研究機関近況
先端分子医学研究センター
先端分子医学研究センター(FCAM)のキックオフレポート
トランスレーショナルリサーチグループ:創薬開発から臨床試験へ
トランスレーショナルリサーチグループ・リーダー 医学部教授
宮 本 新 吾
はじめに
トランスレーショナル・リサーチは、基礎研究・
臨床研究・創薬開発・臨床応用と多岐にわたる業務 の集積によるもので、臨床の現場に提供されるまで の経緯として、多くの研究者とともに種々の分野の 臨床医やコメディカルとの共同作業が要求されます。
現在、我々はがん治療に対する新たな治療薬の開発
(標的治療薬の開発)という臨床応用の最終段階で ある臨床試験(治験)に到達し実施しています。し かし、臨床試験を行うなかで、継続的な標的分子の 妥当性の基礎的および臨床的検証、治療薬の適応拡 大、さらには臨床試験を行う上での組織作り等、作 業業務は反復・拡散を余儀なくされます。そのよう な背景の中で、最終的にはこれらの作業業務を効率 的に収束させることが、治療薬を臨床の現場に提供 することにつながります。そこで、われわれトラン スレーショナル・リサーチ・グループが行っている 取り組みとして、現在までの開発経過を報告し、同 時に今後の研究課題への取り組みを紹介いたします。
1.現在までの開発経過―HB-EGF を抑制する 標的治療薬の開発
近未来、本邦では男性の2人に1人、女性の3人 に1人ががんで死亡することが報告されています。
このように急増するがんの撲滅に向けて、!標的治 療薬の開発"早期発見法の開発#がん予防の進歩、
の3つが対策として掲げられ、特に、標的治療薬の 開発に大きな期待が寄せられています。
EGF Family(上皮系増殖因子ファミリー)は、が んの増殖・進展の中心的役割を果たし、受容体であ るEGFR(ErbB1)とHER2(ErbB2)が が ん 治 療の標的分子として注目されるなか、近年まで多く の治療薬が開発されてきました。しかし、これまで
の標的治療薬や既存の抗癌剤では既存の標的治療薬 では一部の悪性腫瘍での有効性は認められるものの、
開発当初に期待されたような臨床効果がないことが 指摘されています。このような背景から、新たな標 的治療薬の開発が切望されています。
HB-EGFは、EGFRに結合する増殖因子の一つで 卵巣癌、乳癌、胃癌、子宮体癌、悪性黒色腫、神経 膠芽腫、肺癌などの多くの悪性腫瘍治療の標的分子 です。申請者らは、増殖因子HB-EGFを標的とす ることで増殖シグナルとともに生存シグナルを完全 に抑制できることを世界で初めて明らかにし、HB- EGF標的治療薬(CRM197)が有望ながん治療薬で あることを示してきました。平成19年10月に独立行 政法人医薬品・医療機器総合機構に治験計画届け
(医師主導治験)を提出、平成19年12月より「治癒 不能な進行・再発卵巣癌を対象としたHB-EGF特 異的抑制剤BK-UMの第$相臨床試験」を福岡大学 病院で開始し、今年度中での第$相臨床試験(安全 性試験)の終了を予定しています。現在、施行され ている治癒不能な再発卵巣癌症例を対象とした本治 験では、CRM197は期待通りの安全性・有効性を認 めており、がん治療に対する新規治療薬として国内 外で高く評価されその開発に期待が高まっています。
2.今後の研究課題
標的分子治療薬の開発における問題点として1)
標的としている分子の発現を治療前後で評価できな いため、適応治療症例を選択する方法がない。2)
単剤での有効性は乏しいが、併用することにより相 乗的抗腫瘍効果が期待できるが組み合わせる治療薬 を選択する根拠が乏しい。3)本邦では臨床試験の コストが高く、臨床試験に対する患者や医師、コメ デイカルの理解が乏しい、などがあります。これら
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実験的課題 標的治療薬の有効性
(1)抑制できる他の標的となる経路の探索
(2)相乗的抗腫瘍効果を示す薬剤の探索
(3)治療有効を診断するミニアレイの作製
臨床的課題 治療を受ける症例の適合性
(1)適切な臨床試験の取り組み
(2)ネットワークの構築
(3)標的分子の臨床症例での評価
図1.今後の HB-EGF を標的とした治療開発における課題 の問題点を解決するためには、基礎的実験に基づい た問題解決と臨床的見地からの研究課題の解決を行 わなければなりません。具体的な基礎的実験に基づ いた研究課題としては、!がん増殖機構で活性化し たどのようなシグナルを抑制することができるのか
"どのような制癌剤と併用すると有効性が高まるの
か#どのような遺伝子背景をもった症例に投与する ことが有効なのか、という点です。臨床的な課題と しては、!今後の適切な臨床試験はどのようなもの
か"臨床試験への適切な症例の登録を円滑にどのよ
うに行うか#対象となるがん患者における標的分子 の発現を評価できるのか、があげられます。
2. 1.基礎的実験に基づいた研究課題
!がん増殖機構で活性化したどのようなシグナルを 抑制することができるのか
EGFRリガンドが結合することによりEGFRと HER2、HER3、IGFRなどとの間で形成される異 質結合体により誘導されるさまざまのシグナルや生 存シグナルAKTの活性化は、既存のEGF Familyあ るいはそのシグナル経路に関わる分子を標的とした 治療薬では十分に抑制できません。このことが、既 存の標的治療薬の有効性が期待はずれである最大の 理由と考えられています。一方、HB-EGFを発現し ている癌細胞においては、CRM197(HB-EGF特異 的抑制剤:治験薬)により、EGFRとHER2やHER 3などの異質結合体の形成は抑制されることや生存 シグナルAKTを抑制することにより、既存の標的 治療薬に抵抗性を示す癌細胞にも有意に細胞死に誘 導します。この事実を含めてHB-EGFを高発現し た癌細胞は、抗がん剤や既存の標的治療薬には耐性 を示しますが、CRM197は著明な抗腫瘍効果を示し
ます。このような成果から、CRM197は有望な標的 治療薬であると期待されます。
"どのような制癌剤と併用すると有効性が高まるの
か
CRM197は、in vivoあるいはin vitroの実験から Paclitaxel,CPT-11,Gemcitabine,Cisplatinなどとの 強い相乗的抗腫瘍効果を示します。これらの抗がん 剤はHB-EGFの発現を亢進させて薬剤への抵抗性 を示すため、CRM197との併用により細胞死からの 回避機構を完全に抑えることができます。現在、他 の標的治療薬との相乗効果の検討を行っています。
#どのような遺伝子背景をもった症例に投与するこ とが有効なのか
EGFR,HER2,ERK,AKT,KRAS,BRAFなどの HB-EGFシグナル経路の関わる分子は、HB-EGFの 発現を誘導します。また、CGH-ArrayやExpression- Array、mRNA-Arrayを 用 い てHB-EGFの 発 現 誘 導 に関わる可能性のある転写因子とHB-EGFにより 発現を誘導される血管新生因子を探索しています。
既に、候補となる遺伝子の探索は終了し、これらの 遺伝子を載せたDNAチップを作製しCRM197が有 効・無効な癌細胞における発現を解析する予定です。
また、ヒト卵巣癌・乳癌・胃癌組織における発現を 解析することでCRM197有効と推測される症例・遺 伝子背景を検証する研究の準備も始めている。
2. 2.臨床的実験に基づいた研究課題
!今後の適切な臨床試験はどのようなものか 治験薬を投与し観察期間を終了したのちの治療効 果や後治療が有効と推測される症例は半数以上でし た。この成果を踏まえると、治験薬と抗がん剤とを 併用する臨床試験(治験)を実施すると高い有効性 が期待されます。したがって、標準治療であるタキ サン系およびプラチナ系抗がん剤投与終了後に再発 した症例を対象としてCRM197とCPT-11とによる 併用療法にて安全性と有効性を検証する臨床試験を 設立し、平成23年度より開始する予定にしています。
"臨床試験への適切な症例の登録を円滑にどのよう
に行うか
本邦におけるがん治療薬の開発は、研究成果を非 臨床試験にて裏付けして治験に持ち込むことから始 まります。この治験とは、日本における治療薬とし
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て承認申請を得るための臨床試験で、日本独自の形 式のものです。その内訳は、安全性の検証を目的と した臨床薬理試験(第'相試験)、有効性の検証を 目的とした探索的試験(第(相試験)、そして症例 の生存期間延長の検証を目的とした検証的試験(第 )相試験)からなります。まず、治療薬が安全に投 与される推奨用量を決定して、有効かどうかを検証 して最終的に患者の寿命を延ばせるか否かを明らか にして診療の現場に登場することになります。しか しながら、本邦では治験という治療に医師や患者が 不慣れなために一向に進まないというのが現状です。
治験に対する誤った考えを補正し、より良い治療を 提供する目的で、我々は福岡大学医学部産婦人科を 中心にして3つの大学と総合病院8施設の11施設で の臨床研究を周産期および腫瘍の領域で本年度10月 より開始しました。今後、臨床研究を活性化しなが ら、新たな治療(治験)への参加も円滑に行えるよ うなネットワーク作りを行っていきます。
!対象となるがん患者における標的分子の発現を評 価できるのか
治療経過中に腫瘍が発現する標的分子を簡便に評 価できることが重要です。我々は、独自に開発した 方法で標的としている分子を血中・体液中で容易に 測定することが可能となっています。現在、既存の 治療経過に伴う標的分子HB-EGF値の変動を評価 しています。
これまでの成果では、!卵巣癌症例の初発の症例 はほとんどの症例の腹水中・血中HB-EGF値は高 値を示し、術後に低下します。"完全寛解症例(非 胆癌症例)は100pg/ml未満と低値を示します。# 種々の抗がん剤の投与を受け再発を繰り返している 症例の血中HB-EGF値は、比較的低値を示す傾向 があります。$同一症例においては、血中HB-EGF 値は病状の増悪に伴って上昇します。%腹水中HB- EGF値と血中HB-EGF値とはほぼ同様の値を示し、
有意な相関関係を示します。&血中HB-EGF値は、
乳癌症例や胃癌症例でも高値を示します。以上の成 果をまとめて近日中に論文報告する予定です。
おわりに
EGF Family(上皮系増殖因子ファミリー)および その下流で機能する分子を標的とした治療開発が進
まない中、我々が唱える「リガンドを標的とする治 療薬開発」に対する研究が世界的に注目されてきま した。そこで、高分子化合物であるCRM197とは別 にHB-EGFの機能を抑制する低分子治療薬の創薬 開発として、福岡大学医学部産婦人科および生化学 講座、東京大学医科学研究所腫瘍細胞社会学分野、
理化学研究所ケミカルバイオロジー研究領域(和光 市)、大阪大学微生物病研究所細胞機能分野との共 同研究を本年度より開始しました。現在、Chemical Arrayを 行 う た め のHB-EGF遺 伝 子Constructの 作 製を終了し、今年度9月よりArray Screeningが始 まります。また、他に幾つかの標的分子に対しても Chemical Arrayを用いて低分子標的治療薬の探索を 予定しています。
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研究機関近況
資源循環・環境制御システム研究所
「NEW 環境展への出展」
資源循環・環境制御システム研究所 管理事務室 室長
田 代 幸 博
アジア最大の環境展 示 会 で あ る「NEW環 境 展 2010」に出展。開催期間は平成22年5月25日〜5月 28日の4日間で、お台場の東京ビッグサイトで開催 されました。主催者側発表で、出展社528社、2,036 小間、トータルで17万人の来場者があったとの事で す。
来場者は様々な分野の方がおられ、企業、自治体、
NPO、一般市民、学生等で、環境に関して非常に強 いニーズと興味を持ってブースを訪問されます。
福岡大学OBの方も大変多く来られ、福岡大学の ロゴを東京で目にする事は大変めずらしく、スクー ルカラーの大きなのぼりを見て立ち寄られたとの事。
大学の近況を懐かしそうに聞かれたり、ご自身の東 京でのご活躍の様子を話されていました。
又、今回展示会場で資源循環の学生のインターン シップが行われ、展示を実施している企業で、真剣 に企業内研修に取り組んでいる様子が伺えました。
環境問題に関してのニーズは、様々な分野で多く あり、解決策としてのシーズを熱心に求めておられ、
福岡大学ブースも多くの方が訪問されました。
福岡大学ブースを訪問される方々は、研究内容に ついて大変熱心に質問され、資環研の主要な研究
テーマである廃棄物問題はまだまだ多くのニーズが ある様子が伺え、解決策を求めて大勢の方が来られ ました。
「北九州エコタウン」についての関心も非常に高 く北九州市の先進的な環境関連の事業に多くの皆さ んが興味を持たれ、20を超える実証実験施設や、25 のリサイクル工場が1つのエリアに集中している状 況に大変驚いておられました。日本の環境事業を リードする「環境モデル都市」である北九州市。そ の重要な位置づけにあるエコタウンの中で、中心的 な研究所である資環研を是非訪問してみたいとの来 場者も多くありました。
今回の展示会出展の主目的は、ニーズとシーズの マッチングであり、来場者のニーズをいかに引き出 すか。会場でのすり合わせだけでは決して十分なも のではなく、ニーズが解決できる可能性をいかに感 じとって頂くか。それが、マッチングの入り口のよ うに思います。「NEW環境展」への展示は今回で 5回目となりますが、企業からの相談は年々増加傾 向にあります。今回は特に硫化水素・汚染土壌問題 に関しての問い合わせが非常に多く、共同研究の打 診もいくつか出てきており、実効ある展示会出展と
NEW 環境展入場口 福大ブース来場者
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なりました。
このような機会を通して企業・大学のマッチング が進み、社会の抱える問題が少しでも解決できれば と思います。
テレビ局(日本テレビ)の取材 企業との相談
大学院生のインターンシップ
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研究機関近況 高機能物質研究所
高機能物質研究所の平成2 1年度事業目的と成果
工学部化学システム工学科准教授
三 島 健 司
はじめに
高機能物質研究所は、福岡大学の薬学部・理学 部・工学部の教員・研究者が中心となって、平成12 年に文部科学省(当時、文部省)のハイテクリサー チセンター整備事業として設置認定を受け設立され、
平成22年、10周年を迎えました。高機能物質研究所 では、専門性を考慮し、 予防薬学研究部門 と 階 層生命科学部門 からなる二つの部門が系統的に研 究を行っています。
高機能物質研究所では、平成21年度の事業目的を、
「食による疾病予防と健康的長寿の増進を目指した 高機能性食品の新規開発」と定め運営してまいりま した。 予防薬学研究部門 では、薬学部・工学部 を中心としたスタッフにより、1)海藻由来キサン トフィル類の生活習慣病予防・改善効果、2)米国 の健康食品シチコリンの空間記憶障害改善効果、
3)ヤマブシタケの脳保護作用、4)クリーンマン ナンの抗肥満・抗糖尿病作用などが明らかにされま した。さらに、5)神経保護作用を有するサフラン
成分クロシンの化学合成による最適化研究、6)ア レルギー疾患や自己免疫疾患の発症・進行予防物質 を探索するための培養細胞を用いたスクリーニング 系の確立、7)超臨界二酸化炭素を用いた健康食品 のマイクロカプセル化研究、8)カンナビノイド受 容体のリガンドである2-AGの肺上皮細胞に対する 抗菌ペプチド誘導作用の解析などが行われ、がん、
免疫、炎症をキーワードとする高機能性食品の新規 開発を目指すべく成果が示されました。有害な有機 溶媒を一切使用せずに、生理活性物質を天然物から 抽出・分離する技術として実用化に成功した超臨界 二酸化炭素を用いた食品製造装置の一例を図1に示 す。 階層生命科学部門 では、理学部を中心とし たスタッフにより、「老化」を外的・内的環境要因 に対する生体適応システムの変容・破綻として捉え、
その分子基盤を解明してまいりました。本年度の成 果として、1)イエシロアリ触覚感覚子の種類と分 布、及び温度選択行動、2)トリアザ環銅(!)錯 体によるリン酸ジエステルの加水分解反応、3)ナ
ノ粒子γ-フェライトLB膜の磁気特性とシミュレー
ション、4)非対称結合をもつ素子集団のリズムの ゆらぎ、5)ハブ血清タンパク質SSP-1の機能解 析、6)ジメチルスルホキシド/水混合溶媒中にお け るGNNQQNYア ミ ロ イ ド 様 線 維 の 溶 解 機 構、
7)ベンザインとアミノ酸エステルとの反応、8)
ミトコンドリア内に発生する脂質過酸化物感受性蛍 光プ ロ ー ブ 開 発、9)LASP-2とF-ACTINの 結 合 様式解析、10)ミツバチ脳内神経回路の多面的解析 などの研究成果が発表され、他学部とも相互に連携 することで生まれる高度技術の開発とシーズ提供に よる社会貢献の可能性が示されました。
活躍の場をひろげる高機能物質研究所
また、本研究所のメンバーが中心となって、平成 図1 実用化に成功した超臨界二酸化炭素を用いた製造装
置;この装置を用いると、有害な有機溶媒を用いずに、生 理活性物質を天然物から抽出・分離することができる。
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21年度経済産業省の委託事業である全国中小企業団 体中央会・平成21年度ものづくり分野の人材育成・
確保事業に対して、本学の複数の学部のメンバーが 連携して申請した「複数ニーズ対応文理融合型のも のづくり講座」が採択され、高機能物質研究所にて 開発された多くの研究成果・技術を基盤とした新規 の人材教育プログラムを実践しました。さらに、文 部科学省平成21年度公募型補助金・教育研究高度化 のための支援体制整備事業に対して、本学が申請し た「ワンキャンパス集積型総合大学の教育研究高度 化推進支援プロジェクト」が採択されました。この プロジェクトにおいても、学部の枠を超えて連携す る高機能物質研究所の多くのメンバーがそのテーマ
!「ニーズ対応型物づくりによる医療・看護・介護 システムの教育研究」と、テーマ"「バイオストレ ス応答の制御機構研究教育拠点」の中心となって活 躍しました。これらのプロジェクトにおいは、本学 の高機能物質研究所所属の研究者以外の多くの研究 者も参画し、より複合的な取組が可能となりました。
例えば、テーマ!では、医・薬・理・工・スポーツ 科学・経済学部のスタッフが、学部の枠を超えて、
1)開発系、2)設計系、3)評価系からなる組織 により、系統的に教育研究高度化のための支援体制 整備が行われました。ワンキャンパスの特性を活か し、医療・看護・介護と、ものづくりのベテランが 医工や看工連携により、社会で必要とされる器具な どの情報を組織的かつ系統的に収集し、ニーズに対 応した医療機器や看護・介護用装置・器具を開発・
改良する高度な教育研究環境の整備を行うことがで きました。このテーマ!でも、高機能物質研究所の 予防薬学研究部門 が中心テーマとしている「食 による疾病予防と健康的長寿の増進を目指した高機 能性食品の新規開発」をより包括的に捉えるため、
予防医療に重点をおいて、医療現場の実際の声を調 査し、医学部との連携も強化しました。その結果、
脳梗塞などの原因となる血管の閉塞(詰まり)を引 き起こすプラークやその原因となる体内のコレステ ロールをターゲットして研究・教育を行いました。
具体的には、開発系・設計系・評価系チームが連携 し、地域医療スタッフ・工学系教育研究員が参加で きる討論の場を学内にて週に1度設ける組織作りを 行いました。脳梗塞の頻繁に起こる現場として問題
になっていた温度差の大きい住宅の浴室に関しては、
工学部の建築学科と連携し、赤外線モニター通信技 術を活用しています。また、医学部にて開発した体 内コレステロール溶出薬に関しては、体内での過剰 分解を抑制するために薬物送達技術として、高機能 物質研究所で開発された薬剤のカプセル化技術が検 討されています。介護の電動ベッドなどで問題と なっている稼働率を調査するシステムを看工連携に より検討しました。手術・介護・教育などの技術の 向上を目標とし、赤外線イメージング装置により脳 の活動をモニターし、技術およびその伝承を高度化 する教育システムの開発、福祉機器の開発、遠隔地 健康モニタリングシステム、認知症予防効果のある 介護装置、超音波併用型投薬システム、高機能物質 研究所で開発された脳に良い食べ物を利用したアン チエイジング介護システム、評価法を利用した新規 教育システムおよび優れた細径鉗子の開発などの要 素技術についても開発・検討しました。これらの教 育研究支援整備を通じて得られた成果を、国際的な 学会、論文に発表し、講演会、講習会、公開講座に て、広く情報を発信することで、それらプロジェク トの意義を広く情宣しました。教育研究を高度化す る支援策として、従来の学問領域を超えて学部横断 的に複合領域の学問研究を担う教育研究活動を支援 するように、複合領域的な講演会ならびにシンポジ ウムなどを開催し、出張講義などを含む調査・情宣 活動を行いました。テーマ!で改善・整備された人 材確保の状況として、新設されたプロジェクト推進 室から、テーマ!にはポスドク(PD)9人(この 内3人は、海外の研究員であり、国際化が進んだ)
およびリサーチアシスタント(RA)5人、事務ス タッフ1人が配置され、研究支援体制が強化されま した。テーマ!では、平成21年度に8人の学位取得 者があり、学位取得後、現在、全員が研究職に従事 して(就業・就職率100%)います。さらに、平成 21度採用したPDの内、平成22年度より工学部にて 准教授として1人、医学部にて助教として1人が、
福岡大学の正職員として採用されました。また、イ ンドネシア科学技術省研究所に1人正職員が研究者 として復職しており、博士課程後期への進学やPD 研究員が職を得ることに対する不安を払拭する体制 づくりを進展させました。また、設備としては、複
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合領域の高度な教育研究で重要となる脳の活動をモ ニターする赤外線イメージング装置を設置し、研究 教育環境をより整えることができました。図2に脳 の活動をモニターする赤外線イメージング装置とそ の測定例を示す。これにより、学際的な交流がより 活性化され、学部の枠を超えて複合領域の学術論文 を作成しました。教育研究プロジェクトによって得 られた成果としては、複合領域的な9回の講演会な らびに17回のシンポジウムなどを開催(主催・共催 を含む)した。また、出張講義などを含む調査・情 宣活動(55件)を行いました。これらの啓蒙活動に より、大学院のみならず学部教育研究において、文 系学生が工学研究科へ進学するなど従来なかった文 理融合的な複合領域にて、教育研究の成果をあげま した。
さらに発展する組織へ飛躍
このように福岡大学の教育研究面において高機能 物質研究所およびその構成メンバーが果たしてきた 役割は大きいと思われます。今後、急速な高齢化が 社会問題となる東アジアにおいては、医療・社会福 祉といった高度で複合領域的な問題が重要となると 考えられます。それらに対して、福岡大学としても、
高度化した複合領域を対象とできる組織体制作りが 望まれると思われます。既に、工学部では、それら に対応できる学部体制の改革も検討されているよう です。今後の福岡大学のより大きな発展のためには、
高機能物質研究所およびその構成メンバーが、さら に組織の枠を超えてより大学全体の活性化に貢献す ることが望まれています。
"
!
#
図2 脳の活動をモニターする赤外線イメージング装置と その測定例;!近赤外光脳機能イメージング装置(fNIRS)
島津社製 FOIRE-3000、"測定状況、#言語流暢試験を行っ た場合の前頭葉における脳血流の変化
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研究機関近況
環境科学技術研究所
産業災害の防止に向けた研究
工学部化学システム工学科助教
加 藤 勝 美
助教
東 英 子
教授
中 野 勝 之
1.はじめに
今日、数多くの化学物質が産業の現場で用いられ、
様々な場面で私たちの生活に貢献している。しかし ながら、化学物質が原因となる火災・爆発災害は少 なくなく、これら災害が人的・物的被害のみならず、
環境問題まで発展する場合もある。産業の持続的発 展のためには、これら災害を防止し、安全・安心な 社会の構築が必要である。
この問題に対して、本研究所では、物質およびシ ステム安全の2つの観点からのアプローチを試みて いる。本報告では、昨年度実施した物質安全に係る 研究の一例として、ニトロセルロース(NC)のフィ ジカルハザードに関する研究について報告する。
NCは、セルロースのピラノース骨格にONO2が 置換した化学物質であり(図1)、ラッカー塗料や 火薬などの原料として使用されている。一方、NC は、室温で徐々に劣化し、自然発火する性質があり、
近年においてもNCの自然発火が原因とされる爆発 事故が起きている。
本研究では、NCが自然発火する条件を明らかに することを目的とし、過去に起きたNC貯蔵中の事 故事例を収集し、事故時の気温および湿度変化に関 して検討を行なった。また、事故時の気温および湿 度の解析から推定された自然発火しやすい条件下に おけるNCの発熱挙動を実験的に観察した。
2.事故発生時の気象状況
NCの自然発火が原因とされる事故事例を文献
[1−4]から36件収集した。また、事故当日及び 事故前30日間の気温と湿度のデータ[5、6](事 故発生場所に近い気象観測所のデータ)を収集し、
事故との関連性について検討した。
その結果、最高気温が30℃、絶対湿度が20#/! を超える高温多湿の日が事故発生前の10日間以上継 続した場合(図2aおよび図3a)や最高気温およ び絶対湿度が事故発生前の10日前から上昇する場合
(図2bおよび図3b)に事故が起きる傾向がある ことが分かった。一方、相対湿度とは相関性がなかっ た。以上の結果から、空気中の水蒸気が関係した反 応が高温になることにより促進され、自然発火する ものと推測した。
3.実験による検証
NCの発熱分解に及ぼす水の影響を実験的に検討 した。
3. 1.試料及び実験方法
乾燥したNC100"(旭化成ケミカルズ社製、窒
素量10.6wt.%)および同NCに蒸留水を2.5、5、
10、20、30"それぞれ添加し実験試料とした。実験 試料の発熱挙動を加速速度熱量計ARC(加熱−待 機−探索モード)を用いて観察した。同測定は、密 閉された反応容器内の試料を加熱し、試料から0.02 K/$以上の発熱が検出された場合、試料温度と装 置内の温度が等しくなるように制御され、擬似断熱 条件下における試料の温度変化を観察することがで きる。本研究では、0.02K/$の発熱が検出された 温度(発熱開始温度)を安定性の指標として用い、
図1 ニトロセルロースの化学構造
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乾燥NCおよび水を添加したNCの安定性を評価し た。
3. 2.結果および考察
ARC測定で得られたNCの温度変化を図4に、
純水の添加量と発熱開始温度との関係を表1に示し た。水を添加したNCは、乾燥NCと比較して、発 熱開始温度が低下し、不安定化しているものと考え られる。その中でも、100!のNCに対して2.5!の
水を添加したNCが最も不安定化し、104℃から発 熱を開始した。
水の蒸気圧から104℃における反応容器中の水の 相状態を考えると、水を添加した全ての試料で気液 相平衡状態にあり、2.5!の場合、液体として存在 する水分量が少ない(表1)。したがって、NCは 水蒸気と反応することによって発熱し、発生した反 応熱が液体の水へ移動する、あるいは、気化潜熱に より冷却されるものと考えれば、液体として存在す 図2 事故発生前30日間の最高気温の変化※
a:高温の日が事故発生前の10日間以上継続する場合 b:気温が事故発生前の10日前から上昇する場合
※横軸は事故発生日から遡って数えた日数であり、「0」は事故発生日を示している。
図3 事故発生前30日間の絶対湿度の変化※
a:高湿度(絶対湿度)の日が事故発生前の10日間以上継続する場合 b:絶対湿度が事故発生前の10日前から上昇する場合
※横軸は事故発生日から遡って数えた日数であり、「0」は事故発生日を示している。
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る水分量が最も少ない2.5!の水を添加した場合に 発熱開始温度が最も低下した実験結果を説明できる ものと考えた。
2.の検討では、事故と絶対湿度との間に相関性 が見られ、水蒸気によって不安定化するものと推定 したが、この結果と合致する結果であると言える。
4.まとめ
本研究では、NCが自然発火する条件を明らかに することを目的とし、過去に起きたNC貯蔵中の事 故時の温度および湿度変化に関して検討を行なった。
また、水を添加したNCの発熱挙動をARCを用い て観察した。その結果、気温・湿度の調査および ARC測定何れの結果からも水蒸気がNCの自然発 火を促進させることが推察された。このため、NC の貯蔵中には温度、湿度の管理が重要であり、また、
外気が容器内部に侵入しないよう、容器や包装の管 理が重要であるものと考えられる。
5.参 考
[1]北川徹三,安全工学,10",48(1971).
[2]平野敏右, 環境・災害・事故の辞典 ,pp.354
−372(2001),丸善.
[3]吉田忠雄,月刊消防,7#,1(1985).
[4]リレーショナル化学災害データベース,
http://riodb.ibase.aist.go.jp/riscad/index.php
[5]気象庁ホームページ,
http://www.jma.go.jp/jma/index.html.
[6]気象庁編集,地上気象観測資料(気象台・測 候所).
表1 発熱開始温度および試料中の水の相状態
Water amount
[!]
Heat release Temperature
[℃]
Gaseous water amount at104℃[!]
Liquid water amount at104℃[!]
0 149 0 0
2.5 104 1.60 0.90 5 127 1.60 3.40 10 130 1.60 8.40 20 128 1.60 18.4 30 123 1.60 28.4 図4 水を添加した NC および乾燥 NC の温度変化
―21―
研究機関近況 身体活動研究所
生活習慣病予防を目指したエピジェネティクス研究
身体活動研究所 ポストドクター
須 藤 みず紀
スポーツ科学部助教
飛 奈 卓 郎
スポーツ科学部教授
桧 垣 靖 樹
スポーツ科学部教授
清 永 明
身体活動研究所所長 スポーツ科学部教授
田 中 宏 暁
1.はじめに
我が国では急増する生活習慣病ならびに高齢化に 伴う介護対策は重要な課題であり、それらの発症と 身体活動量の関係を示唆する科学的エビデンスが蓄 積され始めている。しかしながら、未だ十分とはい えず、数多くの身体活動に関する研究課題が残され ているのが現状である。特に、日本人を対象とした 身体活動量や体力と生活習慣病予防、介護予防に関 するエビデンスは極めて少ない。とりわけ、遺伝子 が関与しているエピジェネティクスからの観点での 情報は乏しい。近年、喫煙や食習慣などの環境要因 によってDNAのメチル化が起こり、生体の防御反 応に異常をきたすことが報告され(Carcinogenesis
, 2 0 0 5&2 0 0 7
)、生活習慣病とエピジェネティクな遺伝子発現制御の研究が注目されつつ あ る(Am J Clin Nutr
,2 0 0 7
)。エピジェネティクスは、「DNA の塩基配列に変化を起こさず、かつ細胞分裂を経て 伝達される遺伝子機能の変化やその仕組み」と定義 されている。エピジェネティクスの基本因子は、DNAのメチル化やDNAが巻き付いているヒストン タンパク質の修飾(アセチル化、メチル化など)な どである。特にDNAのメチル化は重要であり、DNA が高度にメチル化されると遺伝子発現(転写)が抑 制され、その機能が失われることが明らかになって いる。一方、スポーツ科学から医療・創薬まで多岐 にわたる分野で遺伝子多型研究が進められているが、
遺伝子多型で説明できる事象は当初の予想より少な いと考えられている。そこで、多型解析に加え上記 のエピジェネティクな調節機構を同時に検討し、遺 伝情報と環境要因の交互作用を解明する。これによ
り、遺伝情報から見た生体防御や適応のメカニズム、
生活習慣変容により予防が有効とされる対象者の特 定、さらには生活習慣病予防対策のエビデンスを提 示することができる。現在までのところ、生活習慣、
特に運動習慣とエピジェネティクスについては未だ 報告されておらず、興味の持たれる分野である。本 稿では、運動習慣による身体における適応について エピジェネティクスという身体活動研究所に新たに 導入したPyrosequencingTM法によるDNAメチル化 の解析に使用するPSQ96MA装置を用いた研究につ いて、進捗状況を報告する。
2.DNA メチル化とは
細胞内にあるDNAは、ヒストンタンパク質に巻 きつき複合体(ヌクレオソーム)を形成し、ヌクレ オソーム構造の集合によってクロマチン構造が形成 され、さらにその集合体によって染色体の基本構造 が構築される。調和のとれた個体発生や細胞分化の 過程では、このようなクロマチンや染色体の構築が 正しく行われ、適切に制御される必要がある。こう した塩基配列の変化を伴わず遺伝子を活性化したり、
不活性化したりする後成的修飾をエピジェネティク スという。
その要因の一つであるDNAのメチル化は、塩基 配列を新たにメチル化して遺伝情報を書く、細胞が 増殖する過程で維持する、必要に応じて消去すると いう過程の総和として決定される。特に、DNAメ チルトランスファーゼとその相同分子としてこれま で5つの遺伝子が報告されている。しかしながら、
ゲノムのどの領域がどのように認識されて、メチル
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図1.DNA メチル化の解析装置 PSQ96MA 化されるのかについてはこれから解決されるべき問 題が多く残されている。
3.Pyrosequencing
TM法の測定原理
PyrosequencingTM法は、DNAポリメラーゼの伸長 反応をリアルタイムに検出することで塩基配列を解 読するDNAシーケンス(DNAを構成するヌクレオ チドの塩基配列を決定する)の新手法である。DNA サンプルを予めバイサルファイト処理を行なうとメ チル化シトシンは変換されず、非メチル化シトシン のみがウラシルに変換される。シーケンス反応とし てウラシル(U)はチミン(T)として表現される ことから、バイサルファイト処理前後で生じるCと T(U)の差異を配列データとして用いることがで きる。バイサルファイト処理し、そのDNAをテン プレートとしてDNAを増幅させるポリメラーゼ連 鎖反応(PCR)を行い、メチル化サイトをC/Tの 一塩基多型としてアレル(対立遺伝子)頻度解析を 行うことでDNAメチル化比率を測定する。
4.研究方法
メチル化解析に用いるPCRプライマーの設計に は佐賀大学医学部分子遺伝学・エピジェネティクス 分野の副島英伸教授の協力を得て、骨格筋細胞分化、
特に赤筋あるいは白筋の分化にエピジェネティクな 変化が関与するか、について検討を進めている。本 機器(PSQ96MA装置、図1)の導入によって下記 の計画で研究を遂行中である。
A.骨格筋運動による酸化ストレス産生が糖代謝機 能に及ぼす影響
活性酸素種は、組織の障害や炎症を引き起こすこ とから悪役として考えられてきた。しかしながら、
我々は、一過性の筋運動後で生じる活性酸素種の一
種である一酸化窒素(NO)と過酸化水素(H2O2) がそれぞれ独立したシグナル伝達系を介して糖取り 込みの亢進における重要な役割を果たすことを示し た(Higaki et al., Am J Physiol
, 2 0 0 8
)。そこで、活 性酸素種が長期トレーニングおよび筋不活動モデル において糖代謝関連遺伝子発現とタンパク質合成を 制御する一つの因子となり、また、それらの発現遺 伝子におけるDNAメチル化(エピジェネティクス な調節)のトリガー作用を担っているのではないか という仮説の基、動物モデルを対象に研究を遂行中 である。B.FURCT(福岡大学無作為割り付け介入実験)
研究試料の解析
実験動物モデルを用いた知見をもとに、FURCT 参加者より得られた筋生検サンプルや血液から抽出 したDNAを用いて、解析を進める予定である。す なわち、運動介入、食事制限介入、運動+食事制限 介入者で観察される生体適応反応とエピジェネティ クな変化を脂肪量減少の程度(内臓、皮下、肝脂肪)
や有酸素作業能の増加の程度を層別化して、相互作 用を解析する予定である。
C.コーホート研究試料の解析
我々は平成17年より、日本多施設共同コーホート 研究(Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study:J-MICC Study、佐賀地区代表:田中恵太郎)
に参加し、約1万2千人の血清、血漿及びDNA(末 梢血)の収集を完了した。さらに生活習慣として特 に身体活動・運動に着目し、質問紙の評価に加えて 歩数計を用いた身体活動量の測定(10日間実施)を 終了している。身体活動の量及び強度を評価した大 規模疫学調査として世界初である。
実験方法として、1万2千人のサンプルを用いて 生活習慣として運動適応に関連する遺伝子群の多型 解析とそれらプロモータ領域のDNAメチル化解析 を進め、生活習慣と身体特性(体脂肪率やウエスト 囲など)、血液検査値との関係を遺伝子多型及びエ ピジェネティクス要因を考慮に入れて検討する。
5.おわりに
運動 、すなわち骨格筋における収縮は、メカニ カル、低酸素、代謝ストレスなどを含んだ複合的ス トレス刺激として捉えることができ、加齢や筋疾患
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による筋萎縮予防、さらにメタボリック対策など広 範囲において実施されている。一方では、運動に対 する生体応答には個人差が存在するにもかかわらず、
先天的な個人の特性に適応した運動プログラムは確 立されておらず画一的になりやすい。生理学的及び 分子レベルにおける個人の特性などを考慮した生活 習慣病予防を目指した運動プログラムの構築には、
各個人の骨格筋における分子レベルの特性が情報と して必要であり、エピジェネティクな視点からの研 究はそれらの解明に繋がることが期待される。
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