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巻頭言 日々変革する言語

著者 バーガー デービット

雑誌名 聖学院大学総合研究所Newsletter

Vol.26

No.1

ページ 3‑3

発行年 2016‑03

URL http://doi.org/10.15052/00002914

(2)

巻頭言

日々変革する言語

 英語圏内では1960年代後半から言語における性差別が注目を集めてきている。性が不確定の先行詞

(anyone、someoneなど)の場合、総称的heしか「正しくない」と文法書や教科書が指示していたので、he が非性差別語変革者から大きな注目を浴びてきた。現在、総称的heは性差別語で避けるべきだというコン センサスが形成されてきている。

 それ故に色々の代替案(he and she、she and he、s/heなど)が提供されてきているが、実際には性差 別代名詞問題の解決方法である通性代名詞theyが長年使われてきている。

 この「総称的」で「単数」であるtheyは古英語時代(449年~1066年頃)の作品に出ており、初期近代英 語(およそ1500年〜 1800年)までheと同時に総称的に使われていたと言われている。「I asked a friend, and they said OK」、「Everybody has their weakness」のような文が自然に使われている。実際には、チョー サー、シェイクスピア、ジェーン・オースティン他の英文学の名作家がこの単数theyを使っていた。

 この普及された言葉遣いがなぜ汚名を着せられるようになったか。主犯は規範文法家である。1794年の Lindley Murrayの英文法書では、theyが単数の不定名詞を意味することは誤りであると規定した。つまり、

「Everybody has his weakness」のような文しか正しくないと学校で教えるようになった。政治家も一口乗っ た。1850年の英国議会はすべての議会制定法では、男性を意味する語は女性を含むと見なすという法案ま で出した。

 自覚があるのかどうかは知らないが、母語話者誰もが単数theyを使っていても現在に至るまで単数they にはレッテルが貼られ、「無教養」と思われる場合もある。しかし、その使用を禁止する文法学者、評論 家などでさえ使っている。例えば、アメリカ有力雑誌The New Yorkerの校正者が単数theyの使用は間違 いだと主張する本にさえ次の文がある:「Nobody wanted to think they were not essential」。

 2015年には、アメリカ有力紙ワシントンポストの文章作法は英語の 3 人称単数通性代名詞問題のただ 1 つの賢明な解決策が単数theyであると主張し、その使用を受け入れた。また、アメリカ方言学会は通性代 名詞である単数theyを2015年の最優秀単語に選んだ。

 英語圏内の言語変革は日本の英語教育にはどのような影響を及ぼすだろうか。

聖学院大学 人文学部 欧米文化学科長・教授 バーガー デービッド

参照

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