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論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 教育学 )

氏名 阪上 弘彬 学位授与の要件 学位規則第4条第○1・2項該当

論 文 題 目

ESDの視点を取り入れた地理教育改革-ドイツ地理教育を事例として-

論文審査担当者

主 査 教授 由井 義通 審査委員 教授 下向井 龍彦 審査委員 教授 草原 和博

審査委員 准教授 熊原 康博

〔論文審査の要旨〕

ドイツは「ヨーロッパにおいて ESD(Education for Sustainable Development)の推進が先行 している国のひとつ」(卜部,2011)であり,ドイツの基本法(憲法)のなかには「持続可能性」

の概念が組み込まれている。『トランスファー21』 (2012)は ESD が単に SD の理念と具体像を 教えるだけの教育だけではなく,SD を支えるための行為規範を与える教育であるべきとして,

行動規範を育成する観点から ESD が推進されている。

このようなドイツにおける ESD の展開に対して,本研究は,近年各国で取り組まれる持続可 能な開発のための教育の視点を取り入れた地理教育改革について,ESD 先進国であるドイツ地 理教育における近年の動向を検討し,地理教育改革における ESD が果たす役割並びに ESD の視 点を取り入れたことによる地理教育の変化について明らかにすることを目的とした。

第一章 世界の地理教育改革とESD

第一章では,世界の地理教育における改革の歴史を整理し,地理教育改革におけるESD の位置付けについて明らかにしている。地理教育改革における ESD の位置付けを検討し た結果,ESDは「社会や地球規模の問題に対応するために登場した教育課題」に位置づい ていると指摘できる。また,戦後の地理教育はユネスコとの密接な関係を築き,国際地理 学連合・地理教育委員会(IGU-CGE)は,ユネスコ憲章等の支持やユネスコの国際理解教育 に対して積極的に取り組んできた流れの中で,ESDはユネスコと国際地理学連合が主導し てESDに取り組んできたことを明らかにした。

第二章 国際地理学連合・地理教育委員会による地理教育振興策とESD

第二章では,国際地理学連合・地理教育委員会(IGU-CGE)の地理教育振興策に焦点を当 て,国際的なレベルにおけるESDに対する地理教育の取り組みの指針と,IGU-CGEの活 動に対して積極的な反応を示すドイツ地理教育との関係について明らかにすることを目的 とした。IGU-CGEによるESDに関係の深い「地理教育国際憲章」と「持続可能な開発の ための地理教育に関するルツェルン宣言」の分析から,これらがドイツの地理教育改革と 深い関連があることを明らかにした。この背景には,IGU-CGE の委員長であった H.

Haubrich(フライブルク教育大学)の影響があると考えた。彼は「地理教育国際憲章」の原 案を作成 (中山訳,1993)するとともに,ドイツ国内のカリキュラム作成に関わってきた。

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Haubrich が作成に関わった「地理教育国際憲章」は,同宣言の公表以降ドイツ国内で作 成された地理カリキュラム等において参考,あるいは地理教育の目標として示されている

など,IGU-CGEの活動成果がドイツ地理教育に対して影響を与えていることがわかった。

第三章 連邦レベルにおけるドイツ地理教育の系譜とESDの取り組み

第三章は,連邦レベルのスケールからドイツ地理教育における ESD の実践の背景や要 因について明らかにするとともに,ドイツ地理教育スタンダードの特徴と ESD の関係に ついて明らかにした。地理レールプランの作成に影響を与える教育学と地理学の視点から,

持続可能な開発やESDに対するアプローチや展開・成立について明らかにした。

ドイツでは, ESD 関連の「形成能力(Gestaltungskompetenz)」が規定され,教育改革が 深 く 関 係 し て い た 。 ド イ ツ 地 理 学 で 議 論 さ れ た 「 社 会 ― 環 境 研 究 モ デ ル (Gesellschaft-Umwelt-Forschung)」 や 空 間 の 多 様 な 見 方 ・ 考 え 方 で あ る 「 空 間 概 念 (Raumkonzept)」が,ドイツの地理教育スタンダード中に獲得すべきコンピテンシーの一部と したり,あるいは学習方法として盛り込まれた。

第四章 州レベルの地理教育におけるESD実践の特徴

第四章では,ギムナジウム前期中等地理教育を対象に,州レベルの地理学習における ESD 実践の特徴について明らかにした。独立科としての地理が多いギムナジウムにおい て,PISAショック以降改訂されたレールプラン『教育スタンダード(Bildungsplan)』より,

地理と公民分野が統合した「地理-経済-共同社会(GWG)」が誕生したバーデン=ヴュルテ ンベルク州(以下、BW州とする)の『教育スタンダード』,BW州地理教科書『TERRA GWG Geographie-Wirtschaft Gymnasium Baden-Württemberg』を分析した。その結果,各テ ーマに関連した持続可能な解決策に関して議論するコンピテンシーの育成が目指されてい ることが明らかになった。

終章 地理教育改革においてESDが果たす役割と展望

各章の分析結果から,地理教育改革においてESD が果たした役割として,以下の 3 点 が指摘されている。第一は,ESDは持続可能性に関連するより多くの原則,知識,技能,

洞察力,価値観を取り入れることを求めた点。第二は,地理教育のもつ総合性や学際性の 強化である。地理学の学際性を活用した複数の科学視点から事象にアプローチできた点。

第三は,持続可能な開発に対する地理学の専門的アプローチが議論され,地理教育に反映 された点である。

本論文は,以下の2点で評価できる。

第 1 は,日本では ESDが地理学習で扱う学習内容として位置づけることができるが,

ESDは既存の教育に対して変革を求めており,またESDに取り組む地理教育に対しても 変革を迫っている。本論文は,ユネスコと国際地理学連合との関連でドイツにおける地理 教育の新たな展開を示したことを明らかにした点で高く評価できる。

第 2 は,ドイツにおける連邦レベルと州レベルにおける ESD の取り組みとして,コン ピテンシー育成を目指した地理教育の改革の特徴を明らかにしたことである。

以上,審査の結果,本論文の著者は博士(教育学)の学位を授与される十分な資格があ るものと認められる。

平成 28年 2月 5日

参照

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