著者
東海林 克彦
雑誌名
観光学研究 = Journal of tourism studies
号
14
ページ
39-49
発行年
2015-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007096/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja1.本論の目的等
(1)目的及び方法
近年、観光地等におけるペットとの同伴旅行需要及び受け入れ施設が増加しつつある。しかし、 これらの実態を見てみると、飼い主のニーズやペットの生理生態等が客観的かつ定量的に調査分 析されないままに施設の整備やサービスの提供がなされていることが主な原因であると考えられ るが、適正飼養を含めて、利用者のニーズを質的・量的に満たすことができるような供給がなさ れているとはいえない状況も散見される。 このため、本論では、ペット・ツーリズムのより一層の拡大が適正に図られるようにするととも に、併せて動物の愛護及び管理に関する法律に即した適正飼養の推進も確保されるようにするた めに、ペット・ツーリズムに関する実態の調査・分析を概括的に行うとともに、ペット・ツーリズ ムの今後のあり方を示す指針となるガイドラインのあり方に関する考察を行うこととする。なお、 調査は、資料調査等をベースにしつつも、必要に応じて現地調査やヒアリング調査等を行いなが ら実施することした。(2)本論におけるペット・ツーリズムの定義
「ペット・ツーリズム」という用語に関して定義をした学術論文は現時点においては存在しない。 また、いつ頃から誰が「ペット・ツーリズム」という用語を使い始めたのかも定かではないが、ペ ット・ツーリズムはオルタナティブ・ツーリズムの一種として位置づけられるものであると考え られる。オルタナティブ・ツーリズムの種類としては、エコ・ツーリズム、アグリ・ツーリズム、 スタディ・ツーリズム、グリーン・ツーリズム、ダーク・ツーリズムなどがあるが、ペット・ツ ーリズムはこの一角に位置するものであると考えられる。 本論の対象とするペット・ツーリズムについては、同伴性・非日常性・娯楽性に着目するととも に、その一方で行動時間の長短は考えないこととし、「飼い主とペットが一緒に、日帰りや宿泊の 如何を問わず、非日常的な圏域や環境において、飼い主とペットの双方にとって余暇を楽しむため のレクリエーション行動」と定義することとする。従って、ペットと一緒にホテル等に宿泊するこ とのみならず、日帰りで公園のドッグランに遊びに行くことやカフェなどに行くことも、ペット・東海林 克彦 *
ペット・ツーリズムの適正推進方策に関する考察
A Study on the Guideline of Tourism with Companion Animal
ツーリズムに含まれることになるものであるとみなすこととした。 なお、オルタナティブ・ツーリズムとは、1980年代前後から頻繁に使用され始めた用語で、従来 の大量生産・大量消費を志向する商業的なマス・ツーリズムとしての近代観光に対する批判的なア プローチとして登場してきたものであるといわれている。オルタナティブ(Alternative)という 表現は、欧米諸国において新しいライフスタイルを提案する際に使用されていたものだが、「もう ひとつの」と訳した方が良いという意見もあることを付記しておくこととする1)。
2.ペット・ツーリズムの動向と課題
(1)動向
近年のペット・ブームを背景として、観光地等においてペットとの同伴旅行の需要が増大してい る。図1∼図3に示したとおり、小型犬飼育者では56.1%、中型犬飼育者では41.9%、大型犬飼育 者では47.1%がペット・ツーリズムを体験しており、体験者の94.8%がまた行きたいと答えている とともに未体験者でも過半数の53.2%が行きたいと答えているなど、多くの飼い主がペット・ツー リズムを経験しており、また、リピーター率や非経験者でも参加希望率が高い状況にある。このよ うな状況を踏まえて、現在、観光業界におけるペットへの対応は、ホテル事業者や旅行代理店など において、ニッチをねらったニュー・ビジネスとして大きな関心を呼んでおり、各種関連施設の整 備や旅行商品の企画・販売などが進みつつある。 ペットを巡るここ10年間の変化には目覚ましいものがある。例えば、従前、ペット可マンション は極めて稀な存在であったが、現在では首都圏における新規分譲マンションの8割強がペットと一 緒に暮らすことができるものになっている2)。また、都市公園や高速道路のサービスエリアなどに 図1 飼育犬のサイズ別のペット・ ツーリズムの経験率(n=115) 図2 ペット・ツーリズムへの 参加希望率(n=115) 図3 飼育犬のサイズ別のペット・ ツーリズムへの参加希望率 (n=115) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 43.9 56.1 58.1 41.9 52.9 47.1 5.2 94.8 46.8 53.2 21.9 78.1 34.8 65.2 28.3 71.7 小型犬 中型犬 大型犬 経験者 未経験者 小型犬 中型犬 大型犬 経験なし 経験あり 行きたくない 行きたい 行きたくない 行きたいおいても相次いでドッグランの整備が進められているなど、ハード面からもペット・ツーリズムの 進展を支える基盤施設の整備が推進されてきている。 ペット関連市場規模も年々拡大してきており、2011年現在で約1兆4千億円と大きく成長し ている3)。また、総務省の家計調査によると1世帯当たりのペット関連支出も、2009年現在で約 1万8千円と十数年間の間に約1.7倍に増えている4)。
(2)施設側の課題
飼い主とペットを迎え入れる観光レクリエーション施設の実態については、ハード面及びソフト 面の双方において各種課題が散見される。これは、飼い主のニーズやペットの生理・習性等が十分 に理解されないままに、売り手側の事情を中心に施設の整備やサービスの提供がなされていること が主な原因であると考えられる。例えば、ペットと一緒に泊まれるホテルといっても一緒の部屋で 寝泊まりできないところやレストランなどの施設への出入りに制限が設けられているところがあっ たりする。付帯のドッグランについても、狭かったり、不衛生であったり、石ころだらけで犬が足 を痛めてしまう危険を心配しなければならないところもある。 また、ホテルの経営者や従業員側の資質についても多くの課題がある。ペットの習性や生理につ いての知識が不十分なだけでなく、ペットを「家族同然の存在」として扱うといった飼い主の心理 や行動パターンを理解できる人が少ない状況にある。(3)利用者側の課題
ペットと一緒にお出かけをすると、普段の日常的な生活とは異なり、飼い主やペットが守らなけ ればならないマナーを痛切に感じる場面が多くなる。例えば、無駄吠えであるが、家の中での無駄 吠えは飼い主の家族だけが我慢すればよいことであるが、ペット同伴宿泊ホテルに滞在している時 の無駄吠えは、他の宿泊者やペットへの迷惑問題になる。迷惑問題になるおそれがあるのは、この 他にもトイレのしつけ、他のペットとの接触や感染症などが挙げられる。 こういった意味では、ペット・ツーリズムは飼い主やペットが社会性を身に付ける必要性を痛切 に感じる良い機会にもなると考えられる。また、飼い主やペットが他の飼い主やペット達と一緒に 仲良く過ごせるようにマナーや社会性を身に付けるということは、災害時の同行避難を円滑に進め ることのできる環境づくりにも役に立つこととなる。(4)地域全体としての課題
ペットとの同伴宿泊旅行の利用者へのヒアリングによると、「ホテルは良かったのだが、ペット と一緒に観光をしようと思っても、ペット同伴ができない・しづらい施設がほとんどである」とい った声が少なくなかった。確かに、ホテルがペットや飼い主にとってフレンドリーなものであった としても、レストランや食堂、カフェ、土産物の販売店、展望台、公衆トイレ、遊覧船やロープウ ェーなどの観光施設が飼い主やペットにやさしいものに変わらなければ、ただ単にホテルに泊まる だけの旅行しか楽しめないということになり、顧客満足度は低くなってしまう。 ペット・ツーリズムというと、現在は「宿泊」というところのみが強調されているきらいがある が、本来はトータルな観光行動を指すものである。今後は、「食事、休憩、移動、観覧等」を含めて、観光地が一体となって飼い主とペットが行動しやすいような施設(ペット・インフラストラクチャ ー)を体系的かつ計画的に整備して行く必要があると考えられる。
3.ペット・ツーリズムの効用
(1)ペット飼育の効用
ペット・ツーリズムの効用を整理する前段として、本節では、ペット飼育が人の心理面及び健康 面に与える効果をできる限り定量的にとりまとめるために、内閣府の動物愛護に関する世論調査及 びJGSS(日本版総合的社会調査)などをもとに分析を行った5, 6)。 世論調査によれば、ペット飼育が良い理由についての結果は、図4のとおりである。生活に潤い や安らぎが生まれるが61.4%、家庭がなごやかになるが55.3%、子どもたちが心豊かに育つが47.2 %、育てることが楽しいが31.6%、防犯や留守番に役立つが25.7%、お年寄りの慰めになるが24.7 %、ペットを通じて人付き合いが深まるが23.8%となっており、実利的な効用というよりは精神的 な面での効用を挙げている人が多い傾向にあるといえる。 また、JGSS(日本版総合的社会調査)ではペット飼育についても調査をしている年である2000 年と2006年のデータをもとにペットとして犬を飼育している人が、飼育していない人と比べて健康 状態がどのようになっているかをクロス集計分析をした結果が表1である。自分の健康状態を「良 い・やや良い」、または、「良い・やや良い・普通」と答えた人の割合は、いずれの調査においても 0 10 20 30 40 50 60 70 生 活 に 潤 い や 安 ら ぎ が 生 ま れ る 家 庭 が な ご や か に な る 子ど も た ち が 心 豊 か に 育 つ 育 て る こ と が 楽 し い 防 犯 や 留 守 番 に 役 立 つ お年 寄 り の 慰 め に な る ペッ ト を 通 じ て 人 付 き 合 い が 深 ま る 友 達 に な れ る 繁 殖 さ せ る こ と が 楽 し い 特 に な い そ の 他 わ か ら な い 61.4% 55.3% 47.2% 31.6% 25.7% 24.7% 23.8% 18% 1.9% 7.3% 0.9% 0.7% 図4 ペット飼育が良い理由(内閣府世論調査)犬の飼育者が非飼育者に比較して0.6%∼3.8%高い傾向を示している。これは、ペットの犬を飼育 しているから健康状態が良い状態に保たれること、健康状態が良い人がペットの犬を飼育しやすい 条件下に置かれていることといった因果関係が複雑に絡みあった総合的な結果であると考えられる が、いずれにしてもペットの犬を飼育している人の健康状態は非飼育者のそれに比べて結果として 良い状態であると評価することができるものであると考えられる。 表1 日本版JGSSによるペット飼育と健康状態とのクロス集計
(2)ペット・ツーリズムの効用
ペット・ツーリズムの主な効用は、①気晴らしやストレスの解消(飼い主&ペットの双方にとっ て)、②思い出づくり、③飼い主同士の交流、④適正飼養の必要性に対する認識の深まり(災害時 の同行避難の予備的訓練を含む)、⑤豊かな社会のシンボル、の5点に集約されると考えられる。 その詳細は、次のとおりである。 ①気晴らしやストレスの解消 ペット(犬)と暮らして不便と思うことで一番多いのが、長時間留守にできないことが59.1%、 次いで旅行に出かけられないが58.0%になっている7)。また、飼い主の方々の中には、犬を自由に 走り回らせることのできるようなオープンスペースが少ない都市部で住んでいる人や、ペットを飼 育するに当たって何かと制約が多いマンションに住んでいる人も少なくない。内閣府の動物愛護に 関する世論調査(平成22年度)によれば、一戸建てに住んでいる人でペットを飼っている人は40.1 %で、集合住宅でペットを飼っている人は19.3%であった5)。ペットと一緒のお出かけは、飼い主 とペットの双方にとって、気晴らしやストレスの解消の手段になっていると考えられる。 ②思い出づくり ペット(犬)と同伴旅行をした理由は、ペットと一緒に旅行に行きたかったからが76.1%と最も 多い結果になっている。ペットと一緒のバス旅行における飼い主の行動の観察結果でも、観光名所 の撮影スポットでペットと一緒に写真撮影をする人が多い傾向にあった。飼い主の心理や行動形態 を理解するためには、ペットは永遠の3歳児と理解するのが早道といわれることがあるが、ペット と一緒に非日常的な経験をしたり、その経験を残すために記念写真を撮ったりすることは、ペット と一緒に暮らした思い出づくりをしたい気持ちの発露であると考えられる。 健康状態 やや良い以上 普通以上 2000年 飼育していない 46.8% 87.0% 飼育している 50.6% 87.6% 2006年 飼育していない 44.5% 77.1% 飼育している 47.7% 79.7%③飼い主同士の交流 ペット・ツーリズムを楽しみたいという飼い主の中には、旅行先で飼い主同士の交流を望んでい る利用者が少なくない。ペット同伴宿泊ホテルの経営者に対するヒアリングでも、宿泊滞在中に飼 い主同士のコミュニケーションを求める傾向が強いといった一般のホテル利用者と異なる行動形態 やニーズが認められている。 ④適正飼養の必要性に対する認識の深まり 適正飼養等の普及啓発は、時代の要請や飼い主の意識・行動の変化を踏まえながら、新たな視点 や方法で展開をしていく必要がある。ペット・ツーリズムにより非日常の外出をすることは、しつ けの重要性やペットと飼い主の社会化の必要性を確認する有効な機会となり、それが飼い主の適正 飼養に向けての意識改革にもつながるはずである。また、災害時の同行避難を円滑に行うことにつ ながっていくことも期待できるものであると考えられる。 ⑤豊かな社会のシンボル ペット・ツーリズムの適正な推進は、観光立国推進基本法において主唱されている施策である 「地域特性を踏まえた魅力ある観光地域づくり」に寄与するだけでなく、マハトマ・ガンジーの言 葉の「The greatness of a nation and its moral progress can be judged by the way its animals are treated.(国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で判る)」に象徴されるよ うに、動物の愛護及び管理に関する法律の究極的な理念である「人と動物とが共存できる優しい社 会の実現」にも多大な貢献をするものであると考えられる。適正飼養の普及をとってみても、ソフ ト面を重視した従前までの動きとは異なり、ハード面からも人と動物とが共存できる社会基盤施設 の整備が推進され始めている。ペットにやさしい社会は、人にもやさしい社会をシンボライズする 存在であると言っても過言ではないと考えられる。
4.ペット同伴宿泊施設の整備実態と利用者のニーズ
(1)施設の整備状況
ここ10年間のペット同伴宿泊施設の増加は めざましいものがある。宿泊施設市場全体に おけるペット同伴宿泊施設の統計調査がない ために、全国でどれだけのペット同伴宿泊施 設が存在するのかは正確にはつかめていない が、株式会社ぐらんぱうが主催しているPet 宿.comの加盟宿泊施設をとってみても、1999 年には約170軒だったものが2013年には約800 軒と14年間の間に約5倍になっている(図5 参照)8)。また、藤田観光株式会社の担当者 図5 ペット同伴宿泊ホテルの経年変化 (ぐらんぱう「Pet宿.com」提携施設) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1999年 170 2004年 450 2008年 650 2012年 800に対するヒアリングによれば、資料調査及びWEB調査の結果であるが、ペット同伴宿泊施設は全 国で約1100軒、うち全室でペット同伴宿泊が可能な専用型施設は約4割であるとのことであった。
(2)利用者ヒアリング
平成25年度に静岡県及び長野県のペット同伴宿泊施設において実施した利用者に対するヒアリン グの結果は次のとおりである。なお、今回の調査は予備調査として試行的に実施したものであるこ とから、被験者数が7人と少なくなっていることを注記しておきたい。 1)利用者の意向調査 ①施設の選定基準 清潔さを挙げる人が約6割と圧倒的に多く、その他の要因としては、自宅から近いこと、知名度、 人気、広さ、料金、他の利用者の顔ぶれ、設備、サービス、従業員のペットに対する理解や反応、 観光地に立地していることが抽出された。 ②観光施設への立ち寄りの有無 すべての人が観光施設に立ち寄っており、自宅と宿泊施設のみのピストン利用をしている人は皆 無であった。 ③良かった点、悪かった点 半数の人が広い、清潔である、ドッグランがあるという点を挙げており、その他の要因としては 従業員が親切、ドッグランを付帯していることが抽出された。 ④好みの部屋のタイプ 無駄吠え等の癖がある場合はコテージ型、飼い主が食事やショッピング等を楽しみたいという意 向が強い場合は集合棟(ホテル)型、両方のニーズを満たしたいという場合は低層の集合棟(テラ スハウス)型を挙げる人が多かった。 ⑤好みの床材のタイプ カーペット、フローリング、クッションフロア、タイルなどがあるが、部屋ではカーペットが約 6割、次いでフローリングを挙げる人が多かった。また、廊下では、クッションフロアが約4割、 次いでカーペットやフローリングを挙げる人が多かった。 ⑥妥当と考えられる宿泊料金 比較的高めの単価を提示する傾向が観察されており2万円及び1万5千円が約半数の3人、 1万2千円が1人という結果であり、平均は約1万7千円であった。 2)利用者の行動調査 宿泊施設内での利用者の行動形態を把握するため、チェックインしてからチェックアウトするま での利用者(2家族)の行動の記録調査を行った。宿泊施設の所在地は、静岡県及び長野県である。 結果は表2及び表3のとおりである。ペット同伴宿泊者の行動形態の主な特徴としては、ドッグラ ンをこまめに利用すること、早朝に施設の周辺を散歩すること、食事の開始時間が若干遅めである こと、食事の後に他の飼い主との歓談をすること等の特徴が観察された。5.今後のあり方に関する考察
前述の調査結果等を踏まえ、ペット・ツーリズムの利用者及び事業者の多様なニーズに応えなが らペット・ツーリズムの適切な推進及びペットの福祉の向上を図るための方向性について考察を行 い、ペットツーリズムに出かけようとする飼い主の心構え等及びペット・ツーリズムの主要施設で あるペット同伴宿泊施設の望ましい整備内容等のアウトラインを検討した。あくまでも試案に過ぎ ない部分も少なくないが、結果は次のとおりである9, 10, 11, 12, 13, 14, 15)。(1)飼い主
①ペットの適性 すべてのペットが飼い主との同伴旅行ができるわけではないことから、自分のペットの適性を考 えることが重要となる。その際は、ペットの種類、ペットの性格及び健康状態、ペットの数に留意 するとともに、ペットホテルやペットシッター等の利用もケースバイケースで考える必要がある。 ②旅行等の計画 下調べや情報収集は綿密にするとともに、十分な時間的余裕を持ったスケジュールを考えること が重要となる。その際は、季節や場所の選択、探し方や情報源、休憩の確保、携行品、宿泊先の下 調べと選択(利用制限を含む)、周辺地域におけるペット同伴が可能な観光施設の有無に留意する 必要がある。 時間 行動内容 15:00 チェックイン 15:00 ∼ 16:00 部屋で休憩 16:00 ∼ 17:00 風呂(外風呂・ジャグジー) 17:00 ∼ 18:00 部屋で休憩 18:30 ∼ 20:00 レストランで食事、他の飼い主と歓談 20:00 ∼ 20:30 付帯施設のドッグランを利用 20:30 ∼ 21:30 部屋で休憩 21:30 ∼ 23:00 風呂 23:00 就寝 5:30 起床 6:00 ∼ 6:30 周辺を散歩 6:30 ∼ 7:00 付帯施設のドッグランを利用 7:00 ∼ 8:30 部屋で休憩 8:30 ∼ 10:30 レストランで朝食、他の飼い主と歓談 11:00 チェックアウト 時間 行動内容 15:00 チェックイン 15:00 ∼ 16:00 部屋で休憩 16:00 ∼ 17:00 付帯施設のドッグランを利用 17:00 ∼ 18:00 ペット専用シャワー室にてシャンプー 18:00 ∼ 18:30 部屋で休憩 18:30 ∼ 20:30 レストランで食事、他の飼い主と歓談 20:30 ∼ 21:30 部屋でお風呂 21:30 ∼ 22:30 部屋で休憩 22:30 就寝 6:00 起床 6:00 ∼ 7:00 周辺を散歩 7:00 ∼ 7:30 付帯施設のドッグランを利用 7:30 ∼ 8:00 部屋で休憩 8:00 ∼ 8:50 レストランで朝食 9:00 チェックアウト 表2 ペット同伴宿泊施設(静岡県)における 宿泊家族客の行動記録 表3 ペット同伴宿泊施設(長野県)における 宿泊家族客の行動記録③移動手段及び方法 適切な移動手段を選択して熱中症や車酔いに注意すること、車の場合は衝突時の対策を講じてお くこと、ペットが嫌いな人もいることから公共交通機関の場合は周りの人への配慮を怠らないこと を考えることが重要となる。その際は、目的やペットの特性に応じて移動手段の選択と利用方法、 迷惑防止や事故への備え、ペットと一緒に利用可能な公共交通機関の種類に留意する必要がある。 ④病気やトラブル ペットの健康管理については普段以上に徹底すること、万が一の事故やトラブルに備えることを 考えることが重要となる。その際は、ペットの健康の事前チェック、必要とされる主な健康管理や 熱中症・車酔い・感染症に対する予防対策、病気・外出先でのケガ・逸走(迷子)等といった緊急 時の備えや帰宅した時の体調チェックに留意する必要がある。 ⑤しつけやマナー 外出先では「しつけ」が普段以上に求められること、マナーを守り周りの人や他のペットへ配慮 を怠らないことを考えることが重要となる。その際は、しつけと飼い主のマナー、同伴旅行に向け た馴化訓練に留意する必要がある。
(2)ペット同伴宿泊施設
①立地条件やタイプ 飼い主にはニーズが異なるいくつかのタイプがあること、立地は現時点ではリゾート型がほとん どであること、専用施設と混在施設、分棟式(コテージ型)と集合棟式(ホテル型)があることを 考えることが重要となる。その際は、飼い主のタイプ分類、宿泊施設の立地条件や宿泊施設の形態 に応じた整備内容の違いに留意する必要がある。 ②施設や設備 ペット同伴宿泊施設に固有の計画や設計があること、維持管理や利用ルールが重要になること、 飼い主と非飼い主との利用動線の調整が必要になることを考えることが重要となる。その際は、計 画や設計の基本的考え方を明確にするとともに、利用動線、床材・エントランス・レストラン・廊 下・客室の意匠や構造、付帯施設、維持管理方法、利用条件の設定に留意する必要がある。 ③サービス 普通の宿泊施設と異なり、一定の利用制限が必要になるがその導入方法を工夫すること、飼い主 の気持ちに立ったホスピタリティを提供することを考えることが重要となる。その際は、事業者側 の利益にもなるサービスとすることや、備品類の提供・飼い主の自由時間確保のためのサービス・ 普段できない珍しい経験の提供や空き時間の有効活用のためのサービス・緊急時の対応サービス等 に留意する必要がある。④従業員 ペットの習性や飼い主の気持ちを理解できる従業員を確保しておくこと、定期的に研修等を受け て研鑽に努めること、お客さんとの「ペット談義」を大切にすることを考えることが重要となる。 その際は、従業員に求められる素養、ペットのことを勉強する手段、利用者との挨拶やコミュニケ ーションに留意する必要がある。 ⑤広報 時代の変化に応じて多様な媒体を組み合わせること、飼い主の琴線にふれるアピールポイントを 準備することを考えることが重要となる。その際は、効果的な媒体の選択や宿泊先の選定要因に留 意する必要がある。 ⑥主なトラブル事例 あらかじめ発生するおそれがあるトラブルを考えておくことが重要となる。その際は、発生する おそれのあるトラブルの種類や内容について、普段から熟知しておき、心構えや対応マニュアルの 準備に留意しておく必要がある。
6.まとめ
本論は、ペット・ツーリズムのより一層の拡大が適正に図られるようにするとともに、併せて動 物の愛護及び管理に関する法律に即した適正飼養の推進も確保されるようにするために、ペット・ ツーリズムに関する実態の調査・分析を概括的に行い、その結果を踏まえて、ペット・ツーリズム に出かけようとする飼い主の心構え及びペット・ツーリズムの主要施設であるペット同伴宿泊施設 の望ましい整備内容等を検討し、ペット・ツーリズムの今後のあり方を示す指針となるガイドライ ンのアウトラインについて考察を行ったものである。 その結果、「飼い主とペットに関する事項」については、ペットの適性・旅行等の計画・移動手 段及び方法・病気やトラブル・しつけやマナー、「宿泊施設のハード及びソフトに関する事項」に ついては、立地条件やタイプ・施設や設備・サービス・従業員・広報・主なトラブル事例に関し、 それぞれについての重要なポイントや留意事項等を明らかにした。末文になるが、日本版General Social Surveys(JGSS)は、大阪商業大学比較地域研究所が、文 部科学省から学術フロンティア推進拠点としての指定を受けて(1999−2003年度)、東京大学社会 科学研究所と共同で実施している研究プロジェクトであり(研究代表:谷岡一郎・仁田道夫、代表 幹事:佐藤博樹・岩井紀子、事務局長:大澤美苗)、東京大学社会科学研究所附属社会調査・デー タアーカイブ研究センターがデータの作成と配布を行っているものであるが、快くデータの提供を していただいたことについて、深甚なる謝意を表したい。
〔参考文献〕 1)岡本伸之編、「観光学入門 ̶ポスト・マス・ツーリズムの観光学」、有斐閣、2001 年 4 月 2)株式会社不動産経済研究所、「首都圏におけるペット飼育可能な分譲マンション」、日刊不動産経済通信(不 動産経済研究所)、2007 年 6 月 3)株式会社矢野経済研究所、「ペットビジネスに関する調査結果 2013」、矢野経済研究所ホームページ http:// www.yano.co.jp/press/press.php/001226、2014 年 10 月 4) 総 務 省 統 計 局、「 家 計 調 査 通 信 439 号 」、 総 務 省 統 計 局 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.stat.go.jp/data/kakei/ tsushin/、2010 年 9 月 5)内閣府、「動物愛護に関する世論調査」、内閣府ホームページ http://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/、 2010 年 9 月
6)大阪商業大学比較地域研究所・東京大学社会科学研究所、「日本版 General Social Surveys(JGSS)」、東京大 学社会科学研究所所附属社会調査・データアーカイブ研究センターホームページ http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/ access/renewal/、2014 年 9 月 7)田中健司(西武ホールディングスグループ・株式会社西武ペットケア(旧アドホック株式会社))、「ペットツ ーリズムの現状と今後のテーマ」、東洋大学・公益社団法人日本愛玩動物協会寄付講座・ペットツーリズム論講 義資料、2013 年 12 月 8)藤野宇一郎(株式会社ぐらんぱう)、「ペットツーリズム 10 年の変化」、東洋大学・公益社団法人日本愛玩動 物協会寄付講座・ペットツーリズム論講義資料、2014 年 1 月 9)東海林克彦、「観光産業への提言̶ペット・ツーリズムの推進に向けた今後の取り組み̶」、週刊トラベルジ ャーナル 2013 年 12 月 16 日号、2013 年 12 月 10)東洋大学国際地域学部国際観光学科・公益社団法人日本愛玩動物協会(協力:全国ペット・ツーリズム連絡 協議会)、「ペット・ツーリズムの適正飼養ガイドライン(骨子案)」、2014 年 11 月 11)公益社団法人日本愛玩動物協会、「特集ペットツーリズム」、機関誌 WithPets(愛玩動物)、2014 年 1 月 12)公益社団法人日本愛玩動物協会、「特集ペットのリスク・アセスメント」、機関誌 WithPets(愛玩動物)、 2014 年 3 月 13)公益社団法人日本愛玩動物協会、「特集ペットと暮らす家づくり」、機関誌 WithPets(愛玩動物)、2014 年 9 月 14)東洋大学国際地域学部国際観光学科、「ペットツーリズム論(公益社団法人日本愛玩動物協会寄付講座)報告書」、 2014 年 3 月 15)全国ペット・ツーリズム連絡協議会、「全国ペット・ツーリズム連絡協議会設立記念シンポジウム記録集̶人 とペットが共生する社会を目指して̶」、2014 年 1 月