悪性淋巴肉芽腫︵ホヂキン馬事︶の二症例
私立宗玄病院︵院長 宗玄博士︶深 川 久
子
41 ホヂキン氏病は一八三二年に英町国。ασQ継げ氏によりて始めて報告せられしものなり。 本疾患は淋巴系の疾患にして淋巴腺一般に︵系統的に來ること多し︶悪性腫瘍朕に腫脹し加ふるに脾臓肥大し貧血と悪液 質とを七って経過する事後不良の疾患なり。三〇乃至四〇歳の男子を主として侵すこと多きも、現今に至ゆて小見を侵すこ とも塗れならすとの報告あり。吾人は最近淋巴肉芽腫の二症例に遭遇し得たるを以って鼓に之を報告せんとするものなり。 第一例 患者 齋藤某、廿七歳の男、農業。 主訴 貧血、腹部疹痛及膨満感。 家族歴 爾親健存租父母共に長命す、同胞五人共に健、子女二人健他に特記すべきものなし。 既往歴 分娩卒滑麻疹記憶なし正規種痘を細く、徴兵に際し砲兵除にニケ年服隠す、從來頗る健にして現病以外の著患を 知らす。 現病歴 昭和八年七月頃より左肩脾關節部腫脹し痙痛あり、當融融讐の診断により結核性關節炎? ならんと云はる。性 來顔色良好ならざるも八月絡頃より蒼白色となり貧血性を帯び來ると云ふ。 一週間前より食後に左側腹痛を訴へ腹部膨満感著しきため十一月七日入院す。 當時の所見 艦格及骨至大にして轟々肥満す、皮下脂肪組織の感服非常に良好なり、顔貌賑々苦悩歌を呈す。皮膚一般に 深川H悪性淋巴肉芽腫︵ホヂキン氏病︶の二症例 第四谷 二六三42 深川段悪性淋巴肉芽腫︵ホヂキン氏病︶の二症例 第四巻 二六四 蒼白貧血性にして機汚せる観あり、眼瞼結膜も貧血を呈するも黄痘は認められす、咽頭粘膜異欣なく、口蓋扁桃腺の肥大を 認めす、鼻、口腔粘膜、歯齪等に出血性傾向なし、脹搏整調緊張良好。 心臓及肺臓に脆化を認めす,左側鎮骨上窩に腰垣大の淋巴腺腫大を鰯知す、硬度弾力性軟にして皮膚と癒着せす歴痛な し。左側肩肺買置部腫脹し上博骨頭に著しき屋痛を認む。腹部総々膨満し脾臓著しく腫大し肋骨弓流下四横指及右方正中線膀 窩部に至り著しく硬く輩靱、族縁凹凸不興にして僅かに歴博あり、肝臓を理知せす。腹水を認めす。腱反射著攣なく下肢に 輕度の浮腫を認む,其他腋窩鼠三部に淋巴腺腫を認めす。 経過 艦温激七度より滑九度を往擁す.食慾良好。尿中蛋白,糖陰性,﹁ヂアツオ﹂反鷹また馳せす。糞便申潜血反鷹彊陽 性にして十二指腸贔卵を認む。 血液所見 赤血球二三六萬﹂白血球九九四〇,染色標本に於て輕度の赤血球大小不同症を認むるのみにて病的白血球を認 めす帥ち中等度の貧血像を示す。其後織豊の検査により大差なき血液像を認む.ワ氏反響陰性。 十一月中旬に左右腋窩及鼠暗部に淋巴腺腫脹を認むに至り之は﹂日を逐って増大す。廿日頃に右上臆筋硬く腫脹し疹痛を訴 ふ。前胸腹壁に小豆大の淋巴腺腫数個認む、月末頃に左鎖骨上窩、左右腋窩及鼠無畏黒土腹壁の表在性淋巴腺腫碗豆大乃至 櫻實大となり無数に増加す。腹壁淋巴腺腫一個摘出し組織標本を造る。 皆野依然たり、十二月に入りて食慾急に不振となり漸次謄膜炎差掛を呈するに至り項部強直、ケルニヒ氏症状様所見を呈 し意識次第に不明となり誰語、嘗語障碍を毒し途に六日鬼籍に入る。 第二例 患者 金崎某、五七歳の男,浴場業。 主訴 襲熱、乾咳。 家族歴 父母同胞に特記すべきことなく、子女二人健在、其他遺傅的疾患を認めず。 既往歴 性來健にして著患を知らす。
43 現病歴 本年二月始めより血塗.乾咳あり當時野里遷替の診断の下に治療を響くと蓉ふ。喀疾、盗汗、胸痛等は初期より之 を難詰す。三月に入りても熟依然と卦八度内外の不定型を示し漸次食慾不振となり羅平す。下旬に至り噺璽、嚥下痛を訴ふ。 四月二日入院。 所見及維過 皮膚一般に三無蒼白にして乾燥し所謂悪液質張く骨格の磯育普通なるも筋肉臓卑し何となく脱力感を呈す。 眼瞼粘膜も貧血歌を呈す、舌乾燥し白苔にて掩はる,口蓋扁桃腺髪容度に肥大し右側に小さき自斑附着せるを認む,咽頭粘 膜一般に獲隠す,喉頭また機赤腫脹す然し潰瘍を認めす。脈搏良好。心臓、肺臓共に攣化なく,腹部異状なく脾臓肝臓を鰯 網せす,腹水を籍せす、下肢に浮踵を認めす。頸部,左右腋窩部鼠践部及肘部に無数の揖指頭大の淋巴腺腫を認む、歴痛な く輩靱なり。 ﹁レントゲン﹂像,左右肺門部淋巴腺張度に腫大し他に陰影を認めす。 尿、蛋白、糖及﹁ヂアツオ﹂反慮陰性。糞便、寄生轟論及潜血反磁を認めす。 血液所見、赤血球二八四萬、白赤球八二〇〇,染色標本に於て病的赤白血球を認めざること第一例と同檬なり、ワ氏反鷹 陰性。褒熱依然と不定型を示し咳鍬なし食慾釜々不振となる。上記淋巴腺腫漸次増大す、脾臓依然として燭知せす,鼠践 部淋巴腺一個摘財し組織學的検査を行ふ。 口内渇激しくロ腔粘膜高度に乾燥す、舌尖及舌左側に帽針頭大の白斑数個生じ口内炎の象を呈し、食物撮取に際し口内疹 痛激し。貧血悪液質漸次その度を増す。廿一日に吃逆あり時々魅吐おこり食慾全く鍛如し衰弱加はりて廿二日途に死亡す。 組織撃的所見 淋巴腺の試験的摘出により組織學的槍索を行びしに卸ち、諸種形態の紡錘形及不正圓形の結締織細胞の増 殖著しく之に固有の鼠輩細胞、峰町りの淋巴球﹁プラスマ﹂細胞,﹁旧型ヂン﹂嗜好細胞等を混在し所見パルタフ、ステルンベ ルビ氏の定型的淋巴肉芽腫の像を呈せり。 既に知らる玉如く本症は一八三二年に国○山αQ犀貯氏に依りて報告せられしも、これより前に蜜。野晒αq巳氏の記載あり。 其後一八六五年にOo一白ρ島ヨ氏は白血病に似て白血球に攣備なき病氣を假性白血病と名づけたり、此の假性白血病及 深川鳥悪性淋巴肉芽腫︵ホヂキン氏病︶の二症例 第四巻 二六五
44 深川11悪性淋巴肉芽腫︵ホヂキン氏病︶の二症例 第四巻 二六六 ホヂキン氏病は共に淋巴系統疾患の総灘⋮に過ぎざるなり、其後詳細なる研究により色々と分離さるエに至り師ちくぐ90毛 氏は淋巴性白血病を内着曾慶祥は淋巴肉腫病を勺同量亀∼ω電9び9σq氏は悪性淋巴肉芽腫を分離し難然たるものとなれ り。一九〇九年以下ホヂキン氏病とか假性白血病との名構を用ひす主として組織學的検査上よむ・名づけること玉なれり帥ち 間質に主なる攣化のある炎症性のものと實質に墾化を有する腫瘍性のものとに匝別さる玉に至れり。 而してホヂキン氏病は炎症性肉良性増殖を來す疾患として知らる玉に至る。 本病と結核との關係について爾者の因果關係を説明するもの多し。最近蜀蜀○爵包氏及び冒自9氏の如きは顯粒性抗酸 性桿菌を設明し之れを病原とせんとせり、また臨床報告例に於ても結核を合併せることを力与するものあり,然し房9。融 或は病理學的見地よの全然別個なるものと云へり。 最近臨床的槻察の機會を得たる上記二症例に就いて見るに、 第一例に於ては比較的定型的鼻歌を呈したるも特にその末期に於て筋肉及海部の著しき疹痛を訴へたること並に淋巴腺腫 が殆ど全身に表在性に燭知し得たるも躯斡にありては背部に於て之れを訣如し且つ胃部の韓移を想嫁せしむるが如き症欣例 へば高度の胃出血の写せしが如きは興味ある窯と思惟せらる。筒本例にありては其の死亡前数日間隅膜炎様症歌を呈したる 鮎も興味ありと信ナ。 第二例にありては始め久しく乾咳、噺璽を主訴とし不定型の安藝を俘ひ、其の所見に於、ても一見淋巴腺並に喉頭部に於け る結核性疾患の如き観を呈し、組織墨的に誰明せられたるに關らす脾臓の肥大を峡き、唾液腺の肉芽性憂化によると論明し 得らる蕊口腔内磁化あり、及び二症例何れも﹁ヂアツオ﹂反税を濁し得ざりしことは多少臨床的興味をびくものと思考せら る。 悪性淋巴肉芽腫の臨床的知見の報告は近時屡々接する庭なるも幾多の症例と臨床的観察とにより其の症歌の補遺すべきも の筒少なからざるべし、依りて最近遭遇したる二例につきその臨床的所見及其の経過を記載したる竜のなり。 摺筆に臨み御懇篤なる御指導と御校閲を賜ゆたる院長宗玄博士に深く感謝の意を表す。