中学部 第〇学年 自立活動学習指導案 1 題材名 「お話ボードを使って、先生や友達と話をしよう」 2 指導観 ア 実態観 本指導の対象生徒は、中学部〇年生の生徒Aである。学習面では、口頭での端的な指示を聞き、自分 から行動したり、写真やイラストから情報を読み取り、教師の質問に積極的に答えたりする姿が見られ る。また、友達との関わりでは、自分から友達の輪の中に入り、連想ゲームをしたり、折り紙で様々な形 を作ったりして積極的に関わる様子が見られる。生徒Aは、PVT-R 絵画語い発達検査より、語彙年齢が〇 歳〇か月で、日常生活の中で困らない程度の語彙理解力があることが分かった。しかし、相手の質問を 受けて自分の経験したことを伝えるなどのコミュニケーション場面においては、単語で答えることが多 く、教師が生徒Aの伝えようとしていることをくみ取りながら、発話を促すようにしている。このよう に、生徒Aは伝えたいことがあるが、使用できている言葉が限られているため、友達同士でのやり取り では、話の内容が相手に伝わらないことが多いと考える。 生徒Aの実態を、自立活動の6区分で整理し、課題を抽出した(図1)。生徒Aの中心課題は、経験し たことを話すときに、断片的な語彙で内容を伝えることが多いことと、人の名前や出来事を繰り返し声 に出して覚えるようにし ているが、覚えるまでに時 間を要することであるこ とが分かった。そこで、生 徒Aの中心課題である「コ ミュニケーション」と「環 境の把握」の内容を関連付 け、言葉を生活の中で生か すために、尋ねられたこと に、複数の単語を使用して 表現することができるよ うに指導を行っていく必 要があると考える。 イ 題材観 本単元は、特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編の「6コミュニケーション」の項目「(3)言語 の形成と活用に関すること」と「4環境の把握」の項目「(2)感覚や認知の特性についての理解と対応に 関すること」を受けて設定している。「6コミュニケーション」では、課題の設定を工夫して生徒に「で きた」という経験と自信をもたせ、コミュニケーションに対する意欲を高め、言葉を生活の中に生かせ るようにしていくことが大切であると述べられている。「4環境の把握」では、本人が理解しやすい学習 方法を様々な場面にどのように用いればよいのかを学んで、積極的に取り入れていくように指導するこ とが大切であると述べられている。 本単元では、お話ボードを活用しながら、生徒Aが尋ねられたことに、複数の単語を使用して表現す ることができるようになることを目指す。単元構成は、≪置き換える≫≪結び付ける≫≪表現する≫の 図1 課題関連図 心理的安定 難しいと感じることや注意を 受けることが続くと、落ち込 みが激しい。 身体の動き 体を動かすことは好きである が、動きがぎこちないところ がある。 人間関係の形成 友達の輪の中に入り、遊ぼう とするが、自分本位で遊びを 行う様子が見られる。 環境の把握 人の名前や出来事を繰り返し 声に出して覚えるようにして いるが、覚えるまでに時間を 要する。 コミュニケーション 経験したことを話すときに、 断片的な語彙で内容を伝える ことが多い。 環境の把握 自分の作業が途中で あっても、周りの様 子が気になった際に は、注意がそれるこ とがある。 環境の把握 手順が多い作業では、今行っ ていることから次に何をすれ ばよいか分からなくなること がある。 環境の把握 3文字以上のひらがなでは、 たどり読みをするため、まと まりのある言葉として読み上 げるまでに時間を要する。
三つの段階で構成し、相手から尋ねられたことに、お話ボードを使用して答える時間を設定する。三段 階で構成することにより、想起している単語を単語カードで表し、単語と単語を組み合わせ、尋ねられ たことに、複数の単語を使用して答える学習を順序立てて指導することができる。 ≪置き換える≫段階では、生徒Aが、紙芝居を見て、人・動作・場所・曜日のカテゴリーのカードを お話ボードに添付し、紙芝居の話を作る学習を設定する。紙芝居で内容を読み取るようにすることで、 使用されている単語に視覚的に気付くことができ、紙芝居を見ながら複数の単語を、状況を示す単語の 人(学級の友達や学年の教師など)カード、場所(教室や体育館、美術室、作業室など)カード、曜日 カードに置き換えることができる。≪結び付ける≫段階では、一定の時間提示されると、次のイラスト に切り替わるイラスト動画を使用し、クイズを通して必要な単語カードを組み合わせて答える学習を設 定する。イラスト動画を見聞きすることで、日常生活に近い状況で、イラスト動画の内容から捉えたこ とを、単語カードで表し、お話ボードで複数組み合わせることができる。≪表現する≫段階では、好き な食べ物やアニメ、休みの日にしていることなどの内容について、単語カードをお話ボードに添付して 尋ねられたことに答える学習を設定する。好きな食べ物やアニメなどの話題は、生徒Aの興味・関心が 高いため、積極的に単語を組み合わせて話すことができると考える。尋ねられたことに、複数の単語を 使用して答えることができるようになることは、生徒Aが身に付けている言葉を生活の中で生かしてい く上で、大変意義深いと考える。 ウ 指導観 本題材の指導では、お話ボードを活用しながら、生徒Aが尋ねられたことに、複数の単語を使用して 答えることができるようにする。視覚的な短期記憶と運動的な手掛かりを用いて問題を解決することが 得意である生徒Aが、視覚的な情報を手掛かりにして言葉を想起し、複数の単語を使用して発話するこ とができるようにする。視覚的な情報は、置き換える段階では紙媒体にイラストが提示された紙芝居、 結び付ける段階では話の流れによってイラストが提示されたり消えたりするイラスト動画を使用する。 お話ボードに添付する単語カードには、生徒Aが現在、単語の意味を理解し、一単語のみで発話でき る身近な生活に関する人、もの、動作、場所、曜日を表す単語を使用する。単語をカードに置き換えるこ とができるように、単語を表すイラストと頭文字を提示した単語カードを使用する。 お話ボードは、生徒Aが尋ねられたことに、複数の単語を結び付けて答えることができるために、三 段階で改変しながら活用する。最初に、紙芝居から読み取ったことを単語カードに置き換えることがで きるように、状況を切り取った写真に近い紙芝居の中に、人・動作・場所・曜日を表すイラストが提示さ れているようにする。お話ボードは、ボードの下段に動作を表すカードを提示するようにし、人・場所・ 曜日の三つのカテゴリーを想起した順に添付することができる形式とする。教師が「誰が、いつ〇〇を しているかな。」などと言葉掛けをしながら、生徒Aが複数の単語を、単語カードから選択できるように する。次に、イラスト動画で見聞きしたことを単語と単語を組み合わせて、表出することができるよう に、必要な単語を確認しながら、単語同士を結び付けて発話できるようにする。お話ボードは、置き換 える段階と同様に、下段に動作の単語カードを提示するようにする。状況を示す単語カードを人、曜日、 場所、もので色分けし、四つのカテゴリーの全てを偏りなく添付できる形式とする。また、イラスト動 画から読み取った内容を、単語カードを手掛かりに発話することができるように、単語カードを取り外 すことができる形式とする。イラスト動画による人・もの・動作・場所・曜日の情報については、生徒A が注意して見ることができるように、単語を提示する順番は毎回変えるようにする。最後に、相手の言 葉を聞き、複数の単語を使用して表現することができるように、複数の単語を選択し、組み合わせて教 師や友達に向けて表現することができるようにする。お話ボードは、人・もの・動作・場所・曜日の五つ
のカテゴリーの全てを想起した順に添付することができる形式にする。生徒Aが好きな食べ物などにつ いてのお話ボードを作成する際には、学級の友達や教師の好きなことを紹介したビデオやお話ボードを 提示し、意欲的に活動に取り組むことができるようにする。その後、お話タイムという時間を設け、お 話ボードを活用して学年の教師と会話をする活動を行うようにする。 お話ボードの段階的な活用を通して、生徒Aが尋ねられたことに、身に付けている複数の単語を結び 付けて答えることができることで、伝えたい内容を広げ、コミュニケーションの基礎的能力を身に付け ることができると考える。 3 目 標 〇 紙芝居の内容を単語カードで表すことができる。 〇 人・もの・動作・場所・曜日を表す単語を組み合わせて、発話することができる。 〇 尋ねられたことに、複数の単語を使用して答えることができる。 4 計 画(全8時間) 5 本 時 (1)本時の目標 ○ お話ボードに必要な人・もの・場所・曜日の単語カードを見つけることができる。 ○ お話ボードに添付した全ての単語カードを、発話することができる。 (2)本時指導の考え方 前時は、イラスト動画を見て、動画の内容に合うように、必要な単語カードを見つける活動を行って いる。生徒Aは、クイズ形式で単語カードを見つける活動を行うことで、人・もの・場所・曜日のうちか ら1~2枚必要な単語カードを見つけ、積極的に取り組むことができている。 本時では、お話ボードとイラスト動画を見比べ、必要な単語カードをお話ボードに添付し、お話ボー ドの単語カードを全て発話することをねらいとする。 最初に、前回の振り返りとして、単語カードを見つけるクイズに取り組んでいるときのビデオを提示 段階 ≪置き換える≫ ≪結び付ける≫ ≪表現する≫ 配時 1 2 3 4 5 6 7 8 目標 単語を単語カードで表すことができる。 単語と単語を組み合わせて表出することができる。 尋ねられたことを、複数の単語を使用して表現することができる。 学習 活動 単語カードの 活用 【カルタゲーム】 音声を聞き、単語カードを選択する。 お話ボードの 活用 【紙芝居のお話作り】 紙芝居を見て、話に合う複数の単 語カードで内容を表す。 【イラスト動画のクイズ】 イラスト動画の内容から、必要な単語カードをお話 ボードに添付し、発話する。 【お話タイムで尋ねられたことに答える】 教師から尋ねられたことに対して、お話ボードに単 語カードを添付して答える。 お 話 ボ ー ド 形 下段に動作の単語カードを提示 し、人・場所・曜日の三つのカテ ゴリーを想起した順に添付するこ とができる形式とする。 状況を示す単語カードを人、曜日、場所、もので 色分けし、四つのカテゴリーの全てを偏りなく添付 できる形式 人・もの・動作・場所・曜日の五つのカテゴリー の全てを、想起した順に添付することができる形式 とする。 お話 ボード の題材 紙芝居 「〇〇さんが、月曜日、窯芸室で 作業をします。」など イラスト動画 「〇〇さんは土曜日、映画館で~~を見ます。」 など お話タイムのテーマ ・好きな食べ物 ・好きなテレビ ・好きな勉強 ・楽しかったこと ・作業学習でしていること ・休みの日にしていること 教師の 関わり 紙芝居を見て、話の内容を単語 カードに置き換えることができる ように「いつ」「だれ」等を加え て質問し、単語カードで表すこと ができるようにする。 必要な単語カードを積極的に見つけることができ るように、教師と一緒にクイズに取り組むようにす る。複数の単語カードを見つけ、お話ボードに添付 することができるようにする。 詳しく「好きなもの」を伝えることができるよう に、複数の単語からカードを選択するように促す。 伝えるときのポイントに沿って、伝えることができ たときには称賛し、意欲的に取り組むことができる ようにする。 お話ボード「見る」 み あ ど え き お話ボード「読む」 よ お話ボード「好きな食べ物」 お に ら た
し、単語カードを積極的に見つけ、正解できていたことを称賛し、今回も生徒Aが意欲的に活動するこ とができるようにする。 次に、カルタゲームを行うようにする。もの・動作・場所・曜日の単語を表す音声を手掛かりにして、 複数のカルタカードの中から適するカルタを選択する活動を行うようにする。生徒Aが意欲を継続させ ながら取り組むことができるように、タブレットPCで問題を出題し、教師と生徒Aが一緒に取り組む場 面を設定する。カルタゲームで生徒Aが取得できなかったカルタについては、ゲームの後に、カルタが 表す単語について確認できる時間を設けるようにする。その後、お話ボードに必要な単語カードを、添 付する活動を行う。意欲を継続させながら取り組むことができるように、クイズ形式にして、全ての単 語カードを見つけることができるまで動画を見た回数や正誤を得点表に記入して、全問正解を目指すこ とができるようにする。今回は、お話ボードに必要な単語カードを添付した後、お話ボードの全ての単 語カードを発話することが重要であることを確認し、イラスト動画を提示する。クイズでは、最初に単 語カードが2枚足りていないお話ボードを生徒Aに渡し、次に3枚、4枚と単語カードの枚数を増やし ていくようにする。生徒Aが、お話ボードを見ながら発話する際には、単語カードを外しながら発話す ることで、全ての単語カードを発話することができるようにする。また、生徒Aが、お話ボードを使用 し発話した後、正解のお話ボードと音声を提示し、正解を確認することができるようにする。 最後に、お話ボードを使用して、正解を答えることができたかについて振り返りボードを使用して振 り返るようにする。生徒Aがお話ボードをよく見ながら、答えていたことを称賛し、次回の意欲につな げるようにする。 (3)準備物 ① 学習予定ボード ② めあてカード ③ クイズのルール ④ タブレットPC ⑤ 電子黒板 ⑥ カルタ ⑦ お話ボード ⑧ 人・もの・場所・曜日カード ⑨ 終わりボックス ⑩ 得点表 ⑪ 色カード ⑫ 振り返りボード (4)展開(学習過程) 学習 過程 学習活動・内容 指導上の留意点 教材 教具 導入 8 分 1 本時の学習を確認する。 ・活動への見通しをもつ。 2 前回のクイズに答えてい る様子を見る。 ・前回の学習を想起する。 3 めあてを聞く。 ・めあてを知り、学習するこ とが分かる。 ・学習の内容が分かるように、学習予定ボー ドを提示して、学習の流れを説明する。 ・お話ボードに必要な単語カードを見つける 活動を行っている様子のビデオを提示し、 どのような活動を行ったか生徒Aに尋ね る。 ・お話ボードの全ての単語カードを発話する ことが重要であることが分かるように、お 話ボードを使用してクイズを解くまでの 様子とルールを示す。 ① ④ ⑤ ② ③ めあて お話ボードにあるぜんぶのカードを答えよう。
展開 10 分 20 分 まとめ 7 分 4 カルタゲームをする。 ・お話ボードを使ったクイ ズで使用する単語カード を確認する。 5 お話ボードに必要な単語 カードを添付する。 (1)教師が提示したイラス ト動画を見る。 ・イラスト動画の内容を読 み取る。 (2)お話ボードに必要な単 語カードを添付する。 ・イラスト動画から、お話 ボードに必要な単語カー ドを選択する。 (3)お話ボードを見て、発 話する。 ・単語と単語を結び付け、発 話する。 6 学習の振り返りをする。 ・頑張ったことを言葉にして 振り返る。 ・教師とカルタゲームを行うため、タブレッ トPCに音声を録音し、音声に合うカルタを 選択するようにする。 ・生徒Aが取得できなかったカルタについて は、再度イラストと音声を手掛かりにし て、カルタを選択するようにする。 ・活動意欲を引き出すために、カードを探す クイズを出題することを伝える。 ・見通しをもって取り組むことができるよう に、クイズの出題数を伝える。 ・イラスト動画を提示した後、動作カードや 幾つか動画の内容を示す単語カードを添 付したお話ボードを選択するように促す。 ・お話ボードに必要なカードがあることに気 付くことができるように、再度、イラスト 動画を提示し、単語カードに応じた色カー ドを提示しながら、「だれ。」や「いつかな。」 などの言葉掛けをする。 ・発話した単語カードを、終わりボックスに 入れて発話することができるように、終わ りボックスを提示する。 ・正答のお話ボードを提示し、イラスト動画 を見た回数や正誤を得点表に記入する。 ・次回の意欲につなげるため、カード探しク イズの得点表を発表し、積極的に取り組ん でいたことを称賛する。 ・お話ボードを見ながらクイズに答えること ができていたかを振り返りボードにまと めたカードを見て、言葉にするように促 す。 ④ ⑥ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑪ ⑦ ⑨ ⑩ ⑩ ⑫ 【るーる】 ①はなすときに、かーどをはずす ②はずしたかーどは、おわりぼっくす へいれる
(5)場の設定 (6)本時の評価 目標 評価の観点 評価 お話ボードに必要な人・もの・ 場所・曜日の単語カードを見つけ ることができる。 ◎ 人・もの・場所・曜日の単語カードが4枚必要なお 話ボードで、全ての単語カードを見つけることができ た 〇 人・もの・場所・曜日の単語カードが2~3枚必要 なお話ボードで、単語カードを見つけることができた △ 教師の色カード提示や言葉掛けがあると、見つける ことができた お話ボードに添付した全ての単 語カードを、発話することができ る。 ◎ お話ボードに添付した全ての単語カードを発話する ことができた 〇 お話ボードに添付した単語カードを2~3回発話す ることができなかったが、終わりボックスを確認する ことで、全ての単語カードを発話することができた △ 教師が発話できていなかった単語カードを示すこと で、発話することができた ◎:達成できた 〇:ほぼ達成できた △:達成できなかった 入 口 生徒A 机 ホワイトボード T1 ものカード 人カード 場所カード 曜日カード 電 子 黒 板