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巻頭言 自らを問う

著者 窪寺 俊之

雑誌名 聖学院大学総合研究所Newsletter

Vol.25

No.1

ページ 3‑3

発行年 2015‑09

URL http://id.nii.ac.jp/1477/00002825/

(2)

Title

巻頭言 自らを問う

Author(s)

窪寺, 俊之

Citation

聖学院大学総合研究所

Newsletter

, Vol.25No.1, 2015.9 :3-3

URL

http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/detail.php?item_i d=5422

Rights

聖学院学術情報発信システム : SERVE

SEigakuin Repository and academic archiVE

(3)

巻頭言

自らを問う

 2011年 3 月11日の東日本大震災の出来事は、自然災害と原発事故の恐ろしさを骨の髄まで知らされる事 件であった。あの突然の大惨事のショックは日本人すべての心を動かし、自分の生活の基盤を問い直させ、

あるべき将来の姿を模索する大きなきっかけになった。

 被災者が失った家族や生活基盤は二度と取り返せないものである。 3 月11日が来る度に、心が締めつけ られる痛みを感じるのは私だけではないだろう。大惨事の光景が目に浮かび「何故、こんなことが起きる のか」と叫んでいる自分がいる。今でも多くの人が仮設住宅で辛い日々を送っていることを思うと、一日 も早い復興を願わずにはいられない。この大惨事から私達は何を学んだか問われている。

 将来の生活の安心・安全をどのように構築できるか私達に課せられた責任である。原発から出る核廃棄 物は何万年もの間危険性を持ち続けて、人類の生存を脅かすのである。こんな核廃棄物を増やしている社 会はあるべき社会ではない。

 東日本大震災の自然災害は将来起きる可能性があり、自然の脅威を完全に防ぐことが出来ない限り、原 発事故は起こりうる。科学技術は日進月歩であるけれども、すべての危険性を排除するものではない。一 旦事故が起きれば、誰かが危険にさらされる原発に頼るべきではない。今回の原発事故は私達の社会構造・

政治経済制度・価値観を根底から考えなおすことを求めている。

 被害者は絶対に原発に頼らない電気の供給を願っているし、多くの人は多少の不自由を忍んでも原発に 頼らない社会を望んでいる。ならばどんな社会を作るかは、私達一人一人の決断にかかっている。

 現代社会は人間の欲望を原動力として発達してきた。「こんなものがあればいい」という願望をイノベー ション(技術革新)の原点に据えて新しい製品が生まれ、製造過程ができ、流通システムが生まれた。欲 望を満足させることが新しい未来を開くように思っている。本当だろうか。社会の未来像を描く原点が問 われている。

 欲望の満足を原動力とするイノベーションを全面否定するわけではないが、そこにある問題点を意識す る必要はある。そしてそれに代わる新しい原理を私達はもっているだろうか。安心安全な未来を生み出す 原動力の探究こそ、聖学院大学総合研究所の最も大きな課題であり、社会貢献できる所ではないか。将来 生まれてくるこども達に自信をもって示せる原理を見つけ出す事が私達の責務ではないか。この大惨事を 経験したからこそ、見つけ出すことができるかもしれない。

 聖学院大学の総合研究所は優れた研究をし、新しい未来を開くための総合的研究を行なってきた。日本 を含めて世界の国家社会の構造、政治経済問題、思想、哲学や更にカウンセリング、スピリチュアルケア の領域にわたる広い領域を視野に入れて積極的研究がされてきた。このように広い研究をしてきた理由の 一つは、現代社会が複雑化していて一つの領域では全体的解決が見つからないからである。同時に細分化 された高度の科学や学問を、もう一度総合する必要があるからである。聖学院大学はキリスト教の立場に 立って来たが、それには理由がある。客觀性を重視する科学だけでは人間の幸福感や愛を土台にする社会 は形成できない。人間の無限の可能性を信じると同時に自己中心性を認めることから出発する必要がある。

大胆でありつつ謙遜な研究態度から愛を土台とする共生社会が生まれてくる。

 聖学院大学総合研究所では総合研究所紀要を出版し、今迄多くの研究業績を発表してきた。また、公開 講演会や研究会も精力的に開催してきた。ここから若い研究者も確実に育った。これらの成果は日本の学 問を発展させ、安心安全で幸福度の高い共生社会の形成に貢献するものである。総合研究所の責務は大き くなるにちがいない。「神を仰ぎ、人に仕う」というモットーに相応しい研究をしていきたい。

        聖学院大学総合研究所カウンセリング研究センター長・スピリチュアルケア研究室長         聖学院大学 人間福祉学部 こども心理学科長・聖学院大学大学院教授 窪寺 俊之

参照

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