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副査教授瀬山義幸       副査助教授鎌田勝雄

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Academic year: 2021

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氏名(本籍) 佐 藤  潤   (神奈川県)

学位の種類 博士(薬学)

学位記番号 乙第93号

学位授与年月日 平成11年3月13日

学位授与の要件 学位規則第3条第3項該当者

学位論文の題名  生理機能調節因子としてのNOおよび内因性NOS阻害物質に関する        研究

論文審査委員 主査 教授 豊 島  聰

       副査教授瀬山義幸        副査助教授鎌田勝雄

論文内容の要旨

 NOというきわめて単純で、不安定な物質が、生体内の多くの臓器中で生合 成され、しかも情報伝達物質として重要な役割を果たしていることがわかっ たのは、わずか10年前である。NOの発見から今日まで、膨大な量の報告があ る。NOの生理作用は多彩であり、NOの関与する生理機能あるいは病態の範囲 は、未だに拡大している。特に、NO産生とNOSによる調節機構およびNOと病 態とのかかわりについてはその生理作用が多彩なだけに複雑であり、不明な 点も多い。本論文では、生理機能調節因子としてのNOおよび内因性NOS阻害 物質に着目し、肥厚性血管病変、遠近調節および血圧調節にどのようにNOが 関与しているのかを検討した。

 第1章では肥厚性血管病変の発症、進展における内因性NOS阻害物質の役 割について検討した。ウサギ血管内膜肥厚モデルの血管内腔面を覆う再生内 皮細胞中ではNOSの基質であるL−arginine含量が減少し、同時に内因性NOS 阻害物質であるL−NMMAおよびADMA含量が増加していた。このことが再生内 皮細胞におけるNO産生・遊離量の減少を引き起こし、内膜肥厚をもたらして いる可能性が示された。

 第2章では肥厚性血管病変の発症、進展におけるET−1の役割について検討 した。ウサギ内膜肥厚モデルにおける血管壁ET−1含量は、肥厚血管において 増加していた。さらに、1151−ET−1およびET−1受容体の特異的アゴニストまた はアンタゴニストを用いた受容体結合実験ならびに組織化学的観察の結果、肥 厚血管の血管壁にはETB受容体およびnon−ET^/non−ETB受容体サブタイプが増 加していた。ETA受容体サブタイプは主として中膜に局在するのに対して、 ETB 受容体サブタイプは主として新生内膜に分布していた。これらの実験事実から、

内膜肥厚の発症、進展にはET−1が深く関わっており、その際ETB受容体およ びnon−ETA/non−ETB受容体サブタイプが重要な役割を演じていることが示唆

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された。NOは、 ET−1産生を抑制的に調節しており、内膜肥厚モデルにおける NO産生・遊離能の低下がET−1量およびET受容体の増加をもたらす可能性が

考えられた。

 第3章及び4章では毛様体筋におけるNOおよび内因性NOS阻害物質の役割 について検討した。遠近調節において重要な役割を担う毛様体筋には、レ arginine−NO−guanylate cyclase−cGMP系が存在し、毛様体筋の緊張調節に関 与している可能性を示した。さらに毛様体筋には内因性NOS阻害物質である ADMAおよびNOSの阻害活性を有さないSDMAが存在することを確認した。毛様 体筋でのADMA濃度は、 NOS活性を抑制するのには十分な濃度ではなかった。

しかし、病態時(たとえば調節緊張時)には、トランスポーターによる取込 みなどが充進する結果、細胞内ADMA濃度が上昇し、そのためにNOS活性が抑 制され、毛様体筋の弛緩能が低下(緊張上昇)する可能性が考えられた。

 第5章では腎不全モデルラットにおけるADMAと血圧上昇との関係について 検討した。実験的腎不全モデルラットでは、血圧が上昇するとともに、内皮 細胞中、血漿中および尿中ADMA量は有意に増加していた。また、 ADMA量と 血圧との間には正の相関関係が認められた。さらに、 腎不全モデルラットの 大動脈標本におけるc脳P産生量は対照群とくらべ有意に減少していた。これ

らのことから、腎不全モデルラットにおいては、内皮細胞中ADMA濃度が増加 する結果、NOS活性が抑制されてNO産生量が減少し、末梢血管抵抗が上昇す るので血圧上昇を招くものと考えられた。以上のように、直接の病巣である 腎臓よりも、内皮細胞でのADMAの変化が、血圧変動に関与している可能性を

示した。

生理機能調節因子としてのNOを考える場合、 NOの関与のみでなくその産生 系を調節していると考えられるADMAやL−NMMA、さらにNOによりその産生が 抑制的に調節されているET−1の役割などについて総合的に考えることが重要

である。

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論文審査の結果の要旨

 本研究は、生理機能調節因子としてのNO及びNO生合成の調節物質と考え られる内因性NOS阻害物質に着目し、肥厚性血管病変、遠近調節及び血圧調 節にどのようにNOが関与しているかを解析したものである。

 得られた結果を以下に要約する。

1)肥厚性血管病変の発症、進展における内因性NOS阻害物質の役割につい   て検討し、ウサギ血管内膜肥厚モデルの血管内腔面を覆う再生内皮細胞中   ではNOSの基質であるL−arginine含量が減少し、同時に内因性NOS阻   害物質であるNG−lnonomethyl−L−arginine(L−NMMA)及びasymmetrical   NG,NG−dimethyLL−arginine(ADMA)含量が増加していることを見出し   た。この結果は内因性NOS阻害物質の増加が再生内皮細胞におけるNO   の産生・遊離量の減少を引き起こし、内膜肥厚をもたらしている可能性を   示すものである。

2)肥厚性血管病変の発症、進展におけるEndothelin−1(ET−1)の役割につい   て検討し、ウサギ内膜肥厚モデルにおける血管壁ET−1含量が肥厚血管に   おいて増加することと、肥厚血管血管壁ではET。(Endothelinサブタイプ   B)受容体およびnon−ETA/nonETB受容体サブタイプが増加することを見   出した。また、ETA(EndothelinサブタイプA)受容体は主に中膜に局在   するのに対し、ETB受容体は主に新生内膜に分布することも見出した。こ   れらの実験事実は、内膜肥厚の発症、進展にET−1が深く関わっており、

  その際にETB受容体及びnon−ET。/non−ET。受容体サブタイプが重要な役   割を演じていることを示唆するものである。すなわち、NOはET−1産生   を抑制的に調節し、内膜肥厚モデルにおけるNOの産生・遊離の低下がE   T−1量及びET受容体の増加をもたらすと推測された。

3)毛様体筋におけるNOおよび内因性NOS阻害物質の役割について検討し、

  遠近調節において重要な役割を担う毛様体筋にはNO−guanylate cyclase   −cGMP系が存在し、毛様体筋の緊張関節に関与している可能性を見出し

  た。

4)腎不全モデルラットにおけるADMAと血圧上昇との関係について検討し、

  腎不全モデルラットにおいては、内皮細胞中ADMA濃度が増加する結果、

  NOS活性が抑制されてNO産生量が減少し、末梢血管抵抗が増加するた   め血圧上昇をまねくと考えられる結果を得た。この結果は、直接の病巣で

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ある腎臓よりも、内皮細胞でのADMAの変化が、血圧変動に関与してい る可能性を示すものであった。

 以上、いずれもpriorityの高い知見を得ている。特に、内因性NOS阻害物 質の測定法を確立することにより、その組織・細胞における濃度変化と内皮細 胞機能変化について詳細に検討した結果は高く評価される。従って、本論文は、

博士(薬学)の学位論文に十分に値するものと判定する。

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参照

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