目 次
基礎知識
・ 脂肪とは?
・ 脂肪酸とは?
・ n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸
・ トランス脂肪酸
・ コレステロールとは?
・ コレステロールが含まれる食品
料理への応用
・ 精製油か天然油か
・ 特殊な油脂について
脂肪、油、
コレステロール
ネ ス レ・栄 養 情 報 誌
10% 18% 72% 4:1
ピーナツ油
ヒマワリ油
亜麻仁油
NutriPro food 10/08 脂 肪 、油 、コ レ ス テ ロ ー ル基 礎 知 識
脂肪酸とは?
脂肪酸は、含まれる二重結合の数によ って分類することができます。 飽和脂肪酸(SFA) • 二重結合を含みません。 • 空中で酸素と結合しにくく、酸敗(酸 化)しにくいです。 • 飽和脂肪酸が多く含まれる食品は通 常常温で固体(脂)です。 不飽和脂肪酸 • 1個(一価不飽和)またはそれより多 い(多価不飽和)二重結合を含みま す。 • 不飽和脂肪酸が多く含まれる食品は 常温では液体(油)であることが多 いです。脂肪とは?
ヒトが動いたり、呼吸したりするには「エネルギー」が必要です。エネ
ルギーを作り出す栄養素は「糖質」「脂質」「タンパク質」で、これらは
3大栄養素と呼ばれています。
3大栄養素のなかでも特に高いエネルギーを作り出せるのは「脂質」で
す。脂質にはいろいろな種類があり、食品中の脂質の大部分を占める
のが「脂肪」です。日常の食生活および食品中の脂肪のほとんどは、ト
リグリセリドで構成されています。トリグリセリドとはグリセリンに
脂肪酸が3個結合したのもです。脂肪酸の種類によって、脂肪の組織
および物理的特性が決まります。また、油脂の健康への影響は脂肪酸
組成によって変わります。
LDL = 低比重リポ蛋白(悪玉コレステロール) HDL = 高比重リポ蛋白(善玉コレステロール)ご存 知 ですか?
脂肪酸の種類と血中コレステロール値への影響
摂取源 動物性食品(全乳、バター、チーズ、アイスクリーム 等)、チョコレート、ココナッツ油、パーム油、パーム 核油 オリーブ油、菜種油、ピーナツ油、ナッツ類(カシュ ーナッツ、アーモンド、ピーナツ等)、アボカド コーン油、ヒマワリ油、大豆油、紅花油、菜種油、 魚(サケ、マグロ等) ほとんどのマーガリン、植物性ショートニング、半硬 化植物油、; スナック菓子、加工食品、天然乳製品 脂肪酸の種類 飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 トランス脂肪酸 コレステロール値へ の影響 LDL HDL LDL HDL LDL HDL LDL HDL 19% 50% 31% 36:1 8% 27% 65% 128:1 SFA油脂中の脂肪酸の 平均パーセンテージ (一価不飽和脂肪酸) MUFA (多価不飽和脂肪酸)PUFA n-6系脂肪酸:n-3系脂肪酸の比 飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 シス型 硬 化 トランス型(トランス脂肪酸) 不飽和脂肪酸 SFA (飽和脂肪酸) ー水素 ー炭素19% 73% 8% 11:1 14% 24% 62% 155:1
紅花油
オリーブ油
コーン油
17% 32% 51% 57:1 植物油(ヒマワリ油、大豆油、菜種油、 クルミ油、グレープシード油、コーン 油等)、肉、卵および魚に含まれてい ます。健康的な食生活のためには、n-3 系脂肪酸群とn-6系脂肪酸群のバラ ン ス を と る こ と が 重 要 で す 。 n - 6 系:n-3系の比率は4:1が理想とさ れています。魚、緑葉野菜および菜種 油を豊富に含む食事をすれば、これに 近づけることができます。トランス脂肪酸
トランス脂肪酸(TFA)は、不飽和脂 肪酸の特殊型であり、以下の3つの要 素から摂取されます。 –TFAは本来、酪農製品、牛肉、羊肉(反 すう動物の肉)に少量含まれていま す。 –TFAの多くは、固形マーガリンまた は硬化脂肪を含む加工食品(ラスク、 クラッカー、クッキー、ビスケット 等のベーカリー製品、スナック、イ ンスタントスープ)等、硬化脂肪ま たは半硬化脂肪を含む製品から摂取 されます。 –高温の油で加熱された食品またはフ ライ食品(フライドポテト等)から 摂取されます。ひとくちメモ
• 一価不飽和脂肪酸(MUFA) –常温で液体ですが、冷蔵庫内の温度 で凝固し始めます。 • 多価不飽和脂肪酸(PUFA) –必須脂肪酸に含まれるものもあります。 –容易に酸化します。そのため、多価 不飽和脂肪は酸敗しやすいです。脂 肪酸の二重結合の数と位置によっ て、健康への影響が決まります。 多価不飽和脂肪酸はn-3系脂肪酸と n-6系脂肪酸に分類されます。n-3系 脂肪酸にはα-リノレン酸、n-6系脂肪 酸にはリノール酸、アラキドン酸など があり、これらは必須脂肪酸と呼ばれ ています。必須脂肪酸はヒトの体内で は合成できないため、食物から摂取す る必要があります。体内において、こ れらの脂肪酸は細胞膜の構造/機能お よび中枢神経系(脳および網膜)の発 達など、いくつかの機能にとって、重 要な役割を担っています。また、ホル モン様物質の生成にも必須です。 n-3系脂肪酸を多く含む食物は、心臓病 のリスクを低減する可能性があります。 n-3系脂肪酸およびn-6系脂肪酸は、 総脂質の食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2005年版) 1日の摂取エネルギーの15〜30% ※年齢により異なる 脂肪酸 – 飽和脂肪酸(SFA) 1日の摂取エネルギーの4.5%以上7% 未満(18歳以上) – n-6系脂肪酸(オメガ6PUFA) 1日の摂取エネルギーの10%未満(18 歳以上) – n-3系脂肪酸(オメガ3PUFA) 1日 男性 18〜49歳 2.6g以上 女性 18〜49歳 2.2g以上 – コレステロール 1日 男性 18歳以上 750mg未満 女性 18歳以上 600mg未満 – トランス脂肪酸 日本では現在までのところトランス脂肪 酸の規制や表示制度、摂取基準は設けら れていません。 多くの研究から、TFAは、血清LDL(悪 玉コレステロール)を増加させ、血清 HDL(善玉コレステロール)を減少さ せることがわかっています。したがっ て、TFAの過剰摂取は、冠状動脈性心 臓病のリスクを高める可能性がありま す。 米国では、あらゆる加工包装食品 の栄養成分表の枠内にトランス脂肪の 量が表示されなければなりません。た だし、飲食店で出す食事には、表示す る必要はありません。n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸
92% 6% 2% -46% 44% 20% 33:1
パーム油
ヤシ脂
グレープシード油
9% 16% 66% 145:1 NutriPro food 10/08 脂 肪 、油 、コ レ ス テ ロ ー ル基 礎 知 識
ご存知ですか?
ひとくちメモ
普通牛乳 12 加工乳(低脂肪) 6 プロセスチーズ 78 クリームチーズ 99 カッテージチーズ 20 卵(一個 60g=252mg) 420 有塩バター 210 鶏手羽肉 120 牛肉(レバー) 240 牛肉(ヒレ) 62 食品 コレステロール(mg/ 可食部100gあたり) 脂質およびコレステロールは、血液中で分 解しないため、リポ蛋白と呼ばれる特殊な 運搬システムが必要です。 – LDL:低比重リポ蛋白は、「悪玉コレステ ロール」といわれることもあります。LDL は、コレステロールを細胞へ運搬し、コレ ステロールを多く含む構成になっていま す。LDL値が高いと、心臓病のリスクの 増加へつながります。 – HDL:高比重リポ蛋白は、「善玉コレステ ロール」といわれることもあります。HDL は、細胞から余分なコレステロールを運 び出して肝臓へ回収します。HDL値が高 いと、心臓病のリスクの低減へつながりま す。食品中のコレステロール含有量
も っ と も 重 要 な 2 種 類 の リ ポ 蛋 白 は、LDLとHDLです。血液中のコレ ステロールが多すぎる場合(高コレス テロール血症)、冠状動脈性心臓病お よび脳卒中の主な要因になります。食 物から摂取するコレステロールが血中 コレステロールに及ぼす影響は様々で すが、通常、飽和脂肪酸が及ぼす影響 に比べて低いと言われています。コレステロールが含まれる食品
コレステロールは、本来、動物性食品 だけに含まれています。果物、野菜、 穀類などの植物性食品はコレステロー ルを含みません。コレステロールを多 く含む食品は、卵黄、内臓肉(肝臓、 腎臓等)、バター、マヨネーズ、チー ズ、全乳製品等です。コレステロールとは?
コレステロールは、ステロールのひと つであり、体内で細胞膜、ホルモンお よびビタミンDを形成するために必要 です。コレステロールは肝臓で作り出 されるため、通常は食品から摂取する コレステロールには頼りません。 血中のコレステロールは、リポ蛋白と 呼ばれる特殊な運搬システムによって 細胞から細胞へと運搬されています。コレステロール
18% 65% 16% 18:1 13% 40% 43% 39:1 8% 60% 32% 2:1
アボカド油
ゴマ油
(キャノーラ油)
菜種油
料理への応用
油脂は、脂肪酸の特性や調理方法によ って、その性質が変わります。精製油か天然油か
相違点:風味、香り、煙点 • 精製油:色が薄く、黄色がかったもの もあり、無味無臭です。また、特性 が明確で変化しません。熱に強く、 煙点(油が加熱され、煙が出て変色 する温度、分解の兆候)が高く、日 持ちします。 • 天然(非精製)油:低温圧搾油また は、コールド・プレス油と呼ばれる こともあります。 –特性:色が強く、コクのある強い風味 と香りがありますが、日持ちしませ ん。その性質は、原材料によります。 (例:オリーブ、ゴマ、ピーナツ等) –応用:通常、サラダ、ドレッシン グ、マリネ、ソースなどに、または 低温で調理する場合に使用されま す。天然油はビタミンEを多く含みま す。また、精製油のほうが、TFAを 多く含みます。ご存 知 ですか?
ひとくちメモ
油脂の使い方のヒント
• 一般的には、煙が出るまで油脂を加熱 しません。有害物質が発生します。 • バターを高温で使用しないでくださ い。バターは煙点が低く、水分を含んで いるため、油がはねます。 • サラダには天然油を使用します。天然 油はビタミンEを多く含み、風味が強 く、よりおいしくなります。 • 植物油は、通常、ベーキング(パンや焼き 菓子)には向きません。 • 天然油を加熱しすぎないようにしてくだ さい。通常、天然油の煙点は低いです (130°C〜190°C)。 • 150℃を超える温度で調理する 際、TFA(0.02%〜1.5%から、最 大2%)が、油の中で発生します。 しかし、ショートニングの含有量と 比べると、その量は非常に少ないで す。このプロセスは、特に、PUFA の比率が高い油で生じます。 化学的な工程によって、液体油の不飽和脂 肪酸は、飽和脂肪酸に転換され、固形の脂 肪になります。この工程は、通常、マーガリ ンおよびショートニングを生産するために 用いられます。硬化の度合いが大きいほ ど、油脂は常温で固くなり、多くのTFAを含 みます。たとえば、塗るタイプの柔らかい マーガリンは、硬化の度合いが小さく、固形 のマーガリンよりTFAの含有量が少なくな っています。 問題点:硬化脂肪の問題は、TFAが「悪玉」 のLDLを増やし、「善玉」のHDLを 減らすことです。 利 点:硬化脂肪の利点は、安定していて 酸敗しにくいことです。料理では、 たっぷりの油で揚げる場合によく使 われます。また、加工食品中のTFA の量を減らしたり、除去したりする 特別な生産方法があります。硬化脂肪
9% 16% 71% 6:1 7% 78% 14%