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ゲームの著作物性とゲームソフトの競争フィールド設定

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(1)社団法人 情報処理学会 研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 2006−EIP−30(4) − 2006/2/18. ゲームの著作物性とゲームソフトの競争フィールド設定 板倉陽一郎 慶應義塾大学法務研究科(法科大学院). 要旨 トラキア事件は,従来の著作物における創作性の議論を完全に覆し,ゲームソフトという複雑な 著作物において,構成部分を分解し,それぞれの構成部分について創作性を逐一検討するという 分析方法を採用した上で,ストーリーを除く部分の創作性を極めて厳格に解する判示を行った。 その結果,ゲームソフトメーカーとしては創作性ラインを考慮に入れてゲームソフトを製作せね ばならず,①ジャンル外競争では新規ゲームシステムを重視し,②ジャンル内競争ではストーリ ーを重視する,というフィールドに導かれることが予測される。更に,商品多角化戦略に対し, 一定のブレーキが掛かる可能性が示唆される。 Creativity of Game Soft and Competition Field of Them Yoichiro Itakura Keio Law School Abstract In TRAKIA (Nintendo) case, past discussions about creativity of works are overturned perfectly. In the case, game soft, complex works is divided into many parts, and analyzed creativity for each part. Without the part of story, creativity is strictly denied. At the result, game software houses have to create soft considering creativity line, and they have to compete in 1) inter-genre competition, about new system of games, 2) in-genre competition, about new stories. It also suggests stagnation of multi-goods strategy about games.. 1. 序論 ある作品に著作物性が認められるか,という問 いは,その作品にどれだけの投資をするか,とい う判断に直結する。著作物性が無いということは 幾らでも複製・翻案が可能であるということであ り,当該作品について量産が容易であれば,商用 的な価値を持たなくなってしまうからである。そ こで,作者としては,著作物性が認められない作 品に対しては,①登録制度のある他の工業所有権 を用いる,②量産しても割に合わないような(凝 った)作品にする,③投資を行わない,などの判 断が求められることになる。①については,維持 コストは存在するし,そもそも登録要件を満たさ. なければ全て工業所有権で守られるわけではな い。②については確実性が低い。結局,③投資を 行わない,という判断に傾くのである。 本稿で問題にするのは,ゲームソフトの著作物 性である。ゲームソフトのような複雑な作品に対 して著作物性が認められるか,という問いは如何 にも奇異に聞こえるかもしれない。しかしながら, 後述のトラキア事件(東京高判平成 16 年 11 月 24 日 LEX/DB28100049)ではゲームソフトの著 作物性が正面から争われ,しかも一部について著 作物性を否定するという驚くべき判示が為され たのである。本稿では,トラキア事件の波紋を考 察するべく,次章において従来の著作物性の議論 を確認したうえで,第三章でトラキア事件の著作. 1 −19−.

(2) 権関係の判旨をみる。そして,第四章でトラキア 事件の規範がゲームソフトの競争フィールドに 及ぼす影響について検討することとする。 2. ゲームの著作物性 (1) 著作物性 著作物性は,著作権法で保護されるための前提 となる要件である。著作権法は 2 条 1 項 1 号で 著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの であって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属 するものをいう。」と定義する。これを更に分解 すると, ① 文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する こと, ② 思想又は感情であること, ③ 創作性を有すること, ④ 表現であること, の四つの要件に分けられる。このうち,①につい ては知的・文化的精神活動の所産全般を指し,文 芸,学術,美術,音楽の各ジャンルに厳格に分け る必要は無いと解されている。また,これらのジ ャンルが複合されたものであっても,問題は無い。 ②については学術的に意義のある思想が求めら れているわけではなく,思索の余地が入らないデ ータなどを排除する意義が認められる。④につい ては,表現されていない段階の,アイデアである とか作風であるとかは著作物にはならないとい う文脈で用いられる。 通常,ゲームの著作物についてこれらが問題に なることはない。ゲームは文芸や音楽など複合さ れて構成されているといえるし(①),複数の製 作者の思想又は感情が表れているといえる(②) 。 また,表現であることも問題が無い(④)。 (2) 創作性 本稿で問題にするのは著作物性の中でも③創 作性である。創作性は,「顕著な独創性や新規性 あるいは進歩性というものまで必要とされるも のではなく,また,芸術的に高い評価を受け得る ものとか,そのようなレベルが問われるものでは ない。基本的には,著作者の個性が創作行為に現 れていればよい」と解されている[1]。良く例に 挙げられるのが,幼児の描いた絵であるが,稚拙 な絵であっても創作性が認められることに争い は無い。 創作性が問題になるとされてきたのは以下の ような事例である(分類に付き[2])。. a. 元の著作物の完全な複製 ある著作物を完全に複製したものには,創作性 の入る余地が無いから,著作物性は否定される。 ほんの少しの改変を行っただけの模倣も,創作性 が付与されているとはいえず,単なる複製物と同 様に扱ってよい。 b. キャッチフレーズ キャッチフレーズやスローガンの類は,ごく短 いのみならず,テーマの拘束によって表現の選択 の幅が狭いため,創作性が否定される場合がある。 例えば,交通安全スローガンについてこれを否定 した例がある( 「ママの膝よりチャイルドシート」 事件,東京地判平成 13 年 5 月 30 日判タ 1060 号 249 頁) 。 c. プログラム 機能的なプログラムを作ろうとすればするほ ど,ソースコードは一様になりやすい。決められ たインターフェースを主要部分とするようなプ ログラムについては,表現の幅が極めて狭く,創 作性が否定された例もある(IBF ファイル事件, 東京地判平成 3 年 2 月 27 日知裁集 23 巻 1 号 138 頁)。一方,表現の幅が広いゲームプログラムに ついては創作性が認められている(ディグダグ事 件,東京地判昭和 60 年 3 月 8 日判タ 561 号 169 頁)。 d. 実用品に用いられる応用美術 美術工芸品については著作権法が特別の定め をしており(著作権法 2 条 2 項) ,美術工芸品の レベルに達しない通常の応用美術については,意 匠法による保護を第一とするというのが著作権 法の態度である。ただし,「①高度の芸術性(す なわち,思想又は感情の高度に創作的な表現)を 有し,②純粋美術としての価値をも肯認するのが 社会通念に沿うものであるとき」には例外的に創 作性を認めるのが裁判例である(木目化粧紙事件 (否定例),東京高判平成 3 年 12 月 17 日知裁集 23 巻 3 号 308 頁。なお,肯定例として神戸地判 姫路支部昭和 54 年 7 月 9 日無体集 11 巻 2 号 371 頁)。 (3) ゲームソフトの取り扱い では,ゲームソフトは以上のような,創作性の 認められない特殊な事例に当て嵌まるか。ゲーム. −20− 2.

(3) ソフトについての過去の判例は,ゲームソフトを プログラムとして保護するものと,ゲームソフト を映画の著作物として保護するものに分類し得 る。 a. プログラムの著作物 プログラムの著作物は昭和 60 年改正により著 作権法 10 条 1 項の例示に含まれたものだが,裁 判例はそれ以前からゲームソフトをプログラム の著作物として保護していた(スペースインベー ダー事件,東京地判昭和 57 年 12 月 6 日無体集 14 巻 3 号) 。 但し,プロテクション技術が発達し,リバース エンジニアリングが困難となった最近のゲーム ソフトでは,プログラム自体のコピーとしてゲー ムソフトを保護することは通常の利用状況から は難しい(内部流出,倒産,独立などを含む場合 は別論)。そこで,最近は,ゲームソフトは殆ど 次の映画の著作物として扱われている。 b. 映画の著作物 パックマン事件は,「本件テレビゲームは,テ レビと同様に映像をブラウン管上に映し出し,60 分の 1 秒ごとにフレームを入れ替える・・・ビデ オゲームである,これが映画の著作物の表現方法 上の要件である「映画の効果に類似する視覚的効 果を生じさせる方法で表現されている」との要件 を充足する」とし,プレイヤーのレバー操作によ り映像が変化する点については,「理論上はプレ イヤーが同一のレバー操作を行えば常に映像の 変化は同一」であるし, 「有限の変化に過ぎない」 として,映画の著作物としての保護を肯定した (東京地判昭和 59 年 9 月 28 日無体集 16 巻 3 号 676 頁)。最判もこれを認める(中古ゲームソフ ト事件,最判平成 14 年 4 月 25 日民集 56 巻 4 号 。 808 頁) やや苦しい理屈(「プレイヤーが同一のレバー 操作を行えば・・・」は,単純なゲームでも乱数 が入っている限りフィクションである。確率事象 として,ということまでを含むのであれば話は別 だが)を使いながらも最判でゲームソフトが映画 の著作物とされたのは,消尽理論との関係である。 現在では改正により,必ずしも映画の著作物とい う必要はない。トラキア事件でも,映画の著作物 という枠組みは争われていない。 c.. ゲームの創作性を否定する根拠 −21− 3. ゲームソフトがプログラム或いは映画の著作 物として保護され,当該プログラムが機能的で一 様にしか表現できないような場合1で無い限り, 従来の理屈ではゲームソフトの創作性を否定す ることは難しそうである。まして,最近の,ゲー ムシステムが凝っており,ストーリーも複雑なゲ ームでは,ほぼ不可能である。 それでは,トラキア事件は如何にしてゲームソ フトの創作性を(一部にせよ)否定する判示に至 ったのか。検証していこう。 3. トラキア事件控訴審 (1) 事件の概要 本件は,控訴人ら(任天堂株式会社及び株式会 社インテリジェントシステムズ)が,被控訴人(株 式会社エンターブレイン,有限会社ティルナノー グ及び個人 A)に対し,被控訴人らが製造,販売 等するゲームソフト(プレイステーション版ゲー ムソフト「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦 記」)は, ① 控訴人らが著作権を有するゲームソフトを 翻案(著作権法 27 条,翻案権の侵害)した ものであるか,又は, ② 被控訴人らによる被控訴人らのゲームソフ トの製造,販売等の行為は,控訴人らの周 知・著名なゲームシリーズの商品等表示を使 用するなどして,他人の商品等と混同を生じ させる不正競争行為である(不正競争防止法 2 条 1 項 1 号・2 号), と主張し,損害賠償の支払い(民法 709 条,不 正競争防止法 4 条)を求めるとともに,被控訴人 エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグ に対し,被控訴人らの上記ゲームソフトの製造, 販売,頒布の差止め(著作権法 112 条,不正競争 防止法 3 条)を求めた事案である。 原判決(東京地判平成 14 年 11 月 14 日。判例 紹介として[5]2)は, ① 被控訴人らの上記ゲームソフトは控訴人ら が著作権を有するゲームソフトの翻案には 該当せず,また, 1. 例えば, 「ライフゲーム」のような単純なゲームの場 合には「機能的なゲームソフト」として創作性が否定 される可能性が無いわけではない。 2 ただし,同書の紹介は,争点になった「エムブレム」 と「エンブレム」の違いにも拘らず,判文中の「エム ブレム」を全て「エンブレム」と誤記しており,問題 がある。.

(4) ② 被控訴人らの行為は不正競争行為に当たら ないとして,控訴人らの請求をいずれも棄却 した。控訴人ら控訴。 控訴人らは,控訴審において,著作権法に基づ く請求を主位的請求とし,不正競争防止法に基づ く請求を予備的請求とするとともに,控訴人株式 会社インテリジェントシステムズが不正競争防 止法上の請求主体と認められない場合につき,損 害賠償請求を追加(増額) 。 控訴人らの主張のうち,原審における主張と相 違する主要な点は,以下のとおりである。 a. 著作権法に基づく請求について (a) 控訴人らは,原審において主張していた「外 伝」の全体マップ部分の著作物の翻案,「聖 戦の系譜」及び「紋章の謎」のゲームソフト における登場人物等の影像の著作物の翻案 の主張を取りやめた。したがって,「トラキ ア」 のゲームソフトの翻案のみが控訴審で は問題となる。 (b) 「トラキア」の著作物の翻案の内容について, 控訴人らは,控訴審において, ア. 被控訴人ゲームの全体が「トラキア」全 体の翻案となる,又は, イ. 被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレ イする場面」が「トラキア」全体の翻案 となる,又は, ウ. 被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイ する場面」が「トラキア」の「戦闘マッ プをプレイする場面」の翻案となる,と の選択的主張を行った。 b. 不正競争防止法に基づく請求について ここでは省略する。 c. 前提となる事実(争いのない事実) (a) 当事者 控訴人任天堂は,家庭用ビデオゲーム機及びゲ ームソフトなどの開発,製造,販売等並びにキャ ラクター商品化業務等を業とする会社であり,控 訴人インテリジェントシステムズは,コンピュー タソフトウェアの設計,販売等を業とする会社で ある。 被控訴人Aは,昭和 63 年 3 月 31 日から平成 11 年 8 月 15 日まで被控訴人イズの従業員(退職 時における役職は開発部部長)であった者である。 被控訴人ティルナノーグは,被控訴人Aが,控. 訴人インテリジェントシステムズに在職中の平 成 11 年 7 月 27 日に設立したもので,コンピュ ータソフトウェアの設計,販売等を業とする会社 であり,設立以来現在に至るまで,被控訴人Aが 代表者を務めている。 被控訴人エンターブレインは,株式会社アスキ ーの子会社で,書籍・雑誌の出版,販売,コンピ ュータ関連のソフトウェアの製造販売等を業と する会社である。 (b) 控訴人らによるゲームソフトの制作,製造, 販売 控訴人インテリジェントシステムズは,以下の アないしオの各ゲームソフト(商品名ファイアー エムブレム・シリーズのゲームソフト。以下,ア を「暗黒竜と光の剣」 ,イを「外伝」,ウを「紋章 の謎」 ,エを「聖戦の系譜」 ,オを「トラキア」と いい,アないしオを総称するときは,「控訴人ゲ ーム」又は「ファイアーエムブレム・シリーズ」 という。)をファミコン又はスーパーファミコン 用に制作し,控訴人任天堂は,控訴人インテリジ ェントシステムズの使用許諾に基づいて,控訴人 ゲームを製造,販売した。 ア. ファミリーコンピュータ用ゲームソフト タイトル:「ファイアーエムブレム 暗黒竜と 光の剣」 発売年月日:平成 2 年 4 月 20 日 イ ファミリーコンピュータ用ゲームソフト タイトル: 「ファイアーエムブレム 外伝」 発売年月日:平成 4 年 3 月 14 日 ウ スーパーファミコン用ゲームソフト タイトル: 「ファイアーエムブレム 紋章の謎」 発売年月日:平成 6 年 1 月 21 日 エ スーパーファミコン用ゲームソフト タイトル:「ファイアーエムブレム 聖戦の系 譜」 発売年月日:平成 8 年 5 月 14 日 オ スーパーファミコン用ゲームソフト タイトル:「ファイアーエムブレム トラキア 776」3 発売年月日:平成 11 年 9 月 1 日 3. 「トラキア」のみ,他のゲームソフトとは異なり, ROM カセット形式で提供されたのではなく, 「ニンテ ンドウパワー」と呼ばれるゲーム書き換えサービスの 中で提供されたソフトである。 http://www.nintendo.co.jp/n03/index.html. −22− 4.

(5) (c) 被控訴人らの行為 被控訴人Aは,被控訴人ティルナノーグ代表者 として,プレイステーション用ゲームソフト商品 (商品名「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦 記」 ,発売元は 被控訴人エンターブレイン。以下 「被控訴人ゲーム」という。)の制作行為に主体 的に関与し,その関与の下に,被控訴人ティルナ ノーグと被控訴人エンターブレインは,被控訴人 ゲームを共同して制作した。 被控訴人ゲームの旧名称は,「エムブレムサー ガ」であり,被控訴人らは,ゲーム雑誌等の雑誌, インターネット公式サイト,テレビコマーシャル, 販売促進用ビデオ,ポスターの掲示,テレフォン カードキャンペーン,雑誌付録体験版ソフト,体 験版ソフトの特典付き予約キャンペーンなどに おいて,この表示を使用した。 平成 13 年 4 月 2 日ころ,被控訴人らは,被控 訴人ゲームの名称を「エムブレムサーガ」から「テ ィアリングサーガ ユトナ英雄戦記」に変更し, 同年 5 月 24 日以降,被控訴人エンターブレイン 及び被控訴人ティルナノーグは,発売元を被控訴 人エンターブレインとして被控訴人ゲームを販 売している。 被控訴人ゲームの旧名称である「エムブレムサ ーガ」との表示は,名称変更後もプレイステーシ ョンドットコムのホームページで使用されるな ど第三者によって使用が続けられている。 控訴人インテリジェントシステムズは,平成 13 年 4 月 17 日,控訴人任天堂に対し,トラキア にかかる著作権の持分 2 分の 1 を譲渡する旨合意 した。 被控訴人ゲームは,平成 13 年 5 月 24 日の発 売開始以来,同年 7 月 8 日現在で,34 万 5430 本が販売されており,その希望小売価格は1本当 たり 6800 円であるから,販売総額は,23 億 4892 万 4000 円である。 (2) 著作権関係判示 a. 判断の枠組み 結果的に,控訴人の請求は任天堂の請求につい てのみ,不正競争防止法 2 条 1 項 1 号(狭義の 混同)について認められているが,本稿の立場か ら問題になる,著作権法関係の判示のみをピック アップする。 まず,ゲームソフトとしての本質的特徴が現れ た部分について, 「戦闘マップをプレイする場面」. であると認定し,その構成要素として, ① ゲームシステムに基づいて変化する映像及 びその全体構成 ② ストーリー が該当するとしている。当事者の主張の中では戦 闘マップや音楽・効果音なども挙げられているが, これらは「重要性はかなり低い」「プレイヤーに 与える印象は・・・かなり後退したもの」として, 創作性の判断の対象にしていない。但し,ユニッ ト4については「主要な要素の一つ」としており, ①②には劣るものの,「戦闘マップをプレイする 画面」の要素には加えているようであり,実際に 創作性判断も行っているので,構成要素に, ③ ユニット も加えてよいだろう。. 図 1 「トラキア」の戦闘マップをプレイする 画面(トップビュー). 4. 敵味方のキャラクターのこと。オフィシャルサイト の説明によれば「主人公の軍(自軍)は基本的に青色 のユニットで表され,敵軍は基本的に赤色のユニット, その他のキャラクターを緑色のユニットとして表して います。自軍の指揮はプレイヤーが担当し,敵軍と緑 色のユニットは,コンピュータが担当します。」とある。 http://www.nintendo.co.jp/n02/shvc/bfej/sousa/rule/i ndex.html. 5 −23−.

(6) 図 2 戦闘マップをプレイする画面(アニメー シ ョ ン 切 り 替 え 戦 闘 場 面 )( い ず れ の 画 像 も http://www.nintendo.co.jp/n02/shvc/bfej/overvi ew/system/scene/page02.html,任天堂ホームペ ージより引用) そして,創作性の判断については以下のように 述べている。まず, 「『創作性』については著作権 法に定義規定が無いが,独創性を備えることまで 必要であると解すると,著作権による保護の必要 を不当に限定することになりかねないことや,創 作性の有無を画する客観的な範囲基準を求める ことは難しいことなどを考慮すると,表現者の個 性が何らかの形で発揮されていれば,創作性自体 は認めることが出来るものと解すべき」として, 従来の議論を確認する。そして,「創作性の程度 には自ずと幅がある」ので,侵害を判断するに当 たっては,創作性の程度を考慮することが当然必 要になるとしている。「創作性の高い創作物につ いては,その保護の範囲は拡大し,著作者の個性 は現れているものの極めてわずかな創作性しか ない著作物については,保護の範囲は極めて狭小 なものに限定される」とするのである。これも, 従来の議論を踏襲するものである。 そして,次がトラキア事件控訴審の判断の基盤を 為すものであるが,「一つのまとまりのある著作 物の創作性を判断するに当たり,その構成部分ま で分解して,それぞれの構成部分を逐一考察して, 創作性の有無程度を検討することは正当な分析 方法である」とする。控訴人は,「本件共通表現 は,映像の動的変化と音を一つのまとまりとして 連続映像で表現したものであるから,創作性の判 断においては,一つのまとまりとして判断すべき であり,創作性を有する部分を創作性のない部分 にまで細分化して,その著作物性を否定すべきで. はない」と主張した点を退けての判示である。そ して,控訴人らの主張が映像の組み合わせに創作 性を認める余地があるという意味では相当だが, 個々の構成部分を考察すべきではないという趣 旨であれば失当であるとしている。また,単語の レベルまで細分化すれば言語の著作物は創作性 を失うとの控訴人の主張も退けられている。 結局,基本的には,控訴審は, ① 構成部分の創作性 ② 構成部分の組み合わせの創作性 について判断を下すとの枠組みを採用した。 また,翻案権侵害になるためには二次的な著作 物から原著作物の創作的特徴を直接感得するこ とが出来なければならないので,「二次的な著作 物が原著作物との同一性を失い,これに接するも のが著作物全体から受ける印象を異にする」とい う相違点が見られれば,最早複製ないし翻案があ ったとはいえないという判断も採用している。 b. あてはめ部分 構成部分の創作性判断は以下の通りである。 (a) ゲームシステムに基づいて変化する映像及 びその全体構成 ゲームシステムに基づいて変化する映像及び その全体構成に関し,様々な場面の表現を詳細に 検討したうえで,両ゲームの共通部分を認めるが, 「他のゲームでも採用されている極めて典型的 なものであり,創作性があると認めることはでき ない」とした。また,「各場面を構成する映像表 現の組み合わせ・配列も含め,アイデアに過ぎな いか,創作性が認められない表現に過ぎず,創作 性が認められる表現についても,その程度は低 い」加えて,相違点から,「本質的な特徴を感得 することはできない」ともいっている。 (b) ストーリー 両ゲームのストーリーは亡国の少年王子のフ ァンタジー戦争英雄譚という抽象的な粗筋の点 では共通しているものの,粗筋は著作物として保 護するには抽象的過ぎるとし,著作物としての創 作性を有するストーリー部分では両ストーリー の創作性は高く,内容は相違していると認めてい る。そこでは「著作者が創作性を発揮し得る幅が 大きい」ことも認めている。 (c) ユニット. −24− 6.

(7) ユニットについては,膨大な数のユニット(主 人公をはじめとして,ペガサスユニット,ドラゴ ンユニット等等)について検討を加えた上で, 「両 ゲームのユニットには共通する部分も認められ るが,いずれもその共通する部分は,アイデアに 過ぎないか,有意な創作性を有するとは認めがた い」として,翻案該当性を否定している。 様々なユニットの殆ど全てについて創作性を 否定していく判示は圧巻である。例えば,主人公 ユニットについて「敵国に祖国を追われた主人公 が祖国のために立ち上がるという筋立ては,歴史 物語等において繰り返し展開されてきた普通に 見られたものであり」として創作性を否定し,ペ ガサスユニットについて「そもそも,ペガサスは 架空の冒険物語等にしばしば登場する天翔ける 馬であって,これに乗るユニットを登場させるこ とは誰しも想到しうるアイデアに過ぎない」し, 「他のゲームにも登場している」とする。 (3) 評価 結局,控訴人の主張する翻案はいずれも認める ことができず,著作権法に基づく請求には理由が ないとされた。 その理由の殆どが,「他のゲームでも採用され ている」「繰り返し展開されてきた」などの理由 によって,控訴人ゲームの構成部分について創作 性を否定するものである(上記下線部参照)。し かし,このような判断の仕方は著しく不当である と言わざるを得ない。 第一に,「表現者の個性が何らかの形で発揮さ れていれば,創作性自体は認めることが出来」る と自ら述べているにも拘らず,他のゲームや物語 での採用の事実をもって創作性を判断している のは,最早工業所有権と同様の進歩性・新規性を 要求しているのと変わらず(特許法 29 条参照), 明らかに自己矛盾を起こしている。 第二に,渋谷教授が指摘されるように,仮に個 性の乏しい作品についても,著作物性は安易に否 定されるべきではない。訴訟ごとに訴訟物は異な り,判決は相対効しかもたないので,ある訴訟で 著作物性がないとされても,理論上は別の訴訟で 著作物性が肯定されることは有り得るが,法律感 情にそぐわない[3]。 結果的に(著作権による請求が認められたわけ でもない)トラキア事件控訴審判決が残したもの は,近年の,「お約束」に溢れた「普通の」ゲー ムにおいては,ストーリー部分以外には創作性が. 認められるラインが工業所有権法並みに上がっ てしまうという,強烈な結論である。 4. ゲームソフトの競争フィールド そして,ゲームシステムに基づいて変化する映 像及び全体的構成,又は登場ユニット(①③)に ついては創作性ラインを高く設定し,ストーリー (②)については従来の創作性の基準を保ったこ とは,ゲームソフトメーカーの競争フィールドを 以下のように設定する。 (1) 競争フィールドの設定 ゲームシステムに基づいて変化する映像及び その全体構成についての創作性ラインを超える ためには,高度の新規性が必要になると考えられ る(少なくとも,エポックメイキング的な作品, 例えばパックマンはこれを満たすだろう[4]) 。従 って,新規ゲームシステム重視の戦略が導かれる。 これは,ジャンル間競争,新規ジャンル開拓の競 争をもたらす。しかし,新規ゲームシステムへの 投資は著作権では守られづらい。ルールに負うと ころが大きいからである。ルール(アイデア)自 体は著作権の保護の外にあり,アイデアを保護し てもらおうとすれば産業財産権の力を借りるこ とになる。しかし,プログラム特許の類は防衛特 許としての働きがメインであり,大型筐体でなけ れば意匠法も使い難い。 ストーリーについては尚,創作性ラインが低い ので,通常の続編やジャンル内での新作であって も問題なく満たされることと考えられる。これは ジャンル内競争のエネルギーがストーリーに向 くことを意味する。逆に言えば,ジャンル内シス テム向上を狙うのは殆ど無意味ということにな ってしまう(「トラキア」がゲーム雑誌レベルで 「新システム搭載」とされていた創作性は”全て” 否定されてしまっている)。また,ストーリーに ついても,殆どストーリーがないようなゲームで は,著作権での保護がされないことが考えられる。 例えばスポーツゲームの続編などは,著作権法の 保護が全く受けられないという不当な結果すら 招来する。 ①ジャンル外競争では新規ゲームシステムを 重視し,②ジャンル内競争ではストーリーを重視 する,というフィールドに導かれることになるの だが,横スクロールアクション・RPG・格闘ゲ ームと,ジャンル内進化を経て成長してきたゲー ム業界において,このような競争フィールドの設. −25− 7.

(8) 用). 定が妥当か,極めて疑問である。 表 1 トラキア事件から得られる保護の諾否 ストーリー性無. ストーリー性有. 新ジャンル. 保護される. 保護される. 従来ジャンル. 保護されない. 保護される. (2) 商品多角化戦略への影響 更に,ゲーム自体はストーリーで保護されると しても,例えば「トラキア」でいえばユニットの 表現部分などのみからの翻案が為された場合,こ れは全く保護されないことになる。具体的に言え ば,キャラクターの商品化について,統制が取れ なくなるのである(キャラクター自体の著作権は 認められていないので,キャラクターを表現した 部分,ということになる。ポパイネクタイ事件, 平成 9 年 7 月 17 日民集 51 巻 6 号 2714 頁)。 例えば図 3 は過去にユージン社から発売され た,ファイアーエムブレム・シリーズのいわゆる ガシャポン人形の類であるが,既に発売が終了し ており,ネットオークションなどでは市場が存在 するようである。しかしながら,これらの元のユ ニットには「創作性がない」とされているから, このような商品が無許可で販売されたとしても, 少なくとも著作権の範囲では,控訴人のようなゲ ームソフトメーカーは何をもいえないことにな ってしまう。これでは,一昔前はメディアミック スと呼ばれたところの商品多角化戦略は,権利面 からは,不安定に過ぎることになる。. 5. 結論 ゲームソフトが創作性を有しないという議論 は,従来の創作性に関する議論からも,ゲームの 著作物に関する議論からも,相当に荒唐無稽なも のであることは見易い道理であったが,トラキア 事件の示した規範は,通常の法律感情にそぐわな いばかりか,ゲームソフトメーカーの競争フィー ルド・商品多角化戦略にも悪影響を及ぼすことを 論じた。知的財産権法の根本概念についての判断 は北京の蝶の羽ばたきの如く,台風を引き起こし かねない。常に政策形成訴訟に成り得る自覚が, 訴訟関係者には必要ではないだろうか。問題状況 は日本に限られるものではないところ,比較法的 な考察の方向性も検討の余地がある。 参考文献 [1] 作花文雄『著作権法 基礎と応用第 2 版』 発明協会(2005 年)15-16 頁 [2] 小西恵「著作物性について」 『パテント』57 巻 2 号 57 頁(2004 年) [3] 渋谷達樹『知的財産法講義Ⅱ著作権法・意 匠法』有斐閣(2004 年)15 頁 [4] 赤木真澄『それは『ポン』からはじまった』 アミューズメント通信社(2005 年)197 頁 [5] 須知雄造「内容の類似したゲームの開発」 大阪弁護士会知的財産法実務研究会『デジタルコ ンテンツ法[下巻]』商事法務(2004 年)312 頁. 図 3 『ファイアーエムブレム』の立体造形 ( http://my.tomy.co.jp/yujinp/meisai.asp?n=49 04790925986,ユージン社ホームページより引. −26− 8.

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図  2  戦闘マップをプレイする画面(アニメー シ ョ ン 切 り 替 え 戦 闘 場 面 )( い ず れ の 画 像 も http://www.nintendo.co.jp/n02/shvc/bfej/overvi ew/system/scene/page02.html,任天堂ホームペ ージより引用) そして,創作性の判断については以下のように 述べている。まず, 「『創作性』については著作権 法に定義規定が無いが,独創性を備えることまで 必要であると解すると,著作権による保護の必要 を不当に限定する

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