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i ポスト・ケインズ派スタグフレーショ

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(1)

ポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論 の論理構 造

rlJ

は じ め に

196眸代末から1970年代‐にかけて先進資本主義国をおそったスタグアレーシ ョン(イ ンフレーショィと不況の同時的並存)現象は

いかなる立場にたつ経 済学でも対応せざるをえない現実的かつ緊急な理論的・政策的IFHl願を 提 起 し │。 'ス タグフレーシ│ョ 0原1因は何かどのように政策1的に対応すべきか‐一 これらの1問いに対する1解答は,現実 と1の緊張1関係のなかでその1経済学の理論的 有効性と現実妥当性がFHlわれる試金石にならざるをえ:なかったのである。ケイ ンジアン対マネタリス トの1論争 もスタグフレーションとtヽう現夢鶉使羹1国│よ

関係のFI理IF.l題」では,ありえかなった。また近年,現代新古典派とはことな

る体系として市民権を獲得し1つつぁるポス ト・ ケインズ派経済拳

,そ1瑠 体系が共通のものとして完成されていないとはいえ,これらの問題状況のなか にあることはかわ りない。それどころか後にみるように 厩 実主義Jの立場に たつポス ト・ ケインズ派にとうてスタグフレ‐シヨンにかかわるFH腿状況は,

全体1的にはポス ト・ ケインズ派の 離1陸 への重要な契機の1うであ り│,その晨 開の推進力だづたのである。      i

本稿の目1的,ポス ト・ ケインズ派のスタグフレーション論の論理構造を検 討す ることにある│が,│ポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論といっても, まとまつた研究や体系が存在しているわけではなく,ポス ト・ ケインズ派とい

0)41

(2)

ポスト●ケインズ派スタグフレーション論の1糀構造

われる人々の著作めなかに部分静 1断片的に散見できるだけである.。 始のなが

,I COFn取剥 は 基 PoSt―Keyn n Apalysお"とい うサ ブ タ ィ トル を つ け た

スタグフレーションに関する著作Ftt CO滋売赫 ル 助 ""動 θο7(1"3)

を出版 している。 この著作は,ポス ト・ ケインズ派のスタグフレーション論を 理解するうえで必要な文1献1つ.ではあるが,私見によればこれはスタグフレ ーション現象の理齢鮮Ⅲ 体系1的研究とい うよりは,実証分析を含めてポス ト・

ケイジカ派に共通す│るスメンフレーション観,分析視角│,分析方法および政策 的ヽ咆 などをま,とめたものである。

現在の時点でポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論を全画的に捉えよう とすることは,必ずしも適当かつ崎宣にかなった作業とはいえ│ないかもしれな いがりここでは筆者の問題関心からボ

^1・ ケイイズ派のマタロ動学理論 (モ う呼べるものがある.と して)とのかかわ りでポ

^卜

・ ケインズ派スタグフレー │ョ ン論の論理構造をとり,あげ検討することにしたい。

1]では,以 上の目的に必要なかぎりでポス ト・ ケインズ派の。新昔典派=

マネタリズムから区FIJされるべき特徴についてのべるな次に,2]ではJo C"軒 Wanの前掲書によりながらポス ト・ ケインズ派スタグフレーシ意ン論の最 も基 本的な構成要因を析出する.。 そして│,[§:3]で ポス ト・ ケインズ派スタグフレ ーション1論の理論的動 を,そのマタロ動学理論のなかで検討する。

なお (補)│と して,わ1国におけるスタグフレーション研究 との関係に簡 単 にふ れてお く。

§.1 ポス ト・ ケイ‐ンズ鼈 の特徴

ここではポス ト・ ケインズ派理論の特徴を│,そのスタグフレーシ│ョ ン論を整 理する上で重要だと考えられる次の3点1限定してまとめておく。 したがって 以下に1述べることは新昔典派のパラダイムに対するポス ト・ ケインズ派の積極

1的かつ包括的な「あたらしいパラダイムJを特徴づけるものとしては不十分で 42(4型 )

(3)

法経研究33巻304号 ある。後者 の1問題については A.S.Eiぬner&J.A.Kregel‐の共1同論文[7]

やその紹介論文[1];[17]を参照してもらうことにして,ここでは特にふれな い。

まず第 1に,ポス ト・ ケインズ派は新古典派 とは異なって,資本主義経済を 歴史的時間を通して不均等に成長する経済社会として考察する。この歴史的時 間の強調はJ.Robinsonにみられるように,同時に新古典派の市場均衡概念や 市場の1自動調整メカニズムの盲信に対する全面1的な拒否を含んでいる。すなわ ち「 正統派(新古典派一引用者)の根本的な誤 りは,振子が前後に振ていても,

静止の状態に必らず戻 るの と同じように市場経済も必ず均衡に到達するfm 向 もっているとい う信念であった。この類比は間違っている。空間の申の動きは 前後に行けるかもしれないが,時1間を通じての動 きは過去から将来に向って,

1つ の方向にしか行けない。人間の生活は『 正しい予見』なしに行われなけれ

(2)

iゴな らないJ。

ポス ト・ ケインズ派は資本主義経済を不安定ではあるが,時間を通じて拡張 している経済として捉えることにより,階,寡,制度的枠組,景気循環な どの現実的諸契機を重視し,理論化していこうとする現実主義の立場にたつこ とを意図している。

2にあげるべき特徴は,経済成長 と所得分配の体系的・理論1的1明におけ る投資のもつ決定的役害Jである。この点はまさに Kalecki=Keynesの 分折様式 をひきつ ぐポス ト。ケインズ派を他から区別する最も重要なバロメーターの1 つである。D.J.HaFriSに よれば「単に均衡条件として把握された成長一利潤 関係は,もちろん任意の成長および分配理論 と整合的である。新ケインズ派理 論の場合,この関係に因果的な意味を与えるが,それは蓄積率が独立変数で利 潤率が蓄積率に対して依存関係にあるとい う命題である。 これはすべての新ケ インズ派理1論が完全に同意し,かつ自己の枠組 と他の学派のそれを分つ命題で あるJ。

いま簡単にこの点を確認しておこう。

(4)

ポス ト・サインズ派スタグフレーション1論の論理構造

ケインズ1的均衡条件に1よ り投資Jは貯蓄Siに事後的 または恒等的に等 しい。

J=S '   (1.1)

他方│,貯Sは賃金所得″からの貯蓄とrlJttPからの貯蓄の合計 で 、あ るか ,それぞれの貯蓄性向を 島,■ とすると,      ´

 .S=sc.″+藝P  I≧│>ρ>%>0      (1.2)

したがって,      

=場+SpP       I   (1‐ ̀3)

,この両辺を総資本額Kでわ って,g=〃κ/Xとお くと,  1  1

g圭y/K+CSp‐)'      1‐ (1̀4):

また1賃金所得か らの貯蓄はない もの とす る(も=の1と,次式がえられる。

g=もαπ (1‐5)

(1.5漱均衡条件(1:1)から導出した蓄積率―利濶率の関係でありJ:それ自体 としては一般1的関係で│あるから,Harrisがいうように「 任意の成長および分配 理論と整合1的である」。たとえばマルクスの.拡大再生産表式においても1関(1.

5)は内在している.といえ?。 ポス ト.ヶインズ派は│,(1.5)か    , I

″事│ダ  (1.6)

とし■ gがπを規定する,すなわち書積率が利濶率を規定する.という1因果系

rlJを強調するも

(1.6).が1意するところのものは,KttCkilの 有名な命題「 労働者は得たもの を支出し,資本家は支出したもの│を得る」,あるいはKeynesの「 寡婦の壼の 1論」と同じ1内容・ 関係であるも         :

. この点を新古典派との相異という観点からみれば:新昔典派が需要・供給と 相対価格の間の関係‐に分析の焦点をおくのに対し,ポス ト・ ケインズ派は「動 学的な:拡張する経済において

輸 古典派の用語法をわ―か りやす く言い換える ); 投資およびその他の1成長源によってもたらされる所得効‐果は価格変動

]量[tli[冨 7][[[::`

に大きい1とい う,その基礎 に あ る信

44 (447)

(5)

法経研究

3の特徴は,寡占企業の価格設定決意 と投資決意 とを関連づけ るこ│とによ ,「成長 と分配のマクロ経済分析Jの ミクロ的基礎を構築しようとしている ことである。ポス ト・ ケインズ派は,新古典派が完全競争下の PFiCe ttbFと して企業を描 きだすのに対し,寡占的市場構造の ものでの寡1占企業の価格設定 行動(prbe makёr)を,フル・ コス ト原理に含まれるマーク●アップ要1因と投 資資金需要を結合す ることにより描 きだしてい る。 もちろんすべての市場が寡 占的市場 または1固定価格市場ではないが,ポス ト・ ケインパ派は現代資本主義 経済の民1間企業部門の主要部分は固定価格市場であるとしている。

これ らの特徴は,ポス ト・ ケインズ派のマ クロ動学理論の最 も基本的な出発 点をな してお り,したがつてまたそのスタグフレーション把握の出発点で もあ

る。

§:2 ポス ト・ケインズ派スタグフレーション論の構造

ポス ト・ ヶインズ派のスタグフレーションお よびインアレーションの分析に 極めて大 きな意味をもってい るのが,寡占企業や労働組合な どの市場 における 独 占1的要因である。「 なに よりも労働 組合 と巨大企業がコス ト・ プ ッシュ・

インフレーションを もた らし,総需要の低下 と高い失業が連続1的なインフレー (6)

シ ョンと併存する状況を もた らしたのであるJ。

(7) マネタ リス トは,「インフレ=ションは貨幣的現象である」

:j::li争 l子

'I』

暑雪墨[讐ll:│ゴ「インフ

労働組合運動の発展,と くに第2次大戦後各1国政府が完全雇用1政策・社会保 障政策をかかげるなかでの労働ullの力の増大々t(庁に次の3つの労働市場にお ける構造変化をもたらしたとJo COr五all lはい う。

第一に,貨幣賃金は下方硬直性を強め,景気の上昇下降に対応して変動する のは貨幣賃金の上昇率となった。すなわち不況期には貨幣軍金率の上昇率は低 ことを強調す る レーシ ョンは本

(6)

ポス ト・ ケイ ンズ派スタグフレーシ ョン論の論理構造

下するが,貨幣賃金は低下す ることはない。第二に,労使間の賃金交渉におい て公平原理 (the principle of faisness)が 重要なファクターにな り,労働者の 生活費=実質賃金の水準が貨幣賃金決定に影響を与えるように なった。 第 二 ,労働市場の統合化 とでもい うべ き構造変化が生 じた。賃金決定において職 FH7,職能間,企FHlの賃金比較=相対賃金が重要な意味を もち,経済全体を 通 じて広範な賃金設定の相互依存関係を発展 させてきた。

これらの労働市場における構造変化は,ほとんどすべての労働市場が「 固定 価格市場Jであ り,貨幣賃金の変動は市場の超過需要・超過供給の状態に依存 していないが,生活費や相対賃金の変動には極めて敏感に上方仲縮的になった ことを意味 している。

また,すでにポス ト・ ケィンズ派の特徴 として指摘 したように現代資本主義 における主要な工業部門の市場は寡占的市場であ り,寡占企業はフル・ コス ト 原理による価格設定者 price makeFで ある。

ポス ト・ ケインズ派はこの よ うな労動市場・生産物市場の歴史的構造変化 を背景にして,1970年代の歴史1的具体的条件を考慮 しつつ も,理論的には次の 2つの要因において現代のスタグフレーションを とらえる。

第一 に,現代のインフレーションの進展はF固定価格的」な労働市場・ 生産 物市場におけるコス ト・ プッシュ・ ィンフレーションであり,賃金―物価スパ イラルの過程である。「1960年代の長期にわたる好況 と,それが生み出したデ ィマン ド・ プル・ インフレ‐シヨンは次に1970年代の世界的不況にまで発展 し た コス ト・ プッシュ圧ヵをもたらし,現在のスタグフレーシ ョン状態あ主要な 要因 となっている。 いまや インフレが失業 と共存 しているのは主 として労働者 階級が国民所得の分け前をめ ぐって資本 とよリー層対等に闘 うに足 る政治的・

経済1的力を獲得 し保持す るにいた ったか らであ』比

第二に,ポス ト・ ヶィンズ派は1970年代か ら不況 と失業をケインズあ理論的 伝統にしたがって有効需要の不足か ら説明す る。「 過去10年にわたる失業率の 著 しい増大は,主に不十分な総需要によりひきおこされている」,「スタグネー

46 (445)

(7)

法経研究33巻304号 ションは総需要条件の変化にまで跡づけられる。投資,技術革新,生産性の上 昇は……政府当局がインフレ‐ションとたたか うために総需要抑制に固執する か ぎり決して回復 しないだろ う」。

ポス ト・ ケインズ派のスタグフレーション論は,寡占的市場構造の発展を現 実的背景にお くコス ト・ プッシュ・ インフレ早ション論 と資本主義経済の不安 定性の認識を基礎にもつ ケインズ的有効需要の理論,または有効需要不足論を 二づの構成要因 としてもっている‐といえる。 ところが,スタグフレーション論 を「 二元論的」にコス ト・ プツシ■・ インフレ論 と有効需要論で構成するとい うことは,たとえば有効需要の変化は価格・賃金の変動 とは直接‐的には関連 し ていない ことを主張す ることと同 じである。 この点を単純かつ純粋な形でしめ

(12)

す と次のようになる。      │

.占企業は マーク ●ア ップ方式による価格設定をおこな うとして,マーク ●

ア ップは短期的に変化 しない とす ると, ク′=り,一ρ

̀

(2,1) ただし,夕は価格上昇率,"は貨幣賃金率の変化率ρは労働生産性の増大 率 とす る。賃金 コス トの上昇分を価格転嫁す ることによるインフ,シ7へ の この影響はPasS through効果 といわれる。他方,労働側は,イ ンフレの昂 進のなかでは,実質賃金の低下を遅ればせながらも回復 しようとして,賃金決 定交渉に生活費の上昇を反映 させ ようとす る。た とえば,この過程を次のよう に定式化できるとしよう。

=αO+αl.多ι̲l  αl>ゴαO>θ       (2.zOFD

ここで,労働者が実質賃金水準の回復を意図するためには,少なくともal>

1で ある。

賃金交渉における生活費の上昇にともな う実質賃金の低下を回復させようと することによる貨幣賃金水準への影響はfeed baⅢ 効果とよばれる。竹こで, ρJ=7二定 とするとl>」 だから(2,1),(2・ 2)よ

(2.3)

夕´=。・αl'+(αO二´)/(ゴー¢1)

(8)

ポス ト●タインズ派スタグフレ薔ション論の競

ただし, │は初期条件に規定 される定数│。 この場合l>夕│よ ,賃金 一物価 はスパイ ラル的に上昇す る│こ とになる。      1.

しかし,こ こで重要なのはこの過程または定式fLに経済の活動水準や有効需 要水準をあらわす指標や関係がはいってこないということである.ざ物価上昇率 または貨幣賃金1率の変fL率と失業率との1対抗関係をあらわすとされるフィ.り 1ッ プス曲線の理論に対比してこのことを表現するならば,最も純粋な,スい。ブ ッシュ ●インフレーション論は,the bOr∽nttt sはTti and llo唾;メun P扇 鳳ips

Cu=VeSを ―もってい るといえる。つ ま り,有効需要水準の変化tま経済の活動水準 や失業率に影響す るとしても,:価格や賃金の変動には直接的には影響しない。

このことは,貨1的現象と実物経済の二元論構成をとるマネタリズムが少な くとヽ長期においてF自然失業率J水準を通るthe vertical Phillip cur もつの と好対称をな している。周知の ようにマネタ リズムによれ ば,政府 の F有効需要創出政策Jは一時1的に失業を減少 させ ることができて も,長1的 は インフレーションの加1速化を もた らすだけで失業水準は自然失業率に戻 らぎ

(1助       ' るをえない。

指れでは,ポス ト・ ケィンズ派スタグフレ‐ション論の二つの構成要1因であ るコス ト・ プッシュ・ インフビーシ│ョ 1論と有効需要不足論は,捨のマタL動

学理論のなかでどのように1関連しているのだろうか。理論1的にいえば,ポ:ト

・ ケインズ派のマタロ動臨 における『 有婦 要の原1理」と「 フル,コス ト原 Jの総合の問題 である(。      =

§.3 フル・ コス ト原1理と有1効需要の原理

フル ●コス ト原理による価格決定論 と有効需要論の間の理論的関係は,ポ

・ ケインズ派の理論全体とりわけそのマークロ動学理論の1問題である。すなわ ,「ポス ト・ ケインズ派の1分析は

̀価│,禾瀾および1投資の1間│の関係│を1明

に説明し│,そうすることによって,大部分の工1業化された資本主1義経済を悩ま 48 (443)│

(9)

1       法経研究33巻304号 1985 せ てい る高水準の失業 と高率のインフレの同時発生 とい う現在の事態に対 して かなりの洞察力を与牙署)」 とぃぅとき,:どあような理論体系として「価格,利 潤および投資の間の関係」が説明されているかとい うことである。

(1),[§.1]でポス トじケインズ派理論の特徴をのべたとき,そのマクロ動学理

論における投資の決定的役割については指摘しておいた。ポス・い ケインズ派ス タグフ,ン‐ション論の構成要因である有効需要不足論は:たとえばJ.Robinso, の投資理論とのかかわ りでいえば次のようにいってもよいだろ う。

ポス ト,ケインズ派のアクロ動学理論のもとでは利潤率″は(1.5)よ り蓄積 率の水準に規定される。それでは蓄積率は何により決定されるのか。Robinson によれば,企業の蓄積率を規定するのは企業家の「 アニマル・ スピリッツ」で ある。企業家のアニマル・ 不ピリッツとは「経済社会の歴史的・政治的・心理 的特性」に規定された企業家の投資態度・意欲のこと・であ り,アニマル・スピ

リッツの状態を所与 とすさば蓄積率は期待llJ潤率の増加関数である。 このこと の意味は企業が高い蓄積率を維持するためにはそれにみあう高い水準の利潤を 必要 としており,期flj潤率が高いければ高いほど,高いレベルの投資計画が たてられる,とい うことである。「成長のために利潤が望まれるのであって,

(15)

利潤のために成長が望まれるのではない」。

いまぅ期待利潤率 と実現利潤率がほぼ等 しい とす ると,この関係は次のよう にあらわすことができる。

g=ψ),  ψ′

Robinsonの 投資関数(3,1)と(1.6)を 総合す ることに より,蓄積率―利潤率の 動学的関係が描 きだせ るな 第11図A曲線は (1.6)に しめされるように利潤率 ,それを発生 させ る蓄積率の関数 としてあ らわ している。他方,I曲(3.1) は蓄積率を,それを誘発す る利潤率 としてあ らわ している。A曲線の位置は,

(1。4)または(1.6)よ り社会の諸階級の消費性向や所得亨資本比率な どに依存 し て決ま り, I曲線の位置は企業家のアニ■ル・ ス ピリッツの変化 とともに変 る ことになる。

(3。1)

(10)

ポス ト・ ケインズ派スタグラレ曇シ ョン論の論理構造

第 1図 の場合,両由線の1交点⊃は Rttnsonのいう『 望ましい議 率』

すなわち「 その蓄1積率を維持させる ために必要な,利潤に関する期待を まさにつくり出しつつある蓄積率」

を示iしている.。 「 望ましい蓄積利 は新吉典派の均衡成長を意味するも 1のではな く―,むしろ 鳥めinsonに っては労働供給に関す̲る条件 ,生産 設備の配置状況i・技術進歩の1問題な どが考慮される時のさまざまな成長 パターン彗「 時代」を析出するうえでの理論上の分析装置にすぎない。だとえ ,さきに,あげた諸条件直 ってはA山1線I曲線が有効な範囲│で交点をもた ない場合がありうるのである。

IRobinsonがぁげたい くつかの 日時代』は,諸条件の'相異による成長パタ‐ン の並rlJ的llJにすぎないが,その‐なカギで現代のスタグフレー1ション現1象との類 似関係からみて注目をひくのは,「びっこの黄金時代Jと 隣 似責金1時Jで ある。 Fびっこの黄金時向 とは第11図でいえば,点 D(ム)が企業家のア

ニマル ●スピリッッの欠如の│ために失業をともな うかな り低位の水準に停滞し てい る状態である。 この状態は短期的にみればケインズの不完全雇用均衡状態 に対応 している.。 それにたいし醸 似黄金1時Jと,労働者の実質賃金要 求カミ蓄積率に対する重大なelJ限となる状態をい う。「 もし労働者が実質賃金率 の特定の水準下へ押 し下げられるのを拒否するならば,,金1的抑圧政策を作用 させるようにするインフレ圧力が判 1不足のない,‐1際には多1量の雇用され ない弟働力がある一一場合にも発1生するか もしれない。。・…1望ましい蓄積率が 受入れられる最低実質賃金率4と結びついた蓄積率より大きし場 合,その蓄積し ようとする欲望は抑圧されるにちがいない」。 すなわち蓄積率がFイ ンフレー

50(型41)

1

(11)

法経研究33巻304号 シ ョン障壁Jによって制限 される状態である.。

ポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論の構成要因たる有効需 要 不 足 論 ,「びっこの黄金時代」 と「 擬似黄金時代」の複合的出現,または同時1的 立的出現 としての,現代資本主義の経済的環境のもとでの企業家のアニマル・

ス ピリッツの欠如 ,衰 退論 とい ってもよいであろ う。

(2)。 次に,アル・ コ不 卜原理による価格決定は.1]で ポス ト0ケインズ派 理論の特徴点の一つにあげたマクロ経済分析の ミクロ的基礎 としての寡占企業 の行動論に関連す る。すなわち,よ り典型的な問題の設定 と寡 占企業の行動論 の定式化は,たとえばJ・ A.Kregelにみてとれる。「 この(ポス ト・ ケインズ 派一ワ1用)理論の集計 レベルの説明では,投資はそれに必要な利潤を創出す る。企業のレベルの説明では,われわれはいまや,企業が投資の資金を調達す るために必要 とす る利潤を もた らす ような価格を設定す ると仮定す る」。 こ う した仮定のもとで寡 占企業の行動は次のように描かれる。 まず第1に企業家は そのアニマル0ス ピリッツにもとづ き将来の投資計画に関する意志決定をおこ な う。 この投資計画は,期待 される需要の成長にあわせて生産能力の拡大を意 図す るものであ り,また当然,過剰生産能力の一定の平均水準で計画 されてい る。次に,企業は投資計画に

必要な資金を調達す るために, 必要な利潤を生みだすマータ

・ ア ップの設定 と価格づけを お こな う。企業は需要の変化 には,価格 と投資計画の変更 によってではな く,産出高 と 生産能力の操業度の調整によ り対応す る。 この ことを逆L

字型の費用曲線 とのかかわ り で説明す ると次の よ うに な

2図

(12)

ポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論の論理構造

る。寡 占企業は,短期において生産技術水準を体イ│ヒしている生産設備を もち,

その設備の完全生産能力点 までは平均費用・ 限界費用は一定であるが,この点 をこえると費用は急速に上昇す る費用構造を もつ。 この ことは,第2図AC

MC曲線であらわ される。下 は完全生産能力をあ らわす。企業は,,その投資 計画に したがい必要資金の うち売上げマージンか ら調達すべ き額を決定す る。

この額に対応 した日標利潤一定曲線XX′が第2図にひかれてある。

曲線XX′,各操業度に対応す る曲線上の点 と点Aを対角にもつ長方形の面 積すなわ ち「 目標利潤量」を一1定とする直角双曲線の一部である。次に企業の 標準操業度がた とえば δ2な らば,日標利tinを達成す るために価格p2を設定す る。標準操業度が δlであれば価格はPlに設定 されるが,一,決定 した価格 水準は,現実の操業度が変化 しても原則的には変えないか ら短期1的には供給曲 SS′ は図示 されるように完全に非弾力1的になる。

こうしたポス ト・ ケインズ派の寡1占企業の行動論はコス ト・ プッシュ・ イ ンフレ論の基礎 にある「 アル・ コス ト原理」による価格決定の理論 で あ る か ,コス ト・ プッシュ0イ ンフL/それ自体の説明ではない。その説明のために は さらに労働側の賃金要求態度や,貨幣 ス トックの供給に関す る理論 との総合 がお こなわれる必要がある。

以上は,マクロ 0レ ベルの投資一利潤あるいは成長一分配の関係の基礎に, ミクロ・ レベルの価格一投資をめ ぐる企業行動論をお くことに より,「価格,

利潤お よび投資の間の関係Jを理論的・ 体系的に説明しよ うとい うポス ト・ ケ インズ派の着想をしめしている。 しかし,ポス ト・ ケインズ派の ミタロ理論 と しては,そ1自体の豊富化が必要であ り,更にその上でマクロ動学理論 との総 合化が必要であって,寡占企業の行動論それ自体の問題に限定 されるべ きでは ない。前者 の課題については A.S.EiChner E8]‐,A.Wood[26]にその精力 的な取 り組がみ られるし,また後者の問題についてもJo A.Kregel[15]な にマ クロと ミクロの総合化の試論がある。

(3)ところで「 有効需要の原理Jと「 フル・ コス ト原理Jの総合 とい う問題 52 (439)

(13)

法経研究

1関連 していえば,アクテイビィティ・ テナ リシスでよく知 られている価格体 系 と実物体系の双対体系を「 フル・ コス ト原理」による価格決定論 と「 有効需 要の原理」による活動水準の決定の理論に再構成することができる。ここでは 次の単純化の仮定のもとで,多部門モデルによる両原理の総合を試 み て、み よ

う。

 定〕

1.財は■種類存在し,第1財から第m財まで生産財,第%+1財から第%財 までは消費財である(物<%)。 生産財を第Iグループ,消費財を第Ⅱグルー プとす る。

2.各財は規模に関 して収穫不変のただひとつの技術によって生産 され,技 はアクテ イビテ イによってあ らわ され る。技術選択にかかわるFH5題は存在 し ない。

3.固定的生産財は捨象す る。

4.労働者 の消費財需要は賃金所得のみな らず価格に も依存す る。

5,企業家

はその所得の一定割合を消費す る。

 号〕

生産財の投入係数行列        I≧θ,(%文%)

消費財の投入係数行列        五Π≧0,(″X(%一%)) 生産財 の労働投入係数行ベ ク トル  JI≧0

消費財の労働投入係数行ベ ク ドル  JΠ0 生産財の産出水準列ベ ク トル    II

消費財 の産出水準列ベ ク トル     エ町

生産財の価格行ベ ク トル       ′ェ      i

消費財の価格行ベ ク トル     pⅡ

貨幣賃金率            ω, "%諺 マァタ ●ア ップ率  ̲       μじ が・

i財の価格 と産出量       2,亀 ;j=1,… ,%,… ,%

(14)

ポス ト・ケインズ派スタグフレーション論の論理構造

まず,「フル・ コス ト原理Jにしたが う価格水準の決定を考えると,

[=(ゴ +μ)(レ1■1+ω1)   .      (3.2)

″Ⅱ=(r+μ)むIttΠJ■)      (3.3)

(3.2),(3,3)は μおよびωが与えられた ときの価格ベ ク トル

l,P■ )の決定 式 であ る。す なわ ち,ま(3.2)よ ,

pl(pr̲41)=(1+μ)研1 (3.4) │こ=ゴ/(1+μ),Iは単位行列(%Xπ)。 (3.。4)において(1+μ)研I≧

θだから,行│レr‑41]が非負の逆行列[pr―1]‑1をもてば,(31.2)または (3.4)は 非負解PI≧θをもつ。この行列 」―ИI]カリト負逆転可能とい う条 件は,企業が選択する適当な大きさのμ≧θb(θ≦1)に たいし行列酔r‑41]

のすべての首座小行Flj式1非負であるとい う条件 (これをHawkins‐Simonの 条件とい う)と同値であるを(3.4)の場合,H―S条件は投入係数行列五Iが生産 的であるとき,つまりρ=1と して行列[r―]のすべての首座小行列式が非負 であるとき―,みたされている。 五1は生産的で,あることはい うまでもないだろ う。       .

また,p肛 は(3.2)から決まるpr≧ θによって(3:3)から決定される,p■≧θ このように「 フル ●コス ト原理」にもとづき設定された(3.2),(3.3)か ら決 定される価格水準は,各財の産出水準したがってきた有効需要の水準には依存

してい ない。

それでは次 に産 出水準 についてみ てみ よ う。(32), 出水準ベ ク トルをそれぞれ右か らかれ ると,

III=(1+μ)(PI五:″I+ω1″1) ,■κ肛=(1+μ).Ol五ュエЦ+鋤F夏 )

これ よ り賃金総額 ω と利潤総額πはそれぞれ,次の よ

″ 圭ω(J[″I+″■■i)

π=μ E(pI∠ I+ω Jl)II+CP14肛 十 れ 牡 )FⅡ]

そ こでまず 企業家の 消費需要を考 え ると,企業家の所得 として利潤か ら支払 54 (437)

(3.3)に各 グループの産

(3.D

(3.6) うにあらわ される。

      (3.7) (3.8)

(15)

法経研究

われ る割合を α,企業家 の消費性 向を ε,企業家 の消費需要 ベ ク トルを α¢と す る と,

(″=cα″

ここで企業家のエ ングル係数 を くα)として,

 Fca)

′EC″=″

 g(α) m+1Σ ″

た だ し,

αg(α)=ゴ

κI=∠III十IX=+JI

FⅡ=♂ +″

(3.9)

(3.10) m+1Σ カ

た だ し,

α=+

m+1Σ カ α・《α)=ε

同様に,労働者は賃金所得のすべてを消費に支出し労働者の消費需要ベタト ルをど,労働者のエングル係数を,(9)とすると,

(3.11)

(3.12)

以上を基礎に各 グループの需要 と供給を考 えると次の需給均等式 が え ら れ る。

(3.13) (3.14) ここでJIは生産財に対す る投資需要およびその他の需要をあ らわす最終需 要ベ ク トルである。

(3.13),(3。 14)は単純な需給の一致を表明す るものではな くF有効需要の原 理」に もとづ く産 出水準の決定 である。すなわち(3.14)に,(3.7),(3.8)お び(3.10),(3.12)を 代入す ると明らかなように,ごI≧θが決まると,(3.13),・

(16)

ポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論の競 (3.14)は産出水準 お1,■ェの決定式となる。

以上の体系においてすでに考慮 したポス ト・ ケインズの命題は次のよ うにあ らわれ る。      │

1に,有効需要の水準の変化は(3.13).,(3.14)に しあ されるように

̀産

水準や産出量に影響を与えるが,それ自体は(3,2),(3.3)にしめ されるように 価格の水準やその'変動に影響を与えない。

21に殴 資量(率 )が1潤(率 )を決定する」 とい う命題は次のようにし めすことができる。

(3,D,(3.め の辺々を合計すると,

Pl■二十PE工=(1+のレ i(五III十五百ェⅡ)+ω(JI″ェ十JttIE)]

(3.15)

他方,(3.13),(3.14)に 各グループの価格ベタトルを左からかけて合計する ,

:■1+p正

PIE∠I工I+∠EIII]十PIJI+PII″ p■ (3. )

(3.16)に(3.9),C31.11)を代入して,

PIIIttp肛ェェ■PIE五1■]十]おΠ]+PIdI十 澤¬ α″   C3,17) したがって(3.7),(3.3)を 配慮すると,C3.15)と(3.17)よ ,

pェJl+o運==μIEp[(■1■1十 五IIE)+ω(″1エ+JIIェ壼)]雫 これ よ り

π=鵜 =′lJI       C3。 18)

C31。18)は「 投資量がllJ潤量を決定するJことをあらわする

以上の「 フル ●コス ト原理Jと 陥 効需要の原則 の総合の試みは,ポス ト

●ケインズ派の命層を表現するものとしては│,ま1本十分である.。 それとよなに よりも, C3.2),C3.3)においてマーク●アップ率μが所与されている点であ .。 森嶋 [27]ではマァク●アップ率は長・・短鰤 ll.子1率1関数として̲L記の体系 に更に金融譜市場の導入が考えられているが,ポス ト・ ケインズ派の日考の脈

¨ (435)

(17)

法経研究

絡の線上で は,「有効需要の原 理 」に もとづ く産 出水準 の決定体系た る(3.13), (3.14)における投資需要

'I JIと

マーク●アップ率の1総合が ミクロ・ レベルの 寡占企業の行動論におtヽて追求されているといえる。この点ではすでにのべた ようにF価格・利潤および投資あ間の関係」が ミクロ・ レベルにおいても,マ クロ・ レベルにおいても明確にされるとともに,それらの真の意味での総合化 がおこなわれなければならないだろう。       :

[補]一一菊本[143のスタグフレーション論について

わが国におけるスタグフレーション研究の申で,ポス ト・ ケインズ派とい う ゎけではないがポス ト・ ケインズ派スタグフレーション論 と極めて近い論理構

成をとるものに菊本[14]がぁる。同書第3章「階級対立と矛盾の激化一―スタ

グフレーション」による基本モデルを しめす と以下である。

(菊本・ 基本 モデル)

)生産及び技術に関す る条件 X*=σ*K  σす>0, ωttι

κ:生産財ス トック,X:κの正常稼動時の生産量

X=δX*

:現実生産量δ :稼働率

N=″r  %>θ , εoeSJ,

N:雇用労働量, %:労働投入係数

O=ぽ  α>0, εο耐・

Q:生産財投入量 :生 産財投入係数

独占資本の行動様式

=(J十)⑫ψ+ω%)             .

:価格水準,μ :マ ーク・ ア ップ率,り :貨 幣賃金率

″=μ μ

g=β一δ*) .βθ鋤耐

(4.1)

(4。2)

(4。3D

(4。4)

(4.5)

│(4.6) (4.7)

参照

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