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フ ラ ンス に お け る従 業 員 ・公 務 員 と著 作 者 の権 利

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フ ラ ンス に お け る従 業 員 ・公 務 員 と著 作 者 の権 利

長 塚 真 琴

は じ め に

著 作 権 法15条 は,創 作 行 為 が 団 体 や 個 人 の 業 務 に従 事 す る者 に よ り職 務 上 お こな わ れ,さ ら に一 定 の 要 件 を満 た す 場 合,当 該 団体 や 個 人 が 著 作 者 とな る と 定 め る。国 とそ の 臨 時 職 員 との 関 係 に も同 条 の適 用 を認 め る の が 判 例 で あ り1), 同 条 が 公 務 員 に適 用 され る こ と を争 う見 解 は な い。

同 条 の要 件 解 釈 をめ ぐ る議 論 は,1985年 前 後 か ら 目立 つ よ う に な っ た2)。 こ の 年 に は新 潟 鉄 工 事 件 判 決3)が 下 さ れ,コ ン ピュ ー タ ・プ ロ グ ラ ム 関 連 の 法 改 正 の 一 環 と して,15条 に2項 が 追 加 さ れ た 。1992年 に は,文 化 庁 『コ ン ピ ュ ー タ ・プ ロ グ ラム に係 る 著 作 権 問 題 に 関す る 調 査 研 究 協 力 者 会 議 報 告 書 一 コ ン ピ ュ ー タ ・ソ フ トウ ェ ア と法 人 著 作 につ い て一 』4)が発 表 され た。 そ の前 後 に も,

1)最 判 昭 和59.3.9判 例 集 未 登 載,東 京 高 判 昭 和57.4.22判 時1039号21頁[龍 渓 書 舎]。

2)山 田恒 夫 「職 務 上 創 作 し た コ ン ピ ュ ー タ ・プ ロ グ ラ ム の 権 利 に つ い て 」 山梨 学 院 大 学 法 学 論 集6号(1983年)135頁,中 山信 弘 『ソ フ トウ ェ ア の 法 的保 護(初 版)』

(有斐 閣,1986年)54頁 。 後 者 は,権 利 公 示 手 段 の な い 著 作 権 法 に お い て 第 三 者 が 権 利 者 を 容 易 に 見 つ け られ る よ う にす る制 度 と し て15条 を正 当 化 す る が,一 で 著 作 権 法 体 系 中 で そ れ が 例 外 で あ る こ と も指 摘 し,厳 格 な解 釈 を 要 請 す る 。 3)東 京 高 判 昭 和60.12.4判 時1190号143頁,原 審 東 京 地 判 昭 和60.2.13判 時1146号23

頁 。 職 務 上 制 作 さ れ た 未 公 表 の プ ロ グ ラ ム の 著 作 者 は 従 業 員 か 会 社 か が 問 題 と な っ た 。 そ して,公 表 予 定 は な い が 仮 に 公 表 され る とす れ ば 法 人 等 の 名 義 で 公 表 さ れ る も の 」 に も,15条1項 が 適 用 され る と認 め られ た 。

4)http://www.cric.or.jp/houkoku/h4 ̲3/h4̲3.html.本 稿 のURL最 終 確 認 は,2003 年7月14日 で あ る 。

〔281〕

(2)

民 商 法 雑 誌107巻4・5号(1993年)が 特 集 『ソ フ トウ ェ ア と法 人 著 作 』 を組 む な ど,議 論 は 大 き な盛 り上 が りをみ せ た5)。 そ の 後 も次 々 と議 論 へ の 参 入 が あ り6),最 近 で は,筆 者 と同 世 代 の研 究 者 に よる 大 部 の論 文 が 現 れ て い る7)。

しか し,同 条 に 関 して フ ラ ンス 法 との 比 較 研 究 を継 続 的 に お こ な っ て い る の は,筆 者 の み で あ る。これ まで に発 表 した もの8)が 引 用 さ れ る こ と も ま ま あ る 。 筆 者 は生 来 の 怠 惰 ゆ え,著 作 権 法15条 の解 釈 論 を な か な か公 に で きな い で い る が,2001年9月 か ら1年 間,フ ラ ン ス の ポ ワ テ ィエ大 学 で在 外 研 究 す る 機 会 に 恵 まれ,フ ラ ンス 法 お よ び フ ラ ンス の 時事 的 状 況 の 理 解 だ け は 多 少 深 ま っ た。

そ こで 本 稿 で は,上 記3本 の 旧 稿 の 内容 を1つ に ま と め,ア ッ プ デ ー ト し, 5)斉 藤 博 「職 務 著 作 とベ ル ヌ 体 制 」 同 号536頁 は,雇 用 者 に 著 作 者 の 地 位 ま で 取 得

さ せ る立 法 は,普 通 は 英 米 法 国 に み ら れ る こ と を 指 摘 す る。 同 『著 作 権 法 』(有 斐 閣,2000年)ユ24頁 は,15条 は 大 陸 法 系 の 日本 著 作 権 法 の 中 で は 例 外 的 な 制 度 で あ る と指 摘 し,厳 格 解 釈 を支 持 す る 。1990年 代 前 半 に発 表 され た 主 要 な 議 論 と して,鎌 田 薫 「機 密 資 料 の 開 発 者 に よ る 一 時 持 ち 出 し と横 領 罪 」 小 野 還 暦 判 例 不 正 競 業 法 』(発 明 協 会,1992年)755頁 が あ り,新 潟 鉄 工 事 件 に鑑 み,未 公 表 著 作 物 に つ い て は 秘 密 と し て 管 理 さ れ て い る もの の み が15条1項 の 適 用 を 享 受 す べ きで あ る とい う解 釈 を提 唱 す る 。民 商 法 雑 誌 の 特 集 に収 録 され て い る小 泉 直樹 「知 的 財 産 と法 人 の 権 利 」 は,こ の 解 釈 を 支 持 す る(同 号502頁)。 ま た,紋 谷 暢 男 「職 務 上 の 創 作 に つ い て 」 コ ピ ラ イ ト379号(1992年)9頁 は,15条1項 の す べ て の 要 件 を 「職 務 上 」 の 要 件 に 収 敏 させ て い く解 釈 を 提 唱 す る 。

6)田 村 善 之 「職 務 著 作 の 要 件 構 造 」 ジ ュ リス ト1132号(1998年)39〜40頁 は,15条 は 第 三 者 の 著 作 物 利 用 を容 易 に す る た め の 規 定 で あ り,こ れ が 従 業 者 か ら 使 用 者 へ の 著 作 者 人 格 権 行 使 を封 じ る こ とは 正 当 化 で き る が,使 用 者 が 著 作 者 人 格 権 を 行 使 す る こ と は,立 法 論 と し て は 問 題 で あ る と い う。 茶 園 成 樹 著 作 権 法15条 に お け る公 表 名 義 の 要 件 」 阪 大 法 学49巻3・4号(1999年)461頁 は,鎌 田 説 に触 発 さ れ つ つ,公 表 を 予 定 しな い 著 作 物 に つ い て は,創 作 時 に,法 人 等 が 著 作 物 を 自 由 に 利 用 ・処 分 す る権 利 を有 す る も の と して 取 り扱 っ て い た か で 適 否 を 決 す べ きで あ る とす る 。

7)潮 海 久 雄 「著 作 権 法 に お け る 創 作 者 主 義 の 変 遷 過 程 ←)〜㈹ 」法 学 協 会 雑 誌116巻12 号(1999年)88頁 〜119巻10号(2002年)113頁 。 著 作 権 の 原 始 的 帰 属 は,著 作 物 の 創 作 性 の 程 度 に 応 じて 異 な る解 決 が 可 能 で あ り,15条1項 の 公 表 要 件 が そ の た め の 手 が か りに な る と す る 。 同 条 を 例 外 規 定 と み る 考 え方 に は 批 判 的 で あ る 。 8)「 フ ラ ンス に お け る 集 合 著 作 物 制 度 」 著 作 権 研 究22号(1995年)49頁(以 下 「著

研 」),「 ソ フ トウ ェ ア の 職 務 著 作 に 関 す る フ ラ ン ス 法 」 紋 谷 還 暦 知 的 財 産 権 法 の 現 代 的 課 題 』(1998年)620頁(以 下 「紋 谷 還 暦 」),「 フ ラ ンス 法 上 の 集 合 著 作 物 を め ぐる 最 近 の 展 開 」久 保 古 稀 『市 場 経 済 と 企 業 法 』(2000年)379頁(以 下 「久 保 古 稀 」)。

(3)

フ ラ ンスにお け る従 業 員 ・公務員 と著 作者 の権 利 283 公 務 員 の場 合 な ど,こ れ ま で検 討 か ら もれ て い た点 を補 う。 これ に よ り,フ ラ

ンス に お け る従 業 員 ・公 務 員 と著 作 者 の 権 利(droitd'auteur,著 作 財 産 権 と 著 作 者 人 格 権 を ま とめ て い う)に 関 し,最 新 情 報 を 包 括 的 に提 供 し,議 論 の 一 助 と した い 。

具 体 的 に は,ま ず,著 作 権 法15条 との 要 件 ・効 果 の 類 似 性 が 注 目 さ れ る 集 合 著 作 物(一),次 に,従 業 員 の 著 作 財 産 権 の 法 定 譲 渡 を 認 め た ソ フ トウ ェ ア に 関 す る特 別 規 定(二)を 検 討 す る。次 に,こ れ らに あ て は ま らな い 場 合 に 関 し, 私 法 上 の従 業 員(三)お よ び 公 務 員(四)の 権 利 を検 討 す る 。 そ して最 後 に,

フ ラ ンス 法 の 現 状 を ま とめ,紙 幅 の 許 す 限 りで 日本 法 へ の示 唆 を導 く(五)。

一 .集 合 著 作 物

1.条 文 と若 干 の 沿 革

フ ラ ンス に は,日 本 法15条 の よ う な,職 務 ・公 務 上 の著 作 物 に 関 す る包 括 的 な 規 定 は な い 。 しか し,フ ラ ンス に は 集 合 著 作 物 制 度 が あ る 。 知 的所 有 権 法 典 (以下 「法 典 」)L.113‑2条3項 は,「 集 合 著 作 物 とは,自 然 人 また は法 人 の発 意 に基 づ い て 創 作 され,そ の 指 示 お よび 名 の下 に 出 版 さ れ,発 行 さ れ,公 表 さ れ,か つ,作 成 に参 加 した各 著 作 者 の 個 々 の寄 与 が,そ れ らが 着 想 され た 目的 で あ る全 体 の 中 に 融 合 して お り,制 作 され た全 体 につ い て,1つ の 別 個 の 権 利

を各 著 作 者 に付 与 しえ な い 著 作 物 をい う」 と定 義 す る。 そ して,L.113‑5条1 項 ・2項 は,集 合 著 作 物 は 「反 対 の 証 拠 が な い 限 り,そ の 著 作 物 が そ の 名 の 下 に 公 表 され た 自然 人 ま た は 法 人 の 所 有 に か か る 。/こ の 自然 人 ま た は 法 人 は, 著 作 者 の 諸 権 利 を付 与 さ れ る 」 と 定 め る9)。

これ に よれ ば,集 合 著 作 物 の 全 体 に 関 して は,そ の制 作 と公 表 を 主 導 した 自 然 人 また は 法 人(以 下 「主 導 者 」)が,原 始 的 に著 作 者 の権 利,す な わ ち著 作 権 と著 作 者 人 格 権 を付 与 され る。 この 帰 結 は 日本 法15条 と共 通 し,ま た,公 9)条 文 の訳 は 筆 者 に よ る。 た だ し,大 山 幸 房 訳 『外 国 著 作 権 法 令 集 ⑱ フ ラ ン ス 編 』

(著作 権 情 報 セ ン ター,1996年)を 参 考 に し た 。

(4)

の要 件 を持 つ こ と も共 通 す る。 そ れ も そ の は ず で,15条 は,諸 外 国 の 立 法 例 と 共 に,集 合 著 作 物 制 度 を も参 考 と して 立 法 さ れ た もの で あ る10)。 さ ら に,判 例 上,国 は法 人 と して 集 合 著 作 物 の 所 有 者 た りう る と され て い る こ と も共 通 す

る11)。

集 合 著 作 物 は,1957年3月11日 法 にお い て 初 め て 明 文 で 規 定 され た 。1957年 法 は フ ラ ンス の 現 行 著 作 権 法 で あ り,1992年 に ほ とん ど内 容 修 正 な く法 典 に と

り込 まれ た 。

ゴ ド ラの 最 近 の 研 究 に よ れ ば,集 合 著 作 物 の概 念 は,大 革 命 直 後 の ア カ デ ミー ・フ ラ ンセ ー ズ 辞 典 の 事 件 に端 を発 し,歴 史 的 人 物 の 事 典 に 関 す る19世 紀 半 ば の デ ィ ド事 件 に よ り,判 例 法 と し て 定 式 化 さ れ た 。 これ らは い ず れ も単 純 な偽 作(contrefagon)の 事 案 で あ っ た 。 個 々 の 記 述 が 公 有 に 帰 して い る な ど の事 情 が あ っ た た め,裁 判 所 は,出 版 者=主 導 者 を著 作 者 の地 位 につ け る こ と に よ り,偽 作 者 に 対 す る 請 求 を認 め た 。 しか し,2つ の 事 件 に お い て は 出 版 者 の 経 済 的 利 益 の保 護 の み が 求 め られ,著 作 者 人 格 権 が 主 張 され る こ と は な か っ た 。 そ もそ も,著 作 者 人 格 権 の 観 念 は,前 者 の 事 件 の 頃 に は ま だ な く,後 者 の 事 件 の 頃 に は発 達 途 上 で あ った の で あ る12)。

こ の 判 例 法 が 成 文 法 とな っ て い く過 程 を 詳細 に跡 付 け る余 裕 は,本 稿 に は な い 。 しか し,A.リ ュ カ に よ れ ば,1957年 の 立 法 者 は,ア カ デ ミー 辞 典 一 個 々

10)「 シ ン ポ ジ ウ ム 『著 作 権 法 制 と 人 格 権 』 議 事 録 」 著 作 権 研 究23号(1997年)68〜

70頁 に み られ る 加 戸 守 行 氏 発 言 。 しか し,著 作 権 制 度 審 議 会 第 一 小 委 員 会 審 議 結 果 報 告(1965年5月,著 作 権 情 報 セ ン タ ー 所 蔵)に は,集 合 著 作 物 制 度 に そ っ く りな 規 定 を 作 る こ とが 提 言 さ れ て い た 。 この 規 定 は,そ の 後 の 著 作 権 制 度 審 議 会 答 申(1966年4月,同)で 現 行15条1項 に 近 い も の へ と修 正 さ れ て い くが,少 く と も 検 討 の 初 期 の段 階 で は,集 合 著 作 物 制 度 は 他 国 の 法 制 よ り も,強 い 影 響 力 を 有 して い た と思 わ れ る 。

11)CE10juilL1996,RIDAoct.1996,p.207,noteK6r6ver.国 立 経 済 統 計 研 究 所 (INSEE)の 作 成 に か か るSIRENEと い う 企 業 デ ー タベ ー ス の 無 断 再 送 信 を め ぐる 事 案 で あ る 。 国 に よ る排 他 権 の 行 使 や デ ー タ ベ ー ス の 創 作 性 な ど,他 に も興 味 深 い 論 点 を含 む 。

12)Gaudrat,Ph.,Lesd6m616sintemporelsd'uncoupleasucces:1ecr6ateuret1'in‑

vestisseur,RIDAoct.2001,PP.171ets.

(5)

フ ラ ンス にお け る従 業 員 ・公 務員 と著 作者 の権 利 285 の 語 の 定 義 に 複 数 の ア カ デ ミー 会 員 が 関与 し,し か も莫 大 な数 の 語 を収 録 す る の で,誰 が どれ ほ ど関 与 した か の 確 定 が 不 可 能 で あ る 一 や,百 科 事 典 一 執 筆 者 間 に協 力 が な く,共 同著 作 物 とす る に は 問 題 が あ る 一 の よ う な,特 殊 な 言 語 著 作 物 の事 例 に 対 処 した か っ た だ け で あ る とい う13)。つ ま り,そ れ ら以 外 の著 作 物 につ い て 集 合 著 作 物 の 主 張 が な され る こ とは,立 法 者 の 予 定 外 で あ っ た とい え る。

2.集 合 著 作 物 と侵 害 訴 訟 一1980年 代 ま で の 運 用

と ころ が,1957年 法 の 下,裁 判 所 に集 合 著 作 物 の 著 作 権 侵 害 を訴 え出 た の は, 上 記 の よ う な 言 語 著 作 物 の 出 版 者 だ け で は な か っ た 。L.113‑2条3項 の 文 言 の 解 釈 は,衣 服 や 実 用 品 な どの 商 品 の デ ザ イ ン をめ ぐる 数 多 くの侵 害 事 件 を 通 じ て,お こ な わ れ て き た。

こ の種 の デ ザ イ ン は,多 くの場 合,主 導 者 た る企 業 の 発 意 に基 づ き,複 数 の デ ザ イ ナ ー の共 同 作 業 に よ り制 作 され,企 業 の 名 の下 に,そ の デ ザ イ ンを 施 し た 商 品 と して公 表 され る 。 デ ザ イ ンの 模 倣 が な さ れ る と,企 業 は 集 合 著 作 物 の 著 作 権 が 侵 害 され た と して 提 訴 す る 。 そ うす れ ば,デ ザ イ ナ ー か ら著 作 権 の 譲 渡(三1と 註62参 照)を 受 け て い な くて も,企 業 は 自 らの 名 で提 訴 で きる か ら で あ る 。 そ して,被 告 は デ ザ イ ンの 集 合 著 作 物 該 当性 を 争 う14)。

13)Lucas,A.,actualis6parC.Bernau比Juris‑ClasseursProprir6t61itt6raireet

artistiqueFasc.1185(mai2002>,no133.著 作 者 の 権 利 の 帰 属 に 関 す る,最 新 か つ 最 も詳 細 な 客 観 的 解 説 で あ る 。 本 稿 は こ の 文 献 に多 くを 負 う。

な お,フ ラ ン ス に も編 集 著 作 権(L.112‑3条1項 後 段)は 存 在 し,そ の 要 件 ・ 効 果 は 日本 法 に 近 い 。 しか し,そ れ を 原 始 的 に 享 有 す る の も ま た 自然 人 の み で あ る(三1参 照)。

14)フ ラ ン ス 法 で は,商 晶 の デ ザ イ ン につ い て,意 匠 法 に よ る保 護 と著 作 権 法 に よ る 保 護 が 完 全 に 累 積 す る 。20世 紀 初 頭 の 学 説 に端 を発 す る 「美 の 単 一 性 理 論 」 に 基 づ き,美 的 要 素 の い か ん に か か わ らず,独 自 の 創 作 で あ れ ば 著 作 権 法 が 適 用 され る と考 え られ て い る(佐 藤 恵 太 「意 匠 保 護 法 制 の 再 検 討 」 法 学 新 報99巻7・8号

(1993年),特 に119〜120頁)。

本 稿 の 検 討 に 必 要 な 範 囲 で,フ ラ ンス の 意 匠 法 と,不 正 競 争 の 法 的 規 律 を紹 介 して お こ う 。 な お,こ こ で い う 「意 匠 」 は 原 語 で 「デ ッサ ン と モ デ ル 」 と表 現 さ れ,前 者 は2次 元 の,後 者 は3次 元 の デ ザ イ ン を さす 。

(6)

主 な争 点 と な っ た の は,個 々 の デ ザ イ ナ ー の 寄 与 が どの よ うな 態 様 で な され た場 合 に,集 合 著 作 物 が 成 立 す る か で あ っ た 。 こ の 点 に つ き,判 例 は1980年 代 の 終 わ り ま で,2つ の 考 え 方 の 間 を 揺 れ 動 い た 。

1つ は デ ポ ワ の 説 で あ り,「 別 個(distinct)の 」 と い う 要 件 を 「不 分 割(in‑

divis)15)の 」 と読 み 替 え,個 々 の 寄 与 の 著 作 者 全 員 が,主 導 者 か ら与 え ら れ た 作 業 にだ け没 頭 し,相 互 に無 関係 で あ り,誰 ひ と り著 作 物 全 体 に つ い て の 共 同 著 作 者 と は い え な い よ う な 場 合 に の み,集 合 著 作 物 の 存 在 を認 め る16)。 こ こ に は,集 合 著 作 物 を フ ラ ンス 著作 権 法 に お け る異 常(anomalie)と と らえ17),

フ ラ ンス の 現 行 意 匠 法 は1909年7月14日 法 で あ り,法 典L.511‑1条 以 下 に組 み 込 ま れ て い る 。 新 規 か つ 固 有 の 特 徴 を 有 す る 意 匠 を 登 録 に よ り保 護 す る が (L.511‑2条,L.511‑9条1項1文),実 質 審 査 は な い(L.512‑2条)。 保 護 期 間 は 出 願 後5年 間 で,最 長25年 間 ま で 延 長 可 能 で あ る(L.513‑1条1項)。 権 利 内 容 は,「 登 録 意 匠 を 施 した 製 品 の 製 造,提 供,市 場 へ の投 入,輸 入,輸 出,使 用, 以 上 を 目 的 と す る 展 示 」 に 関 す る 排 他 権 で あ る(L.513‑4条)。 保 護 は デ ザ イ ン の 創 作 者 ま た は そ の 承 継 人 に 与 え られ る が,登 録 の た め の 寄 託 を な す 者 は 保 護 を 受 け る 資 格 を推 定 さ れ る(L.511‑9条1項2文,2項)。 実 際 に も,寄 託 は 法 人

に よ っ て 直 接 な さ れ る こ とが た い へ ん 多 い と い う(佐 藤 前 掲 論 文125頁)。

以 上 は,意 匠 の 法 的保 護 に 関 す る 共 同 体 指 令(1998年)に 適 合 させ る た め,2001 年 に改 正 を受 け た 国 内 法 の 要 点 で あ る 。 一 方,国 内 法 とは 独 立 の 制 度 と して,2002 年3月6日 よ り共 同 体 未 登 録 意 匠 保 護(発 売 後3年 間 に 限 り模 倣 行 為 か ら の 保 護 を 認 め る)が 施 行 され て お り,2003年 の 同 日か らは,共 同 体 登 録 意 匠 権(出 願 後25 年 間 の 排 他 権)の 出 願 も受 け付 け られ る よ う に な っ て い る。 出 願 は,商 品 の 発 売 か ら1年 以 内 に す れ ば よ い。 共 同 体 意 匠 制 度 に 関 し,マ ー テ ィ ン ・シ ュ ロ ッ ター ブ ル グ/事 務 局(解 説 ・訳)「 共 同 体 意 匠 の 実 務 」AIPPI47巻11号(2002年)746頁 フ ラ ンス に は,日 本 の 不 正 競 争 防 止 法 の よ う な 特 別 法 は 存 在 し な い 。 同法2条 1項1号 に 相 当 す る 狭 義 の 混 同 行 為(商 品 形 態 の 模 倣 に よ る もの も含 む)や,2 号 に相 当 す る広 義 の 混 同 行 為 は,民 法1382条 以 下 の 不 法 行 為 と し て 規 律 さ れ て い る(後 者 は 講 学 上 寄 生 行 為 と呼 ば れ る)。 山 口 俊 夫 『フ ラ ンス 債 権 法 』(東 京 大 学 出 版 会,1986年)166頁 に よ れ ば,フ ラ ンス の 不 法 行 為 法 で は,原 状 回 復 を 実 現 す る た め の 現 物 賠 償 と して,店 舗 の 閉 鎖 な ど の 請 求 も認 め られ て い る 。

15)あ る 資 産 の 特 定 部 分 に 限 ら れ ず,資 産 全 体 に つ い て,排 他 的 で は な く競 合 的 に 他 の 同 質 の 権 利 と共 存 す る 状 態 。 山 口 俊 夫(編)『 フ ラ ンス 法 辞 典 』(東 京 大 学 出 版 会,2002年)286頁

16)Desbois,H.Ledroitd'auteurenFrance,3θ 飢,Dalloz,1978,no171.こ の 解 釈 は,共 同 著 作 物(L.113‑2条1項,分 離 利 用 が 可 能 で も適 用 さ れ る 点 の み が 日本 法 と異 な る)に 該 当 す る も の は 集 合 著 作 物 で は な い と い う立 場 か ら な さ れ て い る。

17)Ibid.,nO166.

(7)

フラ ンスにお け る従業 員 ・公務 員 と著作者 の権 利 287 そ の 適 用 範 囲 を 限 定 し よ う と し た デ ポ ワ の 思 想 が 現 れ て い る18)。 も う1つ 広 義 説 と も呼 ぶ べ き もの で,「 寄 与 の 融 合 」 そ れ 自体 が 「別 個 の 権 利 を付 与 す る こ と」 の 不 可 能 を意 味 し,「 別 個 の 権 利 を〜 付 与 しえ な い」 と い う文 言 に は 固 有 の 意 味 は ない とす る(い ず れ の 説 に つ い て も,詳 し くは著 研51頁 以 下)。

下 級 審 裁 判 例 ま で含 め る と限 りが な くな るの で,破 殿 院 の判 決 に絞 っ て,判 例 の 展 開 を み て い こ う。 広 義 説 を と っ た もの に は,1970年7月1日 判 決[帆 航 海 事 典]19),1977年3月1日 判 決[ド レス の モ デ ル]20),1980年10月21日 決[団 体 の マ ー ク]21)が あ る 。 い ず れ も,集 合 著 作 物 の 存 在 を認 め た もの で あ る 。 一 方,デ ポ ワ説 を と っ た もの に は,1978年5月17日 判 決[筆 記 用 具 入 れ の モ デ ル]22),1979年11月6日 判 決[鞄 の モ デ ル]23),1987年4月7日 判 決[ソ フ ァー の モ デ ル]24)が あ り,い ず れ も集 合 著 作 物 の 存 在 を否 定 し て い る 。

こ の よ う に,1970年 代 の 終 盤 か ら1980年 代 にか け て は,破 殿 院 に お い て さ え, 広 義 説 の 判 例 とデ ポ ワ説 の 判 例 とが 交 互 に現 わ れ る状 況 が 続 い た 。 こ れ は,集 合 著 作 物 の 所 有 者 で あ る こ と を主 張 す る者 に と っ て は,ひ ど く法 的 安 定 性 に欠 け る状 況 で あ っ た 。

1990年 代 に な る と,判 例 は デ ポ ワ説 に落 ち 着 い た様 子 をみ せ(破 殿 院1991年 2月19日 第1判 決[ゴ ム製 継 手 の モ デ ル]25)),こ れ は 現 在 まで続 い て い る26)。

しか し,そ の 一 方 で破 殿 院 は,企 業 が 提 起 す る侵 害 事 件 に お い て,著 作 者 の 権 利 が 企 業 に原 始 的 に帰 属 す る こ と を,こ れ まで 以 上 に積 極 的 に 認 め る よ う に

18)集 合 著 作 物 を こ の よ う に 例 外 視 す る 発 想 は,現 在 第 一 線 の 著 作 権 法 学 者 に も 共 有

さ れ て い る 。Lucas,op.cit.(note13),no137;Gautier,P.Y.P7(ψ ノゴ76彪1漉 働o〃 θ

etartistique,3eid.mise∂ ブo%7,PUF,1999,no383et384.

19)Cass.Civ.1e「jui1L1970,Gl6nans,D.1970,769.

20)Cass.Crim.,1e「marsl977,D.S.1978,223,notePlaisant.

21)Cass.1e「civ.,210ct.1980,Bull.civ.1,no265;D.S.1981,IR82,0bs.Colombet.

22)Cass.le「civ.,17mai1978,D.S.197&661,noteDesbois;RIDAjanv.1979,p.159.

23)Cass.1e「civ.,6nov.1979,Bull.civ.LnO272;D.S.1981,IR82,0bs.Colombet 24)Cass.Com.,7avril1987,RIDA.juill.1987,p.192.

25)Cass.1e「civ.,19f6vr.1991,Bull.civ.1,no67(arretno1).

26)Lucas,op.cit.(notel3),no125.

(8)

な っ て い っ た 。 そ の た め に編 み 出 され た法 理 が,次 節 で 紹 介 す る 集 合 著 作 物 の 推 定 と,集 合 著 作 物 か ど う か を 問 わ な い権 利 帰 属 の推 定 で あ る 。

3.最 近 の 運 用 一 集 合 著 作 物 の 推 定 と集 合 著 作 物 外 の 推 定

集 合 著 作 物 の 推 定 とは,主 導 者 が,自 らの発 意 に よ り複 数 の者 が 制 作 に 関 与 した 著 作 物 を 自 らの名 の 下 で販 売 な ど利 用 して い る こ と を立 証 で きれ ば,不 分 割 の権 利 につ い て は立 証 責 任 を免 れ る こ とを い う。

この 立 場 を と っ た最 も初 期 の破 殿 院 判 決 で あ る1991年2月19日 第2判 決[タ イ ル貼 り用 目地 剤 の ラベ ル]27)は,制 作 に寄 与 した者 か らの 権 利 主 張 も な く, 侵 害 訴 訟 の被 告 が 原 告 以 外 の者 に 権 利 が 帰 属 す る こ とを 証 明 す る で も な い場 合 に,推 定 が働 く と して い る。そ の 後 の1991年10月22日 判 決[布 の モ デ ル]28)は, 制 作 に 寄 与 した 者 か らの権 利 主 張 が ない こ との み を,推 定 が 働 く要 件 と して い る。 そ して,1993年3月24日 判 決(第1判 決)[ド ア ノ ブ の モ デ ル]29)は,ど ち らの 当 事 者 も集 合 著 作 物 の 要 件 適 合 性 を立 証 し え な い場 合 に は,侵 害 訴 訟 の 原 告 に 有 利 な推 定 が 働 く と判 示 して い る よ うに 読 め る(後 二 者 の判 決 につ い て は久 保 古 稀383〜384頁 参 照)。 論 理 構 成 は そ れ ぞ れ 違 う もの の,い ず れ に お い て も,本 来 な ら集 合 著 作 物 の 成 立 を 立 証 しな け れ ば な らな い の は 原 告=主 導 者 で あ る に もか か わ らず30),そ の 立 証 責 任 は転 換 な い し軽 減 さ れ て い る の で あ る。

破 殿 院 は,さ らに そ の 先 を行 っ た 。1993年3月24日 第2判 決[写 真]31)(以 下 「ア レ オ 判 決 」)は,絵 葉 書 の 写 真 が 観 光 ガ イ ドに 無 断 転 用 さ れ た事 案 に 関 す る。 原 判 決 は写 真 を集 合 著 作 物 と した が,被 告 側 か ら破 殿 申立 を 受 け た 。破

27)Cass.1e「civ.,19f6vr.1991,Bull.civ.1,no67(arretno2).

28)Cass.le「civ.,220ct.1991,1).S.1993,Somm.p.85,0bs.Colombet;RIDAavr.

1992,p.184.

29)Cass.1e「civ.,24mars1993,B6zault,∫CP1993,II,no22085,1eesp合ce,note Greffe;RIDAno15&oct.1993,p.203.

30)Lucas,op.cit.(note13),no127.

31)Cass.1e「civ.,24mars1993,Ar60,∫CPl993,II,no22085,2eesp6ce,noteGreffe;

五〜IDAno158,0ct.1993,P.200.

(9)

フ ラ ンス にお け る従 業員 ・公 務員 と著 作者 の権 利 289 殿 院 は,問 題 の 複 製 行 為 が お こな わ れ た 際,原 告(破 殿 被 申立 人)が そ の 名 の 下 に問 題 の 写 真 を 商 業 的 に利 用 して い た こ と を 「占有 の 行 為 」 と表 現 す る 。 そ して,写 真 の ネ ガ を 制作 した1人 ま た は複 数 の 自然 人 の 側 か ら何 の 権 利 主 張 も な い 場 合,こ の よ う な 占有 の行 為 は,写 真 が 集 合 著 作 物 で あ ろ う と なか ろ う と, 侵 害 を は た ら く第 三 者 との 関係 で,写 真 に 関 し著 作 者 に与 え られ る無 形 の所 有 権 を原 告 が有 す る こ と を推 定 させ る性 質 の もの で あ る と判 示 す る(詳 細 は 久 保 古 稀384〜385頁)。

集合 著 作 物 の 性 質 を 認 め が た い 著 作 物 に 関 し,法 人 企 業 が1957年 法8条(法 典L.113‑1条,日 本 の 著 作 権 法14条 に 近 い)を 根 拠 に,著 作 者 資格 の 推 定 を要 求 した こ とは これ ま で に もあ っ た 。 しか し破 殿 院 は,1982年3月17日 判 決[ラ イ ター の モ デ ルコ32)およ び,ゴ ム 製 継 手 の モ デ ル に 関 す る前 出1991年2月19日 第1判 決 に お い て そ れ を 退 け,法 人 は8条 に よ り著 作 者 で あ る こ と の推 定 を受 け られ な い とい う解 釈 を 維 持 して い る(5参 照)。 これ に対 し,ア レオ判 決 は, 実 質 的 に は判 例 の 転 換 点 と位 置 付 け られ る 。 こ こ で つ い に,1人 の 者 に よ っ て 撮 影 ・現 像 され た と も考 え られ る 写 真,す な わ ち,集 合 著 作 物 の 定 義 に あ て は ま らな い 可 能性 の 高 い著 作 物 に つ い て,そ れ を利 用 す る企 業 に,特 定 の 条 文 に 基 づ か ず,著 作 者 の権 利 の 原 始 的 帰 属 が 認 め られ る に 至 っ た か らで あ る 。

い くつ もの破 殿 院判 決 が,ア レオ 判 決 に 追 随 した 。 そ の うち,集 合 著 作 物 で あ る か ど う か を問 わ な い 旨明 示 し,か つ 「占有 」 とい う表 現 も用 い る もの は, 1995年1月31日 判 決[衣 服 の デ ッサ ンコ33),1996年1月9日 判 決[装 飾 を 施 し た盆]34)で あ る 。 集 合 著 作 物 の 推 定 を した の か 集 合 著 作 物 外 の 推 定 を した の か に つ き学 説 上 争 い が あ る の が,1996年7月3日 判 決[ソ フ トウ ェ ア]35)で あ る。

きわ め て 簡 潔 な 表 現 を と り,や は りど ち らの 推 定 を した の か よ くわ か らな い の

32)Cass.1e「civ"17mars1982,Dupont,RIDAno114,0ct.1982,p.155.

33)Cass.1e「civ"31janv.1995,D.S.1995,Somm.p.287,0bs.Colombet.

34)Cass.1e「civ.,9janv.1996,、 乙λS.1996,Somm.p.285,0bs.Burst;1〜IDAno169, juill.1996,p.341.

35)Cass.1e「civ.3juilL1996,D.1997,Jur.P.32&obs.Frangon;1〜IDAoct1997,P.

315.

(10)

が,1998年10月13日 判 決[ユ ニ ッ トバ ス の 部 品]36)で あ る(以 上,詳 し くは 久 保 古 稀385〜391頁)。

2000年 代 に な っ て も,集 合 著 作 物 外 の推 定 の 流 れ は 止 ま らな い 。 破 殿 院2000 年2月22日 第1判 決[装 飾 を 施 した 壁 灯]37)お よ び 同 第2判 決[衣 服]38)は,「 著 作 者(ら)か ら権 利 主 張 が な い場 合,法 人 が そ の 名 の 下 に著 作 物 を利 用 す る行 為 は,こ の法 人 が,侵 害 に 問 わ れ て い る 第 三 者 との 関 係 で,そ の 著 作 物(集 著 作 物 か ど うか を問 わ な い)の,著 作 者 に 与 え られ る 無 形 の所 有 権 の権 利 者 で あ る こ と を推 定 させ る 」 と判 示 した 。 こ れ は,ア レオ 判 決 か ら 「占有 」 とい う 表 現 だ け を抜 き取 っ た判 示 で あ る 。

以 上 の 概 観 をふ ま え て,特 徴 的 な点 を2つ 指 摘 す る。

(1)企 業 は,主 導 者 と して制 作 した 集 合 著作 物 を,そ の 名 の 下 に 「出 版,発 行,公 表 」 す る39)。 企 業 が そ の 制 作 に か か る デ ザ イ ン を施 し た 商 品 の 販

売 を開 始 す る こ とは,こ れ に あ た る と解 され て きた 。 しか し,タ イ ル 貼 り 用 目地 剤 の ラベ ル に 関 す る前 出1991年2月19日 第2判 決 は,企 業 が 当 該 ラ ベ ル を付 した 商 品 を 販 売 す る こ と を,条 文 通 りの 文 言 で は な く 「利 用 」 と い う文 言 で 表 現 し,利 用 をお こ な う企 業 を 集 合 著 作 物 の 所 有 者 と推 定 した 。 さ ら に,前 出1996年1月9日 判 決 は,他 社 の 制 作 にか か る 装 飾 盆 を 販 売 し て い た にす ぎ な い企 業 ま で,そ の 「利 用 」 行 為 を も っ て,集 合 著 作 物 外 の 権 利 帰 属 を推 定 す る 。

(2>ド ア ノ ブ の モ デ ル に関 す る前 出1993年3月24日 第1判 決 と,壁 灯 に 関 す る 前 出2000年2月22日 第1判 決 は,い ず れ も,古 い 年 代 に デ ザ イ ン され(前 者 は1959年,後 者 は1930年 代),当 該 企 業 が 長 年 販 売 して い る製 品 に関 す る。

36)Cass.1e「civ.130ct.1998,RIDAjanv.1999,P.385.

37)Cass.1e「civ.,20f6vr.2000,Comm.com.41εo〃 」avr.2000,no42,1eesp6ce,note Caron.

38)Cass.1e「civ.20f6vr.2000,Comm.com.6」 εdγ.avr.2000,no42,2eespece,note Caron.

39)「 出 版,発 行,公 表 」 と な っ て い る の は 立 法 者 の 不 手 際 で あ り,こ ら 全 て が 必

と い う 意 味 で は な い と さ れ て い る 。Lucas,op.cit.(note13),no114.

(11)

フ ラ ンス にお け る従業 員 ・公務 員 と著 作 者 の権 利 291 仮 に これ らが 意 匠 登 録 され て い た と して も,保 護 期 間 は と う に満 了 して い る は ず で あ る。 共 同体 意 匠 に よ る保 護 の あ る現 在 で は,企 業 が 著 作 権 に よ る デ ザ イ ン保 護 に頼 る 局 面 は,こ の よ う な 「古 典 的 デ ザ イ ン」 の場 合 に 限 定 さ れ て い くの で は な い か と思 わ れ る。

4.集 合 著 作 物 と個 々 の 寄 与 の 譲 渡

前 節 ま で は,集 合 著 作 物 成 否 の 限 界 事 例 や,企 業 が 原 始 的 に権 利 者 とな るか ど うか が が 直 接 争 点 と な っ た事 例 ばか り を眺 め て きた 。 こ れ らの ほ とん どが, 商 品 の デ ザ イ ン に 関 す る侵 害 事 件 で あ っ た 。 一 方 で,立 法 者 が 予 定 した 辞 典 ・ 事 典 類 は もち ろ ん,新 聞,雑 誌,カ タ ロ グ,広 告 ポ ス ター な どが 集 合 著 作 物 に

な る こ と は,確 定 した判 例 で あ る 。 近 時 の破 殿 院判 決 だ け で も,1993年12月8 日判 決[広 告 ポ ス ター]40),1994年10月18日 判 決[美 術 展 パ ンフ レ ッ ト]41)が あ る 。

この よ うな,い わ ば 典 型 的 集合 著 作 物 の 主 導 者 は,第 三 者 に よ る侵 害 の 場 面 で は,個 々 の 寄 与 の著 作 者 か ら譲 渡(後 述 三1)を 受 け る こ と な く,全 体 に 関 す る 著 作 者 の権 利 を原 始 的 に享 有 す る。 で は,集 合 著作 物 へ の 個 々 の寄 与(全 体 とは 独 立 の 利 用 価 値 を有 す る)に つ い て は ど う だ ろ うか 。 主 導 者 と個 々 の 寄 与 の 著 作 者 との 関 係 は ど う な っ て い る だ ろ うか 。

破 殿 院1976年5月24日 判 決[百 科 事 典]42)は,集 合 著 作 物 に寄 与 し た者 の 報 酬 は 一 括 払 い に で きる と判 示 して い る。 註62で 紹 介 す る比 例 報 酬 原 則 の 適 用 は な い とい う こ とで あ り,百 科 事 典 の 再 版 に つ い て,個 々の 寄 与 の 著 作 者 へ の 追 加 報 酬 の 支 払 は 不 要 と さ れ た 。 しか し,新 聞 ・雑 誌(presse)の 分 野 で は,集 合 著 作 物 の主 導 者 は,一 括 報 酬 に よ っ て は 個 々 の寄 与 を最 初 に利 用 す る こ と し

か で きな い と い う判 例(三2で 詳 述)が 確 立 し て い る43)。SNJ(全 国 ジ ャー

40)Cass.1e「civ.,8dec.1993,ImageImage,1〜IDAjui11,1994,p.303.

41)Cass.1e「civ.,180ct.1994,1〜1Dレ4avr.1995,P.305.

42)Cass。1e「civ.,24mai1976,Bull.civ.Lno193;1〜IDAjanv.19πp.105.

43)Hadas‑LebeLR。,Miseenoeuvredudroitd'auteurdanslecadredustatutde salari6dedroitpriv6,L勿 ψ7rθ∬ θjanv.‑f6vr.2003,P.8.

(12)

ナ リス ト労 働 組 合)に よ る 白書 『イ ンタ ー ネ ッ ト上 の新 聞 ・雑 誌:ジ ャ ー ナ リ ス トの権 利 』(1998年)の 結 論 」 も,ジ ャ ー ナ リス トは 給 与 また は 稿 料 と引 き替 え に,個 々 の 寄 与 を最 初 に 出 版 す る権 利 の み を譲 渡 す る と して い る44)。

学 説 で は,L.121‑8条2項(三2参 照)を,百 科 事 典 な ど集 合 著 作 物 一 般 に適 用 す べ きで あ る と主 張 す る見 解 が,従 来 よ りみ られ る45)。

5.集 合 著 作 物 と著 作 者 人 格 権

最 後 に,著 作 者 人 格 権 につ い て 検 討 を加 え る。 集 合 著 作 物 との 関 係 で 問 題 に な る の は,個 々 の 寄 与 の 著 作 者 人格 権 と,集 合 著 作 物 全 体 に 関 す る著 作 者 人 格 権 で あ る。

集 合 著 作 物 の 個 々 の寄 与 に 関 して は,そ の 著 作 者 は 著 作 者 人 格 権 を享 有 し続 け る。 す な わ ち,そ の名 と資 格,そ して 著 作 物 の尊 重 を主 導 者 に 対 して 要 求 す る こ とが で き る(法 典L.121‑1条2項)。 名 の 尊 重 とは 著 作 者 の 意 に 添 う氏 名 表 示 の こ とで あ り,資 格 の 尊 重 とは,肩 書 き等 の表 示 に つ い て 同 様 の こ と をい う。そ して,著 作 物 の 尊 重 を要 求 す る権 利 は,日 本 の 同 一 性 保 持 権 に相 当 す る。

しか し,著 作 物 の 尊 重 を要 求 す る権 利 に つ い て は,破 殿 院1980年10月8日 決[法 律 事 典]46)が,個 々 の 寄 与 の 著 作 者 は,著 作 物 全 体 を 調 和 させ る た め の 変 更 を 受 け入 れ な け れ ば な ら な い と判 示 す る 。 学 説 も,集 合 著 作 物 の 性 質 に照 ら し,全 体 を調 和 させ よ う とす れ ば 個 々 の 部 分 の 変 更 は 不 可 避 で あ る と して 判 決 に賛 成 し て い る47)。

集 合 著 作 物 全 体 につ い て は,主 導 者 が 「著 作 者 の 諸 権 利 を付 与 さ れ る」。 こ の こ と を根 拠 に,主 導 者 は 著 作 者 で あ る と言 い 切 る学 説 は 見 つ か ら ない 。 実 際

http://www.creationsalariee.org/rapport‑hadas2002.pdf 44)http://www.snj.fr/internet/iO7.htm1

45)Desbois,op.cit.(note16),no704.ま たLucas,op.cit.(note13),no145も こ れ を 否

定 せ ず,同 旨 の 下 級 審 判 決 を 多 数 挙 げ て い る 。

46)Cass.1e「civ.80ct.1980,1〜IDAavr.1981,P.156;Bull.civ.1,no251;D.S.1981, IR85,0bs.Colombet;RTL)com.1981,p.87,0bs.Frangon.

47)Lucas,op.cit.(note13),no149;Colombet,C.,P70ゆ 薦1露 認7θetartistiqueet droitsvoisins,9e6鼠,Dalloz,1999,no183.

(13)

フ ラ ンス にお け る従 業員 ・公 務員 と著 作者 の権 利 293 に創 作 行 為 を お こ な う 自然 人 の み が 著 作 者 とな りう る とい う考 え が 強 い た め で あ る(詳 し くは 著 研56頁 〜57頁)。 下 級 審 の 裁 判 例 の 中 に は,主 導 者 は 著 作 者 で あ る と断 定 す る も の もあ る48)。 しか し,広 告 ポ ス タ ー に 関 す る 前 出1993年12 月8日 判 決(以 下,「 イ マ ー ジ ュ ・イ マ ー ジ ュ 判 決 」)49)は,第 一 審 原 告 の広 告 代 理 店 の こ とを 原 審 が 著 作 者 とい っ た の は 言 葉 が 不 適 当 で あ る と した 。た だ し, 広告代 理店が その制作 した広告 につい て,集 合著作物 の所有者 として著作 者人 格 権 を 行 使 す る こ と は 認 め られ る と判 示 した 。

日本 法 と大 き く違 うの は,集 合 著 作 物 の所 有 者 の著 作 者 人 格 権 行 使 を実 際 に 認 め た 裁 判 例 が,イ マ ー ジ ュ ・イ マ ー ジ ュ判 決 の 他 に,ミ ク ロ フ ォー ル事 件50) の 第 一 審(パ リ大 審 裁 判 所1980年2月20日 判 決51>)・ 控 訴 審(パ リ控 訴 院1981 年6月2日 判 決52))な ど,5本 の 指 に 入 る ほ ど しか な い こ とで あ る 。 そ れ ど こ ろ か,法 典L.131‑5条 は,集 合 著 作 物 の 財 産 的権 利 の み に 関 す る規 定 で あ る と 判 示 す る下 級 審 裁 判 例 まで あ る53)。

1で 前 述 した よ う に,集 合 著 作 物 制 度 は,そ の沿 革 に お い て著 作 者 人 格 権 と

48)Lucas,op.cit.(note13),no141は,こ れ を 「不 用 意 な」 断 定 だ とす る 。

49)広 告 代 理 店 の 従 業 員 ら が,広 告 主 の 大 手 レ コ ー ド会 社 か ら提 供 さ れ た 有 名 オ ペ ラ 歌 手 の 写 真 と,別 の 背 景 写 真 と,社 外 の 者 が 書 い た 広 告 コ ピ ー と を 素 材 に して 広 告 ポ ス ター を制 作 した と こ ろ,広 告 主 が これ を 契 約 の 範 囲 を超 え て,し か も改 変

して 利 用 した とい う事 案 で あ る 。

50)有 名 な ル ・モ ン ド社 が ミ ク ロ フ ォ ー ル 社 に 対 し,そ の 発 行 す る 新 聞 記 事 索 引(題 材 別 編,す な わ ち 記 事 の 書 誌 情 報 と 時 系 列 編 へ の 参 照 番 号 の み の もの と,記 事 要 約 も付 し た 時 系 列 編 の2種 類)に,同 社 の 集 合 著 作 物 で あ る ル ・モ ン ド紙 お よ び ル ・モ ン ド ・デ ィ プ ロ マ テ ィ ー ク 紙 の 記 事 へ の 参 照 情 報 を 含 め な い よ う 請 求 し た 。キ ー ワ ー ドの 選 び 方 や 要 約 の 作 り方 に つ い て 著 作 者 の 意 思 に 反 した と して(当 初 許 諾 を と ろ う と して い た が 決 裂 した とい う事 情 が あ る),著 作 物 尊 重 権 の 侵 害 も主 張 した 。原 審 は 著 作 物 尊 重 権 侵 害 を 認 め た が,破 殿 院1983年11月9日 判 決 は, ル ・モ ン ド社 の 著 作 物 尊 重 権 が 具 体 的 に どの よ う に 侵 害 さ れ た か を探 求 し て い な い と し て 破 殿 差 戻 を お こ な い,結 局 同 社 の 著 作 者 人 格 権 主 張 を 認 め な か っ た 。 Cass.le「civ、,9nov.1983,Microfor,RIDAjanv.1984,p,200.

51)TGIParis,20f6v.1980,Microfor,RIDAavr.1981,p.183.

52)Paris,2juin1981,Microfor,D.S.1982,IR44,0bs.Colombet;RIDAjanv.1982, p.182.

53)Paris,14mars1994,D.1994,IRp.11.し か し,Lucas,op。cit.(note13),nos141et 142は,L.113‑5条2項 の 文 言 か ら,主 導 者 は著 作 者 人 格 権 を行 使 し う る と解 す る 。

(14)

は無 関係 で あ っ た 。 そ して,フ ラ ンス 著 作 権 法 の 中 に定 着 した か の よ う に み え る現 在 も,こ れ を 手 が か り に,主 導 者 が 自 らの著 作 者 人 格 権 を主 張 す る こ とは, 極 度 に 少 ない 。 一 方 で,こ れ を活 用 して 主 導 者 が 著 作 財 産 権 侵 害 を 主 張 し,認 め られ た 裁 判 例 は無 数 に あ る 。3で み た 集 合 著 作 物 外 の 推 定 の 判 例 で も,著 作 者 人 格 権 に 基 づ く主 張 は み られ な い。

以 上 よ り,フ ラ ンス の集 合 著 作 物 制 度 は,今 まで の とこ ろ,著 作 者 人 格 権 と は ほ と ん ど無 縁 の と こ ろ で 運 用 され て い る と い っ て よい だ ろ う。 そ れ は,そ 出 生 の い わ れ どお り,主 導 者 の 経 済 的利 益 保 護 の 手段 と して機 能 して い るの で あ る。

二.ソ フ ト ウ ェ ア

法 典L.113‑9条1項 は,「 反 対 の 旨 の 身 分 規 程 の 定 め ま た は約 定 が あ る 場 合 を 除 き,1人 また は2人 以 上 の従 業 員 に よ り,そ の 職 務 の 執 行 の 結 果 ま た はそ の使 用 者 の指 示 に従 っ て創 作 さ れ た ソ フ トウ ェ ア お よび そ の設 計 資 料 に 関 す る 財 産 的 権 利 は,使 用 者 に帰 属 し,使 用 者 の み が そ れ を行 使 す る こ とが で き る」

と定 め て い る。 また,同 条3項 は,こ の 規 定 が 公 務 員 と国,公 共 団体,行 政 的 性 格 の 公 法 人 との 関 係 に も適 用 さ れ る こ とを 明 示 す る(た だ し,以 下 の記 述 で は公 務 員 へ の言 及 は 省 略 す る)。

こ の 規 定 は,1985年7月3日 法45条 と して 創 設 さ れ54),法 典 化 の 際 に1957 年 法 と ま とめ て 著 作 者 の 権 利 の 巻(1ivre)に 配 列 さ れ た 。1994年 に は,コ ピ ュ ー タ ・プ ロ グ ラム の 法 的 保 護 に 関 す る共 同 体 指 令 に 適 合 す る よ う改 正 され た 。 筆 者 は,紋 谷 還 暦621頁 以 降 に お い て,こ の 規 定 の 沿 革 と解 釈 を詳 細 に紹 介 した 。 そ こ で,本 稿 で は繰 り返 しを 避 け,必 要 最 低 限 の こ と だ け を書 い て い 54)1985年 法 は,ソ フ トウ ェ ア の 著 作 権 保 護 の 法 定 と著 作 隣…接 権 制 度 の 創 設 を そ の 眼 目 とす る が,視 聴 覚 製 作 契 約(法 典L.132‑23条 以 下)と 広 告 の た め の 嘱 託 契 約 (L.132‑31条 以 下)の 規 定 も 整 備 し た 。 し か し,こ れ らは ソ フ トウ ェ ア の 規 定 と異 な り,雇 用 契 約 関 係 に 基 づ く著 作 権 の 法 定 譲 渡 ま で は 定 め て い な い 。 製 作 契 約 や 嘱 託 契 約 の 際 に,個 別 に 譲 渡 が な さ れ る 旨 を定 め て い る の み で あ る 。

(15)

フラ ンス におけ る従業 員 ・公務 員 と著作 者 の権利 295 くこ と とす る。

まず,L.113‑9条1項 は,ソ フ トウ ェ ア に 対 して の み 適 用 され る。1994年 改 正 に よ り共 同 体 指 令1条1項 が 反 映 さ れ,設 計 資 料(documentation)が L.113‑9条 の 適 用 を受 け る 旨 が,明 文 で 定 め られ た 。 フ ラ ンス 語 の ソ フ トウ ェ ァ(logiciel)は,も と も と 日本 法2条1項10号 の2に 定 義 さ れ る コ ン ピュ ー タ ・ プ ロ グ ラ ム よ り広 い 範 囲 の もの を さす が55),改 正 法 は そ の 趣 旨 を よ り明確 に

して い る。 この 点,設 計 資 料 が15条2項 の 適 用 を受 け られ な い 日本 法 と異 な っ て い る。

L.113‑9条1項 は,従 業 員 が 職 務 上 「創 作 」 した ソ フ トウ ェ ア の 著 作 財 産 権 に つ い て,使 用 者 へ の 法 定 譲 渡 を認 め る規 定 で あ る 。 著 作 者 人 格 権 は,ソ フ ト ウ ェ ア を創 作 した 従 業 員 が,原 則 通 り享 有 す る。

しか し,法 典L.121‑7条 は 「ソ フ トウ ェ ア の 著 作 者 に と っ て よ り有 利 な 反 対 の約 定 が あ る場 合 を 除 き,著 作 者 は,/1号L.122‑6条2号 に 定 め る権 利(筆 者 註,財 産 権 と し て の翻 案 ・変 形 権)の 譲 受 人 に よる ソ フ トウ ェ ア の改 変 に反 対 す る こ とが で き な い 。 た だ し,改 変 が 著 作 者 の 名 誉 また は声 望 を害 す る 場 合 に は この 限 りで は な い。/2号 修 正 ま た は 撤 回 の権 利 を行 使 す る こ とが で き な い」 と定 め る 。 こ の よ う な要 件 の 下 で は,ソ フ トウ ェ ア の著 作 者 た る従 業 員 が 改 変 に 反 対 し う る 場 合 は,現 実 に は ほ と ん ど な い で あ ろ う と解 さ れ て い る56)。

従 業 員 に は名 と資 格 の尊 重 に 関 す る権 利 と公 表 権 が 残 るが,後 者 に つ い て は, 1994年 改 正 法 案 の 上 院へ の報 告 者 は,「 従 業 員 は,そ の職 務 を(明 示 的 ま た は 黙 示 的 に)承 認 す る と い う事 実 そ の もの に よっ て,公 表 権 を行 使 す る も の と考 え られ る」 と述 べ て い る57)。 そ うす る と,実 際 上 意 味 が あ る の は,著 作 者 の 名 と資 格 の 尊 重 に 関 す る権 利 だ け とい う こ とに な る。

55)LePetitRobert,CD‑ROMv.2.1に よ れ ば,「 プ ロ グ ラ ム お よ び 手 順 の 総 体 」。

56)Lucas,A.,Juris‑ClasseursProprir6t61itt6raireetartistiqueFasc.1195(nov.

1994),nO32.

57)Rapp.Jolibois:Doc.S6nat,no311,6avr.1994,p.20.

(16)

L。113‑9条1項 は,1996年1月1日 以 降 に制 作 され た ソ フ トウ ェ ア に適 用 さ れ る。 前 出 の 破 殿 院1996年7月3日 判 決 は,こ れ以 前 に 制 作 され た ソ フ トウ ェ ア に関 す る事 案 で あ る 。しか し,ソ フ トウ ェ ア を集 合 著 作 物 と認 め る裁 判 例 は, 現 在 で もみ られ る58)。 そ れ に もか か わ らず,L.113‑9条 が 立 法 さ れ た 理 由 の

1つ に,企 業 秘 密 とな り外 部 に公 表 され な い ソ フ トウ ェ ア は,集 合 著 作 物 と は な ら な い こ とが 挙 げ られ て い る59)。 同 条 は,そ の よ う な ソ フ トウ ェ ァ や1人 の従 業 員 が 制 作 した ソ フ トウ ェ ア を,法 定 譲 渡 の対 象 とす る趣 旨 と考 え られ る。

従 業 員 の 公 表 権 は労 働 契 約 締 結 の 際 に行 使 され た(公 表 ・未 公 表 を 自 ら決 定 し た)と 考 え る こ とで,未 公 表 の ソ フ トウ ェ ア につ い て も法 定 譲 渡 を及 ぼ す の で あ る 。 こ の よ う な解 決 は,ソ フ トウ ェ ア とい う,著 作 者 人 格 権 が そ の実 質 を欠

く著 作 物 に だ け,通 用 す る も の で あ る と い え る。

ソ フ トウ ェ ア の 著 作 権 譲 渡 の 報 酬 は,一 括 払 い と し う る(L.131‑4条2項5 号)。 従 業 員 の場 合,こ れ は給 与 に含 ま れ て い る と され る こ とが 多 い で あ ろ う。

三.私 法 上 の従 業 員 の著 作 権

1.原

上 記 一3の 検 討 か ら,破 殿 院 は 近 年,企 業 が そ の利 用 にか か る 「著 作 物 」 に つ い て,自 ら侵 害 訴 訟 を提 起 す る こ と を支 援 す る法 解 釈 を と っ て い る こ とが わ か っ た 。 しか し これ に は 限 界 が あ る 。i著作 物 の 制 作 に 関 わ っ た1人 な い し複 数 58)ち な み に,視 聴 覚 著 作 物(L.112‑2条6号 で 「映 画 の 著 作 物 そ の 他 の 音 を 伴 う,

また は 伴 わ な い 映 像 の 動 く連 続 か ら 成 る著 作 物 」 と定 義 さ れ る)は,集 合 著 作 物 で は な く創 作 者 ら の 共 同 著 作 物 で あ る と い う の が,確 定 した 判 例 で あ る 。 59)Lucas,op.cit.(note56),no6.な お,公 表 前 の,あ る い は 公 表 さ れ な い 集 合 著 作

物 が 誰 に帰 属 す るか と い う議 論 は,フ ラ ン ス で は な さ れ て い な い 。 ま た,こ れ か ら も な さ れ な い の で は な い か と 思 わ れ る 。 なぜ な ら,集 合 著 作 物 の 所 有 者 は,法 定 の 要 件 が 満 た さ れ た 際 に,権 利 を付 与 され る の み で あ る とい う考 え が 根 強 く存 在 す る か ら で あ る(‑5参 照)。 こ れ に従 え ば,未 公 表 の 段 階 で は,そ こ に あ る の は 集 合 著 作 物 で は な く,本 来 の 意 味 で の 著 作 者(ら)の(共 同)著 作 物 だ と考 え る の が 自然 で あ る 。 要 す る に,未 公 表 の 集 合 著 作 物 と い う も の の 存 在 に,誰 思 い 至 ら な い の で あ ろ う。

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フラ ンス にお ける従業 員 ・公務 員 と著作 者 の権利 297 人 の従 業 員 の側 か ら,自 分(た ち)こ そ が 創 作 行 為 を な した の で あ り,著 作 者 で あ る とい う主 張 が な され な い こ と で あ る60)。 破 殿 院 が 想 定 して い る の は, 従 業 員(ら)と の 関 係 が 円 満 で あ る企 業 が,第 三 者 に よ る侵 害 に さ ら され た場 合 の み な の で あ る。

で は,従 業 員 と企 業 とが 著 作 権 を め ぐっ て対 立 した ら ど う な る だ ろ うか 。 企 業 は た ち ま ち,フ ラ ン ス著 作 権 法 の厳 格 な規 定 に 直 面 す る こ と と な る 。 以 下, 新 聞 ・雑 誌 に記 事 を提 供 す る ジ ャ ー一ナ リス ト61)に重 点 を置 い て み て み よ う。

法 典L.111‑1条1項 は 「精 神 の 著 作 物 の 著 作 者 は,そ の著 作 物 に 関 して,自 己 が 創 作 した とい う事 実 の み に よ り,排 他 的 で す べ て の者 に対 抗 し う る無 形 の 所 有 権 を 享 有 す る」 と規 定 す る。 そ してL。131‑3条1項 に よれ ば,財 産 的 権 利 の 譲 渡62)は 「譲 渡 され る各 権 利 が 譲 渡 証 書 に お い て 明確 な 記 載 の対 象 と な り, か つ,譲 渡 さ れ る権 利 の利 用 の 範 囲 が,そ の広 が り と 目的,場 所,期 間 に 関 し 60)ア レ オ 判 決 や 前 出2000年2月22日 両 判 決 の 表 現 は,侵 害 訴 訟 の 中 で 被 告 側 の 証 人

と して 証 言 す る の で は 足 りず,従 業 員(ら)が 自 らの 名 に お い て(desonpart) 企 業 の 権 利 者 資 格 を 争 う こ と ま で を要 求 す る趣 旨 に 読 め る。

61)ジ ャー ナ リ ス トは,後 に 紹 介 す る 法 改 正 論 議 との 関 係 で,最 も重 要 で あ る 。 労 働 法 典L.761‑2条 は 「職 業 的 ジ ャ ー ナ リ ス ト」 を,定 期 刊 行 物 へ の 執 筆(写 真 や 絵 を伴 う こ と も あ る)を 定 期 的 に,主 た る収 入 源 と して お こ な う者 と 定 義 す る 。 報 酬 が 給 与 か 原 稿 料 か を 問 わ ず,こ の 者 が 新 聞 社 ・雑 誌 社 に 貢 献 す る た め の 有 償 の 契 約 は,労 働 契 約 と み な さ れ る。http://www.snj.fr/ccntj/10Lhtml

62)1957年 法 に は,著 作 権 の 譲 渡 と い う文 言 の み が 用 い ら れ て お り,利 用 許 諾 と い う 文 言 は な い 。Lucas,A.etH‑J.Lucas,Traite'delaproprie'te'litte'aireetartistique 2eed.,Litec,2001,no482(A.リ ュ カ 執 筆 部 分)と,ポ ワ テ ィエ 大 学 で ゴ ドラ か

ら学 ん だ こ と に よ る と,フ ラ ン ス で は 著 作 権 を め ぐる す べ て の 契 約 を 譲 渡 と呼 び, 著 作 者 の 相 手 方(出 版 社 な ど)に は,著 作 者 の 排 他 権 が,契 約 が 定 め る範 囲 で 移 転 され る 。 これ は 物 権 の 移 転 に他 な らず,こ れ に よ り相 手 方 の 法 的 地 位 は 安 定 す る 。 そ の 反 面,著 作 者 は 著 作 物 の 利 用 に よ る収 益 に 関 与 す る の が 原 則 で あ る(比 例 報 酬 原 則,L.131‑4条1項)。 日本 で い う 著 作 権 譲 渡 に 比 較 的 近 い の は,比 報 酬 原 則 の 例 外 が 法 定 さ れ て い る 限 られ た 場 合(同 条2項 な ど)で あ る。 こ の 場 合 は,著 作 物 が 以 後 ど の よ う に利 用 さ れ て も,著 作 者 は 当 初 の 報 酬 以 上 の も の を 請 求 す る こ と は で き な い 。

紋 谷 還 暦631〜632頁 註4に は,債 権 的 な 「利 用 権 の 設 定 」 も フ ラ ンス で は譲 渡 と呼 ば れ る と書 い た 。 一 部 の 学 説(ポ ワ テ ィエ 大 学 のH.‑J.リ ュ カ な ど)は こ の よ う な 解 釈 を と る 。 し か し,譲 渡 と 利 用 許 諾 を明 文 で 書 き分 け,報 酬 に つ い て は 私 的 自治 に 委 ね て い る 日本 法 と 区 別 す る た め に は,A.リ ュ カ や ゴ ド ラ の 見 解 を

ま ず 理 解 す べ きで あ ろ う。

(18)

て 定 め ら れ る と い う条 件 に従 う」。 す な わ ち,著 作 者 か ら,あ る利 用 範 囲 につ い て 著 作 財 産 権 の 譲 渡 を受 け た こ とを主 張 し よ う とす る者 は,そ の 利 用 範 囲 を 明確 に記 載 した 譲 渡 証 書 が存 在 す る こ と を 立 証 し な け れ ば な ら ない 。L.111‑1 条3項 が,「 精 神 の 著 作 物 の 著 作 者 に よ る 請 負 契 約 ま た は労 働 契 約 の 存 在 ま た は締 結 は,第1項 に よ っ て認 め られ る権 利 の 享 有 に な ん ら抵 触 し な い」 と定 め て い る た め,以 上 の こ と は著 作 者 が 従 業 員 で あ っ て も変 わ らな い 。

た だ し,多 くの 下 級 審 裁 判 例 が,従 業 員 が 職 務 の 範 囲 内 で創 作 す る著 作 物 の 財 産 的 権 利 は,労 働 契 約 の み に よ っ て,少 な く と も企 業 活 動 に 必 要 な範 囲 で, 使 用 者 に 譲 渡 さ れ た とみ な さ れ る と判 示 して い る63)。 こ の 見 解 は黙 示 の 譲 渡 の 理 論 と称 され,1957年 法 の 施 行 以 前 は一 般 に 認 め られ て い た64)。 当 事 者 間 の衡 平 や 外 国 法 に例 が あ る こ と を理 由 と して,こ の 理 論 を支 持 す る学 説 も少 な

くな い65)。

しか し,破 殿 院 は 一 貫 して こ れ を退 け,L.111‑1条3項 とL.131‑3条1項 文 理 に忠 実 な 判 決 を下 して い る 。 す な わ ち,原 則 通 り譲 渡 を証 明 す る書 面 を要 求 す る。 リー デ ィ ング ケ ー ス と して,パ ー トタ イ ム の 皮 革 職 人 が1人 で創 作 し たハ ン ドバ ッグ の モ デ ル に 関す る1975年4月11日 判 決66),近 時 の も の と して, 1985年 法 施 行 以 前 に1人 の 従 業 員 に よ っ て 制 作 さ れ た ソ フ トウ ェ ア に 関 す る 1992年12月16日 判 決67)が 挙 げ られ る。 破 殿 院 が 黙 示 の 譲 渡 の 理 論 を とれ な い

63)Lucas,op.cit.(note13),no30.

64)Ibi(1.,nO29.

65)Ibid.,nos31et32.

66)Cass.Crim.11avr.1975;RIDAjuill.1975,p.184;JCP,1976,II,no18348,0bs.

Plaisant.佐 藤 前 掲 論 文122〜124頁 は,権 利 の 法 人 へ の 帰 属 に 関 す る 考 え 方 が 意 匠 法 と 著 作 権 法 に お い て 異 な る こ と を 論 証 す る 文 脈 の 中 で,本 判 決 を 詳 細 に 紹 介 し て い る 。 従 業 員 が 使 用 者 を 著 作 権 侵 害 で 刑 事 訴 追 し た 本 判 決 は,「 フ ラ ン ス 著 作 権 法 の 特 異 性 」 を い う の に 格 好 の 事 案 で あ る 。 し か し,本 稿 一 で み た よ う に, 近 時 の 破 殿 院 は,使 用 者 が 従 業 員 の 著 作 物 を 平 穏 に 利 用 し て い る 場 合 に は,侵 害 者 と の 関 係 で は,使 用 者 へ の 原 始 的 権 利 帰 属 を 推 定 し て い る 。 こ の 点 で,意 匠 法

と の 距 離 は,部 分 的 に で は あ る が 縮 ま っ た と い え る の で は な い か 。 67)Cass.1e「civ.C,16d6c.1992,Nortene,Bull.civ.1,no315;RIDAavr.1993,

p.193,noteSirinelli;ノCPE1993,1,246,no5,0bs.VivantetLucas.

参照

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