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問題解決行動過程の分析的研究

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Academic year: 2021

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(1)

問題解決行動過程の分析的研究

緒 方

刢

 研 究 要 旨

 心理学における問題解決行動の研究をたどるに,1920年代において形態心理学派のケーラー,

ウエルトハイマー等の特色的研究が開始され,更に1930年代になるとドウンカーの「生産的思 考の量的研究」の如き形態心理学派的方法に行動主義的手法を加えた研究も行われ,それら二 つの流れが1940年代初めまで続いていると概観される。然るに1950年前後は「どちらかと云え ば少くとも心理学の他の領域におけるほどこの領域の研究はそう盛んでない」とジョンソン・

D,Mは評している(註1)。此の点について中野佐三氏は「此の領域についての近年の研究は 重点が問題解決行動の一般性や基本的過程よりもその主体の側に注目して取扱われる傾向にあ

り,問題を解く能力に個人差があること,例えば紋切型(Stereatype)硬さ(rigiditp)固執

(PerseveratioD)等の事実セこついての個人差研究が寧ろ多く現れてきた。或は思考過程の Varlablesに因子分析を行い分化的思考過程を研究するものも多い」と観点をかえて評してい

る(註2)。

 問題解決の研究方法について前記のジョンソン・D.Mは1944年に「適切な問題解決の心理 学を求める要求は一般に認められている。然し之を充たす方法の進歩には失望される」(註3)

と慨嘆して居り,問題解決行動研究においては研究対象の複雑性に比して研究方法の未発達が 大きな障害となっている事実を否定出来ない。更に従来の問題解決研究の内容を概観するとそ の多くは問題解決行動のProductsの面,即ち成功失敗やその数, 又は所要時間などである か,或は見通しの成立,認知構造の転換等を中心にした基本過程についてでありその行動の過 程における諸Variablesの力動的な関係すなわちprocessの内部構造についてのものは少 かったと云える。この点にかんがみErwln. ROy. JhOD(カリフオルニや大学医学センター 心理学部研究員)等が1957年Probleln−Solvlng IDfonnation ApParatus(問題解決情報装 置)を考案し被験者に之を操作解決させることによって問題解決行動過程の内部構造を明かに

しようとする研究を行っているのは新機軸として注目されると思う(註4)。筆者もErwiD の試みに示唆を得て更に簡易にしたProblem−So1▽iDg IDformation ApParatus(略して P,S.1)を考案し問題解決行動過程の分析的研究を試みたが本稿はその方法と実験結果の報告 である。

研 究 方 法

(一)実験装置 PSI,教示器,テープコーダー,ストップウオッチ。

(2)

 PSIは(図1図2参照)縦横約30cm厚さ10cInの箱形で上面の盤に9個の番号付き豆電 灯(No・1からNo・9)が円環上に配置され,更に1個の豆電灯(No,10)は盤の中央に配置 されている。各電灯はそれぞれ点滅スウィッチをすぐ傍につけられている。箱の中は盤上の問

図1 問題解決情報装置 図2教 示 器

9

[コ

一②一、

   に=コ     、、

⑨⑤、④

   薗

『、

寄滅

 灯

評)戸⑦

仁=コ    ;=コ

題に応じた回路の配線が蔵されている。盤面上の電灯のうち矢印で直接結ばれた電灯間には何 等かの関係があることを意味している。それらの矢印はすべて色も大きさも同一であるが次の 二様の連結関係のどちらかを意味する。

 (1)矢印の尖端に当る電灯を点ずるためには矢印の元の方の電灯がつけられていなければな    プラス

らない(+の連結関係)

 (2)矢印の尖端に当る電灯をつけるためには矢印の元の方の電灯をつけることは妨害とな

  マイナス

る。 (一の連結関係即ち妨害条件)

 中央のNo.10を点灯することが問題解決のゴールであり No.4 No.5 No.6の三者が出 発点である。この出発点とされる三灯はそれぞれのスイッチを入れると無条件的につくが他の 番号の電灯は総てそれ単独の点灯は出来ない。出発点の三灯は一個でも2個乃至3個を点けて 出発しても宜しいと被験者に教示し,被験者は出発点の点灯をして目標No.10えの矢印コー スの各灯を追うて下弓処の矢印の意味と矢印の適切な組合せを操作によって把握して行かねば ならない。かくて途中の下位分節問題が解決され綜合されていって目標No.1の点灯が最後 に完結する。

PSIの操作に慣れさせ矢印の意味する原則を判らせるため, PSIを操作させる直前に教示用 の練習器を被験者に操作させる。教示器では矢印連結関係の二様の意味を経験悟得させるため,

(1)X灯をつけるためにA灯及びB灯をつけることが必要な場面と (2)Y灯をつけるためには A灯をつけることのみが必要でありB灯をつけると妨害されると云う場面を設定している。

 実験者はテープコーダーを使用し被験者のPSI操作を少し離れた場所で(4点5滅)と云 うような簡単なことばで録音してゆく。PSI操作の進路や停止時間等の記録や整理には筆紙 による観察記録法や,被験者の網戸記録法よりも上記の如きテープコーダーによる記録が極め

一62一

(3)

て正確利便である。

 (二) PS翌の解決法と質問操作

 PSIの問題は矢印関係と盤裏面の回路の変更によって各種のものが作成出来るが筆者が作 成使用した問題は次の如きものである。即ちNo.4, No.5, No.6を出発点とし以後下記の 操作が解決の条件となる。

a.必要条件

b,妨害条件

④点灯で⑨が点灯

④点灯で⑧が点灯

⑨と⑧の点灯で⑦が点灯

⑦点灯で①が点灯

⑥点灯で②点灯

①と②の点灯で⑩点灯

⑤の点灯で③を点灯することが出来るが③は⑩の点灯の妨害をなすので③ 或は⑤を点灯していけないことを発見せねばなら舜い。

 以上の条件を完成するため,被験者が矢印関係を辿って発生させる合理的質問操作は最大限 次の15種が可能となる。

   一 ④から⑧がっくか?

   二 ⑧だけで⑦がっくかP    三 ④から⑨がっくか?

   四 ⑨だけで⑦がっくか?

 ※五⑧と⑨とで⑦がっくか?

   六 ⑦から①がっくか?

   七 ①だけで⑩がっくか?

   八 ⑥で②がっくか?

   九②だけで⑩がっくか?

 ※十①と②とで⑩がっくか?

  十一 ⑤から③がっくか?

  十二 ③だけで⑩がっくか?

 ※十三①と③とで⑩がっくか?

 ※十四②と③とで⑩がっくか?

 ※十五①と②と③とで⑩がっくか?

 ※印以外の質問は電灯2個の間にひかれた矢印の十か一の連結関係を見る分析的質問であ

り,※の質問は一つの電灯に対して二つ叉は三つの電灯からひかれた数本の矢印線の綜合的関

係を目的にした綜合的質問である。このPSIの問題では偶然的に最短路を辿って成功した場

合でも分析罫質問10種のうちの4種,綜舗勺質問5種のうちの2種が必要である。

(4)

 (三)問題解決行動過程分析のため設定したVariables,

 (1)試行総時間 教示の後被験者がPSIを観察し始めてから⑩を点灯し終るまでの時間を 第一試行時間とし, この第一回の聞題解決成功の直後PSIを消灯して更にも一度解決操作を 始から行わせそれを第二試行時間とする。第一,第二試行を合せて試行総時間とする。

 (2)停止時間,試行時間中に操作を中止してPSI盤面を観察したり思考したり困惑してい る時間。1回10秒以上の停止時間をとるが試行総時間には停止時間を含んでいる。

 (3)停止回数

 (4)停止一回の平均時間

 (5)質問の総数 被験者が第一第二試行中に試みた質問操作の総数  (6)綜合的質問の数

 (7)分析的質1問の数

 (8)質問の種類の総数 前掲15種の質問のうち甲種を解決までに使用しているか。

 ⑨ 綜合的質問の種類の数 綜合的質問5種のうちその被験者が使用した種類の数  ⑩ 分析的質問の種類の数 分析的質問10種のうちその被験者が使:用した種類の数  ⑪ 手先操作総数 被験者が問題解決のために用いたスイッチの操作の総数

 ⑫ 無駄手先操作数 矢印関係を考えないで矢印の元の方の電灯はついていないのに矢印の尖 端に当る電灯のスイッチを入れたり,又一度つげたもので次の操作に必要なものを消したりす るような不条理な手先操作の数

 ⑬ 一分当りの質問数 試行時間から停止時間を除いた実際操作時間一分当りの平均質問  ⑭ 一分当りの手先操作数 試行時間から停止時間を除いた実際操作時間一分当りの平均手先 操作数

      実 験 結 果 と 考 察  (一)PSI問題解決行動過程のVarlablesの相関関係

 〔表1〕は長崎大学附属中学一年生45名(男子25名,女子20名)に本PSI実験の結果より 得た過程変数間の相関表である。各矧数毎に検討すると。

 1) 試行総時間は操作の停止時間(観察,思考若くは困惑の時間)や質問総数と高い正相関 を示す。又試行総時間の多くなるものは実際操作中の質問速度(一分当りの平均質問数)が少 い傾向が見られる(Cr=一〇.49)。

 2)停止時間は試行総時間や停止回数,停止一回平均時間と高い正相関を示したが其の他の 変数との間には相関性が見られない。

 3)停止回数は試行総時間や停止時間と高い正相関関係を,叉一分当りの平均質問数や平均 手:先操作数とは可成りの逆相関関係を示し,質:問総数や手先操作総数と梢正相関関係を有して いた。停止回数の多いものは実際操作中の質問操作速度もおそく,一方質問総数,手先操作総 数が多く,ひいては停止総時間,試行総時間が多いと認められる。

一64一

(5)

表1問題解決行動過程におけるVariablesの相関(第1第皿試行合計値による)

 試 行 1

 総時間

1 試 行 総 時 間

2 休 止 時 間

 休止1 2      0.84  時 間

3箇籔

 休止一 4回当り  壁間

5雛

 質簡の 6種類の  数  綜合質 7問の種  類の数  分析質 8問の種  類の数

9鰻

0、86

0.48

0.54

0,23

0,05

0,34

0,21

0,77

0,79

0,08

0,05

一〇,13

0,04

一〇,09 3 休 止 回 数

4 休当 止り 一時 回間

・・ J・・56

・・3

0,31

0.03 一〇、07

一〇,08

一。.。2L。.32

  1

0,08−0,01   1

0,05

o・12 P0・32

一〇,03

0,08 5 質 問 総 数

0.59 6 質類 問の の総 種数

7

曇類

問の の数

・・44・・85

0.62

0。45

0.86  0.45

0,45 0.39 8 分種 群類

0,22 9 綜 合 質 問 数

・・軽業 O,62

O.94

。ユ。。.36L。.。8。.き9

    1

  }

0・3

o0・14tO・4810・ 9

0.45  0.25 0,51 0,44 10 分 析 質 問 数

0,89 11 手心 機 操 作 の数

 無駄手 12先操作  の 数  一分当 13り質問  の 数

0.75  0.12

一〇・49 u0ユ5

。.3gL。,。4

一〇,49

嚇ト・24

  1 一〇.07−0,34 0,13

0.16 0.75

一〇.19

0,34 0,26

0.01 一〇.05

0,06

O,04  0,02 0.34

一〇.07

0,05

0.34  0,79  0,89

一。.23L。.2、L。.36

  1

一〇,12  0.]一3

0,07 12 無作 駄 手の 徳 操数

一〇,44

一〇.01 13 一質 詫間 当

り数 14 一手

\1

・・8・

 4)停止一回の平均時間は,停止総時間と高い正相関を試行総時間や停止回数と可成りの正 相関を示すが他の変数とは殆ど関係が認められない。

 5) 質問総数は試行総時間と可成りの正相関を示し停止関係の変数や実際操作中の速度関係 の変数等とは余り関係を認められない。但し分析的質問や綜合的質問との関係を比較するとこ の何れにも高い正相関関係があることが認められるが特に分析的質問の総数やその種類の数に 関係することが認められる。

 6)質問の種類の数その下位分類としての綜合的質問の種類数,分析的質問の種類数と高い

正相関を現したり,叉質問総数や手先操作総数と可成りな正相関を持つことなどは当然と考え

(6)

られる事実である。停止関係の変数や実際操作中の速度などとは殆ど相関性が認められない。

 7) 綜合的質問の種類の数 質:問の種類の総数と強い正相関を示す外,質問総数,手先操作 総数,綜合的質問の数,分析的質問の種類の数などと中程度の正相関を示している。

 8)分析的質問の種類の数は質問種類の数や質問総数と高い正相関を有し分析的質問の数や 手先操作総数,無駄手先操作数と中程度の正相関関係を示している。停止関係の変数や実際操 作中の速度などとは殆ど相関が認められない。

 9)綜合的質問の数は質問総数や綜合的質問の種類の数,手先操作総数と中程度の正相関を 示し,停止関係の変数や,一分当りの速度変数,試行総時間等との相関は見られない。

10)分析的質:問の数が質:問総数や手先操作総数と極めて高い正相関関係を示したのは分析的        10

質問の種類が質問総種類の中で15 を設定されていることから当然齎らされる結果であろ う。停止関係のVarjablesや一分当りの速度変数などとの相関性が低いことは綜合的質:問の 数の場合と同様であるが試行総時間との相関性は可成りに高い。

11)手先操作の総数 他の諸Varlablesとの相関値が質問総数の場合と殆ど同じ傾向を示 しているのは手先操作1乃至3にて1質問操作が構成されている理由からであろう。尤も:質問 を構成しない無駄手先操作に属するものもこの手先操作総数に含まれているがこの両変数の相 関が極めて高い。

12) 無駄手先操作の数 この変数は非合理不必要な手先操作で極めて解決成功を遅らせるも のであるから,試行総時間とCr=0.751質問総数と0.75,分析的質問の数と0.79,手先操作総 数と0.89等の高い正相関値を示すが,試行総時問や質問操作が多い場合は無駄手先操作も多く 発生していると認められる。叉無駄手先操作は質問を構成しないので質問のSpeed(一分当り 平均質問数)とはCr=・一〇.44を示すのも理解出来る。

13)一分当り平均質問数停止時間を除いた一分当りのこの質問操作速度は試行総時と Cr=

一〇.49無駄手先操作数と一〇.44及び停止回数と一〇.49の逆相関性を示す。質問総数との相関 性は認められない。

14)一分当り平均手先操作数は一分当りの平均質問数とCr=0.81を示し且つ其の他の諸変 数との相関性も両者殆ど類似している。

 (二)問題解決学習効果上の優劣両群の解決行動過程比較

 このPSIで実験した45名の前記被験者をPSI問題解決学習効果から優中劣の三群に分類 した。その方法は第一試行完成の直後に実施した同一問題の第二試行において幾個の手先操作 をもって解決し得るかということを判定基準とした。即ち第二試行を少い手先操作数を以て容 易に解決し得た者ほど第一試行がよい学習効果を与えたと見られるからである。このPSI問 題解決は最小8つの手先操作を必要とするので第二試行において要した手先操作数10以下のも のを優群,25以上のものを平群とし,この優劣2群の第一回試行における行動過程のVaria−

blesについて比較してみる。(表2参照)

一66一

(7)

表2学習効果上の優群と劣群の第1回試行におけるVariablesの差

試 行 総 時

操 作 時 間

休 止 時 間

優艶 、564i3・4125・

劣 群

。一、2{4、4

  1_ 313 101

休 止 回 数

P

9.3

5,4

10・05PO5 生均 休平質

里時 り間

22,8

14.4

0、Q5 問 総 数

36,7

33,0 質種 問類  の の数

13.2

12,5

綜種 合 質類 問 の数

3、5

4.3

0,1

耀

誓類

9,7

8,3

0,01

綜総 合 質 問 の数

5,!

10,6

Q,05

燃1

雰数

3L6

26,6

0,1 手総1

房数

97.8

92,1

華の

28,6

26,3 一質 分間 当

り数

7.6

6,9

一手 分先  操 当作 り数

20,0

19,2

 平群劣群は第一回試行時間について2分半の相異を示すがそれは実際操作時間は全く同程度 で,停止時間,停止回数に関して優群が大きいことが判る。なほ停止一回の平均時間も優群が 長い。停止時間は10秒以上PSIのパ・一フオマンスを中止している時間で,その時問は主とし て観察や内面的思考が行われるものであるから優群においては豊富な観察思考を以て第一回試 行が行われていたと見るべきであろう。このことが第一回試行の学習効果を高めて第二回試行 を容易に成功させたと考えられる。

 次に質問総数,手先操作数,操作速度について優群がやX平均数値が大きいが有意差は認め られなかった。

 質問の種別について見るとき,分析的質問の数とその種類数が優群に多く(P<0.01)綜合 的質問の数とその種類数が劣群に多い。(P<0ユ)

結 語

 論理的思考問題を内容としたこの問題解決情報装置はまだ第一回の考案であるため,そのよ うな問題解決行動の露呈とその観察を適切容易にするためには更に装置そのものの改良を計ら ねばならない。叉解決行動過程を把えるための変数もこの実験では前掲の14種目を設定して資 料としたが,作業活動量や情報質問の性質解決.方法等のASpectsから更に精細に分析整備 された諸Variablesを設定してその相互関係を研究する必要があろう。叉本稿所載の実験は 問題解決行動過程の諸Vafiables間の関係を小数の被験者について一般的に究明したこと,

及び回れて学習効果を現した問題解決行動と劣った効果を現わしたそれとの比較と云うことに 止ったが,更に問題解決行動過程のVariabIesの関聯構造(型)と知能,性格,教育程度など

との関係については今後の問題としたい。 終

(8)

註 註

備   考       ,

lJhonson D.M. Problem Solving and Thinking Annual Review of Psychol. Vo16,

  1955,P,455

2 問題解決の心理 中野佐三 8頁 昭31 森書店

3Jhonson D,M .A modern Account of Problem−Solving, Psycho1. Bu11,41.1944, P   201

4 ;Erwin Roy Jhon. Contribut三〇n to the Study of the Problem Solving Process. Psy−

  chol. Monog. Genera1&Applied, Vo171, No.18,

      (昭35.1.30受付)

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