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平衡と自由エネルギー

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Academic year: 2021

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断熱壁 理想気体 理想気体 断熱壁 T1 T2 q 8. 平衡、エントロピー、自由エネルギー 8.1. 平衡とエントロピー 周りと熱的に遮断された系(孤立系)で、自発的にどちらかに変化を起こす ときには、エントロピーは必ず増大することを学んだ。さて、二つの状態間の エントロピーが等しいとしよう。このときには、この二つの状態間のどちらを とってもエントロピーが等しいから、どちらかに変化することはない。最初エ ントロピーが低い状態だとすると、自発的に変化が起こり、もうこれ以上変化 してもエントロピーが増大しなくなると ころまで、変化が続く。すなわち、エン トロピーが最大になるまで変化するとい える。 たとえば、温度が異なる同じ量の理想 気体が入った箱があるとする。この二つ の箱は外界と熱的に遮断された部屋に入 れてあるとする。二つの間の断熱壁をふ つうの壁に変える。するとT1 側から T2 側への熱の移動がおこる。 このときにどのようなエントロピーの変 化が起こるかを振り返ってみよう。 まず、それぞれの部屋でのエントロピー の変化をしらべてみよう。まず、部屋1 から qの熱が奪われ、部屋2に qの熱が 入ってくる。このときに、部屋1では 1 1 Tq dS 、だけ、エントロピーがさがり、 部屋2では、 2 2 Tq dS だけ、エントロピーが増大する。合計すると 0 ) 1 1 ( 2 1 2 1 T T q dS dS dS ( 8.1-1) となり、この方向に熱が流れる。 部屋1では、温度が下がっていくが、部屋2では、温度が上がる。このため、 部屋1ではエントロピーは減少し、部屋2ではエントロピーが増大する。同じ 温度T3になった時を考えてみると、 図 8.1-1 二つの温度の違う部屋での熱 移動

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部屋1のエントロピー変化は、 3 1 T q dS であり、部屋2のエントロピー変化 は、 3 2 Tq dS となる。したがって、全エントロピー変化は0となり、これ以上 の熱の移動はない。もし同じ方向に流れ続けるのであれば、逆にエントロピー が減少することになる。 問 8.1-1 上で、熱の移動について、エントロピーを考えたときに、可逆性が成り立っているだ ろうか? もし可逆的ではないときには、上で求めたエントロピーは正しいエントロピーなの だろうか? すなわち、二つの部屋の温度が等しくなるまで、変化する。その時までのエン トロピーの変化は、 1 3 ln 2 3 2 3 1 3 1 3 1 3 1 T T nR T nRdT T dU T q S T T T T T T 一方部屋2では、温度が上がるが、その時のエントロピー変化は 2 3 ln 2 3 2 3 2 3 2 3 2 3 2 T T nR T nRdT T dU T q S T T T T T T この二つを足すと、全体のエントロピーの変化は、 0 ) 2 3 ln 1 3 (ln 2 3 2 1 T T T T nR S S S 8.1-2 上式を証明せよ。 となる。T1=T2=T3 の時のみ 0 となり、たとえ、熱が動いたとしてもエントロ ピーは変化しない。 このように、その変化が起こってもエントロピーがもはや変化しない状態を平 衡状態にあるという。平衡状態にある系は、それ以上エントロピーがあがらな いのだから、エントロピー最大の状態になるといえる。 孤立系における平衡状態では、エントロピーは最大になる。 再び熱力学第2法則が成り立つことを確認する。

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上の例でもわかるとおり、平衡状態にある部屋の間で熱をやりとりしてもエン トロピーは変わらない。すなわち、どちらに進んでもよいことになる。平衡状 態における変化は可逆的になっていることがわかる。 したがって、 可逆的変化あるいは準静的変化とは、平衡状態に保ちながら、系を変化させる と言うこともできる。 平衡状態では、エントロピーは変化しないのだから、可逆的な過程では、減少 したエントロピーと増大したエントロピーは等しいことになる。 8.2. 熱のやりとりをする系の平衡状態―等積の場合 たとえば、理想気体を満たした体積一定の部屋があり、それが、外部と温度が 等しいとする。この部屋には2種類の理想気体があって、それが反応を起こし たとしよう。外界は十分に大きく、熱は瞬時に伝わってしまうとする。すると、 熱はすぐに外界に逃げて、理想気体を満たしている部屋の温度は外界と同じで あり、変わらない。 このときに外界も含めて、エントロピーの増大が起これ ば、反応は進むことになる。 系内で、エントロピーの変化をdSsys 系外でのエントロピーの変化をdSenvとすると、 dSsys+dSenv>0 外界を含めて、全体で孤立系と考え、その中で、エントロピーが増大すれば、 変化が自発的に起こるし、エントロピーが変わらないと、平衡であると考えて もよいが、それでは、外界を常に考えないといけないので、不便である。 系の外でのエントロピー変化を何らかの方法で、系の性質則ち状態で表せると、 便利である。そこで、自由エネルギーという状態量を導入する。 温度一定で、反応させ、反応に伴い発生する熱は-dUsysが外部に向かって除 かれるとすると、外界は大きく、少々の熱が入ってきても温度は変化しない。 系と同じ温度であるから、この熱の移動は可逆的であるから、外部におけるエ ントロピーはdSenv=-dUsys/T となる。

したがって、 0

T dU dS

dS

dSsys env sys sys

U も T も系の状態量であるから、系が特定されれば、規定される量になる。そ こで、新しい状態量A U TSを導入しよう。このA をヘルムホルツの自由エ ネルギーという。 すると、dA dUsys TdSsysとなり、 A 0ならば、自発的に変化することに なる。すなわち、外界と自由に熱をやりとりする場合、すなわち閉じた系、開 いた系の場合、等温条件、等積条件で、系が反応などで変化するときには、か ならずヘルムホルツの自由エネルギーは減少する。また、平衡になるのは、 0 A のときである。

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8.3. 熱のやりとりをする系の平衡状態―等圧の場合 こんどは、部屋の代わりに中の圧力で自在に変化する風船を考える。風船の中 から外へ自由に熱は伝わる。2種類の理想気体の反応を考えよう。風船だから、 中と外の圧力が等しくなるように伸び縮みする。この外界を含めて、エントロ ピーが増大すれば、自発的な変化が起こる。 系内で、エントロピーの変化をdSsys 系外でのエントロピーの変化をdSenvとすると、 dSsys+dSenv>0 系の外でのエントロピー変化を系の中の性質で表してやると、 等圧条件の下、反応に伴い発生する熱は-dHsysであり、これは瞬時にして除か れるとすると、先と同じく計算でき、外部におけるエントロピーはdSenv= -dHsys/T となる。 したがって、 0 T dH dS dS

dSsys env sys sys

ここで、新しい状態量G H TSを導入しよう。このGをギブスの自由エネル ギーという。 すると、dG dHsys TdSsysとなり、dG 0ならば、自発的に変化することにな る。すなわち、外界と自由に熱をやりとりする閉じた系の場合、等温条件、等 圧条件で、系が反応などで変化するときには、かならずギブスの自由エネルギ ーは減少する。また、平衡になるのは、dG 0 のときである。 ここで注意することは、A もGも考えている系について与えられた状態量であ り、考えている系の状態が決まれば、決まる状態量である。 私たちは、無限に大きな外界と熱的に接触した小さい閉じた系、開いた系を取 り上げて議論することが多い。たとえば、フラスコ中の反応のように、熱的に 外界と接触し、外界と同じ温度になるように制御されている場合が多い。又多 くの溶液反応では、外界の圧力(大気圧)におかれることが多い。したがって、 外界のエントロピーを含めて、エントロピー増大則を考えるよりも、外界のエ ントロピー増大を取り込んでしまった自由エネルギーG,A を考えることで、系 のみの性質として議論を進める方が便利である。したがって、エネルギーの移 動が起こるような系においては、外界を含めて、エントロピーの増大が自然界 の変化の方向で有ると考えるよりも、 注目している系の自由エネルギーが減少する方向が特定の(閉じた、開いた) 系の変化の方向である。 と考える。 また、エネルギーの移動が起こるとき、平衡条件は、 自由エネルギーの変化=0である。

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二つの自由エネルギーがあったが、どちらを使うべきかについては、何が一定 になっているかに依存する。 すなわち、 等温、等積条件では へルムホルツの自由エネルギーA=U-TS を使い、 等温、等圧条件では、 ギブスの自由エネルギーG=H-TS を使う。 さらに、自由エネルギーを使うと、外界がどういうものかを気にせずに平衡を 論ずることができる上、ある系の状態を定めると、一義的に自由エネルギーを 決めることができる。 標準生成自由エネルギーというものがある。すなわち、化合物をその単体か ら標準状態(25℃、1気圧)で作るときの自由エネルギーの変化を言う。 たとえば、NH3の標準生成自由エネルギーは、-16.64 kJ/mol である。 問 8.3-1 NH3(g)の標準生成エンタルピーは、-46.19kJ/mol とすると アンモニア生成に伴う エントロピー変化を求めよ。エンタルピーやエントロピーは温度とともに変わらないとして、 温度が高くしていくと自由エネルギーはどうなるか考えてみよう。高温だと逆の反応、分解反 応が進行するであろうか? 問 8.3-2 ( ) 2 1 2 2 2 O H O l H の反応で、標準状態では、 mol kJ S mol kJ H / 16316 . 0 / 84 . 285 とする と、この反応に伴う自由エネルギーの変化はいくらになるか?この反応は自発的に起こるか論 じよ。 8.4. 微分形 さて、エントロピーを求めるときには、可逆変化をさせねばならないが、その ためにはちょっと変化させて足し合わせるという考え方が大事になる。これは、 エントロピーが状態量であるから、できる方法である。状態量であれば、すこ しずつ変化させ、足しあわせることができる。ちょっと変化させるということ は、変化の割合がわかっていると都合よいことがある。すなわち、微分がどう なるかを知るとよいことになる. たとえば、内部エネルギーを体積で微分するとどうなるか等々である。 エネルギー保存則をもう一度考えてみよう。 PdV TdS w q dU

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ここで、 qはほんの少しの変化であるから、可逆的と見なせて、TdS と置き換 えた。 すなわち、 T S U P V U V S , となる。 また、H U PV だから、dH dU PdV VdP TdS VdP 従って、 V P H T S H S P , となる。 同様に、 VdP SdT TS d dH dG PdV SdT TS d dU dA ) ( ) ( だから、 V P G S T G P V A S T A T P T V , , また、一般に微分の順序を変えても等しいから、 P T V T P S S V T V P S T P V S S V P T V T V S U S V U S P 2 2 という関係がある。 まとめると、表のようになる。この関係をマクスウェルの関係といい、変数を 変換するときに役立つ。

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8.4-1 熱力学的ポテンシャルと変数、偏微分 熱力学的ポテ ンシャル 全微分表示 微分関係 U dU TdS PdV T S U P V U V S , S V V T S P H dH TdS VdP V P H T S H S P , P S S V P T A dA SdT PdV P V A S T A T V , V T T P V S G dG SdT VdP V P G S T G T P , P T T V P S

表  8.4-1   熱力学的ポテンシャルと変数、偏微分 熱力学的ポテ ンシャル  全微分表示  微分関係  U  dU TdS PdV S TPUVU VS, SVVTSP H  dH TdS VdP P VTHSH SP, PSSVPT A  dA SdT PdV V PSATA TV, VTTPVS G  dG SdT VdP P VSGTG TP, PTTVPS

参照

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