<論文>マス・メタ言語の諸相
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(2) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. て も、 メ タ 言 語 は 対 象 言 語 を 科 学 的 に 説 明 し定 義 し て 、 理 論 構築 を す る た め に 用 い ら れ る の で あ る か ら、 メ タ 言 語 は 、 対 象 言 語 と は 理 論 範 疇 レベ ル 的 に 区 別 さ れ る 、 と規 定 し な け れ ば 、 二 つ の 言 語 の 間 で 矛 盾 や 混 乱 が 生 ず る 。 し た が っ て メ タ 言 語 と対 象 言 語 の 区 別 は 必 要 で あ る 。 しか し疑 問 が あ る 。 も し 日本 語 を 分 析 す る た め の 文 法 記 述 の メ タ言 語 を英 語 が 担 っ た と しよ う。 その 役 割 分 担 を もっ て、 英 語 が 常 に他 言 語 に対 し て 「メ タ 言 語 で あ る 資 格 が あ る 」 とい う こ と は で き な い 。 で は よ り抽 象 的 な 生 成 文 法 理 論 用 語 が 、 対 象 言 語 と しての あ らゆ る人 間言 語 の メ タ言 語 た りう るの か 。 言 語 学 と い う分 野 に お い て は そ う で あ ろ う 。 しか し言 語 学 とい う学 問 分 野 を 相 対 化 さ せ 、 心 理 学 や 医 学 、 脳 科 学 と比 べ た 場 合 は ど う か 。 生 成 文 法 理 論 用 語 も、 そ の 説 明 力 や 定 義 力 に お い て 、 「メ タ 言 語 た り う る 絶 対 的 優 位 」 は 保 証 さ れ な い 。 学 問 分 野 の 優 位 性 を め ぐ る 議 論 は 古 代 か ら あ り、 か つ て は 「形 而 上 学 」 が 、 そ れ 以 外 の 「実 用 的 形 而 下 学 」 よ り優 位 だ と さ れ た 例 を 挙 げ る こ とが で き る 。 ギ リ シ ャ ・ロ ー マ 時 代 の 形 而 上 学 の 復 権 を い い た い の で は な い 。 重 要 な の は 、 メ タ 言 語 理 論 を 突 き詰 め る と、 学 問 に と っ て の 「メ タ学 問 」 が 常 に 設 定 さ れ う る 、 と い う こ と だ 。 メ タ 言 語 理 論 で 興 味 深 い の は 、 言 語 を 説 明 す る た め の 言 語 、 つ ま り 「Aの た め のA」 の た め のA、. の た め のA、. と い う構 造 で あ る 。 そ れ は 「A. の た め の … 」 と い う 無 限 反 復 構 造 で あ り、 無 限 上 昇(視. 点 が 外 に 、 か つ 傭 轍 的 に 上 へ 繰 り上 が る)構. 造 で あ る。 これ が 人 間の 知 や 文 化 をめ ぐ. る 営 み を よ く定 義 し て い る の で あ る 。. ②. メ タ言 語 の あ り方 は人 間 の 権 力 構 造 を象 徴 して い る:も と も と学 問 は、 構 造 的 にそ の研 究 対 象 に対 して メ タ言 語 的 立 場 に位 置 す る と考 え られ て きた。 実 はそ れ が 、 実 社 会 に お け る知 の 優 位 性 と結 びつ い て い る。 人 間 は知 的探 求 と して、 純 粋 な興 味 か ら、 人 間 の周 りにあ る万 物 を定 義 し説 明 しよ う と して きた。 知 的 探 求 に よ っ て万 物 を定 義 す る とい うメ タ言 語 的 作 業 は 、社 会 的 地 位 の 高 さ とは 、 本 来 何 の 関 係 も持 た な か っ た。 しか し また 別 の歴 史 的観 点 か らみ れ ば、 知 的 専 門性 は、 時代 の 為 政 者 に利 用 さ れ、 時 の権 力 構 造 に寄 与 し、 そ の見 返 り と して知 識 人 あ るい は専 門家 とい う階 層 はそ の 身分 を保 証 さ れ優 遇 さ れ て きた。 歴 史 的 過 程 の 中で 、 知 は それ 自 身の 社 会 的 地 位 の 確 保 の ため に、 権 力 構造 の傘 の 中 に入 っ た。 職 人 集 団的 に、 学 術 研 究 者 も制 度 をつ く り、 政 治 が 生 ま れ、 権 力 構造 が 生 ま れ た。 こ れが 今 に続 くア カ デ ミズ ムの 正 体 に ほか な らな い 。 「Aの た め のA」. とい う メ タ的 構 造 は 、小 が 大 の 権 力 構造 の 中 に取 り込 ま. れ、 そ の大 が 特 大 の 権 力 構 造 の 中 に組 み 込 ま れ る、 とい う人 間の 権 力 ・制 度構 造 を比 喩 的 、 暗 示 的 に表 わ して い る。. 一18一.
(3) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. 知 的探 求 とい う意 味 で 、 科 学 や 学 問 にお い て、 定 義 の 対 象 は、 全 世 界 の 万 物 で あ る。 科 学は 「 万 物 を言 葉 で 定 義 で きる はず だ」 とい う思 想 に基 づ い てい る。 科 学 者 が 持 つ 、 世 界 (あ る い は 宇 宙)の 万 物 を定 義 で きる はず だ とい う信 念 は、 科 学 の 哲 学 あ る い は信 仰 で あ る。 科 学 的 メ タ言 語 で 「 万 物 を定 義 す る」 こ と は 「可 能 か 、不 可 能 か 」 とい う問 い 自体 、 科 学 者 に とっ て は意 味 の ない 問 い で あ る。 科 学 的 に意 味 が あ る こ とは、 た だ 「現 時 点 とい う時 間軸 の一 点 にお い て、 科 学 の言 語 で 定 義 ・説 明 可 能 な対 象 ・現 象 と、 定 義 ・説 明 不 可 能 な対 象 ・現 象 が あ る」 こ とだ けで あ る。 科 学 に とって 説 明 不 可 能 な対 象 ・現 象 も、 時 間 の経 過 つ ま り科 学 の 進 化 と と もに、 将 来 に は定 義 ・説 明 可 能 に な る とい う科 学 史 観 が 存 在 す る。 こ の科 学 史 観 が 、 科 学 と 「科 学 以 外 の もの 」 との 分 岐 点 で あ る。 そ こで 分 岐 す る二 者は 「 科 学 と宗 教 」 で あ った り、 「科 学 と芸 術 」 で あ っ た り、 「 科 学 と文 学 」 で あ った り、 「 科 学 と形 而 上 学 」 で あ っ た りす る。 近 年 、 「科 学 的方 法 論 」 が 、 人 文 科 学 を も席 巻 しよ う と して い る。 「仮 説 を設 定 し、 実 験 し、 実 証 して 、検 証 結 果 を一 般 理 論 つ ま り普 遍 的 理 論 とす る」 とい うよ うに 「科 学 的方 法 論 に則 っ て研 究 し証 明 す る」 こ とが 、 学 術 研 究 の 主 流 と な っ た 。 実 験 や デ ー タ に よ る 検 証 を伴 わ な い 「哲 学 的 思 索 」 は、 科 学 で な く、 し た が っ て学 術 研 究 で もない こ と とな っ た。 科 学 者 に とって 、 哲 学 的 思 索 は科 学 で な く、 学 問 で もな い。 逆 に人 文 系 分 野 が 人 文 系 的 方 法 論 を持 ち え な くな っ た。 教 育 とい う分 野 にお い て も科 学 的方 法 論 の 進 出が み られ る。 どの 教 育 手 法 が 「有 効 か 」 は 、 デ ー タの 有 意 性 で判 断 され 、 科 学 的学 習 方 法 ・教 育 論 へ の模 索 が 続 い て い る。 文 学 とい う分 野 にお い て も同様 で あ る。 文 学 作 品や 芸 術 作 品 の 「鑑 賞 」 で は な く 「分 析 」 が 方 法 論 的 に可 能 で あ って み れ ば、 科 学 的文 学研 究 が 可 能 に な る 。現 代 の 学 術 研 究 に お い て、20世 紀 末 ま で の 、 文 系 ・理 系 の 二 大 大 別 す ら意 味 が な い よ うに い え る。 一 方 で 、 科 学 的 方 法 論 で 実 証 さ れ ない もの は、 例 え ば 「都 市 伝 説 」 や 「 疑 似 科 学 」 さ らに は 「ス ピ リチ ュ ア ル」 とい う 「分 野 」 を科 学 の 外 に 設 定 し、 そ の 存 在 場 所 を与 えて い る もの の 、 そ の 地 位 は学 術 世 界 よ り下 位 の 、 「 大 衆 的1/ ベ ル」 の趣 味 的 分 野 と され る。 そ こ に 「 科 学 」 に対 す る 「 大 衆 」 とい う位 相 が生 まれ る。 そ こに科 学 史 観 に基 づ く 「 科 学優 位 の思 想 」 が あ り、 「科 学 の傲 慢 」 が あ る。 科 学 史 観 を 奉 ず る科 学 者 自 身、 学 術 研 究 者 個 々人 に悪 意 は ない が 、 そ こに は科 学 哲 学 の傲 慢 が あ り、 無 反 省 が あ り、 哲 学 的反 省 の 欠 如 が あ る。. 3.メ. タ言 語 を規 定 す る2種 類 の 人 間 の 側 面(ア スペ ク ト):大 衆 と知 識 人. 近 現 代 の科 学 の思 想 は、 科 学 者 が 、 言 語 の み な らず 特 殊 記 号 や 数 式 を使 う こ とで 、 日常 言 語 よ り広 い 範 囲で 対 象 を深 く定 義 し、 説 明 で きる と考 え た。 科 学 者 の言 語 を ひ とまず 科. 一19一.
(4) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. 学 言 語 と呼 ぼ う。 で は 日常 言 語 と科 学 言 語 は どこが 違 うの か 。 言 語 使 用 者 に関 して は次 の よ うな違 いが あ る。 日常 言 語 の言 語 使 用 者 は、 大 衆 つ ま り一 般 市 民 で あ り、 特 定 の 分 野 の特 定 の 知 識 や 技 術 を も た な い 人 間 で あ る。 こ こで 注 意 が 必 要 で あ る 。 こ の よ う な 定 義 に お け る大 衆 と は 「 幻 想 と して の 大 衆 」 で あ り 「原 像 と して の 一 般 市 民 」 で あ る 。 とい うの も、 い か な る人 間 も、 そ の実 人 生 にお い て、 何 の知 識 も技 術 も持 たず に生 きる こ とな ど、 あ りえ ない 。 人 間社 会 にお い て、 人 が 何 らか の労 働 と引 き換 え に賃 金 を得 て 、 生 計 を立 て る と した ら、 分 野 こ そ違 え、 い か な る労 働 者 も、 特 定 の 知 識 や 技 術 や 方 法 論 を持 っ てい る。 そ れ が 知 的 労 働 で あ れ 、 肉体 的 労 働 で あ れ、 彼 ら の知 と技 と方 法 が あ る。 で は例 え ば専 業 主 婦 は ど う か 。 す で に21世 紀 以 降 の 先 進 国社 会 で は、 社 会(学)的. な議 論 と して 、 「家 庭 を維 持 す る. ため の労 働 」 は、 女 性 の 分 担 す べ き労 働 とは 限 らない ばか りか 、 その 労 働 的 な価 値 は、 試 み れ ば必 ず 金 額 と して算 出 可 能 で あ る。 加 えて 家 庭 生 活 を維 持 し、 家 族 の健 康 を維 持 し、 日常 の ル ー テ ィ ー ンワ ー ク を こ なす ため の知 識 や 技 術 が 必 要 な こ と も事 実 で あ る。 正 規 雇 用 の外 にあ り、 社 会 保 障 の外 にあ っ て も、生 存 の ため に 人 間 は、 情 報 を得 、 知 識 を持 ち、 方 法 を編 み 出 して生 き延 び よ う とす る。 それ が 合 法 か 違 法 か にか か わ らず 、 生 存 しよ う と す る姿 は、 「 人 間の 原 型 的 生 存 技 能 」 とい え る。 で は 人 間 の う ち で、 専 門 家 とか 知 識 人 と呼 ば れ 、 区 別 さ れ る 人 間 とは 何 か 。(本 論 で は、 用 語 と して、 大 衆 ・一 般 人 とは 区別 し、 きわ め て高 い 技 術 や 特 殊 な知 識 を もつ 人 間 を 総 称 と して 「知 識 人 」 と呼 ぶ こ とにす る。 と きに本 論 で 、 科 学 論 の観 点 か ら 「科 学 者 」 と 呼 ぶ 人 間 も ま た、 「知 識 人」 で あ る。 ア カ デ ミズ ム の 制 度 と権 力 構造 の 渦 中 に い る研 究 者 を想 定 し、 も ち ろ ん彼 ら も 「知 識 人 」 と考 え る こ と にす る 。)実 際 に特 定 の手 技 的技 能 を 持 つ と と もに、 その 手 技 の獲 得 と伝 承 の ため の知 識 や 情 報 を持 つ 人 間が 、 企 業 や 大 学 そ の 他 の研 究 機 関 に存 在 す る。 そ の よ うな状 況 を考 え れ ば 「知 識 人 」 の 存 在 は、 む しろ 「大 衆 」 以 上 に明 確 で あ る よ うに見 え る。 しか しその 社 会 階 層 的 な問 題 を離 れ 、 職 業 ・職 種 以 外 の 観 点 か ら、 その 人 を知 識 人 と呼 ぶ か 否 か につ い て は、 そ の基 準 は漠 然 と して い る。 大 学 や 専 門研 究 機 関の 研 究 者 、 評 論 家 や 作 家 を知 識 人 と呼 ぶ こ とに抵 抗 は な くて も、 か な ら ず そ の職 業 的 な階 層 や 分 野 の 広 が りの どこか で 、 その 人 間が 「専 門家 ・知 識 人 か 否 か の 境 界 線 」 が あ る はず だ。 人 間個 々人 が 「大 衆 」 か 「知 識 人 」 か 、 そ の判 別 を考 え る こ とは困 難 で あ り、 無 意 味 な こ とに見 え る。 と りわ け、 現 代 の 先 進 国 にお い て 著 しい 「職 業 の分 業 化 ・専 門化 」 や 、 学 術 研 究 の 進 化 と と もに 進 む 「専 門領 域 の細 分 化 」 に注 目す べ きで あ る。 現 代 で は一 人 の 人 間 が 、 「特 定 の研 究分 野 や 職 業 に お い て 知 識 人 」 で あ っ て も、 「そ の分 野 や領 域 以 外 で は大 衆 」 で あ る. 一20一.
(5) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. こ とは あ りう る。 そ の意 味 で 、 現 実 の一 人 の 人 間 を、 大 衆 か 、 知 識 人 か 、 どち らか 一 方 に 判 別 す る こ とは意 味 を持 た な くな りつ つ あ る。 一 人 の 人 間の 置 か れ た特 定 の具 体 的 な場 面 にお い て、 そ の 人 間が 、 その 時 点 で 「大 衆 で あ る か 、 知 識 人 で あ るか 」 は 判 別 可 能 で あ る。 研 究 室 に お い て は一 流 の 科 学 者 で あ り 「 知 識 人 」 で あ っ て も、 家 庭 にお い て家 事 は 一 般 人 以 下 で あ り、社 会 常 識 的 な知 識 や 時 事 的 な話 題 につ い ての 意 見 にお い て は、 きわめ て 「大 衆 」 的 で あ る こ とが あ りう る。 科 学 は抽 象 的 に して膨 大 な人 類 の 知 の 遺 産 で あ り、 知 の 体 系 と して存 在 す る ばか りで は な い 。科 学 研 究 に従 事 し、 研 究 を進 め る 「人 間 と して の 科 学 者 」 の存 在 が そ の 背 景 にあ る。 こ こ でい う科 学 者 は実 体 的 な人 間存 在 で あ り、 社 会 的 存 在 で あ る。 したが っ て彼 らは まず 学 術 研 究 組 織 の なか の制 度 に取 り込 まれ る。 学 術 的 な地 位 が あ り、 そ れ に伴 う権 力 構 造 が 生 ま れ る。 メ タ言 語 の二 つ の広 が りの うちの ② で す で に論 じた よ う に、 い く ら科 学 者 とい う知 識 人 が 科 学 の 中立 性 を標 榜 して も、 科 学 者 が ア カデ ミズ ムの 権 力 や 制 度 の 問 題 か ら完 全 に 無 関係 で い る こ とは で き な い。 例 え ば科 学 論 文 に お け る デ ー タや 捏 造1が 起 こ る の は なぜ か 。 こ の問 題 を科 学 か ら切 り離 して論 じる こ とはで きな い。 科 学 研 究 を科 学 者 と い う名 の 人 間が 行 う限 り、 そ の行 為 の動 機 付 けの 背 後 に は、 科 学 を管 理 す る制 度 と権 力 が 存 在 す る。 科 学 者 は この 権 力 や 制 度 か ら 自 由 で い る こ とは で きな い 。 ゆ え に ア カ デ ミ ッ ク ・ハ ラス メ ン トが お こ る。 また 科 学 研 究 が 、 政 策 的 に期 待 され 、 政 治 的 に利 用 され る。 す る と基 礎 研 究 よ り 「実 用 的 な研 究 」 が 評 価 され る。 社 会 生 活 に直 結 し、 社 会 的 に評 価 さ れ る技 術 開発 が 、 大 衆 に とっ て も 「わか りや す い 科 学 の 実 績 」 と考 え られ る。 知 的 探 求 は 純 粋 な 「無 償 の 営 為 」 で は成 り立 た な くな る。 研 究 者 は、 具 体 的 な研 究 実 績 や 研 究 成 果 の 提 出 を求 め られ る。 純 粋 な知 的好 奇 心 で は な く、 ア カデ ミズ ム内 で 研 究 者 た る 自分 の 実 績 を積 み 上 げ る こ とが 研 究 を進 め る た めの 外 的 要 因 のみ な らず 内的 要 因 に もな る とい う事 実 は、 いか な る研 究 者 や 科 学 者 も否 定 で きない 。 さ らに ア カ デ ミズ ムの 外 側 あ るい は上 位 に政 治 や 経 済 が あ る。 科 学 は、 時 の 為 政 者 の 政 治 的 な優 位 に貢 献 す る こ とに よ って 、 そ の地 位 が 保 証 され る。 戦 争 時 に は、 と りわ け科 学 技 術 が 、 戦 時体 制 下 の軍 部 政権 に よ っ て重 視 され 、 科 学 技 術 者 や 知 識 人 が 戦 争 に貢 献 し、 評 価 され て きた 歴 史 を考 え れ ば 、 ア カ デ ミズ ム の 政 治 へ の隷 属 性 は 明 らか で あ る。2一 方 、 平 和 時 で も科 学 は、 実 用 的 な技 術 ・情 報 を提 供 す る こ とに よ っ て、 商 工 業 な どの 経 済 活 動 に参 画 し、 貢 献 し、 その 見 返 りに資 金 を得 、 資 金 獲 得 の 実 績 が 、 ア カデ ミズ ム内 部 で の研 究 者 の地 位 を決 定 す る。 そ の よ う な意 味 か ら考 えれ ば、 科 学 が 、 いか に大 衆 か ら遠 く 高 み に あ る よ うに見 え、 知 の 最 高 水 準 を支 え る知 識 人 が 大 衆 か ら羨 望 の眼 差 しで み られ よ う と も、 科 学 は、 人 間の 権 力 構 造 や 制 度 の問 題 か ら自 由で はい られ な い。 そ の 裏 面 か らの. 一21一.
(6) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. 証 明 が 、 科 学 者 が 犯 す ア カ デ ミズ ム 内部 の研 究 論 文 の 捏 造 や 改 ざ ん、 剰 窃 の 問 題 の 根 源 な ので あ る。. 4.二. つ の メ タ 言 語:AMLとMML. こ の よ う に し て 、 「言 語 使 用 者 と し て の 人 間 存 在 」 の 観 点 か ら、 科 学 言 語 と 日常 言 語 の 区 別 が 困 難 で あ れ ば 、 言 語 の 観 点 、 と りわ け メ タ言 語 の 観 点 か ら 、 大 衆 と 知 識 人 の 区 別 が 可 能 で あ り、 科 学 言 語 と 日 常 言 語 を 「2種 類 の メ タ 言 語 」 と し て 設 定 す る と よ い か も しれ な い 。 特 に 定 義 が 明 瞭 な の は 、 科 学 言 語 す な わ ち 科 学 が 使 う メ タ言 語 で あ る 。 こ の メ タ 言 語 を 科 学 的(scienti且c)メ academicwritingな. タ 言 語 と 呼 ん で も よ い 。 し か し そ の 構 造 上 の 観 点 か ら、 ま た. ど の 言 葉 か ら の 類 推 か ら 、 科 学 ・学 術 研 究 で 用 い ら れ る メ タ 言 語 を ア. カ デ ミ ッ ク ・メ タ言 語(AcademicMeta↓anguage:AML)と. よ び 、AMLで. 語 られ る具 体. 的 な 個 々 の 定 義 文 を ア カ デ ミ ッ ク ・メ タ ・メ ッセ ー ジ(AcademicMeta-Message:AMM) と よ ぼ う。 つ ま りAMLが. 近 ・現 代 の 自然 科 学 で 用 い ら れ る 言 語 一 般(記. 式 を 含 め た 広 義 の 言 語)あ. る い は 科 学 言 語 全 体 を 総 称 的 に 指 す も の とす れ ば 、 個 々 の 科 学. 的 定 義 ・説 明 をAMMと. 号 ・数 式 ・化 学. よぶ こ と にす る。 また 、 科 学 で あ る か ど う か は 別 と して 、 人 間. が 身 近 な 対 象 を 理 解 し よ う と し て 、 そ の 対 象 を 把 握 し定 義 す る た め に 使 う 短 い 定 義 表 現 あ る い は 命 題 文 を 、 メ タ メ ッ セ ー ジ(Meta-Message:MM)と AMLの. 内 部 で 、 具 体 的 なAMMは. よぶ 。. ど の よ う に 関 連 し、 ど の よ う に 展 開 す る の か 。 例 え. ば 「文 」 と は 何 か 。 言 語 学 的 に 定 義 す れ ば 「文 と は 言 語 体 系 の ひ と つ の 単 位 で あ る 」。 で は そ の 「言 語 体 系 」 と は 何 か 。 「言 語 体 系 と は 、 あ る 特 定 時 の 、 特 定 の 言 語 の 体 系 で 、 そ の 言 語 の 歴 史 か ら も、 特 定 状 況 で の 特 定 個 人 の 言 語 使 用 か ら も、 言 語 に 関 す る 文 化 ・知 識 の 体 系 か ら も切 り 離 さ れ た 体 系 で あ る 」。 で は そ の 定 義 で 使 わ れ る 「言 語 」 と は 何 か 。 「言 語 と は 、 一 般 の 人 間 問 で 行 わ れ る 音 声 と文 字 に 関 す る 伝 達 現 象 で あ る3」。 言 語 学 に 限 らず 、 正 確 な 対 象 の 記 述 こ そ が 科 学 の 目 的 で あ り、 こ の た め に 使 用 さ れ る 言 語 の うち特 に専 門 的 な術 語 は 、 さ ら にそ の 術 語 の 定 義 の た め に使 わ れ る語 の 一 つ 一 つ が 、 ま た 別 の 定 義 文 に よ っ て 定 義 さ れ て お り、 そ の 定 義 は 同 語 反 復 に 陥 ら な い よ う に 、 序 列 化 さ れ 体 系 化 さ れ て い る 。 上 記 の 例 の よ う に 「定 義 に 使 用 さ れ る 語 の 一 つ 一 つ に対 す る 定 義 」 が 必 ず あ る(は. ず で あ る)。 さ ら に そ の 定 義 の た め の 語 群 の 体 系 は 常 に 拡 張 しつ つ あ り、 拡. 張 が 常 に 整 合 性 を も っ て 行 わ れ る よ う に 、 定 義 の 連 鎖 が 別 の 新 しい 研 究 分 野 に 展 開 す る こ と も あ る 。 例 え ば 「言 語 」 が. 「一 般 の 人 間 問 で の 伝 達 」 で あ る の な ら ば 、 「人 間 以 外 の 種 に. お け る 伝 達 」 に つ い て の 定 義 や 考 察 が 可 能 に な り、 動 物 言 語 研 究 とい う 専 門 分 野 が 設 定 さ れ る よ う に 。 こ う し て 「文 」 の 定 義 は 、 展 開 す れ ば 「動 物 言 語(animallanguage)」. 一22一. の定.
(7) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. 義 ・研 究 に つ な が っ て い る 。 そ の 定 義(文)群 AMLの. の 関 連 と 展 開 の 「無 限 性 と整 合 性 」 が. 特徴 である。. しか し一 般 社 会 の 中 で 、 ま た 日常 生 活 の 中 でAMLが 日常 生 活 で は 、AMLの. 使 用 され る こ とは少 ない 。 む しろ. 特 徴 で あ り成 立 要 件 で あ る 「無 限 性 と 整 合 【 生」 を 欠 い て い る も う. 一 つ の メ タ 言 語 が あ る 。 例 え ば 言 語 学 に か か わ り を 持 た な い 一 般 人 も ま た 「文 」 を 定 義 で き る 。 「文 と は 主 語 と 述 語 が あ る もの だ 」 「文 は 単 語 か ら で き て い る が 、 も っ と長 い 」 とい う よ う に 。 し か し そ の 「主 語 と は 」 「述 語 と は 」 「主 語 の な い 命 令 文 は ど う な る の か 」 と一 般 人 は 問 わ な い か も し れ な い し、 「長 い 、 と は ど の よ う に 規 定 さ れ る の か 」 と い う 問 い な ど、 一 般 人 は 発 し な い か も し れ な い 。 そ し て 次 々 に 現 れ る 問 い に 答 え 続 け る こ と を 、 どの 時 点 か で 断 念 す る 。 そ れ が 一 般 人 つ ま り大 衆 に と っ て 普 通 で あ り常 態 で あ っ て 、 非 難 に 値 し な い 。 そ の よ う な メ タ 言 語 の 在 り方 が 存 在 す る 。 一 般 人 つ ま り大 衆(Mass)の メ タ 言 語 を 総 称 し て マ ス ・メ タ 言 語(MassMeta-Language:MML)と. よ び 、 そ の個 別. 的 ・具 体 的 形 態 を マ ス ・メ タ ・メ ッ セ ー ジ(MassMeta-Message:MMM)と だ しMMLやMMMの. 使用す る. よ ぼ う。 た. 詳 しい 定 義 や 、 具 体 的 な 例 示 と検 討 は 、 以 後 の 各 章 で 行 う。. 一 般 大 衆 は さ ま ざ ま なMMMを. 駆 使 して世 界 の 万 物 を. 、世 俗 的 か つ 限 定 的 で不 正 確 に. 把 握 し、 巧 み に 自 分 の 興 味 の 範 疇 を 選 び 、 マ ス コ ミ報 道 を 信 じ な が ら、 「世 間 の 出 来 事 」 を 言 葉 で 定 義 し把 握 し理 解 して い る 。 そ の よ う なMMMの. 一 例 が 「諺 」 「格 言 」 「人 生 訓 」. と、 そ の パ ロ デ ィ ー で あ る 。 そ の 中 に は 一 見 矛 盾 す る 二 つ の 定 義 た るMMMが. 「渡 る世 間 に鬼 は な し」. ⇔. 「渡 る世 間 は鬼 ばか り」. 「君 子 危 う きに近 寄 らず 」 ⇔. 「危 な い橋 も一 度 は渡 れ」. 「転 ばぬ 先 の 杖 」. 「転 ん で もた だで は起 きぬ 」. MMMと. ⇔. ある。. し て の 諺 の 「整 合 性 の 欠 如 」 つ ま り矛 盾 が 問 題 視 さ れ 、AMLな. よ う な 「体 系 内 部 の 論 理 性 の 綻 び 」 が 、MMLの. ら問 題 と な る. 場 合 は 、 問 題 と さ れ な い し、 そ れ を 大 衆. は 欠 点 と ば か り考 え な い 。 上 記 の 例 を 見 る と、 メ ッ セ ー ジ 相 互 の 整 合 性 が 問 わ れ な い の は 、 個 々 の メ ッ セ ー ジ が 、 個 々 の 状 況 に 対 応 し て い る だ け で 、 上 位 範 疇(メ. ッセ ー ジ を 構. 成 す る 要 素 で あ る 「渡 る 世 間 の 鬼 」 が 存 在 す る の か 、 そ の 定 義 は ど うか)に. お け る整 合 性. の 問 題(「 渡 る 世 間 に お け る 鬼 」 が 存 在 す る か し な い か に よ っ て 、 一 方 の メ ッ セ ー ジ の 真 偽 値 が 「真 」 で あ れ ば 、 も う 一 方 は 「偽 」 で あ る は ず で 、 矛 盾 す る 二 つ の メ ッ セ ー ジ が 「と も に 真 」 と し て 並 び 立 つ よ う なMMMの あ る 、 な ど)を. 体 系 つ ま り マ ス ・メ タ 言 語 の 在 り方 に 問 題 が. 問 う も の で は な い こ と も わ か る 。MMLを. 一23一. 支 え る論 理 は 、樹 形 図 型 の 体 系.
(8) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. を さ す の で は な く、 根 茎 図 型 体 系 の 論 理 な の で あ る 。 そ れ は 構戒 要 素 相 互 が 個 々 に 関 連 し あ っ て い る もの の 、 そ れ を 支 配 し管 理 す る 上 位 規 則 が 、 存 在 し な い か 、 ま た は 必 要 が な い 論 理 な の で あ る 。 ま た 特 定 のMMMが. 、 実 在 の 個 人 の 生 活 上 の 事 実 に 照 ら し て 「当 て は. ま ら な い 」 「証 明 さ れ な い 」 か ら と い っ て 、 そ のMMMの. 有 効 性 が 失 わ れ る こ と は な く、. 問 題 視 さ れ る こ と も な い 。 な ぜ な ら ば 特 定 個 人 の 人 生 で あ るMMMは. 「あ て は ま ら な い 」. 場 合 で も、 他 の 個 人 の 実 人 生 で は 「あ て は ま る 」 こ とが あ り、 そ れ で そ の 人 が 人 生 を 理 解 す る こ と が あ る か ら で あ る 。MMMは. 普 遍 的 有 効[生 を 問 わ れ な い 。 そ れ がAMMと. き な 差 で あ る 。 あ る 研 究 者 の 発 見 の 結 論 た るAMMは. の大. 、厳 密 に証 明 さ れ な け れ ば な ら な. い し、 そ の 結 論 は 、 事 実 に 照 ら して 、 真 か 偽 か 、 正 か 誤 か の い ず れ が と し て 判 定 さ れ る 。 そ れ に 対 し てMMLは. 大 衆 の 言 語 使 用 形 態 と し て 、 も う一 つ の 体 系 を 持 ち 、 も う一 つ の. 体 系 の論 理 を もっ て い る。. 5.マ. ス ・メ タ 言 語 の 多 様 な 側 面 とAML. こ こ で ま ず 、 「科 学 の 哲 学 」 「科 学 史 観 」 「AMLの. 論 理 」 と い う言 葉 の 定 義 、 説 明 をお. こ な わ な け れ ば な ら な い 。 科 学 と は 「人 間 が 外 界 を 理 解 す る た め の も の 」 で あ り、 科 学 者 の 立 場 か ら こ れ を 詳 し く言 え ば 、 「外 界 を 脳 内 に投 影 す る と き の 共 通 の ル ー ル 」 が 、 少 な く と も科 学 者 の 問 で は 必 要 で あ る 。 外 界 や 対 象 の 投 影 の ル ー ル は 、 そ の 仮 説 や 主 張 の 違 い に 関 わ らず 、 ア カ デ ミズ ム と い う コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 中 で 全 員 が 共 有 す る 重 要 な ツ ー ル こ そ が 言 語 な の で あ り、AMLで AMLが. あ る。 人 類 の 歴 史 を通 じて科 学 が 継 続 的 に発 展 で きた の は、. 蓄 積 さ れ 、 そ れ を も っ て 議 論 が で き た か ら で あ る 。AMLと. ル が あ っ て こ そ 議 論 が 可 能 に な る の で あ る 。 し た が っ てAMLは. して 共 通 の 内 部 モ デ 用語 の規定 が厳密 であ. り、 表 現 が 簡 潔 で あ っ て 、 科 学 の さ ま ざ ま な 分 野 の 問 で も、 最 低 限 の 用 語 ・概 念 の 共 通 性 が あ らね ば な ら な い こ と に な る 。 し か し ア カ デ ミ ズ ム と い う コ ミ ュ ニ テ ィ ー が 専 門 化 し、 分 業 化 し、 巨 大 化 す る に つ れ て 、 大 衆 か ら遊 離 し た こ と も事 実 で あ る 。 一 般 人 た る 大 衆 が 、 膨 大 な 知 識 量 を 必 要 とす る 現 代 科 学 の定 義 や 説 明 を理 解 す る こ とは不 可 能 に近 い が 、 問 題 の 本 質 を知 識 量 にの み 置 き 換 え る こ と は で き な い 。 こ こ で 慎 重 な 吟 味 が 必 要 で あ る 。 そ の 例 を 「超 常 現 象 」 や 「疑 似 科 学 」 の 問 題 を 例 に 考 え る こ と に し よ う。 こ の 問 題 は と もす れ ば 「そ の 現 象 は 科 学 で 説 明 が 可 能 か 不 可 能 か 」 「科 学 は そ れ を 研 究 対 象 と して 扱 う か 扱 わ な い か 」 と い う 問 題 と して 提 出 さ れ る か も しれ な い 。 しか し、 科 学 の 立 場 か らす れ ば 、 現 代 科 学 が カ バ ー し な い 領 域 は ほ と ん ど な く な りつ つ あ る 。 何 らか の 問 題(「 時 間 旅 行 は 可 能 か 」 「地 球 外 生 物 は い る の か 」 「永 久 動 力 は 可 能 か 」 な ど)を. 「科 学 的 な 問 題 で は な い 」 と して 排 除 す る こ と は 、 問. 一24一.
(9) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. 題 の 扱 い 方 と し て 雑 で あ り、 問 題 の 立 て 方 に 問 題 が あ る こ と に な る 。 言 語 の 観 点 か らみ れ ば 、 重 要 な の はAMLとMMLの 題 をAMLに. 間 の 翻 訳 関 係 で あ る 。MMLの. 直 結 す る こ と は 危 険 で あ る が 、 一 方AMLの. 話 題 をMMLで. 問. 翻 訳 し通 訳 す る. こ と は 可 能 で あ る 。 「科 学 側 か ら の 大 衆 啓 蒙 」 活 動 と見 ら れ る も の が そ れ で あ る 。 そ の 例 を 一 般 書 籍 か ら挙 げ る こ とが で き る 。 村 山 斉. 「宇 宙 は 何 で で きて い る の か 一 素 粒 子 物 理 学. で 解 く宇 宙 の な ぞ 一 』4で は 宇 宙 は 何 で で き て い る の か 、 と い う課 題 が 、 か つ て は 哲 学 者 の 考 え る 課 題 で あ っ た が 、 テ ク ノ ロ ジ ー の 飛 躍 的 な 進 歩 で 、 そ の 謎 を 科 学 が 解 き明 か す ま で あ と一 歩 ま で き て い る と い う 。 そ の 現 代 で は 人 類 永 遠 の 課 題 を 一 般 の 人 々(「 読 者 の み な さ ん 」)が. 「共 有 で き る よ う に な っ た 」 と し て い る 。 現 代 の 素 粒 子 物 理 学 は 、 専 門 家 に. しか 意 味 の な い 狭 い 学 問 で は な く、 一 人 一 人 の 生 活 と深 い と こ ろ で 繋 が っ て い る とい う 。 ま ず こ の 記 述 がAMLとMMLの て 、 術 語 はMMLの. 問 の 「翻 訳 関 係 」 を あ ら わ して い る 。 テ ー マ を 共 有 し. ほ う に 取 り込 ま れ 翻 訳 さ れ る が 、 そ の 術 語 の 定 義 が 逆 流 し てAMLの. 内 部 体 系 に 繋 が り展 開 す る こ と は な い 。MML側 義)が. で は 、 そ の 定 義(に. 使 わ れ る用 語 の 再 定. 連 鎖 的 に 行 わ れ る こ と は な く、 そ の 正 確 な 連 鎖 が 行 わ れ る とい う 保 証 を 大 衆 は 求 め. な い 。MMLの. 本 質 で あ る 「メ ッ セ ー ジ 問 の 関 連 は 保 証 さ れ て い ら ず 、 あ る 一 定 の 範 囲 か. ら あ と は 断 線 し て い る 」 の で あ る 。 こ の 著 書 の 内 容 をMMMの す れ ば 、AMLのMML的. ・宇 宙 全 体 の23%は. 翻 訳 の 意 義(大. 衆 の 啓 蒙)が. メ ッセ ー ジ例 と して 列 挙. わ か りや す い 。. 「暗 黒 物 質 」 が 占 め て い る 。. ・リ ン ゴ と惑 星 は 同 じ法 則 で 動 い て い る 。 ・す べ て の 星 を 集 め て も 宇 宙 全 体 の 重 さ の0 .5%で あ る 。 ・神 は サ イ コ ロ を振 る ら しい(全. て は 何 者 か の 意 思 で は な く、 偶 然 性 は 存 在 す る)。. ・私 た ち の 体 は 超 新 星 爆 発 の 星 屑 で で き て い る 。. こ れ らの メ ッセ ー ジ は、 科 学 の専 門分 野 の 知 の 体 系 に直 結 す る もの で は ない 。 しか し大 衆 が 個 々 に形 成 す る 「世 界 の 把 握 ・認 識 」 の 方 法 に影 響 を与 え る。 言 い換 えれ ばそ の 人 間 が 世 界 や 宇 宙 を定 義 し、 理 解 し、 納 得 す る た め の 日常 的 で わ か りや す いMMMを. 形成す. るの で あ る。. 6.マ. ス ・メ タ言 語 と監 視 社 会. 日本 にお け る 近 年 の教 育 改 革 は 、 教 育 の 聖 域 化 か ら の脱 却 と定 義 で きる か も しれ ない が 、 別 の 定 義 をす れ ば、 監 視 ・管 理 社 会 の学 校 へ の侵 攻 とい え る。 高 等 教 育 機 関 で あ っ た. 一25一.
(10) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. 大 学 を 含 め て 、 教 育 の 場 は 、 実 社 会 か ら隔 離 さ れ 、 独 自 の 自 治 と規 則 が 保 障 さ れ て い た か ら、 学 生 ・生 徒 と 教 員 は 、 良 く も 悪 く も 、 「師 弟 関 係 」 と い う 人 間 関 係 を 結 び 、 そ の 関 係 性 か ら学 生 ・生 徒 が 「学 習 す べ き項 目以 外 」 の 人 間 的 訓 練 ひ い て は 社 会 対 応 練 習 を 行 う こ とが で き た 。 近 年 の 官 僚 批 判 を 代 表 的 な もの と し て 、 聖 域 イ コ ー ル 「自 浄 の 力 の な さ ・不 透 明 ・独 占 ・不 正 」 と い うMMMが. 社 会 に流 通 した。 教 育 にお い て は 、 助 成 金 の 減 額 な. ど の 影 響 力 を 駆 使 し て 、 「社 会 に 開 か れ た 社 会 的 責 任 を 果 た せ る 教 育 の 実 行 」 が 行 わ れ て い る 。 授 業 評 価 や 綿 密 な シ ラ バ ス 作 成 の 徹 底 は じめ と し て 、 「学 校 の 社 会 化 」 が 起 こ っ て い る。 こ の 経 緯 を 、 フ ラ ン ス の 思 想 家 ジ ル ・ ド ゥ ル ー ズ5や ミ シ ェ ル ・フ ー コ ー6の 言 説 を 辿 り な が ら説 明 し て み よ う 。 ド ゥ ル ー ズ に よ れ ば 、18世. 紀 か ら20世. 紀 前 半 まで は 、 学校 を. は じ め 、 病 院 、 刑 務 所 、 工 場 とい っ た 「閉 ざ さ れ た 空 間 」 が 大 き な 役 割 を 担 っ て い た 。 日 本 の 学 校 で い え ば 、 学 校 と い う 閉 鎖 空 間 内 で 、40人. 前 後 で ク ラ ス を 編 成 し、 一 斉 授 業 を. 行 う教 育 方 式 で あ る 。 学 校 で は 「教 師 と い う 管 理 者 」 に よ っ て 、 学 生 ・生 徒 は 監 視 さ れ 、 成 績 評 価 に よ っ て 管 理 さ れ 、 訓 練 さ れ て い く。 あ る 程 度 、 訓 練 さ れ 社 会 的 に 貢 献 で き る 製 品 と し て 、 学 生 ・生 徒 は 社 会 に 送 り 出 さ れ て い た 。 こ の 役 割 を 担 う 限 り、 学 校 は 聖 域 で あ り、 そ の 自 治 が 認 め ら れ て き た 。 こ の よ う な 「規 律=訓 (が20世. 紀 前 半 ま で は 存 在 し有 効 で あ っ た と い う こ と)は. 指 摘 す る 通 りで あ る 。 しか し ド ゥ ル ー ズ は 、20世. 練 化 の 技 術 や 権 力 」 の あ り方 、 フ ー コ ーが. 『監 獄 の 誕 生 』 で. 紀 後 半 か ら の 社 会 の 変 容 を も指 摘 す る 。. 学 校 な ど の 「閉 ざ さ れ た 空 間 」 か ら 「開 放 空 間 で の 管 理 」 へ の 移 行 が あ っ た の で あ る 。 つ ま り、 社 会 全 体 とい う 広 い 開 放 空 間 で の 管 理 が 進 ん だ(あ. る い は 管 理 手 段 が 変 容 し た)の. で あ り、 こ の 現 状 は ド ゥ ル ー ズ の 定 義 に よ れ ば 「規 律 社 会 か ら コ ン トロ ー ル 社 会 へ の 移 行 」 で あ る 。20世. 紀 前 半 ま で の 「規 律 社 会 」 は 監 禁 さ れ た 環 境 を 組 織 す る が 、21世. 例 に と れ ば 、 社 会 基 盤 のIT化. 紀を. が 進 ん だ 結 果 、 政 府 は 個 人 を 閉 じた 空 間 で は 管 理 し き れ な. く な りつ つ あ る 。 そ う な れ ば 「新 し い 管 理 技 術 」 が 必 要 に な る 。 ド ゥ ル ー ズ に な ら っ て 21世 紀 社 会 が 「コ ン トロ ー ル 社 会 」 に 移 行 し つ つ あ る こ と を 検 証 す れ ば 、 分 散 し移 動 す る 個 人 を 管 理 す る に はITは ス テ ム)に. む し ろ 格 好 の 手 段 で あ る と考 え られ る 。GPS(全. よ っ て個 人 の 居 場 所 が 特 定 可 能 な 時 代 で あ る。 教 育 に 例 を とれ ば、 イ ン タ ー. ネ ッ トに よ り学 校 教 育 の 現 状 を 社 会 全 体 に 情 報 発 信 す る 社 会 的 責 任(情 性 の 確 保)が. 地球 測 位 シ. 報 開 示 で あ り透 明. 求 め ら れ る こ とが 、 自 主 的 責 任 で あ る か の よ う に 仕 組 ま れ た 「新 しい 管 理 手. 段 」 で あ る と考 え ら れ よ う 。 「今 は 情 報 発 信 の 時 代 で あ る 」 と い う社 会 的MMMが. 、新 し. い 管 理 シ ス テ ム の 広 告 塔 な の で あ る 。 そ し て 何 よ り イ ン タ ー ネ ッ トが 「休 み な き管 理 」 を 可 能 に し て い る こ と に わ れ わ れ は 気 づ か な け れ ば な ら な い 。 しか し監 視 さ れ 管 理 さ れ た 大. 一26一.
(11) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. 衆 はMMLを. 主 と して 使 用 す る た め 、AML使. 用 者 ほ どに 、社 会 に流 通 す る メ ッセ ー ジ を. 繰 り返 し 、 多 角 的 に 検 証 す る こ と に よ っ て 「高 度 な 管 理 社 会 へ の 変 容 に 気 づ く」 こ と は 、 大 衆 に は 極 め て 難 しい 。 む し ろ 大 衆 は 「イ ン タ ー ネ ッ ト社 会 は 便 利 だ 」 と い うMMMに 支 配 さ れ て 納 得 す る の で 、 「開 放 空 間 で の 管 理 社 会 」 は 大 衆 に は 見 え に くい の で あ る 。. 7.「 心 」 の 定 義:AMLを MMLで. 利 用 す るMMLの. 教育政策. い うマ ス=大 衆 とは 、必 ず し も知 識 と は無 縁 の 人 々 を蔑 称 的 に 指 す 言 葉 で は な. い。 む しろAMLを. 自在 に使 う人 間 の 数 の ほ うが 限 られ て い る。 しか しAMLはMMLと. ま っ た く無 関係 に存 在 す る言 語 で は ない 。AMLも て い る。 だ か ら こそAMLを. 、 そ の多 くは 日常 語 と同 じ語 彙 を使 っ. 使 う ア カ デ ミズ ム と、MMLを. 使 う一 般 社 会 の 問 で 言 語 と し. て両 者 は微 妙 な齪 齪 を きた し、 誤 解 が 生 まれ る。 その よ う な実 例 の一 つ が 「心 」 に関 す る 語 彙 群 で あ る。 1997年 神 戸 で 小 学 生 連 続 殺 人事 件(「 酒 鬼 薔 薇 事 件 」)が 起 こ り、 以後 第16期. 中教 審 に. 対 し、子 供 た ちの 「幼 児 期 か らの 心 の教 育 の在 り方 」(傍 線 は 引 用 者 、 以 下 同 じ)に つ い て諮 問 す る方 針 が 決 ま り、1998年 そ れ を う け て答 申が 出 され た 。 そ れ は 「新 しい 時代 を 拓 く心 を育 て る ため に一 次 世 代 を育 て る心 を失 う危 機 」 と題 され た。 しか しそ の 題 名 に主 語 が 欠 落 し、 「誰 が 心 を育 て 」 「誰 が 心 を失 うの か 」 が 不 明 で 、 「心 」 の 定 義 は示 され て い な い 。 そ れ で い て1990年 代 中期 か ら、 日本 の教 育 界 で は 、 時 代 の 思 潮 と して 「心 」 が 「 人 間」 を定 義 す る語 彙 群 の 中 に多 く現 わ れ 始 め る。 実 は この あ と検 証 す る よ うに、AML と して 「心 」 が 「心 理 」 と 同 義 で あ る とす れ ば 、 心 理 主 義 や 心 理 学 的 手 法 がMMLと. し. ての 「 心 」 に 関 連 す る語 彙 群 と、AMLを. 構 成 す る心 理 学 用 語 群 が 暗 黙 裡 に繋 が れ る こ と. に な る。 「 暗 黙 裡 に」 とい うの は1996年. よ り臨床 心 理 士 の 受 」 験資 格 が 大 学 院 修 了 以 上 と し. た ものの 、 その 大 学 院が 指 定 され 、 大 学 の 自治 権 が 外 部 か ら介 入 を受 け る こ とに な っ た こ と と も関 連 して い る。1998年 に は 日本 心 理 臨 床 学 会 が 中心 とな り 日本 臨 床 心 理 士 認 定 協 会 が 設 立 され る。 つ ま りAMLの り、 こ こか ら も、AMLが. 権 力 ・制 度 的 側 面 が そ の 存 在 を露 骨 に 表 した わ け で あ. 純 粋 に観 念 的 な メ タ言 語 の 知 的体 系 で は な く、実 体 と して は権. 力 組 織 を構 成 し、 実 社 会 に影 響 を与 え る存 在 で あ る こ とが わか る。 現 在 の 日本 の 教 育 政 策 のMMMは. MMM1「. 心 の 問題 は教 育 にお い て重 要 で あ る 。 」. MMM2「. 教 育 にお い て心 の 問題 が う ま く扱 わ れ ない か ら、 若 年 層 の犯 罪 や 問 題 行 動 が 増 加 した 。」. 一27一.
(12) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. MMM3「. 心 の 問 題 が 、 学 校 や 家 庭 で の事 件 に発 展 しない よ うに カ ウ ンセ リ ン グ な どの 予 防 と教 員 に よ る監視 が 必要 で あ る 。 」. こ れ ら は 心 と教 育 に 関 して 上 位 に 位 置 す る 範 疇 のMMMで. あ る 。 上位 メ ッセ ー ジ とは、. こ こ か ら考 え れ ば 「抽 象 度 の 高 い メ ッセ ー ジ 」 で あ る とい え る 。 こ れ を 文 部 科 学 省 の 関 係 者 に 説 明 さ せ れ ば 、 こ れ らの 上 位 メ ッセ ー ジ に 繋 が り、 こ れ らの メ ッ セ ー ジ を 補 充 し説 明 す る 下 位 関 連 メ ッ セ ー ジ(「 若 年 層 の 犯 罪 の デ ー タ は … 」 「カ ウ ン セ リ ン グ 体 制 の 詳 細 は ・ 」 な ど)が. 用 意 さ れ て い る で あ ろ う 。 し か し教 育 を 受 け る 生 徒 や 保 護 者 が 、 上 記 の. メ ッ セ ー ジ か ら展 開 す る 下 位 関 連 の(つ. ま り詳 細 な)メ. タ メ ッセ ー ジ 群 の 「何 が 心 の 問 題. で 、 何 が 心 の 問 題 で は な い か の 定 義 」 や 「問 題 行 動 と は 何 か の 定 義 」、 「カ ウ ン セ リ ン グ と は何 か の 定 義 」 につ い て知 っ た上 で 議 論 に参 加 で きる わ けで は ない 。 それ で い て 、 上 記 の MMM1か. らMMM3の. よ う な 「教 育 に 関 す る 上 位 抽 象 メ ッ セ ー ジ 」 を 、 多 く の 国 民 は. 「結 構 な こ と だ 、 す す め て ほ しい 」 と判 断 し、 そ う 答 え る に ち が い な い 。 教 育 や 科 学 や 心 理 学 を 話 題 と し て 扱 う メ ッ セ ー ジ で あ っ て も、 正 確 で 体 系 的 な 言 語 使 用 の 保 証 な き 言 語 は 、 決 し て 科 学 的 言 語AMLで. は な く、 大 衆 の 言 語MMLに. ほ か な らな い 。 教 育 に 限 ら. ず 、 政 党 の 「マ ニ フ ェ ス ト」 も ま た 、 そ の 一 つ 一 つ が 典 型 的 なMMMで 系 的 な 定 義 が 保 証 さ れ て い な い ゆ え にMMLの. あ る。 厳 密 で 体. 範 疇 にはい るのに、その本 質 ゆえに国民. が 誤 解 し、 約 束 違 反 だ と の 議 論 が お こ っ て い る 。 こ れ も二 つ の 言 語 使 用 の あ りか た の 混 同 と もい え る例 で あ る。 そ の 「心 」 とい う キ ー ワ ー ドを た くみ に 利 用 し た 教 育 政 策 の 教 材 が 「心 の ノ ー ト」 で あ る 。 「心 の ノ ー ト」 と題 す る 教 材 は1990年. 代 後 半 か ら2000年. 初 頭 にか け て、 中教 審 の 答. 申 か ら始 ま り、 文 科 省 の 指 導 の 下 で 企 画 制 作 さ れ 、 そ の 内 容 や 利 用 に つ い て 教 育 現 場 か ら の 反 響 が あ っ て 、2003年. か ら2004年. に か け て 「心 の ノ ー ト論 争 」7が 起 こ る 。. そ の 「心 の ノ ー ト」 は 大 い に 政 治 的 な 問 題 と し て 扱 う こ と も可 能 だ が 、 こ こ で は こ れ を メ タ言 語 論 お よ び 言 語 哲 学 の 観 点 か ら検 証 して み よ う 。 「心 の ノ ー ト」 は4冊. あ り、 そ の. 本 質 を 言 語 論 的 に 定 義 す れ ば 「自 己 言 及 ・自 己 定 義 の 実 践 を さ せ る 教 材 」 で あ る 。 ま た そ の 学 術 的 背 景 が 心 理 主 義 で あ り、 心 理 学 的 手 法 で あ る 。 小 学 校1・2年 こ と を お し え て ね 」 と し て7項. 生 用 は 「あ な た の. 目 の 自 己 定 義 を さ せ る も の で あ り 、3・4年. と 自分 に 聞 い て み よ う 」 と し て 自 己 定 義 を させ る 。5・6年. 生 用 は 「そ っ. 生 用 は 「こ れ が 今 の 私 」、 中 学. 生 用 は 「私 の 自 我 像 」(自 画 で は な く 自 我 で あ り、 そ こ に 心 理 学 の 影 響 が み て とれ る 。)と して 自 己 を言 葉 で 定 義 させ る。 こ の 「心 の ノ ー ト」 の 構造 を 分 析 す る と 次 の よ う に な る 。 「心 の ノ ー ト」 が ノ ー トで. 一28一.
(13) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. あ っ て 教 科 書 で は な い の は な ぜ か 。 そ れ は 自 分 に つ い て 、 つ ま り 自 分 の 心 の 有 り様 に つ い て 個 々 に 書 き込 ま せ る 方 式 だ か らで あ る 。 心 理 カ ウ ンセ リ ン グ と 同 じ く、 ノ ー トは 教 科 書 と は 違 っ て 、 生 徒=被. 験 者 に 対 し何 の 指 示 も強 制 も与 え な い 。 た だ メ タ 言 語 的 に 自 分 を 定. 義 し 説 明 さ せ る 。 こ れ は 巧 妙 に 仕 組 ま れ た 「自 発 的 、 能 動 的 な 従 属 性 の 発 揮 」8に よ る メ タ 言 語 的 行 為 で あ る 。 こ れ は 被 験 者 か ら 自 発 的 な 反 応 を 引 き 出 し、 臨 床 心 理 士 が 解 釈 す る と い う 、 心 理 テ ス トの 一 つ で あ る 投 影 法 の 構 造 を 使 っ た も の で あ る 。 こ の 「自 己 定 義 は 」 そ れ を 行 う こ と に よ っ て 自 己 達 成 感 や 満 足 感 を 定 義 者=生. 徒 に 与 え る こ とが で き る 。 しか. し解 釈 の 結 果 は 、 厳 しい 評 価 の 対 象 と な り、 学 校 ・教 育 現 場 に お け る 管 理 ・監 視 の 手 段 と して機 能 す るの で あ る。 偽 りの 自 由 と自発 性 を利 用 した方 法 は、 小 中学 生 の 教 育 の み な ら ず 、 大 学 に お け る キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ 教 育 あ る い は キ ャ ンパ ス プ ラ ン 教 育 に お け る 記 入 シ ー トに も見 ら れ る 。 つ ま り言 語 哲 学 か らみ て 本 質 は ま っ た く 同 じで あ る 。 そ れ は ま た 現 代 日本 が 管 理 ・監 視 社 会 に 変 容 し た 証 拠 で あ る と い え る 。 で は こ の よ う な 「心 の ノ ー ト」 の メ タ言 語 論 的 な 視 点 か ら見 た 問 題 点 を 指 摘 し て み よ う。. ①. 被 験 者=生. 徒 ・学 生 は 本 質 を 見 抜 い て い る. 小 学 校 の 場 合 「教 員 用 手 引 きで は 「心 の ノ ー ト」 を 子 供 が 自 ら進 ん で 使 用 す る よ う に と の 指 導 が あ る が 、 こ れ は 「や らせ 」 で あ り、 い ま ど きの 子 供 は 誘 導 尋 問 的 な や ら せ を 見 抜 く し、 嫌 い で あ る(「 子 供 と教 科 書 ネ ッ ト21NEWS・26」 ②. 本 学 「マ イ キ ャ ンパ ス プ ラ ン」 記 入 後 、 自 由 記 述 ・原 則 無 記 名 で お こ な っ た 「本 音 トー ク ア ン ケ ー ト:マ. イ キ ャ ン パ ス プ ラ ン を 書 き 終 え て ど う 思 う か 」9か ら(原. 文の. ま ま 、 部 分 抜 粋 引 用). 「自 分 の プ ラ ン な ら、 白 紙 の ノ ー トを 渡 し た らい い 。 指 示 多 す ぎで う る さ い 感 じ」 「本 音 トー ク で 言 わ せ て も ら う と、 立 前(建. 前:引. 用 者 注)目. 標1書. き ま した 。 た ぶ. ん で き な い だ ろ う と思 い ま す が 、 大 学 が 書 け とい う な ら何 で も書 く」 「基 礎 ゼ ミ な ん か で う る さ く言 わ れ な い よ う に 書 い た だ け 。 こ れ を 書 か せ る 裏 に圧 力 感 じ ま す 。 た ぶ ん 、 こ れ 書 け へ ん か っ た ら就 職 で け へ ん ぞ 、 とい う 感 じで 。。。。」 「自 分 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン カ の 不 足 を 感 じた 。 どれ だ け 書 い て も う ま く 自分 の 考 え を 言 葉 に で き な い と思 っ た 。 大 学 に い る 問 に 、 入 学 の 時 に 言 わ れ た 問 題 解 決 力 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンカ を つ け る 自 信 が 、 こ れ を 書 き な が らか え っ て な く な り ま した 。」. これ らか ら見 て取 れ る こ とは、 現 代 社 会 が 徹 底 した管 理 ・監 視 社 会 に シ フ トして い る. 一29一.
(14) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. とい う ドゥル ー ズ の 指摘 が 当 た っ て い る とい う こ とで あ る。 そ れ に加 え て 、 こ の よ う な 「安 易 な 自 己 定 義 言 語 訓 練 」 の 問 題 点 を も う 一 つ 挙 げ る こ と が で き る 。 そ れ は 「言 葉 と し て書 か れ た 自分 が. 「本 当 の 自分 」 で あ る 哲 学 的 保 証 が あ る の か 」 とい う 問 題 で あ る 。 こ の. 言 語 哲 学 上 の 問 題 に 容 易 に 答 え を だ す こ と は で き な い 。 しか し現 代 の 人 間 の 知 は 「語 り得 ぬ も の 」 を 「語 り得 る と確 信 して 」 そ の 定 義 に 向 か っ て い る か も し れ ず 、 本 来 、 「言 語 に よ っ て 自 己 を 定 義 す る こ と」 は 不 可 能 か も し れ な い 。 少 な く と も そ の 検 証 は い ま だ 言 語 哲 学 的 に 答 え が 出 て い な い 課 題 で あ る 。 言 語 に よ っ て 語 り う る の は 「近 似 値 と し て の 自 己 像 」 に 過 ぎ な い か も し れ な い 。 そ の よ う な 諸 問 題 を す べ て 捨 象 して 、 「書 か れ た 自 分 は あ な た 自 身 で す 、 な ぜ な ら ば 書 い た の は あ な た 自 身 で す か ら 」 と い う 同 語 反 復(ト ジ ー)的. 8.民. ー トロ. な説 明 で す ませ て よい はず は ない 。. 主 主 義 を め ぐ るMMM. 「多 数 決(投. 票 に よ る 最 高 得 票 を も っ て 選 出 ・決 定 を お こ な う)は. 公 平 な 決 定 ・選 出 の. 方 法 で あ る 」 と い う メ タ メ ッ セ ー ジ が 現 代 社 会 で 広 く普 及 し て い る か ら こ そ 、 こ の 方 法 が 、 国 家 の 指 導 者 の 選 出 か ら、 学 校 の 学 級 委 員 の 選 出 に ま で 利 用 さ れ て い る 。 しか し こ の メ ッ セ ー ジ はMMLの. 範 疇 に は い る も の で あ っ て 、AMLと. して 定 義 し 、 説 明 を し よ う と. す る と、 大 衆 が 信 頼 を 置 く に 足 る 方 法 か ど うか 疑 問 が 生 じ る 。 集 団 の 意 思 を 投 票 に お い て 決 定 し よ う と し、 そ の 最 高 得 票 が い わ ゆ る 民 意 だ とす る と、 次 の 例 を 考 え た 場 合 ど う な る のか 。 Aか. らGの7人. の 人 間 が ア 、 イ 、 ウ の3つ. の 案 か ら一 つ を 選 び 投 票 す る 方 法 で 意 思. 決 定 を 行 う とす る 。 ア 案 、 イ 案 、 ウ 案 の 選 択 肢 か ら一 つ を 選 び 投 票 す る とす る 。Aか の 各 人 は 、3案. らG. を 次 の よ う に 序 列 付 け て 自 分 の 意 見 を 考 え て い た 。 左 が 「最 も 賛 成 し た い. 案 」 で あ り、 右 が. 「最 も反 対 し た い 案 」 で あ る 。. A ア〉イ〉ウ B ア〉イ〉ウ C ア〉イ〉ウ D イ〉ウ〉ア E イ〉ウ〉ア F ウ〉イ〉ア G ウ〉イ〉ア さ て 、 「最 も 選 び た い 案 に 投 票 し て 多 数 決 で 決 め よ う 」 と い う 条 件 の も と で 投 票 す れ ば 、 ア 案3票. 、 イ 案2票. 、 ウ 案2票. で 、 ア 案 が 選 出 さ れ る 。 そ し てMMLは. 一30一. メ ッセー ジ.
(15) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. の 根 拠 の 検 証 を 行 わ な い の で 、 こ の ま ま 皆 の 意 見 を 良 く反 映 し た 意 思 決 定 が で き た と考 え る 。 しか しAML的. に 、 ほ か の 可 能 性 を 考 え 、 最 高 得 票 方 式 に 問 題 が な い の か を検 証 して. み る と ど う な る か 。 こ の 投 票 を 「最 も選 び た く な い 案 へ の 投 票 」 とい う 条 件 で 行 え ば 、 ア 案4票. 、 イ 案0票. 、 ウ 案3票. と な り、 ア 案 は 「最 も選 び た く な い 案 」 で あ る こ とが 証 明 さ. れ る 。 そ う な れ ば ア 案(「 最 も 選 び た い と 同 時 に 最 も選 び た くな い 選 択 肢 」 と い う 矛 盾 し た 選 択 肢 の 存 在)を. ど う 考 え れ ば い い の か 。 そ れ 以 上 に 、 「最 高 得 票 を 得 た 意 見 は 最 も皆. の 意 思 を よ く反 映 し た 意 見 だ 」 と い う メ ッ セ ー ジ は 信 用 に 足 る も の か 、 疑 問 が 出 て く る 。 そ れ で も現 実 社 会 で は 、 そ し て 民 主 主 義 の 主 役 た る 大 衆 は 、 上 位 メ タ メ ッセ ー ジ で あ る 最 高 得 票 選 出 を 信 じ て 疑 わ な い 。 こ の 危 う いMMLに. 支 え られ た 民 主 主 義 や そ れ を支 え る. 選 挙 制 度 、 そ し て 選 挙 制 度 を 容 認 す る 大 衆 を ど う考 え れ ば い い の か 、 言 語 論 的 に こ の こ と が 十 分 に考 え られ て い る とは言 い が たい 。 単 純 化 した が 、 上 の 例 は 数 学 者 ボ ル ダ に よ っ て 指 摘 さ れ 、1785年. に フランスの数学者. コ ン ドル セ が 定 式 化 し た コ ン ドル セ の パ ラ ド ッ ク ス で あ る 。 し か し コ ン ドル セ の パ ラ ド ッ ク ス はAMLの. 世 界 に 存 在 し 、 ア カ デ ミ ズ ム に 関 わ る 限 ら れ た 人 間 が 知 る もの の 、 こ. の メ ッ セ ー ジ が 一 般 社 会 で 理 解 さ れ 、 現 在 容 認 さ れ て い る 「多 数 決 は 正 し い 」 と の メ ッ セ ー ジ を 的 確 に 批 判 し、 改 善 す る 可 能 性 は ど の く らい あ る で あ ろ う か 。 い や 問 題 は そ の 可 能 性 で は な く、 現 在 容 認 さ れ 、 共 有 さ れ て い る メ タ メ ッ セ ー ジ が 、 「MMMは. 検 証 を必 ず. し も伴 わ な い 」 と い う そ の 本 質 ゆ え に 、 検 証 さ れ ず 流 通 して い る 事 実 で あ る 。 こ の メ ッ セ ー ジ を さ ら に 展 開 し事 例 を 具 体 的 に 示 せ ば 次 の よ う に な る 。. ・MMM「. トー ナ メ ン ト方 式 に よ り優 勝 を 決 め る の は 公 平 だ 」. (オ リ ン ピ ッ ク を は じ め 多 くの ス ポ ー ッ の 優 勝 決 定 方 式 が トー ナ メ ン トだ が 、 本 来 銀 メ ダ ル 以 上 の 候 補 が1回. 戦 で 敗 れ て 、 そ の 後 、 敗 者 復 活 戦 を 全 勝 で 勝 ち 上 が っ て も銅 メ. ダ ル か 、 トー ナ メ ン トの 組 み 合 わ せ 次 第 で は5位. 以 下 に な る。 そ れ を 説 明 す る メ タ. メ ッ セ ー ジ は 「ス ポ ー ツ は ド ラ マ だ 」 で あ っ て 、AMLの. 観 点 か らす れ ば 、 論 理 的 整 合. 性 に疑 問が 生 ず る の に大 衆 はそ れ で 納 得 す る。 さ らに人 間世 界 の シス テ ム と しての 整 合 性 を 求 め る な ら ば 、 「ど の 経 路 を 辿 っ て も 同 一 候 補 が 当 選 し て こ そ 正 し い 選 出 だ 」 と い う民 主 主 義 の 大 原 則 「経 路 独 立 性 」 が 社 会 の 多 くの 局 面 で 実 現 さ れ て い な い の を ど う 説 明 す る の か 。 そ れ を 「ス ポ ー ツ と 政 治 は 違 う 」 「現 実 は 偶 然 性 が 支 配 す る 」 と い う メ タ メ ッ セ ー ジ で 結 論 づ け る な ら ば 、 科 学 者 や 統 計 確 率 論 の 研 究 者 か ら異 論 が 出 る か も しれ な い 。 そ れ で も こ れ ら の 問 題 をMMLの. 言 語 世 界 は 、AMLに. な い 。 こ れ を ど う考 え る か 。). 一31一. お け る ほ どに は 問 題視 し.
(16) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. ・MMM「. ア メ リカ合 衆 国 大 統 領 選 挙 は勝 者独 占方 式 で 行 うの が よい 」. (根 本 的 に こ の 定 義 に 異 議 を 唱 え る 以 前 に 、AMLの. 問 題 と して ア メ リ カ 国民 の 何 パ ー. セ ン トが 、 勝 者 独 占 方 式 を 正 し く理 解 し、 そ の 問 題 点 を 言 葉 で わ か りや す く説 明 で き る の か 。 も ち ろ ん 限 られ た 専 門 家 や 識 者 は そ れ が で き る が 、 そ の よ う な 人 間 の 有 無 で は な く、 大 衆 が そ れ を で き な い に もか か わ らず 、 シ ス テ ム が 存 在 し て い る 事 実 を ど う 考 え る か 、 が 問 題 で あ る 。). ・MMM「. 上位 二者 選 択 投 票 は合 理 的 な決 定 方 式 で あ る」. (フ ラ ンス 大 統 領 選 挙 の よ う に、 有 権 者 の 直接 単 記 投 票 で一 位 が 過 半 数 に足 りない 場 合 行 う。 国 際 オ リ ン ピ ッ ク委 員 会 委 員 の選 出 も 同 じ方 式 で あ る。 実 際 に あ っ た の だ が 、 上 位 二 位 に は い る はず の候 補 が 三 位 の 候 補 に逆 転 され た場 合 、 当選 す る はず の 候 補 が 決 選 に も残 らず 、 予 想 外 の候 補 が 決 選 に残 り当選 さ えす る こ とが あ る 。2002年 フ ラ ンス 大 統 領 選 挙 の ジ ョス パ ン候 補 の決 選 投 票 不 進 出や 、 第 一 次 世 界 大 戦 後 の ヒ トラ ー、 ム ソ リー 二台 頭 の選 挙 状 況 も同 じで あ る 。専 門 的AMLの 妥 当性 を 問 う こ とは 可 能 で あ る。 しか し民 意 がMMLに. 検 証 を経 れ ば 、 民 意 決 定 の 方 法 の よ っ て語 ら れ る とす れ ば 、 大. 衆 の意 思 表 示 の た めの 言 語 的基 盤 は極 め て脆 い こ とに な る。). こ の よ う にMMMは. 必 ず し もAMLの. シ ス テ ム に よ っ て 検 証 さ れ る わ け で は な く、 両. 者 は ど こ か で 繋 が り な が ら も 、 別 の 部 分 で 断 線 し て い る 。 ま た 大 衆 はMMMを 応 し相 当 す るAMMに. そ れ に対. よ っ て検 証 し よ う と しな い し、 大 衆 に は そ の 意 思 も な い。 これ は. 大 衆 の 責 任 で は な い し、 教 育 の 責 任 に 帰 す る こ と もで き な い 。 そ の 問 題 は む し ろ 人 間 の 本 質 と し て の 、 不 可 知 論 あ る い は 「人 間 の 限 界 性 と い う 本 質 」(つ ま り人 間 個 人 が 全 人 類 の 知 的 情 報 の 全 て を 獲 得 し、 理 解 す る こ と は で き な い 、 とい う 当 然 過 ぎ る ほ どの 結 論)に ざ し て い る こ と は 確 か で あ る 。 そ し てMMLの 保 障 さ れ た 環 境 の 中 で(つ. MMLとAMLの. 9.マ. 体 系 の 中 で は 、 「リ ー ダ ー は 経 路 独 立 性 を. ま り、 最 も公 平 な 方 法 で)選. 「多 数 決 は 正 し い 」 と い うMMMが. 根. ば れ る べ き だ 」 と い うMMMと. 、 矛 盾 を 問 題 視 さ れ る こ と な く共 存 して い る と こ と に. 関 係 性 の 大 き な 問 題 が 存 在 して い る 。. ス ・メ タ 言 語 と マ ス コ ミの 存 在. で はMMLの. 欠 点 に もみ え る、 メ ッセ ー ジ 問 の 矛 盾 や 、 メ ッセ ー ジ の 思 索 的 展 開 を妨. げ る 役 割 を 、 何 が は た し て い る の か 。 そ の 候 補 に マ ス ・メ デ ィ ア の 存 在 を 考 え る こ とが で き る 。 と りわ けITあ. る い はWEBの. テ ク ノ ロ ジ ー の 発 達 と と も に 、 マ ス ・メ デ ィ ア 自 体. 一32一.
(17) マ ス ・メ タ言 語 の 諸 相. が 変 貌 を 遂 げ 、 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と い う文 字 通 り 「大 衆 伝 達 」 の 意 味 が 問 わ れ る 時 代 が 来 て い る こ と は 事 実 で あ ろ う 。 そ の な か で い わ ゆ る マ ス コ ミ は 、 基 本 的 にMML の 側 に 在 り な が ら、 巧 み にAMLと. の 境 界 を 行 き来 す る 存 在 で もあ る 。. そ の 事 例 と し て 、 疑 似 科 学 の 問 題 や 、 マ ス コ ミ の 社 会 的 役 割 と し て の 「大 衆 啓 蒙 と社 会 批 判 」 の 問 題 を取 り上 げ て み よ う。 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン とい う 場 合 、 以 前 は マ ス ・ メ デ ィ ア を 用 い て 大 量 の 情 報 を 大 量 の 受 け 手 に 送 り届 け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 指 し た 。 そ の 送 り手 は 新 聞 社 ・放 送 局 で あ り、 そ こ に は 資 金 ・技 術 装 置 、 専 門 的 能 力 を もつ 人 員 の 集 積 が あ る の に 対 し、 受 け 手 は 個 人 で あ っ た 。 マ ス コ ミ は 事 件 や 社 会 的 問 題 を 受 け 手 に 送 り、 受 け 手 に よ っ て 世 論 が 形 成 さ れ 、 そ れ が 政 治 ・経 済 に フ ィ ー ドバ ッ ク さ れ る 。 そ の 場 合 に もか つ て は 、 受 け 手 は 単 な る 個 人 で あ る た め 、 情 報 の 流 れ は 一 方 的 で 固 定 的 で あ る と 考 え ら れ て き た 。 し か し今 日、IT通. 信 そ の も の が 双 方 向 化 し、 イ ン タ ー ネ ッ トの ネ ッ ト. ワ ー ク を通 じて個 人 が 、 か つ て の新 聞社 や 放 送 局 の よ うに不 特 定 多 数 に情 報 を発 信 で きる よ うに な っ て、 情 報 の流 れが 変 化 してい る。 それ どこ ろか 個 人 や 少 数 の人 間が 、 新 聞 社 や 放 送 局 に相 当す る発 信 組 織 を形 成 して不 特 定 多 数 の受 け手 の 世 論 形 成 を誘 導 で きる よ う に な っ た。 さ らに は個 人 的 に能 力 が あ れ ば、 政 府 や 企 業 の 情 報 を盗 み 出 して公 表 す る こ とさ え 可 能 に な っ た 。21世. に 入 っ て マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と い う言 葉 の 意 味 が 、 「大 衆 に. 向 け て の 専 門 的 な 情 報 発 信 組 織 か ら の 一 方 的 大 量 情 報 発 信 」 か ら 、 「大 衆 間 で の 不 特 定 多 数 の 個 人 の 問 で の 双 方 的 大 量 情 報 発 信 ・受 信 」 へ と変 化 して い る 。 そ の マ ス ・コ ミの 影 響 力 に つ い て は 、 ナ チ ズ ム の プ ロ パ ガ ン ダ の 猛 威 を 体 験 し た 時 期 に は 、 そ れ が 非 常 に 大 き な もの と考 え られ 、 一 方 通 行 的 大 衆 伝 達 で あ る 「弾 丸 理 論 」 が そ の 定 義 と し て 現 わ れ た10。 す な わ ち マ ス ・コ ミ は 人 の 心 に 侵 入 し、 そ の 思 想 や 態 度 を 思 い の ま ま に 作 り変 え ら れ る と い う よ う に 。 し か し1950年. 代 に な っ てE.カ. ッ ッ とP.ラ. ザース. フ ェ ル ドが 「二 段 階 の 流 れ 」 を 提 唱 す る よ う に な り弾 丸 理 論 が 修 正 さ れ る 。 マ ス コ ミの 影 響 力 は 集 団 の 属 す る オ ピ ニ オ ン ・リ ー ダ ー の 濾 過 を 経 て 個 人 に 及 ぶ の で あ る が 、 そ の 場 合 オ ピ ニ オ ン ・リ ー ダ ー は 判 断 に つ い て 、 相 当 の 自律 性 を持 つ と考 え ら れ た 。 今 日 の イ ン タ ー ネ ッ トの ネ ッ トワ ー ク を 飛 び 交 う個 人 発 信 ・個 人 受 信 の 情 報 授 受 に は 「オ ピ ニ オ ン ・ リ ー ダ ー の 情 報 濾 過 の 過 程 」 は 明 ら か に 欠 落 し て い る 。 そ の 後1970年. 代 に 入 る と、1950. 年 代 の マ ス コ ミ論 が マ ス コ ミ の 影 響 力 を 過 小 評 価 し た の で は な い か との 反 省 が 生 ま れ る 。 そ の 反 省 と は 、 マ ス コ ミ は 大 衆 の 思 想 を 直 接 左 右 す る わ け で は な い が 、(当 時 な ら新 聞 ・ テ レ ビ を 意 味 す る)メ. デ ィ ア が あ る 事 件 や 問 題 を 重 点 的 に 報 道 す る と き、 そ れ が 受 け 手 た. る 大 衆 の 話 題 に 対 す る 「枠 組 み 設 定 」 を 準 備 し、 あ る 程 度 方 向 付 け を 行 う とい う 「議 題 設 定 論 」 が 現 れ た 。 今 日で は マ ス ・メ デ ィ ア が 多 様 化 し高 度 化 して 、 テ レ ビ 、 ラ ジ オ 、 新 聞. 一33一.
(18) 教 養 ・外 国 語 教 育 セ ン ター 紀 要. は もはや 旧 メ デ ィ ア と してそ の存 在 自体 が 危 ぶ ま れ てい る。 そ の 一 方 で 情 報 の 流 れ が 多 重 化 し て い る 。 そ れ に 加 え て 受 け 手 た る マ ス(大. 衆)の. は そ の 像 が 変 容 して い る と考 え ら れ る 。1960年. 像 を描 きに く くな って い るか 、 ま た. 代 半 ば に 吉 本 隆 明 に よ っ て 「大 衆 の 原 像 」. は 「日常 、 当 面 の 生 活 問 題 以 外 は 考 え な い 存 在 」 と して 描 か れ た 。 しか し今 や マ ス コ ミ論 あ る い は マ ス ・メ デ ィ ア 論 に お い て そ の よ う な 理 念 型 と し て の 大 衆 の 原 像 は リ ア リ テ ィ ー の 乏 しい もの と な っ た よ う に 見 え る 。 現 代 日 本 の 大 学 生 は 、 果 た して マ ス(大. 衆)な. の か 、 と い う 問 題 を 含 め て 、 「マ ス コ ミ. の 問 題 」 で は な く、 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る マ ス の 問 題 」 を 考 え 、 新 し い 「大 衆 の 原 像 」 を 考 え る 必 要 が あ る 。 そ れ は ま たIT社 い 。IT社. 会 を念 頭 に置 い た もの で な け れ ば な ら な. 会 の キ ー ワ ー ドは 「ヴ ァ ー チ ャ ル 」 つ ま り実 体 ・リ ア リ テ ィ ー の 欠 如 、 で あ る 。. コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 自体 が 、 極 め て 間 接 的 で あ る 。 実 際 に 目 の 前 に 人 間 が い る 場 合 に は 、 相 手 の 声 に イ ン トネ ー シ ョ ンが あ り、 顔 に 表 情 が あ る 。 自 分 の 発 し た 言 葉 に 対 し、 相 手 の リ ア ク シ ョ ンが あ っ て 、 表 情 が 変 わ り、 そ の 場 の 雰 囲 気 が 変 わ る 。 そ の よ う な 意 味 で の リ ア リ テ ィ ー が 欠 如 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 、 現 代 の 大 学 生 は ど う 思 っ て い る の か 。2010 年 度 学 生 ア ン ケ ー ト(前 60%を. 出)で. は 、 そ れ を 「好 ま しい 」 か 「普 通 」 で あ る と 感 じ る 者 が. 超 え 、 一 方 ど こ か 不 自然 、 あ る い は 好 ま し く な い と考 え る もの は24%に. た 。 リ ア リ テ ィ ー が 欠 如 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で 、 い わ ば 「想 像 上 の 相 手=不. とどまっ 特定の誰. か 自分 の メ ッセ ー ジ を 読 ん で くれ る 人 」 に む け て 言 葉 を 発 す る 学 生 が 増 加 し て い る の で あ る 。 そ の ア ンケ ー トの 結 果 を 次 の 授 業 で 学 生 に 示 し て 、 そ の 結 果 に つ い て の 感 想 コ メ ン ト を 求 め た が 、 な か に は 注 目 す べ き、 興 味 深 い コ メ ン トが み ら れ た 。(以 下 、 基 本 的 に 原 文 で 引 用 し、 長 い もの は 筆 者 が 若 干 要 約 し た). ・「友 達 の な か に 、 メ ー ル で の や り と りで は テ ン シ ョ ンが 高 く て お も し ろ い や つ な の に 、 会 っ て 話 を す る と、 お と な し くて 話 が 進 ま な い 。 メ ル 友 で 気 の 合 う 人 と、 あ っ て 面 白 い 人 は違 う」 ・「実 際 に 人 前 で 話 し た り、 面 接 で う ま く発 言 で き る か 不 安111コ カ が(自. 分 に は)足. ミュ ニ ケ ー シ ョ ン. り な い と思 う 。 就 活 を 考 え る と携 帯 や パ ソ コ ン に た よ っ て い る. 自分 に 自信 が な い 」 ・「最 近 の 事 件(*秋. 葉 原 な ど の 無 差 別 大 量 殺 傷 事 件 を さ す)で. や っ た よ う に い わ れ て い る が 、 聞 い た 話 で は(*テ. 、犯 人 は急 に犯行 を. レ ビ の コ メ ン トか ら)犯. 人 は犯. 行 前 に 実 行 予 告 の メ ー ル を 出 し て い る 。 気 持 ち は わ か る 。 誰 で も い い け ど、 誰 か に 自分 の 気 持 ち を 聞 い て ほ しか っ た の だ ろ う。 ミク シ ー か ら ッ イ ッ ター に な って 、 誰. 一34一.
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