摩擦切断に関する研究
著者 古村 義彰, 豊島 敏雄
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 28
号 1
ページ 141‑150
発行年 1980‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/4387
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告
第
2 8
巻 第1
号 昭和田年8
月摩 擦 切 断 に 関 す る 研 究
古 村 義 彰 * 豊 島 敏 雄 *
Experimenta工 Study on Friction Cutting Yoshiaki KOMURA. Tosh工o TESHIMA
(Received Dec.
17
,1979)
Friction cutting has a convenient characteristic that is negrisib1e smal1 wear of a friction whee1, but is used not frequent1y than the circular saw method or the abrasive whee1 method for cutting, and the reports about the friction cutting are few ・Therefore,in order to obtain information concerning the characteristics of friction cutting,
experimental studies have been carried out, and the resu1ts obtained are as fo11ows.
1) In friction cutting of a steel sheet, friction speed about 40m/s
1 4 1
and contact pressure :arger than O.6kg/mm2are suitab1e cutting conditions.
2) The cut‑off speedand friction force are sma11er for more easi1y oxidized material among ferrous meta1s used in the experiments.
3) The cut‑off speed under oxygen jet increases twenty times as 1arge as that in the air.
4) The characteristics of friction cutting are 1itt1e influenced by the nature of friction whee1 materia1s.
5) When the contact pressure in the abrasive whee1 method is one tenth of that in friction cutting, the cutーoff speed in the abrasive whee1 method is a1most equa1 to that in friction cutting, but the cutting force ratio in the abrasive wheel method is considerably larger than the friction coefficient in friction cutting.
1 緒 肩
摩擦の技術には二面があり,その一面は軸受などのように摩擦摩耗を小さくしようとする場合で あり,もう一面は逆に大きい摩擦摩耗を積極的に利用しようとする場合であり,摩擦溶接,摩擦切
*
機械工学科断さらには車両の車輪と軌道およびブレーキ片との摩擦などは後者に相当するO 摩擦切断は大出力 の原動機を必要とし,音響が強烈である,切断面近傍に熱の影響が残り寸法精度が良くないなどの 欠点があり,特殊用途以外にはあまり実用されず,その研究も少ない。1)‑3)しかしd焼入鋼のように 高速度鋼丸のこでは切断しにくいようなかたさの高い材料でも短時間で切断でき,工具としての円 板の摩耗は丸のこや切断砥石の消耗に比べるとはるかに少なく,長所を生かせばかなり利用価値の 高い切断法と思われるO そこで主として鋼板を被切断材として,摩擦切断の諸特性を実験的に明ら かにし,摩擦切断利用の指針を得んとしたO
2
摩擦切断の原理摩擦切断は高速高荷重下の摩擦摩耗現象を利用するものであるO 高速高荷重ドの厳しい摩擦条件 下では接触面のせん光温度のみでなく,摩擦面平均温度もかなり上昇するつ摩擦切断では工具の円 板外周長さに対して被切断材の接触長さがはるかに小さく,円板は一回転して次の接触位置にくる までに空気中に放熱して,その摩擦面温度は低くなるが,被切断材は連続的に摩擦されて,その摩 擦面平均温度は高く赤熱状態になっている。そのため高温軟化している被切断材の摩擦面表層は,
円板摩擦面上の凝着物とつ部によって容易にアブレシブ摩耗的に摩耗し,火花を飛ばしながら急速 に切断される。また被切断材摩擦面の軟化層は粘度の高い潤滑剤に近い働きをするため,摩擦切断 中の摩擦は境界摩擦的性格を示すO すなわち摩擦切断では非常に比摩耗量が大きいにもかかわらず,
摩擦係数はかなり小さい。このような高速高荷重下の摩擦摩耗の一般的諸特性については,別報4)‑8) で実験的,理論的に明らかにしたO
3
実験装置および方法実験装置は既報4),5)のものを使用したので,ここでは簡単に述べることにする。すなわち直径約
410
IIIJIl,厚さ4 .0醐に旋削仕上した炭素鋼 s350
円板に,板状試片を錘により一定荷重で押しつけ て摩擦切断し,そのときの摩擦力をひずみゲ ジで検出し,切込み量は差動変圧器で検出し,それ ぞれ電気的にペン書き記録計によって記録させたO 円板材料としては上記の炭素鋼のほかに銅円板 を使用し,被切断材としては主として厚さ9
仰の炭素鋼s350
,ステンレス鋼sus27
(304),鋳鉄 F020
を使用したoそれらの材料の化学成分およびかたさを表l
に示すO さらにふん囲気の影響を 調べるために,摩擦部分を容器内に設定した別の実験装置7)を用い,その場合に使用したふん囲気 気 体 を 表2
に示すO実験条件の範囲 は,おおよそ摩擦 速 度
2
1.5
~1 0 7 . 3
表
1
試 験 材 料 の か た さ と 化 学 成 分m/s ,見かけの接 触 圧 力
0 . 0 5
~ 1.2kg
試1杭
q
/ 棚2である。また切断溝幅は
4酬であり,接触面
積はそれを変えた実験の場合以外は4
X 9111m2一定であるO
表
2
気 体O2
N2
Cr 19
.18
水 蒸 気 濃 度 ppm
1 4 3
実験結果および考察
空気中炭素鋼円板の場合の基本特性
4
4
・
1的
¥ EE
接 触 圧 力 の 影 響 4
・
1• 1‑摩擦速度 21.7m/s CI 42.9 11
• 64.4 11
ct 85.8 11
o 107.0 11
1.
2
1.0
, .
" I
! J 1 1 1
i
I I川 パ
1 M ,4.0
・ 1 ' 1 /
0.2 0.4 0.6 0.8 接 触 圧 力 kg/mm2 図
l
は炭素鋼s 3 5 c
を摩擦切断したときの10 ‑
1 線摩耗速度と接触圧力の関係を示す。ここで 倒矧
~ 艶
10 ‑
25
露 線摩耗速度とは単位時間に9
1/111厚さの板をど れだけ切り込めるかを示すもので,切断能率 に関連した値であるO実験結果は線摩耗速度 の低い群(低荷重 域)とそれより約2
けた高 い群(高荷重域)に分かれており,前者は主として Fe304を生ずる mildwear に,後者 3 n
n υ
u
t
‑
は主として FeOを生ずる severewearに相 当し,摩擦切断は当然、後者の高荷重域で行わ
線摩耗速度と接触圧力の関係 図1
れるO この条件では図
2
に示すように,砥石切断の場合と同様にはげしく火花を飛ばし,かなり速い線摩耗速度で、切断が進行するO
円板外周に接線方向に働く摩擦 図
3
は切断抵抗と接触圧力の関係を示すO ここで切断抵抗とは,力で,切断の所要動力に関連した値であるO 全般的に切断抵抗は接触圧力に比例的に増大し,摩擦 速度が高いほど小さい。図中接触圧力の小さい範囲で測定点が直線からはずれて低下しているが,
域に相当しているO
この範囲は図 lで述べたmiユdwear
.1李燃41変 21.7 m/s CI 42.9 11
• 64.4 "
ct 85.8 "
o 107.0 11
1 2
10
QU
切MA
F h U S A τ
u h M域 主
B
2
1.
2
0.8 1.0 kg/mm2 0.4 0.6接 触 圧 力 0.2
O
切断抵抗と接触圧力の関係 図
3
摩 擦 切 断 中 の 状 況 図
2
摩 擦 速 度 の 影 響 4
・
1・
2図4は高荷重域の代表として,接触圧力
. o
8 kg /1111112の場合の線摩耗速度と摩擦速度の関係を示すO図1からわかるよ うに高荷重域では接触圧力が変わっても同様であるO 図5は切断抵抗と摩擦速度の関係を示すO摩 図から摩擦速度約
4 0
ル/ 8に線摩耗速度の極大値がみられるO 図のような傾向は,擦 速 度 の 上 昇 と と も に , 始 め 急 に , 後 ゆ る や か に 切 断 抵 抗 は 低 下 す るO なお参考のために,摩擦切 断 に は 利 用 で き な い が , 低 荷 重 域 の 代 表 と し て 接 触 圧 力
. o 1
kg/棚2の場合も示したO切断機設計の難しさおよび危険性を考慮すると,
摩 擦 速 度 は
100
昨 令 程 度 が 限 度 で あ ろ う と 思 わ れ8
p n v a
‑ Mw
一u
掃 瑚 富 田 相 るO したがって図
1
‑図5
の結果を総合すると,摩 擦 速 度
4 0 n v
色付近で,接触圧力0 . 6kg/
耐 以 上Iが 摩 擦 切 断 の 適 当 な 条 件 で あ る と い え るO
/\ ~メ
1 2 0 kg/mm2
係関の4
一
o h
度
コ
8 m
速
力 士
︒ 度 四 一 E
‑ 4⑥ 童
!
: : i :
鰍 二 擦 抗
j
三 ω
摩 側 一 一 切
払'THり
唱 司 一l d n 4
0 . 1 2
。
1 2 0
接触圧力
0 . 8 kg/mm 2 4 0 6 0 8 0
摩 擦 速 度 m/s線 摩 耗 速 度 と 摩 擦 速 度 の 関 係
1 0 0 2 0
p o a a τ n 4 n u n υ h υ
的
¥
巨
E
樹 刷 用 躍 世
襲
。
図
5
図4
接 触 面 積 の 影 響
4 • 1
・3図
6
は板厚を変えた場合の接触面積による影響を示す。たて軸として比摩耗量をとっているが,こ れ は 単 位 押 付 け 荷 重 当 り , 単 位 摩 擦 距 離 当 り の 摩 耗 体 積 を 示 す 値 で あ るO この場合接触圧力は1.
0 kg/
1I11II2一定であるから,比摩耗量が一定の場合には接触面積に比例して切り取り体積は増大するが,切 込 み 速 度 す な わ ち 線 摩 耗 速 度 は 一 定 で あ るO図 か ら わ か る よ う に , 摩 擦 速 度
2
1.7
昨もの場合には4 2 . 9
IIl,I合以上の摩擦速度では急激に低下 比摩耗量は接触面積の増加によってあまり低下しないが,しているO 図 7は図 6に 対 応 し た 摩 擦 係 数 を 示 すO 摩 擦 速 度 21.7時ゐの場合には接触面積の増加に つれて摩擦係数は低下しているo
4 2 . 9
時ゐ以上では摩擦係数は接触面積によってあまり変わらず,接 触 圧 力 1. 0 k g/mm2
・ 摩 擦 速 度 21.7m/s G 42.9 fI
• 64.4 11
. ¥ C D 85.8 fI
0
.4事 長
0 . 3
ほ 植 医 艶0 . 2
全 体 的 に か な り 低 い 値 に な っ て い るO接触圧力1.0kg/m m2 .摩擦速度 21.7m/s ct 42.9 "
• 64.4 "
ct 85.8 "
71¥¥1
品 宰 事二
1 0 ‑ '
制 緩1σs 掛 起
出足
¥ Nロ 自
0 . 1
10 1 5 2 0
試 験 片 厚 さ
m m 4 0 6 0
接 触 面 積 m m2 接 触 面 積 の 影 響 ( 摩 擦 係 数 )
。
52 0
試 験 片 厚 さ m m
2 0 4 0 6 0
控 触 面 積
mm
2 接 触 面 積 の 影 響 ( 比 摩 耗 量 )1 0 ‑ 6 0
8 0 2 0
。
図
7 8 0
。
図
6
1 4 5
図
6
.図7
を合せてみた場合,高速においては接触面積の増加にほぼ比例して切断抵抗は増大し ているが,切込み速度は逆に急激に低下しでほぼ1/10
に減少しているo それは,被切断材摩擦面 表層の軟化部分が潤滑剤として働き, 摩擦面接触長さの増加とともに負荷能力を急激に増大させる ためであるO そのため板厚が大きくなると切込み速度が急激に低下するO円板外周のおうとつの影響
4 ・2
前述のように,板厚が増大すると切込み速度が急激に低下するO 一般に軸受面積を分割すると,
油溝を切るとき そのための負荷面積の減少よりもはるかに大きい負荷能力の低下をもたらすので,
円板外周におうとつをつけ は注意しなければならないと言われているO このことを逆に利用して,
ることによって,板厚が大きくなった場合の切込み速度の低下を避けることができると考えられるO
円板外周をピッチ円としてモジュール 1.圧力角 ここではおうとつの効果を明らかにするため,
1 4 . 5
0 のホブで歯切りした円板を製作し摩擦切断を行い,単純な円板と比較したO おうとつをもっ た円板のとつ部,おう部はともに円周長さが7'(/2
0 であるO 図8
に示すように,高荷重域では接 触圧力が同じ場合におうとつのある円板のほうが線摩耗速度は大きい。しかし低荷重域のmildw e a r
に変わる臨界圧力は,おうとつのある円板の場合のほうが高くなっ から高荷重域の
seve r ewea r
おうとつのある円板の場合には ているO それは,
鋼円板一S35C試 験片 摩擦速度64.4m/s oおうとつのない円板
. ある円板
10
被切断材摩擦面が空気にふれる機会が多く,高荷重まで摩擦面温度が比較的低く,酸化膜Fe304の 減摩作用が有効に働くためであるO 以上は接触圧
国
¥
E E
力による比較であるが, 実際の切断作業においてj ム
, I J / ,
,
,
rノ。
JII
‑一一....L.
0.2 組
閣
1 0 ‑
1球 温
t
z
単10 ‑
2 同じ押付け力で比較するために,同じ圧力に対しておうとつのある円板では半分の押付け力ですむ ことを考慮して,横軸方向を半分の値に・印の測 定点を左へ移動させると破線のようになる。図か らわかるように,同一押付け力で比較するとおう とつのある円板のほうがはるかに線摩耗速度すな わち切込み速度が大きくなるO 図8は板厚 91/1111の 試験片を用いた比較であるが,上述の結果から円
1.
0 0
.40 . 6 0 . 8
接触圧力 kg/m m2 1O 30被切 板の外周におうとつを設けることによ って, 断材の板厚がかなり大きくなっても切込み速度の
お う と つ の 影 響 ( 線 摩 耗 速 度 ) 図8
低下を避けることができると考えられるO
図9は試験後のおうとつ円 板の外周の外観図であるO と つ部先端側の溝にはかなり多 くの付着物が見られるO した がっておうとつ円板を長期に
試験後のおうとつ円板摩擦面 図9
使用すると,おう部は付着物
おうとつの効果はなくなってくると思われるO そのため円板外周にとくにおうとつを設 けても実用上あまり有利とは言えない。
でうまり,
4
・3 被切断材料の影響図
1 0 .
図1 1
は鉄系材料すなわち炭素鋼8350
. 鋳 鉄F020
およびステンレス鋼8U827(304)
の 比 較 を 示 す 。 こ れ ら の 図 か ら わ か る よ う に , 上 記 の 順 に 酸 化 さ れ に く い 材 料 ほ ど 線 摩 耗 速 度 お よ び切断抵抗は大きい。しかし切断抵抗の差は比較的小さいので,同一切断動力当たりの切込み速度'i
悶 ¥
gg
倒 閣 誕1び1 種世 宮単
10
1 0 ‑
2は炭素鋼よりもステンレス鋼のほうが大きい。
しかしステンレス鋼の場合,摩擦円板外周に不 連続的に付着した凝着物が選択的に厚く成長す るので,切断中振動をともないがちになり,丸 のこによる切断の場合と同様にステンレス鋼は 扱いにくい材料と言えるO
8
切 ..!>I:
起 6 揺 室 4
B
1.
2
鋼 円 板
摩擦速度
6 4
.4m/s oS35C
試 験 片., FC20 .SUS27
112
l0‑3
d 0
.40 . 6 0 . 8
1.0
接触圧力
kg/mm
2図
1 0
被切断材料の比較(線摩耗速度)o 0 . 2 0
.40 . 6 0 . 8
1.0
接 触 圧 力kg/mm
2 図11 被切断材料の比較(切断抵抗)1.
2
4
・4
摩擦円板材料の影響被切断材料として鋼板を用いた場合には,ステンレス鋼の場合よりもさらに凝着がはげしく,振 動のため切断実験を継続することができなかったO必ところで,摩擦円板の平均温度は実測による
と
200 C
以下であり,被切断材の摩擦面平均温10
0銅摩円擦板速‑度
535Cm
試/験s片度よりはるかに低いO したがって摩擦円板材料
3 2 . 2
•
11 64.4 11としての性質の中で,室温におけるかたさ値の
•
96.6 11小さいことはあまり問題にならないはずであるO
i 1
それよりも被切断材との親和性(凝着しやすさ)や熱伝導率のほうが摩擦切断において重要な影
響因子であろうと思われるO それで摩擦円板材 制
1 0 ‑
1 制 料として銅を用い,炭素鋼8350
の切断実験を 躍試みたO 世世
図
1 2 .
図1 3
はそれぞれ線摩耗速度および切断 g援1 0 ‑
1抵抗と接触圧力の関係を示すO 線摩耗速度およ び 切 断 抵 抗 は そ れ ぞ れ 図 し 図
3
の炭素鋼円板 一炭素鋼試験片の組合せの場合の結果と同様の10so 0 . 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8
1.0
1.2
傾向および同様の値を示している。すなわち摩 接 触 圧 力kg/mm
2擦円板材料を炭素鋼から銅に変えてもほとんど 図
1 2
銅 円 板 の 場 合 ( 線 摩 耗 速 度 )影響がないと言えるO さきに被切断材側が銅の 場合には著しい凝着と振動をともなうため実験 が継続できなかったこ左を述べたO それらの違 いは摩擦面温度を考慮して説明できる。円板摩 擦面に対して被切断材の摩擦面ははるかに小さ く,連続的に摩擦されるので,被切断材側摩擦 面の平均温度が一方的に上昇し,その軟化層で せん断されて円板摩擦面に凝着するO そのため 銅円板一炭素鋼試験片の組合せでは,被切断材 の炭素鋼が主としてFeOの状態で銅円板にはく 状に凝着するO 一実験例ではその凝着面積は円 板 摩 擦 面 の 約
40%
であったO この部分は円板の 地の面より高く,実際にはこの凝着物で摩擦さ1 4 7
10
︒ ロ
£
u a
唖
ヲ
‑ 蛍 喝 事
B
銅円板一
S35C
試験片 o摩擦速度32.2m/s
o6 4
.4 "•
9 6 . 6 "
2
O 0 . 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8
1.0
1.2
接 触 圧 力kg/mm
2図
1 3
銅 円 板 の 場 合 ( 切 断 抵 抗 )れ,摩擦円板の銅面が被切断材の鋼と直接接触する機会は少ない。そのため銅円板を用いても,炭 素鋼円板を用いた場合と同様に,被切断材炭素鋼とその凝着物との聞の摩擦現象となり,上述のよ うに円板材料を変えたことによる影響が現われないのであるO さらに,このことから摩擦円板側の 摩耗量はほとんど問題にならないと言えるO したがって円板材料としては,廉価で手軽に得られる 炭素鋼で卜分であり,銅とか丸のとの場合のような刃物鋼を使用する必要はない。
4・5 ふん囲気の影響
炭素鋼の摩擦切断では,主として融点の低いFeOが生成し,それが減摩作用を果し,線摩耗速度 はかなり大きいにもかかわらず切断抵抗は小さい。また既述のように,実験に使用した鉄系材料の 中 で は , 酸 化 さ れ や す さ の 順 (
8U827 ( 304 )→ Fc20→ 835 c
)に線摩耗速度および切断抵抗は 小さくなる。したがって炭素鋼の摩擦切断では,ふん囲気の影響はかなり大きいと思われるO図
1 4
,図1 5
は摩擦円板および被切断 材ともに炭素鋼835c
の場合のふん囲 気の影響を示すO 窒素中では空気中よ り線摩耗速度はかなり大きいが,切断 抵抗も大きい。したがってふん囲気として窒素ガスを使用することは実用上 倒 あまり有効とは言えない。酸素中では 矧
1 0 ‑
1 空気中に対して約2 0
倍の線摩耗速度に 躍 なっているにもかかわらず,切断抵抗 組合 は空気中とほとんど変わらないo
した 襲1 0 ‑
2唱i
m ¥
E E
がって酸素の使用は実用上有効と思わ れるO このふん囲気の実験では密封容 器内で行っているが,それは実用上は 不便であり,実際には切断点近傍に酸 素を噴射する方法をとることになるO
1030 10
摩擦速度
64.4 nV s
。 窒 素 中
@ 空 気 中
・酸素中
0 . 2 0
.40 . 6 0 . 8
1.0
1.2
接 触 圧 力kg/mm
2図
1 4
ふ ん 囲 気 の 影 響 ( 線 摩 耗 速 度 )酸 素 中 で 線 摩 耗 速 度 が と く に 大 き い の は , 摩 擦 切 61
│摩擦速度
64.4
rrVs
断 に ガ ス 切 断 の 作 用 が 加 わ っ た い わ ゆ る 複 合 加 工ω ト
o窒 素 中‑.1 (t空気中 になっているためであるO 摩 擦 切 断 の 初 期 に 被 切 封
4 1
・ 酸 素 中断 材 摩 擦 面 が 赤 熱 状 態 に な る と , 酸 素 に よ る 燃 焼 輯 的 酸 化 の た め の 発 熱 も 加 わ り 被 切 断 材 摩 擦 面 表
5 2
層 に 生 成 す る 流 動 状 の
FeO
は容易に摩擦円板によ っ て か き と ら れ , そ の た め 上 述 の よ う に 線 摩 耗 速 度 は か な り 大 き い に も か か わ ら ず 切 断 抵 抗 は ほ と ん ど 空 気 中 と 同 様 に 小 さ い の で あ るOo 0 . 2 0
.40 . 6 0 . 8
1.0
4
・6 砥 石 切 断 と の 比 較砥 石 切 断 と の 比 較 の た め , 摩 擦 円 板 取 付 部 に 外 径 約
405
mlll.厚さ3
mm. 材 質A36PB(ガラス繊維補強レジノ
イ ド 結 合 剤 ) の 切 断 砥 石 を 取 付 け て 実 験 し た 。 そ の 結 果 を 図1 6 .
図1 7
に 示 すO こ の 実 験 で は 研 削 状 態 と 厳 し い 摩 擦 状 態 を 比 較 す る た め , 砥 石 が 目 つ ま り し や す い よ う に 被 切 断 材 厚 さ(研削方向接触長さ)を5 0
醐と大 きくしているO 見 か け の 接 触 圧 力 は 全 体 的 に 摩 擦 切 断 の 場 合 の 約1/10
程度であるO 図1 6
において摩擦(研 削 ) 速 度 が2 0 . 2
~5 0
.4時ゐの範囲で は , 接 触 圧 力 と と も に 線 摩 耗 速 度 は 増 加 し , そ の 大 き さ は 摩 擦 切 断 の 場 合 の 高 荷 重 域 に お け る 値 と 同 程 度 で あるo6
1.0
rrv合では約0 . 0 7k g
/棚2の 接 触 圧 力 か ら 目 つ ま り の た め 急 激 に 線 摩 耗 速 度 が 低 下 し , 鋼 円 板 摩 擦 の 場 合 の 低 荷 重 域 と 同 程 度 の 接 触 圧 力 に お い て , そ の 数 倍 程 度 の 線 摩 耗 速 度 に な っ て い るO 実 際 の 砥 石 切 断 で は見かけの接触圧力をかなり大きく す る の で , こ の 速 度 は 適 当 な 研 削 速 度を超えていると言えるO 佐藤らの 研 究 ゅ で は こ の よ う な 目 つ ま り に よ り 切 れ な く な る 速 度 を 臨 界 砥 石 周 速 と 称 し , 他 の 条 件 に も よ る が ほ ぼ5 0
接 触 圧 力
kg/mm
2 図1 5
ふ ん 囲 気 の 影 響 ( 切 断 抵 抗 )10
砥 石 円 板
‑S35C
試 験 片。摩擦速度
2 0 . 2 m / s
CT
3 0 . 2
e
4 0 . 3 (
)
5 0
.4∞ 1 L g 61.0
}
1
I ・ 7
1.0
11E
組 閣
10‑
1 'lW掛 擢
10‑
21 0 ‑
31.
0
0 . 8
掛
0 . 6
同
、r芸
‑ サ断ヤ
0
.4 選時0 . 2
。
。 0 . 0 2 0 . 0 4 0 . 0 6 0 . 0 8 0 . 1 0
接 触 圧 力kg/mm
2 図16
砥 石 切 断 に お け る 線 摩 耗 速 度砥 石 円 板 ‑
S35C
試 験 片0 . 0 2 0 . 0 4 0 . 0 6 0 . 0 8 0 . 1 0
接 触 圧 力kg/mm
20 . 1 2
0 . 1 2
図
1 7
砥 石 切 断 に お け る 摩 擦 係 数 ( 研 削 抵 抗 比 〉 1.20 . 1 4
0 . 1 4
1 4 9
~60nv色としており,本実験結果とほぼ一致している。このように線摩耗速度が小さくなる条件に おける試験後の砥石表面は,かなりの部分が砥石表面より高い凝着物で覆われ,その凝着物が主と して被切断材と摩擦している状態になっているO そのため被切断材表層の金属組織の流れも鋼円板 摩擦の場合と同様にかなり深いところまで生じているO なお図中上側の@は下側の⑥の状態で実験 中に砥石表面で大きい脱落が起り,切れ味が一時的に急に良くなったことを示しているO また
7
1.0
ル/ちでは実験範囲で正常な研削状態は全くみられなかったO図
1 7
は研削抵抗の背分力と接線分力の比を摩擦試験の場合と同様に摩擦係数として示したもので あるO 線摩耗速度が小さい場合(目つまり状態)の摩擦係数はだいたいo .
2以下の小さい値で,鋼 円 板 摩 擦 の 場 合 と 同 程 度 で あ れ 機 構 的 に も 同 じ 状 態 で あ ろ うO しかし線摩耗速度の大きい場合(正常研削状態)の摩擦係数はかなり大きく,約
. o 8
の値もみられるO 摩擦切断の場合には,かな り大きい線摩耗速度を示し,摩擦すじも大きく,外見上の性格はアブレシブ摩耗的であるが,摩擦 係数はかなり小さい。すなわち摩擦切断を,砥石切断を摩耗現象とみた研削摩耗,アブレシブ摩耗 と比較すると明らかに異なっているO このような両者の違いは研削面と摩擦面の温度の違いによる ものと考えられるO すなわち摩擦切断では高温軟化し流動状態に近い摩擦面表層を低せん断抵抗で ぬぐいとるように排除し,それに反して砥石切断では比較的低温の研削面を微小切削によって削りとっており,そのため線摩耗速度は両者同程度でありながら,摩擦係数では両者にかなり大きい差 がみられるのであるO
5
結 ‑ 昌以上の研究結果を結論としてまとめると次のとおりであるO
1)炭素鋼
8350
摩擦切断では,摩擦速度40昨令程度で,接触圧力O .6
kg/i耐以上が適当な作業条 件であるO2)
鉄系材料の中では,ステンレス鋼のように酸化されにくい材料ほど線摩耗速度および切断抵抗 は大きくなるO また凝着が著しく,振動をともないがちになるO3)
切断点近傍に酸素を噴射すると,空気中の約20
倍に切断能率は向上するが,切断抵抗はあまり 変わらない。4)
摩擦円板材料としては廉価な炭素鋼で十分であり,銅(軟かいが熱伝導率が大きい)や刃物鋼 (かたさが大きい)をとくに使用する必要はない。5)
被切断材が厚い場合,おうとつをもった摩擦円板によって線摩耗速度の低下を避けることがで きるが,切断作業の続行によってしだいにおう部はうめられるので,あまり実用的ではない。6 )
砥石切断では約1/10
の接触圧力で,摩擦切断と同程度の線摩耗速度が得られ,切断能率はよ いが切断抵抗はかなり大きい。7 )
摩擦切断では摩擦円板の摩耗をほとんど考えなくてよい有利さがあるO参 考 文 献
1)切削加工技術便覧編集委員会;切削加工技術便覧.
(1968). 1124.
日刊工業.2 )
小川正義・歌川正博;日本機械学会誌.56
,415(1953‑6)
,6 2 2 .
3 ) J.M.Lewis and G.H.8heppard Too
工Engineers Handbook. 6 ← 1 3 . 6 7 ‑ 7 . McGraw‑Hill.
4 )
豊島敏雄・古村義彰;潤滑.1 Q . . 2 ( 1 9 7 5
),8 3 .
5 )
Toshis.TESHIMA' Yoshiaki. KOMURA Memoirs Fac. Eng. Fukui Univ..主主1
(19 7 9 ) .7 7 . 6 )
豊島敏雄・古村義彰:潤滑.n . . 1 0 ( 1976 ) . 7 0 9 .
7)古村義彰・豊島敏雄;潤滑,坐.