⼦どもの思考を整理し参画を図る構造的な板書 -ICT の活⽤-
⾼度学校教育実践専攻 実習責任教員 森 康彦 教員養成特別コース 実習指導教員 阪根 健⼆
濵⼝ 康太
キーワード:板書、思考の整理、I C T 教育、児童の参画
Ⅰ 課題設定の動機
筆者は板書に対してどこか「情報の記録」
という認識があり、児童の思考に関連付けての 教材研究ならびに板書計画ができていなかっ た。しかし、基礎インターンシップでメンター による児童の思考を整理するような構造的な板 書を⾒ることができた。さらに筆者は国際化や 情報化に加えて少⼦⾼齢化など変化の激しい、
先⾏き不透明な厳しい時代に突⼊する中で様々 な意⾒に対して違いを認識し、多様な考え⽅を 受け⼊れる⼒が強く求められると考える。そこ で板書を対⽴的に構造化することで「他者理 解」と「⾃⼰の確⽴」を育み、児童間での対話 が必要であると考える。そこから板書を「情報 の記録」から思考を整理し対話の活性化を促す
「ツール(媒体)」として捉えた構造的(図 1)な板書をつくりたいと考えた。
Ⅱ 2年次の実践研究
=主免教育実習での授業実践=
主免教育実習では、⼩学校第6学年に配属と なり、評価授業では算数科「⽐例と反⽐例」単 元を全16時間の6時間⽬の授業実践を⾏なっ た。成果として挙げられたものは①既習事項を 導⼊部分で提⽰しておくことで本時の学習に繋 がる意識付けができた。②⽐例の規則性を順に 確認することで学習の進度に遅れが感じられな
かった。③教科書内容の問題を2枚の座標プリ ントを提⽰しながらを児童と⼀緒に考えること で全体との共有が図られた。④児童の意⾒につ いて吹き出しを板書することで児童の意⾒を取 り⼊れながら“気づき”を明確化できた。課題と しては、①⼀⼈の児童の意⾒・思考しか反映出 来ず、対話の活性化に繋がらなかった。②教科 書に沿った板書で学習の進度を視覚化出来た が、「⽐例のグラフをなぜ直線で表すのか」と いう学びに繋がっていなかった。③座標(模造 紙)が⼩さく、前列の児童のみしか⾒えていな かった。
本時の⼀番学びの“核“となるものを児童に伝 えられなかった。④ノートと板書の連動性を意 識できず、児童がノートに何を書き残せば良い か迷っていた様⼦が伺えた。
基礎インターンシップに向けた⼿⽴て
主免教育実習での授業実践の課題から、基礎 インターンシップではより「児童の意⾒を反映 させた板書づくり」と「児童の興味・関⼼を⾼
める I C T の活⽤」を⽤いて児童の思考の整理 を⾏い、授業の明確化を図った。
=基礎インターンシップでの授業実践=
基礎インターンシップでの授業では、⼩学校 第3学年に配属となり、算数科「計算のじゅん
じょ」の単元(全1時間)の授業実践を⾏っ た。成果として挙げられたものは①「まとめて 計算する⽅法」と「順序通りに計算する⽅法」
の2通りの考え⽅を対⽴構造化することで多様 な考え⽅の理解を図ることができた。②2通り の考え⽅に児童⾃⾝が名称をつけることで考え
⽅についての理解を深める、学習意欲、興味・
関⼼の向上を促すことができた。③挿絵でなく ICT 機器を⽤いたイラスト投影によりイラス トを⼊れ換える際の時間を短縮することができ た。以上の3点があった。
課題としては、①⾼さについての問題内容で あったが板書ではイラスト図を横に配置したこ とで問題⽂に即していない板書になった。②イ ラスト図を先に提⽰することで児童が問題⽂を 図式化する時間を確保できていない。③イラス ト図を児童⾃⾝が操作できる教具を使⽤したと ころ、⼀部の児童に活動が集中し、全体への共 有が図れていなかった。
総合インターンシップⅠに向けた⼿⽴て 基礎インターンシップでの実践を通して、総 合インターンシップⅠに向けた課題としては、
児童の実態に即した授業計画の不⾜、課題の焦 点化ができていないことを実感できた。また授 業の振り返り等を通じて ICT 機器を板書に⽤
いる上での良さと難しさについてしっかり理解 し、その良さを意識する板書づくりを考えてい く必要性を感じた。⼀部の児童の学びを深める だけでなく、学級全体で学習内容を共有し対話 の活性化を促す板書はどうあるべきかを総合イ ンターンシップを通して学んでいきたいと考え た。その⼿⽴てとして児童の思考の整理と予想 される反応を想定した板書計画を⾏う。そこで の対話の様⼦を ICレコーダーや動画撮影等で
記録を取り、板書と児童の発⾔の相互関係を分 析していく。その結果から⼦どもの思考の整理 と対話の活性化を促す構造的な板書づくりを⽬
指そうと考えた。
Ⅲ 3年次の実践研究
=総合インターンシップⅠでの授業実践=
総合インターンシップⅠでは、鳴⾨市内公⽴
⼩学校第6学年において実習を⾏った。授業の 具体的概要は、国語科「つないで、つないで⼀
つのお話」では本来、学級開きの4⽉に初めて の学級で会話を通して打ち解けるアイスブレイ ク的な役割を⽬指した単元である。しかし、本 学級ではカリキュラムの関係上、修学旅⾏前の 5⽉後期に授業を⾏った。その為、筆者はアイ スブレイクの役割でなく、①他者の会話を聞き しっかり繋げること。②接続詞を活⽤した⽂章 の表し⽅を学習⽬標とし、修学旅⾏を題材に1
⽇⽬の朝・昼・夜、2⽇⽬の朝・昼・夜と4〜
5⼈で1班の計6班をそれぞれテーマに合わせ た⽂を班ごとに⽂章化して考える活動を取り⼊
れた授業づくりを⾏った。その⼿⽴てとして、
タイムライン板書(時間の経過を⽮印で表すこ とでスタートからゴールまでの経過をまとめやす く構造化された板書技法:栗⽥ 2017)を
⽤いた板書の構造化を⾏い、思考の活性化を⽬
指した。
成果として挙げられたものは①導⼊部分での 筆者⾃⾝が考えた⽂章を例として電⼦⿊板で提
⽰することにより、本時の学習のめあてをしっ かり掴むことが出来ていた。②最後の⽂を「み んな笑顔になりました」と全ての班で統⼀した ことで⽂章全体の流れを意識して接続詞を活⽤
しながら、個⼈それぞれ意識して⽂を考えてい た。③タイムライン(時系列)板書により、児
童⾃らホワイトボードを⿊板に貼るなど授業へ の主体性が⾼まった。
課題としては、①コミュニケーションと⽂章 化を同時に⾏うことで時間を多く費やしてしま い、全員が発表に⾄らなかった。②発表の際、ホ ワイトボードの拡⼤をしなかったことで他の班が 読めていなかった。③タイムライン板書は児童の 思考の整理・授業への関⼼に繋がったが、対話の 活性化への直接的な繋がりはなかった。
総合インターンシップⅡに向けた⼿⽴て 総合インターンシップⅠでの授業実践を通し て、基礎インターンで課題であった児童の学習の 明確化と学習意欲の向上は図ることが出来たが、
板書による対話の活性化への繋がりは希薄してい た。しかし成果として児童が⾃ら板書に参加して いた姿が⾒られた。ここから総合インターンシッ プⅡでは、より児童の学びの思考を整理すると同 時に児童が参画できる板書のあり⽅を模索し引き 続き研究課題として取り組んでいく。さらに導⼊
部分においての学びの「興味関⼼の向上」と「情 報の視覚化・共有化」を⽬指し ICT の活⽤の⼿
⽴ても考えていく。また板書作りにおいて客観的 視点として栗⽥(2017)による「CHALKの法 則(color:⾊使い。Headline:⾒出し。Account:説 明。Look back:振り返り。Kindness:児童の⼼情 5項⽬を意識した板書。)」を活⽤し、板書のあり
⽅をさらに改善していく。
=総合インターンシップⅡでの授業実践=
総合インターンⅡでの授業実践では、第4学 年において道徳科(主題名:みんな違ってみん ないい)の授業を⾏った。その授業では、児童 の意⾒を反映し、そこから思考を整理し、課題 意識を持つことで、児童間での対話の活性化に
繋がる“媒体”としての構造的板書を⽬指し授業 実践をした。成果として挙げられたものは、① 児童に安⼼感を語りかけるような⼝調により落 ち着いた授業環境ができていた。②物語中の
“嵐”の場⾯をイラスト化することでより児童が 具体的にイメージできていた。③児童の⾔葉を 受け⽌めた上で問い返しを⾏うことで児童が⾃
分の意⾒をしっかり聞いてくれる安⼼感があっ た。④機材トラブルがあったときに落ち着いた 対応ができていたことにより授業の流れが乱れ なかった。⑤ネームプレートを実際に貼ること で物語の登場⼈物と⾃分の⼼情を重ねること で、物語に没⼊するが出来ていた。⑥グラフマ トリックス板書(⼗字線を引くことで、児童に 思考の枠組みを与え、思考の整理を⾏う板書ス タイル。)により、児童が登場⼈物に対する⾃
分の⼼情を細やかに表現することができた。課 題としては、①ワークシートへの配慮不⾜(例:
板書が縦書きなのにワークシートは横書き)②3 つの主軸があり1時間では学習内容が多い。改善 点として、1時間は事前に教材を読む時間に使う など児童の実態に合わせた授業準備。③教材内容 理解、⾃⼰理解、教材内容理解という流れは児童 の思考のプロセスが混乱する恐れがある為、⼀つ だけをしっかり考える時間を確保する。④教員の 声の強弱・リズムを意識する(例:語尾を強調す るために重要なことは敢えて声のトーンを下げ る)⑤⾃由発表をさせる場合は児童が“光る”意⾒
につなげてまとめていく。⑥“⼟のう”という様な 児童が聞き慣れない⾔葉は事前に確認しておき、
先に全体と共通理解を図っておくことで授業の流 れが⽌まらない様にする。または噛み砕き伝え る。⑦挙⼿がしづらい児童や内気な児童への配慮 不⾜。(例:⽬配せで配慮、発表前に隣の児童に 相談する時間の確保など)⑧教材では他社との協
⼒の重要性を重点理解としているが、本授業では
⾃⼰の能⼒をどう活⽤できるかに重点理解をおい ていることから“ズレ”が⽣じている。⑨資料の情 景を貼りものだけでなく、電⼦⿊板上でも連動さ せておく。
Ⅵ 2年間の学びを通して
⼤学院での⽇々は、毎⽇が学びであった。同 じ志をもった同期や現職の先⽣⽅や教授の⽅々 との出会いは筆者にとって⼈⽣における貴重な 経験である。⼤学院の講義は⼤学の講義と違 い、より専⾨的な内容の講義やグループでの話 し合いで考えを導き出す講義、模擬授業を⾏う こともあった。⼤学院1年次は教育の基礎を学 部⽣や多様な校種の同期の院⽣らと共に学びな がら教科ごとの教育の歴史や、実務的課題など 学べた。そこから⾃⼰がしたい教育とは何か。
そのためにはどの様な⼒をつけなければならな いのか多くのことを確⽴することが出来た。ま た⼤学院科⽬である「授業づくりのチーム演 習」では多⾯的・多⾓的に⼀つの授業を検討し 模擬授業を通して授業を⾏う上で必要な資質・
能⼒に気づくことができた。また授業づくりの 難しさ、協同的学びの必要性を理解できた。⼤
学院での⽇々は⼤変なこともあったが、そのよ うな経験があるからこそ今の⾃分があると思 う。
Ⅶ 今後の展望 筆者は4⽉から千葉県・千葉市の⼩学校教諭
として働く。
初めての地で多くの壁にぶつかり、悩むこと も多々あるだろう。しかし、悩んだときには⼀
⼈で解決しようとするのではなく、同じ職場の 教員や家族、友⼈に相談することを忘れないよ
うにする。⼀⽅で、期待していることも多くあ る。おそらく1年⽬から学級担任として配属さ れるだろう。教員として働くことも⾃分の学級 を持つことも初めてである。実習ではなく⾃分 の理想的な学級にするため、⼤学院で培った学 びを⽣かし、さらに変化する中で児童と関わる ことや具体的⽅策を⾏うことは楽しみである。
また、今年は⽇本が⼤きく変⾰を迎える年で ある。雇⽤⾯ではバブル・団塊ジュニア世代の 管理職ポストへの登⽤。介護難⺠などに象徴さ れる介護問題、情報通信⾯では5Gの開始な ど I Tセキュリティ対策問題。教育⾯では⼤学
⼊学共通テストの開始など、これらの「202 0年問題」に向き合っていかなければならなく なった。これからの教育を取り巻く環境は社会 の変化に伴いますます複雑になる。
しかし、筆者はこの状況を好機だと考える。
複雑に変化していく時代だからこそ多くのチャ ンスがあり、⼀⼈⼀⼈が活躍できる社会に向か っていると考える。そういった新しい時代の礎 である教育に携われることは本当に幸せであ り、未来の⽇本を⽀える⼦ども達を⽀え、共に
⽣きていく覚悟で職務を果たしていく。
=引⽤⽂献=
千葉昂(2016)「板書什則 : 板書の基本と可 能性」初等教育論集
栗⽥正⾏(2017)「すごい板書術」学陽書房
清⽔淳⼦(2017)「Graphic Recorder」株式会社 ビー・エヌ・エヌ新社
ジョン・カウチ(2019)「Appleのデジタル教科 書」かんき出版