体育 の実 践 的指導 力に つ いて
スポー ツ ・健康教 育 長 津 光雄
休 育科 にお け る実践 的指 導力
年度 末 に 当た り、受 講 生 も多 く諌 義 に か な りの労力 を必要 と した体育科 教 育 学概 論 を振 り返 りなが ら、体育 の実践 的指導力 を備 えた教 師像 を求 めてみ る こ とに した。
私 の体育教 師経験 は高校 で
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年 と少 々 で 、その前 に修 士課 程 学生 の立場 で非 常勤講 師 と して3
年 、大 学教官 と して研 究 しな が らの 25年 弱、合 計31
年 間の経験 を基 に した論 考 で 、 経 験 主義 的 に な るこ とをお許 し康 い た い。 また手 がか りとす る体 育科教 育 学概 論 は、教員 養 成 課程 で あ る学校教 育課 程 の1
年 生 を主 と した、1 00名 車 が受葬 した誇 義 で あ る。 この
講 義 が手 がか りとな るの は、 出欠票 を兼 ね た コ ミュニ ケー シ ョンペ ーパ ー を毎 回使 用 して い た こ とにあ る。 これ に は、不用 とな っ た 旧式 のプ リン ター用紙 を裁 断 した約1 0c
m 四方 の 白紙 を使 う等 、廃 品利 用 した こ とが 多 か った。 この 大 き さに 、質 問や そ の 日の講義 で得 られ た新 しい知識 を記入 させ た もの で あ る。 そ の 中に 、オ リン ピ ックを中心 と した ス ポー ツに関す る質 問や 、教育 現 場 の実態 、教 員 採 用試 鼓 に 関す る質 問な ど、学 生 達 の現在 の関 心事 が書 き込 まれ て いた。さて、本課 程 で小学校 教 員 とな る学 生達 に とって、 この講 義 は体 育 の学 習指 導 に関す る 知識 を習得す る唯一 の許 義 であ る。 た だ し、 2年 次以 降体 育所属 とな り中学校 体 育 教員免 許 を取得す る学 生達 は、この講義 に加 えて教科 専門科 目 と してや 体 育関係 教 職 科 目 と して、
他 に
2 0単位 程 度 習得 す る。 しか し、 前記 の よ うに 1
年 生 を主 と しい る こ とか ら、教 育す る立場 で体 育 につ いて考 えた こ とは全 くない学生達 が ほ とん どで あ る。1)危機 管 理 能力
そ ん な学 生 達 の書 いた コ ミュニ ケー シ ョンペ ーパ ー の 中に、体 育指導 中の事 故や ケ ガ‑
の対処方法 や 責任 に関す る質 問が含 まれ て いた。 直近 にサ ッカー ゴール が強 風 に よって倒 れ 、 下敷 き とな った 中学
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年 生 が死 亡 し、 そ の学校 の校 長 が 自殺 した痛 ま しい事 故 の報道 が あ った こ とが影 響 して い る と思われ る。 校 内事故 の法 的責任 や 、かつ て遭 遇 した本 人 の 事 故後 の教 師 の対応 を問 うもの もあ った。 遊 技 的要 素 を含 み 、身体活動 が含 まれ る体 育の 学 習 内容 か ら、事故や ケ ガ は常 に起 こ り うるこ とであ る。 しか し前述 の ゴール が倒れ る事 故 は、過去 に も類似事故 が発 生 して い る こ とか ら、我 々体 育 教師 にはそ の危 険性 が認 識 さ れ てい るこ とであ る。それ を防止 す るた め、杭 で固定す る対策 を放 るこ とが 一般 的 で あ る。この よ うな潜 在 的な危 険性 を理解 した事 故 の未 然防止 法 は、 教科教 育法 や指 導 法 の 中 でほ とん ど取 り上 げ られ て い な いが、体 育教 師 と して必須 の資質 で あ る。 また 、事 故発 生 の頻 度 の多い‑ 一 ドル 走、走 り高跳 び 、跳 び 箱 や鉄 棒運動 、水 泳 の学習指導 に 当 た って は施設
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・用 器 具 の使 用 に関す る規則 を定 め、それ を守 らせ る必 要 もあ る。 この よ うな安 全 のた め の順 法精神 を、適 切 に伝 え る こ とも教師 の資質 と して求 め られ る。
事 故 の未然 防止 法 、 あ るい は発 生 した と して も軽微 な もの とす る対策 には、 グラ ウン ド の 凹 凸整備 や ′ト石 の除去 も、些 未 な こ とで なおかつ手 間や 労力 が必 要 とされ るが、大切 な 事柄 と考 え られ る。 これ らは、教師 だ けで は労多 く効 果少 な しで、いか に生徒 の協 力 を促 す か も実践 的指 導 力 に含 まれ るであ ろ う。
さ らに、活 発 な活 動 の場 を擾 供 す るこ とは体育 の学 習 効果 を高 め る上 で重要 な要 素 であ り、活 発 な活動 で は衝 突や転倒 な ど偶発 的事故 が発 生 す る可能性 も高 くな る。 この ジ レン マ を ど う解 決 す るか 、 あ るい は事故 後 の適 切 な対応 は ど うす るのか、 これ も危 機 管理 能力 と捉 え られ る。 事故発 生時 には、養護 教諭 や他 の教職 員 の協力 を得 る こ とにな るが、そ の 必 要 性 に対す る判 断力 には、 ケガの程度 の 大 まか な診 断 能力 も必 要 とされ る。 また、最低 限 の 救急法 の知識 も必 要 とされ るが 、衛 生 学や生理 学 は基礎 医学 の一 分野 で豊 富 な内容 を 含 み 、体育 の学習 指 導 に有用 な情報 は極 め て限 られ て い る。 特 に生命 に関係す る、過 呼吸 や熱 射病 に対す る緊急措置 、溺者 蘇 生法 は必ず習得 してお くべ きであ る。 また この よ うな 緊急 事 態 が発 生 しや す い気象 条件 につ い て も理解 してお くこ とは、学習 指導 を充 実 させ る た め必 要で あ る。
知識 だ けで な く、事故発 生 時 に教 師 が落 ち着い て対 処 で き る精神 的 な強 さも必 要 で 、対 処 を 自信 を もって で きる こ とが指導 を充 実 させ られ る こ とに な る。 体育科教育 学 の研 究成 果 か ら、現在 は生徒 の活動状 況 が授 業評価 の指標 に もな り得 る こ とが明 らか に な って い。
従 っ て、 この危機 管 理能力 は体 育科 にお け る実践 的指導 力 の一 つ と言 えるで あ ろ う。
2)
実技能 力ま た 、別 の コ ミュニ ケー シ ョンペ ーパー には、泳 げ な い の に水 泳 指導 がで き るのか とか、
器 械 運 動 の種 々の技 がで きない の に指 導 で きるの か、 たず ね る質 問 も多 く見 られ る。 す な わ ち実技能 力 が備 わ って いない こ とか ら来 る、指導 に対 す る不安 の表れ と考 え られ る。 こ の種 の質問 に は、生徒 の 中か ら見本 とな り うる技能 を有 して い る者 を指名 した り、映像 や 図表 を活用 し、教 師みず か ら示 範 を示 さな くて も指導 す る方法 が ある こ とを示唆 しなが ら、
技能 向上 に努 め る努 力 を促 して い る。
さ らに、球 技 関係 の学 習 内容 につ い て講義 した後 の コ ミュニ ケー シ ョンペ ー パ ー に は、
正規 のル ール に従 った技能 の必 要性 をたず ね るこ ともあ った。 これ は、講義 内容 が小学生 に楽 しめ る簡 略化 したル ール や 、特設ル ール の紹介 に重 点 を置 いて い た こ とが原 因 と考 え られ る。 ここには体 育 の教育 目標 の理解 に違 いが あ る こ とが窺 われ る。 体育 の大 きな 目標 に、発 達刺激 と しての運動実践 と、運 動 に よ り生活 を豊 か にす る文化 の伝 承 が上 げ られ る。
そ の文化 の伝 承 を子 どもを中心 に 目標設 定す るか運 動 文 化 に置 くか、教育観 あ るいは体 育 観 に 関 わ る課 題 が存 在す る。 バ ス ケ ッ トボールや サ ッカー な ど、 国際ル ール が 定 め られ て い る競 技 スポー ツ を学習 内容 にす る場合 、極力 国際ル ー ル に接 近す る こ とと、 国際ル ール を離 れ その スポー ツ独 自の要 素 あ るい は特性 の体験 を実感 させ るか の違 いで あ る。 学校 に お け る体育科 で は国 際ル ール を適 用す る衆 境 には ない。 しか しどこまで接 近す るか、 また
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子 どもは どこまで理解で き るか そ の判 断 の基準 は 、教 師 の スポー ツ理解 と子 ども理解 の開 催 に依 存す る こ とになる。 実践 的指 導 力 を高 め るた め に は、実技 の実践能 力 を基 に した両 者 の深 い理解 が求 め られ る こ とに な る。 従 って、多 くの運 動 が含 まれ てい る体 育科 の学習 内容 とな って い る運動の 実技 能力 は、高 けれ ば高 い ほ ど実践 的指導力 は高 い こ とにな る。
高 い実技能 力習得 には運 動 経験 とともに、 トレー ニ ン グ法 の理解 も必 要 で あ る。 教 師み ず か ら トレー ニ ングに励 み 、 向上 させ た体力 を基盤 と して習得 した実技能 力 は、指導 に直 接 有益 で あ るだ けでな く、子 ど もの体 力 の発 展性 を も理解 で き、指導 を充 実 させ る大 きな 要 因 とな るで あ ろ う。
3)
教 育 目標 の理解前項 の発 達 刺激 と運動 文化 の伝 承 の陸路 に限 らず 、体 育科 の教育 目標 の深 い理解 は、実 践 的指導 力 の基盤 とな る。 子 ども理解 につ いて も、発 達 心理 学や学習 心理 学 の知識 を踏 ま え、知 的 ・精神 的発 達過 程 の理 解 と体力各要 素 の発 達過 程 の理解 、 さ らにそれ らの個 人差 につ い て も理解 が必要 で あ る。 特 に、 スポー ツは競争 の要 素 が伴 い、序 列 が付 け られ る こ
とにな る。 勝 利 と敗 北のみ な らず 、運動 の結果 に よって 明瞭 にな った序列 が及 ぼす 心理 的 影 響 は、 トラ ウマ にな る場 合 もあ る。 陸上競技 、小学校 体 育科 の領域名 は陸 上 運 動 で あ る が、それ ら個 人 的 スポー ツで は体力 の差 あ るい は発達 の差 が、 そのまま運動 の成 寮 につ な が る場 合 が 多 く、それ を子 どもの感 受性 に対応 させ るに は どの よ うな配 慮 が妥 当で あ るか 理解 してお くこ とが必要 で あ る。
運動 の文化 を継 承す る立場 か ら、 オ リン ピック選 手 や プ ロスポー ツ選 手 の育成 に、体育 も貢献 す るべ きで あ る との考 え もあ る。 しか し、人格 の完 成 を 目指す 教 育 の 中で 、体育科 が担 うべ き役 割 を踏 まえ る と、高度化 した現代 の競技 ス ポー ツは、体育 か らは進 か彼 方 あ るい は隔絶 した世 界 の もの と考 え られ る。 大相撲 の力 士 が相撲 部屋 に所 属 し、空腹 の 中の 朝稽 古 と昼 寝 を伴 う
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日2
食 の生活 に典型 的 に現 れ て い る よ うに、一般 的生活 習慣 か ら隔 絶 した社 会 で そ の競技能 力 は養 われ て い る現 実 を見据 え るべ きで あ る。 体育科 の授 業 の 中 で は、楽 しく運 動 がで き る工夫 を し、皆 が ゴール した ときの達成感 や シ ュー トが決 ま った ときの喜 び を分 か ち合 うこ との価 値 を理解 させ るべ きで あ る。 この よ うな運 動 の醍醐 味 を 経験 させ る方 向 を探 る教 師 の姿勢 は、実践的指導 力 の重 要 な構成 要素 で あ る。発達 刺激 と しての体育 の役 割 につ い ての理解 も必要 で あ る。 教科 と して学校 に導入 され た体 育 は、富 国強兵 な ど国 の た め、 あ るい は集 団 のた め に導入 され た歴 史 を持 ってい る。
戦争 を放棄 した現行 日本 国憲法 の下 で も、高度 経 済発 展 を支 えた体力 づ く りを前 面 に出 し た
1 968年 の指 導 要領 も批 判 の対 象 とな って い る。 共 通 す る欠 点 は強制 的 な運 動 実践 を伴
っていた こ とで あ る。 向上す べ き体 力 の 目標 は、 スポー ツのお つ きあい がで き る程度 が妥 当 と考 えてい る。 職場や 地域 、 学校 の体育 的行 事 な ど、 レク レー シ ョンの要 素 を持 つ ソフ トボール やバ レー ボール 、 ゴル フや テ ニス な ど、技術 も必 要 で はあ るが、誘 われ た ら参加 で き る体力 の 自信 を備 え る こ とが 目標 とな るで あ ろ う。 運動 した翌 日の筋 肉痛 も心地 よ く 受 け止 め られ る程 度 の体力 は、継 続 的 な運動 実践 に支 え られ るで あろ う。 運 動 を 日常 的 に 実践で き る程 度 の体力 は 、強制 され な けれ ば身 に付 か ない レベ ル で はあ り得 な い。発 達刺‑
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激 と しての運動す な わ ち体力 向上 は、この よ うな個 人 的 目標 を設 定す る程度 が妥 当で あ る。
この 目標 を教師みず か ら達 成す る こ とは、誘 われ る立場 だ けで な く、積 極 的 に誘 う立場 で何 らかの運 動 を継 続す る必要 が あ る。 運 動 の継 続 に よって培 われ た体 力 は、有益 な実践 的指 導力 で あ る。
4)
工夫で き る創 造力 の滴養現 在批 判 も受 けて い るが一 定 の効 果 も上 げて い るめ あて学習 は、 1
98 9年 の学習 指 導 要
領 改訂 に伴 って発行 され た指 導 資料 で紹介 され 、そ の こ とが きっか けで普 及 した。 それ 以 前 か ら、 グル ー プ学 習 と して子 どもの 自主性 を尊重 した学習形 態 は存在 した。 生 きる力や 自己教 育力 と して、現在 の子 どもに求 め られ てい る 自主的学習態度 は、体 育 の指 導 で も重 要 な要 素で あ る。 しか し批判 の 中心 は、 自主 的学習 を支 える学習 カ ー ドを用 い た教 師 の手 抜 き指 導 であ る。 学 習 カー ドを教 師 みず か ら作成 す るには膨 大 なェ ネル ギー が要 求 され 、 教 科 書 会社等 が発行 す る教 師用参 考 書 に例 示 され た学 習 カー ドを用 い る こ とが現 実 に は多 い。 本 来教師 の教育親 か ら子 ども理解 を踏 ま え、教材 を解釈 して教 育課程 を構 築すべ き体 育 の授 業 が、既 存 の学習 カー ドを用 い るた め に本 末転 倒 現象 とな って い る。 それ は、教 師 用 参 考 書 をマ ニ ュアル の よ うに活 用 し、子 ど もや 教材 を単な る客体 と して扱 ってい る現 実 で あ る。 教師 の多忙 は 目を疑 うほ どで、好 都 合 なマ ニ ュアル が あれ ば場 当た り的授 業 よ り は少 しは充 実す るで あろ う。この辺 に め あて 学習 が一 定 の効果 を示 して い る理 由で あ ろ う。しか しその効果 も、器 械 運動等 個 人 的運 動 で技能 獲得 が学習 の主 要 な要 素 とな る種 目に 限 られ てい る。 子 ども達 に人気 が あ り効果 的 学習 が期 待 で きる集 団 的運動 で は、 リレーや ボール 運動等 がそれ に該 当す るが 、学習 カー ドを用 い るこ とよ りも子 ども達 のそ の運 動経 験 や 、技能体 力 の実態 に合 わせ た運 動 の場 の設 定 が重 要 とな る。 さ らに、器械 運 動 で集 団 演 技 を構成 す る学習 指導計画 は、今 で はそれ ほ ど珍 しくな くな った が、約
2 0年 前 本学 附
属 小 学校 の公 開研 究 協議会 で扱 者 され てい る。 当時器 械 運動 は陸上競 技 同様 個 人 的種 目として捉 え られ 、集 団 で演技 を構 成す る こ とはそ の運 動 の特性 をゆが め る こ とと批判 の対 象 に な った。 しか し実践 して い る子 ども達 は 、 それ まで の課膚 で あ る技 の習得 に向 けた練 習 を 中心 と した活動 よ りも、 い きい き と積極 的 に取 り組 んでいた。 これ を取 り入れ る決 断 を した指 導者 の創 造力 に敬 意 を表 す る もので あ る。 当時 国民体 育大会 に集 団徒 手 と呼 ばれ る 種 目もあって、集 団 でお こな う床 運 動 は存 在 してい たO さらに この頃 か らオ リン ピ ック女 子 の体操競技種 目に新 体操 が加 わ り、手具 を用 いた集 団演技が 日の 目を見 た時期 であ った。
個 人 的種 目と して位 置づ け られ て い た こ と もあ り、人 気 が衰 えて きた器 械 運 動 の復活 が認 め られ た この試 み は、運 動 の理解 と子 ども理 解 に支 え られ た創 造 力 が もた ら した結果 で あ る。 体 育教師の実践 的指導力 に この よ うな要 素 も大切 で あ る。