• 検索結果がありません。

ハ ン ガ リー 企 業 の 労 務 管 理 と労 働 過 程

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ハ ン ガ リー 企 業 の 労 務 管 理 と労 働 過 程"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

49

ハ ン ガ リー 企 業 の 労 務 管 理 と労 働 過 程

ガス暖房器 具会 社 の事 例

1̀は

旧 ソ連 ・東 欧 諸 国 の 市 場 経 済 化 の 試 み が 大 き な 困 難iに 出 会 っ て い る 今 日, 1968年 以 降,漸 進 的 に 経 済 改 革 を 行 っ て き た ハ ン ガ リー の 経 験 は,そ の 先 行 性

とい う点 だ け で も大 き な 意 義 を もつ も の とい え よ う。 しか し,マ ク ロな 経 済 政 策 や 経 済 理 論 に つ い て の 議 論 は と もか く,労 使 関 係 や 企 業 内 の 労 務 管 理 レベ ル で の 改 革 の 中 身 に つ い て の.一:・.°;は,ハソ ガ リー の 場 合 で もそ れ ほ ど公 開 され て き た わ け で は な か った1》。89年 以 降 の 政 治 改 革 で こ う した 状 況 も大 き く変 わ っ た こ と を 受 け て,(1)こ れ ま で の 経 済 改 革 の な か で,労 使 関 係 ・労 務 管 理 の 上 で ど の よ うな 試 み が な さ れ,ど の よ うな 結 果 に 終 わ っ た か を,特 に ハ ン ガ リー へ の テ イ ラ ー リズ ム の 導 入 を 軸 に 検 討 す る こ と,(2)現 在 の 再 私 有 化=民 営 化 の な か で,賃 金 制 度,労 働 条 件,労 働 組 合 の 機 能,労 働 者 と経 営 者 の 意 識 と態 度,等 が ど の よ うに 変 化 し,そ れ を 労 働 者 が ど う受 け 止 め て い る か を 実 証 的 に 明 らか に す る こ とを 課 題 に,1991年4月 よ り92年3月 に か け て 調 査 研 究 を 行 っ た 。

文 献 の 蒐 集 ・研 究 以 外 に 実 証 的 な 調 査 と して は,(a)デ ブ レ ツ ェ ン に あ る ビォ ガ ー一ル 製 薬 会 社,(b)ブ ダ ペ ス トの タ ウル ス ・タ イ ヤ 工 業,(c)バ ラ トン湖 近 くの ニ ト ロ ケ ー ミア 化 学 工 業 で 経 営 者 と労 働 組 合 双 方 か ら企 業 内 の 労 使 関 係,労 務 管 理 の 現 状 に つ い て 聞 き 取 り調 査 を 行 っ た 。 ま た(a)(c)で は 十 数 人 の 労 働 者 か ら も 直 接 に 聞 き取 りを 行 っ た 。 ま た 労 働 組 合 の ナ シ ョナ ル ・セ ソ タ ー の一 つ で あ る ASZOKの 会 長 か ら も,労 働 運 動 と政 治 と の 関 係 に つ い て ヒ ヤ リ ソ グす る こ と が で きた 。 そ の 外,労 働 省 幹 部 か ら も 失 業 の 状 況 等 に つ い て 聞 き取 りを した 。

ま た 事 例 研 究 と して ガ ス 暖 房 器 具 会 社 を 取 り上 げ,約2ヵ 月 に 渡 っ て,社 等 の 経 営 幹 部 か ら0般 従 業 員 に 至 る ま で,企 業 内 各 層 の 人 々や 労 働 組 合 委 員 長

(2)

等,組 合 幹 部,お よび 企 業 グ ル ー プ全 体 の 労 働 組 合 委 員 長 か ら の ヒ ヤ リソ グ を した ほ か,ア ン ケ ー ト調 査 と参 与 観 察 も行 っ た 。 ア ン ケ ー ト調 査 は こ の ガ ス 暖 房 器 具 会 社 の2工 場(ブ ダ ペ ス トお よび オ ー チ ャ)で,320人 ほ ど の 労 働 者 を 対 象 に 行 っ た(全 従 業 員 の65%)。 こ の 調 査 は ハ ソ ガ リー 科 学 ア カ デ ミー 社 会 学 研 究 所 の ゲ ル ゲ イ ・ア ッ テ ィ ラ研 究 員 と の 共 同 調 査 で あ り,チ ェペ ル 計 算 機 セ ン タ ー の 協 力 で 実 施 す る こ とが で きだ 』 質 問 票 は 労 働 条 件,人 間 関 係 等,職 場 に つ い て の 部 分 と,副 業,家 計,出 身 階 層 等 の 生 活 に 関 す る 部 分 か ら な り,

計350ほ ど の 設 問 が お か れ て い る 。 ま た 参 与 観 察 は 伺 会 社 オ ー チ ャ工 場 の プ レ ス 部 門 で プ レス エ と して 働 き な が ら2週 間 行 っ た 。 短 期 間 で は あ っ た が,(a)労 働 者 の 実 際 の 就 業 態 度,(b)集 団 長 ・シ フ ト長 等 管 理 職 の 管 理 方 法,(c)機 械 ・設 備 の 問 題 点,(d)ノ ル マ の 高 低 の 判 断,等 に つ い て 様 々 な 情 報 を 得 る こ と が で き た 。 本 調 査 報 告 は こ の 一 連 の 調 査 の な か か ら,事 例 研 究 と し て 行 っ た 調 査 に 関 して,そ の 成 果 の 一 部 を 報 告 す る も の で あ り,蒐 集 した 資 料,聞 ぎ取 り した 内 容,ア ン ケ ー ト調 査 の 結 果 を 適 時 用 い な が ら,一 つ の ハ ン ガ リー企 業 の 労 務 管 理 と労 働 過 程 の 現 状 を 描 く こ とを 目的 に し て い る。

2.調 査 対 象 企 業 の概 要

オ ー チ ャ工 場 は1970年 にFEGに よ っ て 設 立 さ れ たFEGは1891年 創 立 の 銃 器 と ガ ス 器 具 の 大 企 業 で あ る 。 昨 年 創 立 百 年 を 迎}た 。 オ ー チ ャ工 場 で は 創 設 時 に は 部 品 と半 製 品 を 作 っ て い た が,1980年 以 降 は 暖 房 器 具 全 体 を 製 造 す る

よ うに な っ た 。 現 在 の 工 場 の 製 品 は,コ ンベ ク タ ー(対 流 式 暖 房 器)が9タ プ,熱 ラ ジ エ ー タ ー(輻 射 式 暖 房 器)と ウ ォ ー ル ヒ ー タ ー(壁 暖 房 器)各1タ イ プ で あ る。 国 内市 場 の90%を 占 め て い る ほ か,旧 社 会 主 義 圏 を 中 心 に 輸 出 も 行 っ て ぎ た 。1988年 に は15万 個 の ラ ジ エ ー タ ー を 生 産 し,ヨ ー ロ ッパ で 最 大 の ラ ジ エ ー タ ー生 産 工 場 で あ る と 「会 社 案 内 」 に は 書 か れ て い る 。 分 割 民 営 化 の 進 む な 魁 で,現 在 の 「FEG・ コ ソ ベ ク タ ー(対 流 式 暖 房 器)有 限 会 社 」 は199丁 年1月1日 に,資 本 金1億5750万 フ ォ リ ン トで 創 立 され た 。 しか し現 在 で も会

社 の 唯 一 の 所 有 者 は ハ ン ガ リ ー 国 家 で あ る 。

会 社 が 立 地 して い る オ ー チ ャ は ペ ス ト県 に 属 し,ブ ダ ペ ス トの 中 心 か ら 南 に 26kmに 位 置 して い る,住 民9,000人 の 大 き な 村 で あ る 。 オ ー チ ャ周 辺 に は,電

話 工 場,手 袋 工 場 な ど6つ の 工 場 と15の 農 業 コ ー ポ ラ テ ィ ブ が あ る が,オ ー チ ャ の 労 働 可 能 な 住 民 の50%は ブ ダ ペ ス トま で 通 勤 して い る。 ガ ス 暖 房 器 具 工 場

(3)

ハ ソガ リー企 業 の労務 管理 と労働 過程5T は オ ーチ ャ周辺 で は 最 大 の工 場 で あ る。

会 社 の2工 場 の うち,ブ ダペ ス トの シ ョ ロ ック シ ャ』 リに あ る工 場 で は 点 火 装 置 部 分 の精 密 加 工 と組 立 が 行 わ れ て お り,2交 代勤 務 で の最 大 生 産 量 は年 間 120,000個 で あ る。 主 要 工 場 で あ る オ ー一チ ャ工場 で の主 要 な生産 工 程 は,板 プ レス工 程,グ リー ス取 りと溶 接 工 程,エ ナ メル工 程,着 色工 程,組 立工 程 に わ か れ て い る。 板 金 プ レス工 程,グ リー ス取 りと溶 接工 程 の生 産 能 力 は2交 代 勤 務 で年 間12〜15万 台1エ ナ メル 工 程 と着 色工 程 の生 産 能 力 は2交 代 勤 務 で 年 間20万 台 で あ る。 組 立 工 程 では 同 じ く2交 代体 制 で 日産750万 台 の組 立 が 可 能 で あ る2)。

民 営 化 に 向 け て,国 外投 資 家 用 に 書 か れ た と思わ れ る会 社 の調 査 報 告 書 に は 生 産 組 織 に つ い て 次 の よ うに 書 か れ てい る。 「生 産 組 織 化 の レベ ル は 低 い 。 生 産 の技 術 的 計 画 化 は 技 術面 で は 受 け 入 れ 可 能 で あ る。 製 造 工 程 は規 制 で き な い。 生 産 の管 理 と組 織 は,時 々指 令 に従 う。 資 材 の フ ロー と中 間 品 の保 管 計 画 (製 造 工 程 間 で の)は 存 在 して い ない 。 そ れ ゆ え,生 産 の決 定 的 な 要点 は 管理 で きな い。」 また 間 接 部 門 に関 して は 「道 具 ・機 械 の メイ ンテ ナ ン ス の 技 術 的 ・人 材 的=条件 は 妥 当 で あ る。 連 続 生 産 のた め のサ ー ビス は,資 材 操 作 の装 置 を除 け ば,提 供 され て い る。」 「品 質 管理 体 制 は,市 場 需 要 の変 化 の お か げ で, 部 分 的 に発 展 して い るが,要 求 レベ ルを 充 たす もの で は な い。 品質 の計 画 化 は 部 分 的 に解 決 して い る。」 さ らに資 材 の供 給 と下 請 け協 力 会 社 との 関 係 に つ い て は 「資 材 供 給 と協 力 は 計 画 化 され て こなか った し,現 在,資 本 不 足 の た め に 計 画 化 は で きな い。 国 内 で の市場 状 況 の 未 形 成 の ゆ え に,生 産 は不 本 意 な が ら,資 材 供 給 や 協 力 に よって 影 響 を 受 け る」 と書 か れ て い る。 また販 売 活 動 に つ い て も 「会社 は マ ー ケ ッテ ィ ン グ活 動 の 編 成 を始 めた と ころ で あ る。 販 売 は 専 ら,Hungarof69販 売 会 社 を通 して 行 って い る。 そ の 活 動 は市 場 お よび会 社 の要 求 を充 たす もの で は な い」 と され て い る。

会 社 の財 政 状 況 につ い て は,1990年 度 の 会計 報 告 に よれ ば,純 売 上 額 が4億 6,000万 フ ォ リ ン ト(以 下Ftと 略 す),20万Ftの 黒 字 を 出 して い る。1992年

の営 業 計 画 は,純 売 上g億4,600万Ft,純 利 益8,600万Ftを 予 定 して い る。

a従 業 員 構 成

会 社 提 供 の資 料 に よれ ば,1991年 度 の従 業 員i数453人 の うち,肉 体 労 働 者 が 348人s精 神 労 働 者 が105人 で あ る。 この 時 点 で は全 従 業 員 の77%が 肉体 労 働 者

(4)

とい う こ と に な る 。 ま た92年1月 末 に は 従 業 員 数493人 の うち397人,Sl%が 体 労 働 者 で あ り,ブ ル ー カ ラ ー と ホ ワ イ トカ ラ ー の 比 率 は ほ ぼ4対1で あ る と 考 え て い い だ ろ う。 因 み に,ア ン ケ ー ト調 査 で こ の 比 率 に つ い て 「ど う考 え る か 」 と尋 ね た と こ ろ,ホ ワイ トカ ラ ー の 比 率 が 「大 き す ぎ る」 と い う 回 答 が 64%あ り,「 適 当 」 が19%,「 小 さす ぎ る」 は2%し か い な か っ た(そ の 他 は

「わ か ら な い 」)。 ホ ワイ ト ・カ ラ ー 職 だ け の 回 答 を み て も44%は 「大 き す ぎ る」 と答}て お り,ホ ワイ トカ ラ ー に 余 剰 人 員 が 多 い とい う意 識 は 一 般 化 し て い る よ うで あ る 。

雇 用 形 態 と して は437人(96%)が フ ル タ イ ム で あ り,そ の 他 の 形 態 と して は パ ー トタ イ ム が3人,嘱 託 と し て 残 っ て い る 退 職 者 が13人 で あ っ た 。 た だ し, 採 用 聞 も な い 労 働 者 の な か に は,試 用 期 間 中 の 者 も い る 。

男 女 比 に つ い て は 肉 体 労 働 者 の デ ー タ しか 分 か ら な い が,そ れ に よれ ば 男{生 51%,女 性49%で あ る。 非 肉 体 労 働 者 の な か で は,単 純 事 務 職 を 中 心 に 女 性 の 方 が 多 い と 思 わ れ る が,全 体 と し て は ほ ぼ 男 女 半 々 と考}ら れ る 。 特 に ブ ル ー カ ラ ー で も 男 女 ほ ぼ 同 数 とい う点 は 注 目 に 値 す る。 観 察 した と こ ろ で も,プ ス 工 程 や 溶 接 工 程 の よ うに,比 較 的 重 筋 作 業 の 職 場 に も 女 性 は 男 性 と 同 等 に 働 い て い た 。 しか し技 能 の 熟 練 程 度 別 に み る と,明 らか に 男 女 の 相 違 が あ る 。 ブ ル ー カ ラ ー全 体 で は 熟 練 労 働 者 が22%,半 熟 練 労 働 者 が63%,未 熟 練 労 働 者 が 15%で あ る の に 対 し て,女 性 ゾ ル ー カ ラ ー だ け を 取 り出 し て み る と,熟 練 労 働 者 は わ ず か2人(1%)1半 熟 練 労 働 者 が79%を 占 め,未 熟 練 労 働 者 は20%で あ った 。 熟 練 程 度 に は,明 らか に 男 女 「差 別 」 が あ る。 熟 練 労 働 か ら女 性 を 締 め 出 して い る こ う した 「差 別 」 が,ど の よ うな 背 景 で な さ れ て い る の か は,残 念 な が ら よ くわ か ら な い 。 しか し男 女 平 等 の 理 念 の 下 で,実 際 に 女 性 の 社 会 進 出 が 顕 著 で あ る 社 会 主 義 体 制 下 で も3),こ う した 「差 別 」 が 存 在 し て い た こ と は 注 目 に 値 す る。

ホ ワイ トカ ラ ー の 内 訳 は 技 術 関 係 が57%と 最 も多 く,単 純 事 務 処 理 が11%, 財 務 ・資 材 購 入 等 の 経 済 関 係 が31%で あ る 。 マ ー ケ ッ テ ィ ソ グ部 門 も あ るが, 販 売 は グ ル ー プ の 別 会 社 に 一 括 委 託 し て き た の で,人 数 は3人 と少 な い 。 社 長 か ら の ヒ ヤ リ ン グ に よ れ ば,今 後 は 販 売 部 門 に 力 を 入 れ て,独 自 に 営 業 活 動 も

して い き た い と の こ と で あ った4)。 ホ ワイ トカ ラ ー の 中 に は,そ れ ぞ れ の 部 門 の 管 理 職 も含 まれ て い る。

職 位 階 層 は,生 産 ラ イ ソ で は 工 場 長 一 シ フ ト長 一 集 団 長 一 一 般 従 業 員 とな っ て い る。 工 場 長 は 各 主 要 工 程 別(プ レス,塗 装 等 表 面 処 理,組 立)に お り,そ

(5)

ハ ソガ リー企 業 の労務 管理 と労働 過程53

の下 に昼 ・夜 の シ フ ト毎 の工 場 の責 任者 で あ る シ フ ト長 が い る。 集 団長 は時 々 生 産 に携 わ る ほか,指 導 監 督,管 理 を 行 う。 た とえば プ レス工 場 に は昼 シ フ ト で3人,夜 シ フ トで2人 の集 団 長 が い る。 ひ とつ の集 団 に は10〜15人 の 労 働 者 が 含 まれ て い る。 ホ ワイ トカ ラー職 で は経 営 幹 部:・ 長(下 位管 理 職)一 °r 従 業 員 とな っ て い る。

従 業 員 の年 齢 構 成 等 以下 の 属 性 に 関 す る デ ータ につ い て は 会社 の資 料 に は な い の で,ア ン ケー ト調 査 で デ ー タを 紹 介 して お く。 まず 年 齢 に つ い て だ が,30 歳 未 満 が28%,50歳 以 上 が14%で あ り,58%が30・40歳 代 の 中年 労 働 者 で あ

る。 平 均 年 齢 は 約37歳 で あ る。 社 長 か らの ヒヤ リン グに よれ ば,「 以 前 は 従 業 員 の50〜55%は50歳 以 上 で あ った 。」 ブ ダペ ス トの方 が賃 金 が20〜30%ほ ど 高 い の で,通 勤 可 能 な青 年 ・壮 年 の 男 子 は ブ ダペ ス トに い って しま い,「 オ ー チ ャに は老 人 と女 性 が 残 った」 とい う。 しか し91年 半 ば 以 降,全 体 的 な労 働 力 不 足 が 解 消 し,労 働 力 が供 給 過 剰 に な るに した が っ て,新 規 採 用 者 の選 択 もで き る よ うに な った との こ とで あ る。 そ れ に と もな い,従 業 員 の平 均 年齢 も下 が っ て きた そ うで あ る。

出 身 地 を み る と,地 元 出 身者 が 多 く,1/3が 地 元 の生 まれ で あ る。 また 住居 に 関 して は菜 園 つ き の 自宅 を工 場 周 辺 に もつ もの が 多 く,53%は 往 復 の通 勤 時 間 が30分 以 内で あ る。 往 復 が1時 間 を超 え る者 はわ ず か14%に 過 ぎな い。 この こ とは,後 述 す る よ うに,工 場 の労 務 管 理 上 大 きな 影 響 を 与 え て い る。

4.労

雇 用 管 理 面 で顕 著 な こ とは,入 退 職者 が 多 い こ と と,欠 勤 率 の高 い こ とで あ る。 まず 欠 勤 率 に つ い てみ てみ よ う。

4‑‑1.労 働 時 間 と欠 勤 率

この工 場 の勤 務 体 制 は一 日8時 間,土 曜 ・日曜 休 み,生 産 部 門 は2交 代(朝 6時 〜 午 後2時,午 後2時 〜10時)の 体 制 で あ る。1週 間毎 に昼 勤 ・夜 勤 の シ フ トは変 わ る。 労 働 者 の欠 勤 率 はか な り高 い。 た とえ ば92年1月31日 の欠 勤 率 は精 神 労働 者 で は9%,肉 体 労 働 者 で は21%,在 籍 人 数493人 の うち欠 勤 者 は 94人 に達 して い る。 肉体 労 働 者 の なか で も,直 接 生 産 部 門 に 多 い 出 来 高 賃 の労 働 者 で は25%,間 接 部 門 の時 給 の 労働 者 で は18%で あ った 。 また職 場 別 で は プ

レス職 場 で90人 中26人 が 欠 勤,欠 勤 率 は29%。 組 立 職 場 で81人 中18人 の 欠勤,

(6)

欠 勤 率 は2.2%で あ った 。 これ は この 日だ け の数 字 で は な く,他 の 日で もほ ぼ 同 様 な数 値 を示 して い る。

社 長 は こ う した 欠 勤 状 況 を 次 の よ うに 説 明 して くれ た。

「工 場 が農 村 地 域 に立 地 して い るた め,現 在 で も多 くの 従 業 員 が̀̀第 二 経 済"

と して 農 業 を行 って お り,そ の 影 響 力 は 大 きい 。 若 い労 働 者 に とって は そ うで も ない が,特 に年 齢 の高 い 労働 者 に とっ て はそ うで あ る。 従 業 員 一 人 当 た りの 年 間 平 均 病 欠 日数 は45日 に も達 す るが,当 然 これ 全 部 が 本 当 の病 気 で は な く, キ ャベ ツや リン ゴの 取 り入 れ 時 期 に これ は集 中す る。 この 時 期 に は工 場 は操 業 で きな くな って しま う。 これ は農 業 の第 二 経 済 の方 が儲 か るか ら とい う経 済 的 合 理 性 を も った 行 動 で は な く,半 ば 習慣 的 な慣 性 力 に 従 った 非 合 理 的 な行 動 で あ る。 つ ま り畑 で キ ャベ ツを腐 ら した り,真 っ赤 な リン ゴを木 に残 して お く こ

とに 我 慢 が で きな い の で あ る。」

こ うした 欠 勤 率 の高 さを反 映 して,ほ ぼ 全 員 が フル タイ マ ーで あ るに も関 わ らずf月 間 の 労働 時 間 を み る と大 きなパ ラ ツキ が あ る。 た とえば プ レス職 場 の 出来 高賃 労働 者55人 の うち,月 間 所 定 労 働 時 間 の160時 間 まで就 業 した 者 は15 人(27°°/o)に過 ぎず,100時 間 未 満 が13人(24%)に も達 して い る。 つ ま り4人

に ひ と りは 月 に8日 近 く休 ん で い る こ とに な る。 した が っ て こ う した欠 勤 対 策 と して,プ レス部 門 で は仕 事 の配 分 を 当 日に 行 っ て い る。 つ ま り集 団長 は 出 勤 して きた 労 働 者 の顔 触 れ を み て か ら,そ の 日の配 置 を決 め て い るの で あ る。 そ の様 子 は まる で,日 雇 い 労 務者 を 現 場 に割 り振 る親 方 の様 で あ った(し か し,

これ は実 質 的 な ローテ ー シ ョソ とい う意 味 も も って い る)。 この よ うな 欠 勤 率 の高 さ とそれ に伴 う労 働 時 間 の バ ラ ツキ の背 景 と して は,旧 社 会 主 義 経 済 の も とで の 労 働 力 不 足,「 温 情主 義」,「規 律 の ソフ ト化 」(コ ル ナ イ ・ヤ ー ノ シ ュ) 之 い った 相 関 連 す る一 般 的 な要 因 が あ るの は も ちろ ん だ が,そ れ 以 外 に も後 述

す る よ うな この工 場 独 自の賃 金 制 度 も大 き く関 係 して い る。

4‑2.勤 続 と入 退 職

次 に 入退 職 に つ い て み て み よ う。 会 社 資 料 に よれ ば,91年 に は年 間130人 退 職 して い る。 この うち36人 は余 剰 人 員 の整 理 の た め の解 雇 で あ りr自 発 的 な 退 職 は100人 弱 で あ る。 しか し社 会 主 義 体 制 下 の 労働 力不 足 の 時 代 な ら と も か

く,現 在 の よ うに失 業 率 が 急 上 昇 して い る時 で さえ,一 年 間 に従 業 員 の1/5 ほ どが 離 職 して い くとい う数 字 は,労 働 者 と企 業 との 関 係 を考 え る上 で 興 味 深 い こ とで あ る。 失 業 者 の増 大 す る状 況 で も,労 働 者 は 必ず し も企 業 に しが み つ

(7)

ハ ンガ リー企業 の労 務管 理 と労働 過 程55

恥 て い る訳 で は な い。

ア ンケ ー一ト調 査 で勤 続 年 数 を み る と,1年 未 満 が16%,1年 〜3年 以 内 が 21%と,退 職 者 に つ い て の 会 社資 料 が示 唆す るほ どで は な い に して も勤 続 の比 較 的 短 い 労 働 者 が 多 い。 しか しそ の反 面,10年 以 上 も35%を 占 め,20年 以上 も 全 体 の1割 に達 す る な ど,長 期 勤 続 者 も多 い 。技 能 レベ ル 別 に勤 続 の様 子 を見

て み る と,未 熟 練 ・半 熟 練 労働 者 で は 半 数近 くが3年 以 内 の勤 続 で あ るの に対 して,熟 練 労 働 者 で は3年 以 内 は26%に 過 ぎず,44%が10年 以 上 の 勤 続 で あ るσ また1年 未 満 の勤 続 の 中 で未 熟 練 ・半 熟 練 労 働 者 の 占 め る割 合 は7割 を超 え て お り,単 純 化 して考 え る と,短 期 で 離職 して い く者 の数 は多 いが そ の大 部 分 は 未 熟 練 ・半 熟 練 労働 者 や単 純 事 務 職 の従 業 員 で あ っ て,技 術 や 経 営 の主 要 な担 い 手 で あ る熟 練 労 働 者 や 管 理 職 とい った基 幹 部 門 の従 業 員 はか な り定 着 し て い る とい え よ う。 また 製 品 の生 産 に直 接 関 わ る労 働過 程 は か な り細 分 化 ・単 純 化 され て い る の で,未 熟 練 ・半 熟 練 労働 者 の 移動 率 が 高 い こ とが,す ぐに生 産 を 阻 害 す る とい うわ け で は な い。 未 熟 練 ・半 熟 練 労働 者 の勤 続 が相 対 的 に は 短 い こ とは,直 接 生 産 作 業 の 細分 化 ・単純 化 と対 応 関 係 に あ り,単 純 反 復 作業 ゆ}に 退職 が 多 い とい う反 面,単 純 作 業 ゆ え に,求 職 希 望 者 が い る限 り労 働 者 の補 充 が 可 能 で あ り,生 産 が停 滞 す る こ とは ない とい う側 面 が あ る。 しか し,

とも あれ,か な りの数 の離 職 者 が い て,職 業 移動 の 頻 度 が 高 い こ とは確 認 して お こ う。

ア ンケ ー ト結 果 か ら採 用 時 の入 職 経 路 を み て み る と,求 人 広 告 等 に よ って 自 分 で職 を探 し就 職 した ものが ほ ぼ半 数 で,知 人 の 紹 介 で 就 職 した とい う者 も4

割 に達 して い る。 因 み に工 場 に親 類 ・縁者 が 勤 務 して い る者 は49%も い る5)。

就 職 時 点 で の 他 の選 択 の可 能 性 は なか った とい う人 が46%お り,近 年 で の労 働 力 不 足 の解 消=失 業者 の増 大 等 の状 況 を反 映 して い る もの と思 わ れ る。 就 職 に 際 して考 慮 した 要 因 と して は,第 一一に 「雇 用 の安 定 性」,第 二 に 「と もか く 仕' 事 を もつ こ と」 で あ り,経 済 の不 安 定 な現 在 の状 況 を しめ して い る。3番 目に や っ と 「給 与 」,4番 目に 「家 か ら近 い こ と」 で あ り,労 働 条 件 は二 の 次 で あ

った とい え よ う。

4‑3.配 置 転 換

ア ン ケ ー トの 結 果 で は,現 在 の 仕 事 が 工 場 内 で の 最 初 の 仕 事 だ と い う 者 が 5$%い る が,2番 目 と い う者 も24%,3番 目10%,4番 目以 上8%と な っ て お り,勤 続 を 経 る に 従 っ て,あ る程 度 の 職 場 移 動 が あ る こ と が 窺r.}/¥...る。 技 能 レ

(8)

ベ ル 別 では,熟 練 労働 者 で は76%が 「最 初 の仕 事 」 と回 答 して お り,あ ま り移 動 が 多 くない こ とが 窺 わ れ る。 そ れ に対 して 半 熟 練 労 働 者 で は 「最 初 の仕 事 」 と の 回 答 は53%に 過 ぎず,半 数 近 くは移 動 の経 験 を して い る。 平 均 勤 続 が 熟 練 労 働 者 の方 が 長 い の に も係 わ らず,こ の よ うに 熟 練 労 働 者 の移 動 が相 対 的 に 少 な い とい う理 由 と して は,① 熟 練 技 能 を必 要 とす る職場 が 限 られ て い る,② 各職 場 で 必要 とされ る熟 練 技 能 間 に共 通 性 ・相 互 性 が 少 な い,③ 熟 練 労働 者 を 動 か す こ とへ の 会 社 側 の 「遠 慮 」 が あ る,等 が 考}ら れ る。 ① につ い て は,確 か に 半 熟 練 労働 者 の い る職 場 数 に比 較 す れ ば少 な い とは い},熟 練 労 働 者 の職 場 は 9部 署 に分 かれ て お り(4割 は メイ ンテ ナ ンス部 門 に集 中 して い るが),け っ し て 少 な くは な い。 ② と③ は相 互 に 関 連 す るが,② に つ い て は検 証 す る デー タが な い。 ③ に つ い ては,移 動 に際 して どの程 度 本 人 の希 望 が 考 慮 され た か とい う 設 問か ら推 察す る こ とが で きる。 半 熟 練 労 働 者 で は 「完 全 に」 考 慮 され た とい

う回答 が23%,「 か な り」 考 慮 され た とい う回答 が7%で あ り,「 全 然 考 慮 され なか った」 とい う回答 が35%で 最 も多 か った の に対 して,熟 練 労 働 者 で は 「全 然 考 慮 され なか った」 とい う回 答 は7%に 過 ぎず,「 完 全 に」 考 慮 され た と い う回答 が45%に 達 して いた 。 熟 練 労 働 者 と半熟 練 労 働 者 とで は,移 動 に 関 す る 会 社 側 の 処遇 に か な り大 きな差 が あ り,熟 練 労 働 者 は あ る程 度 の 自律 性 を も っ て い る とい え る。 熟 練 技 能 が こ う した 自律 性 の基 礎 に な って い る と考 え るの が 妥 当 で あ ろ う。

他 の職 場 へ の移 動 希 望 に 関す る質 問 で は,「 ど うして も今 の ま まが い い 」 と い う意 見 が54%と 多 く,「 全 く固 執 しな い」 とい う回答 は10%に 過 ぎ な か っ た。 つ ま り過 半 数 の人 が 現 在 の職 場 ・仕 事 を 肯 定 的 に捉}て い る こ と に な ろ う。 また 現 在 の仕 事 に固 執 す る理 由 と しては 「仕 事 の 内容 」 「同 僚」 「賃 金 」 の 順 で 上 げ られ て お り,「 上 司」 「慣 れ」 を理 由 とす る比 率 は 低 い。 比 較 的 多 くの 人 が現 在 の 仕 事 を 自分 に合 った 仕 事 と意 識 し,あ ま り移 動 した くな い と思 って い る こ とに な ろ う。 固執 す る理 由を 技 能 レベ ル 別 に み る と,熟 練 労 働 者 で は

「仕 事 の 内 容」(最 大5点 法 で の平 均 点 数 が3.9,以 下 同 じ)と 「同僚 のた め」

(3.8)と い う回 答 が 多 く,「 上 司」(3.0)「 賃 金 」(2.9)「 慣 れ 」(2.8)と い う回 答 は 少 な い の に対 して,半 熟 練 労 働 者 で は 「賃金 」(3.7)「 仕 事 の 内 容」(3.6)

「同僚 の た め」(3.3)と い う回答 が 多 く,「 慣 れ 」(3.1)「 上 司」(2.5)と い う 回答 は少 な か った 。 熟 練 労働 者 で は 「同僚 」 との関 係 を大 事 に考 え て い る の に 対 して,半 熟 練 労 働 者 で は現 在 の 「賃 金」 を 相 対 的 に高 い と感 じてい る人 が 多

い こ とを意 味 して い よ う。

(9)

ハ ソガ リー企 業 の労 務管理 と労 働過 程57 表 一1技 能 レ ベ ル 別 賃 金 形 態(ブ ル ー カ ラ ー) 人数(%)

未熟練労働者 半熟練労働者 熟 練 労 働 者

個人 出来 高 賃 制

17(29.8) 46(57.5) 一(一)

集団出来 高 賃 制 10(17.5)

9(11.2) 1(1.8)

時 給 制 28(49.1}

19(23.S) 49(87.5)

月 給 制 2(3.5) 6(7.5) 6(10.7)

57(100.0) soloo.o) 56(100.0) 63(32.6)20(10.4)96(49.7)14(7.3)193(100.0)

5.賃 金 制 度 と賃 金 構 造

賃 金 制 度 は,直 接 生 産 部 門 の労 働 者 で は 個 人 別 ・集 団別 の 出 来 高賃,間 接 部 門 の労 働=者(事 務]職を 含 む)で は 時 給,経 営 管 理 職 で は 月給 制 度 と な っ て い る。 そ の比 率 は41%,53%,6%で あ る。 肉体 労 働 者 だ け を取 り出 し て み る と,出 来 高 賃 が51%t時 給 が49%で あ る。技 能 レベ ル別 の賃 金 形 態 に 関 す る会 社 側 資 料 は な い が,ア ンケ ー ト調 査 の結 果 で は表 一1の よ うに な っ てい る。 未 熟 練 労 働 者 の半 数 は 時 給 に 集 中 して い るが,個 人 出来 高 賃 に も集 団 出来 高 賃 に

も未 熟 練 労 働 者 は い る。 また 半 熟 練 労 働 者 の6割 近 くが個 人 出来 高 賃 だ が,時 給 で働 い て い る者 も2割 強 は い る。 この よ うに技 能 レベ ル と賃金 形 態 は 厳 密 に 対 応 して い る訳 で は ない こ とが 分 か る。 ま た 同 じ個 人別 出 来 高 賃 で 働 い て い る 未 熟 練 労働 者 と半 熟 練 労 働 者 の あ いだ に,実 際 の職 種 の上 で どの よ うな差 異 が あ るのか も明 らか で は な い。 少 な くと も未 熟 練 と半 熟 練 に 関 して は,技 能 区分 は 実 際 の職 務 上 の 差 とい うよ りは,本 人 の学 歴 ・資 格 の反 映 とい う側 面 が 強 い

とい え.よ う6)o

だ が 熟 練 労 働 者 に 関 して は,1割 ほ どが 月給 制 で働 く管 理 職 に な っ てい る と は い え,大 部 分 は 時 給 制 で働 い て お り,賃 金形 態 の 点 で そ して おそ ら く職 種 の 点 で も,他 の ブル ー カ ラー と戟 然 と区 別 され て い る。 同 じ時 給 で も未 熟 練 労 働 者 の場 合 に は,た と}ぽ 清掃 の よ うな単純 作 業 が 中心 で あ るが,熟 練 労 働 者 の 場 合 に は機 械 修 理,メ イ ンテ ナ ンスや 工 具 ・金 型 の据>JiL付け の よ うな熟 練 を 要 す る作 業 とい った違 い が あ る。

また この工 場 の場 合 は 出 来 高 賃 とい っ て も7},単 純 な ピー ス ・レー トで は な く,個 人 別 の時 給 が決 め られ て い て,そ れ を ベ ース に して作 業量 を 換 算 す る 出 来 高 賃 で あ る。 基 礎 とな る個 人 別 時 給 は 本 人 の技 能 レベ ルや 資 格 ・経 験 に よっ て 決 定 され て お り,し た が って,同 一職 種 で 出来 高 が 同一 の場 合 で も,個 人 時

(10)

給 が 異 なれ ぽ,賃 金 に は 差 が生 じてい る。 しか し,技 能 レベ ル と職 種 が 同 じで あ れ ば 個 人 時 給 の差 は そ れ ほ ど大 き くは ない 。技 能 レベ ル 別 の 個 人 基 礎 時 給 を み て み る と,未 熟 練 労 働 者 で は最 低42Ftか ら最 高70Ft以 上 まで の広 が りが あ るが,47%は42〜55Ftに あつ ま って お り,平 均 ば56.9Ftで あ った 。 そ れ に対 して半 熟 練 労 働 者 で は最 低49Ftか ら最 高75Ftま で,平 均 は61.OFtで あ り, 48%は56〜60Ftの 間 で あ った。0方 熟 練 労 働 者 で は平 均 が72.1Ftで あ るが,

こ こで も最 低49か ら最 高115Ftま で の格 差 が あ る。 だ が70Ft以 上 が63%を め て い る。 個 人別 時 給 の点 で も,未 熟 練 と半 熟 練 の差 が小 さ く,熟 練 労 働 者 と の あ いだ の差 が大 きい こ とが 分 か る。

肉体 労 働 者 の場 合,賃 金 を決 定 す る要 因 は,基 本 的 に は 個 人 別 時 給 と労 働 時 間 と出来 高 の三 つ で あ る。 時 給 の 労 働 者 の場 合 は単 純 に 労 働時 間 と時 給 とを掛 け 合 わ せ るだ けだ が,出 来 高賃 で 働 い て い る労 働 者 の場 合 に は,実 際 に な され た 仕 事 量 を 各 作 業 別 に定 め られ て い る標 準 作 業 時 間 で換 算 して,出 来 高 に応 じ た 計 算 上 の労 働 時 間 を 出 しsそ れ と個 人 の時 給 とを掛 け合 わ せ て,毎 月 の賃 金 を 算 出 して い る。 そ のた め に現 場 の管 理 職(主 に シ フ ト長)は,毎 日,誰 が ど の 仕事 を,ど れ だ け した か を ノ ー トに 記 録 して い る。 実 際 に は,作 業 中 に誰 が

どの工 程 ・どの部 品 の 作業 を して い るの か を ノー トに書 き込 み,シ フ トの終 わ りに 各 労 働 者 か ら報 告 され た 出 来 高 を 記 入 す る とい うよ うに な って い る。 した が って 作 業終 了 時 刻 が 近 づ くと,工 場 の 隅 に あ る管 理 職 の部 屋(簡 単 に仕 切 っ た だ け の もの だ が)の 前 に,報 告 をす るた め の 労 働 者 の 列 が で きて い た。

賃 金 決 定要 因 の うち,労 働 時 間 は前 述 した よ うに 欠 勤 が 多 く,月 間 労働 時 間 に も個 人 に よ って か な り大 きな差 が 生 じて い るが,こ れ は 一・つ に は労 働 者 自身 の勤 務 態 度 ・勤 労 意 欲 の問 題 で は あ るが,他 方,賃 金 制 度 自体 の 問 題 で も あ る。 す なわ ち,出 来 高 賃 の労 働 者 の場 合 に は,た ん に 規 定 の労 働 時 間 を コ ツ コ ツ働 くよ りは,短 い 労働 時 間 で も出来 高 を上 げ た方 が 賃金 の 上 で 有 利 に な って い る こ とに も起 因 して い る ので あ る。 そ れ は91年2月 よ りこの 工 場 で 導 入 され た ボ ー ナ ス制 度 と深 く関 係 して い る。 そ れ 以 前 に も プ レ ミア ム制 度 は 形 式 的 に は存 在 した が,そ れ は 個 人 の 実 績 とは ほ とん ど関 係 な く,イ デ オ ロギ ー的 基 準 そ の他 に よ って一 定 に配 分 され る もの で,労 働 者 へ の刺 激 に は ま った くな らな か った とい う。 新 しい ボ ーナ ス制 度 では,各 作 業 の標 準 作業 量(ノ ル マ。 実 際 には100個 あ た りの 標 準 作 業 時 間 か示 され て い る。)の90%を 越 えた 達 成 分 に は 1.5倍 の 割増 賃 金 が 支 払 わ れ て い る。 つ ま りた とえ ば 月 間 作 業 量(出 来 高)が

ノル マ のユ20%だ った とす る とs90%を 超 え た30%分 は1.5倍 の ボ ー ナ ス と な

(11)

{

ボ ー ナ ス額(Ft) ユ3,0aa

1,000

9,000

7,000

5,000

3,000

ハ ン ガ リ.̲̲.企業 の 労 務 管 理 と労 働 過 程59 0プ レス職 場 X組 立職場

1,000労 働時間

6080100̀120140160(時 間)

図 一1.労 働 時 間 と ボ ー ナ ス 額 の 分 布

り,結 局 月 間 労 働 時 間 の135%分 を 賃 金 と し て 受 け 取 る こ と に な る。 こ の 労 働 者 の 時 給 が60Ftで,月 澗 労 働 時 間 が140時 間 な ら,賃 金 は11,340Ftと な る わ け で あ る。 同 じ く時 給60Ftの 労 働 者 の 月 間 作 業 量(出 来 高)が90%の 場 合 に は,規 定 の160時 問 を 働 い て も9,600Ftに しか な ら な い か ら,そ の 差 は 大 き い 。 多 少 欠 勤 が 増c}/1...ても,工 場 へ 出 た と きに し っ か り働 け ば,そ の 方 が 得 す る と労 働 者 は 考 え て も無 理 は な い 。

ノ ル マ の90%を 超 過 した 分 に 対 して 個 人 別 時 給 の1.5倍 で 支 払 わ れ る ボ ー ナ ス の 金 額 を み て み る と,た と え ば プ レ ス職 場 で は 平 均 の ボ ー ナ ス 額 は6172Ft だ が,1,000Ft未 満(4人,最 低 は282Ft)か ら11,000Ft以 上(同13人,最 高 は12,763Ft)ま で 大 き く分 散 して い る 。 しか も,た ん に 個 人 に よ っ て 開 き が 大 き い と い うだ け で は な く,労 働 時 間 別 に 集 計 し て み て もバ ラ ツ キ が 非 常 に 目 立 つ 。 所 定 の160時 間 働 い た15人 と,100〜140時 間 働 い た16人 の ボ ー ナ ス額 を 比 較 して み る と,ユ 万Ft以 上 は 前 者 が3人,後 者 が8人 と な っ て お り,ボ

ー ナ ス 額 は む しろ 労 働 時 間 の 短 い 層 の方 が 多 くな っ て い る。 賃 金 計 算 の 基 礎 と な っ て い る会 社 資 料 に 基 づ ぎ,こ う した 月 間 労 働 時 間 と獲 得 ボ ー ナ ス 額 の 分 布 を プ レス 職 場(55人)と 組 立 職 場(57人)に 関 して 示 して い る の が 図 一1で る。 一 見 し て わ か る よ うに,バ ラ ツ キ が 大 き く,特 に プ レス 職 場 で 顕 著 で あ

08mooδ

・1iX ooOox

m }

0

x

k

OV xx

o6

累m

EI n

m

00渚xX 合x6

xXb nlit̲.m x

o憂

・m・xO

●lxlIxO x xゴ

●{o{oi x..o」

x! ̲Iifx x蟹xr

0

xX郷O

x賊 X!x

まX L、

eθx、P・

(12)

る。 プ レス 職 場 で は,月 間100時 間 を 超 え る 層 に 限 定 す れ ば,労 働 時 間 と獲 得 ボ ー ナ ス 額 と は ほ と ん ど無 関 係 で は な い か と思 え る ほ ど で あ る。 組 立 職 場 で は こ う した 傾 向 は 緩 和 され て お り,全 体 と して ボ ー ナ ス 額 は 労 働 時 間 に 相 関 して い る よ うに 思 え る 。 賃 金 総 額 の な か で ボ ー ナ ス の 占 め る 割 合 が50%近 い 現 状 で は,ボ ー ナ ス の 多 寡 は そ の ま ま賃 金 額 の 多 寡 に 反 映 し て お り,労 働 時 間 と賃 金

と の 逆 転 現 象 は,労 務 管 理 上 大 き な 問 題 で あ ろ う。

で は 何 故,こ の よ うに 労 働 時 間 と ボ ー ナ ス 額 が 相 関 し な い か と い え ぽ,労 者 個 人 の モ ラ ー ル に 高 低 の 差 が あ る こ と を 別 に す れ ば,決 め られ て い る ノ ル マ に か な りの 大 小 の 格 差 が あ る こ と も一 因 で あ ろ う。 後 述 す る よ うに 筆 者 自身 の 体 験 で も,工 程 ・部 品 に よ っ て ノ ル マ に か な り大 き な 格 差 が あ る こ とが 感 じ ら れ た 。 した が っ て,ノ ル マ の 低 い 仕 事 を 割 り振 っ て も ら}る か ど うか が,ボ ナ ス を 多 く稼 げ る か ど うか を 決 定 す る と い っ て も言 い 過 ぎ で は な い 。 しか し労 働 者 の 側 か ら仕 事 の 配 分 に 関 し て 主 張 で き る部 分 は 小 さ く,「 集 団 長 」 の 指 示 は ほ と ん ど絶 対 的 で あ っ て,「 ダ メ と い っ た ら ダ メ」 だ とい う。 集 団 長 の イ ソ タ ヴ ュ ー で も,ノ ル マ に 高 低 が あ る こ とは 意aさ れ て お り,し た が っ て 毎 日 の 仕 事 の 割 り振 りで は,そ れ も考 慮 し配 分 され て い る こ とが 確 認 され た が,労 者 と集 団 長 の 間,あ る い は 個 々 の 労 働 者 相 互 間 で ど の よ うな遣 り取 りが 行 わ れ て い る の か は,不 明 で あ る。 た だ 図 一1か ら も分 か る よ うに,こ う した 特 徴 は 特 に プ レス 職 場 に 顕 著 で あ り,同 じ出 来 高 賃 の 組 立 職 場 で は,プ レス ほ ど労 働 時 間 と ボ ー ナ ス 額 との バ ラ ツキ は み られ な い 。 お そ ら く,ノ ル マ の 設 定 の 仕 方

と調 整 の 仕 方 の 違 い に 起 因 す る の で あ ろ う。

以 前 の 賃 金 制 度 で は 個 人 の 作 業 実 績 は ほ と ん ど賃 金 に 反 映 し な か っ た の に 対 して,現 在 の 賃 金 制 度 で は た しか に ボ ー ナ ス や 賃 金 総 額 は ノル マ の 達 成 度 に よ っ て 大 き く変 化 は す る よ うに な っ た 。 確 か に に そ れ に よ っ て 生 産 量 は 大 き く増 加 し,「 日産78台 だ っ た の が,新 ボ.̲̲.ナス 制 度 の 導 入 後 に は 日産480台 に な っ

た 」 とい う8)。 しか し,モ ラ ー ル ・規 律 水 準 の 不 均 等 と ノ ル マ 自体 の 不 均 等 に よ っ て,そ の イ ソ セ ソ テ ィ ブ機 能 は 均 質 に 作 用 せ ず,結 果 と して の 生 産 の ム ラ を 現 象 さ せ,工 場 全 体 の 生 産 性 の 一 層 の 向 上 を 阻 害 して い る の で は な い か と思 わ れ る 。 現 に 社 長 の 話 で は,い ま で も 「プ レ ス 部 門 が 生 産 の ネ ッ ク で あ り,し

ば しば 部 品 が 不 足 す る 」 と い う。

(13)

ハ ンガ リー企 業 の労務 管理 と労働 過 程61

ア イデ アの 実現

技 能 ・知 識 の 発 展

シ フ ト選 択

\さ \ \ 、

\、\

、 \ .一一

2緊 、

のノ ノ //

熟 練 労 働 者 一一一半 熟 練 労 働 者 一 一 未 熟 練 労 働 者

作業 ス ピー ドの選 択

作 業方 法の選択

技能 ・知 識 の使 用

図 一2.技 能 レベ ル 別 労 働 過 程 特 性 6.0労 働 過 程 の 特 性

ア ン ケ ー トで は}現 在 の 仕 事 に お け る次 の項 目の可 能 性 の程 度 に つ い て 回答 を 求 め て お り,そ れ に よって そ れ ぞ れ の労 働 過 程 の特 性 を み よ うと思 う。 項 目 は 「シ フ トの選 択 」 「作 業 ス ピー ドの選 択 」 「作 業 方 法 の選 択 」 「自分 の技 能 や 専 門 知識 を 使 うこ と」 「技 能 や 専 門 知 識 の 発 達 」 「自分 ρ アイ デ アを 実 現 す る こ

と」 の6つ で あ り,そ れ ぞ れ0〜5ま で で そ の可 能 性 を評 価 して も らった 。 回 答 結 果 で は,「 作 業 方 法 の選 択 」(平 均 で2.97)や 「作 業 ス ピー ドの 選 択 」(同 2.?3)に お け る可 能 性 が あ る との 回答 が 多 く。 「シ フ トの選 択 」(1.89)や 「技

能 や 専 門 知 識 の発 達 」(2.10)の 可 能 性 は少 な い と意 識 され て い る。 職 種 に よ って も異 な るが,少 な くと も相 対 的 に は 「作 業方 法」 や 「作 業 ス ピー ド」 に お け る 自律 性 が 意 識 され て い る こ とは 注 目に 値 す る。

図一2「 技 能 レベ ル 別 労 働過 程 特 性 」 は この 結 果 を技 能 レベ ル 別 に ま とめ た

(14)

グ ラフで あ る。 「シ フ トの選 択」 以 外 のす べ て の項 目で熟 練 労働 者 の評 価 が 高 い こ と,「 作 業 方 法 の選 択 」 「アイ デ アの 実 現」 な ど複 数 の項 目で未 熟 練 労働 者 と半 熟 練 労 働 者 の 回答 が近 似 して い る こと,な どが 分 か る。 全 体 と して半 熟 練 労 働 者 の労 働 過 程 は,熟 練 労 働 者 の そ れ よ りは 未 熟 練 労 働 者 の労 働 過 程 との 同 質 性 を示 して い る とい え よ う。

仕 事 に関 す る諸 条 件 の適 切 さを 問 う質 問 で は,適 切 だ とい う評 価 の高 い条 件 は 「労 働 時 間 の利 用 効 率」 「仕 事 の ス ピ ー ド」 「シ フ トの割 当」 「事 故 防止 」 な どで あ り,反 対 に 不 適 切 だ との回 答 が 多 い の は 「仕 事 の ノル マ」 「情 報 の提 供」

「騒 音 等 物 理 的 条 件」 「メイ ンテ ナ ソス,機 械 の設 置」 な どで あ る。 要 す る に, 時 間 の ム ダは な く,適 切 な ス ピー ドで 仕事 を して い る に も関 わ らず,ノ ル マは 高 く,与 え られ る情 報 も少 な く,'作 業 環 境 に も問 題 が 多 い とい う意 見 だ と解 釈 で き よ う。 しか し,民 営 化 後 に予 想 され る変 化 につ い て の設 問 で は,最 も可 能 性 の 高 い もの は 「労 働 規 律 の確 立 」 で あ り,こ れ か ら見 る限 り,現 状 の 労 働 規 律 に 問 題 が あ る との認 識 は か な り共 有 され て い るの で,「 労 働 時 間 の利 用 効 率」

が 適 切 で あ る との 回答 は,あ る意 味 で は建 前 で あ る と もい え よ う。

7.職 と 技

仕 事 上 で必 要 な能 力 を 問 う設 問 で は,全 体 的 に,「 細 か な正 確 さ」 「技 能 の=豊 か さ」 「長 期 間 の仕 事 の経 験 」 を上 げ る回 答 が 多 く,熟 練 的 な能 力 が 必 要 な 仕 事 とい う自己解 釈 が 多 い こ とが わ か る。 全15項 目の うち,熟 練 労 働 者 で は 「経 験 」(5段 階 評 価 で の平 均 で4.1,以 下 同 じ)「 技 能 の豊 か さ」(4.0)「 自立 性 と イ ニ シアチ ブ」(4.0)「 細 か な 正確 さ」(3.9)「 手先 の器 用 さ」(3.9)と い った 回答 が 目立 つ。 半 熟 練 労 働 者 で も 「細 か な正 確 さ」(3.8)「 自立 性 とイ ニ シ ア チ ブ」(3.8)「 手 先 の器 用 さ」(3.8)「 忍 耐 力」(3.7)「 技 能 の豊 か さ」(3.7)が ベ ス ト5で あ り,「単 調 さへ の我 慢 」 や 「持 久 力」 とい った 回 答 は 低 か った 。 熟 練 労働 者 で の 「経 験 」 と半 熟 練 労 働 者 で の 「忍 耐 力 」 を 除 け ぽ これ らの項 目は両 者 の 労働 の相 違 を 端 的 に表 現 して い るが一,上 位5位 ま で に入 っ て い る項 目は,項 目的 に は違 い は み られ な い が,各 項 目の強 調 度 は全 体的 に熟 練 労 働 者 の方 が 高 い。 や は り熟 練 労 働 者 の方 に仕 事 と能 力 へ の 自信 が 読 み 取 れ る。

こ う した 両者 の 技 能 の相 違 は,仕 事 に必 要 な教 育 程 度 や 訓 練 期 間 に つ い て は よ り鮮 明 に な って き てい る。 必 要 な教 育程 度 に 関 して は,半 熟 練 労 働 者 の68%

が 「義 務 教 育程 度」 で充 分 と回 答 して い る の に対 して,熟 練 労 働 者 では1ラ

(15)

ハ ソガ リー企 業 の労 務 管理 と労 働過 程63

ク高 い 「職 業 訓 練 学 校 ・コー ス」 が 必 要 との 回 答 が82%に 達 して い る。 これ は 彼 らの実 際 の学 歴 の反 映 で もあ る のだ ろ うが,差 は 明確 で あ る。 また 仕 事 に 必 要 な訓 練 期 間 に対 す る回答 で も,半 熟 練 労 働 者 で は 「1年 よ り長 い」 は2%に 過 ぎず,「2・3日 」 か ら 「2週 間」 の 回答 合 計 で26%,「1ヵ 月」 まで の 累 計

で は69%と な り,必 要 な技 能 が 比 較 的 短 期 間 で習 得 で き る とい う回答 が 多 か っ た 。 それ に対 して 熟練 労 働 者 の 回答 で は,ほ ぼ半 数 の48%の 人 が 「1年 よ り長'

い」 期 間 が 必要 と答 え て い る。 当然 の こ とだ が,こ こで も熟 練 と半 熟 練 との 間 に は技 能 習 得期 間 の 上 で大 きな差 が あ る こ とが示 され て い る。

だ が,必 要 な学 歴 と訓 練 期 間 の点 で,両 者 は 明 らか な相 違 が あ るに も係 わ ら ず,仕 事 に 必要 な能 力 に関 して あ ま り差 異 が見 られ な い の は な ぜ な の だ ろ う か 。 特 に 半熟 練 労 働者 が 「単 調 さへ の我 慢 」 や 「肉体 的/精 神 的持 久 力 」 とい

っ た項 目 よ りも 「細 か な正 確 さ」 「自立 性 とイ ニ シア チ ブ」 「手 先 の器 用 さ」 な どの項 目を あ げ て い る点 に 自己欺 隔 は な い の だ ろ うか。 彼 らが 自分 の気 持 ち を 正 直 に示 して い る と した ら,可 能 な解 釈 は,半 熟 練 労働 者 た ち が 自分 た ち の単 純 な反 復 作 業 の もつ 単 調 性 や 肉体 的/精 神 的 負 荷 の 辛 さを あ ま り意 識 して い な い とい うこ とで あ る。 そ れ よ りは,前 述 した 出 来 高 賃 制 度 の も とで いか に して ノル マ を 超 え,ボ ー ナ ス を稼 ぐか に関 心 が 向 い て お り,そ のた め の能 力 が 強 く 意 識 され て い る の で は な い だ ろ うか。

&労 働 過 程 と ノル マ

図 一3の よ うな 上 の 少 し開 い た 円 筒 を 作 る過 程 を 例 に,実 際 の 労 働 過 程 と ノ ル マ が ど の よ うに な っ て い る か を み て み よ う。 これ は 次 の5つ の 工 程 に 分 か れ て い る。

(1)2500㍉ ×1250㍉ の 鉄 板 か ら,160㍉ ×1250㍉ の 鉄 板 を15本 取 り出 せ る よ うに 切 断 す る。

(2)そ の 細 長 い 鉄 板 か ら直 径155㍉ の 円 板 を7つ 切 断 す る 。 (3)そ の 円 板 を 図 一4の よ うな 帽 子 形 に プ レス す る。

(4)そ の 帽 子 形 の 円 周 部 分 を 一 定 幅 で 切 り落 とす 。

そ の 帽 子 形 の 底 の 部 分 を 打 ち抜 く。

ノ ル マ 表 に よれ ば,各 工 程 の100個 あ た りの 標 準 作 業 時 間 は(1)か ら順 番 に 以 下 の 通 りで あ る 。(1)6.2分(要 員2人),(2)10.4分(要 員1人,以 下 同 じ),(3) 29.0分,(4)14.9分,(5)14.9分 。(1)は 細 長 い 鉄 板100枚 分 の ノ ル マ だ か ら,一

(16)

R3

r

o㎝

X x 十R

0

X 1 ×

X ×

9

82

i

(84)

1

(︒︒

図 一3.

84

◎う

[二=

r

1町5紹

/ R3

1 ノ ノτ==コ

図 一4.

本 か ら7枚 の 円 板 が 取 れ る と計 算 す る と,円 板100個 あ た りの ノ ル マ 時 間 は0・9 分 で あ る 。 した が っ て(1)〜(5)ま で の 合 計 で100個 あ た りの ノ ル マ を 計 算 す る と, 計70.1分 とな る 。 ノ ル マ 上 は1個 あ た り0.7分,約42秒 で 生 産 す る こ と に な る 。 実 際 の 作 業 で は,(1)か ら(5)の 各 工 程 別 に1台 の 機 械,(1)が 二 人 で 作 業 す る ほ か は 各 一 人 の 作 業 で あ る 。 ③ の 工 程 の 標 準 作 業 時 間 が29分 と長 い の は,円 を 帽 子 形 に 押 し延 ば す た め,機 械 自 体 の 作 動 時 間 が か か る こ と と,3〜4回 一 度 刷 毛 で 円 板 に 油 を 塗 ら な け れ ば な ら な い か ら で あ る。 そ れ 以 外 は,作 業 者 の 動 作 と し て は ③ も ④ も(5)も ほ ぼ 同 じ で あ る 。 す な わ ち,① 部 品 を 機 械 の 指 定 の 場 所 に 据}て,② 両 手 で プ レス 機 械 の ボ タ ンを 押 し,③ 加 工 の 終 わ った 部 品 を 取 り除 い て,ま た 次 の 部 品 を 据 え る,と い う作 業 の 繰 り返 し で あ る。(4)や ⑤ は 一 個 あ た り約9秒 の 作 業 な の だ が,加 工 す る 部 品 を 機 械 の 横 に 並 ぺ て 置 い て,取 りや す くす る な ど の 周 辺 的 な 作 業 に 時 間 が 取 られ る の で,休 む 暇 な く,

(17)

ハ ンガ リー企 業 の労 務管 理 と労 働過 程65 か な りの ス ピ ー ドで 作 業 を しな い と,ボ ー ナ ス を 獲 得 す る ま で に は い か な い 。 (5)の作 業 の ノ ル マ 通 りに 行 う とす る と,̲̲̲..日で3200個 あ ま りを 加 工 し な け れ ば な ら な い か ら,文 字 通 りの 単 純 ・反 復 作 業 で あ る。 筆 者 自 身 の 体 験 で は,か り高 い モ ラ ー一ル で 働 い て も,実 働7時 間 あ ま りで1800個 弱 に しか な ら な か っ た 。 こ の 作 業 に 関 す る 限 り,ノ ル マ は か な り高 く,達 成 す る こ と 嫉 容 易 で は な い と実 感 した 。 しか し他 の 労 働 者 は も っ と ノ ル マ の 水 準 に 近 づ い て い た よ うで あ る 。 こ の 違 い に は 理 由 が あ る 。 実 は 安 全 の た め に ① と③ の 作 業 は 大 型 の ピ ン セ ッ トを 使 う よ うに 指 示 さ れ て い る 。 プ レス 機 械 の 下 に 手 を 入 れ る こ とを 避 け る た め で あ る9)。 だ が ピ ン セ ヅ トで 挟 ん で い た の で は 能 率 は 上 が ら な い 。 実 際 に は,① は 右 手 で,③ は 左 手 で ほ ぼ 同 時 並 行 に 行 わ な い と,ノ ル マ に 近 づ く こ

とは で き な い の で あ る。 多 くの 労 働 者 は 手 袋 を は め た 手 や あ る い は 素 手 で 作 業 を 行 っ て い た 。 ノ ル マ の 達 成 の た め1,r4Lは,安 全 を 多 少 犠 牲 に せ ざ る を 得 な い の が 実 情 の よ うで あ っ た 。

しか し筆 者 で も(3)の 作 業 は ほ ぼ ノル マ を 達 成 す る こ とが で き た 。 こ の 作 業 は 機 械 の 作 動 し て い る 時 間 が 長 い の で,そ の 分 標 準 作 業 時 間 が 長 く と っ て あ る。

しか し機 械 の 作 動 時 間5秒 ほ ど の うち,最 初 の1.5秒 ほ ど ボ タ ンを 押 して い れ ば,後 は 自動 的 に 動 くの で,手 が 空 い て 次 の 作 業 の 準 備 を して お く こ と が で き る。 した が っ て ノ ル マ は 一 日1655個 だ が,筆 者 で も実 働6時 間 で1630個 の 加 工 が で き た 。 お そ ら く普 通 の 労 働 者 な ら,ノ ル マ を 大 き く超}る こ とが で き る と

思 わ れ る 。

こ の よ うに,ノ ル マ の 設 定 は 工 程 に よ っ て か な り高 低 が あ り,達 成 の 容 易 な も の と困 難 な もの と の 差 が 大 き い よ うに 思 わ れ る 。 た とYば,他 に も筆 者 の 体 験 した も の に 次 の よ うな 例 が あ った 。 二 つ の 作 業 は ど ち ら も鉄 板 の 折 り曲 げ 作 業 な の だ が,一 方 は縦4セ ンチ,横20セ ンチ の 小 片 な の に 対 し て,他 方 は 縦25

セ ンチ,横100セ ン チ ほ ど の 大 き さ で,10枚 も重 な る とか な りの 重 量 に も な る 鉄 板 で あ る。 しか し ノ ル マ の100個 あ た りの 時 間 は 前 者 が19.6分 に 対 し て,後 者 が21.4分 で あ ま り差 が な い 。 確 か に 機 械 自体 の 作 動 時 間 は 一 瞬 で,そ こ で は ほ と ん ど差 は な い の だ が,前 老 は 部 品 が 小 さ い の で 扱 い や す く,連 続 的 な 作 業 が で き る の に 対 して,後 者 は 一 回 ず つ 据 え た り外 した に 時 間 が か か る。 特 に と

き ど き 鉄 板 が 反 っ て い た り して,所 定 の 場 所 に うま く据 え ら れ ず,ず れ て し ま う こ とが あ る な ど,作 業 の 質 と 肉 体 的/精 神 的 な 負 荷 量 に 大 き な 差 が あ っ た 。 しか し ノ ル マ 上 に は 大 き な 差 は な い の で あ る 。 後 者 の 作 業 を 割 り振 ら れ た 労 働 者 が,も う ノル マ の 達 成 は 諦 め て の ん び り仕 事 を し,最 低 の 時 給 を 確 保 し よ う

参照

関連したドキュメント

女性は他人を積極的に高揚させるが、この労働において自然に見えれば見えるほど、感情労働は労

①企業スポーツは従業員の労働意欲に影響を与 えるか?

[r]

(6)遺族厚生年金 遺族厚生年金は、次の場合にその遺族に支給されます。 イ

『現代英国企業と労使関係一合理化と労働組合一j (税務経理協会,

[r]

CASE (computer-aided software engineering) tools allowed personnel to spend less time on routine task , and made it possible for relatively young and inexperienced

Shekshnia, Stanislav, 1996, Managing People in Russia, Sheila Puffer and Associates, Business and Management in Russia, Edward Elgar... Shekshnia, Stanislav,