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酵素と金属錯体による代謝と代謝モデルの酸化還元 制御

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

酵素と金属錯体による代謝と代謝モデルの酸化還元 制御

竹中, 慎

http://hdl.handle.net/2324/2236193

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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(様式2)

氏 名 :竹中 慎

論 文 名 :酵素と金属錯体による代謝と代謝モデルの酸化還元制御 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

生物の代謝において酸化還元が関わる反応は分岐点となり、正常細胞の機能に影響を与える。代 謝の酸化還元制御は生命制御につながっており、代謝経路を構成する各反応の酸化還元制御につい て検討することは生命制御に関わる知見や技術の獲得につながる。本論文では2つの分岐点に注目 した。分岐点1はピルビン酸の反応である。正常細胞では、ピルビン酸は酸化的脱炭酸反応により 様々な生体物質の前駆体であるアセチル–CoAへ変換される (図 1:A)。一方、がん細胞では、ピル ビン酸から乳酸への還元反応が亢進している (ワールブルグ効果)。このことから、ピルビン酸の酸 化反応は生命制御において非常に重要である。この酸化反応で生成するアセチル–CoA は、有用生 体物質生産や代謝関連の研究分野で需要があるため、有機合成化学的・生化学的手法によるアセチ ル–CoA 合成に関する研究が行われている。分岐点 2 は、電子伝達系における酸素分子の還元であ る。酸素分子の4電子還元では水が生じるが、不十分な還元では活性酸素種 (Reactive Oxygen Species,

ROS) が生じる。活性酸素種である過酸化水素が鉄イオンと反応して (フェントン反応) 生じるヒド

ロキシルラジカルはRNAや DNAといった核酸を酸化し、ガンや老化など疾病の原因となる。錯体 化学の分野では、金属イオンと過酸化水素によるフェントン反応で生じるヒドロキシルラジカルを 活性種とした RNA・DNA の酸化反応について多数報告されている。一方、生体内に存在している 金属イオンと酸素分子の反応によって生じる金属結合型酸素活性種も、RNAや DNAの酸化に関与 していると考えられるが、研究例が非常に少なく、より詳細な研究が必要である (図 1:C)。また、

8–オキソグアニンのような酸化型核酸塩基の還元反応を検討することは、RNAや DNAの酸化的損 傷に対する新たな修復機構開発への知見の獲得につながると考えられる (図 1:D)。本論文では、

酵素と金属錯体による代謝と代謝モデルの酸化還元制御を検討し、新たな技術や知見の獲得を目的 とした。具体的には、Citrobacter sp. S-77由来ピルビン酸–フェレドキシン酸化還元酵素 (PFORS77) の固定化と酸化的脱炭酸反応制御によるアセチル–CoA生成反応 (第2章:酵素による代謝の酸化反 応制御)、水中でのルテニウムペルオキソ錯体を介した酸素分子によるグアノシン一リン酸の酸化反 応制御 (第3章:金属錯体による代謝モデルの酸化反応制御)、金属錯体による酸化型核酸塩基の還 元反応制御 (第4章:金属錯体による代謝モデルの還元反応制御) を行った。

第 2章では、ピルビン酸の酸化によるアセチル–CoA の生成反応 (図 1:A) を利用した新しいア セチル–CoA合成法を開発した。この反応を触媒する新規ピルビン酸–フェレドキシン酸化還元酵素 (PFORS77) を細菌 Citrobacter sp. S-77から単離・精製した。ハイドロキシアパタイト粒子とアルギン 酸ハイドロゲルを用いて PFORS77を固定化した。作製した固定化 PFORS77はピルビン酸の酸化的脱 炭酸反応によるアセチル–CoA生成反応を触媒でき、触媒回転頻度 (kcat) は 37 s–1であった。固定化 することで、触媒の繰り返し利用が可能となり、10回使用時でも初期活性の68%を維持した。

第 3章では、酸素分子を活性化できるルテニウム錯体[RuII5-C5Me5)(bpy)(H2O)]+による、水中で

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のグアノシン一リン酸の酸化反応 (図 1:C) について詳細に評価した。ルテニウム錯体は酸素分子 を活性化し、ペルオキソ錯体[RuIV2-O2)(η5-C5Me5)(bpy)]+を生じた。このペルオキソ錯体について は X 線結晶構造解析に成功した。また、このペルオキソ錯体は、水中で RNAの構成成分であるグ アノシン一リン酸を8–オキソグアノシン一リン酸に酸化した。酸化生成物については、高速液体ク ロマトグラフィー分析、1H NMR測定、ESI質量分析、同位体ラベル実験で詳細な評価を行った。

第4章では、金属錯体を用いて、酸化型核酸塩基 (8–オキソグアノシン) の還元反応 (図 1:D) ついて検討した。水素と反応してヒドリド錯体を形成するルテニウム錯体と8–オキソグアノシンの 反応を検討し、目的の還元生成物であるグアノシンの検出を試みたが、反応の進行は確認できなか った。これまでの研究で8–オキソグアノシンの還元反応についての報告がないことから、市販の還 元試薬を用いた反応についても検討した。市販の還元試薬のうち、ボランジメチルスルフィド錯体 を用いた反応条件では、目的とするグアノシンとは異なるが何らかの反応生成物が確認できた。

本論文では、第 2 章においてピルビン酸の酸化によるアセチル–CoA の生成反応を触媒する酵素 PFORS77を利用した新しいアセチル–CoA合成法を開発した。本研究はPFORを固定化し、アセチル –CoA合成へ応用した初めての例であり、アセチル–CoA 合成に関する研究分野に対し、新たな可能 性を提示できた。第3章では、酸素分子由来の金属結合型酸素活性種による核酸塩基の酸化反応を、

活性種であるペルオキソ錯体の単離や酸化生成物の検出、同位体ラベル実験によって初めて詳細に 評価した。得られた知見は、これまで十分に検討されていなかった金属結合型酸素活性種による RNA・DNAの酸化反応に関する研究領域の進展に寄与するものである。第4章ではルテニウムヒド リド錯体や市販の還元試薬を用いて、酸化型核酸塩基である8–オキソグアノシンの還元反応の検討 を行ったが、目的の還元生成物であるグアノシンは確認できなかった。今後、今回用いた錯体より も還元力の強い錯体の使用や、還元試薬の検討によって反応の基礎的な知見が得られる可能性があ る。このように本研究を通して得られた成果が、代謝の酸化還元制御に関わる研究領域の今後の進 展に寄与し、生命制御に関わる新たな技術の開発や知見の獲得につながっていくことを期待する。

Mn+2 O O O O O

O OH

OH

O O

OH

A

O HO

HO

OH OH OH

解糖系

ピルビン酸

SCoA O

アセチル–CoA

O2 H2O TCA回路

乳酸

NH N HN

O

NH2 NR

NH O N N

O

NH2 NR

H

グアニン 8–オキソグアニン ピルビン酸が配位した

金属結合型酸素活性種

B

O2 + Mn+

C D

RuII+ H2 RuII–H

グルコース

ATP

分岐点1

分岐点2

O2 ROS(•OH) ADP

電子伝達系

RuIV O RuII+ O2 O

酸化反応 還元反応

第2章:酵素による代謝の酸化反応制御

第3章:金属錯体による代謝モデルの酸化反応制御 第4章:金属錯体による代謝モデルの還元反応制御

A C D

図1. 本論文の概略図. 酵素による代謝の酸化反応制御 (A:第2章)、金属錯体による代謝モデルの 酸化反応制御 (C:第3章)、金属錯体による代謝モデルの還元反応制御 (D:第4章).

参照

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