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胎生期ストレス暴露が出生仔の運動機能に与える影響

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Academic year: 2021

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─ 77 ─ し、飼育期間中の飼料および水は、自由摂取とした。 また、飼育および実験は美作大学・美作大学短期大学 部動物実験に関する指針に基づいて行った。 (1)妊娠ラット  10週齢メスラット4匹にスメア検査を行い、性周期 を把握し発情前期に同種同週齢のオスラットと同一 ケージで1昼夜飼育した。翌日、実際に交配が行われ たかどうかは、スメアプラグにより確認した。また、 交配を確認した日を妊娠0日(Gestation Day 0; G.D. 0)として、仔の離乳まで個別に飼育した。  交配後、Day10~19の10日間ストレス暴露群の妊娠 ラット(n=2)には、塩化ビニール管(直径50mm、 長さ200mm)内に60分間/日入れ、拘束ストレスを 与えた。 (2)仔ラット  出生後、仔ラットは離乳までの3週間、母ラットと 同一のケージで飼育した。また、出生した日を生後1 日(Postnatal Day 1; P.D.1)とした。 P.D.4~13の 10日間、体重計測後、運動機能を調べるために傾斜板 テストを行った。 (3)傾斜板テスト  傾斜板テストには図1のような実験装置を用いた。 仔ラットを、25度に傾斜した板上に頭部が下になるよ うに置き、180度旋回するのに要する時間を測定する ことで、出生直後の四肢の協調運動能力を経時的に評 緒 言  近年、胎生期のストレス暴露が出生後の記憶・学習 機能や精神機能、情動機能へ影響を与えることが報告 されている。例えば、軽度な胎生期ストレス暴露が学 習・記憶行動を促進すること1)、胎生期および幼若期 にストレスを暴露されることにより脳の神経細胞の形 態変化を引き起こすこと2)、胎生期ストレスにより不 安に対する情動反応が低下すること3)などが明らか となっている。  運動機能に関しても、胎生期ストレス暴露により 自発運動量に影響を及ぼすことが報告されている4) 5)。しかしながら、胎生期ストレス暴露が出生直後の 運動機能に与える影響について経時的に調べた研究は 少ない。  そこで、本研究では、脳の形成にとって重要な時期 であり、ライフサイクルにおいて最も脆弱な時期であ る胎生期にストレスを暴露された仔について離乳前の 新生仔期の運動機能発達に与える影響について調べ た。 方 法 1.動物  実験には10週齢のメスラット(Wister)4匹を用 いた。動物は個別のケージで飼育し、室温24℃、湿度 60%、明期8時~20時・暗期20時~8時の条件で飼育 美作大学・美作大学短期大学部紀要  2013,Vol.58.77~80

論  文

胎生期ストレス暴露が出生仔の運動機能に与える影響

Effects of fetal stress on motor function of neonates in rat

栗脇 淳一

・西村 知美

 キーワード:胎生期ストレス、運動機能、協調運動

美作大学短期大学部栄養学科美作大学生活科学部食物学科学生

(2)

─ 78 ─ 1a)雄+雌 1b)雄 価した。得られた結果は、胎生期ストレス暴露群(n=10, ♂: n=5, ♀: n=5)と対照群(n=10, ♂: n=5, ♀: n=5) との間で比較・検討した。 結 果 1.実験期間中の体重計測  P.D.4で、対照群に比べ胎生期ストレス暴露群で有 意に体重が少なかったが、P.D.10,P.D.12,P.D.13 では、胎生期ストレス暴露群が有意に体重が重かった (図2a)。また、仔ラットの雌雄別の体重では、雄 のP.D.13ま た、 雌 のP.D.10,P.D.12,P.D.13で 対 照 群に比べ胎生期ストレス暴露群の体重が有意に重かっ たが、雌のP.D.4では、胎生期ストレス暴露群の体重 が有意に少なかった(図2b,c)。 a)傾斜板は、25度の傾斜があり、板の表面は滑り止 めのため紙やすりで覆っている。b)旋回に要する時 間の測定は、60秒を最大とし、仔ラットを頭部を下に して置いてから、体軸が180度回転するまでの時間を 計測した。60秒経過しても体軸が180度回転しない場 合は、60秒として記録した。 1a)雌雄合わせた平均値:傾斜板テスト期間中、 P.D.4で、対照群に比べ胎生期ストレス暴露群で有意 に 体 重 が 少 な か っ た が、P.D.10,P.D.12,P.D.13で は、胎生期ストレス暴露群が有意に体重が重かった。 (tukey's test following ANOVA、**:p<0.01、*: p<0.05)。縦軸:体重(g)、横軸:生後日数。平均 値±S.D.。 ストレス群(n=10) 4 6 8 P.D. 10 12 30 20 10 0 対照群(n=10) 図1a) 傾斜板実験装置 25度         図2a) 傾斜板テスト期間の体重 図1b) 仔ラットの旋回の様子

対照群(n=5) ストレス群(n=5) 4 6 8 P.D. 10 12 30 20 10 0 図2b) 雌雄別の傾斜板テスト期間中の体重の変化

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─ 79 ─ 2b)雄 2c)雌 考 察  本研究より、胎生期ストレス暴露が出生仔の出生直 後の運動機能(四肢協調運動)に影響を及ぼすことが 明らかとなった。また、傾斜板テスト期間の後半にお いて対照群に比べ胎生期ストレス暴露群の体重が有意 に大きかった。しかし、胎生期ストレス暴露による運 動機能および体重に性差は認められなかった。  ストレス負荷により誘発される生体反応としては、 2 a )P.D.6,P.D.7,P.D.12,P.D.13に お い て 胎 生 期ストレス暴露群で有意に旋回に要する時間が長かっ た。 2 b ) 雄 の み:P.D.6,P.D.7,P.D.13に お い て 胎生期ストレス暴露群の旋回に要する時間が有意に長 かった。2c)雌のみ:P.D.6,P.D.7,P.D.12におい て胎生期ストレス暴露群の旋回に要する時間が長かっ た(tukey's test following ANOVA、**:p<0.01、 *:p<0.05)。 縦軸:旋回時間(秒)、横軸:生後日数。 平均値±S.D.。 1c)雌 2.傾斜板テスト  P.D.6,P.D.7,P.D.12,P.D.13で、 対 照 群 に 比 べ 胎生期ストレス暴露群で有意に旋回に要する時間が有 意に長かった(図3a)。また雌雄別の比較では、雄 のP.D.6,P.D.7,P.D.13、雌のP.D.6,P.D.7,P.D.12 で対照群に比べ胎生期ストレス暴露群で旋回に要する 時間が有意に長かった(図3b,c)。 2a)雄+雌 1b)雄のみ:P.D.13で対照群に比べ胎生期ストレス 暴露群の体重が有意に重かった。1c)雌のみ:P.D.4 では、胎生期ストレス暴露群の体重が有意に少なかっ たが、P.D.10,P.D.12,P.D.13では対照群に比べ胎生 期ストレス暴露群の体重が有意に重かった。(tukey's test following ANOVA、**:p<0.01、*:p<0.05)。 縦軸:体重(g)、横軸:生後日数。平均値±S.D.。 対照群(n=10) ストレス群(n=10) 4 6 8 P.D. 10 12 60 40 20 0 図3a) 傾斜板テスト旋回時間 対照群(n=5) ストレス群(n=5) 4 6 8 P.D. 10 12 30 20 10 0 対照群(n=5) ストレス群(n=5) 4 6 8 P.D. 10 12 60 40 20 0 図2c) 雌雄別の傾斜板テスト期間中の体重の変化 図3b) 傾斜板テスト旋回時間 対照群(n=5) ストレス群(n=5) 4 6 8 P.D. 10 12 60 40 20 0 図3c) 傾斜板テスト旋回時間

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7.Fujioka T, Sakata Y, Yamaguchi K, Shibasaki T, Kato H, Nakamura S. The effects of prenatal stress on the development of hypothalamic p a r a v e n t r i c u l a r n e u r o n s i n f e t a l r a t s . Neuroscience. 1999;92(3):1079~88. 1)視床下部-下垂体前葉ACTH-副腎皮質系(HPA 系)の活性化、あるいは2)交感神経系・副腎髄質系 の賦活化が報告されている6)。これらのことから、胎 生期ストレス暴露により引き起こされた上記1)また は2)の生体反応あるいは、それらの相互作用により 出生仔の出生直後の運動機能に影響を及ぼしたことが 推定される。  さらに、妊娠中のストレスは、ストレス暴露時間に 依存して胎仔脳に形態変化を生じることが報告されて いる1),7)。今後は、ストレス暴露時間と出生仔の生 体機能への影響の程度について検討する必要がある。 参考文献

1.Fujioka T, Fujioka A, Tan N, Chowdhury GM, Mouri H, Sakata Y, Nakamura S. Mild prenatal stress enhances learning performance in the non-adopted rat offspring. Neuroscience.2001;103 (2):301~7.

2.Magarinos AM, Verdugo JM, McEwen BS. Chronic stress alters synaptic terminal structure in hippocampus. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Dec 9;94(25):14002~8.

3.Buss C, Entringer S, Wadhwa PD. Fetal programming of brain development: intrauterine stress and susceptibility to psychopathology. Sci Signal. 2012 Oct 9;5(245):pt7. 4.辻村 徹,冨松眞之,麻生忠史,福田英二,吉 本 静 志, 岡 崎 祐 士, 中 根 允 文  胎 生 期 ス ト レ ス 負荷ラットにおける生後ストレス負 荷 の自発 行 動 量 に 及 ぼ す 影 響 に つ い てJapanese journal of psychopharmacology 1998 18(6): 298. 5.中島 聡,吉本静志,麻生忠史,辻村 徹,冨 松眞之,前村謙司,岡崎祐二,中根允文 妊娠期 ストレスが仔ラットの行動に及ぼす影響 japanese journal of psychopharmacology 1997 17(6): 283. 6.尾仲達史 ストレス反応とその脳内機構 日本薬 理学雑誌 2005 126:170~173.

参照

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