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(副査)福山正文    本 田 政 幸

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名(本籍)

学位の種類 学位記番号 学位授与の要件 学位論文題名 論文審査委員

和田真太郎(長野県)

博士(学術)

甲立 3 号

学位規則第3条第2項該当

Hθ〃oobaoオerργ o〃感染症の分子生物学的解析に関する研究

(主査)松 田 基 夫

(副査)福山正文

    本 田 政 幸

    伊 藤   武(本学客員教授)

       論 文 内 容 の 要 旨

 Hθ〃60δα吻7ρッ107∫は、胃炎や胃潰瘍などの各種疾患の原因菌であり、胃ガンとの関係も示唆され、

注目されている新興感染症の病原体である。

 しかし、感染経路、病気を惹起する機序、および菌の生態や感染実態など不明な点が多く残されて いる。そこで各種胃疾患の患者を対象にEρヅ107 の検出を行い、本誌の検出状況、本感染症の検査室 診断法の検討、薬剤感受性試験法の検討、そして分離菌株の薬剤感受性試験を行った。また、分子疫 学を目的とした遺伝子解析を行い、Eρッ10万感染症の感染実態について検討した。

 各種胃疾患の患者について、胃の生検材料からH勿10万の検出を試みた結果、1993年から1998年の 6年間に患者556人中427人(76.8%)からEρヅ07∫が検出された。次に、Hρッ10万感染症の簡易、迅 速診断法であるウレア呼気試験および迅速ウレアーゼ試験を行い、培養によるHρ吻万検出法と比較 検討した。その結果、ウレア呼気試験と培養法では93.4%、迅速ウレアーゼ試験と培養法では86.2%

の相関が得られ、これら簡易、迅速診断法が有効であることが明らかとなった。しかし、これら簡易、

迅速診断方法にはそれぞれ長所・短所が存在し、あらゆる面で優れた方法は現在のところ未だ存在し ない。そのため可能な限り複数の方法を併用することが適切かつ迅速な診断および治療に必要である と結論された。

 各種胃疾患の治療法の一つとして、πρッ107∫に感染している事が確認された場合には、本菌の除菌 が試みられている。その場合プロトンポンプ阻害剤と2種類の抗生物質、主にアモキシシリンおよび

クラリスロマイシンを用いる三面併用療法が最も多く使われている。しかし、最近クラリスロマイシ ン耐性株の出現が多く報告されてきており、この耐性株の出現が除菌の不成功の原因の一つと推定さ れる。そこで各種胃疾患の患者より分離されたHρッJo7∫を対象に各常用抗生物質に対する耐性株の出 現状況について検討した。

 最初に、薬剤感受性試験法について寒天平板希釈法、E−test、および微量液体希釈法の比較を行った

(2)

結果、微量液体希釈法であるドライプレートが最も適した方法であることが明らかとなった。また、

分離株393株を対象に耐性株の出現状況について検討した結果、クラリスロマイシン耐性株が22.0%

およびメトロニダゾール耐性株が21.7%認められた。また、耐性株が増加傾向にある事が示唆された。

 ヒト胃内に感染・定着=後のHρッ!07∫の感染実態を解明するためにAP−PCR法により分離株をDNAレ ベルで検討した。同一患者由来株、長期感染者由来株、および再発患者由来株について検討した結果、

同一患者由来株、および長期感染者由来株では大部分の事例において、薬剤に対する感受性に関わら ず、同一患者では同一のAP−PCRパターンを示したことから、これら患者は単一クローン由来の且 ρッ107∫に感染していることが示唆された。しかし、再発患者由来株の検討では、初発と再発からのH 勿107∫分離株が異なるAP−PCRパターンを示したことから、新たにHρヅ107ゴに感染したと考えられる事 例、あるいは初発時に複数のHρッ107噛株に感染しており、そのうちのクラリスロマインシン耐性株 のみが再発時に検出された事例が認められた。すなわち、Hρッ107 は一度胃内に感染・定着すると長 期間感染を続け、抗生物質による除菌治療を行っても同一菌株が残存する可能性がある事が明らかと

なった。この様に且ρッ10万の感染実態は複雑であり、さらに詳細な検討が必要であると示唆された。

 各種胃疾患の患者から分離された且ρッ107ゴの常用抗生物質に対する耐性株の出現、特にクラリスロ マイシンに対する耐性株が、本菌感染症の治療法である除菌の不成功に大きく関係していることが明

らかとなった。そこで朝飯のクラリスロマイシン耐性機構iである23S rRNAの点突然変異について、

PCR.RFLP法を用いて解析を行った。治療の前後でクラリスロマイシン感受性株と耐性株が検出され た患者13名由来の26株(感受性株13株および耐性株13株)について検討した結果、感受性13株では 点突然変異は検出されなかったが、耐性13株中12株で異なる2種類の点突然変異が検出され、1株は 検出されなかった。さらに、AP−PCR法による解析結果から、除菌治療によって同一クローン由来株が 点突然変異を起こすことが確認された。

 以上、本研究でπρyZo7∫の感染状況、耐性株の出現状況、 DNAレベルでの感染実態、そして耐性獲 得の様式を明らかにした。しかし、HρッJo万の感染経路については未だ不明のままである。また、抗 生物質を用いた除菌治療に伴う耐性株の増加、そして除菌不成功の原因の一つである耐性株の問題な

どが残されている。これら残された問題に対する今後の研究の必要性が強く示唆された。

      論文審査の結果の要旨

 飽〃coδαo∫〃砂10ア∫いわゆるピロリー菌は、1983年にWarrenとMarshallが強酸性環境である胃内か ら初めて分離培養に成功した新興感染症の病原体の一つであり、上部消化管疾患とりわけ、胃炎と胃 潰瘍の起因菌として、そしてまた胃がんの原因因子あるいはリスクファクターとして注目されている。

しかし、本質に起因する各種疾患に関してはその感染様式、感染経路及び発症機序については不明の ままで、さらに本菌の生態についても多くが不明のまま残されて来た。

 そこで、本研究では、筆者は各種胃疾患の患者からの、本菌の検出状況、本感染症の検査室診断法 の比較、薬剤感受性、そして本荘による感染様式のDNAレベルでの解析を行うことによって、π

(3)

勿10万によるヒト感染の実態とその様式を科学的に解明しようとした。

 まず、Eρッ 07蝋染症の検査室での簡易、迅速な診断法を確立するために、その基となる培養法を 用いて、1993年から1998年の6年間で各種胃疾患の患者について且勿Zo7 の検出を試みたところ、患 者556人中427人から本菌が検出され、76.8%の検出率となった。これらを疾患別にみると、胃炎で 57.4%、胃潰瘍で79.5%、十二指腸潰瘍で83.1%、胃・十二指腸潰瘍で90.6%そして胃ガンでは 79.4%であった。これらの値を1989年中伊藤武が報告した値、及び海外でBlaserらが1987年報告した 値と比較すると胃炎の場合を除いて全て高い検出率であることを示している。一方簡易・迅速診断法 であるウレア呼気試験及び迅速ウレアーゼ試験を培養法によるEρッ107ゴ検出法と比較したところ、ウ レア呼気試験と培養法との相関は93.4%で、迅速ウレアーゼ試験と培養法の相関は86.2%となりこれ ら簡易、迅速診断法は培養法に匹敵して有用であることを初めて明らかにした。しかし、これら手法 はウレア呼気試験の場合、内視鏡を使わず患者の負担が軽くかつ胃全体の検査が出来るなどの長所が あるのに対してコストが高く特別の検出機器が必要であるという短所を伴う。また迅速ウレアー曲試 験にも、内視鏡後、培養することなしに特殊な機器も必要とせず短時間に判定を行うことが出来ると いう長所とともに、偽陰性や偽陽性が多く認められる等、それぞれ長所短所が伴うことから、可能な かぎり複数の方法を併用することの重要性を示唆した。

 本菌の薬剤感受性の詳細について明らかにすることは、本底のヒトへの感染の実態と適切な除菌の方 策を確立する上で重要である。従来、本菌に感染していることが確認された場合には、プロトンポンプ 阻害剤と2種類の抗生物質、主にアモキシリンとクラリスロマイシンを用いた良剤併用療法が最も多く 使われてきた。しかし、最近このクラリスロマイシンに耐性H捌碗株が多く報告されてきており、こ

の耐性株の出現が除菌の不成功の一つの要因であると推定される様になった。そこで次いで、本研究に おいては各種胃疾患の患者より分離された本編について、その抗生物質耐性株の出現状況を調べた。ま ず、薬剤感受性試験法について、寒天平板希釈法、E・test法そして微量液体希釈法について比較検討を 行ったところ、微量液体希釈法であるドライプレート法が現時点では最も適した方法であることが明ら かとなった。

 ついで、分離株393株を用いて耐性株の出現状況を調べたところ、クラリスロマイシン耐性株が

22.0%そしてメトロニダゾール耐性株が21.7%認められ、更に耐性株が増加傾向にあることが示唆さ れた。この様な結果は、より成功率の高い除菌治療の採用とそのためのより適切な薬剤感受性試験、

微量液体希釈法の採用の必要性を強く求めている。ついで、ヒトの胃内に感染し定着した本店の感染 様式を明らかにする目的で、同一患者由来株、長期感染者由来株そして再発患者由来株についてその 株間の識別をDNA分子レベルで行った。なおこの際、筆者和田は既に、その学部の卒業論文及び大学

院修士課程での修士論文で、日本のHρッ10万分離株の株間識別には他の病原性細菌のジェノタイピン グで有効であることが報告されている、適当な制限酵素によるゲノムDNAの消化反応後のパルスフィ ールドゲル電気泳動(PFGE)法は不向きであり、10mer程度の一種類のarbitraryプライマー(5 ・ AACGCGCAAC−3 、5 一GCGATCCCCA,3 )を用いたPCR、即ちarbitrarily primed polymerase chain

(4)

reacdon(AP−PCR)が有効であることを報告しているので、本解析にそのAP−PCR法を用いた。まず、

同一患者由来株では、胃潰瘍患者4名、十二指腸潰瘍5名、胃・十二指腸潰瘍3名、胃炎1名、悪性胃 リンパ腫(MALToma)1名そして胃ガン1名の合計15名の患者から分離したH勿10ア 株で、11名では 全てそれぞれ患者ごとに同一のAP−PCRパターンを示したが、4名に由来する株についてはバンドが1−

2本消失したりバンドの濃さが変化していた。この様に、同一患者由来株では一部の患者由来の株で AP−PCRパターンにわずかな差異が認められ、 H砂107 それぞれは同一クローンに由来すると推定され るが、複数感染の可能性も否定出来ないことが明らかとなった。一方、長期感染者由来株は、除菌治 療が不成功であった患者5名、除菌治療前後共にクラリスロマイシン耐性であった患者5名そして治療 前後でクラリスロマイシン感受性から耐性に変化した患者13名から由来するものであった。これら23 名の患者由来株について、クラリスロマイシン感受性、耐性であった株、更に感受性から耐性に変化 した株ともにそれぞれの患者で除菌前後において、AP−PCRのパターンは同一で変化は認められなかっ た。この様な結果は、それぞれの患者においては同一クローン由来の且ρヅ10万株が突然変異を起こし てクラリスロマイシン耐性に変化したものと示唆された。

 更に、再発患者については事例が3名と少なかったが、同様の手法で解析した所、且ρ吻κの新たな 感染が起きている例の存在が明らかとなった。以上の結果から、H勿107∫の感染様式はほとんどの患 者においては同一クローン由来の菌株による感染であるが、一部複数感染を起こす事例の存在するこ とが明らかとなった。各種胃疾患の患者から分離されたHρッ10万の常用抗生物質に対する耐性菌の出 現、特にクラリスロマイシンに対する耐性株の出現が本葺感染症の治療法である除菌の不成功の主た る要因であることが明らかとなった。マクロライド系抗生物質の耐性機構1に関しては、1985年に

Ettayebi等によって23S rRNA(リボソームRNA)遺伝子の点突然変異がその要因として報告された。

その後、H勿107∫に関してもクラリスロマイシン耐性機構が23S rRNA遺伝子のドメインV領域のヌク レオチドナンバー2142番目と2143番目の塩基がアデニンからグアニンに変異していることが報告され た。そこで本研究においては、このH勿10万の23S rRNA遺伝子のドメインV領域中の1.4kbを増幅す るために構築されたPCRプライマーHP18(E coκの23S rRNA遺伝子のヌクレオチドナンバー1342番 目から1360番目に相当)とHP21(同上2764番目から2745番目)を用いてPCRを行った後に、2142 番目と2143番目の突然変異をそれぞれ検出するために制限酵素!脆oHとB∫α1を持ちいたPCR,RFLP

(restriction廿agment length polymorphism;制限断片長多型)法で解析した。まず、クラリスロマイシ ン感受性株13株では、PCR後の増幅断片をMδoH及びBαs Iのいずれで消化反応をしても1.4kbの断 片のみが観察された。しかし、財性株13株を用いた場合ではM60 Hでの消化断片が観察された株が2 株、βsσ1での消化断片が観察された株が10株で、残りの一株はこれら2制限酵素のいずれでも消化 断片は観察されなかった。即ち、この一株については、23S rRNA遺伝子のドメインV領域の2142番目 又は2143番目の変異による耐性株でないことが明らかである。

 以上の様に本研究において総合的に実施された、各種胃疾患の患者からの本菌且ρツ10万の検出状況 の解明、本感染症の検査室診断法の比較開発、西廻の薬剤感受性の詳細な解明、そして本四による同

(5)

染様式のDNA分子レベルでの詳細な解明は、「ヒトの本菌感染症の撲滅」のためのπρッ107 の基礎研 究に多大の貢献をするに十分独創的であり、博士(学術)を授与するにふさわしい研究論文であると、

本博士論文審査委員一同が判断した。

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