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監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを 許さなければならないと命ずる審判に基づく間接強 制の可否

著者 池田 愛

雑誌名 同志社法學

巻 66

号 2

ページ 485‑517

発行年 2014‑07‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014660

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    同志社法学 六六巻二号二八三四八五

最高裁判所平成二五年三月二八日第一小法廷決定(平成二四年(許)第四八号間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)民集六七巻三号八六四頁、判例時報二一九一号三九頁、判例タイムズ一三九一号一二二頁︱抗告棄却︹確定︺

             

【事実】

  夫Xと妻Yは平成一六年五月に婚姻の届出をし、平成一八年一月に長女Aをもうけたが、平成二二年一一月に、Xと

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   同志社法学 六六巻二号二八四 四八六

Yを離婚し、Aの親権者をYとする判決が確定した。

  平成二四年五月、札幌家庭裁判所において、Yに対し、面会交流要領(以下﹁本件要領﹂という)のとおり、XがAと面会交流をすることを許さなければならないとする審判(以下﹁本件審判﹂という。)がなされ、同年六月に確定した。本件要領には、①面会交流の日程等について、月一回、毎月第二土曜日の午前一〇時から午後四時までとし、場所は、Aの福祉を考慮してX自宅以外のXが定めた場所とすること、②面会交流の方法として、Aの受渡場所は、Y自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が整わないときは、JR某駅東口改札付近とすること、Yは、面会交流開始時に、受渡場所においてAをXに引き渡し、Xは、面会交流終了時に、受渡場所においてAをYに引き渡すこと、Yは、Aを引き渡す場面のほかは、XとAの面会交流には立ち会わないこと、③Aの病気等やむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は、XとYは、Aの福祉を考慮して代替日を決めること等が定められていた。

  Xは、平成二四年六月、Aと面会交流をすることを求めたが、Yは、Aが面会交流に応じないという態度に終始していて、Aに悪影響を及ぼすとして、XがAと面会交流をすることを許さなかった。

  そこでXは、平成二四年七月、札幌家庭裁判所に対し、本件審判に基づき、Yに対し本件要領のとおりXがAと面会交流をすることを許さなければならないと命ずるとともに、その義務を履行しないときはYがXに対し一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申立てをした。これに対し、Yは、AがXとの面会交流を拒絶する意思を示していること等から、間接強制決定は許されない等と主張している。

  札幌家裁(札幌家裁平成二四年九月一二日決定民集六七巻三号八八〇頁)は、本件要領は、面会交流の内容を具体的に特定して定めており、また、Aが面会交流を拒絶する意思を示しているという事情は、請求異議事由あるいは審判後の変更事情として主張すべきものであるにすぎないから、右事情をもって間接強制をすることになじまない事情となる

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    同志社法学 六六巻二号二八五四八七 ことはない等として、Yがその義務を履行しないときは、不履行一回につき五万円の割合による金員をXに支払うよう命ずる間接強制決定をした。

  原審(札幌高裁平成二四年一〇月三〇日決定民集六七巻三号八八四頁)も、札幌家裁の判断を支持して間接強制を認めたため、Yがさらに許可抗告の申立てをしたところ、最高裁は、次のように述べてYの抗告を棄却した。

【決定要旨】﹁⑴  子を監護している親(以下﹁監護親﹂という。)と子を監護していない親(以下﹁非監護親﹂という。)との間で、非監護親と子との面会交流について定める場合、子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法七六六条一項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する(平成二三年法律第五三号による廃止前の家事審判法一五条)。監護親に対し、非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

  そして、子の面会交流に係る審判は、子の心情等を踏まえた上でされているといえる。したがって、監護親に対し非

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   同志社法学 六六巻二号二八六 四八八

監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、これをもって、上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し、又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別、上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。

  ⑵  これを本件についてみると、本件要領は、面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法の定めによりYがすべき給付の特定に欠けるところはないといえるから、本件審判に基づき間接強制決定をすることができる。Y主張の事情は、間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。﹂

【研究】

一  本件最高裁決定の意義   本件最高裁決定は、最高裁として初めて面会交流を命ずる審判に基づく間接強制を認めたものである。最高裁は、本件の他に同日なされた二件の決定を通して、いかなる場合に間接強制を認めることができるのかについて一定の方向性を示しており、中でも従来から議論のあった、面会交流の内容が具体的にはどの程度特定されていれば間接強制をすることができるのかという特定性の問題について、明確な基準を示した点に実務上重要な意義がある。

  また、債務者(監護親)による、子が面会交流を拒絶していることを理由に間接強制決定は許されないという主張に対して、本決定は、子の拒絶意思が間接強制を妨げる理由にはならないこと、もし審判時と異なる事情が生じている場合は、事情変更による取消し・変更の申立て理由となることを判示しており、間接強制決定手続における子の拒絶意思

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    同志社法学 六六巻二号二八七四八九 の取扱いを明らかにした点も注目されるところである。

二  問題の所在   一般に、親権者・監護者でないため、子を現実に監護教育できない親が、その子と会ったり、手紙や電話で交流することを面会交流 1

という。面会交流の権利性やその法的性質に関しては未だに争いがあるが、平成二三年の民法改正 2

により、民法七六六条一項に面会交流が子の監護に関する処分の対象として明文化されたこと、及び従前の実務上の運用と前記の民法改正を踏まえて、家事事件手続法一五四条三項が、子の監護に関する処分の審判において定めることのできる事項として、面会交流を新たに例示として掲げることになったこと 3

から、これが審判の対象となることについてはもはや異論のないところとなっている 4

。そして、主文において給付を命ずる審判には、家事事件手続法七五条により、執行力が認められている。

  そこで、面会交流事件において、執行との関係では、第一に、監護親に対し非監護親と子との面会交流を命じた審判に基づき、そもそも強制執行をすることが許されるのかが問題となる。ここでは特に、面会交流義務が、例えば夫婦の同居義務のように、その性質上強制執行に親しまないものにあたるのではないかということが争われている。

  第二に、仮に面会交流事件における間接強制が性質上許されないものではないとすると、いかなる場合に間接強制が認められるのかが問題となる。当然、強制執行をするにあたっては債務名義が必要となるが、一般に債務名義の要件としては、民事執行法二二条各号に掲げられた文書に該当することのみでなく、(ⅰ)給付命令又は給付意思が表示されていること、及び(ⅱ)給付内容が特定されていること等の実質的要件を満たすことが必要であると解されている 5

。こ

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   同志社法学 六六巻二号二八八 四九〇

の二つの実質的要件に関して、面会交流事件においては、以下のような問題が議論されている。

  まず、(ⅰ)の要件は、債務名義性を認めるために給付条項を必要とするものであり、例えば﹁五〇〇万円を支払う義務があることを認める﹂とか﹁別紙物件目録記載の土地を明け渡す義務があることを認める﹂といったいわゆる確認条項では、強制執行をすることができないと解されている 6

。面会交流調停の実務では、﹁面会交流を認める﹂といった文言が一般的に用いられているが、このような文言を給付条項と解して間接強制をすることができるのか、それとも、給付条項にあたるというためには、﹁⋮と面会させる﹂等という文言でなければならないのかということが問題となる。

  次に、(ⅱ)の要件は、給付内容の特定性を要求するものであるが、面会交流の内容について、具体的にはどの程度の特定がなされていれば、この要件を満たすのかが問題となる。

  第三に、面会交流事件では、しばしば本件のように、債務者(監護親)側が﹁子が面会交流を拒絶していること﹂等を理由に、間接強制は許されないと主張することがある。それゆえに、﹁子の拒絶意思﹂を、執行手続との関係でどのように扱うのかということが問題となる。

  そもそも間接強制を発令するためには、債務者自身の意思のみで履行することができる債務であることが必要であるとされ、第三者の協力、同意を要し、債務者の意思では排除することができない事実上の障害のある債務は、間接強制の対象とすることができないと解されている 7

。このことから、子の拒絶意思は、債務者自身には取り除けない障害に当たり、債務名義上の債務は、債務者が自己の意思のみでは履行することのできない債務となるのではないか、すなわち、子の拒絶意思が、間接強制を否定する理由となるか否かが問題となりうる。

  さらに、この問題を否定的に解し、子の拒絶意思それ自体では間接強制を否定する理由にならないとするにしても、子が面会交流を拒絶していることやその他の事情を総合的に考慮して、間接強制によってこれを心理強制することが﹁子

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    同志社法学 六六巻二号二八九四九一 の福祉に反する﹂場合は、間接強制を拒むことができる﹁正当の理由﹂があると解するのが一般的である。そうであるとすると、次に、﹁子の福祉に反する﹂という事情を、どの手続において主張することができるのか︱︱請求異議の訴えによるべきか、間接強制決定手続においても主張することができるのか、もしくは単に事情変更による再調停・再審判が許されるだけか︱︱が問題となる。

  以下では、本決定の研究の前提として、上記の三つの問題を順に、(一)強制執行の可否、(二)間接強制(債務名義性)の要件、(三)子の拒絶意思と子の福祉の取扱いと題し、各問題に関する従来の学説及び裁判例を概観した後に、本決定及び本決定と同日になされた他の最高裁決定を分析することによって、最高裁の立場を検討することとしたい。

三  従来の学説と裁判例   (一) 強制執行の可否   面会交流に係る強制執行がそもそも許されるのかという問題について、まず直接強制は、面会交流では基本的には反復継続する子の引渡しが問題となり、直接強制の反復は子の福祉に反する苛酷な執行になる可能性が高いとして、許されないとするのが学説上多数である 8

  ところが間接強制については、これを肯定する説が有力となっている 9

。特に実体法における議論においては、面会交流の権利性と間接強制の可否を結びつけて考えることが多く、面会交流の権利性を肯定する見解 ₁₀

は、家庭裁判所の審判または調停によって、この権利の行使方法が定められたのに、当事者がこれに従って子を面接させない場合には、間接強制ができると解している ₁₁

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   同志社法学 六六巻二号二九〇 四九二

  これに対して、面会交流に係る間接強制を否定する見解もある ₁₂

。例えば、梶村弁護士は、従来から、﹁親と子の面接交渉は、関係者の任意の意思と協力の下に実行されてこそ、子の利益に合致することが可能となるものであって、法の権威や強制装置を駆使して強制的に実行させるべき性質のものではない﹂と述べて、間接強制を否定されてきた ₁₃

。ただし、近時公表された論文において、﹁債務者側や子どもの事情等から考えて、間接強制してでも面会交流を実現することが子の利益に適う特別の事情がある場合﹂には、極めて例外的に間接強制も許されるとして、改説されるに至っている ₁₄

  下級審裁判例は、結論として間接強制を肯定したもの(①大阪高裁平成一四年一月一五日決定家庭裁判月報五六巻二号一四二頁、②神戸家裁平成一四年八月一二日決定家庭裁判月報五六巻二号一四七頁︹①の差戻審︺、③大阪高裁平成一五年三月二五日決定家庭裁判月報五六巻二号一五八頁︹②の再抗告審︺、④高松家裁平成一四年六月二五日審判家庭裁判月報五五巻四号六九頁︹⑩の原審︺、⑤大阪高裁平成一九年六月七日決定判例タイムズ一二七六号三三八頁、⑥岡山家裁津山支部平成二〇年九月一八日決定家庭裁判月報六一巻七号六九頁、⑦甲府家裁平成二三年一〇月一九日決定家庭裁判月報六四巻八号六七頁︹⑧の原審︺、⑧東京高裁平成二四年一月一二日決定家庭裁判月報六四巻八号六〇頁)と、否定したもの(⑨神戸家裁龍野支部平成一三年一二月七日決定家庭裁判月報五六巻二号一四四頁︹①の原審︺、⑩高松高裁平成一四年一一月一五日決定家庭裁判月報五五巻四号六六頁、⑪東京高裁平成一八年八月七日決定判例タイムズ一二六八号二六八頁)があるが、間接強制を否定した事例のうち、純粋に間接強制それ自体が許されないとしたのは、⑨神戸家裁龍野支部平成一三年決定だけであることから ₁₅

、面会交流につき間接強制が許されることは、高裁レベルではほぼ確立していたと見ることができる ₁₆

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    同志社法学 六六巻二号二九一四九三

在(存の項条付給) ⅰ   (義性二の要件名務債(制強接間) ) るいてし定肯 ₁₇ 付おり、て条項としれて確さ定規に意明つか的体具て合給さでれ制強接間てしと。﹂るあをかあらものでたるとは明こ (停条項項第五)をる全調接す関に渉交面の停調件本と体、し、いてに法方の接面日接面つ間面時みば、れ接の頻度、 強と接間てと。﹂るれさ解条るまどとに項認確くなはを制し否高定、﹁は定決年九一成平裁⋮阪、⑤てし対にれこ。た大し きれるべるものであがかさ確現表たしに明を思付給、のら意特停段で項条付給は項第項条二調なの記情の事い限り、上 を文套常の合場るす示表が項条認確に合場るれさ成作で言仮あれ等﹄りせさ接面﹃然当ばるあ条で、給付に項とするの い現は、裁判所にお和て調停条項や解条項の表とで調﹄ものある。﹂としたで、﹁⋮同上停てめ認条るい﹃れ使さで項用 内く載記の体全項条停調、っなはでのもるま決てよにを容しも言参べす断判に的観客らかき文当のつつ、酌該停条項調 あ付条で、るか権利た義給意し現表を思付給の者事当の務項確か認意の心内の者事当、は思るるあとどまに確条項で認 肯強制をた定し例が間あ接項てし。解と条付給もてっある、﹁ま決、が項条停調あ⋮は定る年高四⑩高松、裁平成一ず 文いはと項条付給はで言審のと﹂るめ認、﹁は例判裁なえたい、﹁下で言文のと﹂るめ認とと例し定否を制強接間てし級   ﹁、言項条付給、もてっあで文解のと﹂るめ認を流交会としききつに題問ういとかのるでてがとこるすを制強接間面

  ただし、⑩決定も﹁特段の事情のない限り﹂と付言していることから、逆に﹁特段の事情﹂があれば、﹁認める﹂との文言であっても給付条項と解する余地があることを容認するものと評価することができる。したがって、下級審の間では、﹁認める﹂との文言が用いられている場合にいかなる条件でこれを給付条項と解するかという点は不統一であるにせよ、給付条項と解する余地を全く認めないわけではないという点では一貫していたのではないかと解される。

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   同志社法学 六六巻二号二九二 四九四

  このような裁判例の状況下で、学説上は、否定説と肯定説に分かれていた。否定説は、給付条項の要件としては、給付意思が直接的に表現されていることを要すること ₁₈

、民事訴訟の和解調書作成実務及び執行実務においては、単に義務を﹁認める﹂と記載した条項は給付条項にはあたらないと考えられていること、さらには、﹁認める﹂との条項は強制執行は認めないという趣旨をはっきりさせた条項であると解することもできること ₁₉

等を根拠とする。

  これに対して、肯定説は、﹁認める﹂という文言が広く使用されてきたのは、実際に権利者と面会交流するのは義務者(監護親)ではなく未成年者であることと、義務者(監護親)はその実現に協力する・実現を許容する立場にすぎないことに配慮したためであって、積極的に確認条項とする(間接強制はしない)という意思でこの文言を用いているわけではないと考えられること ₂₀

、そもそもある和解条項・調停条項等を債務名義と認めるか否かの解釈の場面では、文言のみに拘泥せず、一般の法律解釈の基準に従い、和解条項・調停条項全体の趣旨に照らして解釈されるべきものであること ₂₁

から、﹁認める﹂という表現の場合であっても、給付文言の趣旨で用いられたと解釈して、執行力を認める余地があるとする。より具体的には、調停条項を全体としてみれば、監護親がなすべき面会交流の義務内容ないしその方法が客観的に見て十分に特定されている場合に、給付条項と解するようである ₂₂

(ⅱ) 特定性

  間接強制を認めるために、面会交流の内容が、具体的にどの程度特定されていればよいのかという問題を検討するにあたっては、権利の内容が具体的に特定して表示されていないと、債務者としてはどうすれば間接強制を免れることができるか予測ができず、債務者に酷となりうるという面と、面会交流の性質上、その内容については抽象的にならざるを得ず、むしろ未成年者の福祉や当事者の利益の観点からはできる限り固定される内容を少なくし、当事者の選択や協

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    同志社法学 六六巻二号二九三四九五 議に委ねる部分のある方が望ましいという面の、相対立する二つの面に配慮する必要があり、議論が錯綜しているところである ₂₃

  なお、特定性の要件としては、面会交流の頻度、日時、一回あたりの時間、場所、子の引渡しの方法(開始時刻・終了時刻、子の引渡しの場所)のうち、最低限何が定められていればよいのかという特定性の要素に加えて、それがどのように定められていれば特定されているといえるのか(例えば、﹁○回程度﹂とか﹁日時については当事者が事前に協議する﹂といった幅のある定め方でもよいのか、それとも詳細に決めておく必要があるのか)という特定性の程度が論点となるであろう。

  学説上、最低限必要な特定性の要素については、面会交流の権利者、義務者、子、時期及び回数を必要とする者 ₂₄

、履行の終期と頻度が明確になっていればよいとする者 ₂₅

、面接の頻度、時間及び時間帯、面接日を含む面接の方法等を含んでいれば足りるとする者 ₂₆

、面会交流の回数、日時︹代替日︺、場所、子の受渡しの時間、場所、方法等の定めを必要とする者 ₂₇

、面接の頻度、時間、場所、子の受渡し等が特定されていればよいとする者 ₂₈

等様々であり、特定性の要素について確立した基準は提示されていないといえる。

  これに対して、例えば下級審裁判例では、特定性を肯定し(あるいは特に特定性を問題とすることなく)間接強制を認めた事例として、﹁頻度、日時、引渡しの方法(引渡場所、引渡しの日時の指定もあり)﹂について定めのある調停条項の事例(①大阪高裁平成一四年決定、②神戸家裁平成一四年決定、③大阪高裁平成一五年決定)、﹁頻度、一回あたりの時間、面接日、引渡しの方法(ただし、引渡場所、引渡しの日時の指定はなし)﹂について定めのある調停条項の事例(⑤大阪高裁平成一九年決定)、﹁頻度、場所、時間(開始時刻及び終了時刻)、面接日時場所の指定方法(債権者から求められたときは債務者が少なくとも二週間前までに指定すること)、引渡しの方法(ただし引渡場所、引渡しの日

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   同志社法学 六六巻二号二九四 四九六

時の指定はなし)﹂について定めのある審判の事例(⑥岡山家裁津山支部平成二〇年決定)、﹁場所、回数、日時、一回あたりの時間、引渡しの方法(引渡しの場所、日時の指定もあり)﹂について定めのある審判の事例(⑦甲府家裁平成二三年決定、⑧東京高裁平成二四年決定

)

がある。

  このうち、⑤大阪高裁平成一九年決定では、時間に関して、一回一〇時間﹁程度﹂、面接日に関して、土曜日﹁又は﹂日曜日、引渡しの方法に関して、﹁当分の間﹂という、﹁幅のある定め﹂方がなされていたが、特定性が肯定されている。また、⑥岡山家裁津山支部平成二〇年決定では、場所に関して、﹁岡山県○○市及びその周辺において、債務者が指定する場所﹂、⑦甲府家裁平成二三年決定及び⑧東京高裁平成二四年決定では、場所に関して、﹁○○市及びその周辺とし、相手方︹執筆者注:非監護親︺は、抗告人︹執筆者注:監護親︺に対しあらかじめ具体的な面会交流の場所を知らせる﹂、日時に関して、﹁土曜日の午前一〇時から午後四時までの間の二時間とし、具体的な日及び時間帯は、当事者が協議して定める﹂という﹁幅のある定め﹂方がされていたが、特定性は問題視されなかった。

  これに対して、⑪東京高裁平成一八年決定は、頻度を﹁月二回程度﹂、日時、場所、方法については﹁事前に協議しなければならない﹂と定められていた事例において、﹁面接の回数については﹃月二回程度﹄と記載されていて、回数自体、未だ確定されておらず、面接の具体的日時、場所、方法について事前に協議しなければならないとされているのであり、具体的に債権者が二人の子らと面接交渉をする具体的日時、場所、方法(一回あたりの時間、開始時刻・終了時刻、子らの引き取り、引き渡しの場所。宿泊を伴うか否かを含む。)など面接交渉を実施するために決定しておくことが必要な事項の詳細は特定されていない。﹂として、間接強制を否定している。

  これらを総合すると、下級審における一応の指針として、特定性を肯定するための要素については、最低限﹁頻度、日時、引渡しの方法﹂の定めを要求するものと解される。一回当たりの時間については、引渡しの日時の指定があれば

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    同志社法学 六六巻二号二九五四九七 これに関する定めがなくてもよいとされる可能性があり(①大阪高裁平成一四年決定等を参照)、面接場所(①大阪高裁平成一四年決定等、⑤大阪高裁平成一九年決定を参照)や引渡しの場所、日時(⑤大阪高裁平成一九年決定、⑥岡山家裁津山支部平成二〇年決定を参照)は指定がなくてもよいとされる可能性がある。

  さらに、特定性の程度については、頻度に関しては、﹁○回程度﹂という幅のある定め方では特定性を否定するが、日時、場所、時間、引渡しの方法に関しては、指定方法が定められていれば、﹁幅のある定め方﹂でも特定性を肯定する傾向にあるといえる ₂₉

。ただし、その指定方法が、﹁当事者の協議による﹂とされている場合において、⑦甲府家裁平成二三年決定及び⑧東京高裁平成二四年決定は特定性を肯定し、⑪東京高裁平成一八年決定は、特定性を否定しており、どのように扱うのかは下級審の間でも統一されていなかったようである ₃₀

  (子扱取の祉福のと三思意絶拒の子) い   子の拒絶意思が、間接強制を否定する理由となるのかどうかという問題を論じた文献はごくわずかのようであるが、債務名義として面会交流認容の審判または調停調書が作成されているということは、未成年者が面接を嫌がるとしても親権者の指導によってその意思を覆させることが可能である旨の債務名義作成機関の判断があることを意味するとの理解に基づき、間接強制を否定する理由とはならないと解する見解が主張されている ₃₁

  下級審裁判例の中にも、子の拒絶意思は間接強制を否定する理由とはならないと解したものがある。⑦甲府家裁平成二三年決定は、未成年者の拒絶と医師の診断を理由として、面会交流をしなくても債務不履行にはならないと主張する債務者に対し、﹁債務者があげる事由は、そもそも本件間接強制申立ての却下を求める理由とはならない。﹂と判示した。それに加えて、面会交流を命じた決定は、﹁未成年者が債権者との面会に明確に拒否的であることも十分にふまえたも

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   同志社法学 六六巻二号二九六 四九八

のであり、したがって、そのような未成年者に働きかけて債権者に対する拒否的感情を和らげ、円滑に未成年者単独での面会交流を実現させることをも債務者に命じているものと解すべきところ﹂、債務者はそのような義務を十分に尽くしているとはいえないとして、債務者の債務不履行を認定している ₃₂

  ただし、学説や下級審裁判例のように、子の拒絶意思それ自体では間接強制を否定する理由にならないと解するとしても、その他の事情も総合的に考慮して、面会交流を強制することが﹁子の福祉に反する場合﹂には、間接強制を拒むことができる﹁正当の理由﹂となる。そこで、﹁子の福祉に反する﹂という事情を、どの手続において主張することができるのかがさらなる問題となることは、前述したとおりである。

  学説上、事情変更による再調停・再審判が認められうることについては異論がないことから、ここでの争点は、事情変更による再調停・再審判の他に、請求異議の訴えによることもできるのか、さらには間接強制決定手続においても主張できるのかという点となる ₃₃

。有力説は、子の福祉に反するという主張を、債務名義成立後の事情変更の主張であると解して、これを請求異議事由と捉え、間接強制決定手続で審理判断することはできないとする ₃₄

。これに対して、少数ではあるが、両手続における主張を認める見解も存在する ₃₅

。右見解の根拠としては、法律も審尋内容に別段の制限を設けていないことや、間接強制手続も第一審の受訴裁判所の管轄に属する以上、請求異議の提訴をまつ意義は少ないこと ₃₆

、代替執行や間接強制が問題となる状況においては、﹁実現されるべき請求権やとりうる(とるべき)措置の多様性・可変性に鑑みれば、債務名義上示された権利・義務に関する判断はいわば中間的なものに過ぎないと言うことができる﹂ため、執行文付与の訴えの場合とは異なり、執行手続内でなおその判断に新たな事情を加えて判断を更新し直す余地があること ₃₇

等が挙げられている。

  下級審裁判例には、まず﹁⋮家庭裁判所の調停又は審判によって、面接交渉権の行使方法が具体的に定められたのに、

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    同志社法学 六六巻二号二九七四九九 面接交渉義務を負う者が、正当の理由がないのに義務の履行をしない場合には、面接交渉権を行使できる者は、特別の事情がない限り、間接強制により、権利の実現を図ることができるというべきである︹下線は執筆者による︺﹂としたものがある(①大阪高裁平成一四年決定)。①大阪高裁平成一四年決定の差戻審である②神戸家裁平成一四年決定によれば、ここにいう﹁正当の理由﹂とは、﹁例えば、監護している子が面接交渉権利者である実親に対し、その従前の養育態度などに起因する強い拒否的感情を抱いていて、面接交渉が、子の情緒的混乱を生じさせ、子と監護者実親との生活関係に悪影響を及ぼすなど、子の福祉を害する恐れがあるといった、主として子及び監護者実親の側における、間接強制を不相当とすべき諸事情をいうもの﹂であるとされる。他方で、﹁面接交渉権利者である非監護者実親が、間接強制を求めることが許されない﹃特別の事情﹄とは、例えば、非監護者実親の面接交渉が、もっぱら監護者実親に対する復縁を目的とするものであるとか、その方法、手段が不適当であるなど、面接交渉が権利の濫用に当たるといった、主として非監護者実親の側における、間接強制を不相当とすべき諸事情をいうもの﹂と解されている。

  そして、②神戸家裁平成一四年決定は、間接強制の発令にあたって、﹁正当の理由﹂﹁特別の事情﹂についても審理し、いずれも存在しないと判断した。また①大阪高裁平成一四年決定も、これらの事由が間接強制決定手続において審理されることを前提としていると読むことができよう ₃₈

  ところが、②神戸家裁平成一四年決定の再抗告審である③大阪高裁平成一五年決定は、なお書において、﹁抗告人︹執筆者注:義務者︺は、上記義務を履行しないことにつき正当な理由がある旨主張するが、同主張は請求異議の事由として主張し得るにとどまる﹂とし、また、﹁調停成立後の事情の変更により、相手方と未成年者の面接交渉が未成年者の福祉に反するに至ったと主張するならば、本件条項の取消しを求めるべき(調停ないし審判の申立て)である。﹂とした ₃₉

(17)

   同志社法学 六六巻二号二九八 五〇〇

  したがって、下級審において、子の福祉に反する事情の取扱いについては、本決定時には、未だ定まらない状況にあったといえるであろう。

四  論評   (一) 間接強制の可否   本決定は、面会交流を命ずる審判に基づく間接強制について、最高裁として初めてこれを肯定したものである。これは、面会交流について間接強制を認める学説及び下級審裁判例の大勢に従ったものであると評価することができる ₄₀

在(存の項条付給) ⅰ   (義性二の要件名務債(制強接間) )   調停調書において面会交流することを﹁認める﹂との文言が使用されている場合に、これを給付条項と見ることができるかという問題について、本件は、面会交流を命ずる審判がなされていた事例であったため、この点につき判断されることはなかった。

  しかし、最高裁は、同日、面会交流に係る間接強制の可否に関して、本件の他に二件の決定をしており(最一小決平成二五年三月二八日裁判集民事二四三号二六一頁︹最高裁平成二四年(許)第四一号事件(以下﹁四一号事件﹂という)︺、最一小決平成二五年三月二八日裁判集民事二四三号二七一頁︹最高裁平成二四年(許)第四七号事件(以下﹁四七号事件﹂という)︺)、そのうち面会交流を定めた調停調書に基づき間接強制が求められた四七号事件では、当該調停調書に

(18)

    同志社法学 六六巻二号二九九五〇一 おいて、﹁認める﹂との文言が使用されていたにもかかわらず、﹁調停調書において、監護親の給付の特定に欠けるところがないといえるときは、通常、監護親の給付の意思が表示されていると解するのが相当である。﹂との判示がなされている。したがって、最高裁は、﹁認める﹂という文言が使用されていることから直ちに給付条項にあたらないとするわけではなく、これを給付条項と解する余地があることを認めたものと評価することができる ₄₁

。さらに、給付条項を認める具体的な場合として、監護親の給付内容が特定されている場合を挙げていることから、最高裁は、四七号事件において、従来の下級審の間では不統一であった、いかなる場合に給付条項と認めることができるかという点を明らかにしたものといえよう。

(ⅱ) 特定性

  間接強制を認めるためのもう一つの要件である(ⅱ)特定性について、本決定は、﹁面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合﹂に間接強制決定ができると判示しており、その基準を示したものといえる。

  また、同日なされた二件の最高裁決定のうち、四一号事件 ₄₂

は面会交流に係る審判がなされていた事件であり、四七号事件は面会交流することを定めた調停がなされていた事件であるが、両事件とも、特定性の判断にあたっては本決定と同一の基準が用いられている。このことから、最高裁は、特定性の基準について、審判の場合と調停の場合とで特に区別をしないものと解される。したがって、最高裁の立場によれば、最低限必要な特定性の要素として、審判であると調停であるとに関係なく、﹁面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡方法﹂が要求されるということになろう。

(19)

   同志社法学 六六巻二号三〇〇 五〇二

  従来の下級審裁判例の傾向と比較してみると、下級審裁判例では﹁頻度﹂が必ず要求されていたのに比べて、最高裁では﹁頻度又は日時﹂との表現がなされており、日時の定めがあれば頻度の定めは不要であるかのように解される点に若干の違いがある。しかし、この最高裁の判示は、おそらく日時の定めがあればそこから当然頻度も明らかになることを前提とするものであると思われるため、最高裁と下級審とで大きな差異はないといえるであろう ₄₃

  次に、右で示された特定性の要素が、具体的にはどの程度まで定められていればよいのかという、特定性の程度に関する最高裁の立場を検討したい。本件要領では、頻度と日時(さらにここから推測される一回あたりの時間)については具体的に定められていたが、場所については﹁Xが定めた場所(本件要領①を参照)﹂、受渡場所については﹁当事者間で協議して定める(本件要領②を参照)﹂といった、﹁幅のある定め﹂方がなされていた。それにもかかわらず、本件では特定性が肯定されているため、本決定は、下級審裁判例の傾向と同じく、ある程度幅のある定め方でも特定性を認めたものといえる。

  これに対して、四七号事件では、調停条項アにおける、頻度につき﹁二箇月に一回程度﹂、各回の面会交流時間の長さにつき﹁半日程度(原則として午前一一時から午後五時まで)﹂としつつも、﹁最初は一時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。﹂との定めは、﹁それらを必ずしも特定していない﹂と判断されている。また、調停条項イにおいて、引渡方法につき、当面の原則を定めつつも、﹁﹃面接交渉の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間で協議して定める。﹄としていることにも照らすと、本件調停調書は、抗告人と長男との面会交流の大枠を定め、その具体的な内容は、抗告人と相手方との協議で定めることを予定しているものといえる。﹂と述べて、﹁本件調停調書においては、相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえない﹂とした。

(20)

    同志社法学 六六巻二号三〇一五〇三   ここで特定性が否定されたのは、頻度については、﹁○回程度﹂では具体的に何回面会交流をすればよいのか不明確であることを理由とし、時間については、﹁徐々に時間を延ばす﹂という定めでは、その指定方法すら定められたとはいえないためであると思われる。さらに、引渡方法については、当事者間の﹁協議で定める﹂とされていたことから特定性が否定されているが、同じく当事者間の﹁協議で定める﹂とされていたにもかかわらず特定性が肯定された本件と比較すると、本件では協議が調わなかった場合の定めがあるが、四七号事件ではその定めがないという違いがある。

  本決定と四七号事件の判示を総括すると、最高裁は、頻度については、﹁○回程度﹂という定め方ではなく、具体的な実施回数の定めを要求し、その他の項目については、その指定方法が定められていればある程度幅がある定めであっても特定性を肯定するが、指定方法が﹁当事者の協議﹂による場合には、協議が調わなかった場合の定めがないと特定性を否定するものと解される ₄₄

。従来の下級審裁判例においては、指定方法が﹁当事者の協議による﹂とされている場合に、特定性を肯定するか否かで扱いが分かれていたが、最高裁はこの点につき、協議が調わなかった場合の定めがあれば特定性を認めるという方向で、その回答を示したものといえるであろう。

  このように見てみると、最高裁は特定性の程度を厳格に要求するものと思われる。しかしながら、そもそも面会交流については、柔軟に対応できる条項の方が望ましいとされ、抽象的に定められる例が多いこと、調停条項を細部まで定めると硬直的になり過ぎ、かえって実施に当たって障害になり子らの負担や事情変更時の不都合が生ずる可能性があること ₄₅

、それにもかかわらず、間接強制のためにかなり詳細な定めを要するとしてしまうと、柔軟な内容の調停・審判の実施を阻害する恐れがあると思われること等を鑑みると、特定性の程度を厳格に要求するよりも、ある程度抽象的な定めであってもこれを肯定する方向で解釈すべきではなかったかと考える。

  なお、このようなある程度抽象的な定めであっても間接強制が許されるとするための理論構成については、いくつか

(21)

   同志社法学 六六巻二号三〇二 五〇四

の見解が主張されている。例えば、面会交流を命じられた監護親は、﹁非監護親の指定した日時、場所での面会交流を受忍する義務がある﹂と構成する説 ₄₆

や、面会交流事件と生活妨害の差止めの事例の類似性を指摘し、生活妨害の差止めの場合における抽象的な不作為判決に基づく間接強制に関する竹下教授の所説 ₄₇

を参考とする説 ₄₈

等がある。

  この問題は、面会交流義務を実体法上どのようなものと解するのかという問題と深く関係する。本決定では、面会交流を命ずる審判は、﹁少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般であり﹂との判示から、面会交流義務は、子を引き渡すという作為債務と面会交流を妨害しないという不作為債務の両性質を有するものと解されているといえよう。そして、﹁一般であり﹂という表現からは、債務名義の内容に応じて、面会交流義務の内容も変容しうることを認めるものであると解される。

  そこで、面会交流義務は、調停条項や審判において、特定の日時・場所等で子を引き渡すことが定められている場合には、その通りに子を引き渡すという作為債務とこれを妨害しない不作債務ということになるが、例えば面会交流の大枠を定めて、具体的な内容については﹁当事者の協議により定める﹂という幅のある定めがなされている場合には、﹁債務者が相手方と協議して日時・場所等を特定した上で子の引渡し義務を履行する﹂という作為債務とこれを妨害しない不作為債務であると解することも可能なのではないだろうか ₄₉

。このような解釈が可能であるとするならば、債務者が相手方と交渉して特定しようとしないこと自体が債務不履行にあたり、債務者が給付の内容を特定するための期間を付与する意味で、間接強制の開始期間に猶予を設けた上で、間接強制を命じることも許されるのではないかと思われる ₅₀

。また、具体的な内容については﹁非監護親の指定による﹂という定めの場合には、前記の見解のように、債務者は非監護親の指定した方法で面会交流を受忍する義務を負うものと解して、間接強制を肯定することができるものと考える ₅₁

参照

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