臨床看護師の看護技術の技・美・快の特徴
─看護学生との比較─
Characteristics of Skillful, Aesthetic, and Comfortable Nursing
Practices in Clinical Nurses and Nursing Students.
長崎ひとみ,西山佐知子,中村美知子,西田 頼子,内田 一美,
古屋 洋子,大日向陽子
NAGASAKI Hitomi, NISHIYAMA Sachiko, NAKAMURA Michiko, NISHIDA Yoriko, UCHIDA Hitomi, FURUYA Yohko, OOHINATA Yohko
要 旨
目的: 臨床看護師が患者に行う看護技術の技・美・快の関連を明らかにし,技・美・快をふまえた看護技術 教育の方法を検討する。 方法: 対象は臨床看護師(以下:看護師群)3 名,A 大学看護学科学生(以下:学生群)3 名,患者役の看護学生(以 下:模擬患者)6 名,教員 6 名であった。調査は看護技術の【技】【美】【快】(臨床看護技術評価票)を用 い,看護師(学生群,看護師群)が排泄援助,食事援助,移動援助を患者に実施後,患者と評価者がそ れぞれ評価を行った。 結果: 患者の主観的評価の看護師群は,学生群より【技】【美】【快】とも有意に高値であった。看護師が特に優 れていた技術は,【技】の「言葉がよい」,【美】の「無駄がない」,【快】の「柔軟である(対応)」であった。 考察: 看護師の優れた看護技術実践能力をモデルとして,看護師が臨床指導や学内演習などの指導場面に参 画できるような教育体制作りが課題である。 キーワード 看護技術,技,美,快,臨床看護師Key Words Nursing Practice, Skillful, Beautiful, Comfortable, Clinical Nurse
受理日:2011 年 8 月 1 日
山梨大学大学院医学工学総合研究部基礎・臨床看護学講座: I n t e r d i s c i p l i n a r y G r a d u a t e S c h o o l o f M e d i c i n e a n d Engineering (Fundamental and Clinical Nursing), University of Yamanashi
Ⅰ.はじめに
看護学は古くから“実践の科学”,“看護科学と芸術”と いわれ,看護学部・学科の英表記を School of Nursing Art and Science とするところも少なくない。芸術は, 特殊な素材・手段・形式により,技巧を駆使して美を創 造・表現しようとする人間活動,およびその作品であり, 芸・技芸・技である(広辞苑)。昨今,医療現場では高度 医療の進歩,それに伴う医療技術の開発など,国をあげ て取り組んでいる。一方で,臨床看護独自の技術,特に 患者の生活を充足させる【快】の開発・進歩・発展は十分 とはいえず,芸術的観点から論じられる機会は極めて少 ない。看護は健康時,健康障害時にかかわらず,対象者 の生活上のニーズを充足するための援助であり,看護技 術の多くは患者のニーズを充足するための【技】である。 【技】【美】【快】の要素を哲学,心理学,社会学,現象学, 認知科学の側面からみてみると,【技】とは,ある物事を 行うための一定の方法や手段であり1),Skillful と表され, 熟練した,腕前の巧みさ器用さをさす2)。また,【技】の 習得は必ずしも段階的ではなく,学習者の能動的な動き による師の立ち振る舞いの模倣とその繰り返しであ る3)。【美】とは,うつくしいこと,よいことであり知覚・ 感覚・情感を刺激して内的感覚を引き起こすものであ る1)。Aesthetic と表され,美的な,上品な,趣のある ことをさしている2)。カントによると,【美】とは普遍的 に【快い】ものであるとも言われている4)。【快】とは,快 いこと,心にかなうことであり1),Comfortable と表され, 心地よく,安楽であり苦痛がないこと2),欲求の満足と 結び付いた情動である5)。【快】が生理的・個人的・偶然 的・主観的であるのに対して,【美】は個人的利害関心か ら解放され,より普遍的・必然的・客観的・社会的であ る1)。これらのことから臨床看護師による患者のケアの 【技】は,【美】的であることがのぞましく,その【技】を通
して患者は【快】を得るものと考える。 本調査は,多くの患者が必要とする排泄援助,食事援 助,移動援助の【快】に焦点を当て,看護師の手技,立ち 振る舞い,言葉の 3 要素をもとに,患者に【快】をもたら す【技】【美】との関連を明らかにする。臨床看護師の行 う看護技術を看護学生と比較することで,看護師の優れ た技術の特徴を見出し,臨床実習や学内演習で役割モデ ルとなることで学生の看護技術教育の質の向上を図る。
Ⅱ.目的
臨床看護師が患者に行う看護技術の技・美・快の関連 を明らかにし,技・美・快をふまえた看護技術教育の方 法を検討する。Ⅲ.用語の操作的定義
看護技術: 看護師が看護学実習室において模擬患者(学 生)に行う日常生活援助技術であり,技術の 要素を【技】【美】【快】とする。 臨床看護師:経験年数 11 年以上のベテラン看護師。 看護学生:A 大学看護学科 4 年生。 模擬患者評価: 患者役学生による看護技術の【技】【美】 【快】の評価。 教員評価:教員による看護技術の【技】【美】【快】の評価。Ⅳ.調査方法
1. 対象 本研究の趣旨について説明し,同意が得られた看護学 生 9 名(6 名は模擬患者役,3 名は看護学生役),臨床看 護師 3 名,教員 6 名。 2. 調査内容 1) 対象者の属性:年齢,性別,臨床看護師経験年数 2) 看護技術の技・美・快(看護技術評価) 看護技術の測定概念を【技】【美】【快】とする。【技】は, 手技,立ち振る舞い,言葉,手順,巧み,の 5 項目で測 定し,【美】は,みごと,きれい,心身によい,無駄がな い,すばらしい,の 5 項目,【快】は,心地よい,違和感 がない,楽である,苦痛がない,柔軟である,の 5 項目 で測定する。各項目において「全くそうでない」∼「全く そうだ」の 1 点∼ 6 点の 6 段階評価とし,点数が高いほ ど評価が高い。この尺度のクロンバックα係数は,【技】 0.96,【美】0.97,【快】0.96 であった。 3. 調査方法 1) 調査場所 A 大学看護学科実習室 2) 調査期間 平成 23 年 3 月 8 日∼ 9 日 3) 調査手順 基礎看護技術の日常生活援助技術において代表的な技 術を,排泄援助技術・食事援助技術・移動援助技術とし, 看護学生および看護師に各援助技術の簡単な手順を文書 および口頭で説明した後,看護援助を実施した。患者設 定は,倦怠感が強く,体力低下している臥床中の高齢女 性患者,意識状態は清明であるが左上下肢に軽度麻痺が あるとした。排泄援助ではベッド上での便器挿入,おむ つ交換,手浴を行った。食事援助では,患者の設定に両 眼視力低下を加え,配膳,食事介助,口腔ケアを行った。 移動援助では,車いすへの移乗,横シーツ交換,ベッド への移乗を行った。各援助終了後,模擬患者と教員が臨 床看護技術評価票を記入し回収した。 4. 倫理的配慮 対象者に研究の趣旨・内容・手順を説明し,同意が得 られた者を対象者とした。調査で得られたデータは,個 人を特定できる形で公表せず,研究以外では用いないこ と,学生に対しては,成績には関係ないことを口頭で伝 えた。同意が得られたものについては同意書に署名を得 た。 5. 分析方法 3 場面の看護技術の【技】【美】【快】の平均値と標準偏 差を算出した。看護技術の評価について学生群と看護師 群の比較には Mann-Whitney の U 検定を用いた。看護 師群の【技】【美】【快】の関連をみるために Spearman の 順位相関係数を用いた。有意水準は P < 0.05 とした。 統計には統計ソフト PASW Statistics ver.17.0 を用いた。Ⅴ.結果
1. 対象者の属性 模擬患者の学生 6 名は平均年齢 21.2 歳,看護学生 3 名は平均年齢 22.0 歳,臨床看護師 3 名は平均年齢 46.7 歳, 平均臨床看護師経験年数 17.3 年,教員 6 名は平均年齢 35.8 歳,平均教育経験年数 6.1 年であった。対象者は全 て女性であった。 2. 看護技術の実施者による比較 学生群と看護師群 1) 看護技術の看護師群と学生群の比較(表 1) 排泄援助,食事援助,移動援助の 3 場面での【技】【美】 【快】の特徴を看護師実施群(以下:看護師群)と看護学生実施群(以下:学生群)でみたところ,看護師群・学生群 ともに排泄援助・食事援助・移動援助の各場面による評 価の差は認められなかった。 模擬患者による看護技術の【技】【美】【快】の評価(以下: 模擬患者評価)は,看護師群が学生群より有意に高値で あり(P < 0.01),特に学生群との差が大きかった要素は 【技】(5.74 ± 0.31,P < 0.01)であった。 教員による看護技術評価(以下:教員評価)も,看護師 群は学生群より有意に高値であった(【技】5.32 ± 0.63,P < 0.01)。看護師群の評価は,模擬患者評価・教員評価 ともに高値で差はなかったが,学生群では模擬患者評価 が教員評価より高値であった。 2) 看護師群で高値であった看護技術の技・美・快(表 2) 模擬患者評価が高値であった看護技術細項目は,看護 師群の【技】の「言葉がよい(技に伴う)」(5.89 < Mean ≦ 6.00),【美】の「無駄がない」(5.67 < Mean ≦ 5.83),【快】 の「柔軟である(対応)」(5.78 < Mean ≦ 5.89)であった。 教員評価も模擬患者評価と同様に看護師群が学生群より 有意に高値であった。 3) 学生群の低値であった看護技術の技・美・快(表 2) 模擬患者評価で学生群が特に低値であった項目は, 【技】の,「巧みである(技)」( 3.72 < Mean ≦ 4.61),【美】 の「無駄がない」(3.83 < Mean ≦ 4.83),【快】の「違和感 がない」(3.83 < Mean ≦ 4.78)であった。 教員評価も模擬患者評価と同様にこれらの項目では看 護師群が学生群より有意に高値であった。 3. 看護場面における技・美・快の関連(表 3) 看護師群および学生群の看護技術の【技】【美】【快】の 模擬患者評価は,3 要素間で有意な相関がみられた(看 護師群:0.53 < r ≦ 0.95,P < 0.05)。看護師群では特 に「技」と「美」では排泄援助場面(r = 0.95,P < 0.01),「技」 と「快」でも排泄援助場面(r = 0.81,P < 0.01),「美」と「快」 では移動援助場面(r = 0.85,P < 0.01)で相関が強かった。 細項目では,「手順がよい【技】」と「違和感がない【快】」(r = 0.78,P < 0.01),「立ち振る舞いがよい【技】」と「柔軟 である(対応)【快】」(r = 0.72, P < 0.01),「言葉がよい (技に伴う)【技】」と「苦痛がない【快】」(r = 0.63 P < 0.05),「無駄がない【美】」と「柔軟である(対応)【快】」(r = 0.77,P < 0.01),に強い相関がみられ特徴的であった。
Ⅵ.考察
看護師が行う看護技術は,学生よりも【技】【美】【快】 いずれの評価も高く,3 場面において【技】【美】【快】に それぞれ相関関係がみられた。今回は模擬患者が認識す る看護師の看護技術の特徴について考察した。 1. 看護師が優れている看護技術の技・美・快の特徴 看護師の行う看護技術は【技】も【美】も【快】も優れてい た。特に,言葉がよい【技】,無駄がない【美】,柔軟であ る【快】という点で患者から優れていると認識されてい た。看護師の看護技術の要素として,人間関係を発展さ せる技術,生活を支える援助技術,安全を守る技術,安 楽な看護技術がある6)。これらのどの要素の中にも言葉 がよく,無駄がなく,柔軟な対応が求められると考える。 表 1 看護技術の実施者による比較 ─看護師群・学生群─ 評価者 模擬患者評価 (n=18)1)2) 有意差 教員評価 (n=36)3)4) 有意差 実施者 看護師群 学生群 看護師群 学生群場面 Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD
技 5.74 ± 0.31 4.56 ± 0.62 * 5.32 ± 0.63 3.34 ± 0.83 * 美 5.65 ± 0.40 4.37 ± 0.64 * 5.12 ± 0.67 2.97 ± 0.87 * 快 5.59 ± 0.37 4.56 ± 0.79 * 5.40 ± 0.57 3.35 ± 0.92 * 排泄 5.63 ± 0.40 4.51 ± 0.34 * 5.39 ± 0.50 3.19 ± 0.82 * 技 食事 5.73 ± 0.27 4.98 ± 0.47 * 5.37 ± 0.56 3.69 ± 0.76 * 移動 5.86 ± 0.19 4.20 ± 0.73 * 5.18 ± 0.79 3.14 ± 0.80 * 排泄 5.60 ± 0.48 4.26 ± 0.55 * 5.13 ± 0.65 2.78 ± 0.88 * 美 食事 5.70 ± 0.35 4.80 ± 0.55 * 5.29 ± 0.56 3.32 ± 0.82 * 移動 5.66 ± 0.37 4.06 ± 0.66 * 5.10 ± 0.80 2.81 ± 0.83 * 排泄 5.56 ± 0.37 4.70 ± 0.70 * 5.42 ± 0.60 3.14 ± 0.90 * 快 食事 5.70 ± 0.32 4.98 ± 0.52 * 5.47 ± 0.46 3.76 ± 0.92 * 移動 5.50 ± 0.41 4.00 ± 0.79 * 5.32 ± 0.64 3.16 ± 0.84 * Mann-Whitney 検定 * P < 0.01 1)模擬患者 6 名が看護師(n=3)に行った評価数(n=18) 2)模擬患者 6 名が学生(n=3)に行った評価数(n=18) 3)教員 12 名(6 名× 2 日間)が看護師群(n=3)に行った評価数(n=36) 4)教員 12 名(6 名× 2 日間)が学生群(n=3)に行った評価数(n=36)
表 2 看護技術の実施者による比較 ─看護師群と学生群─ 評価者 模擬患者評価 (n=18)1)2) 有意差 教員評価 (n=36)3)4) 有意差 実施者 看護師群 学生群 看護師群 学生群
項目 場面 Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD
技 手技がよい 排泄 5.56 ± 0.51 4.33 ± 0.59 ** 5.47 ± 0.61 3.03 ± 1.03 ** 食事 5.50 ± 0.51 4.94 ± 0.64 * 5.17 ± 0.74 3.72 ± 0.97 ** 移動 5.72 ± 0.46 3.78 ± 0.94 ** 5.06 ± 0.92 3.14 ± 1.05 ** 立ち振る舞いがよい 排泄 5.67 ± 0.49 4.89 ± 0.58 ** 5.42 ± 0.69 3.56 ± 0.91 ** 食事 5.89 ± 0.32 5.17 ± 0.51 ** 5.47 ± 0.61 4.08 ± 0.77 ** 移動 5.72 ± 0.46 3.78 ± 0.94 ** 5.06 ± 0.92 3.14 ± 1.05 ** 言葉がよい(技に伴う) 排泄 5.94 ± 0.24 5.00 ± 0.69 ** 5.44 ± 0.61 3.75 ± 0.77 ** 食事 5.89 ± 0.32 5.11 ± 0.58 ** 5.61 ± 0.60 4.11 ± 0.89 ** 移動 6.00 ± 0.00 4.56 ± 1.10 ** 5.28 ± 1.00 3.72 ± 0.81 ** 手順がよい(方法) 排泄 5.56 ± 0.62 4.33 ± 0.69 ** 5.28 ± 0.66 3.11 ± 1.14 ** 食事 5.61 ± 0.61 5.06 ± 0.80 * 5.44 ± 0.61 3.75 ± 0.84 ** 移動 5.83 ± 0.38 4.17 ± 0.86 ** 5.19 ± 0.95 3.11 ± 0.85 ** 巧みである(技) 排泄 5.44 ± 0.62 4.00 ± 0.49 * 5.36 ± 0.68 2.46 ± 1.01 ** 食事 5.78 ± 0.43 4.61 ± 0.70 ** 5.17 ± 0.88 2.78 ± 0.99 ** 移動 5.72 ± 0.46 3.72 ± 0.83 ** 5.19 ± 0.89 2.22 ± 1.12 ** 美 きれいである 排泄 5.61 ± 0.50 4.61 ± 0.61 ** 5.36 ± 0.93 3.11 ± 1.01 ** 食事 5.78 ± 0.43 4.83 ± 0.38 ** 5.47 ± 0.61 3.69 ± 0.86 ** 移動 5.67 ± 0.49 4.28 ± 0.83 ** 5.22 ± 0.99 3.11 ± 1.04 ** よい(心身に) 排泄 5.61 ± 0.50 4.61 ± 0.70 ** 5.11 ± 0.95 3.39 ± 0.96 ** 食事 5.61 ± 0.50 4.94 ± 0.54 ** 5.28 ± 0.78 3.92 ± 0.81 ** 移動 5.44 ± 0.51 4.11 ± 0.68 ** 5.14 ± 0.93 3.33 ± 0.93 ** みごとである 排泄 5.61 ± 0.61 4.11 ± 0.58 ** 5.17 ± 0.74 2.36 ± 0.90 ** 食事 5.67 ± 0.49 4.72 ± 0.67 ** 5.22 ± 0.80 2.86 ± 1.02 ** 移動 5.67 ± 0.49 3.89 ± 0.83 ** 5.08 ± 0.84 2.44 ± 1.11 ** 無駄がない 排泄 5.67 ± 0.59 3.83 ± 0.79 ** 5.08 ± 0.81 2.56 ± 0.91 ** 食事 5.67 ± 0.49 4.83 ± 0.71 ** 5.47 ± 0.74 3.28 ± 1.03 ** 移動 5.83 ± 0.38 4.06 ± 0.80 ** 5.17 ± 0.88 2.72 ± 0.88 ** すばらしい 排泄 5.50 ± 0.62 4.11 ± 0.68 ** 4.94 ± 0.71 2.50 ± 1.08 ** 食事 5.78 ± 0.43 4.67 ± 0.69 ** 5.03 ± 0.61 2.83 ± 1.03 ** 移動 5.67 ± 0.49 3.94 ± 0.80 ** 4.89 ± 0.89 2.44 ± 0.97 ** 快 心地よい 排泄 5.44 ± 0.51 4.89 ± 0.83 5.53 ± 0.77 3.36 ± 1.10 ** 食事 5.61 ± 0.50 5.00 ± 0.69 * 5.39 ± 0.69 3.72 ± 0.85 ** 移動 5.61 ± 0.50 3.83 ± 0.86 ** 5.31 ± 0.75 3.28 ± 0.81 ** 違和感がない 排泄 5.39 ± 0.61 4.39 ± 0.85 ** 5.39 ± 0.77 3.08 ± 1.13 ** 食事 5.44 ± 0.62 4.78 ± 0.73 * 5.50 ± 0.56 3.69 ± 1.01 ** 移動 5.50 ± 0.62 3.83 ± 0.71 ** 5.39 ± 0.64 3.11 ± 0.95 ** 楽である 排泄 5.56 ± 0.62 4.56 ± 0.98 ** 5.44 ± 0.69 3.06 ± 0.98 ** 食事 5.89 ± 0.32 4.89 ± 0.68 ** 5.50 ± 0.65 3.72 ± 0.97 ** 移動 5.22 ± 0.65 3.72 ± 1.13 ** 5.36 ± 0.80 3.08 ± 0.97 ** 苦痛がない 排泄 5.61 ± 0.50 4.78 ± 0.88 ** 5.42 ± 0.60 3.17 ± 1.00 ** 食事 5.67 ± 0.59 4.94 ± 0.64 ** 5.56 ± 0.56 3.92 ± 1.16 ** 移動 5.39 ± 0.50 3.94 ± 1.11 ** 5.31 ± 0.67 3.25 ± 1.13 ** 柔軟である(対応) 排泄 5.78 ± 0.43 4.89 ± 0.58 ** 5.31 ± 0.75 3.06 ± 0.92 ** 食事 5.89 ± 0.32 5.28 ± 0.57 ** 5.42 ± 0.69 3.72 ± 1.14 ** 移動 5.78 ± 0.43 4.67 ± 0.77 * 5.25 ± 0.84 3.08 ± 0.97 ** Mann-Whitney 検定 * P < 0.05 ** P < 0.01 1)模擬患者 6 名が看護師(n=3)に行った評価数(n=18) 2)模擬患者 6 名が学生(n=3)に行った評価数(n=18) 3)教員 12 名(6 名× 2 日間)が看護師群(n=3)に行った評価数(n=36) 4)教員 12 名(6 名× 2 日間)が学生群(n=3)に行った評価数(n=36)
このような要素は臨床経験を積むなかで培われる能力で あり,学習過程にある学生に不足している部分であるが 学内の技術演習のみで養うことは困難である。 看護技術教育における看護師の役割は,学生に実践の モデル行為を示すことであり7),特に臨床実習において 看護師に求められる指導能力とは,日頃実践している看 護の力を,看護モデルとして学生に提示することである と言われている8)。臨床看護師は看護実践の手本・見本 となる人であることが求められている9)。よって,看護 師のこれらの優れた能力が学生の手本となるように,看 護師が役割モデルとして臨床実習に限らず学内の看護技 術演習にも参加することは看護技術教育に有効であると 考えられる。 2. 看護技術教育の課題 学生の行う看護技術で特に不足していたのが,巧みさ 【技】,無駄のなさ【美】,違和感のなさ【快】であった。違 和感とはしっくりこない感じ(大辞泉)であり,学生に とって経験の少ない技術であればあるほど患者に違和感 を与えずに技術を行うことは難しい。看護基礎教育では, 学内から臨床実習において基礎看護技術を習得し,確実 な看護実践力を身に付けることが重要である。しかし, 患者の人権への配慮や医療安全に関する意識向上の中 で,看護学生が臨床実習で看護技術を経験する機会が限 定されてきている。成人看護学実習における学生の看護 技術の実践状況は,90%以上の学生が体験できたのは環 境整備のみで,安楽な体位・移動援助が約 50%,食事 援助が約 40%,排泄介助はほとんど体験できていない 状況である10)。本結果からも,患者にとっていずれも 日常よく行われている看護行為であるが,看護師と学生 の実施状況では【技】【美】【快】の要素に明らかな差がみ られていることから,日常の看護技術こそより多く体験 することが有効であることを示している。 また,患者に違和感を与えてしまう要因の 1 つとして, 学生は患者へ丁寧で適切な説明ができないことが挙げら れる。技術に伴う患者への言葉かけ数の調査では11), 学生は看護師と比較して言葉かけ数が少なく,本調査結 果で言葉がよい【技】ことが学生では看護師より不足して いたことと一致していた。更に,言葉がよい【技】ことは, 違和感がない【快】,心地よい【快】,苦痛がない【快】こと と相関関係にあったため,患者への言葉かけが患者の快 につながると考えられる。 以上,看護師の看護技術がすべての場面の【技】【美】 【快】において優れているという結果から,看護師が臨床 実習や学内演習の看護技術教育現場で学生に与える影響 は大きいと考えられる。看護師の優れた看護技術実践能 力をモデルとして,学生にとって体験学習を増やすこと が必要である。今後の教育上の課題として,看護教員に よる学生の看護技術実践場面での【技】【美】【快】を関連 づけた教育方法の展開,臨床看護師が学内技術演習など 指導場面に参画できる教育体制づくりなどが,明らかと なった。
Ⅶ.結論
看護技術の【技】【美】【快】の模擬患者評価は,看護師 が学生より有意に高値であり,看護師が特に優れている 看護技術は,言葉がよい【技】,無駄がない【美】,柔軟で ある【快】であった。3 場面における看護技術の【技】【美】 【快】は相関しており【技】【美】が患者の【快】につながっ ていた。これらの結果を踏まえた看護技術教育の課題は, 看護師の優れた看護技術実践能力をモデルとして,学生 にとっての体験学習を増やすこと,看護師が臨床指導や 学内演習などの指導場面に参画できるような教育体制づ くりである。謝辞
本研究調査にご協力くださいました看護師,学生のみ なさまに心より感謝申し上げます。なお,本研究は平成 22 年度科学研究費補助金基盤(C)を受けて行った研究の 一部である。 文献 1) 新村出(1991)広辞苑(第四版).岩波書店,東京,237, 409, 599. 2) 小西友七,南出康世(2007)ジーニアス英和辞典(第 4 版).大修 館書店,東京,157, 352, 1749. 3) 日本認知科学会(2001)認知科学辞典(初版).共立出版,東京, 868. 4) Didier Julia(1998)ラルース哲学辞典(初版)(片山寿昭,山形 表 3 看護師群の模擬患者による看護技術評価の 技・美・快の関連 (n=18) 場面 r P 排泄 技 vs 美 0.95 ** 技 vs 快 0.81 ** 美 vs 快 0.72 ** 食事 技 vs 美 0.66 ** 技 vs 快 0.55 * 美 vs 快 0.53 * 移動 技 vs 美 0.84 ** 技 vs 快 0.67 ** 美 vs 快 0.85 ** r:Spearman の順位相関係数 * P < 0.05 ** P < 0.01頼洋,鷲田清).弘文堂,東京,84-85, 111-112. 5) Norbert Sillamy (1999)ラルース臨床心理学辞典(初版)(滝沢 武久,加藤敏).弘文堂,東京,38. 6) 坪井良子,松田たみ子(2008)基礎看護学 考える基礎看護技術 Ⅰ 看護技術の基本.ヌーヴェルヒロカワ,東京,23-70. 7) 村島いさ子(2001)実習生の経験と向き合う臨床実習教育.看護 教育,42(2):94-98. 8) 谷垣静子,松田明子(2005)教員は学生にケアリング教育ができ ているのか─学生の立場から見た臨床実習における教員の関わ りについて─.Quality Nursing,19(12):91-98. 9) 渡部菜穂子,一戸とも子(2011)看護学実習における臨地実習指 導者の「看護実践の役割モデル」の認識.弘前学院大学看護紀要, 6:1-11. 10)西田頼子,佐藤一美,他(2008)本学成人看護学実習の実態と課 題.山梨大学看護学会誌,7(1):19-25. 11)工藤せい子,石岡薫,他(2010)看護学生と看護者の言語的コミュ ニケーションの特徴.弘前大学大学院保健学研究科紀要,9: 11-20.