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精神薄弱児の方向概念形成における音楽的手法の利用(その2)

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(1)

茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)121−126 121

精神薄弱児の方向概念形成における音楽的手法の利用(その2)

本多康博・西野賢壽・加瀬俊一・茨木恵美子・染野弘子・三浦美千代        (1986年11月5日受理)

で.はじめに

 精神薄弱児は抽象概念を獲得することが困難であると言われてきている。方向概念においても同様で 上下,左右,前後等は言葉としては習得しても,指示された方向に身体移動をする等日常生活で応用す

るまでには,なかなか至らないのが現状である。

 従来,教育現場では方向概念指導において,日常生活の場面(横断歩道の渡り方,クッのはき方,バ ス停での並び方等)をとらえて行ってきたが,その手法は言語による強化が主であり,この方法のみで はその場限りになりがちで,他の場面においても応用できるような発展性を持つ概念の定着が図りにく

かった。

 一方,生活場面を見ると,知能の低い生徒であろうともTVのコマーシャルソングや,自分の好きな 歌手の歌う歌謡曲は実に早く覚えることに驚かされる。それは,生徒の欲求に根ざした学習そのものが そこにあると考えるべきであろう。つまり,音楽は精神薄弱児において受け入れ易いものであるととも に,学習成立をうながす有効な手段となりえるものであると考える。

 我々は過去二年間に渡り,精神薄弱児の方向概念指導に音楽的手法を導入し,その有効性を検討して きた。 (茨城大学教育学部教育研究所紀要,第17号に実践記録として報告)

 今回は,それらにより客観性を持たせる方向で研究を進めてきた。以下にその取り組みを述べる。

2.研 究 目 的

 本研究は,精神薄弱児の方向概念(主に左右概念)形成において,音楽的刺激呈示法の有効性を障害 の類型的諸特性から検討し,障害に即した指導の手立てを解明していこうとするものである。

3.研 究 方 法

上記の目的を達成するために下記のような手頗によって研究を進めた。

(1>実験対象児の選択

 申学部(精神薄弱児養護学校)生徒における方向概念(左右概念)未習得者の洗い出し

  人数12名(ダウン症候群4名,情緒障害4名,単純精薄4名) IQの範囲(59〜測定不能)

(2>実験群・統制群の分類

 高IQの順に実験群・統制群に交互にふり分け,両群とも障害別に均等となるグループを編成した。

   …・…(資料1)

(2)

122 茨城大学教育学部教育研究紀要19号(1987)

資料1 左右概念未習得者の実態(12名)

項目

O oルーフ 氏名 性別 学年 IQ 障害

N・H 2 59 情緒障害

S・王

2 41 ダウン症

実 験 群

S・N 2 35

0・K 3 30 ダウン症 K・si 1 測定不能

K・Sa 1 測定不能 情緒障害

項目

O oルーフ 氏名 性別 学年 1Q 障害

F・M 3 54 ダウン症

T・王

1 36

統 制 群

S・M 2 32 情緒障害 1・Y 2 30

K・Y 1 測定不能 ダウン症 T・K 2 測定不能 情緒障害

(3)指導プログラムの設定

 実験群・統制派とも同条件での指導を基本とした。

 ①実施時間は1回30分間,右手,左手,右足,左足,左右への身体移動の各項目をランダムに3   試行ずつ1計15回実施した。 (期間1か月間)

 ②実験群は音楽的刺激を取り入れ,統制群は言語のみの強化を主とした。

 ③実験群で使用する曲は生徒に合ったものを自作し,歌とともに身体表現を組み込むことにした。

       資料2 指導形式

実  験  群 統  制  群

ω みぎとひだりの歌……歌う, ほ)右手,左手の指導

身体表現(2回) (言語刺激による)

② 右手,左手の強化(歌の部分での) ②理解度チェック

③理解度チェック (3)右足,左足の指導

(4)右足,左足の強化(歌の部分での) (言語刺激による)

㈲理解度チェック (4)理解度チェック

(6)身体移動の強化(音楽的に) ⑤ 身体移動の指導(上記と同じ)

(7)理解度チェック (6)理解度チェック

*休憩を入れながら3回繰返す *休憩を入れながら3回繰返す

*(2〜7まではランダムに行なう) *指導はランダムに行な『

(3)

123

西

本多他:精神薄弱児の方向概念形成における音楽的手法の利用(その2)

ひだり

占づ︑

実験群で使用した曲 資料3.

1てびょう し Qあし ぶみ

@ハ

てびょうし

? しぶみ

タン タン g漏 トン

タン gン

5

  宇Rたた い て  γルっぺを  γ         γ mぐン パ ン  パン

u み

@み

ぎ てを

だ一してセ  して

チタン

^ン

タン gン

タン gン

幽     酬

5

u ひだ ザりの

         管

ルっぺを パン パン パン

ひ だ り て

ミ だ り を だ一して セ一して

タン タン gン トン

ターン gーン

調 ψ   9

ρ

γ τ ノxo

 ン

 ン

 パ

τぺ つ

 ほ

w一@一≠垂

み一ぎの

π

一 ℃

りょう て を

閧蛻黷? あわせて サろえて

タン  タン gン  トン

一ン gーン

γ     γ

一]r paf

み一ぎと

詞曲作作

ノxe 一zf

ノxo@ン

ノxe@ン りで

ひだ

(4)

124 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

〈4)指導の展開

 この指導は数学に位置づけ,指導プログラム を基に1単位時間30分として実験群,統制群に 分れて行った。

 指導はそれぞれ2名の教師が担当し,実験群 ではピアノを用いて歌,身体表現を主体に,統 制群では言語による指導を中心とした。

 また進めるにあたっては,VTR,カメラ等 を活用し,生徒の生の姿をとらえる記録性を重 要視した。

資料4.記録用紙     左右方向概念理解チェク表

グループ〈実・統>   NO(  )  実施期日( 月  日)

       氏名(      )

 項目 右手 左手 右足 左足 身体移動

1

一一一一,一,P,P9榊曹

鼈鼈齟u匿一一一一PFP 圏 曹 一 噛 一 一 噛 雫 , 卿 F 卿 簡 隔

H 一 幽 幽 一 ■ 冒 一 , r 騨 胴 P 閥

・一一■置■一一一噛■,一,

C幽曹噛虚一一一一■一一一,

雫騨曽・・「噛曹8噛一一一一

、,曽・・帽幽一一一一一一,

一,一,停卍曹,曽冒■一一一

oP胴9・・■一一一一一 一一一.P¶ 幽匿置冒−一

u一,停曽幽幽■一■一一一一

一「RP謄脚曹齢一一噛一一一一一一一一P牌暫曽圏畠曹幽一 「一一P一一卿,…曽虚一 一一一辱一,,卿雫網閥P欝曹 幽一匿一一一り辱,陶齢■噛幽 鴨一一一一一り

H

P 曹一一一一一

米チェクはランダムに 米評価は○,×で

4.左右概念習得に関する結果 上記の方法で実施した個別正答を示す(45試行)

試行数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1314 15 16 171819202122 232425262728 2930 31 323334 35 36 37383940414243 毅 菊 K・Si × × × × × O× × × × × × × × × × X × X × × × × × X0△ △ ○ ○× × ×

N・H × ○ ○

○ ○ ○ ○OO○ ○OOO○ ○ ○O○ ○ ○O O O O○ ○ O O

S・1 ×

O○ ○O○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○O O○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ K・Sa × × × × X X O○ ○ ○○ ○○ ○ ○OO○ ○O○ ○O○ ○○ ○ ○○ ○ ○ ○

S・N × × × × × × × × × × × ○ ○ ○ × × × X ○ ○× △ △ ○X × ×○ ○ × ○ △ △×

O・K × O × × × × × X X × × × ○ ○ ○× × × × ○ ○ ○ △○ ○ ○○ ○O○ ○O

実   験   群

K・Si X × X × × X × × × × × × X × × X X X × × ○ ○ ○× ×

○ ○ ○ ○○ ○ × XO ×

N・H ○ ○ ○

○ ○○ ○○ ○O○ ○O○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

S・1

○ ○ ○O○ ○ × × ○ ○ 0○ ○○ ○OO○ ○O○ ○○ ○

王く・Sa × × × × ×

X × X O○ ○ ○ ○ ○O○ ○ ○ ○ O OO ○ ○ ○ ○ ○ ○○ △ X × ○ ○ S・N × × × × × × × × × × × × O○ ○ × × × × × × OO× X X X × O○ △ ×O

0・K × × × × × × × × × × ○ ○ X × × × ○ ○O × × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○

K・Y ○ ○ ○× × × X × × × × × X × ×

× XO× ×O○ ○ × × × ×O× × × ×

T・1 X ○ ○○ ○ ○△ △○ ○.○O○ ○ ○0O○ ○× O○ ○△ ○0

レY O × × △ ○ △○ ○○ ○O○ △ △ × × × × × O × × × × × ○ ○ ○ × × X × × × × ×○ ○ ×

S・M × X × × △ △× △ △O × ○ ○ × × O × X × × × × × × ○ ○ × × × × × ○ ○ X ×

T・K △ △ × × △ △ × O× × X × ○ ○ ○ ○X × × O○ ○ O X ×

F・M × × × ○ ○ ○O△ △ △ × ○ ○ ○ ○ ○○ ○O × ○ ○

統   制   群

○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○○ ○ X ×

K・Y × × × × ×OO× × × × × × O X○ ○× ×

T・王 ○ △ △ ○ △OO × ○ ○○ ○△ △ × ○ △○ ○○ ○ ○ X○ ○○ ○ △ ○ ×

玉。Y ○ ○ △ × × × X OX X × × O○ ○× × × X ×○ ○○ ○ × × × × × × × ×

S・M × △ △ △ × X × × △ △ △ △ X × △ △ × × ×O× × × × × ○ ○X X × X × × ×

× × ○ ○ × × X × ×○ ○

T。K X O ○ ○× × O

F・M ○ △ △ × × × × △ △× × X ×O○ ○ ○ ○ ○ ○ ○O○ ○ ○ 0○ ○

○左右とも正答 △左右のどちらかが正答 x左右とも誤答

 以下に,各群における学習効果(手と足)と障害別にみた学習効果(手)の正答数をグラフにして示す。

…………送ソ5,6(①〜③)

(5)

本多他:精神薄弱児の方向概念形成における音楽的手法の利用(その2) 125

正答数30

20

10

n 一= 12

tw tw

OOO㈱り  ⑯㊥o㈱

資料5 各群における学習効果(手と足)

n =: 11

 ○⑱㈱

O

 醗○ ㈱○

o:実験群

⑭:統制群

※45試行の課題を 前半(15)と後半

(15)に分けて,

その正答数を示して

ある。

(図中,nは人数)

o

    前半        後半

膝貌15試行までり(欝〜4噺までの)

正答数15

10

5

o

①情緒障害  ㊥……実験群  o……統制群

        /  N・H     /       //

     //

    //

    ノ

   /         O        ノ

        !   K・Sa  /      //

     /T。K /!

  o!

  S・M

資料6 障害別にみた学習効果(手)

  ②ダウン症候群

数15

10

5

前半 後半

o

s。王κ

。簸

1

σOK  ノ   ノY

M

.D

正答数15

10一

5

前半 後半

③単純精薄

TeI

 \ ︑

 ︑

 I ︑o ︑Y

SeN ew一 //

  ew  Ke Si

)り㊥

前半 後半

5.考  察

 実験の結果を学習の効果の観点から,試行回数45回の前半(1試行〜15試行),後半(30試行〜45試 行)を比較して考察することにした。手と足の理解度を総体的に見ると実験群・統制群ともに学習効果 が現われている(資料5),それは学習前半の平均点と学習後半の平均点を用いてt検定を行った結果 からも明らかである。(実験群ではP〈O. 02 統制群ではP<Q 01でどちらも有意差が認められた。)

 また,2群の平均点を用いて実験群と統制群の学習効果の差を検定した結果P〈0.001で有意差が実 験群に認められた。 手についての学習効果を前半と後半の平均点からt検定した結果,実験群にはP

(6)

126 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

<0.01で有意差が認められたが,統制群においては有意差は認められなかった。また,前半における学 習効果の両群間の比較では有意差は認められなかったが,後半ではP〈O. OOIで有意差が実験群に認め られた。故に,実験群の左右概念指導は統制群の指導よりも効果があったと判断できる。加えて,指導 経過の中で特記すべきこ.ととして,実験群においては意欲的に取り組み,楽しい雰囲気で学習が展開さ

れたのに対し,統制群では興味を持続させるという点でかなりの援助を必要とした。この観点からも,

音楽的手法を導入した指導は有効性を示すということが結論づけられる。

 次に障害別の観点から学習効果を述べるならば,情緒に障害を持つ生徒(資料6…①)では(1)実験群 統制群ともに学習効果が認められた。(2)実験群は45試行で手についてはほぼ理解できるようになった。

(3)実験群N・H:はIQが比較的高いために前半(15試行)で効果が現われたものと推察できる。(4)実験群 K・SaはIQ測定不能であるが学習効果は高かった。(5)統制群T・K:, S・坦は同様の伸び率を示した。

ダウン症候群の生徒(資料6…②)ではQ)情緒障害同様実験群・統制群ともに学習効果が認められ,実 験群はほぼ理解できた。(2)実験群S・1,0・K:は同様な伸び率を示した。(3>統制群F・Mの伸び率が高 いのは,IQとの相関が高いと推察できる。また,単純精薄の生徒(資料6…③)では,統制群におい て一例として試行の経過の中で,前半よりも後半の方が正答率が下ったケースが見られた。これは,言 語刺激のみの教示であるため,学習への興味が薄れ,適当な答えをしていたこ、とが観察より明らかにな

った。

6. ま と め

 今回,障害の類型的諸特性の見地から障害に即した指導法の解明まで結論づけられなかったことは残 念であるが,音楽的刺激呈示が左右概念指導において有効性を示すという結果が得られたことは成果で あった。今後,実験対象児を増し,より客観性を持たせる方向で追証していきたい。加えて,実験群の 学習過程において興味,意欲,そして楽しさという点で統制群よりまさっていたこと(特に低IQの生 徒達に顕著に見られた)を付記しておきたい。

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( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

自発的な文の生成の場合には、何らかの方法で numeration formation が 行われて、Lexicon の中の語彙から numeration