アカデミック・メタ言語とマス・メタ言語
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(2) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要8巻2号(2008・12) う二 層 構 造 を と ら な い 。 人 間 の 言 語 表 現 に お い て は 、 指 示 対 象(で 言 語objectlanguage⇔. メ タ 言 語metalanmguage、. あ る 現 実 ・事 実 世 界)⇔ 対 象. と い う三 層 構 造 を と る と考 え る。 し た が っ. て 真 偽 性 の 判 断 も、 言 語 表 現 と し て の 命 題 が 、 指 示 対 象 と照 合 し て 真 か 偽 か で 判 断 さ れ る だ け で は な い 。Johnsaid,"Iwillstayheretomorrow."の. 真 偽 判 定 は、 原 話 者 の対 象 描 写 の 真 偽. 性 と し て の み 判 定 さ れ る。 しか し間 接 話 法Johntoldmethathewouldstaytherethenext day.で. は 原 話 者 の ほ か に 伝 達 者 の 存 在 と そ の 信 念=確. 信=責. の 多 く は 、 言 語 と 指 示 対 象 た る 現 実 が 直 接 関 係 性 を 持 つ(こ parent)と. 任 が 介 在 す る。 つ ま り言 語 表 現 れ を メ タ 言 語 論 で は 透 明(trans-. 言 い 言 語 命 題 が 直 接 そ の 意 味 対 象 を 問 題 と し て い る)の. で は な く、 人 間 の 対 象=現. 実 の 解 釈 ・認 識 が 介 在 す る の で あ る。 こ れ を メ タ 言 語 論 で は 「不 透 明(opacity)」 点 か ら考 え れ ば 、 透 明 ・不 透 明 性 の 問 題 は 、 言 語 命 題 がbelief-contextに た と え ばhesaidthat()の. と い う。 そ の. 関 わ る こ と に な る。. 表 現 形 式 は原 話 者 の発 話 と は別 に、 伝 達 者 の 責 任 に お い て. ど の よ う に も取 替 え 可 能 な 表 現 形 式 で あ る。 こ の よ う に し て 言 語 表 現=命. 題 は、 指 示 対 象 と して. の 現 実 世 界 か ら離 れ る方 向 性 一 ベ ク トル を も つ の で あ り、 現 実 世 界 と の 間 接 性 一 不 透 明 性 一 恣 意 性 が 、 人 間 言 語 の 本 質 で あ る、 と さ え 言 え よ う。 し た が っ て メ タ 言 語=メ. タ 的構 造 が あ るか ら こ. そ 、 言 語 表 現 に お い て 「言 葉 遊 び 」 「し ゃ れ 」 「か け こ と ば 」 「な ぞ な ぞ 」 の よ う な(田. 舎 にあ っ. て 、 町 に な く、 世 界 に あ っ て 宇 宙 に な い も の は 、 答 一 イ ・カ 、 と い う よ う に 、 対 象 言 語 レ ベ ル で 答 え を 探 そ う と す る の で は な く、 メ タ 言 語 レ ベ ル に 答 え を 設 定 し、 レ ベ ル=次 楽 し む と い う よ う な)修. 元 の 「ず ら し」 を. 辞 表 現 が 可 能 な の で あ る。. し か し言 語 研 究 に お い て は 、 メ タ 言 語 が 言 語 表 現 の 自 由 を 保 障 す る、 と い う方 向 の み に は 展 開 し な か っ た 。belief-contextに ()の. 関 し て 、 間 接 話 法 表 現Johnbelievesthat().に. 中 の 表 現 に は 制 限 が か か る 、 とMates(1950)2は. onenoseは. 可 能 で も 、thenumberofhisnosesisequalto(e。i)を. 理 由 は 、 数 式 の 意 味 か らthenumberofhisnose=1で. おいて も. 述 べ て い る 。 彼 は()内. にheis. 偽 で あ る と し、 そ の あ る と し て も そ の よ う なbeliefの. 仕. 方 は 誰 も し な い 、 と い う も の で あ っ た 。 こ の 議 論 は 、 実 は 意 味 論 的 メ タ 言 語 論(semantic metalanguage)の. 領 域 へ と踏 み 込 む と 同 時 に 、 議 論 が 完 全 に 言 語 外 対 象 一 現 実 世 界 か ら遮 断 さ. れ 、 議 論 が 言 語 内 的=自. 己完 結 的論 理 整 合 性 に進 む こ とに の み 限定 され て しま う こ とへ の危 惧 と. 疑 問 が 忘 れ ら れ て い る。 そ の 後 、 言 語 外 的 現 実 世 界 と の 関 係 性 か ら言 語 を 考 え る 議 論 が な さ れ て い る 。Johnbelieves that().の()に. 、Maryistallerthansheisと. 一94一. い う表 現 が 入 る場 合 の 議 論 を.
(3) ア カ デ ミ ック ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 Hasegawa(1972)3は is.の. 行 っ て い る 。 一 般 に は 、JohnbelievesthatMaryistallerthanshe. 解 釈 と し て 、Maryに. つ い て は 、Johnは. 「Maryは. 際 は そ れ ほ ど 高 く な い 、 と 考 え ら れ る 。Johnのbeliefは で あ る 。 そ の 議 論 でHasegawaは 知 っ て い るassertorは. 、assertorと. 背 が 高 い 」 と思 っ て い る け れ ど、 実 、 述 べ られ て は い るが 誤 って い る の. い う 概 念 を 導 入 し て 、Maryの. 文 の 話 者 で あ り 、 誤 っ た 測 定 を し て い るassertorは. で あ る と い う 説 明 を し た 。 さ ら に そ の 後 、Postal(1974)4の をJackendoff(1975)5が. 本 当の身長 を 文 の 主 語=John. 反 対 意 見 と、 さ ら に そ れ へ の 反 論. 行 な った が 、 これ らの議 論 は、 狭 義 に お い て は生 成 文 法 の域 内 で の メ. タ 言 語 論 で あ り、 広 義 に 見 て も、 普 遍 的 な 言 語 記 述 を 、 閉 鎖 系 の 論 理 体 系 で 行 な お う と す る取 り 組 み で あ る と い え よ う。 と り わ けHasegawaの. メ タ 言 語 理 論 に 端 を 発 す るPostalとJackendoffの. 論 争 は、 メ タ言. 語 の 本 質 的 な 問 題 と い う よ り、 生 成 意 味 論 の 応 用 と し て 、 メ タ 言 語 を ト ピ ッ ク と し て の 文 法 論 争 な の で あ る。 メ タ 言 語 を メ タ 的 に 、 つ ま り、 高 次 元 か ら 「対 象 言 語 と し て の メ タ 言 語 」 を 、 普 遍 的 な枠 組 み と して の意 味論 で論 じて見 せ た の で あ って、 そ の議 論 が言 語 の本 質 的 な議 論 で あ る と い う保 証 は 無 い 。 普 遍 文 法 と い う現 代 言 語 学 の め ざ す 言 語 観 さ え も議 論 の 範 疇 に い れ る の が 本 当 の メ タ 言 語 論 の 特 徴 で あ る。 無 限 の 次 元 の 拡 大 、 と い う発 想 を も つ メ タ 言 語 論 の 本 質 を こ そ 問 題 とす べ き で あ ろ う。. 2.メ. タ言 語 に関 す る先 行 研 究2:論. 理 学 や 意 味 論 か らの 脱 却. 現 代 言 語 学 と りわ け生 成 意 味論 に よ り議 論 が専 門化 した観 の あ るメ タ言 語 理 論 で あ るが、 本 来 の メ タ言 語 の定 義 、 そ れ も一 般 の人 々 に も分 か りや す い定 義 ・説 明 は次 の よ うな もの で あ ろ う。 言 語 「に つ い て」 語 る場 合 、 語 る言 語 が メ タ言 語 で あ り、 語 られ る言 語 を対 象 言 語 と呼 ん で 区別 す る こ と とす る。 す る と言 語 学 者 が用 い る文 法 言 語 や、 辞 書 編 纂 者 が用 い る語 彙 記 述 言 語 は メ タ 言 語 で あ る。 英 語 を 日本 語 で説 明 し分 析 す る場 合 、 日本 語 は メ タ言 語 で あ る。 別 の言 い方 を す れ ば、 自然 言 語 に た いす る 「技 術 言 語=特 化 した専 門言 語 」 が メ タ言 語 で あ る。 そ うな れ ば 「絶 対 的 な メ タ言 語 とい う もの が存 在 す るか」 が最 も重 要 な 問題 で あ る。 そ して答 は否 で あ る。 な ぜ な らば メ タ言 語 を語 るメ タ言 語 もま た メ タ言 語 だ か らで あ る。 当初 、 論 理 学 や意 味論 も この議 論= メ タ言 語 の特 性 を議 論 の対 象 と して い た はず で あ る。 しか し生 成 意 味論 へ と展 開 した現 代 言 語 学 の メ タ言 語 論 は、 言 語 学 的 メ タ言 語 論 を、 他 の領 域 に く らべ高 次 元 の もの と考 え、 い わ ば 「絶 対 的 メ タ言 語 論(と. して の言 語 学)」 の存 在 を暗 黙 の前 提 と して 議 論 が 展 開 して い る観 が あ る。. 一95一.
(4) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) 言 語 学 以 外 で は 、L.イ. ェル ム ス レウ に よ る厳 密 な 分 析6や 、R.バ. ル トに よ る 図式 化 の 試 み7. に よ って、 興 味深 い哲 学 的 な検 証 と展 開 が な され た。 バ ル トは シー ニ ュの シニ フ ィエ が も う一 つ の シー ニ ュに な る とい うよ うに して、 メ タ言 語 の無 限反 復 的拡 大=説. 明 の高 次 元 か らの拡 大 の連. 鎖 、 とい うメ タ言 語 の本 質 を哲 学 的 に確 認 して い る。 そ れ に よ って彼 らは物 語 分 析 や記 号 論 の領 域 に新 た な分 析 装 置 と して メ タ言 語 論 を持 ち込 ん だ。 す くな く と も、 彼 らの試 み の よ うに、 思 想 と哲 学 の分 野 か ら メタ言 語 を扱 う こ とは 、 メ タ言 語 を特 定 の既 成 の学 術 ・学 問 分 野 に封 じ込 めず 、 現 実 の人 間文 化 を対 象 と した分 析 に さえ応 用 可 能 な もの と して捉 え直 した こ とに意 義 が あ る。 メ タ 的構 造 論 の 範 囲 は広 く、 か な りの 分 野 と時期 に、 そ の 広 が りを見 せ て い る。1960年 代 以 降 、 ラ テ ンア メ リカ で発 表 され、 リア リズ ム文 学 の対 極 を なす と され た もの に 「メ タ フ ィ ク シ ョ ン」 が あ る。 そ の作 品 は、 人 間 が生 き る現 実 そ の もの を フ ィ ク シ ョ ン とみ な し、 現 実 と虚 構 の 区別 を つ け な い世 界 を構 築 す る。 幻 想 やパ ロデ ィー を多 用 し、 活 字 、 構 成 を工 夫 し表 現 の一 部 と して活 用 す る。 劇 中劇 や、 小 説 の 中 に埋 め込 ま れ た小 説 が多 用 され る。 文 学 の分 野 か らは ヌー ヴ ォー ロマ ンの影 響 と説 明 され るか も しれ な い が、 そ れ らは紛 れ も無 く メ タ言 語 論 の 中心 的 な課 題 を含 ん で い る。 一 方 、 メ タ フ ィ ク シ ョ ンは、 思 想 史 的 に は構 造 主 義 の 考 え方 と軌 を一 に し、 人 間 に 関 わ るす べ て の事 象 は記 号 の 問題 と考 え る構 造 主 義 以 降 の考 え方 の 典 型 で あ る。 そ うで あ って も当 時、 記 号 学 が メ タ 的学 問 の役 割 を果 た そ う と した こ とは確 か で あ る。 先 に あ げ た言 語 学 の議 論 に近 い もの は、 は や く も1930年 代 以 降 の初 期 論 理 実 証 主 義 に み る こ と が で き る。 評 価 文(善 む記 述 文)の. い ・悪 い を記 述 す る文)や. 当為 文(べ. し ・べ か らず とい った演 算 子 を ふ く. 真 偽 性 を 議 論 す る だ けで は十 分 で は な い と い う思 潮 が 当 時発 生 した。 そ う な る と. 「当為 文 や評 価 文 を 発 す る人 間 そ の もの 」 が 考 察 の対 象 とな る。20世 紀 半 ば か らの 思 考 様 式 こそ が メ タ 的 で あ った。 倫 理 学 が規 範 的倫 理 を構 築 す るの に対 し、 規 範 的倫 理 「に つ い て考 え、 語 る こ とを 目的 とす る」 メ タ倫 理 学 が生 ま れ るの で あ る。 そ の後 の学 問上 の展 開 と して は、 メ タ言 語 論=メ. タ 的発 想 そ の もの が、 つ い に は、 学 術 ・学 問. や科 学 の 「外 に 出 て」、 学 問 と して の 科 学 の 「中 か ら生 ま れ 」 なが ら も、 科 学 を 「外 か ら捉 え な おす 」 とい う意 味 で、 メ タ レ ヴ ェル に達 す る こ とが想 定 され る。 メ タ倫 理 学 を例 に取 れ ば、 そ れ は、 「命 題 の真 偽 性 を 問 う」 こ とが 無 意 味 で あ る理 由を 、1) 情 緒 主 義 的観 点(言 語 表 現 は発 話 者 の情 緒 の表 明 で あ り、 情 緒 とは、 後 の議 論 で 「自然 的事 実 」 と理 解 され るか、 「直 覚 」 と理 解 され るか に分 岐 す る の だが 、 情 緒 か ら真 偽 判 定 は得 られ な い)、. 一96一.
(5) ア カ デ ミ ック ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 2)指. 令 主 義 的(prescriptism)観. 真 偽 判 定 は 得 ら れ な い)、3)記. 点(い. か な る言 語 表 現 も 特 定 行 為 へ の 指 令 で あ り、 そ こ か ら. 述 的(descriptionism)・. 認 知 主 義 的(cognitivism)観. 価 文 や 当 為 文 は 道 徳 的 事 実 の 描 写 で あ り、 命 題 の 真 偽 判 定 と は 齪 齪 を き た す)と. 点(評. い う批 判 的 発 展. で あ る と と も に 、 あ る意 味 で は 「理 論 の 拡 散 」 が 起 こ る こ と に な る。 そ う な れ ば 「メ タ 的 考 察 の 見 直 し」 が 行 わ れ 、1970年. 代 に は い って、 倫 理 学 は実 質 的倫 理 学 に. 「回 帰 」 し、 倫 理 学 は 再 び 、 既 存 の 学 問 域 内 の 学 術 研 究 へ と 収 敏 さ れ る 。 こ れ は 、 言 語 学 か ら メ タ 言 語 学 が 発 生 し な が ら、 言 語 学 内 の 意 味 論 へ と 回 帰 し収 敏 さ れ て し ま う と い う、 言 語 学 的 メ タ 言 語 論 争 の 姿 と 同 じ も の で あ る。 科 学 と して の言 語 学 に お け るメ タ言 語 論 の存 在 意 義 を保 証 す るの は、 科 学 的研 究 プ ログ ラム の 方 法 論(methodologyofscientificresearchprograms)で. あ る。 歴 史 上 の 科 学 理 論 は、 メ タ. 言 語 的 に み れ ば 、 発 展 し つ つ あ る理 論 系 列=メ の 体 系=科. 学 研 究 プ ロ グ ラ ム は(簡. 中 心 的 原 理 か ら な るhardcore(堅 tivebelt(防. 御 帯)を. タ 言 語 的 説 明 の 体 系 的 形 成 と し て 考 察 さ れ る。 こ. 単 に 言 え ば 「科 学 」 と い う も の は)反 い 核)と. 駁 不 可 能 とみ な され た. 、 変 則 事 例 を 処 理 す る補 助 仮 説 群 か ら な るprotec-. も つ 構 造 で あ る 。 「科 学 的 に 正 し い こ と を 言 う 」 と は 、 こ の 体 系 の ど こ か. に つ な が り、 そ れ ゆ え に 、 そ の 発 言 の 正 し さ は 、 科 学 研 究 プ ロ グ ラ ム 全 体 が 保 障 す る こ と に な る 。 一方. 、 そ の プ ロ グ ラ ム か ら 外 れ る 発 言 は 、 「非 科 学 的 」 と して 排 除 さ れ る 。 そ れ は 、 通 俗 的 に い. え ば 「素 人 の 疑 似 科 学 」 で あ り 「迷 信 」 で あ る。 つ ま り こ れ は 科 学 の 合 理 性 の 問 題 で あ る 。 こ の 問 題 は か つ て 、T.S.ク 論 さ れ8、 後 に1.カ. ー ンと ホパ ー学 派 で議. トラ ッ シ ュ が 展 開 し た 議 論 で あ る 。 し か し こ の 論 争 か ら さ え 排 除 さ れ て い. る言 葉 の 問 題 は 、 日常 言 語 の 問 題 で あ り、 日常 言 語 と科 学 言 語 を 比 較 し た 場 合 の 、 科 学 言 語 の 優 位 の 問 題 で あ る。 日常 言 語 は 科 学 言 語 よ り、 不 正 確 で あ り 曖 昧 で あ る ゆ え に 科 学 研 究 プ ロ グ ラ ム か ら排 除 さ れ る の だ ろ う か 。 科 学 の歴 史 は複 数 の科 学 的研 究 プ ロ グ ラム が、 予 測 とそ の確 証 を競 い合 い つ つ進 む理 論 体 系 の 発 展 の 歴 史 で あ る。 そ れ は ク ー ン の い うパ ラ ダ イ ム の 合 理 的 再 構 成 な の だ が 、 そ の 場 合 に 、 日常 言 語 の 働 き が 、 科 学 の 中 心 的 原 理 は お ろ か 、 そ の 防 御 帯 か ら外 に は じ か れ る こ と を 問 題 視 す る言 語 論 は(本. 論 を 除 い て こ れ ま で)見. か け な い。. こ の よ う な 先 行 研 究 の 吟 味 か ら言 え る こ と は 、 メ タ 言 語 論 は 、 言 語 学 を 含 め 「あ ら ゆ る既 存 の 学 問 と、 あ ら ゆ る既 存 の 思 想 を 疑 う資 格 を 有 す る 唯 一 の 哲 学 理 論 で あ ら ね ば な らず 、 決 し て い か な る 既 存 の 学 問 の 下 位 範 疇 に も 組 み 入 れ られ な い もの で あ る 」 と い う こ と で あ る 。 い か な る 学 問 ・. 一97一.
(6) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要8巻2号(2008・12) 科 学 で あ れ 、 そ の 下 位 範 疇 に 位 置 づ け ら れ た 瞬 間 か ら、 メ タ は メ タ で あ る意 味 を 失 う の で あ る。 そ の 意 味 で は 、 メ タ 言 語 論 は 、 古 典 的 学 問 で の 位 置 づ け で 言 う と こ ろ の 「形 而 上 学 」 に 近 く、 一 ギ. リ シ ヤ ロロ マ. 方 、 現 在 のす べ て の学 術 ・科 学 は常 に 「形 而 下 学 」 で あ る と言 え る。 た だ し、 西 欧古 典 学 問 と し て の形 而 上 学 は そ の名 を冠 す る こ とに よ って、 自身 以 外 の す べ て を形 而 下 学 と して、 固定 的 な地 位 を宣 言 した の に対 し、 メ タ言 語 論 は、 学 問体 系 が静 的 に あ る一 方 で、 動 的 な 「視 点 」 と して の 「一 つ 上 の次 元 の 学 問=思 考 の フ ィー ル ド」 が常 に存 在 す る、 と い う こ とを言 い 当 て て い る の で あ る。 学 問領 域 の定 義 とす る場 合 、 一 般 学 や普 遍(科)学. を名 乗 る こ とは容 易 だ。 しか しそ の絶. 対 普 遍 性 を 保 証 す る もの は な い 。 それ に く らべ て 、 「メ タ 」 の 発 想 は、 自身 の 地 位 保 証 を主 張 す るの で はな く、 「一 般 」 や 「普 遍 」 と は、 視 点 の運 動 の こ とで あ っ て、 あ る特 定 の 学 問 を さす の で は な い、 とい うの が メ タ 的構 造 論 の独 自性 で あ る。. 3.メ. タ言 語 と大 衆. メ タ言 語 を 「定 義 の た め の言 語 」 と定 義 す る こ とに しよ う。 しか し実 際 に一 般(世 俗)社 会 で は正 確 な定 義 に よ る言 語 の使 用 が な され た り、 意 識 され た り、 そ れ を 目指 した りす る こ とは ほ と ん どな い。 言 語 の流 通 とい う点 で は、 実 に不 正 確 な定 義 で あ って も、 そ れ が あ る言 葉 の定 義 と して通 用 す る。 定 義 は、 そ の言 葉 の背 後 に あ る事 態 や背 景 、 さ らに は社会 的価 値 観 を決 定 す る こ とさ え あ る。 例 え ば あ る特 定 の病 名 が正 確 な 医学 的定 義 を前 提 に社 会 のす べ て の人 々 に理 解 され、 正 確 な 医学 的定 義 を前 提 に そ の病 名 を さす言 葉 が使 わ れ る こ とは稀 で あ る。 不 正 確 な理 解 を伴 う病 名 の一 人 歩 き は社 会 不 安 を煽 る。 そ して社 会 不 安 の増 幅 の役 割 を マ ス メ デ ィア が担 う こ と も指 摘 して お き た い。 ラ テ ン語 のmediumは. 中 間、 中庸 を意 味 し、 転 じて 媒 体(霊 媒)を 意 味 す る よ うに な ったが 、. 20世 紀 に な って ラ ジオ ・テ レ ビな ど大 量 視 聴 者 へ の情 報 伝 達 手 段 を あ らわ す よ うに な る。 そ の 時 の 問題 の ひ とつ は、 大 衆 が大 量 の情 報 伝 達 か ら利 益 を得 て い る とは い え な い こ とで あ る。15世 紀 の 印刷 技 術 の発 明 に始 ま り今 日の電 波 メ デ ィア に至 るま で、 一 方 的 な受 け手 へ の情 報 流 出 とい う 形 式 は、 大 き す ぎ る影 響 力 や、 世 論 へ の心 理 的誘 導 な どの暴 力 性 を は らん で い る。 マ ス メ デ ィア こそ が20世 紀 に特 徴 的 な大 衆 文 化 を誕 生 させ た が、 そ の場 合 メ デ ィア が大 衆 の社 会 意 識 ・自立 的 思 考 とオ ピニ オ ン形 成 へ の活 力 を奪 って い る との考 察 が あ る。現 代 人 の社 会 意 識 や 暴 力性 の形 成 、 そ の行 動 や 態 度 の形 成 の た め の 言 語 的 メ ッセ ー ジ(「 自分 は こ う あ りた い。 自分 に これ が で き た. 一98一.
(7) アカデ ミック ・メタ言語 とマス ・メタ言語 ら楽 しい」 な どの言 語 メ ッセ ー ジの意 識 化 へ の刷 り込 み と保 持)は. マ ス メ デ ィア が形 成 に大 き く. 関 わ って い る。 メ デ ィア接 触 行 動 は社 会 階層 に よ って違 う と して、 大 衆 の意 識 形 成 は、 残 念 な が ら教 育 的啓 蒙 ・啓 発 に よ って で は な くメ デ ィア に よ って伝 達 され、 必 ず し も正 確 で は な い定 義 ・ 説 明 ・認 識 に大 き く依 存 して い る。 この 時、 メ デ ィア に よ って流 布 され る 「不 正 確 な定 義 」 とは、 全 く誤 った定 義 に よ る言 語 使 用 で は な い。 正 確 に は 「曖 昧 で大 雑 把 な定 義 に よ る言 葉 の使 用 」 が一 般 社 会 、 一 般 大 衆 に よ って行 わ れ て い る。 ま た 「曖 昧 な定 義 に よ る言 語 の使 用 」 は、 連 鎖 的 ・連 想 的 な 「イ メ ー ジの付 加 」 を 生 み 出 す 。(例 え ば社 会 不 安 の要 因 は 、 病 名 の不 正 確 な 定 義 や 認 識 自体 で は な い 。 そ れ に付 加 さ れ増 殖 す るネ ガ テ ィブ で恐 怖 を 喚起 す るイ メ ー ジが、 特 定 の病 気 に対 す る社 会 的差 別 ・偏 見 を生 み、 そ れ が社 会 的言 語 現 象 と して の 問題 とな るの で あ る。) しか し大 衆 の不 正 確 な メ タ言 語 の 問題 は、 単 に不 正 確 な言 語 使 用 者 た る社 会 構 成 員=大 衆 を非 難 し、 排 除 を め ざ し、 正 確 な言 語 使 用 の啓 蒙 活 動 を行 な う こ とに よ って は解 決 しな い。 必 要 な の は、 不 正 確 な言 語 の定 義 とそ の使 用 の対 極 に は何 が あ るか を正 し く見 極 め る こ とだ。 こ こで、 実 社 会 で の一 般 大 衆 に よ る不 正 確 な言 語 定 義 と、 不 正 確 で 曖 昧 な言 語 定 義 に基 づ く言 語 使 用 の状 況 を 「マ ス ・メ タ言 語 的言 語 使 用 」 と名 づ け よ う。 以 後 これ を 「マ ス ・メ タ言 語 」 と呼 び、 これ は 「不 正 確 で 曖 昧 な 言 語 定 義 に よ る言 語 の 使 用 状 況 」 と 「そ の と き使 用 さ れ る言 葉 自体(社 会 の流 行 語 や 時事 問題 の話 題 の言 葉 を考 え れ ば よ い)」 の両 方 を さす もの と しよ う。 この仮 定 の前 提 に は、 専 門 的知 識 を背 景 に した(比 較 的)正 確 な言 語 の定 義 の存 在 が あ る。 そ の よ うな メ タ言 語 、 つ ま り言 語 学 的 メ タ言 語 の概 念 に近 い もの を 「ア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 」 と 名 づ け よ う。 ア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 は マ ス ・メ タ言 語 と対 極 的 で あ る。 しか し この分 類 は、 マ ス ・メ タ言 語 が下 級 で ア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 が高 級 とい う分 類 で は な い。 た だ しそ こに は、 知 に 関す る純 粋 な権 力 構 造(ヒ. エ ラル キ ー:制 度)の. 問題 が あ る こ とを見 逃 して は な らな い。. 学 術 研 究 な どの知 的作 業 に直 接 に は携 わ らな い人 々 と して の大 衆 は、 学 者 や ア カ デ ミズ ム に、 尊 敬 と侮 蔑 の 念 を併 せ持 つ と考 え られ る。(専 門 バ カ とか 学 者 先 生 と い う椰 楡 の 言 葉 が そ の例 で あ る。)ア カ デ ミズ ム側 は専 門 的知 識 と知 識 階 級 の社 会 的 容 認 を根 拠 に、 ア カ デ ミズ ム の外 側 の 人 々 との 間 に、 た とえ知 識 と学 術 的経 験 の差 を根 拠 に す る とは い え、 境 界 線 を意 識 す る こ とは確 か で あ ろ う。 歴 史 を振 り返 れ ば わ か るよ うに、 知 的専 門職 が常 に 「自分 の知 の貢 献 の方 法 」 を誤 らな か った とは い え な い の は、 核 兵 器 や大 量 破 壊 兵 器 の 開発 を知 的 エ リー トが担 って き た とい う事 例 や、 戦. 99.
(8) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) 争 責 任 に お い て、 教 育 と知 の尽 力 を も って して も、 戦 争 とい う誤 った方 向 へ の社 会 的煽 動 を 防 げ な か った事 例 を見 れ ば 明 白 で あ る。 彼 らは しば しば、 学 術 研 究 とい う栄 誉 あ る呼称 と研 究 の場 と 資 金 の提 供 とい う庇 護 を受 け、 ア カ デ ミズ ム の 自律 と 自浄力 を失 って い る。 戦 時 的状 況 を例 に と らず と も、 科 学 ・学 術 も人 間社 会 の制 度 か ら 自由 で は有 り得 な い。 「科 学 と制 度 」 と い う問 題 を、 本 論 で は十 分 に展 開 す る余 地 は な い が、 次 の よ うな整 理 は可 能 だ ろ う。 科 学 が社 会 に受 け入 れ られ、 科 学 的 活 動 を支 え る制 度 的 保 障 が、 現 代 社 会 で は確 立 され て い る。 科 学 を制 度 的 に保 証 す る試 み は、 前 近 代 の非 西 洋 社 会 に も見 られ るが、 本 格 的 に科 学 の制 度 化 が 実 現 され た の は、 近 代 ヨー ロ ッパ に お い て で あ った。 ル ネ ッサ ンス期 に数 学 者 が高 等 学 問施 設 に 職 業 を得 、17世 紀 以 降、 科 学 ア カ デ ミー に お い て科 学 者 が活 動 で き るよ うに な った こ とは、 科 学 の古 典 的制 度 化 で あ る。19世 紀 以 降 の先 進 資 本 主 義 国 に お い て は、 科 学 者 が専 門職 に な り、 大 学 や企 業 で科 学 研 究 が行 わ れ る。 この 歴 史 的事 件 が本 来 的 な 科 学 の制 度 化 で あ る。20世 紀 に な って、 技 術 革 新 が資 本 主 義 存 続 の本 質 的動 因 とな り、 科 学 が 国家 的事 業 に な るに つ れ、 科 学 は全 面 的 に 制 度 化 され、 体 制 化 され て ゆ くの で あ る。 さて一 方 マ ス ・メ タ言 語 は、 言 語 と して は、 ご く一 般 的 な言 語 使 用 の あ りか た で あ る。 しか し そ れ は、 制 度 と して の科 学 を背 景 に した正 確 な 「メ タ言 語 」 とは言 い が た く、 時 に は差 別 や偏 見 を生 み 出す イ メ ー ジの付 加 を起 こ し、 言 語 の社 会 的影 響 力 、 社 会 の心 理 的動 向 へ の影 響 力 を持 っ て い る。 そ れ に比 較 して、 ア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 は、 極 限 ま で正 確 で客 観 的 な対 象 の記 述 ・定 義 を め ざす 。 しか し、 高 度 で精 密 な メ タ言 語 使 用(つ. ま り説 明 や定 義)を 、 少 な く と も 日常 生 活. の次 元 で は、 大 衆 や社 会 は そ れ ほ ど必 要 とは して い な い。 この こ とを考 慮 に入 れ た うえ で重 要 な 問題 とは、 学 歴 問題 や、 学 術 世 界 で の人 間 関係 、 権 力 構 造 と して の ア カ デ ミズ ム(知 に 関 わ る専 門性 に付 随 す る特 権 ・優 位 で あ り、 簡 単 に い う と、 既 存 の す べ て の 科 学 ・学 問)を. 対 象 に した. (メ タ)学 問 の 構 築 も可 能 で は な い か と い う こ とで あ る。 そ れ は ま た、 制 度 と して の 科 学 とい う 知 の対 極 に い る大 衆 の像 を、 い か に偏 見 無 く獲 得 す るか とい う問題 で もあ る。. 4.ア 4-1.知. カ デ ミ ック ・メ タ言 語. 的営為の意味. メ タ言 語 の定 義 機 能 は知 的活 動 そ の もの に他 な らな い。 そ れ は世 界 の あ らゆ る現 象 や対 象 物 を 言 語 で説 明 ・定 義 す る こ とだ か らで あ る。 しか し社 会 の構 成 員 全 員 が この 「対 象 を言 葉 で説 明 し た い」 と い う意 思 を意 識 的 に持 ち、 特 化 した分 野 や 対 象 に対 し 「(数式 や専 門 用 語 を 含 め た)言. 一100一.
(9) アカデ ミック ・メタ言語 とマス ・メタ言語 語 表 現 で正 確 に定 義 す る仕 事 」 に専 従 す るわ け で は な い。 言 語 に よ って 自分 を取 り巻 く全 世 界 の 説 明 を獲 得 す る こ とは人 間 に と って不 可 能 で あ って も、 そ の反 面 、 言 葉 で説 明 で き な い こ と(対 象)は. 、 人 間 に 「不 安 と恐 怖 」 を与 え る。 死 が 人 間 に と って怖 しい の は、 「死 後 の 本 当 の意 味 」. が誰 に も明確 に説 明 で き な い か らで あ る。 た とえ ば 「神 」 に つ い て科 学 は どの よ うに解 答 つ ま りメ タ言 語 的定 義 ・説 明 を用 意 す るの だ ろ うか。 神=超. 自然 的 な存 在 者 を め ぐ って の、19世 紀 の ダ ー ウ ィニ ズ ム と宗 教 の論 争 を見 れ ば わ か. るよ う に、 たぶ ん科 学 は、 「わ れ わ れ が 認 識 し うる の は 、 経 験 し、 実 験 し、 実 証 しう る範 囲 の対 象 だ けで あ るか ら、 神 の よ うな 超 経 験 的 な対 象 につ いて は、(メ タ言 語 的 な意 味 で の)言 及 は で き な い=し な い」 と答 え るだ ろ う。 これ は不 可 知 論 を め ぐ る議 論 で あ るが、 同 時 に科 学 に投 げ か け られ た メ タ言 語 論 か らの 問 い で もあ る。 科 学 が、 い か に神 の存 在 を含 め超 常 現 象 を否 定 しよ う と して も、 科 学 が 問 わ れ る こ との本 質 は、 科 学 が無 神 論 に流 れ るの か、 信 仰 主 義 を含 む の か、 ま た は独 立 した哲 学 体 系 を築 くの か とい う問題(科 学 に と って神 とは な に か、 とい う問 い に答 え る 科 学 の義 務)な. の で あ る。 言 語 分 析 の方 法 で宗 教 的言 説 の意 味 を 問 い か け た と して も、 有 神 論 と. 無 神 論 の あ い だ の 「ゆ らぎ 」 と な り、 一 般 諸 科 学 以 前 に言 語 の 科 学 にお いて も、 「言 い 当 て られ な い もの を言 い 当 て る」 こ とが難 問 で あ る と同 時 に、 不 可 避 の 問題 で は あ る。 そ うで あ って も科 学 、 つ ま り人 間 の知 に と って 問題 な の は、 人 間世 界 に あ る問題 の難 解 性 だ け で は な い。 難 解 な 問 題 を解 こ う と して、 複 雑 化 し、 高 度 化 し続 け る科 学=知. の在 り方(=知. 的上 昇)そ. の もの が 問 わ. れ る。 特 定 の対 象 を専 門 的 に研 究 し、 そ の本 質 や原 理 を 的確 に定 義 ・説 明 す る人 間 は、 学 術 研 究者 と して社 会 的 に好 意 的 に容 認 され る。 この よ うに して、 言 語 は知 的活 動 と知 的成 果 、 知 的財 産 を生 み 出 し、 結 果 と して知 は社 会 的地 位 に大 き くか か わ る。 知 は社 会 的地 位 の 階段 を生 み 出す 。 この こ とに疑 義 も提 出 され る。 学 歴 重 視 に よ る学 歴 格 差 社 会 批 判 で あ る。 この場 合 、 社 会 的地 位 の上 昇 に大 き く関 わ る もの と して の 「知 的上 昇 」 へ の疑 問 や反 対 は、 例 え ば社 会 活 動 家 や政 治 家 か ら 提 出 され るば か りで は な い。 知 的 好 奇 心 か らで あ れ、 学 術 世 界 で の立 身 出世 を 狙 う場 合 で あ れ、 「知 的上 昇 へ の 疑 義 」 つ ま り、 知 識 を極 め、 研 究 を極 め て、 時代 の知 の最 高 水 準 に い た る こ とが、 人 間 の価 値 で あ る とす る 考 え は本 当 に妥 当 な もの な の か。 そ れ は、 社 会 的=経 済 的格 差 の 問題 と も関連 しな が ら、 富 の配 分 に 関す る政 治 的調 整 の 問題(つ い う問題)と. ま り学 者 は大 して労 働 も しな い の に大 金 を手 に して い い の か と. は別 に、 哲 学 的課 題 と して も、 知 的上 昇 が人 間 に と って価 値 あ る こ とな の か とい う. 一101一.
(10) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) 問題 は、 宗 教 者 や思 想 家 か ら提 出 され て い る。 吉 本 隆 明 は親 鷺 の思 想 に注 目 し9、知 的 往 還 に注 目 した 。 知 的往 相 と は、 知 の 階 段 を 登 る こ と で あ り、 知 的 エ リー トとい う集 団 な い しは 階層 の 出現 は、 逆 に知 に 関 わ らな い社 会 階層 の存 在 を 際立 た せ る。 そ れ が衆 生(一 通 俗 的 な意 味 で の一 般 大 衆)で. あ る。 日本 の 中世 か ら近 世 に か け て. の社 会 で は、 そ して仏 教 教 義 の 定 義 で は、 衆 生 は 「救 わ れ る べ き 存 在 」 で あ って、(財 や地 位 身 分 を ふ くめ て の)「 力 を持 た ざ る人 々」 と さ れ る。 で は 衆 生 は誰 が 救 うの か。 む ろん 力 あ る もの が救 え ば よ い が、 常 に力 あ る もの、 持 て る者 が持 た ざ る者 を救 うの か、 そ れ が人 間社 会 で理 想 的 に行 わ れ るの か、 とい う疑 義 が表 出 す るの で あ る。 これ ま で 日本 を ふ くめ全 世 界 で、 人 間 の歴 史 の 中 で繰 り返 し、 戦 争 ・殺 鐵 や飢 謹 、 疫 病 の蔓 延 が あ り、 そ の つ ど大 衆 は救 済 を求 め て き た。 救 済 を も とめ る先(一 相 手)は 、 時 の為 政 者 で あ る よ りは、 信 仰 で あ り、 神 や仏 で あ って、 そ の宗 教 に帰 依 す る宗 教 者 た ち は、 自分 自身 は知 的 階段 を昇 る もの で あ って も、 衆 生 の 中 に 降 り る(=還. る)こ とを考 え な い わ け に は い か な か った。 こ. こで は宗 教 論 そ の もの に踏 み込 ま な い ま で も、 この議 論 は知 と言 語 に 関 す る議 論 つ ま りメ タ言 語 学 で は、 避 け て通 れ な い 問題 で あ る こ とを確 認 して お き た い。 一 般 に は、 そ して社 会 的=通 俗 的 に は、 知 の 階段 は 「た だ昇 るべ き もの」 と考 え られ て い る。 い わ ば往 相 が知 の 唯一 の 階段 で あ る と考 え られ や す い。 さ らに この知 的往 相 に 「実 用 論 と して の知 」 が組 み合 わ され る と、 知 の 階段 に還 相 は い らな い よ う に見 え る。 知 識 や発 明 、 極 め られ た(=上. 昇 を きわ め た)技 術 は 、 「人 を 助 け、 人 の役 に立. つ」 か ら素 晴 ら しい、 とい う こ と に な る。 「実 際 の、 目 に見 え る実 用 ・効 果 が あ るか ど うか が知 の価 値 を見 極 め る尺 度 」 と思 わ れ や す い。 これ が現 代 の教 育 に お け る 「実 学 重 視 」 に繋 が る。 だ か ら こそ、 こ こに知 の 階段 を見 直 す 契 機 もあ るの で あ る。. 4-2.ア. カ デ ミズ ム と対 峙 す る 大 衆論. 吉 本 隆 明 の言 及 に もあ るよ うに、 仏 教 思 想 に お い て は、 大 衆=衆 生 は必 ず し も貧 窮 者 とい う意 味 で は な い。 そ して現 代 、 大 衆 とい う概 念 は多 様 化 し、 多 層 化 して い る。 吉 本 隆 明 は思 想 的検 証 の 中 で、 あ くま で 「原 形=原 像 と して の大 衆 」 を考 え て い る。 そ の大 衆 像 は、 社 会 階級 闘争 に お け る、 支 配 的富 裕 層 に対 峙す る労 働 者 層 とい う意 味 とは齪 齪 が生 じて い る。 現 在 の高 度 資本 主 義 社 会 と して の 日本 で は、20世 紀 末 に は 中流 と い う い わ ば 上 位 大 衆 が 増 加 し、21世 紀 に は い る と 「下 流 」 と い う流 行 語 か ら もうか が え る よ う に、 階 層 の 中で の剥 離=多 層 化 が 生 じて い る。. 一102一.
(11) ア カ デ ミ ック ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 マ ス(mass)は. 原 意 と して は 、 「無 定 形 な も の+密. 集 した 集 合 体+塊. 」 と い う3つ. の意 味弁 別. 素 性 か ら成 っ て い た が 、 大 衆 の 意 味 を 帯 び 始 め た の は 、 フ ラ ン ス 革 命 以 降 で あ り、 イ ギ リ ス に お い て 名 誉 革 命 時 のmultitudesが に入 り一 般 的 な語 彙 とな った. 「多 数 と し て の 庶 民 大 衆 」 を 意 味 す る よ う に な っ た 。19世 「大 衆 」 は 、20世. tion)・ 大 量 消 費(massconsumption)の 業 労 働 力 と 市 場(massmarket)の. 紀. 紀 初 頭 か ら い よ い よ 、 大 量 生 産(massproduc-. 受 け 皿 と し て の 大 衆 、 と い う定 義 が 付 加 さ れ る 。 産 形 成 の た め に 、 消 費 を 美 徳 と す る 生 活 意 識 と生 活 様 式 が 、. 大 衆 を 定 義 す る 要 件 と な っ た 。 こ れ ら の 概 念 に 支 え ら れ て 大 衆 社 会(masssociety)が. で きた. 時 か らす で に 、 大 衆 と知 の 関 係 が 、 深 刻 に 問 わ れ て い た か ど う か は 不 明 、 ま た は 議 論 の 分 か れ る と こ ろ で あ る。 大 量 生 産 の 担 い 手 で あ る と 同 時 に 、 単 純 労 働 の 分 担 者 と し て の 大 衆 で あ れ ば 、 学 歴 に よ る社 会 階 層 区 分 の う え で は 、 ア カ デ ミズ ム の 担 い 手 と は 分 離 し て 行 っ た で あ ろ う。 す で に 述 べ た よ う に ア カ デ ミズ ム は 、 ひ と つ の 特 権 階 級 と して 、 制 度 的 に 庇 護 さ れ て い っ た か ら で あ る 。 そ れ は 、 正 当 な 上 流 社 会 階 層 と 同 等 の 位 置 づ け で は な く、 た と え ば 宮 廷 画 家 の よ う な 、 芸 術 家 の 地 位 に も た と え ら れ る。 彼 ら は 技 術 ゆ え に 庇 護 さ れ 、 利 用 さ れ る が 、 そ れ 以 上 の も の で は な い 。 学 術 研 究 者 た ち も ま た 、 そ の 生 活 の 糧 は 、 技 術 の 開 発 ・研 究 に よ っ て 保 障 さ れ て い る に 過 ぎ な い 。 そ う で あ っ て も、 知 の 境 界 線 は 、 大 衆 と知 識 人 を 分 け て い る の で あ る。 そ れ は ま さ に 「言 語 使 用 の 差 」 に よ っ て で あ る 。 こ こ で 簡 単 に 事 例 を あ げ れ ば 、 大 衆 は 、 時 間 を 、 「絶 え 間 な く流 れ 、 戻 ら な い も の 」 と 定 義 し、 「時 は 金 な り 」 と い う メ タ 言 語 的 定 義 ・命 題 に よ っ て 、 人 生 を 理 解 し、 価 値 観 とす る。 し か し、 ラ イ プ ニ ッ ツ は 時 間 を 「事 象 が 生 起 す る序 列 関 係 の 構 成 」 と し、 自然 科 学 者 は 「時 間 と は 、19世 紀 後 半 の 熱 力 学 第2法 と、 そ の 関 連 か ら可 逆 性(逆. 転 可 能 性)か. 則(エ. ン ト ロ ピ ー 増 大 の 法 則)の. 確立 をふまえ る. ら考 え う る、 ア ・プ リ オ リ で な い も の 」 と定 義 す る。. そ の 言 語 使 用 の 差 が 大 衆 と ア カ デ ミズ ム を 分 け て い る。 そ の ア カ デ ミズ ム を 支 え る の は 、 個 々 の 科 学 者 で は な く、 た と え ば 「そ の エ ン ト ロ ピ ー と は 」 と い う よ う に 、 言 語 間 ・定 義 間 が 精 緻 に 構 成 さ れ 、 増 殖 す る 「科 学 言 語 群 」 な の で あ る。 オ ル テ ガ ・イ ・ガ ゼ ッ トの 「大 衆 の 反 逆 』(1930)10に. お け る大 衆 は、 世 俗 の諸 権 利 を主 張 す る. も の と し て の 大 衆 で あ り、 文 化 と社 会 を 堕 落 さ せ る要 因 と定 義 さ れ た 。 ガ ゼ ッ トが 貴 族 主 義 の 哲 学 者 で あ っ た こ と を 別 に し て も、 大 衆 が 社 会 を 形 成 す る に た る ポ ジ シ ョ ン を 得 た こ と は 確 か で あ る。1930年. 代 、 社 会 主 義 台 頭 の 思 潮 の 中 、 ヒ ト ラ ー は 、「わ が 闘 争 』(1925(1巻)、1927(2巻))11. の な か で、 大 衆 を社 会 変 革 の た め の主 役 とい い つ つ、 彼 らは. ① 小 さな幸 福 と 自己保 身 を追 い求. め 、 ② 理 性 で な く感 情 的 な 憧 れ に よ っ て 動 き 、 ③ 強 者 や 絶 対 権 力 に は 身 を か が め 、 ④ 宣 伝 に 不 和. 一103一.
(12) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要8巻2号(2008・12) 雷 同 し や す い 、 と指 摘 し た 。 こ の 指 摘 を マ ス ・メ タ メ ッ セ ー ジ の 例 で 示 せ ば 、 次 の よ う に な る。 ① 「欲 張 ら ず こ つ こ つ と 町 の 片 隅 で 生 き ら れ れ ば 結 構 」、 ② 「野 球 選 手 の00は. 、 感 動 を 与 え て く れ る俺 の 人 生 の 手 本 だ 」 ③. 「長 い も の に は 巻 か れ ろ 、 上 司 に 楯 突 か な い 」 ④ 「今 欲 し い の は テ レ ビ の コ マ ー シ ャ ル で や っ て た ○ ○ だ 」 と な る。 こ れ は メ タ 言 語 的 観 点 か ら の 大 衆 的 価 値 形 成 の 事 例 で あ る。 そ し て マ ス メ タ 言 語 を 援 用 し た 「大 衆 の 心 理 」 の 操 作 に よ っ て 、 フ ァ シ ズ ム は 大 衆 の 動 員 に 成 功 し た 。 し か し、 今 日、 「CO2を. 減 ら して 地 球 を 救 え 」 と い う メ ッ セ ー ジ が 大 衆 社 会 に 敷 丁%7した と き 、 メ タ 言 語 機 能. と し て は 、1930年 K.マ. 代 社 会 の プ ロ パ ガ ン ダ と エ コ ロ ジ ー ・キ ャ ン ペ ー ン の メ ッセ ー ジ と の 差 は な い 。. ンハ イ ム 「変 革 期 に お け る 人 間 と 社 会 』(1935)12で. る。 第1次. の 重 要 な指 摘 は次 の よ うな もの で あ. 世 界 大 戦 後 の 中 間 層 の 没 落 で エ リ ー ト層 と大 衆 を つ な ぐ 中 間 層 が な く な り、 階 級 と共. 同 体 の 解 体 は 、 大 衆 層 の 肥 大 化 を ま ね い た 。 あ る メ タ メ ッ セ ー ジ が 大 衆 の 不 安 と不 満 に 働 き か け よ う とす る こ と は あ り う る の で あ る。1930年. 代 の メ ッ セ ー ジ発 信 源 は フ ァ シ ズ ム で あ っ た が 、 言. 語 社 会 的 構 造 は 、 時 代 を 超 え て 不 変 で は な い か 。(マ. ンハ イ ム は、 こ の危 機 は 民 主 主 義 的 議 会 政. 治 と大 衆 の 再 組 織 と し て の 教 育 に よ っ て 回 避 で き る と し た 。) 1950年 代 以 降 の ア メ リ カ で の 批 判 的 大 衆 社 会 分 析 論 や1960年 会 へ の い く つ か の 処 方 箋 を だ し て い る。1970年. 代 の 日本 の 大 衆 社 会 論 は 、 大 衆 社. 代 以 降、 高 度 産 業 化 を経 験 した大 衆 社 会 で は、 生. 産 力 主 義 の 肯 定 の 上 に 成 り立 つ 生 活 保 守 主 義 や 、 大 衆 の 分 節 に よ る 「柔 ら か い 個 人 主 義 と柔 ら か い 管 理 社 会 」 の 提 唱 が あ る。 そ こ で は 自発 的 服 従 と し て の 新 し い 社 会 運 動 や 地 域 共 同 体 へ の 参 加 (NGO、NPO活 う)が. 動 の 活 性 化 や 環 境 と資 源 を め ぐ る市 民 運 動 ネ ッ トワー クな どが そ の 事 例 で あ ろ. 見 え て き た。. これ らを考 慮 に い れ て もな お、 メ タ言 語 論 の観 点 か らみ れ ば、 大 衆 は進 化 的 に 消滅 した とい う こ と は で き な い 。 図 式 と し て 、 知 的 エ リ ー ト対 大 衆 と い う 図 式 は 無 効 に な り つ つ あ る よ う に み え る。 し か し、 大 衆 と は 知 的 エ リ ー ト と 区 分 さ れ る 「別 の 人 間 」 で は な い 。 個 人 の 内 部 に 大 衆 は 存 在 す る。 最 先 端 分 野 の 開 発 エ キ ス パ ー トの 生 活 価 値 観 は 「平 穏 に 生 活 で き れ ば そ れ が 幸 福 」 と い う メ タ ・メ ッ セ ー ジ に支 え られ て い る と した ら、 そ の メ ッ セ ー ジ は 、 ア カ デ ミ ッ ク ・メ タ メ ッセ ー ジ で は な く、 マ ス ・メ タ メ ッ セ ー ジ だ か ら で あ る。 上 記 の 事 柄 を 考 慮 に い れ れ ば 、 大 衆 と(メ. タ)言. が で き よ う。. 一104一. 語 に つ い て は、 次 の よ うな仮 説 を立 て る こ と.
(13) ア カ デ ミ ック ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 1)大. 衆 は 、 統 合 的 で 整 合 性 を も つ 知 的 定 義 の 集 合 体 で あ る ア カ デ ミ ッ ク ・メ タ 言 語 と は 異. 質 の メ タ言 語 の世 界 に生 きて い る。 2)そ. の メ タ 言 語 は 、 世 間 と 人 生 に た い す る 、 短 い 命 題(メ. ッ セ ー ジ)で. あ る こ とが 多 い。. 3)そ. の メ タ 言 語 は 、 大 衆 個 々 の 「人 生 の 物 語 」 と 「人 生 に お け る 価 値 観 」 を 形 成 す る 。. 4)こ. れ を マ ス ・メ タ 言 語 と い う こ と が で き る 。. 上 記 の ま とめ は、 ア カ デ ミッ クな観 点 か らの メ タ言 語 や、 言 語 学 の メ タ言 語 に対 峙 す るよ うな も う一 つ の メ タ言 語 の あ り方 を示 した もの で あ る。 ま た本 論 で は マ ス ・メ タ言 語 に か か わ る大 衆 につ いて の 議 論 に紙数 を割 くこ とで 、 ま ず二 つ の メ タ言 語 の 序説 ・概 説 を述 べ る こ とを 目指 した。 マ ス ・メ タ言 語 の具 体 例 の例 証 的検 討 は、 今 回 の論 考 で も部 分 的 に、 簡 潔 に行 う もの の、 そ の詳 細 に わ た る検 討 は、 今 回 の論 考 で は省 き、 今 後 、 論 を あ らた め て徹 底 して議 論 ・検 討 す る もの と す る。. 4-3.ア. カ デ ミズ ム の批 判 的検 討:知 を め ぐ る 「ね じれ 」. メ タ言 語 学 的 に は知 に 関 して微 妙 な ね じれ を指 摘 で き る。 知 の領 域 、 つ ま り研 究 や教 育 に は社 会 へ の貢 献 と人 間 的 な成 長 を担 う こ とが期 待 され て い る。 しか し、 知 的上 昇 が、 社 会 的地 位 の上 昇 で あ り、 権 力 へ の接 近 で あ る とい う構 造 が社 会 に 出来 上 が った とき か ら、 大 衆 の教 育 と救 済 と い う役 割 を知 が担 い き れ な くな った。 学 歴 社 会 や成 果 主 義 、 業 績 の数 値 化 や実 用 性 過 剰 評 価 の 時 代 とい う状 況 を考 慮 に い れ て もよ い。 親 鷺 の教 義 思 想 を例 に取 るま で もな く、 信 仰 の本 質 、 人 間 の心 の救 済 の本 質 を突 き詰 め れ ば、 組 織 化 した宗 教 や、 同様 に組 織 化 し権 力 構 造 を 内包 した学 問 の場 は、 「科 学 の体 制 化 」 と い う概 念 か らみれ ば非 難 され う る。 大 衆 に と って、 貧 困 か らの脱 出 の機 会 と手 段 が、 学 問 で あ る こ とは、 事 実 で あ る。 中 国 の科 挙 か ら、 現 代 イ ン ドのIT技. 術 に い た る ま で、 知 は大 衆 に と って 力=権. 力 に接 近 す る手 段 で あ り. 人 生 の可 能 性 を意 味す る。 知 を公 的貢 献 ・奉 仕 の側 面 か ら理 解 しな い大 衆 か らは、 愚 か な大 衆 、 悪 意 あ る大 衆 、 す な わ ち衆 愚 とい う概 念 が浮 か び上 が る。 同 時 に、 宗 教 に お け る普 遍 的 な価 値 観 か ら考 え れ ば、 下 賎 で憎 悪 に満 ち た心 を持 つ者 にた い して も、 「衆 愚 」 の 名 の も と に退 け て は な らな い、 とい う観 点 が あ る。 そ れ ゆ え知 の 階段 を下 りて衆 生 の も とに還 る 「還 相 」 が、 知 的上 昇 た る 「往 相 」 と セ ッ トに され る。 知 が 「知 の 力 」 「知 の 技 」 と して、 そ の 序 列 階 層 を設 定 した と き か ら、 も し衆 愚 と して そ の 「愚 か さ」 を責 め れ ば、 そ の非 難 は、 知 の 階段 を上 って 「高 い と こ. 一105一.
(14) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) う か ら もの を言 う」 こ とに 他 な らず 、 そ の よ うな 非 難 者 は、 「知 の階 段 を下 りて 衆 生 に還 る」 こ とが達 成 され て い な い と考 え られ る。 愚 者 に愚 で あ る こ とや、 そ の もの が持 つ愚(さ. らに怒 り、. 歪 み な どす べ て)を 責 め る こ と 自体 もま た 「知 の 階段 を上 る」 こ とに な る。 現 代 科 学 の哲 学 ・倫 理 思 想 に、 知 的上 昇 へ の 自戒 の思 索 が ふ くま れ て い るだ ろ うか。 こ こで メ タ言 語 論 が言 い 当 て よ う と して い るの は、 衆 愚 とい う大 衆 そ の もの で は な い。 言 い 当 て た い の は、 知 が知 的パ ワー エ リー ト(知 的上 流)を 生 み 出す と と もに、 知 的パ ワー エ リー トが 確 信 犯 的 に、 ま た似 非 知 的 エ リー トが 衆 愚 を 自己 正 当化 の た め に利 用 し、 「学 術 研 究 は大 衆 の利 便 と幸 福 の た め に あ る」 とい うよ うに科 学 自身 を正 当化 し、 一 方 、 大 衆 も知 的パ ワー エ リー トに 迎 合 して しま う(科 学 の発 展 の恩 恵 を受 け つ つ、 世 間知 らず と して専 門家 を蔑 視 す る)と い う状 況 が生 まれ る。 こ こに 階級 闘 争 的 思 考 の 復権 が あ れ ば、 知 識 と文 化 は社 会 的 階 級 差 を生 む ゆ え に、 知 識 と文 化 の打 倒 とい う思 潮 の再 現 の可 能 性 も生 ま れ る。 そ れ は望 ま しい状 況 で は な い が、 現 代 日本 の格 差 社 会 批 判 に な か に は、 単 純 な社 会 階級 闘争 へ の 回帰 の萌 芽 が見 られ る。 これ に熟 考 を うな がす の もメ タ言 語 論 の使 命 で あ る。 ア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 を め ぐ る関係 を考 察 す るた め の材 料 と して、 終 末 論 を め ぐ る論 争 が あ げ られ る。 大 衆 社 会 に して情 報 社 会 で あ る近 ・現 代 に お い て は、20世 紀 末 か ら 世 紀 末 ・人 類 滅 亡 預 言 が大 衆 社 会 で繰 り返 し、 話 題 とな って い る。 人 類 の終 末 を想 定 す る こ と 自 体 、 非 科 学 的 で あ り、 科 学 は終 末 論 の議 論 に す ら加 わ らな い で あ ろ う。 一 方 、 大 衆 に と って終 末 論 ほ ど、 興 味 と、 あ る種 の期 待 を も って、 自明 の こ と と して受 け入 れ られ る課 題 は な い。 現 世 に お け る悪 の増 大 と世 界 の終 わ り と、 そ れ に伴 う救 世 主 の 出現 へ の(メ タ)言 語 的定 義 が終 末 論 で あ る。 ギ リ シ ャや オ リエ ン ト、 仏 教 に お け る末 法 思 想 を は じめ キ リス ト教 の終 末 論 な どは、 大 衆 に と って、 宗 教 的 ・普 遍 的 な課 題 で あ る。 ユ ダ ヤ の預 言 は、 終 末 物 語 の み な らず 政 治 と宗 教 へ の 大 衆 か らの批 判 か ら出発 して神 の世 界 審 判 とメ シア の到 来 とい う壮 大 な言 語 的定 義 で あ る。 そ う で あ って も黙 示 文 学 で は歴 史 の 中 に人 類 の終 局 の過 程 が語 られ る こ とに よ って歴 史 の偶 然 性 は 消 え る13。 実 は こ こで も、 人 類 史 の 中 で起 こ る事 件 を考 え るの に、 偶 然 か必 然 か、 ま た複 数 の可 能 世 界 の 選 択 的現 出 か とい う問題 に お い て考 え るな らば、 科 学 は宗 教=大 衆 的世 界 認 識 を簡 単 に否 定 す る こ とは で き な くな る。 終 末 論 は歴 史 の循 環 思 想 で は な く精 密 な言 語 装 置 で あ る。 そ の 中 で、 歴 史 は象 徴 化 され意 味化 され る と と もに、 象 徴 化 され な い絶 対 的事 象 を もつ とい うの が、 と りわ け キ リス ト教 的終 末 論 で あ る。 キ リス ト教 は、 キ リス トの第 一 の到 来 と第 二 の到 来 の、 両 極 の 緊 張 が. 一106一.
(15) アカデ ミック ・メタ言語 とマス ・メタ言語 宗 教 を支 え る構 造 を宗 教 の 中 に持 つ世 界 認 識 の方 法 で あ る。 これ に対 して、 科 学 に 「分 野 や考 察 の次 元 が違 うの で議 論 が か み合 わ な い」 との逃 げ を許 さな い の もメ タ言 語 論 で あ る。 す くな く と も科 学 は終 末 論 に対 し科 学 哲 学 と して 終 末論 へ の 「迷 信 」 以外 の解 答 を用 意 しな けれ ば な らな い。. 4-4.メ. タ言 語論 の 起 源:ヨ ハ ネ に よ る福 音 書 を め ぐって. メ タ言 語 論 の考 察 対 象 を、 言 葉 とい う問題 に絞 って、 聖 書 の言 葉 を題 材 に と る こ とが で き る。 「初 め に言(こ. とば)が. あ った」 か ら始 ま る 『ヨハ ネ に よ る福 音 書 』 を メ タ 言 語 学 の 観 点 か ら読. み解 い て み よ う。. 初 め に 言(こ. と ば)が. あ っ た 。 言 は 神 と共 に あ っ た 。 言 は 神 で あ っ た 。 (『ヨ ハ ネ に よ る 福 音 書 』. 11^14). これ を、 「人 間 は言 語 と持 つ とい う点 で、 他 の 動物 とは 区別 され る。人 間 は言 語 で コ ミュニ ケ ー シ ョ ンを とれ る こ とに よ って、 文 明 を発 達 させ今 日の繁 栄 を手 に い れ た=言 語 は神 が人 間 に与 え たす ば ら しい贈 り物 だ」 と解 釈 す る こ とは 的 を はず して い るよ うに み え る。 そ の な か で、 人 間 が 言 語 に い か に拘 束 され、 思 考 を制 限 され て い るか、 とい う点 は評 価 で き る。 これ は言 語 学 の概 念 で も見 られ るよ うに、 思 考 は言 語 に よ って な され る、 とい う考 え と同 じで あ る。 む しろ、 人 間 よ り上 位 に神=言(=超. 越 的 ・普 遍 的 な真 理)を 位 置 させ る と ころ に、 そ れ が読 み とれ よ う。. 万 物 は言 に よ って成 った。 成 った もの で、 言 に よ らず に成 った もの は何 一 つ な か った。 (引 用 同 上). 一 般 に、 ま た言 語 学 に お い て も、 言 語(単 語)は 指 示 対 象 を示 し、 あ るい は指 示 対 象 の代 用 を し、 言 語 の背 後 に は指 示 対 象(一 般 に は言 語 が指 示 す るモ ノ)が あ って、 そ ち らの方 が正 体=意 味 と考 え られ て い る。 言 語 は指 示 対 象 の代 用 で あ り、 現 実 世 界 を光 とす れ ば、 言 語 は影 と考 え ら れ る。 そ うで あ れ ば、 「言 が万 物 を成 ら しめ る」 とい う表 現 は言 語 学 の理 屈 に あ わ な い。 した が っ て先 に述 べ た よ うに、 言 語 は人 間 が 生 み 出 した もの で は あ って も(こ の考 察 は言 語 哲 学論 な の で、 神 の 存 在 を 無 条 件 に うけ い れ ず 、 人 間 が生 み 出 した 文 化 の一 つ と考 え る)、 い った ん 言 語 が生 み 出 され る と、 人 間 が言 語 を使 うば か りで な く、 無 意 識 の うち に生 み 出 した言 語 に人 間 が使 わ れ、. 一107一.
(16) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) 人 間個 人 の思 考 は、 そ の人 の誕 生 以 前 か らあ る文 化 一社 会 シス テ ム と して の言 語 に支 配 され、 制 限 され る と考 え られ る。 た とえ ば 「格 差 」 とい う言 葉 は、 以 前 か らあ り、 社 会 的 な収 入 や生 活 レベ ル な どに、 階層 や地 域 な どの差 が あ った こ とは 間違 い な い。 しか し、21世 紀 初 頭 の 日本 で行 政 機 構 や そ れ に ま つ わ る 意 識 ・社 会 的思 潮 に変 化 が あ って か らは、 そ の変 化 に 自身 の不 満 の原 因 を見 出 した い人 々 に と っ て、 「格 差 」 「格 差 社 会 」 は、 新 しい意 味 を担 う こ とに な る。 意 味 の考 察 か ら言 え ば、 意 味 の派 生 的追 加 で あ る。 しか し実 は新 しい意 味 が付 与 され た こ とに よ って、 格 差 とい う 「よ か らぬ もの」 「自分 た ち を苦 しめ る何 か 」 「憎 む べ き何 か」 が、 今 そ こに存 在 す るよ うに感 じ られ る。 政 治 ・経 済 ・社 会 に精 通 す る者 だ け が 「格 差 の意 味」 を論 じ られ る。 専 門家 つ ま りア カ デ ミッ ク ・メ タ言 語 使 用 者 に と って、 格 差 は モ ノー正 体 を別 の言 葉 で、 ほ とん ど無 限 に詳 細 に わ た って定 義 で き る もの で あ る。 言 語 で定 義 で き る こ とは、 人 間 に安 心 を与 え る。 しか し一 方 、 大 衆=知. に 関 わ らな い人 々 は、. 言 語 に よ る正 確 か つ詳 細 な定 義 を持 たず 、 た だ世 間 に流 通 す る 「格 差 」 とい う言 葉 だ け を持 つ の で、 格 差 の付 加 的副 次 的意 味 に恐 れ と不 満 を抱 くの で あ る。 流 行 語 と して新 しい 「言 葉 が生 ま れ る」 こ とは 「新 しい モ ノが生 ま れ る」 こ とで あ って、 既 存 の言 葉 の リサ イ クル で は な い。 今 日の 日本 の教 育 現 場 とい う文 脈 で は、 不 登 校 とい う問題 行 動 や 問題 児 とい う個 人 が い るか の よ うに、 言 葉 が モ ノを つ く り続 け る。 重 要 な の は、 主 導 権 は生 ま れ 出 た言 葉 そ の もの に あ って、 不 登 校 を 病 気 の よ うに扱 う こ との誤 謬 を教 育 の 専 門 家 が 指摘 して も、 人 々 が抱 き、 マ ス コ ミを通 して す で に社 会 に蔓 延 した言 葉(に. ま つ わ る感 情)を 打 ち 消 す こ とは. 容 易 で は な い。 そ の理 由 の一 つ は、 言 語 に支 配 され、 言 語 の存 在 す る所 に実 体 的 な モ ノが あ る と 感 じ るの は、 日常 、 言 葉 を使 用 しつ つ言 葉 の正 確 な定 義 を もた な い人 々 と して の大 衆 で あ る。 し か し大 衆 の不 正 確 な言 語(定 義)使 用 を指 弾 す るの は、 言 語 に よ る対 象 の言 い 当 て(一 知)に. 関. る とい う意 味 で、 知 識 人 で あ る。 しか し、 知 識 人 とは地 位 や身 分 や職 業 の こ とで は な い。 専 門研 究 者 は あ る分 野 で は 「知 識 人 」 で あ って も、 別 の分 野 で は 「大 衆 」 な の で あ る こ とを忘 れ て は な らな い。 だ か ら こそ、 知 の 階段 を昇 る こ とに しか価 値 を見 出 せ な い と ころ に、 知 に お い て さえ権 力 構 造 が生 ま れ る。 知 識 人 で あ れ、 同 時 に大 衆 で あ れ、 間違 い な く全 て の人 間 が、 「自分 の人 生 」 を生 き て い お り、 人 生 の 中 で言 葉 に 出会 い、 そ の言 葉 に よ って、 物 質 世 界 で は な く精 神 世 界 と し て の人 生 を生 き て い る。 そ の とき、 言 語 の定 義 機 能 だ け で は、 言 語 は生 き る道 具 と して は十 分 で は な い。 そ の こ とを次 の一 説 が示 唆 して い る。. 一108一.
(17) ア カ デ ミ ック ・メ タ言 語 とマ ス ・メ タ言 語 言 の 内 に 命 が あ っ た 。 命 は 人 間 を 照 ら す 光 で あ っ た 。 光 は 暗 闇 の 中 で 輝 い て い る。 暗 闇 は 光 を理 解 しな か った。. これ以 上 、 聖 書 の言 葉 「につ いて 説 明す る」、 つ ま り メ タ言 語 的 な作 業 を 続 け る こ と は誤 解 と 批 判 を受 け る可 能 性 が あ る。 そ れ は解 釈 の作 業 で もあ るの で、 同 じ解 釈 作 業 で あ る神 学 ・聖 書 学 か らの学 問 的批 判 が予 想 され る。 しか し こ こで行 って い る作 業 とは、 言 語 の哲 学 に つ い て の議 論 で あ る。 さて この 「命 」 や 「光 」 の意 味 す る もの は、 本 能 の壊 れ た動 物 と して の人 間 が、 言 語 に よ る思 考 を獲 得 した とき か ら運 命 付 け られ た 「生 き て い くた め の不 安 の解 消 と生 き が い の必 要 性 に 由来 す る言 語 に よ る構 築 物=物 語 」 で あ る。. 彼(ヨ. ハ ネ)は. 光 で は な く、 光 に つ い て 証 を す る た め に 来 た 。 (『ヨ ハ ネ に よ る福 音 書 』). 言 は 世 に あ っ た 。 世 は 言 に よ っ て 成 っ た が 、 世 は 言 を 認 め な か っ た 。 言 は 、 自分 の 民 の と こ ろ へ来 た が、 民 は受 け入 れ な か った。. (引 用 同上). 「光 につ い て の 証 」 と い う言 葉 が、 定 義 ・説 明 関係 が 介 在 す る間 接 性 、 つ ま りメ タ的 構 造 を 暗 示 して い る。 そ して そ の あ との一 節 は、 言 語 を持 ち、 知 を発 展 させ て文 明 ・文 化 を築 い た人 間 の 傲 慢を責 め て い る。 意 味=指 示 対 象 が あ るか ら言 葉 が あ るの で は な く、 言 葉 が あ れ ば、 そ こに意 味=実 体 が 「あ る」 と考 え、 感 じ るの だ、 とい う言 葉 の あ り方 は、 従 来 、 言 語 の学 や理 論 で は十 分 に検 討 され て い な い。 日常 の言 葉 に よ って、 世 間 を把 握 し、 同 時 に言 葉 に翻 弄 され、 言 葉 に束 縛 され、 そ れ で もそ の よ うな言 葉 の構 造 を意 識 しよ う と しな い大 衆(=私. た ち)の あ り方 を聖 書. の言 葉 は言 い 当 て て い る。. 5.結. び に か え て:今 後 の展 開 と課 題. 本 論 で の検 討 内容 を、 簡 潔 に、 ま た メ タ言 語 論 の原 理 と して整 理 しよ う。 メ タ言 語 に か か わ る、 メ タ 的構 造 に は次 の よ うな原 理 が あ る と考 え られ る。. 一109一.
(18) 近畿大学語学教育部紀要8巻2号(2008・12) メ タ 的構 造 に 関 す る3つ の原 理 1)高. 次 元 へ の繰 り上 が りの原 理. 2)相. 似 的 増 殖 の原 理. 3)無. 限 反 復 一無 限 増 殖 の原 理. 3つ の原 理 の組 み合 わ せ 1)+3)一. 高 次 元 へ の繰 り上 が りは、 無 限 に続 く。. 科 学 的探 究 に お い て も一 つ の分 野 の大 前 提 は、 そ の研 究 分 野 が生 ま れ た 瞬 間 か ら、 そ の前 提 を 包 含 し、 ま た否 定 を含 め た 、 「更 に普 遍 的 な視 点 」 か らそ の 前 提 を論 じ う る次 元 と高 次 元 メ タ言 語 が生 ま れ て い る。 普 遍 理 論 は 固定 的 で は あ りえ な い。 2)+3)=基. 本 的 に は 同 じ形 状=同. じ概 念 の もの が、 規 模 を変 え、 時 間 を変 え て、 何 度 も出. 現 す る。 これ は見 方 を か え れ ば、 完 全 な オ リ ジナ ル は人 間世 界 に は あ りえ な い、 とい う こ とに な る。 発 想 や概 念 自体 は不 変 の、 い わ ば知 の原 型 は す で に整 え られ て い る。 人 間個 々 は、 実 存 的 な意 味 に お い て 「私 の人 生 とい う フ ィー ル ドで の初 め て の発 見 」 で あ って も、 人 間規 模 の知 の体 系 の 中 で は、 す で に誰 か 「先 行 した発 見 」 と同 じで あ る こ とが起 こ り う る。 ま た 時代 が異 な って も、 そ の (言 語 を含 め た)「 表 現 形 式 」 が異 な るだ け で、 基 本 的発 想 や概 念 は 同 じ(=相 う こ とが起 こ り う る。 した が って、 人 間 の(物 質)文. 似 形 で あ る)と い. 明 は線 形 的 時系 列 で 「進 化 発 展 」 して い る. よ うに み え て も、 そ の基 本 構 造 は 同 じで あ り、 表 現 形 式 の差 とは、 相 似 形 の繰 り返 しで あ る とい え る。 人 間個 々 を含 め た人 類 の発 達 とは、 発 見 の歴 史 で は な く、 あ くま で も 「再 発 見 の歴 史 」 で あ る と定 義 す るほ うが正 確 か も しれ な い。 この仮 説 に疑 義 を とな え る可 能 性 が最 も大 き い の が、 本 論 で い う と ころ の ア カ デ ミッ ク ・メ タ 言 語 の 「科 学 性 と客 観 性 」 とい う価 値 観 に依 拠 す る人 々 か も しれ な い。 ア カ デ ミズ ム の権 威 は メ タ言 語 論 に よ って大 い に傷 つ くか らで あ る。 しか し考 え て み よ う。 と りわ け科 学 的 な発 見 の先 行 性 は、 科 学 的探 究 そ の もの の価 値 とは何 の 関係 もな い。 どの研 究 が最 先 端 の発 見 で あ るか の判 定 は、 確 か に(学 術 ・管 理)組 織 へ の 申請 の 時刻 ・順 位 に よ って判 定 され う る。 しか しそ の序 列 は 「ま さ にそ の個 人 の発 見 の 価 値」 とは無 関 係 で あ るは ず だ。 さ らに考 え れ ば、 発 見 ・発 想 の盗 用 ・ 剰 窃 問題 を考 え よ う。 さ らに この 問 題 は知 的所 有 権 ・知 的 財 産権 も問題 に関 連 す るよ うに み え る。 しか しそ れ らの 問題 は人 間 の知 の 問題 で は な く、 経 済 と制 度=権 威 の 問題 に他 な らな い。 最 新 の. 一110一.
(19) ア カ デ ミ ッ ク ・メ タ 言 語 と マ ス ・メ タ 言 語. 発 見 も二 番 目の発 見 も、 そ の発 見 が人 類 に与 え る価 値 の質 に差 が あ るわ け で は な い。 た だ、 そ の 序 列 は発 見 者 の社 会 的地 位 や、 そ の発 見 に ま つ わ る経 済 活 動 に お い て、 混 乱 と不 公 正 が起 こ るゆ え に、 い わ ば社 会 的調 整 機 能 と して、 知 的所 有 権 や著 作 権 に か か わ る規 則 ・制 限 の遵 守 が重 視 さ れ るの だ。 今 後 の本 研 究 の展 開 は、 メ タ 的構 造 の分 析 例 を さ らに増 や す こ とで あ る。 と りわ け興 味深 い の は、 科 学 と 「偽 科 学 ・疑 似 科 学 」 の 問題 で あ る。 そ れ らは社 会(経 済)問 題 に 関連 す る(科 学 を 名 乗 る詐 欺 商 法 な どの)事 例 で の検 討 が適 当 か つ興 味深 い と考 え られ る。 ま た 「都 市 伝 説 」 と呼 ば れ る問 題 も重 要 な分 析 課 題 で あ る。 そ れ らは ア カ デ ミズ ム の立 場 か ら は、 「あ りえ な い非 科 学 的言 及 」 で あ り、 通 俗 的 ・大 衆 的 「物 語 」 で あ って、 そ れ は あ る社 会 階層 に流 通 す る 「メ タ言 語 的言 い 当て 一世 界 把握 の一 仮 説 」 で あ って も、 極 め て その 「科学 的価 値 は低 い」 と され る だ ろ う。 しか し、 た とえ ば超 常 現 象 な どの よ うな 問題 は 「科 学 的観 点 か らは否 定 され るが、 社 会 学 的観 点 か らみれ ば興 味 深 い現 象」 と考 え るな らば、 そ の思 考 法 は、 メタ 的構 造 論 か らい え ば誤 って い る。 現 代 の最 先 端 科 学 こそ が、 そ れ を相 対 化 す るメ タ科 学 の存 在 を勘 案 せず に、 科 学 の妥 当性 の保 証 の 問題 を不 問 に して い る。 これ は論 理 の す り替 え に ほ か な らな い。 た しか に科 学 哲 学 や 「科 学 と 倫 理 」 「科 学 の 相 対 化 の た め の科 学 史 」 は あ り うる。 しか し科 学 の学 術 体 系 の 一 部 に科 学 哲 学 を 備 え る こ とで科 学 全 体 が哲 学 的疑 義 へ の 回答 を 出 した こ とに は な らな い の で あ る。. 注 と参考文献 1. Frege,Gottlobb."OnSenseandReference".(Trans.)ThePhilosophicalWritingsofGottlob Frege.(Oxford:BasilBlackwell,1960). り乙. Mates,Benson,1950."Synonimity"inUniversityofCaliforniaPublicationsinPhilosophy25.. 90. Hasegawa,Kinsuke,1972"TransformationsandSemanticInterpretation".Linguistic Inquiry3,pp.141-159.. 4. Postal,P.M.(1974)"OnCertainAmbiguities".LinguisticInquiryS,pp.367-424. 反﹂. Jackendoff,R.S.(1975)"OnBelief-Contexts".LinguisticInquiry6,pp.5393.. 農U. ル イ ス ・イ ェ ル ム ス レ ウ(LouisHjelmslev)の て. 「一 般 文 法 の 原 理 」1928(三. 説(ル. 7. イ ス. イ ェル ム ス レウ. 照。 その他 、世 界 言語 学 名著 選集. 世 界 言語 学 名著 選 集. 〈第6巻. 〈第6巻. 〉 言 語 理 論 序 説(ル. イ ス. イ ェル ム ス. イ ・ イ ェ ル ム ス レ ウ/竹. ロ ラ ン ・バ ル ト(RolandBarthes)の. 著 書 の う ち 今 回 の 議 論 に 関 連 し 重 要 な も の は 、 『零 度 の エ. T・W・. ア ドル ノ. 『神 話 作 用 』1957、. とK・R・. ポ パ ー(城. 「記 号 学 の 原 理 』1964参 塚. 登 訳)r社. 一111一. 内 孝 次 訳)参. 〉言 語 理論 序. レ ウ)・ 言 語 理 論 の 確 立 を め ぐ っ て(ル. ク リ チ ュ ー ル 』1953、. 8. 省 堂)参. 著 書 の う ち今 回 の 議 論 に 関 連 し重 要 な も の と し. 照。. 照。. 会 科 学 の 論 理 』 河 出 書 房 、1979。. 他 にM..
(20) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要8巻2号(2008・12) ホ ル ク ハ イ マ ー 『啓 蒙 の 弁 証 法 9吉. 哲 学 的 断 想 』(徳 永. 悔 訳)岩. 波 書 店 、2007な. ど も参 照 。. 本 隆 明 、 仏 教 思 想 に お け る 知 の 往 還 論 に つ い て は 『最 後 の 親 鷺 』(春 秋 社 、1976)、 識 人 の 課 題 」 に つ い て は 『情 況 へ の 発 言 」(徳 間 書 店 、1968)所. 10原. お よ び 「知. 収 「知 識 人 の 課 題 」 参 照 。. 著 はOrtega・y,GassetLaRebelionDeLasMasas(TheRevoltoftheMasses(Ogg1930)。 ま た 訳 書 は ガ ゼ ッ ト ・イ ・オ ル テ ガ 『大 衆 の 反 逆 』(ち くま 学 術 文 庫 、2005)な. 11第1巻. 「EineAbrechnung」(和. 解)は1925年7月18日. NationalsozialistischeBewegung」(国 選 ん だ オ リジ ナル タ イ. 文 庫 、1973年. が 闘 争)に. に 公 表 さ れ た 。 第2巻. 家 社 会 主 義 的 運 動)は1926年. 「Die. に 公 表 さ れ た 。 ヒ トラ ー が. トル は 「ViereinhalbJahregegenLuge,DummheitundFeigheit」. (嘘 と臆 病 、 愚 か さ に 対 す る4年 半)だ Kampf」(我. ど。. っ た が 、 後 に こ の タ イ トル が 複 雑 だ と い う こ とで 「Mein. 決 定 し た 。 訳 書 と して 平 野 一 郎 、 将 積. 茂訳. 『わ が 闘 争 」 上 ・下(角. 川. 改 版2001年). 12KarlMannheim,Menschand(}ε3ε. 〃3凶φ'刑ZeitalterdesUmbaus.Leiden,1935(福. 武. 直訳. 『変 革 期 に お け る人 間 と 社 会 』 み す ず 書 房 、1962年) 13黙. 示 的 終 末 論 は 、 弁 証 法 的 神 学 の 発 展 以 来 、 決 し て異 端 的 な 議 論 で は な くな った 。J.モ (『組 織 神 学 論 叢1三. 位 一 体 と神 の 国 』(土 屋. 清 訳)新. 題 と して 終 末 論 は 自然 と歴 史 の 根 本 規 定 と考 え る。. 一112一. 教 出 版 社 、1990。)は. ル トマ ン. 神 学 の 中心 的課.
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