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小学生の歴史学習と歴史意識の形成・変容に関する 調査研究

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(1)

小学生の歴史学習と歴史意識の形成・変容に関する 調査研究

著者 山? 準二, 紅林 伸幸, 金子 淳, 谷口 成生, 伊東 

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇

17

ページ 201‑226

発行年 1986‑03‑22

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00008425

(2)

小学生の歴史学習 と歴史意識 の形成・ 変容 に関する調査研究

A Research into the Formation and Transformation of School Children's Historical-Awareness Relative to their

History-Learning

山 崎 準 二・ 紅 林 伸 幸*0金

伊 東

**・ 谷 口 成 生***

****

Junji Yennezeru, Nobu5zuki KunneavASHI, Jun KexEKo, Naruo Teulcucst and Iwao Ito

(昭60年10月 11日 受理)

  

近年,筆者 らが実施 した調査 によれば,小学生 にとって一番「 よ くわか らない科 目」 は意外 にも社会科であつたPその後 の各種調査結果 によれば,中学生・ 高校生 に とって もまた社会科 はよ くわか らない科 目であるとの意識が強い ようである。 また,現職 の小学校教師 に とって も 社会科 はどう指導 していつた ら良いのか非常 に悩 む科 目の一つであ り,教育実習 を終 えた学生 達 にたずねて も同様 の返事がたびたび間かれる。 どうや ら指導す る教師の側 に とって も,社 科 は苦手科 目の部類 に入 るようである。 しか し他方で,多くの子 どもたちが「社会科 は,教 によってお もしろ くもつ まらな くもなる教科である」 と思 っている事実 もある│

本調査研究 は,初めて学校で歴史 を学習す る小学校6年生の或 る一つの学級 に入 り,彼らが

行 う歴史学習 を一年間通 して観察 し,その歴史学習の進展 に沿 って随時彼 らの歴史 に対するイ メージや意識,あるいは彼 らの歴史学習 に対する意欲や態度 といった ものを把握 し,あわせて それ らの変容状況 を把握 しようと試みた ものである。小学校6年生の歴史学習 は,通常週 当 り

3時間行われてお り,一年間そのすべてにわたって観察することは筆者 らの客観的諸条件が許 さなかったため,1〜2週間 に1度 ぐらいの間隔で観察 し,授業 の展開 をVTRに録画 した。ま ,調査 の実施 は,後掲の く1〉 に明記 してあるように調査内容の性格 を考慮 しなが ら必要 な機会 に随時行 つた。本来,年 間を通 して録画 したVTRの授業記録 こそが筆者 らにとっては貴 重な主たる研究データであるが,今回の報告 はそれを十分 に活用す るまでに至 っていない。む しろ,質問紙 によって実施 した調査結果や子 どもたちが まとめた学習 ノー ト鋤や感想文 といつ た ものを主たるデータ として報告する段階 に止 まっていることを予めお断 りしてお きたい。

=静岡大学大学院教育学研究科

'お 兵庫県姫路市立城乾小学校

*"静岡県浜松市立竜祥寺小学校

* *静岡県静岡市立久能小学校 (いずれも執筆時点)

(3)

202 山崎 準 二・紅 林 伸 幸 ̀金 子  淳 ◆谷 回成 生

]伊 1学1級の 1984年 度歴史学1習の歩み

(注)A調直‐ F歴史』イメ‐ジ調麿、B調 査‐「 時代』ィメ‐ジ調査、C調 査‐歴史学習に対する意欲 。態度

に関する.調査 (詳 しくは、本文Щ、IIIを参照のこと)

今回のような試み に対 しては,受け入 れて くれる学級 を探 す段階で大 きな障害 にぶつか り,多くは

あさらめざるをえな いのが通例 で あ る ,幸いにも伊東巌 教諭りの,全面的協力 を得て実施すること ができた。研究の手 続 きや方法論等,多

くの不十分さを残 し なが らも,本報告は 現段1階での1筆者 らの 試みの一応のまとめ と して,調査 に あ たった山崎,紅林伸 ,金子淳,谷口成 (執筆順)の1四 が分担執筆 し,全 の調査を山崎がF Tつ

たものである。

(山崎準二)

伊 東 実1践 概要 とそ搬 '

1.一年間│の歴史学 習の概1要

伊 東 学 級 の1984 年度歴史学習の歩み ,〈表 1>の とお り ,あつた。年度当初 の指導計画よりは, やや教材 〈二〉及び

三〉の1部分におい て予定1時間数をオー バーし,その分く四〉

及び 〈五〉に1時1間 しわよせを及ぼさざ

  ― 授 業 時1間 の テ ー マ

︲︲ 5

17 1月

19

1月

1 101

1月

11

一 一月

一一 1 2 ︲

<■>

の︱

l猿 / ② 猿人から原人

◎ 原人のくらし

④ 旧1人のくらし   .

⑤ 新人のくらし

1野尻湖吠 /O野 尻湖人のくらt/

。第1回A、 B、 C調

。安倍111河原 にて試作体験

o第 2回 B調

◎ 縄文人のくらし / ⑩ 緻 式土器 ωl年表づくり

① 農 

②,お 米とともに生きる登呂の人々

Ct  登呂の人々のくらし

⑤l米 作 り /   登昌の くらし

⑦ 大きな墓 /③  大きな基て5〜 o世 紀)

◎,身 分の差ができた

⑩ 登呂と古墳のまとめ

.奈良の1都

⑫、奈良の大仏

0大宝律令

⑮l奈 良 (復 習)/   奈良のくらし

⑫ 平安時代 / 貴族のくら,し

3回B調

。第2回A、 C調

。第4回B調

<≫

民│

0武士のはじめ / 0  半氏と源氏

③ヽ鎌倉幕府

④ 承久の変

⑥l元,と戦う(元冠)/⑥  ,(竹崎季長)

⑦ 鎌倉幕府はろびる

③l室町幕府       .

0,土―揆 / 「d(山 城国一揆)

① 農民は強くな つた

⑫l駿 府を守る城./ ①‐ 持舟域,―

⑭ 長篠の1戦 /⑥  

⑬ 堺の1町

⑫ 豊1巨秀吉(検地をやる秀吉)

① 、⑩.刀 狩 り mlll家1康(1関

'原の戦い、江戸幕府)

④l農 民│のくらし(慶安のお触書き)/8同(年 貢)

]量 i

④'農具の改良

②l島原のEL/② l百 姓―揆/④ 農民はどこへ

◎.江 戸の商人

o黒rlAが来る/⑫ 外国船おいはらえ、幕府を倒せ

。弔'側B調

´「持舟城」は、戦国時代駿‐1国において

今″1氏、のち武,日氏のものとなり、徳

軍と武田軍の合戦の1舞台となつた城 'II

′静岡の市地図からt新

´{想憮‐熱黙警[鷲を探すr荘

新回開発、 ききん等々の学習,こ及んで

ヽ`

{摯緋皇Fこはし

。第3回A、 C調

。第6回 B調

① 明1治維新 /  文明1開

◎ 富岡製糸工場

l明治新政府 /  西南戦争

1自由民権 / O秩父事件

l大日本帝国1憲

◎ 日晴戦争 / 曰露戦争

 この│お金はP(野麦峠)

⑫ 第‐次世界大戦│

O米そう動

① 普通選挙 01関1東大震災

① 十五年戦争 /10 日中戦争

① 太平洋戦争 / 沖縄の'戦 の 戦争申のくらし

④ 広島。長崎(原)

② 敗 

⇔ 今の︲L の中

① 戦碑 の生潜

② 新 しい日本

③l朝鮮戦争

④ サンフランシスコ平和1条約│

⑤l映 画「 予言」

⑥ 死の灰 (第 五福竜丸事件) 。第4回A、 C調 査

(4)

小学生の歴史学習 と歴史意識の形成・ 変容に関する調1査研究

るをえなかったようである。伊東は,歴史学習の目標 を,「過去 を学び,未来を展望 し,現在の 矛盾を切 り開いてい く力を育てる」ことにおき,自らの授業の教材を構成する基本視点 として, (a)歴史上の事件や人物のイメージを形成する,(b)基本的な歴史概念を初歩的に学びとらせ, 本質に迫る,(C)人民の眼をとおして歴史をみる,の 3点を挙げている。特に,小学校 におけ

る歴史学習の狙いとしては,「時代時代の典型的事件や文化遺産 をとりあげて,時代のイメージ づ くりをすることを中心にしたい」(・ 点―一山崎)と表明している。そこには,中学校では, 小学校で学んだ時代のイメージを理論的につなげてほしいという期待が込められている。で

は伊東 自身は,どのような時代イメージを持つているのか。〈1〉にみられる事実に基づ くな らばこの場合の「時代」 とは,大きく括つて 5つ の教材単元に相応することになろう。今, その点を伊東の指導案等々に窺 うならば,おおよそ次のようにまとめることができるであろう。

すなわち,「一〉大昔の くらし」‐は,基本的に狩 りと採集の時代であり,気の遠 くなるような 年月を経た停滞の時代である。 しかし,その停滞の中に少 しずつ生産力が発展してゆき,や

て農業をする時代になって急激な進歩を示す。「く二〉農業 と国家」の時代は,「登呂」と「大仏 づ くり」 という2つ のイヴェントによって象徴 される時代である。 まず農業の時代の幕あけと

して「登呂」を把握することによって,農業を開始する苦 しみとそれを可能にした人間の技術, 人間そのもののすばらしさが感 じられる。しかし,それは同時 に身分の差を生みだし,天皇を 中心 とする古代国家の形成へ と連なる。「大仏づ くり」には,天皇の国の法律,律令 によって,

口分田では農民が動員され,労働 させ られるが,そ の農民たちもやがて荘園へ逃げだしてゆき, 律令国家は衰退 してゆ く。「く三〉農民 と武士」の時代は,特に農民の眼で歴史をみることによつ ,農民 こそ生産力を発展させた本人であり,・武士は支配階級で農民に寄生 して生活 していた。

その農民が示 した対応 として,「一揆」や「新田づ くりや農具の改良等々にみられる生産向上へ の努力」,あるいは「江戸や大阪など都市への流入」がある。「く四〉新 しい世の中」の時代は, 明治新政府ができ,政治 0社会の諸改革がすすめられるとともに,自由民権運動の動きから国 会が開設され,憲法が発布 され,急速に近代国家への歩みをはじめる。さらに,日0日露の 戦争へ と進むが,それは野麦峠の話に象徴されるように,かよわい娘たち (民)の苦 しい労 働の上に成 り立っていたのである。昭和期に入 り,十五戦争へ と突 き進む日本は,広島・長崎

への原爆投下によって敗戦 を迎える。「〈五〉今の世あ中」の時代は,それ らの犠牲の̲Lに築か れたものであり,様々な問題を抱えながらもともあれ歴史上最 も恵まれた生活を営むことが できているが,それを根底からおびやかすものがある。核兵器である。 この問題に触れないで 子 ども達を卒業さすわけにはいかないのである。以上のような目標 と自らの時代イメージに立 脚 して展開される伊東の歴史授業はいかなる特徴 をもっているのか,この点について次に述べ ていこう。

2。 伊東実践の特徴

(山崎準二)

伊東実践は,極めて個性的なものである。それは,歴史の授業を行 うにあたつて,伊東が小 学生段階の子 どもたちに託 している願い,す なわち,①

 

断片的知識を身につけることよりも, いきいきとした歴史体験をさせたい,②

 

歴史の傍観者的な視点ではな く,主体的な視点に立つ て思考を展開させたい,という願いに基づいて授業を構成 した結果 として生 じてきた特徴であ る。 このような伊東の願いを背景 として生み出される授業実践の特徴は,次のような3点にま とめられよう。

第一に,授業展開の基本はいわゆる仮説実験授業の形式が意識 されている点である。つまり,

(5)

山 崎 準 二・紅 林 伸 幸・ 金 子  淳・谷 口 成 生

「仮説一一討論=―検証」 というプロセスを歴史学習の中にも取 り入れたい との発想 に基づい ている。 もつとも,歴史 とい う教科の性質上,検証 の段階に実験 を組 み込 む ことは不可能であ るため,教師の講義(コメン ト)がその役割 を果た しているようである。 しか し,伊東の場合, む しろ重視 されているのは「仮説一―討論」 とい う段階である。伊東が仮説実験授業の形態 を 用いているのは,一般 に味気ない知識の受 け売 りだ けに終始 しがちな歴史の学習を,よ りい き いきとした もの として子 どもたちに体験 させたい という願いか らなのであ り,子どもの討論 を 中心 として授業の流れを組 み立ててゆきたい との意識が強 く働 いているか らである。授業の中 心部分である討論 は,子どもたちの 自発的な発言 によって展開 されてい く。教師は,あ くまで

子 どもたちの関心が本題か ら逸れそうになる時 に,子どもの思考 を授業の流れの本筋 に戻す と いつた役割 を果たすのみである。子 どもたちは,授業 の最初 に自分で考 えた意見 (仮)に づいて,それをクラスメー トの前で 自由に発表 し,クラスメー トの異なった考 え と対決 させ,

あ るいはEいに補れヽあい なが ,自らの考 えをより豊かで質 の高いものに練 り上 げてい くよ うに指導 されるのである。 とこ ろで,討論が仮説 に基づいて進 められる以上,その討論 を中身 の濃いもの とするためには,各

自がたてる仮説が質の高い もの であることが求められる。 ここ に子 どもたちが仮説 をたてるに あたつての教師の手だてが問題 となるが,この点が次の第二の 特徴である。

授業「登呂の人々のくらし」の展開構造図

第二 に,授業の冒頭 には,常

にその授業時間のテーマを集約 してお り,かつ子 どもたちの関 心 を引 きつけるような資料が提 示 されている点である。それは,

多 くの場合,スライ ド00HP・

ビデオ・ 実物等 を用い:視覚や 触覚 に訴 える教材提示方法が採 られている。これは,「子 どもた ちは言葉か らその もの (事)

のイメージを抱 くのは苦手であ るが,反9視覚・ 触覚 に訴 え る ものか らつかむ力は非常 にす ぐれている」 という伊東 自身の 現代 っ子把握 に基づいた試みで あつて,そのような方法 によっ

罐 過時間)

)

(構

15

(各 自の イメージ形成)

・ 各 自がOHPでスク リーンに映 し出 された絵(イネか りをす る弥生人の姿,背 に高床式倉庫)の題を考えている。

 (イメージ=題の発表)

  ・ 各 自考 えた題の発表 が行 なわれ,5つの代表 的 意 見に まとめ られた後,それ ら     に対する賛F a者の人数分布確認がな され る。

(討論 =` 米に注 目)

③ 注目すべきなのは,`米作 り"

が始まったという歴史的事実 であ るとの 方 向で尾乱が 収 拾

され,確認 され る。

  "に関 心 が 向 け られ る。

②覺危(む李午車に告臭島tti負

木 の実 も食べ て い た か ら,それ はおか しい,

反 対 だ」 とい った意 見 が で て きて,しば ら

く混 乱 。

(討=t時期 "に 注 目)

③ 背景│あ る建物 (住 居や高床 式倉庫 ♪に注 目することによ って,登 呂遺跡=弥生人では ないかとの方向で混乱が収 拾 ざれ,確認 される。

弥生人"と言葉が でて,全

体の関心が人物 に移 る。

 「 インド人だ」という発言もとびだし,人 物の特徴だけでは,な かなか

時期"が

定化 で きずに 混 舌L。

(鉛 筆 対 談)

 [3恵ξE喜遍ぁTテEg霧T[幾

 ② 全体発表    発表者た ちの内容 に共通 して,「今年は少 し楽な生活がで きます

    tな「讐│1蠣

=結Yヂ O全体の確認作業   「 米作 りによって生活が楽にな った」 ことに注 目させ る。

ことして教師のレクチャー。

(次時σ課題 の提示)

。登呂の人々の くらしを もっと詳 しく,例えば住居や倉庫の こと,米作 りの方法 などを ,次 に勉強 してゆ こう。

28 

﹇ 1

一 卜

(6)

小学生の歴史学習 と歴史意識の形成・ 変容 に関する調査研究 205

,子どもたちが より明確 なイメージを形成 し,各自が 自分な りに仮説 をたてる ことがで きた ,あるいはまた臨場感 をもつて歴史場面 と出会い,その中で主体的な思考 を展開で きる いった ことな どの実現が期待 されているのである。

第二 に,「鉛筆対談」と子 どもたちに呼 ばれている一種 の劇化方法が しばしば授業の最終部分 に採 られている点である。 これは,伊東 自身の着想 に基づ くもので,子どもたちを授業で扱わ れた或 る歴史場面の登場人物 にな りきらせ,その場面で交わされた と思われる会話 を創作 させ,

演 じさせる とい うものである。子 どもたち全員が隣席の者 と二人一組 にな り,紙を交互に回わ ,全員がその紙上で対話 を行 つた後,教師 によって選 出された数組が全員の前で演 じるので ある。伊東 は,「第二者的,評論家的な,自分 とは関係がないかの ような冷たい眼で歴史 を観 る のではな く,自分が あたか もその事件 の申に生 きていて,喜怒哀楽 をともにし,感情 を伴 つた 人間 として歴史 を考 えさせ るように学習 を工夫 したい」 と述べているがこの「鉛筆対談」 も そのような歴史場面 と主体的 に関わ らせ るといった手だての一つなのである。それはまた,劇

化それ 自体 の面 白さも手伝 つて,子どもたちに歴史への興味・ 関心 を高 めさせ る作用 も果た し ている。 このような方法 を授業の最終部分 に採 り入れ るとい うことは,討論 の中で練 り上 げら れた内容の確認作業 を行 うとい う意味 と同時に,紙上の「対談」という形 を とっていることで,

全体討論の中にうまく入 り込 めなか った子 どもも対話者 とのや りとりの中で積極的な関わ りを もつ ことにな り,全員 に次時への意識 のつなが りをもたせ る とい う意味 も含 まれている。

さて次 に,以上述べて きた伊東実践 の特徴が比較的 よ くあらわれている と思われる授業「登 呂の人々の くらし」 (1984年 6月 13日 実施)の展開を分析 し,構造化づけることを通 して,さ らに具体的に論及 してい きたい。

「登 呂の人々の くらし」の授業展開は,おお よそ 〈表2〉 のように構造化づ けられ よう。 こ れによれば,授業全体の大 きな流れ を見 る限 りでは,かな り順調 に進行 しているようで もある ,それぞれの大分節の中に細か く目を向けると必ず しもそれがスムーズに展開 していったわ けで もない ことが窺 えよう。特 に,討論 の2つの大分節のそれぞれ において,混乱が認 められ る。 これは,討論が子 どもの 自発的発言 によって進行 されてい くために生 じた混乱であ り,当

然起 るべ くして起 った ものである と言 える。 しか し,伊東の実践 を とらえるために特 にここで 注 目したいのは,そうした混乱の有無やその原因は何 か といつた点ではな く,むしろその混乱 が大 き くな らないうちに,子どもの思考が教師の働 きかけによって授業の本題 に巧 みに戻 され ている とい う点である。伊東学級 の歴史の授業 は,確か に子 どもを主体 として,彼らの自発的 な発言 に基づ きなが ら展開 されてい くのであるが,それ は言 うまで もな く,子どもたちの思考 の混乱の素早い見極 め,混乱 を収拾す る際の働 きかけ 。発問等々の巧 みさといつた実践者伊 東の指導力量 に支 えられての ものなのである。

仮説設定(第,三分節)に15分が あて られているのであるが,こ こでは教材提示,イ メー ジ形成(文章化),発,意見 の分布確認が行われている。教材提示 はOHPを用いて一枚 の絵 を提示するという形で行われた。 ここで提示 される資料 (絵)が,授業 のその後 の展開 を左右 することになるため,授業 テーマを最 もよ く集約 した最高の資料 (絵)を選択することに細心 の注意が払われている。仮説設定では,全員が 自分の仮説 (考)をしつか りと持つ ことが重 要なため,まず各 自が 自分の考 えをノー トに文章化すること,そしてそれ らを発表 しあい,類

似 した考 えが教師 によってカテゴ リー化 され,学級内におけるそれ らの分布状況が全員 に確認 され る6討(第,四分節)は,授業の中心部分であ り,約22分間 にわたって行われている。

(7)

206 山 崎 準 二・ 紅 林 伸 幸・ 金 子  淳・ 谷 口 成 生

3「歴史」イメージ調査結果 (平均点表示)

調 査 回数 1回 (5月) 2回 (7月) 3回 (11月) 4回 (2月)

ク ラ フ 男 子 女 子 クラス 男 子 女 子 クラヌ 男 子 女 子 クラス 男 子 女 子 (1)お もしろい――…一つまらない

(2)親 しみやすい―――親 しみにくい (3)近 づきやすい―――近づきにくい (4)う ちとけた――――かたぐるしい (5)新 しい一―――――古 くさい (6)や さしい―――――いかめ しい (7)特 色のある一―――ありきた りの (8)厚 みのある――――うすっぺ らな (9)の んび りした一――あわただ しい (10)いきいきした―――死んだような (11)あまい――――――からい (12)おだやかな早―…―はげしい (13)きれいな―――――きたない (14)あたたかい――……つめたい (15)あかるい―――…― くらい (16)はやい――――――おそい (17)ながい一―――――み じかい (18)やわらかい一―……かたい (19)かるい――――…―おもい (20)うつくしい一―――みにくい

1.58 2.15 2.25 2.44 3.45 2.38 2.08 1.67 3.08 2.25 3.23 3.08 2.56 2.78 2.88 2.72 1.88 3.32 3.48 2.78

1.701 2.00 2.05 2.37 3.35 2.55 2.15 1.84 3.26 2.2o 3.35 3.10 2.85 2.80 2.75 2.55 1.90 3.39 3.30 3.05

1.45 2.30 2.45 2.50 3.55 3.20 2.00 1.50 2.00 2.30 3.20 3.05 2.26 2.75 3.00 2.89 1.85 3.25 3.65 2.50

1.32 2.00 2.30 2.40 3.30 2.70 2.03 1.32 2.81 2.31 2.77 3.38 2.97 3.14 3.28 2.70 1.74 3.14 3.54 3.00

1.45 2.35 2.47 2.50 3.35 2.68 2.15 2.40 3.05 2.42 3.00 3.45 2.89 3.20 3.37 2.75 1.95 3.05 3.45 3.05

1.18 1.65 2.12 2.29 3.24 2.71 1.88 1.24 2.53 2.18 2.55 3.29‐

3.06 3.06 3.18 2.65 1.53 3.24 3.65 2.94

1.46 2.07 2.45 2.52 3.26 2.82 1.95 1.54 3.36 2.23 3.36 3.75 3.10 3.18 3.25 2.64 1.97 3.21 3.29 2.95

1.30 2.20 2.53 2.25 3.40 2.90

2。00 1.50 3.55 2.45 3.35 3.50 3.10

3。05 2.85 2.40 2.15 3.30 3.25 2.95

1.63

1。95 2.37 2.79 3.11 2.74 1.89 1.58 3.16

2。00 3.37 4.00 3.11 3.32 3.63 2.39 1.79

8。11 3.32 2.95

1.38 2.15 2.30 2.48 2.78 3.05 2.00 1.58 3.45 2.73 3.33 3.77 3.10 3.40 3.33 2.65 1.70 3.45 3.70 3.13

1.40 2.10 2.30 2.40 2.90 3.05 2.10 1.70 3.45 2.85 3.20 3.68 3.15 3.55 3.40 2.45 1.90 3.65 3.50 3.15

1.35 2.20 2.30 2.55 2.65 3.05 1.90 1.45 3.45 2.60 3.45 3.85 3.05 3.25 3.25 2.85 1.50 3.25 3.00 3.10

40 20

平均点の算出方法=(各尺度上番号の選択者数X各尺度上番号を換算値 とした得点総回答者数

´

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二 い 夕 劉

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(9)

208 山 崎 準 二・紅 林 伸 幸・ 金 子  淳・谷 口 成 生

ここでの発言 は,ほとん どが子 どもの ものであ り,教師 は子 どもの発言 に対 して,ほめた り,

勇気づけた り,あるいはアイデアを受 け入れた り,利用 した りといつた種類 の発言 をもっばら 繰 り返 している。 しか し,各々の分節のポイン トでは,教師が巧みに働 きか け,子どもの発言 を討論の流れの中で まとめていっている。約22分間の長 い討論の中で,教師 と子 どもたちの間 ,一問一答式のや りとりがほ とん ど行われていない ことは特筆すべ き点であろう。鉛筆対談 (第五分節)は,約9分間行われた。 この鉛筆対談 は,米作 りの始 まった生活全般 のイメージ を多様 に出させ るための もの と考 えられ,そうした意味では,授業の まとめ的性格 を強 く帯び ている。 しか し,確認の小分節で「米作 りによって生活が楽 になった」 とい うまとめを行い,

さらにそれに基づいて次時の課題 の提示 (第六分節)をしていることを考 える と,次時 に向け ての子 どもたちの関心の喚起 とい う意図が,そこに多分 に含 まれているといえよう。

以上,伊東実践 の概要 とその特徴 をみて きたのであるが,最後 に,その ような実践,特に授 業 にかかわってい うな らば,個々の考 えの集団による練 り上 げが生みだ され る背景 には,伊 の学級経営の努力,自主的で民主的な学習集団の形成 にむけた努力 といった ものが存在 してい ることも忘れてはな らないであろう。(しか し,こ の点 にまでの詳 しい論及 は本報告の域 を越 え るので行わなかった。)

 

歴 史学 習 と歴 史 イメー ジ の形成・ 変容0

1。 「歴史」イメージの調査結果

(紅林伸幸)

「歴史」 とい う言葉か らイメージする内容 を:一つは く3〉<グラフ1‑(a),(b),(C)〉 み られるような20項目のそれぞれに5段階尺度法で回答 してもらう調査,二つは 〈表4〉 に整 理 されているように「歴史」とい う言葉か ら即座 に連想する語句 を3つまで挙 げて もらう調査,

この2つの調査 を通 じて把握 しようとした。調査 は,前掲の く1〉 の中に明記 したように,

歴史学習の進行 に沿 って4回に渡 って追跡的に実施 され,それによってイメージする内容上の 変化 を択 え,考察 しようと試みた ものである。 まず;これ らの調査結果か ら分析 してゆ こう。

くグラフ1‑(a)〉 ,試みに,回答用の尺度上番号 をその まま換算値 とし,クラス全体 (40 )の平均点 を算出 し,尺度上 にプロッ トしてみた ものである。くグラフ1‑(b)〉 はそれの男子 20名の場合,〈グラフ1‑(C)〉 はそれの女子20名の場合 をあ らわ している。項 目の設定の仕方 か ら,一応点数が低 いほど(つま り尺度の左側 になるほど)イ メージがブライ ト(bright)傾 にあ り,点数が高いほど(つまり尺度の右側 になるほど)イ メージがダーク (dark)傾向にあ ると仮称することにして以下の特徴記述 を進 めてゆきたい。 しか し,それは良 し悪 しの価値判 断を含 ませた仮称ではない ことを予 めお断 りしてお きたい。4回の調査 を通 してのクラス全体 の大 まかな傾向 としては,強いブライ ト傾向にある項 目として,「 (1)お もしろい一」・「(8)厚みの ある一」・「αつながい―」の3項目が認 められる。逆 に,強いダーク傾向を示 した項 目はない も のの,相対的 にややダーク傾 向にある項 目として,F(5)一古 くさい」・「αカー はげしい」・「00‑か たい」・「09‑おもい」の4項目が認 め られ る。 この点では男女 ともほぼ同様の傾向にあるが,

但 し若干女子 の方が第(1),(8),αつ項 目のプライ ト傾 向に男子 に比べ強 さが認 められ よう。第(1)

項 目の「(1)お もしろい一」 とい うブライ ト傾 向は諸々の調査結果 を鑑みるとやや予想外 な結果 ではあるが,全体 として これ らの結果 は,そのまま現在 の小学校6年生 の素朴な歴史意識 を窺 わせ るものではないだろうか。次 に, 4回の調査 による傾 向の変化 といった点 に目を移 してみ る と,以下の ような3つの特徴 が把握で きるように思われる。すなわち,その一つは,第(2)〜)

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