スクリュー釘の耐力壁に及ぼす効果に関する一考察(その2)
Experimental Study on Shear Properties of Frame Wall with Screw Nail(Part.2)
朝倉 均,佐藤 茂雄* ASAKURA Hitoshi, SATO Shigeo 1.経過 前報ではスクリューリング加工をした釘 の特性を述べてきた。そして短所として、 ①初期剛性が低くなる傾向がある ②パンチングアウトによる破壊が多い ことが挙げられた。 その原因としてリング加工を行うことに よる剛性低下が一つの要因ではないかと考 えた。そこで釘にスクリュー加工のみ行い 上記の改善を試みた。そしてその性能の確 認のため面材系耐力壁に対する性能評価を 行った。 本報告の目的はスクリュー加工のみを施 した釘の面内せん断耐力性能を考察するこ とである。加工に変更があったため昨年の タイトルと変更がある点をご了承いただき たい。 2.スクリュー釘の仕様 今回開発したスクリュー釘は2種類であ る。材質は価格を考慮した鉄製のものと耐 久性・耐候性を考慮したステンレス製の2 種類である。スクリュー釘の仕様を表1に 示した。スクリュー角度は 60 度のものと 70 度 の 2 種 類 を 開 発 し 比 較 す る も の と し た。なお、製法の関係上、スクリュー角度 60 度 の も の は JIS G 3532 く ぎ 用 鉄 線 SWM-N の規格内材料で、スクリュー角度 70 度 の も の よ り 引 張 強 度 25% 増 し の 材 料 を 使用している。 表-1 スクリュー釘の仕様 (提供:安田工業株式会社) −59−
3.面内せん断試験と考察 3.1 供試体と試験概要 前回と同様(財)建材試験センター「木造 耐 力 壁 及 び そ の 倍 率 の 試 験 ・ 評 価 業 務 方 法 書」に基づき面内せん断試験を実施し耐力壁 の性能評価を行った。 試験体は図1に示したような在来軸組工法 の躯体に針葉樹構造用合板(厚 9mm:3プラ イ)を張った 2P 試験体である。耐力壁を構成 する面材を柱材にスクリュー釘を用いて周辺 部、中間部共に釘打ち間隔 150mm で打ち付け ている。 図1 試験体 今 回 は 無 載 荷 式 の 試 験 方 法 を 採 用 し て い る。試験装置概要を図2に示した。 図2 試験装置概要 試験体数はスクリュー角度 70 度の釘におい ては鉄製、ステンレス製それぞれの耐力壁が 3体、スクリュー角度 60 度の釘は鉄製の釘を 用いた試験体3体。そして比較のため N50 釘 を用いた耐力壁1体の計 10 体である。 3.2 試験結果 荷重−せん断変形曲線を図3〜6に示した。 図3 鉄製スクリュー角度 70 度 荷重−せん断変形量曲線 図4 ステンレス製スクリュー角度 70 度 荷重−せん断変形量曲線 図5 鉄製スクリュー角度 60 度 荷重−せん断変形量曲線 N50釘 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -100 -50 0 50 100 150 200 250 せん断変位(mm) 図6 N50 釘 荷重−せん断変形量曲線 −60−
上図から見られるようにいずれの試験体も 脆性的な破壊を示さず、最大荷重を示してか ら徐々にせん断耐力が低下する結果となった 図7に荷重−せん断変形曲線の最終加力を 行った側の包絡線を用いた解析図を示した。 表2に短期基準せん断耐力を決定する際に 必要となる各種の荷重および試験体を完全弾 塑性モデルに置き換える際の各種係数を示し た。 図7 荷重−せん断変形量曲線最終加力側包絡線 表2 試験結果 *:見かけのせん断変形角 1/120rad.時の荷重 −61−
試験体の破壊形式は、スクリュー角度 70 度 の釘は主としてパンチングアウトによる破壊 を生じ、釘の破断を伴うものも数多く見られ た。スクリュー角度 60 度の釘はほとんどが引 き抜けによる破壊となった。破断する釘はご く少数であった。図8にスクリュー角度 60 度 の試験体破壊状況を示した。 図8 面材の破壊(剥がれ)状況 3.3 考察 上記の試験結果から以下のことが挙げられ る。 ①短期基準せん断耐力の決定は降伏耐力 Py で 決定する傾向がある。 ②スクリュー釘はN釘と比較すると初期剛性 が高くなる傾向が見られる。スクリューリン グ釘では逆の結果であったことから形状の変 更による効果が現れている。 ③スクリュー角度が 60 度のものは 70 度のも のに比べ降伏耐力、最大耐力などが大きい結 果となった。 ④鉄製の釘に比べステンレス製の釘は耐力が 小さくなる傾向が見られる。 ⑤スクリュー釘と多くの在来構法で使用され ている N50 釘を使用した耐力壁と比較すると すべての因子の数値が高くなった。 ⑥スクリュー角度 60 度の釘において破断する 釘が非常に少なくなった。材料の変更が効果 的であったといえよう。 ⑦スクリュー角度 60 度の試験体において、柱 材および土台に KD 材を使用した。このことも 耐力上昇の要因と考えられる。このことは軸 組材に品質の高いもの(節の多さ、含水率の 低いもの等)を用いることによってある程度 の耐力の向上が見込まれる。 4.まとめ 今回の一連の試験結果より得られた成果を 以下に示す。 ①釘材質の変更により釘の破断を少なくする ことが可能である。 ②材質の変更および加工の変更によってスク リューリング釘の短所である初期剛性の低さ を克服することができた。 ③スクリュー角度が面内せん断性能に与える 影響は大きい ④引張強度を上昇させた釘に対する側面抵抗 試験、釘頭貫通力および一面せん断試験を実 施し性能を確認する必要がある。 5.謝辞 本研究では試験体の作成に(株)匠建築の 多大なるご協力をいただきました。ここに記 して謝意を表します。 本研究は平成 19 年度受託研究「新型釘を使 用した面材系耐力壁の面内せん断性能に関す る研究」の一環として実施したものである。 *安田工業(株)八幡工場 −62−