確認された.ただし,春季 に は ,DVMの 有 無 が 異 な る パ タ ー ン が見 ら れ た.DVMを 行わ な ぃ魚 群 は1歳 以上 の 個 体の 占 め る割 合 が 高く , 成熟 段 階 がDVMの パタ ー ン に影 響 を及ばす 可能性が 高いと考 えられた .

日本海のキュウリエソの資源量とそ堕生変動

  春 季 にキ ュ ウリ エ ソ が陸 棚 上 に集 中 する 傾 向を示 したこと から,水深200mの等深線 を基準と してこの 集中分布の範囲を推測し,陸棚斜面部で観察された平均分布密度(15.5

〜 63.4g/m2)を用 いて,日 本海全域 の本種の 資源量を推定した.この結果,2000〜2005 年の キ ュ ウリ エ ソの 資 源 量は87〜356万 トン と 推 定さ れ た. ま た ,2000〜2005年の 春 季と夏季 の同一海 域で観察された平均分布密度は,年によって平年値から0.4〜1.5倍の 範囲で変動した.

  日本海の 主要生物 でキュウ リエソと 同じ栄養段 階にある カタクチ イワシ(五砥朋 仏 丿印〇門fc甜ざ)の2000〜2005年における資源量推定値は,41〜103万トンである.また,キ

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ユウリエソと並ぶ中深層性のマイクロネクトンであるホタルイカ(Watasenia scintillans) の資源量 推定値は ,1986〜1989年に おいて8.2〜13.6万トンと いう報告 がある.これら のことか ら,キュ ウリエソ は日本海 の三次生産者として最も資源量の大きい生物である と考えられた.

旦 杢 逢Q Ecosystem‑based management! 三 整 い て 杢 萱Qモ ニ タ リ ン4萱 短 弖 意 義   日 本海 南 西海 域 に おい て ,1978〜2005年の秋 季に得ら れたキュ ウリエソ の卵出現数 を 解析 した結果,1987年を境と して,卵 採集数が それ以前 の約2倍の 水準ヘ移行 し,本 種 の資源が 大規模で長 期的な変 動を示す ことが明 らかとな った.1987年を境とした資源 水準の変動は,他の有用水産生物(スルメイカ,.マイワシ,スケトウダラ)にも見られ,

気 候変動に連動した生態系の状態変化(レジームシフト)に関連したものと考えられる.

  音響的 手法により 隠岐諸島 周辺海域 で近年5年 に観察し たキュウ リエソの分 布密度の 年 変動と水 準は,卵の 出現傾向 と良く一 致してい た.この ことから,今後音響的手法に よ り本種の 資源状態を モニタリ ングする ことは, レジーム シフトを予測し,この影響を 受 ける有用 魚種を管理 する上で 大きな貢 献をする と考えら れる.また,主要な第三次生 産 者である 本種の音響 的手法を 用いたモ ニタリン グを実施 することにより,これまで推 測 の域を脱 しなかった 生物問の 餌をめぐ る競合関 係や,低 次生産と高次生産の関係を定 量 的に評価 することが 可能とな り,海洋 生態系の 理解に大 きく寄与すると期待される.

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   助教授   宮下和士 副査   教授   桜井泰憲 副査   教授   三浦汀介 副査   教授   飯田浩二

副査   教授   青木一郎(東京大学)

学 位 論 文 題 名

音 響 的 手 法 を 用 い た キ ュ ウ リ エ ソ 資 源 の    定 量 的 モ ニ タ リ ン グ に 関 す る 研 究

杢 研究堕萱 量と目的

  多 くの水産 資源が崩 壊した原因 として、 資源管理 において 生態系の種間作用や状態変 化 が考慮さ れてこな かったこと があげら れる。こ のことか ら、近年、生態系べースの資 源 管 理(Ecosystem‑based management: EBM)を 行 う 必 要 性 が 論 じ ら れ て い る 。   EBMを行 う ため に は 、生 態 系の 主 要 構成 生 物 を定 量 的に モ ニ タリ ングす ることが 不 可 欠 で ある 。 本研 究 で は、 日 本海 の 生態 系で重要 な役割を 果たしてい るキュウ リエソ (Maurolicus japonicus)を 対象とし 、本種の 音響による 定量的モ ニタリング手法を確立 し 、これま で不明で あった本種 の分布特 性を明ら かにする ことを目的とする。さらに、

本 種の資源 量推定、 資源の長期 的な変動 から、本 種の定量 的モニタリングを行う意義に っ いてEBMの観 点から議 論する。

童 饗 麹 主 法 に よ る モ ニ タ リ ン グ の 墾 題 Q二 空 ニ 2ッ ト ス ト レ ン グ ス   音響的手 法では、 分布密度 を知るた めに、一個 体あたり の音波の 反射強度(ターゲッ トス ト レ ング ス :TS) を把 握 す るこ と が重 要とな る。TSは、 同じ個体 でも周波数 や姿 勢に よ り 変化 するた め、調査 で適用す る周波数 にっいて 姿勢の影 響を考慮し た体長‑TS の 関 係 式 を 求 め る 必 要が あ る 。本 研 究 では 、38kHzと120kHzの2周 波数 に つ いて 、 実 験的 な 方 法と 理 論的 な 方 法を 併 用す る こ とによ り、姿勢 がTSに及ば す影響およ ぴ体長 とTSの 関係 を 調べ た 。 その 結 果 、キ ュ ウリ エソは 鰾の大き さと形状 の特性から 、38、 120kHzで は 姿 勢 がTSに 及ば す 影響 が 少 ない こ とが 明 ら かと な った 。 ま た、TSの深 度 特性を考 慮した理 論的な方 法により 、本種の生息深度帯別の体長‑TSの関係式を求めた。

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童饗的主法によるモニタリングの盤題@二麁重判別

  実際の調査から得られた音響データは、様々な海洋生物からの反射情報を含んでいる ため、対象生物の反射情報を抽出(魚種判別)することが必要となる。本研究では魚群 密度の変化に対応する方法として海中の反射強度の最大値を信号毎に抽出し、その10 分の1の反射強度を閾値として設定する判別方法を考案し、従来の手法と比較・した。そ の結果、本手法は、あらゆる周波数への対応が可能であり、異なる海域や季節において 使 用 す る の に 適 し て い る 点 で 従 来 の 方 法 よ り 優 れ て い る と 判 断 さ れ た 。

隠岐釐豊屈塑塰壇!三韮けるキュウリエソ堕金査盤性

  2000〜2005年の、主に春季と夏季に隠岐諸島周辺海域のキュウリエソの水平的な分布 特性を調べた結果、両季節に共通して、隠岐諸島の東側の分布密度は、西側に比べて 高かった。また、.沿岸と沖合の分布には明確な季節変化がみられ、春季は沿岸に集中、

夏季は沿岸から沖合に魚群が広く分散した。

  隠岐諸島東海域では、2000〜2002年の春季、夏季および秋季のデータを用いて昼夜の 鉛直分布特性を調べた。この結果、夏季と秋季は夜間の分布深度や日中より浅くなる日 周鉛直移動(Diurnal Vertical Migration: DVM)が確認された。ただし、春季には浅い水 深帯でDVMが無いパターンが見られた。

旦杢塰QキュウリエZ堕資懣量

  春季にキュウリエソが陸棚上に集中する傾向を利用し、陸棚斜面部で観察された平均 分布密度を用いて、日本海全域の本種の資源量を推定した。この結果、2000〜2005年の キュウリエソの資源量は87〜356万トンと推定された。

  日本海でキュウリエソと同じ栄養段階にある主要生物のカタクチイワシ(Engraulis japonicus)の資源量推定値は、本種と同水準かそれ以下、また、中深層性のマイクロネ クトンであるホタルイカ(Watasenia scintillans)の資源量推定値は、本種の1/10程度で あった。

目杢塰@ EBMにおぃニ玉杢埀のモニタリングを萱弖童董

  日本海南西海域において、1978〜2005年の秋季に得られたキュウリエソの卵出現数を 解析した結果、本種の資源水準が大規模で長期的な変動を示すことが明らかとなった。

本種の資源水準の変動は、他の有用水産生物にも見られ、気候変動に連動した生態系の 状態変化(レジームシフト)に関連したものと考えられる。

  音響的手法により隠岐諸島周辺海域で近年5年に観察したキュウリエソの分布密度の 年変動と水準は、卵の出現傾向と良く一致していた。今後は音響的な手法を用いて、キ ユウリエソの資源量をモニタリングすることにより、生態系の中の種間作用を定量的に 検討やレジームシフトに応じた順応的な管理を実際に行うことが可能になると考えら れる。

  これらの成果に対して審査員一同は申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資 格のあるものと判定した。1193―

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