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「商 品 貿 易 と 経 済 発 展 」

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(1)

一69一

「商 品 貿 易 と 経 済 発 展 」

そ の 問 題 点 に つ い て 一

ρ

木 曾 栄 作

問 題 の 提 起 事 実 的 背 景

ω 短 期的価格 激変

貨 幣所得 上の激変

〔3)実 質所得上 の変動

原 料品 生産 国の価格変 動 とその影響

輸出所 得の変 動 と開発資金 調達

交易条件 の長 期的変 動

C7}原 料品生産 国 と製 造 品生 産国 との利 害関係 の混 合性 {8}将 来の展 望

主要 な問題点

(1)商 品 の不安定 と経済的 威長 との関係

国家 間の経済的依 存関係 {3)価 格変 動の態様

安定の 対象

(5)商 品価格 の安定 と一般 的 安定 との 関係

商 品的部 面 と貨幣的部 面 (7)救 済行 動の ための道標

本 稿 は 国 際 連 合 経 済 社 会 理 事 会 に よ つ て 任 命 き れ た 下 記5名 よ り な る 一 委 員 会 が 提 出 し た 次 の 報 告 書 の 部 分 的 紹 介 で あ る 。

GommodityTradeandEconornicDevelopment,Uni七edNations, Departmen七 〇fEconomieAffairs,NewYork,1953,102pp.

委 員 は 次 の5名 で あ る 。

(2)

一7・‑70‑一 才6巻 才2号

J.Goudriaan(Chairman),PtofessorofBusinessEeonomicsat.

PretoriaUniversity;

CharlesF.Carter,ProfessorofApipliedEconomicsatThe Queen,sUn、iversi七y,BeIfast;

Sumi七roDjojohadikusumo,ProfessorofEconomics,Djakarta.

SGhoolofEconomics,Universi七yof工ndonesia;

Klaus .Knorr,AssoeiateProfessorofPublicandInternational Affairs,WoodrowWilsonSchool,PrincetonUniversiもy;

FranciscoGarciaOlano,Diree七 〇rdelCen七rodeInves七i.

gacionesdelaEscuelaSuperiordeEconomia,BuenosAires.

本 報 告 書 の 内 容 は 次 の 如 く3部9章 よ り 成 つ て い る 。 PartI,TheProblθms

Chapter1.Tormsofreference.

Chap七er2.Fac七ualbackground・

Chapter3.Mainproblems.

Par七]に1.The1>[easures Chapter4.

Chap七er5.

Chapter6.

Chap七er7.

Chapter8.

Reviewofpas七proposals.

Interna七ionalcommodi七ystabiliza七ionschemes..

Commodityreservecurrencyschemes.

Compensatoryschemes.

Nationalmeasures.

Pa』 じtI】=£ ●COI瓢clusions

Chapter9・ 班ainconGlusionsandroco耳 】menda七ions・

尚 、 付 録 と し て 次 の も の が 添 え ら れ て い る 。 A・Impor七antprimaryGommodities:productiona尊dtrade,1950,

(3)

商 品 貿 易 と 経 済 発 展(木 曽)・‑71‑

】B・Mlaithematicalno七eto .paragraph187,byJ.Goudriaan・

C.Concurringno七eoncommodi七yreservecnrrencyschemes, byJ.Goudriaan.

D.AMutualInsuranceScheme,byF.G.Olano.

本 稿 に於 て は紙 幅 の都 合 上 、 を得 たい と思 う。.

第1部 の紹 介 に止 め る こと とし、 他 は更 に機 会

1952年12月21日 の 国 際 連 合 総 ・会に 於 て 採 択 き れ た 次 の よ う な 議 決 の ・

Paragaph1の(a)及 び(b)、 拉 び にParagraphs2及 び3に 含 ま れ る 勧 告

内 容 に 一 致 す る 方 策 を1953年 申 に 作 製 す る よ う 委 員 会 に 付 託 さ れ た の で あ る 。 そ の 該 当 決 議 は 次 の よ う な も の で あ つ た 。

̀̀TheGoneralASsembly... ...

1.Recommends七 〇 皿emberSta七es七ha七:

(a)Whenevergovernmentsadop七measuresaffec七ing七he

pricesofprimarycommodi七iesen七 〇ringinternationa1七rade,they shoulddulyconsidertheeffec七 〇fsuchmeasureson七hetermsof 七radqofcountriesintheprocessofdevelopment,inordert(》

ensure七ha七 七hepricesofprimaryGommoditiesarekep七inan adequa七e,jus七andequitablerela七ionto七hepricesofcapi七algoods・

ando七hermanufacturedar七iclessoas七 〇permitthemore' sa七isfac七 〇ryforma七ionofdomes七icsavingsin七hecountriesin七he

processofdovelopmen七and七 〇facilitate七he・estal)lishmentoffair

,

wagele▽elsfor七heworkingpopula七ionsofthesecountrieswith aviewtoreducingtheexis七ingdisparitylbetween七heirstandards ofIivingand七hosein七hehighlyindus七rializedcountries;

(b)Withoutprejudieetotherecommendationeontainedin subparagraph(a)above,七heirgovernmentssh㎝ldgiveserious

(4)

一72‑一 才6巻 才2号

considera七ion七 〇allotheraspec七sof七heproblemofundue

fluc七ua七ionsinthe七ermsof七rade・ … ・・

2.Recommends七ha七governmen七sco.operateines七abIishing muユ 七ila七eralaswe11asbi1葛teralin.七erna七ionalagreemen七sor

arrangemen七srelating七 〇individualprimarycommmodi七iesas

wellastogroupsofpri皿arycommodi七iesandmanufac七ured .goods,forthepurposeof:

(a)Ensuring七hes七abili七yof七hepricesof七hesaid commodi七iesinkeepingwi七hanadequate,jus七andequi七able rela七ionship1)e七ween七hesepricesand七hoseofρapi七algoodsand eO七hermanufac七uredarticles;

(b)Safeguarding七hecon七inui七yoftheeconomicandsocial

progressofa皿coun七ries,七hoseI》roducingaswellas七hose COnSUmingrawma七erialS;

3.Recommends七hat七hecountriesin.七heprocessof

developmen七shouldadoptandgiveeffec七 七〇na七ionalprogrames of蒸ntegra七edeconomicdevelopmen七conducive七 〇thera七iona1

・utiliza七ionof七heproceedsof七heirprimaryac七ivities

,七he absorp七ionof七heirsurplusac七ivepopula七ionand七he

irqprovemen七 〇f七heirs七alldardsofliving・ 一 ・,' こ れ を 要 約 す れ ば

1.(の 加 盟 国 政 府 は 国 際 貿 易 商 品 と し て の 原 料 品 価 格 政 策 に 当 つ て は 発 展 段 階 に あ る 諸 国 の 交 易 条 件 に 及 ぼ す 影 響 を 充 分 考 慮 す べ き こ と 。 そ の 理 由 は 後 進 国 の 資 本 蓄 積 増 進 と 高 度 工 業 化 国 と 後 進 国 と の 生 活 水 準 の 開 き を 縮 め る た め の 後 進 国 の 労 働 者 の 公 正 な 賃 金 水 準 確 立 を 促 進 さ せ る よ う に 生 産 財 及 び 他 の 製 造 品 の 価 格 に 対 し てadequate,Justandequi七ableな 原 料 品 価 格 を 維 持 さ せ

るこ と。

(b)加 盟 国 政府 は 交易 条件 の過 度 の変化 に 関 す る問題 の其 他 あ らゆ る部 面 に深 い考慮 を払 うべ きこと。

(5)

商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑73‑

i

:2.加 盟 国 政府 は次 の 目的 のtcめ に 、 原 料 品 及 び製 造 品 の集 群 乃至 は個 別 的 原 料 品 に 関す る双務及 び 多 角的協 定 、取極 め設 定 に協 力 すべ き こ と。

(a)上 記 商 品 の価 格 と生 産財 及 び他 の 製 造品 の価 格 との 間 にadequate, justandequitableな 関係 を保 持 す る上 に於 て、 原料 品 、 製 造 品価 格 の 安定 を 確 保 す るた め

(bう 原 料 品 消 費 国で あ ると生 産 国 で あ ると を問 わ ず総 て の国 の経 済 的 、 社 会 的 進 歩 の継 続 を保護 す るた め

3.発 展 段階 に ある国 々は、 そ の主 要 活 動 の結 果 の合理 的 利 用 、 余剰 活 動 人

口 の吸収 及 び生活 水 準 改善 に資 す る 統 一 経 済発 展 の国 家的 計 画 を採 択 して 実 施 す べ き こと。

委 員 会 に 於 て と り 上 げ ら れ た 本 勧 告 中 の 術 語 概 念 の 重 要 な も の は 、 唱"s七ability"及 び"fair

,""jus七"and"equi七able"pricesと い う二 つ で あ つ た が 、 こ のS七abili七y(安 定 、 と い う概 念 は 、 激 し い 短 期 的 変 動 」(violen七

・shor七 一runfluctuations)を 受 け な い と い う 意 味 に 限 定 し 、 ま たfair,jus七 randequi七ablepricesandI)ricerela七ionships壱 ま̀̀reasona,blystable,,

pricesandpricerelationshipsの 意 味 と 解 し 、 更 に こ れ を 次 の よ う に 説 明

し て い る の で あ る 。

c;… …apricecanbeGalled̀̀fair,,

,̀̀jus七,,and̀̀equi七al)le,,as wellas̀̀reasonable',asIongasi七doesno七performex七reme

upwardanddownwardgyra七iollswhichareeausedbyabnormal and七ransien七eondi七ionsorservenousefulecono導icP・urpose.

Barringsuchextremes,variationsaroundthelong‑runcollrseof

prices,requiredforeffec七ingthemos七effiGien七alloea七ionof productiveresourcesinachangingworld,arenei七her,"unfair,, nor̀̀unreasonable,,.

而 し て 、 上 記 の 意 味 に 於 け る 長 期 的 価 格 変 動 は 、 独 占 的 乃 至 非 独 占 的 手 段 、 政 府 の 交 渉 乃 至 は 抑 圧 に よ つ て ゆ が め ら れ な い 限 り は 長 期 的 市 場 価 格 に よ つ て

「適 正 に 」(reasonably)大 体 正 し く 求 め ら れ る と の 見 解 を と つ て い る 。

(6)

一74一 商 学 討 究 才6巻 才2号

か くして、 以 上 の術 語 定 義 の上 に立 つ て、 委 員 会 は与 え られ た問 題 へ の接 近 を次 の如 く企 て よ うと してい る。

(a)経 済後 進 国 の経 済 発 展 に対 す る能 力 は そ の受 取 る原 料 品価 格 拉 びに これ ら価 格 と外 国で購 入 す る 製 造 品 及 び役 務 の価 格 との関係 の影 響 を受 け る も ので あ る。

(b)こ れ らの価 格及 び価 格 関係 の よ り大 な る安定 は これ ら後 進 国 の健 実 な経 済 発 展 を促 進 す る。 而 して、就 申 、 これ らの国 の輸 出品1単 位 に対 す る実 質 的輸 入能 力 の推 算 能 力 を改善 す る。

(C)こ れ らの国 の 「適 正 な 」輸 出価 格 と交 易条 件 は結 局 に於 て は、 生 産.

資 源 を国 内 に於 て使 用 す るよ りは よ り高 い収 益 を 輸 出部 門 に於 て収 め きせ る こ とは明 らか に確 か で あ る。

(d)後 進 国 の対 外 交渉 力 は一 般 に富裕 な工 業 国 に比 して 劣 るとい うこと は一 応 尤 もな仮 設 と して も、 この相 違 が 何 等 か重 要 性 を持 つ のは価 格 が 政府 勝 の 交渉 に よつ て影 響 を受 け る範 囲 内 に止 る もので あ る。

最 後 に、委 員 会 は次 の点 に特 に注 意 を喚 起 してい る。 即 ち、現 在 又 は将 来 に 於 て 、"fair"or"rea80nable"pricesの 定 義 に関 して如 何 な る協 定 が 行 われ て も、 そ の 内容 を決定 す る もの は当 該 国政府 で あ るか ら、 政府 は そ の価 格 制 度 を用 い る主 目的 を資 源 の よ りよい配 分奨 励 の ためか 或 は所得 のよ りよい配 分 達 成 の ため か 、 乃至 は両 者 を同時 に狙 うので あ るか を決 定 しな けれ ば な らな い。

委 員 会 として は、 一 般 的 には価 格 はそ の生 産資 源 配分 の職能 を果 す ため に 自由, に すべ きで あ り、"unfairness"(不 公正)は 直 接 的所 得 移 動 によつ て償 うこと が 好 ま しい と してい る。

事 実 的 背 景

本 委員 会 め任 命 とそ の取 扱 うべ き 問 題 の重要 性 の背 景 とな る諸 事 実 は次 の よ うな もので あ る。

(a)国 際貿 易 の対 象 とな る多数 の原 料 品 の 価 格 は 多年 に亘 り、 また依 然 と して激 しい短 期的 変 動 の支 配 を受 けて きてい る。

(b)原 料 品 生 産 よ りの貨 幣所 得 は、個 々 の 生 産 者 の所 得 として 考 えて も乃

(7)

商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑75一

至 は生 産 国 の外 国為 替所 得 と して 考 えて も、 全 体的 に は は るか に変 動 し易 い。

cc)国 際 貿易 上 の製 造品(生 産 財 を含 み)の 佃 格 も ま た個 別 的 に はか な り 変 動 性 を示 して はい るが 、 一集 群 と して考 え る と きに は原料 品 に比 して よ り安 定 性 を有 す る。然 し製 造 品 の価 格 変 動 の大 きさ、 方 向及 び時 間 的調 節 は原 料 晶 生 産 者 の実 質 所得 上 及 び輸 出所 得 を以 て製 造品 を購 入 す る 原料 生 産 物 の実 質 能 力上 に於 てか な りの変 動 を依 然 と して残 して い る。

(d)前 項 か らして一 応 考 え られ る ことは、 製 造 品 生 産 国 に はそ の輸 出 所 得 を以 て原 料 品 を購 入 す る実 質 能力 上 に於 てか な りの 短 期 的変 動 が あつ た とい う ことで あ る。 然 し、 この変 動 は原 料 品 生産 国 の場 合 は特 に深 刻 とな る傾 向が あ る、 そ の理 由 は或 国 々は一種 乃至 数 種 の生 産 品 へ 高度 に特 殊 化 してい る こと、

或 国 々ば 外国 貿 易 の国 民所 得 に対 す る依 存 度が 高 い こと、 更 に原 料品 生 産 国 内 に於 け る イン フ レ(或 はデ フ レ)的 圧 力 は、 外 国貿 易か らもた らされ る圧 力 と 同 時的 に発生 す る傾 向が あ るが 、 他方 、工 業 国 に於 て はそ の時 を異 にす るか ら で あ る。

(e)後 進 国 の資 本 増 大 は輸 出所 得 に著 し く依 存 す る もの で あ り、 この所 得 の か な りの部 分 は不 可欠 な消 費 財 購 入 の資 金 に充 て られ なけ れ ば な らな い。 従 つ て貿 易 の変 動 は生 産 財 の輸入 資 金 に 充 て るた めの 余剰部 分 に きび しい影響 を

もた らす こと とな る。

(f)短 期 的変 動 に加 えるに 、 時 と して は製 造 品価 格 の原 料 品価 格 に対 す る 関係 に於 てか な り永続 的 な変動 が見 られ る ことが あ る。 尤 も この永続 的変 動 の 推 定 は困 難 な ことで あ り、 更 に研 究 を侯 た な け れば そ の結 果 は把 え難 い。 将 来 如 何 な る ことが 発 生 す るか につ い て は 断定 的 な 証 拠 は存 しな い よ うに 思 わ れ

る。

(9)我 々は通 常 の慣行 に従 つ て 「原 料 品 生 産 国 」 とか 「製 造 品 生 産 国 」 と か い う表 現 を用 い ては い るが 、 あ らゆ る国 々は原料 品 と製造 品 とを生 産 して い る し、 多 くの国 々は 両者 を相 当 に輸 出 してい るので あ り、 ま た両者 の輸 入 を相 当行 つ て い るとい う事 実 は注 目に値 す る。 従 つて 国 家的 利益 とい うことは先 進 製 造品 生 産 国 と後 進 原 料品 生 産 国 とい う単 純 な分 類 に よつ て は 説 明 し得 な い も め で あ る。 例 えば合 衆 国 の如 き国 々 に あつて は、或 種 の原料 品 につ いて は高 い

(8)

一76一 商 学 討 究 才6巻 才2号

価 格 を 、 ま た 或 種 の もの に つ い て は 低 い価 格 を 望 ん で い る。 更 に 英 国 に つ い て 言 え ば 、 原 料 品 の輸 出 は 極 め て 少 い た め に 、 原 料 品 価 格 が 低 い こ と に 直 接 的 関 心 を有 し、 そ の 主 要 輸 出 市 場 及 び ス タ ー リン グ地 域 に つ な が る市 場 を 形 成 す る 国 々 の 安 定 し た 高 い 所 得 に 関 心 を 有 す る の は 当 然 で あ る 。

以 上 の 背 景 的 事 実 を 例 証 す る た め に 、 困 難 な統 計 上 の 問 題 は あ る が 、 これ を 統 計 的 に 観 察 し て み よ う。

(1)短 期 的 債 格 激 墾

国 際 連 合 の研 究 に な る"lns七abilityinExpor七MarketsofUnder‑

DevelopedCountries,1952"に 於 て は 合 衆 国 の 原 料 品 輸 入 価 格 の 変 動 の 分 析 を 試 み て い る。 この 分 析 は1922年 か ら1949年 の28力 年 に 亘 つ て 、 比 較 可 能 な 範 囲 に於 て の 多 数 の輸 入 原 料 品 とそ の生 産 国 に つ い て そ の輸 入 単 位 価 格 の 毎 年 の 平 均 比 較 を 行 つ た もの で あ るが 、 そ の結 果 に よ れ ば218品 目 の平 均 中 に於 て 次

の よ うな 事 実 が 示 され て い る。

10%以 下 の 変 動 品18品

10〜19.9%〃 〃143品

20〜29.9%〃 ・50品

30%以 〃7品

これ らの 数 字 か ら観 察 す る と、 平 均 的 に は 大 多 数 の 品 目 は年 間10%乃 至20%

の価 格 の 上 下 変 動 が 一 応 期 待 され る こ と と な ろ う。 然 る に 合 衆 国 の こ の期 間 に 於 け 戸 消 費 者 価 格 指 数 の 変 動 は 僅 か に4%に 過 ぎ な か つ た の で あ る。 更 に 各 年 度 内 に つ い て 見 る と、 原 料 品 輸 入 価 格 の変 動 は 一 層 激 しい こ とが 明 瞭 に うか が わ れ る。 い ま11品 目 を 選 び 出 して これ を 見 る と1901年 か ら1950年 迄 の 半 世 紀 間 に 於 て は 年 平 均27%の 変 動 が あ り、 他 の15品 目 に つ い て1920年 か ら1939年 に 亘 る もの を 見 れ ば 年 平 均32%の 変 動 が 示 さ れ て い る。 終 りに 、 特 定 商 品 の 日 々 の 価 格 変 動 を一 瞥 す る と 、 更 に 激 しい 変 動 が 見 られ る。 か く して 、 ロ ン ドン 市 場 の ゴ ム価 格 は1950年 に 於 て4倍 に な り、 羊 毛 価 格 は3倍 と な り1年 半 後 に 元 の 価 格 に復 し た の で あ つ た 。

(2)貨 幣 所 得 上 の 激 墾

前 記 の 研 究 は更 に 合 衆 国 と の 貿 易 の 貨 幣 所 得 の 変 動 分 析 を も行 っ て い るが 、

(9)

商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑77一

この変 動 は大 体に於 て価 格変 動 に比 して 大 で あ る ことが 見 られ 、40%が 典 型 的 な年次 変動 と して 示 されて い る。 これ は輸 出量 の増大 が価 格変 動 に対 抗 し得 な か つ た ことを物語 る もので あ る。 この事 実か らして 、国 際 的 に重 要性 を持 つ通 貨 の所 得 変 動 に よ る影 響 の激 しさ と打 撃 が 容易 に観取 出来 るで あろ う。18種 の 主 要 輸 出品 の1901年 か ら1950年 に亘 る輸 出所 得 の年平 均 の変 動 は23%と 推 算 さ れて い る。価 格 変動 につ い て もまた、 朝 鮮事 変及 び其 後 に あつ て は最 も著 しい 例 が 見 られ るので あ るが 、 この事 変 前 に於て す らか な りの変動 が 現 われて いた ので あ る。

次 に 示 す もの は1948年 を100と す る輸 出価 格指 数 の比 較 で あつ て 上 記 の事 実 を よ く物 語 つて い る。

オ ース トラ リヤ産 アル ゼ ンチ ン産 年 度

1948 1949 1950 1951

100 156 211 426

(3)費 質所 得 上 の墾 動

100 61 55 73

マ レ ー 産

100 83

453

世界 の 多量 の原料 品 は国際貿 易 上 に於 て 他 の原 料 品 と交換 せ られて い るが 、 原 料品 が製造 品 と交換せ られ る限 りに於 て は、 貨 幣 所得 の激 しい変 動 は交換 的 に得 られ る製 造 品 の量 に も反 映す る傾 向 を持 つ もので あ る。 そ れ は製 造品 の価 格 は全 体 的 に見 て原 料 品 よ りは るか に 安定 して い る ことに基 く。 か くして 両大 戦 間 に於 け る合 衆 国 の完成 品 の年平 均単位 価 格 の変動 は6.4%に 過 ぎず 、これ は 主 要 原 料品 を一括 して の平 均変 動 の半 ば に達 しなか つ た。 吏 に、 この 両品 目の 価 格 変動 は正 確 に 同時 的 に は発生 して い ない。

然 し、 製造 品 を一 集 群 と考 え ると きに は誤 つ た 印象 を受 け る惧 れが な し と し ない。 経 済 的 に発展 した国 々に あつ て は、 消 費財(特 に銘 柄 品)の 製 造業 者 は 価 格 安定 政 策 を と る ことが屡 々見 られ るが 、 半 製 品 は よ り少 い程 度 にせ よそ の 原 料 品 の価 格 変 動 に追従 す る傾 向が 見 られ る♂ 生 産 財 は一 特 に重工 業 用品 は そ の設 備 が 延期 され る こと もあ るが 一 頗 る大 幅 な需 要 変 動 に支 配 され 、 か くし

(10)

一 マ8一 商 学 討 究 才6巻 才2号

て 深 刻 な価 格 の不 安定 を示 す こ と もあろ う。 近 年 に於 て は注 文 残 高が これ らの 価 格 変動 を一応 平 均 化 させて い た ので あ るが 、 この価 格 不 安定 が 将来 再現 しな

い と考 え られ る根拠 は 見 出 され ない 。

価 格 変 動 の この 不 同性 は国 際 連 合 の研 究"RelativePricesofPrimary

ProductsandManufacturesinIn七ernationalTrade,1953"の 中 に例示 されて い る。 これ に よれ ば、合 衆 国 の輸 出品 に於 て は、 銅製 品 の単 位 価 格 は19 48年 と1949年 第4●4半 期 との間 に17%低 落 し、1952年 初 め迄 に は殆 ど2倍 とな

つ た。衣 服 は1948年 と1949年 との間 に17%低 落 し、 客 車 は15%高 騰 を示 した 。 更 に イ ン ドの輸 入品 に つ て見 る と、苛性 ソ ーダ の単位 価 格 は1948‑49年 と1949

‑‑ne年 度 に於 て40%低 落 し、 ブ リキ鍼 は1951‑52年 度 には2年 前 に比 して70%

の 高騰 を示 した ので あつ て、 特 定 国 につい て は 製造 品 は この よ うに激 しい価 格 変 動 の例 を 多 く見 出 し得 るので あ る。

か くして 、実質 価 格 の変 動 は慎 重 な分 析 を必 要 とす るこ と とな る。 原 料 品生 産 者 所 得 の購買 力 を考 え るに当つ て は、 生 活 費 は イン フ レー シ ヨン の激 しい時 は別 と して 、 輸 入価 格 の変 動 に は部 分 的 か或 は鈍 い反 応 を示 す に 過 ぎない とい うことを銘 記 すべ きで あ る。 貨 幣所 得 上 の変 動 は更 に実 質所 得 の変 動 を もた ら し、 これ は場 合 に よ り一 層 激 しい こ とす らあろ う。一 国 の輸 入品 に対 す る外国 為 替所 得 につ いて 考 え る と きは、 輸 入 製 造品 は そ の型及 び生 産地 が屡 々種 々異 る とい う事 実が そ れ らの価 格 の変 動 を或 程 度平 均 化す るとい うこと、 また そ の 国 の実 質 購 買 力 はか くして そ の貨幣 所 得 に応 じて主 と して 変動 す るとい うこと を知 らな けれ ば な らない。 然 し、 開 発計 画 資金 として 用 い る外 国為 替所得 の 余 剰 額 に つ いて は二 重 の 変 動が 注 意 され るべ きで あろ う。 即 ち、 この余剰 額 は輸 出所 得 と不 可欠消 費 財 の輸 入 額 と の差 額 で あ り、 これ らの何 れ よ り も普通 変 動 性 の 多い もので あ る。 ま た この 余剰 額 は少数 の主 要 な開発 計 画 に集 中 的に使 用 され るで あろ う、例 えば 交通 運 輸 設備 、電 気 機械 設 備 の如 き然 りで 、 しか もこ れ らの価 格 はそ の国 の輸 出品 価 格 とは異 る 実 質 的 な変 動 を受 け る ことが あ り得

る。 この点 に こそ後 進 国 が原 料 品 のみな らず主 要 製 造品 の 世界価 格 安定 とい う 問 題 に 関心 を よせ る根 拠 が 存 す る とい うべ きで あろ う。

(4)原 料 晶生 産 國 の便 格 攣 動 とその影 響

(11)

商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)\‑79‑

一 国 が 多 くの 異 る種 類 の 商 品 の 価 格 変 動 の 平 均 化 を は か り得 な い 場 合 に あつ て は 、 特 定 の 輸 出 品 か らの所 得 の 変 動 は よ り深 刻 とな る。 周 知 の如 く、 原 料 品 生 産 国 の 多数 は 一 種 乃 至 は 数 種 の商 品 の 輸 出 に 特 殊 化 して い る悩 み を 味 わ され て い る。 例 え ば キ ユ ーバ の 砂 糖 、 マ レー の 錫 と ゴ ム 、 ヴ エ ネ ズ エ ラの 石 油 、北 n一 デ シ ヤ の銅 の 如 き然 りで あ る。 国 際 通 貨 基 金 が 刊 行 し た"lnterna七ional FinancialS七fttigtics"中 に 報 告 され て い る56力 国 の 貿 易 に つ い て 見 る と、19 52年 に 於 て は7力 国 は 同 年 の輸 出 総 額 中 、 わ ず か2品 目で90%以 上 を 占 め て お

り、32力 国 が2品 目で50%以 上 に 達 して い る実 状 で あつ た 。

こ の 高 度 な 特 殊 化 は 屡 々 経 済 規 模 が 小 さい こ と に よ る もの で あ り、 外 国 貿 易 へ の 依 存 度 が 高 くな る こ と とな るた め 、 輸 出所 得 の 変 動 は そ の 国 内 経 済 に 打 撃 的 影 響 す ら与 え る。 い ま 最 近 年 の 統 計 に よつ て 、 外 国 貿 易(輸 出 額+輸 入 額) の 利 用 資 源(国 内 総 生 産 額+輸 入 額'流 通 と の 比 率 を示 す と次 の 如 くで あ る 。

南 ロ ー デ シ ヤ

ベ ル ギ ー 領 マ ン ゴ ー セ イ ロ ン 島

ビ ル マ

ド ミ ニ カ 共 和 国 ペ ノレ ー

エ ジ プ

96 % % % % % % 68 訂 55 お 36 謎 33

統 計 の入手 不 能 の 国 々 の中 に は 更 に高 い比 率 を示 す もの も見 出 きれ よ うが 、 これ に対 して合衆 国 は7%、 英 国 は33%、 ベ ル ギ ーは41%を 示 してい る。

他方 、 原料 品 生 産 国が価 格不 安定 に よつ て受 け る深刻 な諸 困難 に は重要 な技 術 的理 由が存 在 す る。 即 ち、経 済 的 に発 展 した製 造 国 は不 況 時 に於 て は よ り有 利 な 国際 収支 状 態 とな り、 好況 時 に は よ り不 利 とな る傾 向が あ るが 、 原 料 品生

産 国 は これ と反対 の 型 を とるので あ る。 か くして製 造 国 に とつ て は、 対 内外 の 問 題 は 交 互 に発生 す るが 、 原 料品 生 産 国 に於 て は両 者 は同 時 に発生 す る こと と な る。 この事 実 は商品 貿 易額 の変化 を表 わす 次 の数 字 に よつ て 如 実 に物 語 られ て い る。

(12)

一80一 才6巻 才2号

(単 位)100万 米 ド ル

発 展 製 造 後 進 原 料 品

業 国(a)生 産 国(b)

1929(好 況)‑1932(不 況)+2,232‑164 1937‑1938十1,117‑685

玉951(1949年 と 比 較)十2,702‑3,126 1951(1952年 と 比 較)十1,911‑3,224

(註)(a)カ ナ ダ 、 合 衆 国 及 び 西 ヨ ー ロ ツ パ 。

(b)ラ テン ・アメ リカ(ア ルゼ ンチンを除 く)、

アフリカ及び アジア(日 本を除 く)。

(5)輸 出所得 攣 動 と開狡 資 金 調蓬

時 として 、先 進 国 の間 に は彼 等 が 資 本供 与 の立 場 に あ るた め、 後 進地 域 の新 開 発 資金 調 達 の主 要 源 泉 と して彼 等 が 自 ら任 ず るか の印象 を抱 く ことが 見受 け られ る。 これ は過 去 に於 て はそ うで あつ たか もしれ な い し、 まだ 将 来 と て も益 々そ うで あ る こ とが 望 ま しい。 然 し戦後 につ い て は これ は妥 当 しな い。 い ま、

"rnstabili七yinExportMarketsofUnder ‑DevelopedCountries"中 に示 す所 に よれば 、 戦 後 に あつ て は長 期 資本 移 動 は国 内へ 流 入 の場 合 に は、 輸 出総 所 得 に比 して常 に少 く、 大 抵 は負債 役 務 に対 す る トランス フアー に よつ て 相殺 され て い るので あ る。 後 進 国 か ら国 内保 有 資金 が よ り安全 且 つ有 利 な地 帯 を求 めて移 動 して い る証 跡が あ り、 これ を防止 す る方 策 も充 分 な効 果 を発揮 す るに 至 つて い ない。

資本 移 動 はか くの如 く少 くと も開 発 資金 の調 達 に とつ て は 一 つ の不確 定 な源 泉 とみ なす べ き もので あ る。 輸 出所 得 の相 当部 分 は不 可欠 消 費財 の輸 入 資金 に 充 て られ る もので あ るか ら、 輸 出所 得 の リザ ーヴ として と られ る 部 分 は 所 謂

「不 可欠 」 の意 味 に よつ て変 動 す る。 即 ち 、 これ は消 費需 要 が 抑制 され る程 度 に よつ て決 定 され る もので あ るが 、 後 進 国 に於 て も好況 時 に は非 不 可欠 品及 び 奢 修 品 の輸 入 を防 止す る こと は困 難 で あ る。 二 つ の 重要 な 後進 国 の貿 易 を調 査 した所 に よ れば 、1948年(朝 鮮 事 変前 の代表 的 な年 次 と して選 ん だ)に は その 申 の一 国 の輸 入 総 額 の55%、 他 の一一国 の輸 入総 額 の70%は 明 らか に不 可欠 な消 費財 で あつ た。10%及 び20%は 非不 可欠 品 又 は分 類不 分 明の もので 、 他 方 、生

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商 品 貿 易 と 経 済 発 展(木 曽)‑81一 産 財 は 各 々35%と12%を 占 め て い た 。

以 上 の 数 字 は か な り典 型 的 な もの と考 え られ るの で あ るが 、 後 進 国 の 輸 出 所 得 の60%が 不 可 欠 消 費 財 の 輸 入 資 金 に 充 て られ る と仮 定 す れ ば 、 残 りの 申 の20

%が 生 産 財 を含 め て の 他 の 輸 入 品 の 支 払 に 向 け られ る こ と と な ろ う。 か く考 え る と き、 よ り貧 し い 後 進 国 に あつ て は そ の 貿 易 収 支 が 不 安 定 な 場 合 に は 、 各 種 の 輸 入 を含 め て 且 つ 継 続 的 な開 発 計 画 を 立 て る こ と は不 可 能 と な る。

(6)交 易 條 件 の 長 期 的 攣 動

この 問 題 に つ い て は 国 際 連 合 の 二 つ の 研 究"Rela七ivePricesofExports

andImportsofUnder‑DevelopedCountries,1949"及 び̀̀Relative PricesofPrimaryProductssndManufac七uresin1n七ernational

Trade,1953"が 関 連 を 持 つ て い る。 この 両 研 究 は そ の 資 料 を合 衆 国 及 び 英 国 に求 め て い る の で あ るが 、 これ らが 刊 行 せ られ た 当 時 次 の 所 論 に つ い て 深 い 関 心 を喚 起 し た 。 即 ち 、 第2次 世 界 大 戦 の 直 前 に 於 て は 、 一 定 量 の原 料 品 輸 出 は 1870年 代 に購 入 し得 た 製 造 品 の 輸 入 代 金 の 平 均60%を 支 払 い 得 るに 過 ぎ な か つ ・

た と い う所 論 で あ る。 然 し 、 本 委 員 会 が1800年 以 来 の 「交 易 条 件 」 くTerms oftrade)の 動 向 を調 査 した 所 で は 、 上 述 の 一 事 実 は 余 りに強 調 に 過 ぎて い る

と い う結 論 に 到 達 し た 。 先 ず 長 期 間 に 亘 っ て 交 易 条 件 の変 化 を 測 定 す る上 に は 統 計 学 上 に 於 て幾 多 の 重 大 な困 難 が 存 在 す る。 特 に 、 貿 易 統 計 表 に は 反 映 し な い 品 質 の 改 善 が あ り、 更 に 異 る国 々 の 製 造 品 と原 料 品 と の 問 の 交 易 条 件 の 変 化 に 於 け る大 幅 な 且 つ 説 明 さ れ て い な い 差 異 が 存 在 して い る。

疑 う余 地 の な い 事 実 は 交 易 条 件 の永 続 的 変 動 は か な り激 しい もの で あ る と い うこ と、 しか もそ の 変 動 は1920年 代 か ら30年 代 に か け て は 製 造 品 生 産 国 に 有 利̀f で あつ た こ と、 更 に 近 年 に 及 ん で は 少 く と も若 干 の 製 造 品 生 産 国 に は 不 利 で あ つ た とい う こと で あ る 。

交 易 条 件 の 変 動 が 原 料 品 生 産 国 と製 造 品 生 産 国 へ 周 期 的 叉 は 永 続 的 に如 何 な る影 響 を 与 え るか と い うこ と に つ い て は 論 者 に よ り必 ず し も所 説 が 一一致 を み な い が 、 過 去 を以 て 将 来 を 結 論 す べ き確 実 な 根 拠 は 存 し な い と思 わ れ る。

(7)原 料 晶 生 産 國 と製 造 品 生 産 國 との 利 害 關 係 の 混 合 性

原 料 品 生 産 国 もま た屡 々原 料 品 の 消 費 国 た る性 格 を持 つ と共 に 、 合 衆 国 、 か

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一82‑一 一 商 学 討 究 才6巻 才2号

ナ ダの如 き最 大 製造 品 生 産 国 も 原 料品 の最 大 輸 出 国 の二 重 的性 格 を帯 びて い る もので あ る。 例 えぼ、1952年 に於 て は、合 衆 国及 び西 ヨー ロツパ諸 国 は420億 米 ドル の輸 出 を行つ たが 、 この中120億 ドル は原 料品 で あ り、 しか も40億 ドル

近 くが 原 料品 生 産 国へ の原料 品 輸 出で あつ た。 他方 、430億 米 ドル の輸 入 額 中 、 140億 ドル は製造 品 で あ り、更 に約35億 ドル が原 料 品 生 産 国 よ りの輸 入 で 占め ら

れ て い た。 合 衆 国 は穀 物 、姻 草、 棉 花 、石 炭 及 び石 油 の主 要 輸 出 国で あ り、そ の輸 出貿 易 の25%は 原 料 品 よ り成 る。 英国 で す ら、 そ の輸 出貿 易 は製 造品 に集 中 して い るとは い え、 そ の輸 入 は決 して原料 品 に のみ特 殊 化 して い るので は な い。 英 国 は原 料 品 の主 要輸 出 国 た るス ター リン グ地 域 全体 の所 得 に も深 い 利害 関係 を持 っ もので あ る。 更 に 、発 展 過程 上 の国 々が あるが 、 これ らの諸 国 は将 来 に於 て は 原 料品 と製 造品 の輸 出入 比 率が 均衡 化 す る こと を待 望 して い るので あ るか ら、 「原 料 品生 産 国 」乃 至 は 「製造 品 生 産 国 一.1とい う慣 例 的表 現 を用 い て はい るが 、 特 定 国 の 利害 関係 の均衡 を決 定 す る ことは決 して 容 易 な こ とで は

な い。

(8)將 來 の 展 望

将 来 を見 透 す ことは容 易で は な いが 、'委員 会 は次 の三 つ の前提 の下 に論 述 を 進 め よ うと して い る。

(a)商 品 価 格 の不 安定 性 は そ れ 自体 として 解消 す ると考 え られ る理 由は見 出 され得 ない。 換 言 すれ ば、1929年 以 来 の変 動 は次 の諸 特 殊 的 原因L大 不況 、 戦 争及 び その 余 波、 朝 鮮 事 変一 に基 く もの で、(こ れ らの 事態 は再 び 発生 す る

よ うには思 わ れ な いが)こ れ らの ものが な け れ ば、 安定 は容 易 に且 つ 自然 的 に 得 られ る とい う見 解 は斥 け ぎる を得 な い とい う立 場 を委員 会 は とつ て い る。 こ の よ うな特 殊的 諸 原 因 の影 響 は 勿論 疑 いの 余地 は ない が 、 世 界 の商品 市場 は当 然 考 え られ るよ うな経 済的 衝 撃 に よつて 阻 害 され る場 合 は 将 来 に於 て も類 似 の 不 安定 を示 す傾 向が あ る もの とみ な すべ きで あ り、 事 実上 、 不 安定 を緩 和す る ため各 国 政府 が協 同的 行動 に出 ない 場合 に は 不 安定 は増大 す る こ とす らあ り得 よ う。

(b)貿 易 の将 来 、 経 済拡 大 の速 度及 び各 国 政府 の 政策 を予測 す る方 法 は存 在 しない 。 従 つ て 、永 続 的 交 易条 件 が原 料 品 生 産 国及 び製 造品 生 産 国 の何 れ に

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商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑83一

有 利 に転 移 す るか 、 ま たは平 均 的 に見 て戦後 に於 け る と略 々 同一 の状態 に止 る か は知 り得 ない ので あ る。 委員 会 としては この問題 に対 す る次 の 両極端 の見 解

を排 して い る。即 ち、 一 つ は限 られ た資 源 に対 す る人 間 の要求 の圧 力 の た め に 原 料 品 生 産 国 の交 易条 件 は必 らず や改 善 され る とい う見 解 で あ り、 他 の一 つ は 原 料品 生 産 には そ の性 質 上 「過 剰 生 産 」 を促 進す る諸 力が 潜 在 して い るので原 料 品 生 産 国 の交 易条 件 は必 ず悪 化 す る とい う見 解で あ る。 この不 可知 的態 度 と 相 並 ん で 、 委員 会 として は変 化 す る経 済事情 に弾 力 的 に対 応 す る方 策 を講 ず る

こ とが 特 に必 要 と考 えて い る。

(c)然 し、原 料品 生 産 国 と製 造 品 生 産 国 との 間の バ ー ター 交易 条件(Barter termsoftradeり ,の 相 当永 続 的 な変 動 は何 れ の方 向にせ よ発生 す る ことは な

い と考 え られ る し、 若 し発生 す る とす れ ば これ は商 品 市場 の短 期 的不 安定 を緩 和 す るため の国 際 的 政 策 に は無 関連 の事 で あ るとは考 え られ な い。 仮 に永 続的 変 動 が 原 料品 生 産 国 に不 利 とすれ ば、 各 国政府 は原 料 資 源 を原 料品 生 産 部 門 か ら製 造 品生 産 部 門(役 務 を も含 み)へ の転 換 を促 進 きせ るよ うな安 定化 方 策 に 力点 を注 ぐべ きで あ る。 他方 、 若 し交 易条件 上 の長 期 的転 移 が原 料 品 生 産 国 に 有 利 な結 果 とな る場 合 は 、 各 国 政府 は原料 品 生 産 の拡 大 を出来 るだ け助 長 す る.

安定 化方 策 を強 調 す べ きで あ り、 出来 れ ば最 も低 い生 産 費 の地 域 に於 け る生 産 拡 大 が 望 ま しい。 この場 合 に あつて は、工 業 国 は国 際的 安 定化 方 策 に特 殊 的 且 つ本 質 的 な利害 関係 を持 つ こと とな るで あろ う、 そ の理 由 は原 料 品 市場 の極 端 な変 動 は生 産拡 大 を必 要 とす ると きに は、 これ を阻 む重 大 な一 要 因 とな る こと な 是 認 されて い るか らで あ る。

主 要 な 問 題 点

(1)商 品 の不 安定 と経 濟 的成 長 との關 係

原 料品 市場 の激 変 が 経 済的 に未 開発 段 階 に あ る 原 料品 生 産 国 の経 済 発展 に如 何 な る影響 を与 え るか とい う問題 は 本 委員 会 に対 す る研 究 課題 の一 つ で あ る。

外 国資 本 が 純粋 な形 で後 進 国 に流 入 しない 限 りは、、この よ うな国 の経 済 発展 は そ の輸 出所 得 に依 存 しな けれ ば な らない ことは既 に指 摘 した所 で あ るが 、 過去 に 於 て は この よ うな外 国資 本 の流 入 は経済 発 展 に寄与 す るほ ど 大 きな もので は

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一一84一 商 学 討 究 才6巻 才2号

なか つ た。 更 に この外 資 流入 は高度 に変 動 す る もので あ るため、 導 入 に よ る投 資化 の利 益 を減 少 させ ること と な り、 また そ の変 動 は輸 出所 得 の変 動 とほぼ一・

致 して い る。

以 上 とは異 る理 由で 、 後 進 国 は特 に原料 品 市 場 の激 しい短 期 的 不 安定 に損 わ れ 易 く、従 つ て これが 安 定 した経 済 的 成長 を縮 減 す ること と な る。 例 えば、原 料 品 市 場 の ブー ムは後 進 国経 済 に強 力 な イン フ レ圧 力 を及 ぼ す傾 向が あ り、 ま

た就 申 、 この よ うな イン フ レ圧 力 は消 費財 、時 には奢 修品 の輸 入 を拡 大 し、経 済 的 進 歩 に殆 ど寄与 しないか 全 く何 等 の寄 与 す らもしない投 資 を煽 る傾 向 を持 つ もので 、 従 つ て この よ うな投 資 は イン フ レー シ ヨンに よつ て ゆが め られた 需 要 構 造 の上 に基礎 をお くこと とな る。 た とい経 済 的 進歩 の ため に最 優 先 的 に行 う価 値 の あ る投 資 の計 画 が な され て も ブ ーム状態 が崩壊 して不 振 と なつ た輸 出 市 場 に屈 す る場 合 に はそ の計 画 の維 持 は不 可能 に陥 る。

逆説 的 で は あ るが 、 後 進 国 は彼 等 の輸 出品 に対 す る外国 需要 が 深 刻 に減 退 し て い る時 に屡 々 イン フ レーシ ヨン を経験 す ることが あ る。 そ の理 由は 、政 府 の 収 入 は主 と して 間接 税 輸 出税 を含 む)に 依 存 して い るが、 この収 入 は輸 出所 .得 の増加 に伴 つて 増 大 す る。 この増大 が その継 続 性 に対 す る憶 測 に基 い て国 家'

支 出 の膨脹 に導 くこ とと な る。 これ と反対 の場 合 は、 国 家収 入 は急 減 し一 政 治 的 、 社 会 的 理 由 乃至 は技 術 的理 由す らに よつ て一 それ に比 例 す る支 出 の 削減 が 困 難 と な る。 そ の結 果 と して の財 政赤 字 は真 実 の貯 蓄 よ りの借 入 に よつ て は避 け る ことは 出来 な い もので 、 通 例 は中 央銀 行 よ りの借入 を通 じて行 われ る新 通 貨 の創造 が そ の役 を果 す もので あ る。

後 進 国 が原 料生 産 市場 の変動 に対 して特 に弱点 を持 つ て い るとい うの は、 も う一 つ の意 味で の経 済 的後 進性 の結果 に よ る もので あ る。 小 規 模 な工 業 力 を持 つ 小 農制 の 国 は国 内市 場 に対 処 す るた め 輸 出品 の生 産か ら資 源 を転 換 す る こ と

に よ るか 、 又 は国 内生 産 を輸 入 品 に代 替す る ことに よつて 輸 出所 得 上 の激 しい ・ 下 降 的 傾 向に生 産 型 を適 合 させ る ことは容 易 で は な い。 後 進 国 の資源 の 多様 性

は急 激 且 つ広汎 な適 合 を させ るに は余 りに限 られて い る。 同様 に、 イン フ レ圧 力 が 上 昇 して い る時 に は、 輸 出市 場 が ブ ー ム又 はス ラン プ状 態 の何 れ の 場合 で

も、 新 た に創 造 され た通 貨 は新 規生 産 を刺 激す るに は比 較 的 に効 果 が ない もの・

'

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商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑85一

で あ る。 常 に生 産 要 素 の不 足 が あ る もので、 即 ち衝 進 国 の輸 出所 得 が減 退 の場 合 に調 達 し得 ない生 産 設 備 とか 、 国 内で漸 進 的 に発 達す る技 術 の如 きそれ で あ

る。 終 りに、 外 国 為 替 の使 用 が概 略 的予 想 に 国 家計 画が 依 存 し て い る 場 合 に は 、 経 済 発 展 が 国 家計 画 を必 要 とす る度 合 に 応 じて 、 激 しい予 想 し難 い輸 出市 場 の変 動 は主 要 な障碍 とな る こと と な る。

後 進 国 の原 料 品 生 産 市場 の 激 しい短 期 的 変 動 に対 す る特 殊 な弱 点 を 強 調 しす ぎ る弊 に陥 る傾 向が あ るこ とは認 め ると同 時 に 、 高 度 に工 業 化 した国 に於 て も 食 糧 品 及 び原料 品 の供 給 を専 ら外 国 に仰 ぎ、 外 貨 を豊 富 に使 用 し得 ず 、 且 つ資

源 配分 の弾 力性 も限 られ て い る場 合 に あつ て は、 原 料品 価 格 の 急 激 な 変 動 に よつ て深刻 な影 響 を同様 に受 け る も の で あ る。 他 方 、後 進 国 は 屡 々 大 量 な

"Subsistenceproduction"を 有 す るこ とに よつ て、相 当 な額 の国民所 得 が 世 堺 市場 変動 の影 響 に き らきれ るこ とは殆 ど少 い こ と と な る(尤 も、 天候 の影 響

を ひど く受 け るこ と もあろ うが)。

原 料品 生 産 国 と製 造 品 生産 国 との 間 の価 格 関 係 の永 続 的 変 化 は ま た開 発 を前 進 す べ き経 済 的後 進 国 の能 力 に 明瞭 な関連 を持 つ もので あ る。 原 則 と して は、

交 易 条件 の悪化 は 原 料品 生 産 以 外 の資 源 に転 換 す る刺 激 と な る もので あ るが、

これ らの国 々は この刺 激 に対 して は 多 くの反 応 を示 す もので は ない 。 更 に悪化 す る交 易条 件 は実質 所 得 の減 少 を意 味 す る もので あ り、 従 つ て新 資本 形 成 に充 て るた め の生産 的資 源 を減 少 す る傾 向が み られ る。

これ に反 して 、 原料 品 生 産 国 に対 して 交 易条 件 が 改善 され ると後 進 国 の実 質 1所得 は上 昇 し、 か くして投 資 に充 て られ る資 源 が 更 に 増 加 す る。 この点 に於 て 、 原 料品 の価 格騰 貴 よ り生 ず る輸 出所 得 の増 加 は他 国 よ りの贈 与及 び借款 額 と等 しい もので あ る。 然 し交易条 件 の改善 によ る輸 出所得 の 増加 は可能 性 に止 る もので あ り、 決 して経 済 開 発 の財 源 と して 自動 的 に充 当 され るべ き もので は ない。 輸 出所 得 の増加 は貨 幣所 得 を増 大す る一 しか も、 この特 別 な所 得 は、 外 掴 よ りの贈 与及 び 借款 と異 り、新 投 資 を生 み 出す こ とが 出来 る もので 、 そ の結 果 と して公共 及 び私 的 貯 蓄 を生 ず る。 もし この貯 蓄 が 行 わ れ ない とす れ ば 、輸 入及 び国産消費財に対す る支出は増大 し・ 国産消費財 の支 出増大 は生産増抑 を も た らす よ りは む しろ物価 騰貴 を招 来 す る傾 向 を持つ もので あ る。

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一86一 商 学 討 究 才6巻 才2号

(2)國 家間 の経 濟 的 依存 關 係

国 際的諸 政 策 は各 国 が協 同 的行 動 によつ て 最 もよ く遂 行 され る共 通 目的 を持 ち且 つ これ を認 識 す る ことに よつ て可能 と な る。 国 家 の繁 栄 の ため に は 多 くの 決 定 要素 が あ るが 、 我 々 の隣 国 の繁 栄 が 我 々 の 儀 牲 に 於 て 得 られ る場 合 もあ る。 然 し この事 実 を是 認 す ると して も、世 界全 体 が 繁 栄 して い る時 に は、一 国.

もよ り繁 栄 す るで あろ うし、 これ に反 して、 世 界 の一部 に於 け る経 済的 不振 は 他 の部分 へ 多面 的 な影 響 を及 ぼす もので あ る。 この一般 論 は しば ら くお くと し て も、原 料 晶 市 場 の過度 の変動 を緩 和 す る上 に於 て、 総 て の 国が 持 ち 且つ 認識' す べ き共 通 的 利益 を特 に強 調 す る ことは必 要 で あ ろ う。

先 進工 業 国が 原料 品 市 場 の激 しい変 動 を緩 和 す るた めに 原 料 品生 産 国 と協 謁 しよ うとす るに は特 殊 な理 由が あ る もの と信 ず る。 原 料品 輸 入 に極 め て重 大 な 関 係 を持 つ工 業 国 は、 製 造 品価 格 に比 して原 料品 価 格が急 激 に相 当 な上 昇 傾 向 ー を辿 る場 合 には深 刻 な諸 困 難 に直 面 す る。 交易 条件 の変 化 は常 に これ に伴 つ て 発 生す る貿 易量 の変 化 との関 連 に於 て評価 さ るべ き もので あ る。 若 し原 料 品 伍 格 の下 落が 経 済的 後 進 国へ の輸 出減 退 を生 ず る場 合 に は、 低 廉 な輸 入価 格 の脊 利 性 は工 業 国 の輸 出産 業 部 門 に於 け る失 業 に よつ て 相 殺 され るか も図 り難 い。

この現 象 は経 済 的 後進 国 が 資 源 を輸 出産 業 か ら 国 内産 業へ 急 速 に転 換 す るため の 高度 な能 力 を持 た な い限 り発 生 す るで あろ う。 大 多数 の工 業 国 に於 ては 交易 条 件 の緩 慢 な永 続 的 変 化 に直 面 して も資 源配 分 上 の弾 力 性 を 持 つ こ と も あ る が 、 交易 条 件 の有 利 な転換 が 突 然 に しか も大 幅 に起 る場合 に は これ は妥 当 しな い。 特 に この よ うな変 動 は通常 に於 て工 業 国 の景気 の一 般 的 後 退 と関 連 して い

るか らで あ る。

次 の理 由 として挙 げ るべ きは、 原 料品 と製 造品 との 間 に急 激 な価 格変 動 が 発 生 す る場 合 に、 工 業品 生 産 国 と原 料 品生 産 国 と の利害 関係 は屡 々考 え られ る程 に は ひ ど く相 反 す る もので は な いか らで あ る。 後 進 国 も全体 と しては 、原 料品 輸 入 国で あ り、 ま た製 造品 輸 出国 で もあ るか ら、 経 済的 発 展 が続 く限 りは、 こ

の輸 出品 と輸 入品 との 多様 化 は増 大 す る。 他方 、 工 業 国 は全 体 的 に は 多量 の原一 料 品 を輸 出 し、 ま た この よ うな輸 出 に依 存 して い る地 域 と政治 的 又 は金 融 的 に

関連 を持 つ もので あ る。 更 に、製 造 品 価 格が 原 料品 価 格 に比 して急 落 す る場 合

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商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)‑87一

は 、 工 業 国 の経 済 的後 進 国 へ の援 助及 び資 金 貸 付 の能 力 も減 退す る傾 向 を生 ず るし、 原 料品 価 格 の急 落 は工業 国 の原 料品 生 産 国 へ の投 資 の利潤 率 を必 然 的 に 低 下 させ る。

終 りに、 原料 品 市場 の過度 な不 安 定 は原 料品 生 産 を浪 費化 す るか或 は需要 闘 係 が 原 料品 生 産 の急 速 な拡 大 を必 要 とす る と きに それ を緩 慢 化 す る とい うこ と は工 業 国 に とつ て は 関心 事 で あ るに違 い ない。 原 料 品 生 産 国が そ の所 得 に於 て 激 しい短 期 的低 下 に 陥 る場 合 に は、 原 料 品 生 産 国 はそ の生 産 能 力 の維 持 が 不能 とな り、 生 産 拡 充 と生 産 力 増大 とが 依存 すべ き改 善 を行 うこ とが更 に不 能 とな る。 鉱 産品 生 産 部 門 に於 て は、価 格 の一 時的低 落 は屡 々生 産 縮 少 を招 くこと と な る、 尤 も好 況 が 需要 不 振 に とつ て代 る場 合 は生 産 の必要 に迫 られ る。 これ は 原料 品 に対 す る世 界的 需要 の 長 期 的 増 大 が あ る場合 に は特 に深 刻 化す る。 更 に、 激 しい市場 不 安定 は好 況 時 に あつ て す ら原料 品 生 産 部 門へ の新投 資 に対 す

る阻害 的 要素 と して作 用 す る もので あ る。

これ を要 す るに、経 済 的後 進 国 のみ な らず工 業 国 も、 原 料品 市 場 の全体 的 不 安定 が 緩 和 きれ る場 合 に は、 そ の実 質所 得及 び均衡 的 発展 の意 味 に於 て 、 よ り 繁 栄す るで あろ うことは疑 いの 余地 が ない。 残 る問題 は総 て の国 が この利 害 の 一致 を充 分 に認 識 す る ことで あ り、 これか 得 られ ると きは協 同的行 動 の基礎 が 確 立 せ られて 、 この問題 は次 に適 切 な方 策 を選 択す る問題 として の意 味 を持 つ で あろ う。

(3)債 格 墾 動 の態 様

価 格 はそ のBehaviOurに 於 て 非 連 続 性 を 示 す と き は 不 安 定 とみ な さ れ る一 即 ち 日 々 又 は 週 毎 の 急 騰 落 が これ に 外 な ら ない 。 「過 度 の不 安 定 」 (excessiveinstabili七y)と い う概 念 を分 析 して 見 ると二 つ の部 面 を持 つ て い る よ うに思 わ れ る一即 ち(a)価 格変 動 の動 きの方 向 に於 け る変 化 が 頃 繁 な こ と及 び 、(b)変 動 の振 幅 が 大で あ る ことの二 つ で あ る。

価 格 変 動 の頻 度 とそ の振 幅 の大 き さと を判 断す る 基 準 は部 分 的 に は他 の価 格 変 動 の態様 に よ り与 え られ る。か くて既 に考 究 した よ うに 、 原料 品 価 格 は国 四 小 売価 格 又 は製造 品 価 格 全 般 の水 準 に対 して判 断 され る場 合 に 高度 に不 安定 と な る もので あ る。 然 し或 る主 観 的 判 断基 準 は 、特 に基 礎的 商 品 の生 産及 び消 費

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一88‑一 商 学 討 究 才6巻 才2号

の少 か らぬ部 分 が 安 定 と 関 連性 の な い 多 くの現 象 の発展 の継続 を期 待 す る こと が 出 来 る とい う事実 に よつ て与 え られ る。 換 言 す れ ば、 生 産 力及 び人 口 の増大 程 度 は通 常 に於 ては漸 進 的及 び連 続 的 変化 を示 す もので あ り、 収 穫 の変 動 は 、 特 殊 の 国 々に は深刻 と して も、 世 界 全体 と して は そ れ程 大 き く な い こ と もあ り、 更 に消 費 は、 そ れが所 得 の一 函数 で あ る限 り、 年次 的 に は徐 々に変 動 す る に 過 ぎな い。 それ 故 に 、価 格 変 動 の望 ま しい結 果 は一従 つ て経 済 資源 の よ りよ い 配 分 の 促進 一 激 しい不 安定 な く 目的 達成 が 可能 に な るべ き もの と推 測 され得 る。 若 し価 格 が 資源 配 分 の僅 少 な変 動 を させ るため に年次 的 に15乃 至20%の 動 が起 るべ き もの とす れ ば、 望 ま しい資 源配 分 を確 保 す る この 方法 の有 効性 に つ い て深 い疑 問 が生 ず る こと となろ う。 何 れ にせ よ、 大幅 の価 格変 動 は事 実 上 に於 て資 源 配 分 の有 用 な 目的 を果 して はい ない もので あ る。

尤 もこれ らの 大幅 の価 格変 動 の発生 に は 何 等 の神秘 性 も存 す る も の で は な く、 それ らは イン ヴエ ン トリー(lnventory)の 変 動 に よ つ て 発 生 す る こと も あろ う。 完成 品 に対 す る僅 少 な需要 低 下 は一 時 的 に原 料 品購 入 を殆 ど全 面 的 に 中 止 させ る こと もあ るが 、 これ は蓋 し製 造 業 者 は彼 等 の在 庫 量 を新 生 産 水 準 に 適 合す る所 迄 切 り下 げ るか らで あ る。 一 市場 に於 け る需要 供 給 は生 産 及 び消 費 の基 底 に流 れ る連 続 的変 動 に殆 ど関 係 が な いか或 は全 く無 関係 な気 ま ぐれ 的 な あ らゆ る種 類 の変 動 を示 す ことが あ り得 る もので 、 その不 安定 が大 な る程 、商 品 の在庫 調 節 は それだ け容 易 と な るが 、 他 方 、生 産 を新価 格水 準 に調 節 させ る

こ とは一層 困 難 とな る。

更 に、 「期 待 」(Expectation)の 影 響 は とか く価 格 の 「ね じれ た」(perverse) 変 動 を生 じ易 い。 価 格 が低 落 してい ると きは、 む しろ市場 に出 動 して売人 は価 格 が更 に低 落す る以前 に売 り急 ぐで あろ うし、 これ と反 対 の場 合 は逆 行動 に 出

るで あろ う。 この よ うな価 格 の均衡 は一 時 的 にせ よ不 安 定 を もた らし、最 初 の 麗 乱 は次 の動 揺 を 引起 す諸 力 を発生 す る こと とな る。 '

不 安定 を生起す る諸影響力は 資本財市場の若午地 域に於 ては異常な厳 しさを 以 て作用 す る。 工 業 に於 て は そ の設 備 の更 新 のた め に定期 的 に減 価償 却資 金 を 留 保す るで あろ うが 、 この更 新 の 時期 につ い て は選 択 が許 され てい る。 この選 択 は増 資が 行 わ れ た場合 も同様 で あ る。 か く して 、価 格が 下 落 して お り、続 落

(21)

商 品 貿 易 と経 済 発 展(木 曽)一 一89‑‑h.一 が 見込 ま れ る場合 に於 て は 、 重工 業 品 へ の注 丈 は殆 ど皆 無 な 点 ま で 減 退 す る が 、 これ は発 注延 期 が比 較 的容 易 で あ るとい う理 由 に基 く。 製 造 業 者 は その 多 額 な固 定費 用 に充 当す るた め に注 文獲 得 の 希望 か らして 景 気不 振 の時 にはか な りの価 格 切 下 げ を行 うこと とな る。 好 況 時 に あつ て は 、工 業 の生 産 力 は フル に 用 い られ 、そ の拡 充 は徐 々に行 われ る。 「機 械 を作 るた め の機 械 」(Machines

‑tomakemachines)の 発注 は そ れ 自 ら機 械 製造 工 業 の能 力 に対 す る圧 力 の一 部 をなす もので あ り、 注 文殺 倒 は非弾 力 的 な供 給 に突 当つ て か な りの価 格騰 貴

を招 来 す る こと もあ ろ う。

我 々は価 格 不 安定 を示 す傾 向 の あ る商 品 を二 種 に分別 す る ことが 出来 る。 そ の一 つ は貯蔵 可能 な原 料 品(穀 類 ・繊 維 ・金 属 ・石 炭 ・石 油 ・砂 糖 ・姻 草 ・ゴ ム等)で あっ て 、 これ らは価 格不 安 定 を示 す傾 向が あ るが 、尤 も生 産 及 び最 終 消 費 高 の変 化 は漸 進的 で 殆 ど継 続 的 な もので あ る。 この分 類 には 、 ま た価 格 と

数 量 に著 しい不 安 定 を示 す 或 る生産 財(船 舶 ・機 関車 。生 産 工 場 ・重工 業 機 械) が含 ま れ る。 他 の一 つ の種 類 に は申 間的 ・完成 消 費財 、建 築物 等が属 す るが 、

これ らは勿 論 、 原料 品価 格 の不 安定 に或 る程 度 影響 され る。 然 し、少 くと も経 済 的 に発 展 した 国 に あつて は、 相 当 の価 格 安 定 を示 す 広 範 な且 つ重 要 な商 品 部 門 を区 別 す る ことが 出来 る。それ らに は 、所 謂 「銘 柄品 」("Branded"goods)

(罐 詰品 及 び包 装品 ・葉 巻 ・巻姻 草 ・飲 料品 ・或 種 の衣 料 品 ・家 庭用 品 、 更 に 銘 柄 で 販売 され る小 型 の電 気 モ ー タ ー又 は 自動 車 の よ うな軽 生 産 財 が 含 ま れ

るりが属 す るので あ る。

銘 柄品 の価 格 安定 は 製造 業 者及 び貿 易 業 者 の慎慮 に主 と して 依 る もので あ る が 、蓋 し これ は不 完 全競 争 市 場 の特 質 で あ る価 格 変動 に対 す る抵 抗 に よつ て 助 長 され るので あ る。 然 し価 格 安定 は発 展 国 の市 場 の一 特 質 で あ るとい うこ とは 留 意 す べ き ことで あ ろ う。 後 進 国 に あつ て は港 に於 て は 安定価 格で 販 売 され る 商 品 で さ え も最 終 販売 地 に於 て は 高度 の価 格不 安定 が生 ず る ことが あ り得 る。 亀

原 料 品 の中 で は 、農 産品 が 特 に価 格不 安定 に悩 ま され る傾 向が あ るが、 これ は予 め以 前 に一 数 ヵ月 又 は恐 ら くは数年 前 一 な され た変 更 不 能 の生 産 決 定 に基 くもので あ る。 一度 植 付 けせ られ ると、 収 穫 費用 が償 わ れ る限 りは作 物 の収 穣 が 行 わ れ る もので、 価 格 に対 す る 「最低 線 」("floor')は 極 めて低 い所 に置 か

参照

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経済学の祖アダム ・ スミス (一七二三〜一七九〇年) の学問体系は、 人間の本質 (良心 ・ 幸福 ・ 倫理など)

〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

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