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腸骨翼に発生したinsufficiency fractureの1例

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Academic year: 2021

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仙台市立病院医誌 20、49−52、20{}{}       索引用語        illsufliciellcv fracture        骨粗髭症状       Duverlly骨折

     腸骨翼に発生したinsufflciency fractureの1例

門馬弘晶,安倍吉則,高橋新

高橋徳明,今村 

格,柴田常博

はじめに

 比較的まれな骨盤のinsufificiency fractureは 恥骨部や仙骨部に発生することが多く,また悪性 の疾患との鑑別診断に難渋することが多い疾患で

ある。今回われわれは両腸骨翼に発生した

insufficiency fractureの1例を経験した。この症 例は,発生部位や受傷機序が特殊で,治療も困難 であったので病理像を含めて報告する。 症 例  54歳,女性  主訴二右股関節部の運動時痛  既往歴:平成9年の9月から腰痛と骨粗籟症の ため当科に通院加療していた。慢性関節リウマチ やステロイド投与,放射線治療の既往はなく,閉 経は52歳時であった。  家族歴:特記すべきことなし。  現病歴:平成10年5月15日の起床後から右股 関節の運動時痛が出現し,徐々に柊痛が増強して きたため5月20Hに当科を受診した。初診時, Scarpa三角の圧痛と右股関節の運動時痛を認め たが,腰椎や股関節の可動域制限はなく,神経学 的にも異常所見はなかった。また股関節のX線写 真で骨折線や関節の異常はみられず,血液,生化

学検査ではLDHの軽度の上昇を認めただけで

あった。その後,右腎部から大腿近位外側にも運 動時痛が伴うようになり,歩行も困難になったた め6月3日に入院した。  入院時現症  初診時単純X線所見:腰椎で慈恵医大分類III 度,近位大腿骨でSingh分類II度の骨萎縮が認め られた。

 股関節MR像:入院後に行った股関節のMRI

検査で異常所見は認められなかった。  入院3週後の単純X線所見:入院後は疾痛の 増強はなかったが,経過観察目的に6月23日に撮 影した股関節のX線写真で右腸骨翼の骨折が認 められた(図1)。  骨シンチグラム:右腸骨と左第3,4,8肋骨と第 1腰椎椎体に高集積像を認めた(図2)。  骨盤CT像:骨盤のCT像で右腸骨翼に骨折を 認めた(図3)。  以上のことから右腸骨翼のinsuf6ciency frac− ture,あるいは病的骨折を疑い,8月6日に右腸骨 部の骨生検と骨接合術を行った。  術中所見:右ヒ前腸骨棘のやや後外側の腸骨陵 から臼蓋L部にかけて腸骨翼の骨折が認められ た。また,骨折部には腫瘍を疑わせるような組織 の介在はなかった(図4)。  骨折部をチタン製リコンストラクションプレー トで内固定したが,その際,腸骨はかなり脆弱化 していてスクリューでの固定に難渋した。 仙台市立病院整形外科 図1.入院3週後の単純X線写真   右腸骨ぶに転位を伴う骨折を認める Presented by Medical*Online

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㌫ 1 字、・1 t,11W    『 糞’ F.tu、憎 離t/ 奪   才   ● ぜz 麺 〔  エ gew’「 ll. ,.fI 図2.99mTc骨シンチグラム    右腸骨と左第3,4,8,肋骨と第1腰椎に高集積像を認める

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図5.病理所見(II−E,中拡大)    軟骨化成像や破骨細胞,骨芽細胞を伴う骨新生    像などが認められる 図3.骨盤CT    右腸骨翼の骨折 ・ 〆 ゆ ゜ ’ .  の﹄

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図6.病理所見(II−E,強拡大) 図4.術中所見    腸骨陵から臼蓋上部にかけて骨折を認める Presented by Medical*Online

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51  病理組織所見:骨折病変部から採取した組織に は軟骨化成像や破骨細胞,骨芽細胞を伴う骨新生 図7.再入院2日後の単純X線写真   左腸骨翼に骨折を認める ㍗s・

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㌔ 纂ゴ、 像などが認められ,これらは骨折に際しての比較 的早期の修復反応の所見であった。また,原発性 骨腫瘍や転移性骨腫瘍などの悪性所見は認められ なかった(図5,6)。  以ヒからこの症例は,骨脆弱性を基盤とし,明

らかな外傷歴がなく発生した腸骨翼の

insufliciency fractureと診断された。  その後,理学療法を行い,平成10年11月21日 に退院し,外来通院を続けていた。  今度は平成ll年4月14日の起床後から左股関 節周辺の運動時痛が出現し,同日外来を受診した が,股間節の単純X線写真では特に異常は認めら れなかった。数日後には左大腿近位外側部にも運 動時痛が伴うようになり,また柊痛が次第に増強 ズs L  POST   R 図8.99「「’TC骨シンチグラム 。、 1; 右第ω肋骨と左腸骨に高集積像を認める  茎ζ…      ≡’ぷ「≡・4       13;4e:e3  −17snH      §5F 998514  騨      特R3アま83       アドロ     Y2(99)     ge㊥鵡陣tS         E3   。.ピ  N

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T.Mt t.21 噸 癬凛ざ 図9.骨盤CT   左腸骨翼に骨折を認める 図10.単純X線写真    右大腿骨頚部骨折を認める Presented by Medical*Online

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52 してきたため精査,治療を目的に5月10日に再入 院した。  入院時股関節単純X線写真で左腸骨翼に骨折 を認め(図7),骨シンチグラムでは右第10肋骨と 左腸骨に高集積像を(図8),また骨ag CT像で左 腸骨翼に骨折を認めた(図9)。右側と同様の経過 を辿ったことから,左腸骨のinsufficiency frac− tureと診断した。治療は約4週間の安静とし,以 後骨癒合が得られてきていたため理学療法を行っ ていた。その後疾痛の訴えもなく経過は良好で あった。しかし,ベッドサイドで転倒し,右大腿 骨の頚部骨折(Garden分類stage IV)を発症し (図10),骨接合術を試みたが,徒手整復が不可能 であったため人工骨頭置換術を行った。  その後は理学療法を行い11月27日に軽快退院 した。 考 察  insufficiency fractureは脆弱化した骨に軽度の 外力が加わっておこる骨折で,正常な骨に過度の 反復する力が加わっておこるstress fractureと は区別される1)。insufficiency fractureのおこる 危険因子には,閉経後の骨粗髪症,慢性関節リウ マチ,ステロイドの投与,放射線治療などがある が,本症例は骨粗髭症以外に誘因となる既往歴は なく,閉経後の骨粗髪症を基盤とし発生した骨折 と推測された。  50歳以上の女性でinsufficiency fractureの 5%は骨盤に発生するといわれ2),とくに恥骨体部 と仙骨翼に多いといわれているが,腸骨部の発生 はまれで,報告例が少なく,発生率は確立されて いない3)。また骨折部位は多発することが多く, Davies4)らの報告では25例中で平均3.2カ所, Chary−Valckenaere3)らは14例中で平均2.1カ 所の骨折を伴っていたことを報告している。しか し本症例は,骨盤の両腸骨翼の骨折で,それぞれ 外傷の既往なく単独に発生したものであった。  診断については初期のX線写真上では変化が 微少なため見逃されやすぐ),骨シンチグラ フィーやCT, MRIなどが有効である。本症例の 場合,両側とも骨片が大きく,また右側の方は転 位も著明であったため診断は容易であった。また

本症例は腸骨翼に単独に発生するいわゆる

Duverny骨折の形をとっており,受傷機序として は付着する大腿筋膜張筋や中腎筋が腸骨翼に牽引 力として働いたために発生したものと推測され る。  治療としては活i生型ビタミンD3やカルシトニ ンなど骨粗髪症の一般的薬物療法のほか,局所の 骨折に対してはほとんど安静のみで治癒するとい われている3)。しかし本症例の右側については疾 痛が持続し,骨片の転位も大きく,加えて病的骨 折が否定できなかったため,骨生検をかねて観血 的整復固定術をおこなった。その後反対側の左腸 骨にも同様な骨折が発生したが,こちらは転位が ほとんどなかったので保存的に治療した。以後の 経過は比較的良好であるが,現在でもなお歩行時 に腎部痛,仙骨部痛などを訴えていて,さらに新 しい骨折をきたす可能性があり,今後長期の経過 観察が必要である。 ︶ 1 ︶ 2 ま と め 骨粗霧症を基盤としたまれなDuverny骨 折の一例を経験した。 骨粗髪症があり,明らかな外傷歴のない患 者で,股関節痛を訴える場合にはinsuffici− ency fractureも考慮するべきである。 文 献 ]) Pentecost RL et al:Fatigue, insu箭ciency and  pathologic fractures. JMJA l87:1001−1014,  /964 2) Abe H et aユ:Radiation−induced insu箭ciency  fractures of the pelvis:evaluation with 99mTc−  methylene disphosphonate scintigraphy. AJR  158:599−602,1992 3) Chary−Valckenaere et al:Ing. uflficiency frac−  tures of the ilium. Rev Rhum(Engl Ed)64:  542−548,ユ997 4)Davies AM et al:Iliac insufficiency fractures.  Br J Radiol 64:305−309,1991 5)Peh WC et al:Pelvic insufliciency fractures in  the elderユy. Ann Acad Med Singapore 22:  818−822,1993 Presented by Medical*Online

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