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(判時一五〇四号一一九頁、判夕八五七号一〇七頁

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(1)

[判例批評] 自らの行為によって訴えの利益を消滅 させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権 の濫用 : 最高裁平成六年四月一九日第三小法廷判 決(平成五年(行ツ)一八〇号審決取消請求事件)

(判時一五〇四号一一九頁、判夕八五七号一〇七頁

その他のタイトル [Case Note] Saikosaibansho (der Oberste Gerichtshof in Japan), Urt.v.19. 4. 1994, Hanreitaimuzu 857, 107 : Revision und Rechtsmisbrauch (mit Anmerkung)

著者 上野 泰男

雑誌名 關西大學法學論集

巻 45

号 4

ページ 1116‑1136

発行年 1995‑10‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00024589

(2)

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が 訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用

︵平成五年︵行ツ︶一八0

号審決取消請求事件︶

0四号一︱九頁︑判夕八五七号一〇七頁︶

x

︵原告・上告人︶は︑本件特許出願につき拒絶の査定︵特許四九条︶を受けたので︑これを不服として審判の請求︵特許一 二一条︶をしたところ︑審判の請求は成り立たないとする︵拒絶の査定を是認する︶本件審決がなされた︒この審決の取り消し

XY

︵特許庁長官︶を被告︵特許一七九条︶として提起したのが︑本件訴訟である︒原審の東京高裁︵特許一七八

条一項︶は︑平成五年八月一六日︑本件審決を正当としてXの請求を棄却した︒そこで︑Xは︑この判決の言渡し後である同年

九月一日︑自ら本件特許出願を取り下げ︑それによって本件訴訟の訴えの利益が消滅したことを理由に︑訴えの却下を求めて上

(

(3)

書二六九頁、橋本良郎•特許法〔第4版〕(一九九四年

法学書 ︵中山・前掲書一八四頁︑吉藤・前掲 七年以内に誰でもすることができる が特許出願である 発明をした者は特許を受ける権利を原始的に取得し︑この権利を行使して特許庁長官に対し特許査定を求める行為

法概説︹第一0

版 ︺

︵特許三六条一項︒中山信弘・工業所有権法︵上︶特許法(‑九九三年

特許出願により出願が特許庁に係属するが︹なお︑特許出願の審査は︑出願されたものすべてにつき当然に行われる

のではなく︑出願審査の請求をまって行われ︵特許四八条ノニ︶︑この出願審査の請求は︑特許出願のあった日から

(同四八条ノ_―-第一項)。この審査請求制度の趣旨については、吉藤幸朔•特許

有斐閣︶三0四頁︑中山・前掲書ニ︱二頁など参照︺︑特許出願をした者は︑その

自由意思でこの係属を消滅させるため︑特許出願の取下げをすることができる

五四頁、青山紘一•特許法(-九九五年

(

特許出願の取下げ

︻ 判

旨 ︼

の対象となった特許出願自体が初めから存在しなかったことになるのであるから︑特許出願人は︑右審決の取消しを求めるにつ

き法律上の利益を失うに至るものである︒上告人は︑前示のとおり︑原判決の言渡し後に特許出願を取り下げることにより︑自

らこのような状態を現出させた上で︑訴えの利益を失ったことを理由として︑原判決を破棄して訴えを却下することを求めて本

件上告をしたものであるが︑このような上告は上訴制度の本来予定しないところであって︑本件上告は︑上訴権の濫用に当たる

(4)

第四五巻第四号

︱︱七頁︶︒特許出願の取下げは︑性質上︑特許出願が特許庁に係属している間にすることができる

審決謄本がXに送達されたのは︑

では︑特許出願人はいつでも特許出願を取り下げることができることになる︒

(

参照︒なお︑代理人が特許出願の取下げをするには特別授権が必要であり︵特許九条︶︑二人以上の者が共同して特

︵特許一四条︶とされている︺︒そして︑特許出願は︑特許出願につ

き拒絶の査定または審決が確定するまで︹査定または審決送達の日から三0日以内に拒絶査定に対する審判︵実務上

いわゆる拒絶査定不服の審判︶請求または取消訴訟を提起しないと確定する︵特許︱ニ︱条一項・一七八条三項︶参

照〕、または、特許権の設定登録がなされるまで特許庁に係属すると解されているから〔吉藤•前掲書二七0頁、中

山・前掲書一八四頁︑青山・前掲書︱一七頁︒東京高判昭四五・七・九判タニ五六号二八四頁は︑﹁特許出願は︑拒

絶査定が確定するまでまたは特許権の設定の登録がされるまで︑これを取り下げることができると解すべき﹂である

とする︒その事案は次のようである︒Xは︑昭和三六年︱一月ニ︱日︑﹁緩衝体﹂とする発明につき特許出願をした

ところ︑昭和一二八年一月二五日︑拒絶査定を受けたので︑同年三月七日審判を請求したが︑昭和四四年四月ニ︱日︑

Yが﹁本件審判の請求は成り立たない﹂旨の審決をした︒ところが︑Xは︑右審決の翌日である四月二二日︵なお︑

五月一四日であった︶︑本件特許出願を取り下げ︑この取下げにより︑右審決は存

在しなくなった出願を対象とするものとして違法であることを理由に︑本件審決取消訴訟を提起した︒︺︑この時期ま

特許出願の取下げがあると特許出願の係属は消滅する︒その効果は︑原則として将来にむかってのみ生じ︑法律に

特別の規定がある場合に限って遡及効があると解するのが通説であるが︹中山・前掲書一八四頁︑吉藤・前掲書二六

九頁︑橋本・前掲書五四頁など︒特許法上の特別規定として︑先願権の消滅︵︳︱‑九条五項︶︑仮保護の権利の消滅 許出願をしたときは全員でしなければならない 院 ︶

関法二六六

(5)

︵五二条三項︶︑補償請求権の消滅︵六五条の︳︱‑第四項︶などがある︒実務上最も重要なのは先願権の消滅で︑同一

棄と大きく異なる。なお、特許出願の放棄をめぐる問題については、兼子一ほか著•特許法セミナー②出願・審査·

審判・訴訟(‑九七0

︵橋本・前掲書五四頁︶︒特許出願の取下げは︑この点で特許出願の放

五七四頁以下が詳しい︺︑前掲東京高判昭四五・七・九判タニ五六号二八四頁は︑

﹁特許出願が取り下げられたときは︑特許出願は初めからなかったものとみなすべきである﹂とし︑特許法三九条五

0年度重要判例解説︵ジュリスト八六二号︶二三六頁︵二三七頁︶︵一九八六年︶は︑この判旨に賛成するようであ

る︺︒両説の差異は︑例えば︑特許法二九条ノニの規定の適用の有無などの問題に影響を与えることになろう︒特許

法二九条ノニは︑いわゆる防衛出願の必要性を減少させるため︑先願の願書に最初に添付した明細書または図面に記

載された発明または考案については︑当該先願の出願公告または出願公開が︑明細書または図面記載発明または考案

の特許出願の後であっても︑その発明は特許を受けることができないことを規定している︵なお︑出願公告または出

願公開後に明細書または図面記載発明または考案の特許出願があるときは︑新規性がないので︑二九条一項により特

許を受けることができない︶︒特許出願の取下げが︑明文規定のあるときに限って遡及するとの説に従えば︑先願が

出願公告または出願公開後に取り下げられても︑二九条の二第一項の規定の適用は排除されないが︵このように解す

るものとして、吉藤•前掲書二六九頁、紋谷編・注釈特許法七九頁〔紋谷〕、中山信弘編・注解特許法(上)

頁など︶︑東京高判昭四五・七・九の採用する遡及説によれば︑この規定の適用はないことになろう︵もっとも︑ニ

九条の二第一項の規定は︑先願の出願日後出願公告または出願公開前の後願に対して適用があるので︑多くの場合ニ

自らの行為によって脈えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用 項などは﹁その一例を示したものであると解すべきである﹂とする︹木棚照

(

「最判昭六0•三・ニ八解説」昭和六 の発明につき後願を排除する効力が消滅する

(6)

閣 ︶

一般に取消訴訟においては︑訴えの

︵橋本・前掲書一三八頁︶ことになる︹最判平三・三・ニ八判時一三八一号

第四五巻第四号

九条一項の適用があるから︑結果において大差ないであろう︶︒

審決取消訴訟は︑Xが審決の取消しを求める法律上の利益を有する場合に限り︑

青林書院︶︑室井力編・基本法コンメンタール行政救済法二三八頁︹宮崎︺︵一九八六年 拒絶査定に対する審判請求を成り立たないとする審決の取消訴訟係属中︑基本となっている特許出願の取下げがある と︑それは審決取消訴訟の訴えの利益にどのような影響を与えるであろうか︒審決取消訴訟の係属中も︑特許出願や 審判事件そのものは特許庁に係属したままであると解されている

(

0)

いわゆる﹁狭義の訴えの利益﹂が

一五四頁︶︒ところが︑特許出願の取下げにより︑この特許出願の係属は消滅し︑それにともなって審判事件も

対象を失って消滅する

トも︑﹁特許出願の取下げにより出願の係属が解かれ︑出願手続は終了し︑拒絶査定に対する審判請求手続も終了す る︒審判請求不成立とした審決の取消訴訟係属中に特許出願の取下げがあると︑審決は確定しないまま︑失効する︒﹂

と同旨を指摘する︒なお︑前掲東京高判昭四五・七・九判タニ五六号二八四頁は︑﹁本件審決は︑原告の右出願の取 り下げにより︑その効力を失ったことが明らかである﹂と判示する︺︒そして︑

対象となる処分が不存在または無効の場合に訴えの利益がないとされることに争いはないから︵南博方編・条解行政

事件訴訟法(‑九八七年

0五頁︹前田︺︶︑特許出願の取下げにより︑審決取消訴訟はその対象を失い︑

(橋本良郎•特許法〔第4版〕(一九九四年有斐

認められるが︹さしあたって︑遠藤浩也

11

阿部泰隆編・講義行政法

I I

二︱六頁︹阿部︺︵一九八二年 審決取消訴訟の訴えの利益と特許出願の取下げ 関法

(7)

訴えの利益が消滅することになろう〔木棚•前掲昭和六0年度重要判例解説(ジュリスト八六二号)(一九八六年)

二三七頁も同旨である。なお、最判昭六0•三・ニ八判時――五一号―二五頁は、特許出願の明細書の補正却下の決

定に対する審査請求を排斥した審決の取消訴訟係属中に︑特許出願の放棄がなされた場合につき︵東京高裁の請求棄

却判決は昭和五八年三月二四日︑原告が被告である特許庁長官に﹁出願放棄書﹂と題する書面を提出したのは︑昭和

五九年八月二二日であるので︑二週間の上告期間からして︑出願の放棄があったのは上告審係属中であることは明ら

かである︶︑﹁補正却下の決定に対する不服の審判の係属中に特許出願の放棄がされると︑その後は特許出願が係属し

ないことになるので︑右審判は審理の対象を失うものといわなければならない︒したがって︑補正却下の決定に対す

る不服の審判請求は成り立たない旨の審決があり︑その審決に対する取消訴訟の係属中に特許出願の放棄がされると︑

特許出願人は︑右取消訴訟において右審決を取り消す旨の勝訴判決を得たとしても︑補正却下の決定に対する不服の

審判請求を認容する審決を得ることはできないから︑補正却下の決定に対する不服の審判請求は成り立たない旨の審

決の取消を求めるにつき法律上の利益を失ったものというべきである︒﹂と判示し︑原判決を破棄して訴えを不適法

として却下したものである︺︒

この旨を判示する判例として︑前掲の東京高判昭四五・七・九判タニ五六号︱一八四頁︵﹁原告の本件訴は︑既に効

力を失った審決の取消を求めることに帰するから︑法律上の利益を欠くものとして却下を免れない﹂とする︶や︑東

京高判昭五八•四·二八判時一〇七九号八九頁〔商標登録出願の変更により、もとの商標登録出願が取り下げられた

ものとみなされる場合︵商標︱一条四項︶︑もとの商標登録出願についての拒絶査定に対する審判請求を成り立たな

いとする審決の取消訴訟は︑出願取下げの擬制の結果﹁その対象の喪失によって拒絶査定はもとより本件審決も当然

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用

(

)

(8)

第四五巻第四号

~

その効力を失い﹂︑﹁既に効力を失った審決の取消を求めることに帰するから︑本件審決の取消を求めるについて法律

上の利益を欠く」とした〕があった(もっとも、前掲東京高判昭五八•四・ニ八と同様の事例において、東京高判昭

四三・七・一四判タニニ六号一0四頁は︑﹁本件審決は︑結局取下により存在しなくなった登録出願についてなされ

たものとなり︑違法であることに帰着する﹂として︑審決取消請求を認容した︶︒最近︑最高裁判所も︑上告人X

特許出願の拒絶査定に対する審判請求を成り立たずとした審決取消訴訟を提起したが︑平成元年一0月三一日︑原審

の東京高裁は請求棄却の判決をしたので︑Xは︑上告を提起し︑しかも︑平成元年︱二月二二日︑本件特許出願を取

︵この特許出願の取下げは︑上告期間との関係からみて︑上告提起後のことであるとみられる︶という事案

で︑﹁職権をもって調査するに︑上告人は︑本件特許出願における拒絶査定を不服として審判を請求したが︑審判請

求を不成立とする本件審決があったので︑本訴で本件審決の取消しを求めているところ︑記録によれば︑上告人は︑

平成元年︱二月二二日︑本件特許出願を取り下げたことが認められる︒してみると︑上告人は本件審決の取消しを求

めるにつき法律上の利益を失うに至ったというべきであるから︑本件訴えは不適法として却下すべきであり︑これを

適法として本案につき判断した原判決は︑破棄されるべきである︒﹂と判示した︹最判平三・三・ニ八判時一三八一

号一︱五頁︒本件については︑堤龍弥・民商一〇七巻一号一五一頁(‑九九二年︶の研究があり︑また︑判時のコメ

ント︵判時一三八一号一︱五頁︶も︑﹁特許出願の取下げにより出願の係属が解かれ︑出願手続は終了し︑拒絶査定

に対する審判請求手続も終了する︒審判請求不成立とした審決の取消訴訟係属中に特許出願の取下げがあると︑審決

は確定しないまま︑失効する︒したがって︑審決取消訴訟も取消しの対象を失い︑その訴えの利益も失われることに り下げた 関法

0

(9)

最後に︑①②の問題が一般に肯定されるとしても︑本件のように︑Xがその意思に基づいて特許出願を取り下

げ︑それによって訴えの利益が消滅したことを主張して︑訴え却下判決を求めて上告をすることは︑本件判旨がいう

ように︑上告権の濫用にあたるのかが検討されるべきである︒

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用 以下︑順次これら問題を検討することにしたい︒ れるかが︑別途検討されねばならない︒

(2) 

次いで︑仮に①の問題が肯定されたとして︑Xに上告の利益が認められるのかが問題となる︒審決取消請求を

棄却されたXに上告の利益があることは明らかであるが︑

を当然の前提としている︒本件Xのように︑請求認容判決ではなく︑訴え却下判決を求める上告の利益がXに認めら はなく︑上告の利益も否定されざるを得ないからである︒ きるのは︑上告審において︑原審口頭弁論終結後の事情である特許出願取下げの事実を顧慮して︑訴えの利益の有無を判断することができる場合に限られ︑逆にこの問題が否定されると︑上告審でXが訴え却下判決を獲得する可能性

(1) 

訴え却下判決を求めるための上告の利益と上告権の濫用

前述したように︑審決取消訴訟の係属中︑Xが特許出願を取り下げると︑審決取消訴訟は訴えの利益の欠鋏により

不適法となる︒本件において︑Xは︑このような事実を主張して︑訴えの却下を求めるために上告をした︒このX

上告をめぐっては︑次のような問題が生ずることになろう︒

まず第一に︑上告審における訴えの利益の判断の基準時の問題がある︒なぜなら︑Xが訴え却下判決を獲得で

一般に︑それはXが上告をして請求認容判決を求めること

(

(10)

第四五巻第四号

(

訴訟要件は本案判決の要件であり︑本案判決は事実審の口頭弁論終結時の事実資料に基づいてなされることから︑

︵民訴二九条︶︑訴訟要件の存否の判断の基準時もまた︑原則として事実審の口頭

弁論終結時であると解されている︵兼子一・民事訴訟法体系︹増訂版︺︵一九六七年

司・民事訴訟法︵二版︶︵一九八四年︶

0頁︑新堂幸

ところが︑判例は古くから︑事実審の口頭弁論終結後に訴えの利益が消滅した場合︑上告審裁判所はこれを顧慮し原

判決を破棄して訴えを不適法として却下するべきであるとしており︹最判昭二七・ニ・一五民集六巻二号八八頁は︑

村会議員の除名決議取消訴訟︵第一審認容・控訴棄却︶の上告審係属中︑議員の任期が満了したという事案で︑﹁職

権をもって調査するに本件除名当時の村会議員の任期は昭和二六年四月二九日をもって満了しているので︑現在にお

いては︑本件判決を求める実益は失われているものと言わなければならない︒﹂と判示した

あるが︑その実質は不適法却下判決である︶︒その他の判例につき︑竹下守夫﹁訴訟要件をめぐる二︑三の問題﹂司

一頁︵三五頁︶参照︒なお︑最判昭五五・ニ・ニニ判時九六二号五0頁は︑当

事者死亡による当事者能力の欠鋏の場合につき、これを顧慮した〕、先に引用した、最判昭六0•三・ニ八判時一―

五一号︱二五頁︑最判平三・三・ニ八判時一三八一号︱一五頁や︑本件判決もまた︑事実審の口頭弁論終結後の特許

出願の取下げ︵または放棄︶による訴えの利益の欠鋏を︑上告審裁判所が顧慮するべきであるとの立場に拠っている︒

このような判例の立場に触発されて、学説においても問題の再検討の動きがみられる(文献として、竹下•前掲論

文司法研修所論集六五号一頁︑上村明広﹁上告審における訴訟要件﹂小室直人

1 1小山昇先生還暦記念・裁判と上訴 法研修所論集六五号(‑九八0

I)

特別規定のある管轄権は別として 関法

一六六頁︑上田徹一郎・民事訴訟法(‑九八八年 上告審における訴えの利益の判断の基準時

︵判決主文は請求棄却で

(11)

上田徹一郎・民事訴訟法(‑九八八年 一九八頁(‑九八0有斐閣︶が重要である︒やや古いが︑岩松三郎"兼子一編・法律実務講座民事訴訟

例えば︑竹下・前掲論文︵司法研修所論集六五号三九頁以下︶

いたった場合には︑

は︑司法権の限界に関する訴訟要件や判決の手続

的・内容的正当性を保障するような訴訟要件は︑それらが訴訟要件とされている意味からして︑それらが欠鋏するに

上告審においてもこれを顧慮するのを原則とするべきであるが︑﹁無益な訴訟の排除を目的とす

る訴訟要件の場合には︑果たして上告審がわざわざその欠鋏するにいたったことを顧慮して︑原審のした本案判決を

破棄する必要があるかは問題であり︑原判決が請求棄却であれば︑その後︑権利保護の利益を消滅させる新たな事実

が生じても︑最早これを顧慮する必要はないというべき﹂であるとし︵この竹下説の要約は︑兼子一

1 1松浦馨ほか・

条解民事訴訟法(‑九八六年︶七七二頁︹竹下︺にみられる︶︑岩松"兼子編・前掲法律実務講座民事訴訟①五九頁も︑

﹁事実審の口頭弁論終結時に具備された要件事項がその後脱落するに至った場合については︑原則としてこれをしん

しゃくすべきものではなく︑ただ︑その事実の変化をしんしゃくしないことが判決の無効を来たし︑もしくは再審事

由となる場合に限って︑これをしんしゃくすべきである﹂とする︒

一九二頁は︑﹁︵訴訟要件が︶司法権の作用に制限を加えるもの

であるところから︑事実審終了後でもこの制限を加える理由を生じればそのことを顧慮すべく︑またこの制限を加え

る理由がなくなれば︑従来の手続を生かしつつ原告の訴え提起に応じる趣旨で訴訟要件の具備されたことを顧慮すべ

きであり︑原則として上告審は原審の弁論終結後の事実を考慮すべきである﹂とするが︑訴訟要件の種類により異

なった取扱いをしてよいとの観点から︑事実審の口頭弁論終結時には訴訟要件が具備して請求棄却判決がなされ︑そ

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用二七三 第一審手続m︵一九五八年/一九八四年有斐閣︶五六頁以下もこの問題を詳細に検討する︶︒

︵ 中 ︶

(12)

青林書院︶二四六頁︑齋藤秀 第四五巻第四号

の後訴えの利益が消滅した場合には︑これを顧慮するべきではないとする︒

新堂幸司・民事訴訟法︵二版︶︵一九八四年︶一六六頁以下は︑訴訟要件の存否を判定する時期は事実審の最終口

頭弁論終結時であり︑﹁右の標準時後に要件を欠くことになっても︑上告審はこれを顧慮する必要はない﹂が︑﹁訴訟

要件の欠訣を看過して本案判決をしている場合﹂と﹁訴訟要件の欠鋏を理由に訴えを却下﹂している場合には︑その

後訴訟要件が具備するにいたれば︑上告審はこれを顧慮するべきであるとする︵前者については原判決を維持し︑後

者については原判決を破棄して事件を差戻すことになる︶︒

の﹁標準時を事実審の口頭弁論終結時と一律にきめる通説にはいろいろと疑問が生じる︒おそらくは︑事態に応じて︑

標準時を事実審の口頭弁論終結の時にしたり︑法律審の審理の終結の時にしたり︑柔軟な態度をとることが要請され

てくるのではあるまいか﹂とするが︑事実審の口頭弁論終結後の訴えの利益の消滅の場合については︑﹁せっかくの

原審の審理を維持し︑当事者の期待を保護するために﹂︑先に引用した判例︵最判昭二七・ニ・一五民集六巻二号八

の﹁方向は改められるべきであろう﹂として︑上告審はこれを顧慮するべきでないとする︒

このように︑最近では︑訴訟要件の存否の判断の基準時を﹁原則として﹂事実審の口頭弁論終結時とする立場は︑

もはや﹁通説﹂とはいえないようであるが︹なお︑現在も訴訟要件の存否の判断の基準時は事実審の口頭弁論終結時

であるとする原則を堅持するものとして︑小山昇・民事訴訟法︹五版︺︵一九八九年

夫・民事訴訟法概論︹新版︺︵一九八二年一六一頁がある︺︑事実審の口頭弁論終結後の訴えの利益の消滅

を︑上告審が顧慮するべきかという問題に限定すると︑依然として︑上告審はこれを顧慮するべきではないとする説 中野貞一郎ほか編・民事訴訟法講義︵補訂版︶︵一九八0年有斐閣︶四二八頁︹鈴木︺は︑訴訟要件の存否判定 関法二七四

(

(13)

一般にこの問題をど ︹ニ︱九頁︒この場合︑上告審裁判所は︑﹁自ら事実 が圧倒的多数である︒判例の立場を支持し︑上告審は事実審の口頭弁論終結後の訴えの利益を消滅を顧慮するべきだ

一九八頁︶ぐらいではあるまいか︒上村教授によれば︑﹁一般的

にいって︑訴訟要件は本案判決の実効性を確保したり︑訴訟目的の合理的・効果的な達成を確保したりする機能﹂を

有しており︑﹁上告審においても︑根本的には事実審と同様に︑紛争の法的解決という訴訟目的を十分に達成しうる

ように手続を行う必要があるのは当然である﹂から︑﹁本案判決の実効性を確保したり︑訴訟目的の合理的・効果的

な達成を確保するという訴訟要件の機能場面は︑上告審においても存在﹂し︑このような﹁訴訟要件の一般的機能と

上告審の目的との関連からみて︑訴訟要件は上告審にも直接妥当する手続法である﹂とされる︵上村・前掲論文︵裁

判と上訴︵中︶ニ︱五頁︶︒そして︑権利保護必要は︑﹁訴訟目的の合理的・効果的な達成を確保する機能を有する訴

訟要件﹂であるから︵ニ︱六頁︶︑﹁権利保護必要の事後的消滅をもたらすような新事実が生じた場合︑上告審裁判所

は︑当然にそれを顧慮しなければならない﹂とされるのである

を確定して判断できるから︑第一審も本案判決をしているときは︑これをも取消して︑自ら却下判決をすべきであ

以上の紹介によると︑上告審は事実審終了後の訴えの利益の消滅を顧慮するべきかという問題については︑これを

肯定する判例・少数説と︑否定する多数説︵通説︶とが対立している状況にあることが分かる︒

のように解するべきかは︑もとより︱つの解釈問題たるを失わないが︑本件で提起されている問題は︑適法に上告が

提起された後にこのような新事実の存在が生じた︵発見された︶という場面での問題ではなく︑このような新事実の顧

慮を求めて適法に上告をすることができるのかという︑異なった局面での問題である︒したがって︑ここでは︑上記

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用 とするものは︑上村・前掲論文︵裁判と上訴︵中︶

(

(14)

第四五巻第四号

(

一般問題に深入りすることは断念しなければならないが︑顧慮するべきであるとする判例・少数説の方が妥当ではな

いかと思う︒訴えの利益がなくなれば︑その判決は紛争解決にとって無意味なはずであり︑そのような無意味な判決

を上告審が放置しておくことは適当ではないと思われるからである︒もっとも︑手続的には︑上告審裁判所は︑書面

審理により上告に理由がないことが明らかになれば︑口頭弁論を経ることなく上告棄却の判決をすることができるが

0一条︶︑原判決を破棄するためには口頭弁論を開かなければならないから︑上告審裁判所︑特に最高裁判

所にとっては︑従来の判例の立場を前提にすると︑その負担が増大することになろう︹本件判決が上告権の濫用とい

うややあらっぽい理論によって︑書面審理により上告を不適法として却下した︵民訴︱二九九条ノ三︶

このような上告が提起されることが予想されることから︑実質的にはこのような理由によるものだったのではなかろ

うか︒その意味で︑﹁訴えの取下げによっても訴訟は終了し︑原判決もその効力を喪失するから︵民訴二三七条︶︑原

告の出願人にとっても︑原判決が支持した拒絶審決︹拒絶査定を是認した審決︺

とは︑拒絶審決支持の原判決の破棄及び訴え却下判決を求めるのと︑効果に変わりはない︒﹂とし︑特許出願の取下

げによって審決も失効する以上︑﹁事例としては稀有であろうが︑今後︑拒絶審決を維持した審決取消訴訟の事実審

の判決後に特許出願の取下げがあった場合には︑この判決確定前に訴えの取下げがされれば︑出願人にとっては十分

であることも︑本判決は示唆しているものとみることができよう︒﹂とする本件判決についての判時のコメント︵判

時一三八一号一︱六頁︶は興味深いといえよう︺︒

請求棄却判決に対し訴え却下判決を求めて上告をする原告の利益 の確定は免れるわけである︒このこ

本件において︑審決取消請求を棄却されたXに上告の利益があることは明らかであるが︑通常︑それはXが上告を 関法

のは︑今後とも

(15)

一般に原告にとって︑訴え 例えば︑上野﹁上訴の利益﹂新堂幸司編・特別講義 して請求認容判決を求めることを当然の前提としている︒したがって︑本件のXのように︑請求認容判決ではなく︑

訴え却下判決を求める上告の利益がXに認められるかが︑若干疑問になる

く、その不服の排除を求めることもまた、上訴要件に属するとするものに、Ohndorf•

Di e  B es ch we r  u nd   di e  G el te nd '  ma ch un g  d er   Be sc hw er   al s  R ec ht sm it te lv or au ss et zu ng en m  i e  d ut sc he n  Zi vi lp ro ze Br ec ht ,  Sc hr if te n  zu m P ro ze Br ec ht   Bd . 

28

,  1

97 2,

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6 1

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Z30

54

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訴訟要件の欠鋏を看過してなされた本案判決は違法であるから︑その本案判決に︵形式的︶不服の利益を有する当事

者は上訴をし︑その取消しを求めることができると解されている

新堂•前掲書一六七頁など。その他、兼子・前掲書一五一頁、小山・前掲書二四六頁も同旨であろう)。控訴審にお

いては任意管轄違背の主張をなし得ないと規定する民訴︱二八一条も︑結論的にはこのような解釈の正当性を窺わせる︒

しかし︑申立てと判決との差によって不服の有無を判定する形式的不服説からは︑このような解釈を理論的に説明す

るのは困難であろう︒私自身はいわゆる新実体的不服説を採用し︑当該判決が確定することにより︑後訴によっては

救済し得ないような不利な効力が及ぶ者に上訴の利益を認める

民事訴訟法(‑九八八年

ニ八五頁参照︶︒この立場からは︑請求棄却判決は︑

却下判決よりも不利益な判決であり︑この不利益な判決の取消しを求めるため︑原告に不服の利益を肯定することが

ところで︑本件Xの上告の利益については︑①で検討した問題︵上告審裁判所は︑事実審の口頭弁論終結後の訴え

の利益の消滅を顧慮するべきか︶をも考慮しなければならない︒この問題を否定する多数説︵または通説︶

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用

の立場に 齋藤•前掲書一六一頁、上田・前掲書一九二頁、

︹客観的に不服が存在することだけではな

(16)

第四五巻第四号

訴えの利益︵訴訟要件︶

要件との審理順序﹂民商五七巻四号(‑九六八年︶

これに対し︑判例︵および少数説︶

0)

よれば︑当然上告の利益も否定される︒上告審で訴え却下判決がなされる法律上の可能性がない以上︑訴え却下判決

を求めてする上告は無意味だからである︒また︑訴えの利益の存否が確定される前に請求棄却の結論が出たときは︑

の具備を確定することなく︑そのまま請求棄却判決をすることができると解する立場でも︑

訴え却下判決を求めてする上訴の利益は否定されることになる(新堂•前掲書一六七頁、鈴木正裕「訴訟要件と本案

0七頁︵五二四頁︶︶︒このようにみてくると︑本件の処理とし

ては︑多数学説によれば︑上告の利益の欠鋏を理由に︑最高裁判所は上告を不適法として却下するべきであったこと

のように︑上告審は訴えの利益の消滅を顧慮するべきだとする立場を採った場

合︑請求棄却の判決を受けた原告は︑訴えの却下を求めて上告をすることができることになろう︒上告審裁判所は事

後的な訴えの利益の消滅を顧慮するべきであるとしたこれまでの判例をみると︑最判昭二七・ニ・一五民集六巻二号

八八頁は︑請求認容判決に対して被告が上告を提起した事例であり︑最判昭六

O ・

は︑請求棄却判決に対して請求認容を求めて原告が上告を提起した事例であるから︑この問題︵請求棄却判決を受け

た原告は訴え却下判決を求めて上告をする利益を有するのか︶の先例とはならない︒しかし︑最判平三・三・ニ八判

時︱︱‑︳八一号一︱五頁は︑請求棄却判決を受けた原告が︑事後的な訴えの利益の消滅を理由に︑訴え却下判決を求め

て上告を提起した事例であり︑しかも︑上告の利益を肯定したものと解することができる︒この事件において︑最高

裁判所は︑原告の上告理由を﹁理由あり﹂として原判決を破棄したのではなく︑﹁職権をもって調査﹂して原判決を

破棄し訴えを不適法として却下したわけであるが︑最高裁が︑上告の利益を否定していたとすれば︑口頭弁論を経な

関法

(17)

︹末川博・権利濫用の研究(‑九四九年

10

頁 ︑

弘文堂︶三八頁︵六三頁︑七五

0

0頁︑我妻栄・新訂民法総則(‑九六五年 99・~

 

権利の濫用とは︑ 判決を破棄したのは︑訴えの利益が職権調査事項に属するからであると推測される︶︒本件において︑最高裁判所が上告の利益の欠訣を理由にして上告を不適法として却下しないで︑上告権の濫用の法理により上告を不適法として却下したことも︑本件原告が上告権を有していること︑なる︒したがって︑判例の立場を前提とする限り︑最高裁判所は本件上告を︑上告の利益欠訣を理由に︑不適法とし

前述したように︑私はいわゆる新実体的不服説を採用しているが︑この立場から本件判決をみた場合︑仮に審決取

消請求を棄却した原判決が確定しても︑特許出願の取下げによって審決の効力が消滅している以上︑それは内容上無

許出願やその後の手続に︑事実上大きな障害になるとも思われない︒そうすると︑この立場からも︑本件原告の訴え

上告権の濫用

一般に︑権利が法律上認められている社会的目的に反して行使されることをいうと解されている

書店︶三五頁など︺︒民法上の権利の濫用が許されないことは民法の明規するところであるが

刑訴規則一条二項参照︶︑民事訴訟法上の権利の濫用もまた許されないことについては︑現在では異論をみない

野貞一郎﹁民事訴訟における信義誠実の原則﹂訴訟関係と訴訟行為(‑九六一年

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用

~

の利益は否定されることになる︒ 効な判決であるといわなければならない て却下することができないことになる︒ いで上告却下の判決をするべきであったからである

︹ 中 岩波

︵民訴三九九条ノ︱二参照︒最高裁が﹁職権をもって調査﹂して原

上告の利益を有することを前提にしていたことに

(堤•前掲民商一〇七巻一号一五六頁参照)。この判決の存在が、再度の特

(18)

用が許されないことも︑異論なく承認されている︒

︹この点につき︑小室直人﹁上訴権の濫用﹂ 第四五巻第四号

頁︶︑同﹁民事訴訟における信義則および禁反言﹂民事訴訟法の争点︵ジュリスト増刊 頁︶︑竹下守夫﹁訴訟行為と信義則﹂小室直人編・判例演習講座民事訴訟法(‑九七三年

︵一四五頁︶︑栂善夫﹁民事訴訟における信義則﹂民事訴訟法の争点︹新版︺︵ジュリスト増刊

︵四五頁︶︑同﹁訴訟上の信義則﹂三ヶ月章ほか編・新版民事訴訟法演習ー 八頁︶︑林屋礼二﹁民事訴訟と権利濫用・信義則﹂小山昇ほか編・演習民事訴訟法(‑九八七年 や、これらに引用されている文献を参照のこと。その他、新堂•前掲書二九二頁、上田・前掲書三九頁以下、中野貞 有斐閣︶二三九頁以下など参照︒なお︑信義則の﹁有害な機能﹂や︑その使用の濫用に対する警告を発するも

のとして︑坂口裕英﹁信義則が民事訴訟法で果たす機能﹂法学教室︹二期 法概要二四一頁がある︺︒権利の濫用が信義誠実の原則とどのような関係に立つのかについては︑民法におけると同 様︑民事訴訟法上も議論があるが︹林屋礼二﹁民事訴訟における権利濫用と信義則の関係﹂鈴木忠一ほか監修・新実

務民事訴訟講座①(‑九八一年

編・講座民事訴訟田(‑九八五年

容上︑形式的な上訴手続の開始を求める権利として構成されているため

一郎ほか編・民事訴訟法講義︵補訂版︶︵一九八0

0頁︹中野︺︑林屋礼ニ・民事訴訟法概要(‑九九 関法

定され(兼子・前掲書四三七頁以下、新堂•前掲書五四四頁、上田・前掲書五――頁、

ニ八〇

四二頁︵四五

一四三頁

四四頁

一五五頁(‑五

八五頁

一四八頁や林屋・前掲民訴

一七三頁︑松浦馨﹁当事者行為の規制原理としての信義則﹂新堂幸司 弘文堂︶二五一頁などのほか︑前掲文献参照︺︑民事訴訟法上の権利・権能の濫 一般に︑敗訴当事者が原判決に対する不服につき︑上級審の本案判決を受けられる権利であると概念規

五一五頁など参照︶︑その内

(19)

おり︹田中耕太郎﹁上訴権の濫用とその対策﹂法曹時報六巻一号(‑九五四年︶

の研究三二八頁︑同﹁上訴権の濫用﹂鈴木忠一ほか監修・実務民事訴訟講座②(‑九六九年

︵二六二頁︶など参照︺︑現に訴訟上濫用される権利として︑忌避権とともにこの上訴権が例として挙げられること

(例えば、栂•前掲民訴の争点〔新版〕

記念・裁判と上訴︵上︶ 有斐閣︶三二三頁︵三二六頁以下︺︑濫用される危険を内包して

四五頁︶︒このような事情を反映して︑民事訴訟法は上訴権濫用に対

〔民訴三八四条ノニ・三九六条•四―一条。この制度につき、齋藤秀夫

11桜田勝義「上

二七頁参照︺︑この規定との関係で︑従来は上訴権の濫

用とは︑上訴本来の目的である不利益な判決の是正ではなく︑原判決の正当なことを認識しながら︑訴訟の引き延ば 民事訴訟講座②二六二頁など︒なお︑佐々木平伍郎﹁上訴権の濫用という観念について﹂小室直人

1 1小山昇先生還暦

0

〔田中・前掲法曹時報六巻一号六頁、小室•前掲実務

有斐閣︶二六七頁︵二八二頁︶

人が相手方の主張事実を争わない場合の上訴権の行使であるとする︺︒ は︑上訴の申立てについて理由がなく︑

ところが︑本件事案は︑前述したように︑従来の判例を前提とする限り︑

Xに訴え却下判決を求めてする上訴権が

肯定され︑しかも︑訴訟の引き延ばしではなく︑訴え却下判決を求めて上告し︑その上告が認容されるべき場合なの であるから︑従来から認められてきた上訴権の濫用の場合にはあたらない︒判決理由によれば︑最高裁判所が本件

X

の特許出願取下げ後の上告提起を上訴権の濫用とした根拠は︑訴えの利益欠訣により訴えを不適法ならしめた原因行

X

自身の行為であることに求められている︒本判決は︑したがって︑従来の上訴権の濫用とは全く異なった形で

自らの行為によって訴えの利益を消滅させた原告が訴えの却下を求めてした上告と上訴権の濫用

しだけを目的とする上訴権の行使であると概念規定されてきた する制裁規定をおいているが

末川先生古稀記念・権利濫用の研究(‑九六三年

§ 

日本評論社︶二六一頁

一頁︵九頁︶︑小室・前掲権利濫用

(20)

第四五巻第四号

の上訴権の濫用を肯定したものである︒

も︑本判決の結論は妥当なものと思われる︒﹂と︑本件判旨を積極的に評価する︒

さて︑それでは本判決はどのように評価されるべきであろうか︒本件に関する判例時報のコメント︵判時一五0

0頁︶は︑﹁原告は︑請求認容の実体判決を求めて訴訟を提起し︑追行するものであって︑原告自身が訴えの

却下を求めるということ自体︑訴訟において通常考えられないものであるが︑本件においては︑訴えの利益の喪失を

招来したところの原因事実自体も原告自身により意図的に引き起こされたものである点で︑まさに異常な状況という

ことができ﹂︑しかも︑﹁このような点に加えて︑原判決がもはや対象となる行政行為︵審決︶の存在しない無意味な

ものであることを考慮すると︑本件におけるXの上告については︑はたして正当な上訴権の行使と評価し得るものか

どうか疑問というべきであろう﹂とし︑結論として︑﹁本件のXは︑訴えの取下げをすることにより上告審において

一審判決の破棄及び訴え却下判決を求めるのと同一の結果を容易に達成することができる︒このような点に照らして

しかし︑訴訟要件の欠鋏を看過した違法な判決に対し︑敗訴の当事者が上訴をして訴え却下の判決を求めることが

できることは︑従来の学説・判例が肯定してきたところである︒ただ本件の場合︑訴えの利益の消滅がX自身の行為

によっているという特殊性があることは事実であるが︑この点も︑前述したように︑特許出願の係属が消滅するまで

は特許出願の取下げをすることが認められているのであるから︑特に非難されるべき行為という程でもなく︑とうて

い︑﹁まさに異常な状況﹂であるということはできないであろう︒この点で︑本件判決理由だけでは︑上訴権の濫用

を正当化することはできない︒上記コメントは︑さらに︑上告提起の方法によらなくとも︑特許出願の取下げと訴え

の取下げによって同一の目的を容易に達成することができることをも考慮するべきであるとする︒確かに︑本件の被 関法

参照

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臨脈講義︐

〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

その認定を覆するに足りる蓋然性のある証拠」(要旨、いわゆる白鳥決定、最決昭五 0•

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十四 スチレン 日本工業規格K〇一一四又は日本工業規格K〇一二三に定める方法 十五 エチレン 日本工業規格K〇一一四又は日本工業規格K〇一二三に定める方法