Title
大動脈の構成成分の部位別差異及び腹部大動脈瘤壁につい
ての組織学的検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
柴田, 雅也
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1356号
Issue Date
2003-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14912
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 柴 田
雅
也(愛知県) 博士(医学)
乙第 1356号
平成15 年 3 月13 日 学位規則第4条第2項該当大動脈の構成成分の部位別差異及び腹部大動脈療壁についての組織学的検討
(主査)教授 贋 瀬 (副査)教授 正 村 静 子 教授 犬塚
貴 論文内容の要旨 背景と目的 大動脈において動脈瘡などの動脈硬化性疾患には好発部位が存在することはよく知られておりその成因に閲し 流体力学的に,酵素学的に,大動脈壁構成基質の面などから検討がなされている。しかし病理組織学的には疾患 による大動脈壁の変化については報告されているが好発部位の存在の原因となる部位別の組織学的差異を詳細に 検討した報告はない。そこで動脈癌において変化が著しい大動脈壁中膜の構成線維成分(弾性線維,膠原線維, 平滑筋)の部位による組織学的差異を明らかにし,さらに腹部大動脈癖の癖径と組織学的変化の関連について検 討した。 対象と方法 正常壁は剖検にて得られたヒト全大動脈のホルマリン固定標本10例,癌壁は腹部大動脈痛手術時に採取した癖 壁16例を対象とした。 大動脈起始部より大動脈分岐部までの16箇所(上行大動脈=以下上行1箇所,解剖学的弓部大動脈=以下弓部5 箇所,胸部下行大動脈=以下下行3箇所,腎動脈より中枢の腹部大動脈=以下中枢腹部3箇所,腎動脈より末梢の 腹部大動脈=以下末梢腹部4箇所)にて短軸方向に等間隔で幅5皿mの組織片を採取した。瘡壁は最大径部位で同様 に組織片を採取した。各々の組織片より厚さ5〟mの連続切片を作成した。各々の切片でレゾルシンフクシンに ょる弾性線維染色,アリニンブルーによる膠原線維染色及び平滑筋アクチ■ン抗体を用いた酵素抗体法による平滑 筋染色を施行した。各棟本の中膜中層を撮影し,画像をイメージスキャナーでコンピューターに入力した。画像 解析プログラムを用い,各構成線維成分の染色陽性部分の面積を測定した。これを全体の面積で除し各構成線練 成分の含有率とし,大動脈の各部位ごとに比較検討した。癖壁も同様の測定をおこない,agematChした3例の正 常壁の腎動脈末梢部と比較検討した。また,腹部大動脈癖径と構成成分含有率の関係も検討した。 結 果 1.正常全大動脈の部位別検討 弾性線維含有率は末梢はど低い傾向が認められ,末梢腹部は上行,弓部,下行に比し有意に含有率が低かった。 膠原線維含有率,平滑筋含有率は各部位間に有意差を認めなかった。 2.腹部大動脈瘡壁と腎動脈末梢部正常壁の構成成分の検討 弾性線維含有率,平滑筋含有率は,正常壁が有意に高かった。膠原線維含有率には有意差が認められなかった。 3.腹部大動脈癌径と構成成分の検討 腹部大動脈瘡径とその癖壁の弾性線維含有率には負の相関関係が認められた。膠原線維含有率,平滑筋線維含 有率には一定の傾向は認められなかった。考 察 大動脈癌は破裂にいたると,その死亡率が極めて高いことは周知のごとくである。しかしながら破裂にいたるま での組織学的変化については詳細な検討はない。従って好発部位に関する組織学的検討をおこない,また癖組織 の特徴,さらには瘡径拡大時の組織学的変化を知ることは癌拡大機作を知り,治療戦略を形成するうえで極めて 重要である。 増田らは大動脈の弾性線推含有率と平滑筋含有率は,加齢と負の相関を有している阜報告している。 Baxter等はcollagen/elastin比は末梢大動脈はど高く,癖壁も高いとしCampa等はelastin含有率は癖壁では 少ないと報告している。一方大動脈癖の発生は大動脈を部位別にみると腎動脈下腹部大動脈に圧倒的に多い。そ こで同部において弾性線維含有率が有意に低いという今回の結果と矛盾しない。すなわち加齢と共に,さらに本 研究では大動脈も腹部末梢にくるはど,弾性線維含有率が減少するので,年齢・組織構造からみて高齢者に腹部 大動脈痛が多いことは明らかである。 瘡壁の組織像の特徴は著しい中膜の萎縮であり,弾性線維は断裂,破壊し筋細胞は消失することである。原因 として中膜の血流不足による栄養障害が挙げられ,癖形成にむかう最も重要な要因として中膜筋細胞が保持され ないこととされている。癌壁中膜の平滑筋細胞の密度は正常壁に比して低く,apOPtOSisに陥った細胞が増加し ておりp53の陽性細胞の密度の増加がみられたと報告されている。折口等も動物モデルを用い癖形成には中膜内 側の不可逆的変性が重要であるとしている。この報告は腹部大動脈癌壁では中膜において膠原線維含有率には差 がないが弾性線維含有率と平滑筋含有率は正常壁に比して少ないという今回の結果と一致する。またこれは前述 の加齢により弾性線維含有率が低下する変化と「致する。 さらに大動脈瘡径と癖壁成分との関係を検討した。その結果瘡径と弾性線椎含有率とは負の相関を示した。癌 壁の拡大は,瘡径拡大に伴う物理的な機作によりさらなる癖径拡大に至ることが知られている。しかしながら弾 性線総合有率,平滑筋含有率の低下という組織学的変化が癖径拡大を促進する因子であるのか,あるいは癖径拡 大により生じた結果か,未だ不明セある。 結論 正常標本においては大動脈癌好発部位である末梢腹部大動脈では,弾性線維含有率は低いが,平滑筋含有率に は差がないことが示された。瘡壁では両成分とも著明に低下し瘡径と弾性線維含有率は負の相関を有した。 論文幸査の結果の要旨 申請者 柴田雅也は腹部大動脈瘡好発部位の組織学的特徴,瘡径拡大に伴う組織学的変化を明らかにした。 本研究は大動脈瘡の成因解明に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表雑誌] 大動脈の構成成分の部位別差異及び腹部大動脈瘡壁についての組織学的検討 岐阜大医紀 2003;51:152∼156