げんのうによる釘打ちに関する研究
著者 谷口 義昭, 櫻田 航介, 吉田 誠
雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要
巻 6
ページ 59‑67
発行年 1997‑03‑31
その他のタイトル The Study on driving a nail by GENNOU hammer
in the Woodworking Technological Education
URL http://hdl.handle.net/10105/4339
谷口 義昭・櫻田 航介
(奈良教育大学木材加工研究室)
吉 田 誠
(奈良教育大学附属中学校)
TheStudyondrivlnganaiIbyGENNOUhammer intheWoodworkingTechnologicaIEducation
YoshiakiTANIGUCHI,KousukeSAKURADA
(WoodWorkingLaboratory,departmentofTechnologicalEducation,
NaraUniversityofEducation)
Makoto YOSHIDA
(AttachedJuniorHighSchoolofNaraUniversityofEducation)
要旨:木材加工実習で用いられる道具、特にげんのうに注目し、これを用いた釘打ち作業を科学 的に分析した。生徒は、技能を数値化することで技能に興味・関心を抱き、ひいてはもの作り学 習を意欲的に行うことにつながると考えられ、この一連の教授法を確立することを研究の目的と する。
本研究では、打撃装置による自由落下打撃実験および強度試験機による釘の押し込み実験を行っ た。その結果、打撃エネルギと撃力および釘の進入量との間には、正の相関性が認められ、一方 打撃エネルギと単位面積あたりの打ち込み抵抗の問には負の相関性が認められた。げんのうによ る打撃波形とげんのうと釘の接触時間波形から、主として3つの釘打ち過程、すなわち①衝突後 げんのうが釘に撃力を伝達する期間、②げんのうが釘を押し進める期間、および③両者が反発し て離れ撃力が減少する期間、からなっていることを明らかにした。打撃エネルギが一定の場合、
げんのうが釘に作用した力積は母材である木材の種類と打撃回数に関係なくほぼ一定であった。
打撃エネルギが0.33J〜0.66Jの範囲では、げんのうはその重量に比して約160〜200倍の力を発 現した。くり返し打撃の過程で、撃力は打撃回数の増加にともない増大し、逆に1打撃あたりの 釘の進入量は漸滅した。
Keyword:げんのう、釘打ち 1.はじめに
中学校技術・家庭科で木製品の製作実習を行うとき、部材の組立てに多くの場合釘が用いられ ている。現行の教科書を見ても、釘接合に関する内容が多く掲載され1),z)、生徒が身につけてお
くべき技能の一つとしてげんのうによる釘打ちを挙げることができる。
一方、小学校の図画工作の学習で釘接合を用いた題材がいくつかあり3)▼4)、多くの中学生はす
でに釘打ち作業を経験している。しかし、中学校の技術・家庭科の木製品製作実習で釘打ちを行
う際、釘を曲げたり、材料を割ったり、また打ち込みに多数の打撃を要したりして、生徒間で技 能の格差が大きく現れている5)。
さて、従来から、釘打ちをはじめとして多くの木材加工技能は、カンやコツなどの感覚的な表 現で表されることが多く、木材加工の授業ではカンやコツをつかむまで練習をくり返して行って きた。しかし、近年授業時間数の減少で多くの練習時間が取れなくなり、中学生は十分にこれら の技能を習得しないまま学習を終えざるを得ないのが現状である。
そこで本研究では、カンやコツという曖昧な指導を改め、釘打ち作業を科学的に分析して、そ の技能を数値化することによって技能の到達度を明らかにし、これを基にして異体的な指導を行 う方法を検討する。これによって、生徒は技能に興味・関心を向け、釘打ち技能を短時間に習得 できるようになり、ひいてはもの作り学習を意欲的に行うことにつながると考える。
本稿では、生徒の技能到達度の手旨標を作成する上で必要な基礎的データを得るため、げんのう による釘の打撃実験を行い、その力学的特性について2、3の知見を得たので報告する。
2.実験方法
2.1.自由落下打撃実験
本実験に用いた釘打撃実験装置を図1に示した。打撃部に木材試験材をボルト・ナットで固定 し、供試する釘をあらかじめ5mmの深さまで打ち込んでおく。げんのうの柄の端に穴をあけ、ボ ルトを通して、これを回転軸とした。回転軸部は、槙ぶれと摩擦抵抗を極力少なくするために、
注意深く製作した。なお、げんのう頭部の中心から回転軸までの距離は250mm一定とした。げん のうの頭部に加速度センサ(共和電業(株)製AS−500A)を取り付け、げんのうを一定の高さか ら自由落下させて釘と衝突するときの加速度変化を検出した。この信号を直流増幅器のシグナル
図1実験装置
(彰打撃部 ②げんのう ③試験材 ④釘 ⑤加速度センサ ⑥シグナルコンディショナ
⑦オッシロスコープ ⑧パーソナルコンピュータ ⑨直流電圧発生器
コンディショナ(共和電業(株)製CDV−230C)で増幅した後、データストレージ型オッシロス コープ(日立電子(株)製VC−6524)に記録した。さらに、オッシロスコープに記録の加速度波 形をパーソナルコンピュータ(NEC製PC−9801N)に取り込み、次式からげんのうが釘を打 撃したときの撃力Fを求めた。
F二m・a
ここで、mはげんのうの質量、aはげんのうが釘と衝突したとき生じる加速度である。また、釘 とげんのうが接すると電流が流れる方式の回路を利用して、げんのうと釘の接触時間を計測した。
打撃実験には、227gのげんのうと長さ38mmの鉄丸釘N38を用いた。釘打ちの母材である木材 試験材は、寸法が幅60mm、厚さ50mm、長さ100mmのレッドラワン材(ShoreanegrosensisFoxw.、
平均含水率:12.7%、平均気乾比重:0.52)およびスギ材(CryptomeriajaponicaD.Don、平 均含水率:11.5%、平均気乾比重:0.39)であり、打ち込み面はいずれの材とも板目面とした。
げんのうの振り上げ高さ、すなわち自然落下高さを150mm、243mm、290mmの3段階に変化させた。
このときの打撃エネルギは、それぞれ0.33J、0.55J、0.66Jである。打撃にともなう木材への 釘の進入量は、ダイヤルゲージで計測した。各落下条件につき5回の打撃実験を行い、打撃時の 撃力と釘進入童をその平均値で求めた。
また、くり返し打撃による撃力と釘進入量の関係も検討した。
2.2.静的釘押し込み実験
静的釘押し込み実験は強度試験機(新興通信工業(株)製 TOM5000D型万能引張圧縮試験機)
を用いて行った。クロスヘッドの降下速度は10mm/minであった。用いた釘は自由落下打撃実 験と同じN38であり、釘打ち母材の試験材はレッドラワン材を使用した。
3.結果と考察 3.1.単一打撃実験
3.1.1.振り上げ高さと撃力および釘打ち込み 抵抗の関係
打撃実験から得られた代表的な波形のオッシ ロスコープ記録を図2に示した。同園で、下段 ゝ は撃力波形を表し、縦軸は撃力値、横軸は時間 である。一方、上段はげんのうと釘が接触する 時間を表す波形であり、ここで一定の電圧値を 表示している期間は両者が接触している時間を
≧こ
表している。両者の波形から、撃力はげんのう § と釘の接触時間より幾分遅れて発現しているこ とがわかる。一方、げんのうと釘の離れる時間 と撃力が急激に減少しはじめる時間はよく一致 していることがわかる。
. 「 げんのうと釘の接触波形
‥「.
力波形
仇劇SeC
図2 オッシロスコープに記録された波形
げんのうの振り上げ高さ:290mm
はじめに、げんのうの落下高さを変化させた ときの打撃エネルギと撃力の関係を検討する。
その結果を図3に示した。打撃エネルギが0.33 Jのとき撃力は約400Nであり、0.55Jおよび 0.66Jではそれぞれ440N、475Nを示し、打撃 エネルギの増加とともに撃力は直線的に増加す ることがわかる。
木材に釘を打ち込むとき、木材と釘の表面と の間に摩擦による抵抗が考えられる。そこで、
打撃にともなう釘の進入量から、釘と木材が接 する面の単位面積あたりの釘の打ち込み抵抗を 求めた。その結果を図3に示した。これから、
480
三川0
−R440 掛420
400
380
︵ t E \ Z ︶ 頸 警 苫 芯 忘
0.2 0.3 0.4 0.5 0.d O.7 0.8
打撃工ネルギ(J)
図3 打撃エネルギと撃力、および打ち込み 抵抗の関係
衝撃エネルギの増加とともに釘打ち込み抵抗は漸減することがわかる。一般に乾燥摩擦の法則で は、摩擦係数はすべり速度の影響を受けないとされ6)、村瀬の研究7)でも乾燥木材はすべり速度 が摩擦係数に及ぼす影響は小さいことを指摘している。一方、荷重速度の増加にともない木材強 度も増加し8)、特に荷重速度が衝撃の領域では特に顕著であるといわれている9)。本実験では、
げんのうの落下速度が釘のすべり速度に相当する。実験結果から、釘打ち込み抵抗の変化は、摩 擦係数の影響よりも荷重速度に依存する木材強度の影響の方が大であると推察できる。
げんのうの落下高さに対する撃力および釘打ち込み抵抗の実験結果を実際の釘打ち作業に適用 すると、げんのうを高く持ち上げるか振り下げ速度を遠くするかによって撃力を増大させること
になる。
3.1.2.釘打ち母材の材質と打撃の関係
本稿は釘打ち込みの撃力を研究対象としているが、これとは逆に釘接合材に外力を負荷したと きの接合部の耐力、すなわち釘引き抜き抵抗に関しては、すでに多くの報告がある10・11)。そして、
釘の引き抜き抵抗には母材である木材の比重が最も影響し、引き抜き抵抗は比重の2.5乗に比例 すると報告されている12)。
そこで、比重の異なるレッドラワン材とスギ材を用いて、釘打ち母材の材質と釘打ちの撃力の 関係を検討した。これらの材の撃力波形を図4に示した。材質の異なる2つの試験材で、撃力波
形に明らかな差が見られる。すなわち、打撃エ
l l l I T l 1 1 レ ッ ド ラ ワ ン
l ■
瓦
ス ギ
β.5mSeC
図4 木材の種類別の撃力波形 げんのうの振上げ高さ:290mm
ネルギが一定の条件では、比重が高く硬質のレッ ドラワン材は、比重が低く軟質のスギ材に比べ、
撃力は約1.5倍高く、また撃力がピーク値に達 してから急激に減少するまでの時間は、後者が 前者よりも約1.6倍長いことがわかる。このこ
とから、木材の比重が高ければ、げんのうと釘 の衝突の際大きな力が生じ、また図2の結果か ら、げんのうと釘の接触時間が短いため短時間 に釘から反発されたと推察できる。
材質の違いによって撃力波形が異なるという
結果から、技術・家庭科の製作実習で用いる 木材が種類によって釘打ちの難易度に差があ ることを中学生に理解させやすく、材料の選 択を工夫する態度を育てる助けになると考え
る。
3.1.3.打撃工ネルギと釘の進入量の関係 打撃エネルギと釘の進入量との関係を図5 に示した。打撃エネルギの増加にともない、
釘の進入童は増大し、両者の問に正の相関性 があることがわかる。このことから、力強く げんのうを振り下げる、すなわち打撃エネル ギを大きくすることは釘の進入深さを増大す
ることになり、実際の作業での現象と一致す
0 0.2 0.4 0.6 0.8
打撃エネルギ(J)
図5 打撃エネルギと釘の進入量の関係 る。
さて、図2の撃力とげんのうと釘の接触時間の波形から、打撃工程をつぎの3つに区分するこ とができる。
①衝突後げんのうが釘に撃力を伝達する期間
②げんのうが釘を木材内部に押し進める期間
(診げんのうと釘が反発して離れ、撃力が減少する期間
である。すなわち、(丑はげんのうと釘が衝突した後短時間に撃力のピークに達するまでの期間で あり、多くの実験で0.2〜0.3msecを示し、樹種による差も明らかでない。(診はげんのうと釘が 接触している期間であり、3.1.2で指摘したように樹種によって大きく異なっている。また、③ はげんのうと釘が離れて撃力が急激に減少する期間であり、レッドラワン材で0.6〜0.8msec、
スギ材で0.7〜1.Omsecで樹種によって幾分異なるが、顕著な差ではない。この3つの期間と釘 の進入の関係を考察するには、静的強度試験機による荷重一変位のチャートが参考になると考え る。すなわち、クロスヘッドが釘と接すると瞬時にして荷重が表示される。しかし、釘の進入は
2 3 4
げんのうと釘の接触時間(ms)
図6 げんのうと釘の接触時間と 釘の進入墨の関係
無視できるほど微量である。また、除荷の過程 では釘の進入は全くない。したがって、打撃実 験における(Dと③の期間は、釘の進入墨に及ぼ す影響は著しく小さいと言える。なお、③の過 程では、げんのうと釘が離れても、慣性の法則 によって釘自身は進入し続けることも考えられ るが、その量は微呈であろう。したがって、釘 の進入は(塾の期間が主体であると推察できる。
そこで、げんのうと釘が接触する時間と釘の
進入量の関係を考察する。両者の接触時間と釘
の進入量の関係を図6に示した。これから、幾
分データにばらつきはあるものの、接触時間と
釘進入量の問には正の相関関係が認められる。
すなわち撃力の継続時問が長いほど、釘の進入量が増大する関係にあることがわかる。
3.1.4.打撃と力積の関係
釘の打撃現象のように短時間で力が作用するとき、力を受ける物体の運動量の変化は、力Fと 時間tの積、すなわち力積Iで定義され、次式で表される。
Iこ= F(t)・d t
ここでF(t)は撃力の時間関数である。そこ 0.8 で力積は、図2における撃力波形で縦軸の撃力
と横軸の時間で囲まれた面積から求めることが 盲 できる。 喜0・6
レッドラワン材の打撃実験で求めた力積の結 障 巣を図7に示した。これから、打撃エネルギと 力積の問に正の相関性が認められる。
次に、レッドラワン材とスギ材のように材質 が異なる場合の力積を考察する。図4の打撃波
… … … … …・(2)
形から各材の力積を求めると、レッドラワン材 0・2 は0.55N・SeC、スギ材は0.56N・SeCであり、
両者はほぼ等しいことがわかる。すなわち、レッ
0.4 0.6
打撃エネルギ (J)
図7 打撃エネルギと力積の関係 ドラワン材は撃力が力積の主因子、釘の進入は副因子であり、スギ材はその逆であるが、結果的 には、両者の複合作用としての力積は等しくなったと言える。
以上のことから、打撃によって釘に与えられたェネルギは、釘の押し込みに消費されているこ とが撃力波形の解析から得られる力積によっても立証できる。
3.1.5.静的釘押し込み実験
釘打ちにげんのうを使う意義を力学的特性から明らかにするため、静的な釘の押し込みと自由 落下打撃問で比較検討した。げんのうの落下高さが150mm、243mm、290mmのときの釘の進入量は、
それぞれ0.96mm、1.56mm、2.24mmであった。そこで、げんのうで得られた釘進入量まで強度試 験機で釘を押し込み、そのときの荷重を求めた。各釘の進入量におけるげんのうの撃力と静的押
し込み力の結果を表1に示した。これから、げんのうによる撃力は、静的な押し込み力の1.5〜
表1 げんのうによる打撃力と静的釘押し込み力の比較 釘の進入呈 げんのうによる 強度試験機による
(mm) 撃力,A(N) 静的押し込み力,B(N)
4 6 6
2 5 9
2 1 0 1 00 1仁
U
5
0 2 9 7 4
3
3
釘打ち母材:レッドラワン材,釘:N.38
1.6倍であることが明らかになった。したがって、等しい釘打ち込み童を得るには、げんのうに よる打撃は静的な場合よりも大きな力を必要とすることになる。これは、3.1.1項で考察した木 材強度は荷重速度に依存することで説明できる。
次に、げんのうの重さと打撃で発現する撃力の関係を考察する。表1より、実験した高さが150 mm〜290mmの範囲の自然落下では、げんのうによる撃力はその重さに比べて約160〜200倍の力を 発現できることがわかる。したがって、仕事の効率の面からもげんのうを使う意義が明らかであ り、中学生にこのげんのうの力学的特性を教授することで、道具に対して興味や関心を持たせる ことができると考える。
3.2.くり返し打撃実験
3.1で得た結果はいずれも単一の打撃によるものであった。ここでは、釘が完全に木材内部に 打ち込まれるまでくり返し打撃したときの撃力と釘の進入量について検討する。なお、げんのう の落下高は290mmに一定とし、釘打ち母材はレッドラワン材であった。
打撃装置によるくり返し打撃のうち、1回目、
図8に示した。打撃回数の増加とともに、撃力 のピーク値が高くなり、逆にげんのうが釘に撃 力を負荷する時間が短くなる傾向を示している。
また、各打撃ごとの力積を求めた結果、1回目 は0.58N・SeC、5回目は0.58N・SeC、10回目 は0.56N・SeC、15回目は0.57N・SeC、20回目 は0.56N・SeCを示した。すなわち打撃数の変 化に対して力積の変化は認められず、3.1.4項 で述べたように打撃エネルギが同じであればそ の力積は等しいことがくり返し打撃実験でも立 証されたことになる。
くり返し打撃の打撃回数と釘の進入量の関係 を図9に示した。両者の問には、両対数グラフ で直線の関係が認められた。したがって、くり 返し打撃の過程で、釘と木材との摩擦抵抗が増 加し、釘を深く打ち込むためにはより大きな撃 力を必要とすることがわかる。
木材への釘の進入において、釘の先端は木材 繊維の凝集力以上の力によって木材繊維を切断 および割裂するよう作用し、釘の側面は木材繊 維から圧縮荷重を受ける。釘を木材内部に進入 させるには、釘の先端と側面の圧縮荷重で生じ る摩擦力より大きな力を加えなければならない。
そこで、くり返し打撃によって釘の進入にその 打撃エネルギは消費される。一方、木材側から 見ると、釘の進入に要するエネルギは、釘の引
5回目、10回目、15回目、20回目の撃力波形を 20回目
15回目 !
≠ 10回目 l
.
5 回日l l
1回日 \\
日 \ \
\
ク.軸 S e C W
図8 くり返し打撃による撃力波形の変化
0
︵日昌︶ 叫Y刹e臨
10
打撃回数(回)
図9 くり返し打撃と釘の進入量の関係
抜き抵抗として逆に木材内部に蓄積され、釘を引抜くにはこの蓄積ヱネルギ以上に外部からエネ ルギを負荷しなければならないことになる。
以上の結果を生徒に対して提示することで、打撃が進むにつれ、摩擦によって釘が入り難くな り、また抜け難くなること等をはじめとして、釘の接合の仕組み等も含めた釘と木材の摩擦の影 響について、より広い展開を行うことができると考える。
4.まとめ
本研究では技術・家庭科の木材加工領域における釘打ち作業に注目し、その技能の数値化に必 要な基礎的データを得ることを目的に、打撃装置による自由落下打撃実験および強度試験機によ
る釘の押し込み実験を行った。得られた結果を以下に要約する。
1)げんのうによる打撃エネルギとげんのうと釘との衝突で生じる撃力、および打撃エネルギと 釘の進入量との問には、正の相関性が認められた。一方、打撃エネルギと単位面積あたりの打ち 込み抵抗の間には負の相関性が認められた。
2)げんのうによる撃力波形とげんのうと釘の接触時間波形から、釘打ちの過程を次の3つに区 分できた。
①衝突から撃力がピークに至るまでの期間
②げんのうが釘を木材内部に押し進める期間
(診げんのうと釘が反発して離れ、撃力が減少する期間
3)打撃エネルギが一定の場合、げんのうが釘に作用した力積は、釘打ちの母材である木材の種 類や打撃の回数に関係なく、ほぼ一定であることを明らかにした。
4)ある深さまで釘を進入させるのに、げんのうによる打撃は静的押し込みの1.5〜1.6倍の力が 必要である。
5)打撃エネルギが0.33J〜0.66Jのとき、げんのうによる撃力はげんのうの重さに対して160
〜200倍の力を発現できることを明らかにした。
6)くり返し打撃の過程で、釘と木材との摩擦抵抗の増加にともない撃力は増大し、また釘の進 入量は漸減した。
以上のとおり、本研究は試作した測定装置を用いて、打撃時のげんのうと釘の作用を数値化で きた。今後は、げんのうを手で持って釘を打撃するときの作用を数値化し、技能の分析を行う予 定である。さらに、本打撃測定装置を中学校の技術・家庭科の実習に導入し、技能の数値化が技 能の習得に及ぼす効果を検討し、生徒が技能を向上する上で有益な教材の開発につなげたいと考 えている。
引用文献
1)石田晴久,中馬敏隆,阿部明子,渋川祥子編修代表:『新しい技術・家庭(上)』東京書籍
(1992).