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副査教授瀬山義幸       副査教授吉田 正

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Academic year: 2021

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氏名(本籍) 山下正三   (兵庫県)

学位の種類 博士(薬学)

学位記番号 乙第115号

学位授与年月日 平成14年3月15日

学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当者

学位論文の題名 ベーチェット病患者好中球の病因・病態を反映するタンパク質の検索

論文審査委員 主査 教授 中陳静男

       副査教授瀬山義幸        副査教授吉田 正

論文内容の要旨

 ベーチェット病患者の基本的病態形成に関与していると考えられている好中 球機能の冗進は発現タンパク質の変化を伴っている可能性があると考られたこ とから,ベーチェット病患者と健常人とで異なって発現されているタンパク質 を高分解能2次元電気泳動法で解析した.その結果,健常人とべーチェット病 患者で2つの発現量が明らかに異なるタンパク質スポットを見つけた.1つは,

等電点5.2,相対分子量53kDaのタンパク質で,健常人で検出されるが,ベ

チェット病患者ではほとんど検出されないものであり,もう一方は,等電点 5.2,相対分子量40kDaのタンパク質で,ベーチェット病患者で顕著に検出さ れるが,健常人ではほとんど検出されないものであった.N末端側アミノ酸配 列分析により,このべーチェット病患者で顕著に検出された相対分子量40kDa タンパク質は,N末端がMet−44から始まる断片化アクチンであることが明ら かとなった.患者好中球における断片化アクチンの存在は,アクチンのN末端 側アミノ酸配列とC末端側アミノ酸配列をそれぞれ特異的に認識する2種類 の抗体を用いたウエスタンプロット法により確認された.相対分子量53kDaの タンパク質は,N末端がブロックされているため, N末端側アミノ酸配列を確 認することができなかった.アクチンは細胞骨格の主要成分であり,細胞の成 長や細胞分裂また貧食や走化性などの細胞機能のプロセスにおいて重要な役割 を果たしていることから,患者好中球中の断片化アクチンの存在は,ベーチェ

   む ット病の病態を理解する上で重要である可能性が考えられた.次に,この断片 化アクチン生成に関わるプロテアーゼを明らかにするために,アクチンのN末

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端側Pro−38からAsp−51までの部分アミノ酸配列のペプチドを合成した.こ れをプロテアーゼに対する基質として,患者好中球細胞質画分のプロテアーゼ 活性をHPLCで分析した.その結果,ベーチェット病患者好中球細胞質画分に は基質ペプチドを分解するプロテアーゼが存在することが明かとなった.部分 限定分解に関するプロテアーゼの検索は,患者好中球細胞質画分に種々プロテ ァーゼインヒピターを添加し基質ペプチドの分解産物をHPLCで分析すること により行った.基質ペプチドの分解は,金属キレーターであるEDTA存在下の AEBSF(4−(2−Aminoethyl)benzenesullfonylfluoride:セリンプロテアーゼ

インヒビター)及びCMK(N−methoxysuccinyl−Ala−Ala−Pro−Val

chloromethylketone:好中球(PMN)エラスターゼインヒビター)によって抑 制された.このことから,セリンプロテアーゼであるPMN一エラスターゼによ るアクチンの分解産物について検討を行ったところ,PMN一エラスターゼはアク チンのN末端側Val−43とMet−44を部分限定分解することが明かとなった.

 PMN一エラスターゼによるβ一アクチンの消化産物であるN末端側42アミ ノ酸残基ペプチド(Asp−2からVal−43(42−merP))とそのC末端側断片化ア クチンの生理的役割の有無を調べるため,ベーチェット病患者血漿中に42−

merPが存在することを確認した後,好中球の運動能に対する42−merPの影 響をボイデンチャンバーテクニックを改良した96一穴マイクロケモタキススチャ

ンバーを用いて検討した.42−rnerPは走化性因子としての作用はないが,細胞 運動を抑制する作用があることが判明した.また,PMN一エラスターゼ放出を指 標とする脱穎粒への影響を調べたところ,42−merPは,fMLP(N−formyl−

methiony1−leucyl−phenylalanine)によって誘導される脱穎粒を抑制した.一 方,断片化アクチンは重合能を持たないことが明らかとなった.

 以上の結果から,ベーチェット病の病因を反映すると考えられるタンパク質 は検出できなかったが,病態を反映する生物学的マーカーとしてPMN一エラスタ

ゼが重要であると考えられた.さらに,PMN一エラスターゼによるβ一アクチ ンの部分限定分解によって生じる42−merPと断片化アクチンは,好中球機能 を抑制する方向にあることが判明した.したがって,42−merPと断片化アクチ ンの増加が,ベーチェット病患者での好中球を主体とする炎症症状を終息させる 方向へ導くメカニズムである可能性をも示唆された.このことは炎症症状の活 動期と緩解期の2相を呈するベーチェット病の病態を反映している可能性を示 唆する.また,42−merPは,患者好中球の過剰機能を局所的にとどめる可能性

も考えられた.

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論文審査の結果の要旨

 ベーチェット病は難病とされ、特定疾患に指定されているが、その病因・病 態については不明な点が多い。しかし、その発症には免疫システムの異常が関 与し、特に好中球の機能異常が本疾患の基本的な病態を形成すると考えられて

いる。

 本論文ではべーチェット病患者の基本的病態形成に関与していると考えられ ている好中球機能の充進が発現タンパク質の変化を伴っている可能性を考え、そ の差異を高分解能二次元電気泳動法で網羅的な解析を行っている。その結果、発 現量が明らかに異なるタンパク質を2種類見いだし、一方は、健常人で検出され

るが、ベーチェット病患者ではほとんど検出されないものであり、他方はべー チェット病患者で顕著に検出されるが、健常人ではほとんど検出されないもの であった。このべーチェット病患者で顕著に検出される40kDaタンパク質は、 N 末端側アミノ酸配列分析および特異抗体による識別によりMet−44をN一末端と する断片化アクチンであることを明らかにした。アクチンは細胞骨格の主要成 分であり、細胞の成長や細胞分裂また貧食や走化性などの細胞機能の発現にお いて重要な役割を果たしていることから、患者好中球中の断片化アクチンの存 在は、ベーチェット病の病態を理解する上で重要であるという考えのもとで、次

にベーチェット病患者好中球に顕著に検出される断片化アクチンの生成に関わ るプロテアーゼの存在を明らかにするため種々の検討を行っている。その結果、

ベーチェット病患者好中球細胞質画分にセリンプロテアーゼである多形核白血 球(PMN)一エラスターゼが存在してアクチンのVal−43とMet−44を部分限定分 解することを明らかにし、病態を反映するマーカーとしての価値を見いだして いる。さらにベーチェット病患者血漿中にN末端側42アミノ酸残基ペプチド

(42−merP)が存在することも明らかにしている。最後に、42−merPの好中球に 対する生理的な役割と断片化アクチンの重合能について検討し、42−merPは、細 胞運動を抑制する作用があることおよび断片化アクチンは重合能を持たないこ

と等を明らかにし、42−merPと断片化アクチンは好中球機能、特に好中球を主体 とする炎症症状を終息させる方向に調節している可能性を示唆している。

 以上のように、本論文はべーチェット病患者好中球の病因・病態を反映する タンパク質の検索を行い、特に病態を反映するタンパク質としてPMN一エラス ターゼ、42−merPおよび断片化アクチン等の存在を明らかにし、一部その生理的 な役割についても明らかにし、ベーチェット病患者の病態・病因を解き明かす

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ための基礎を築いた点で有意義な研究であると評価できる。また、研究計画、実 験方法および結果に対する考察等も優れている。よって本論文は博士(薬学)の 学位論文として十分価値のあるものと判断する。

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参照

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