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混融試験法に基く脂肪酸
(飽和・一塩基酸)の商品鑑定法
平 木 照 男
脾とほ化学的には・,脂肪酸のグリセリンエ・ステルを主成分とするものを称
て油脂を加水分解すれば,脂肪酸とグリセリンになるが,油脂の色々な
はこの脂肪酸の種類で規定ざれるのである0
リえば,ヘットとかラ、−ドのような常温で固体の脂肪から得られる脂肪酸ほ リソ酸CllH23COO軋パルミチン酸C15t‡31COOH およびステアリン酸 35COOt壬の種類が主であり,ゴマ油,ナタネ池の液体の油申に存在する脂
オVイン酸 Cl了H33COO王‡,リノール酸C17H31COO圧 およびリノ
17Ⅰも9COOHが多い○旨肪酸は上記分子式で明らかなように・,カルポキジル基・鵬COOHを含んだ の酸であるが,この基を一個有するものを−・塩基性と云う。また.C殉H餌.1
の式に当耽る酸を飽和酸,その他を不飽和酸に区分してこいる。
通の油脂では,全脂肪酸の最は油脂畳の95%内外を占め,その脂肪酸は aの例外を除桝ま,大体一・塩基性に属し,また殆どか鎖状結合である。云 えると,CnH2n.1COOH(n:1,2,)或いはCmH2例02(仇=2,8,‥)の−・般式 ぁされる一・塩基性の飽和酸(飽和−・塩基酸)は油脂界に.普遍的に存在する であり,璃昭二沼=16のパルミチン酸,∽崇18のステアリン酸の存在範囲
;域に.及んでいる。
和一∵塩基酸の物理的性質ほ弼の数によって規定される。〝7が低級なもの 常温において,流動性のある液体で,刺戟臭を有し,中級のもの(〝い=6:カ
ン琴′一明=8:カプリル酸)ほ油状で不快な臭気があり,高級なものほパ
インようの固体で,臭気はない。
2 (442)
そもそも油脂は生命の維持に不可欠なるものとして,我々の常に摂取す のである。勿論その摂取の状態は常紅−・様でほなく,油脂含有物を通じ,
は,てんぷら油,サラダ油,マ−′ガリン,ショー・トニング等の加工品を通 行われてル、る。また他方でほ,右けん,塗料,印刷インク等の油脂製品 て,我々の日常生活に寄与してル、る。
油脂製品は元来油脂の直接加エによるものであるが,最近でほ,油脂を 分解して脂肪酸を得る分別およびその精製技術の進歩から,純度の高い脂 が比較的廉価に得られるようになり,それが為に脂肪酸工業の発展は目覚ま
く,大部分の油脂奥品は「油脂→製品」の工程から「脂肪酸−す製鼠」の工華 転換した。それに.伴って,従来の製品よりも品質ほ向上し,また油脂の用羞
○
拡大された。
現今市場で認識されてい
る合成表面活性剤,アルキド樹脂,潤滑グリースゴムタイヤ,化粧品,繊維工兼用助剤等は.「脂肪酸→製品」の工程に基く である。
此処に.おいて工業用脂肪酸の取引ほ頻繁となり,その鑑定への関心を静 必要が発生一7した。日本工業規格(〃S)もK1957〜3341でエ共用脂肪酸匿蔓
る規定を設けた。
此の規定にもあるように.,中和価,ヨウ素価,けん化価は脂肪酸の晶好 走する重要なファクタ−であり,また沸点,気化熱,比熱,燃焼熱,比重,
折率さらに分子蒸留,クロマトグラフィーー,赤外線吸収スぺクトル等の 品質をよく決定するものとして,屡々用いられるが,これらほ何れも専門 識と経験,設備を要求される欠点がある。
そこで筆者はこれらの欠点を克服するもの,簡単かつ便法であるもの 従来の混融試験法を考えた。
併しながら,この試験法に基く場合,−叔的に.云って,混融する相異
種の脂肪酸が両者とも偶数炭素脂肪酸(押㌍=偶数)である時にほ問題ほ
が,2種の中,1種が奇数炭素脂肪酸(椚二奇数)である場合,果して
考え方に基いての混融試験法で妥当性を得るかどうか疑問を感じた。
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で筆者はlその精査の・一項として,代表的奇数炭素脂肪酸のへブタデカン 戚を行い,更にその精査の結果に基いて,混融試験法を修正し,一・部の
者達1)匿よって:云われたように高級奇数炭素脂肪酸が天然油脂界に存在す
どうかの関越にその修正法を適用し,その間題の解明を試みた。以下これ
いて報告する。
実 験 の 部
ヘブタデカン酸の合成 奇数炭素脂肪酸の合成方法にほiアセト酪酸エ ルおよぴマロン酸エステル法,グリグナード法,パラフィン系炭化水素の
と酸素紅よる酸化法等があるが,筆者はニトリル法によって,へブタデカ の合成を行った。
トリル法による高級奇数炭素の一億基酸の合成については,椎名2)の報告 ので,詳細な合成方法の記載は省略するが,合成順序ほ概略次の通りで
木口ク→パルミチソ敬一}セタノー・ル・−−>ヨク化セチル→
 ̄
C16H$80H
C16H33Ⅰ‥l
− ∴ C17Hs302・CH8C17H8302・C免H5
)パルミチン酸C16H3202 木口ウニ塩基酸除去後の木口ウ混合脂肪酸をメ レ,エ.スチルとし,そのうちから減圧(0.04〝2椚ガg)下で,沸点1430〜1500C ものを分取し,これを水酸化ナトリウム液でけん化の後,酸で処理して得
。そしてそれはアセトンを用いて周結晶を行い,精製した。(既知のパルミ B6merund Limprich,Z.Untersuch Nahr,Genussm…,塾641(1912)
H鈍e‡t,翫1量りSOC..Cムim.FIanぬ〔Ⅳ〕,些612(1912)‥ibid‖,込1039(1913)
岩本,山田,工化,蔓ゝ964(1928)
I)小Holde,WBleyberg,U.I小Rabinowitsch,Berl・,62,177(1929)
Bl・FlaschentI畠ger,uF・Halle,Z・Phys・Chem一,些120(1930)
上野,生乳.工侶旦260(1934)
椎名,工化,旦堅1359(1933)‥ibid、,蔓ち1564(1934):ib軋,軋345(1936)
4 (444)
チン酸と混融試験の結果,融点降下を認め
2)セタノールC16H8SOH このように・して得たパルミ デ ス エ を 酸 ン チ して,パルミチン酸エチルとし,その精製物をキハツ池(沸点範囲700
得 て
し
ノ\
に溶解し,〝−プチルアルコールとナ・†リクムで還元して得た。
生成物は.エタノールからの再結晶により精製した。(市販の純品との混融試 の結果,融点降下を認めず。)
執刷 て え
加 5)ヨウ化セチルC16H88Ⅰ精製セタノー・ルにヨウ素と赤燐を
こ¢暗室成するヨク化セチルをキノ、ツ油で抽出し,更に・キハツ池で再結晶 精製した。(既製縄品との混融試験の結果,融点降下を認めず。)
4)セチル=.トリルおよt$ヘブタデカン酸C16H3SCN,CITH8102 かく
し.
の ン hソ こ ︐卜
得たヨク化セチルに.シアン化カリウムを作用させ,セチリレニトリルを造 たる生成物を直ちに水酸化ナトリクムのアルコール溶液でけん化した0
生じたへブタデカン酸カリウムを塩酸で処理し,その遊離酸とし,再結晶を行い精製した。
それら反応生成物の精製晶の融点ほ第1真の通りである。
欝1表
63.20〜68.50C 30.00〜30.30C 25.2◇′−25.70C 62.90′〜63.30C 29.50〜29.80C 24.20′}24.50c 48.50′−49.lOC 23.60′〉24.20C パルミチ∵/酸
メチルヱ・スチル エ・チルエステル へ.ブタデカン酸
メチルエステル エチルエステル セタノー・ル
ヨク化セチル
〔二Ⅱ〕融点の測定方法 本研究が「簡易」をモットーとする為に,費用の 最も安価な器具を用いることにした。
1)用具 毛細管:内径約1mm,外径約2mm.以下,長さ50′・・ノ60mm
ラス管で,一滴は溶封したものを用いる。温度計:全長約30mm,水銀坪
(舶5) 5
約10mm,lOC目盛の二重管式のものを用いる○それはジ−ベルトとキユ 両氏製標準温度詔(1/100C目盛)にて補正した。融点測定用フラスコ:長
30爪m,球部の直径約60mmを使用した。
)方法 試料を約10mmの高さになるまで,毛細管に充填し,毛細管の下
;水銀球の略中央になるようにして,温度計に密着する。次に濃硫酸を入れ 測定用プラスコにそれらを挿入し,温度計の下端がフラスコ球部の中央より
し下方紅位するようにして,コルク栓でとめる0南濃硫酸浴中に・は着色を防
少長の硝酸を添加している0第1圃にセットの状態を図示した。する為,
セットし終れは,浴を均一・に温め、るよう留意して,
加熱を続仇 試料融点下,約100Cで加熱速度 転換して0一・50C/1min・に暖め,この状態で試
が融け初める時(上昇融点)と更に完全に試料まず20C/1minlの速さ
になる時(透明融点)の温度を読み,試料 融点とする。簡A・0・C・S・試験法(Am・Oil iemists′Soc.,)ほ透明融点を以て,試料の融点
し,日本薬局法では上昇融点を以て融点と規定 て:いるが,併し双方を読むことによって−,両者 間隔から試料の純度が推測される便利がある。
けち間隔が小さい程純度の高いことを意味する。
この測定方法の信敏度を試す為,柳本製敏鼠融 測定装置MP−Sg型を用いて,同一嵐験を繰り
したが,−・致した数値を得た。
結果および考察
第1図
混融試験の結果については,
1)遊離酸の場合 第2表はパルミチン酸とへブタデカン酸との各種混合割
における融点の実測値である。
(44ケ) 7
第8蓑
融 点
(OC)
パルミチン酸メチリレ
(%)
へブタデ酸メチ■ル
300〜30.3
27り2′}271、8 25..5一}26 4 25小0′・.25.5
25…0〜25.8 25.8′−26.5 26、5〜27.3 26.8〜27…327.5′−27 8
27..5′}27.829.5′・)29.8
010 20 30 40 50 60 70 80 90 100
れを図示すると第3図になる。
C17(%)・→ 30 50 70 90 80 60 40 20 一←Cl¢(%)
第3図
台 (448)
第4表
これを図示すれほ第4区粧なる。
J
20 ←C川(%)
_」山l ■ ●
20 C17(%)→ 80 50 70
80 60 40
第4図
これらの,表,図から、C16酸とC甘酸のエステリレ系二成分混合物の場
はC16酸とC18酸で代表する「偶数一偶数」エステル系二成分混合物の混
験に見られるような直線的な融点状態図を作らず,少し降下するどころが される。
・・・・・・方,純粋な脂肪酸およびそのエステルほこれをガラス皿上で溶融し・
する時,凝固に際して,美しい針状様の結晶を形づくる。この形態は不純
(449) 9
ぉよびその・エステルの場合,或いは「偶数一偶数」系の二成分混合物およ
応する1コ・スチル系混合物の場合には趣を異にし,恰もパラフィンが凝固の
呈出するような様相を呈し,肉眼で認め得る結晶状態とはならない。ころが二成分混合物でも,C16酸とC17酸との混合物およぴそれらのエス 系混合物の場合たおいては,二成分混合物と云う限りにおいて当然予想さ
る無結晶状態とはならず単一成分の純粋品と類似する結晶を形づくる0こで以上の研究を綜合すると,まずへブタデカン酸の合成に始まり,それ パルミ.チン酸および両者のエステルの混融試験を行い同時に融解,凝固の
結晶状態の観察を行ったと云うことになる0して混融試験の結果は,遊離酸の場合についてほ.,C16酸とC17酸の二成
合物は融点降下を示さなかった0般匿脂肪酸ほこ・れに他の脂肪酸が混入すると,明確な融点降下が起り,共 くり,それは再結晶による精製法でほ分別出来ないものと観念さ 混合物をつ
ている。従って脂肪酸の純粋性を鑑定するのに,試料の融点に対応する融点 つ合成純粋脂肪酸を加えて:混融し,融点降下の有無の結果で決定してい
し乍らC16酸に他の脂肪酸として−C17酸を加え混融する場合は融点降下が ず混融試験に・対する−・般的概念に矛盾のあることを確認した。放に従来の による混融試験をもって,絶対的なるものと考え,総ての脂肪酸の純度,
塀の鑑定を行うことは誤認の憂いがあることに・なる。
こで筆者ほ混融試験の方法を次のように.修正してみた。
ず試料脂肪酸をエチルエステルとなし,そのものについて,融点と溶融凝 後の結晶状態を観察する。即ち精製脂肪酸のエチル、エステルがガラス皿上で 敵の上,放冷する。凝固に.際し,結晶状を冒するならば,■嘩一成分か又ほ C17勤とのエステル系混合物であり,無結晶状となるならば,「偶数−
数」系の混合物である。
潜晶状のものについてほ,試料融点に対応する合成純粋脂肪酸エチリレ.エス
レを添加し,混融を行う。融点が降下しない時は単一成分であり,降下を示
10(450)
す時は「偶数−‥奇数」・エステル系二成分混合物である。
これを図示すると第5図になる。
エステル化 溶融・放冷
試 料+→試料脂肪酸エチリレエステルーr・→
(凝固巨細→(結晶状)=晶数竜胤黛混合姦〉型堅攣冬型空
−→(無品状)=「偶数一隅数」系混合物 粋脂肪酸エチルエステル
→(融点降下)=「偶数−一奇数」系混合
・−す(混融)
l−→(融点−・定)=単一成分 第5図
最後にこの修正試験法が天然油脂界における高級奇数炭素脂肪酸の存否 の解明に−・手段となるかどうかの考察をする。
かつてVロバナ朝鮮朝顔(Datura Stramonium)の種子油,所謂ダチ 油中にダチ.ユリン酸(C17酸)の存在が報告された。併しぞの後,Holde$)
の酸はパルミ.チン酸とステアリン酸の共融混合物を誤認したものであると 在否定の報告をなした。叉Clark4)Manjunath5)らも彼と同様の見解を た。この間題については屡々両論に跨る。
これは高級奇数炭素脂肪酸を含む油脂,墟が極めて少なく,叉その含有 微量であること。脂肪酸に.おいてほ殊に含有量の微量なものを単離するの
めて困難で,その検出は容易でないことに−・因がある。それた関してdeVisser6)はステアリン酸47.5%:パルミチン酸52・6%
成分混合物はアルコール再結晶紅変化されず,化学的に.−一物質としての紛 示すことを報告している。叉R.L.ShI・ineI・7)等も天然油脂界に・おける 素脂肪酸の存在を確認することの困難な理由として,Cl了H$402(へブタ
3)Hold占,BeI・・−,塾1247(1905)
4)。R・W・Clark・JuAm‖PbarmlAsoc・,写生843(1935)
5)B・L ManjunathandS・Siddapa,,,tndianChemrSoc・1些_400(1935)
6)deVisser,Rec・traVl・Chim・,壬左346(1898)
7)R=L.Shriner,J.MFultonandD.Burks,J.,Am.Che皿Soc・,55,1949
(451)11
g匿とり,①「C16・+C18」が化合物を生成すること。⑧「C16十C18」の等
,助がC17HさiO2 と大休I計−・温度で融けること。又この化合物が分別結 分離されないこと0⑨合成C17軋Ogの純蟹に疑問があることを述べて
即ちこの混合物の融点は57・50Cで定数に達し、発表′されているダチユ
(C17酸)の融点が540〜600Cであるところから,t・の混合物がC17H3402 誤認される0
レこの困難ほ従来の混融試験法のみを唯一・の手がかりとして,依存する為 ずることであって,前記の脂肪酸エステルによる融点測定と溶融,凝固後 晶状態の巨視的観察との併用によれば,容易紅単一・成分か混合物かを確認
とが出来る。こ・れに・ついてほ,椎名,平木,江崎協同の研究報告8)があ
行の程度ではあるが予想通りの結果を得ている。
究を終始御指導下さつた元香川大学教授椎名博士に感謝の意を表しま
*木・江崎,創Jl大学経済論叢,軍9,379(1956)