論
文
特集
無機系抗菌剤
抗菌 性イオ ンを含 むハイ ドロタルサ イ ト系化合物 の合成 と殺菌特性
張
無 限 ・風 間 ふ た ば*・ 木 野 村 暢 一**・
鈴 木
喬
(山梨 大学 工 学 部 物 質 ・生 命 工 学 科,*山 梨 大 学 工 学 部 循 環 シ ス テム 工 学 科,
**山 梨 大 学 工 学部 無機 合 成 研 究 施 設)
Synthesis and Bactericidal Characteristics of Antimicrobial Ions-Containing Hydrotalcite-Like Compounds
Wuxian ZHANG, Futaba KAZAMA *, Nobukazu
KINOMURA
** and Takashi
SUZUKI
(Department of Applied Chemistry and Biotechnology, Faculty of Engineering, Yamanashi
University, Takeda 4-chome, Kofu, Yamanashi 400-8511; * Department of Ecosocial System
En-gineering, Faculty of EnEn-gineering, Yamanashi University, Takeda 4-chome, Kofu, Yamanashi
400-8511; ** Institute of Inorganic Synthesis, Faculty of Engineering, Yamanashi University,
Miyamae-cho 7-chome, Kofu, Yamanashi 400-8511)
A series of antibacterial ions-containing hydrotalcite-like compounds with variouscombination
of divalent and trivalent matal ions were prepared by wet mothod and their MnO4-
ion-deriva-tives were also obtained by the ion exchange of these hydrotalcite-like compounds with MnO4-
ion in low concentration KMnO4 solution. Their bactericidal behavior against Escherichia coli and
the influence of content of antibacterial ions were investigated. The products exhibited strong
bacteridal activity in aqueous solutions to E. coli, especially hydrotalcite-like compounds obtained
after ion-exchange reaction with MnO4- ion. It was suggested that the high bactericidal effect
was due to inactivation of E. coli by both Cu2+ ion and/or Zn2+ ion contained in the host layers
and Mn04- ion loaded in the interlayer spaces. The eluted amounts of Cu2+, Zn2+ and Mn04- ion
from hydrotalcite-like compounds into pure water were so low that they are not harmful to water
environment. Therefore, the products are promising as a new antimicrobial water treatment
agent for E. coli.
(Received Jun.
9, 1999)
(Accepted Aug. 12, 1999)
Key words : Hydrotalcite-like
compound,
Antibacterial
ion, Anion-exchange,
Bactericidal
effect, Escherichia coli
1 は じ め に
経 済 の発展 や社 会 の進 歩 に ともな い,よ り衛 生的 で
しか も快 適 な生活 環境 が求 め られて お り,い ろい ろな
殺 菌効 果 を もつ抗 菌剤 の開 発 が活 発 で あ る1)∼10).こ
う した抗 菌剤 は,有 機系 と無 機系 に大 別 され るが,無
機系 抗菌剤 は 有機系 抗菌 剤 に くらべて耐 熱性 に優 れ,
ま た耐 候 性,耐 薬 品性 が高 い な どの特 性 を もっ て い
る.無 機系 抗菌 剤 では,多 孔 質の ゼオ ライ ト,ア パ タ
イ ト,活 性 炭,モ ン モ リ ロ ナ イ トな どの 担 体 に 抗 菌 作 用 を もつ 金 属 イ オ ン を 担 持 さ せ た もの が 研 究 の 対 象 と な っ て お り,現 在 はAg+イ オ ン を ゼ オ ラ イ トを は じ め と し た 層 状 化 合 物 に 担 持 さ せ る 化 合 物 の 開 発11)∼14) が 主 流 と な って い る.し か し,こ れ ら抗 菌 材 料 の 殺 菌 作 用 は ほ とん ど層 間 に 含 ま れ た 金 属 イ オ ン の 溶 出 に よ りな さ れ る もの で,担 体 は 殺 菌 作 用 に 関 与 しな い.層 状 構 造 を もつ ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 多 くは, 一 般 式M21+ -xMx3+(OH)2Xy(M2+は2価 の,M3+は3価 の 金 属 イ オ ン,xは 層 の も つ 正 電 荷 を 補 償 す る た め に層 間 に 取 り込 ま れ た い ろ い ろ な 電 荷 を もつ 陰 イ オ ン)で あ ら わ さ れ,唯 一 陰 イ オ ン 交 換 能 を も つ 無 機 化 合 物 と し て 知 ら れ て い る.こ れ は 各 種 の2価 と3価 の 陽 イ オ ン お よ び1価 以 上 の 陰 イ オ ン との 組 合 わ せ に よ り合 成 す る こ とが で き る.こ れ ま で,ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 は お も に 吸 着 剤,触 媒 お よ び 陰 イ オ ン 交 換 体 と して 利 用 さ れ て い る が,本 報 で は,殺 菌 作 用 を も つCu2+,Zn2+の 各 イ オ ン を 骨 格 構 造 中 に 含 む 新 規 ハ イ ドロ タル サ イ ト系 化 合 物 を合 成 し,水 処 理 に お け る殺 菌 剤 と して の 使 用 を 検 討 した.ま た よ りつ よ い 殺 菌 効 果 を 期 待 して,イ オ ン 交 換 に よ り抗 菌 性 陰 イ オ ン で あ るMnO4-イ オ ン を層 間 に 含 ま せ た もの も合 成 し,そ の 殺 菌 効 果 に つ い て 検 討 した. 2 実 験 2・1ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 合 成 Cu1-x-yZnxAly(OH)2(NO3)z・mH2O系 の ハ イ ドロ タ ル サ イ トは,0.5mol・dm-3のCu(NO3)2-Zn(NO3)2-Al(NO3)3混 合 水 溶 液(モ ル 比Cu2+/Zn2+/Al3+=1.5/ 1.5/1)と2.0mol・dm-3のNaOH水 溶 液 を 常 温,常 圧 下 で 連 続 的 に 容 積1dm3の 反 応 器 に 滴 下 し,か くは ん す る こ と に よ っ て 合 成 し た.反 応 液 のpHは NaOH水 溶 液 の 滴 下 速 度 を 調 節 し10∼10.5に 保 っ た. す べ て を 滴 下 後,か くは ん を 継 続 して24時 間 熟 成 し た.得 た 生 成 物 を ろ 過 し,水 洗 し て か ら50℃ で24時 間 乾 燥 した. Mg1-xAlx(OH)2(NO3)y・mH2O系 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 は 総 濃 度0.5mol・dm-3のMg(NO3)2-Al (NO3)3混 合 水 溶 液(Mg2+/Al3+=3/1モ ル 比)を 使 用 し て,ま たCu1-x-yMgxAly(OH)2(SO4)z・mH2O系 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 は 用 い る金 属 塩 を硫 酸 塩 に 代 え,モ ル 比Cu2+/Mg2+/Al3+=1.5/1.5/1に て 上 記 と同 様 の 操 作 に よ り合 成 を した. 以 上 の よ う に して 得 られ た 各 ハ イ ドロ タル サ イ ト系 化 合 物 を そ れ ぞ れCuZnAl-NO3系,MgAl-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4系 化 合 物 と略 記 す る.合 成 した 各 化 合 物 の 組 成 は,所 定 重 量 の 化 合 物 を塩 酸 で 溶 解 し た 溶 液 中 の 陽 イ オ ン と陰 イ オ ン濃 度 の 測 定 結 果 か ら求 め た.溶 液 中 の 陽 イ オ ソ はICP発 光 分 析 法 に よ り,ま た 陰 イ オ ン は イ オ ン ク ロ マ トグ ラ フ 法 に よ り求 め た. ま た 粉 末X線 回 析 な ら び にFT-IRの 測 定 に よ り,合 成 さ れ た 化 合 物 を 評 価 し た.粉 末X線 分 析 に は 理 学 電 機 製2100型 回 折 装 置 を 用 い,対 陰 極Cu(Niフ ィ ル タ),管 球 電 圧40KVお よ び 管 電 流40mAな どの 条 件 で2θ=3∼60° の 範 囲 で 行 っ た.FT-IRの 測 定 は 島 津 製 フ ー リ エ 変 換 赤 外 分 光 光 度 計8100型 を 用 い,通 常 のKBr錠 剤 法 に よ り行 っ た. 2・2 イ オ ン交 換 に よ るMnO4-イ オ ンの 担 持 イ オ ン 交 換 に よ り合 成 した 化 合 物 中 にMnO4-イ オ ン を 担 持 さ せ る た め,CuZnAl-NO3系,MgAl-NO3 系 お よ びCuMgAl-SO4系 化 合 物 の0.19を そ れ ぞ れ 1.0mmol・dm-3お よ び0.5mmol・dm-3のKMnO4水 溶 液50cm3に 加 え,25℃ 恒 温 槽 中 で 所 定 時 間 か くは ん した. 2・3 純 水 に 対 す る各 イ オ ンの 溶 出 実 験 合 成 した 各 試 料 の0.059を100cm3の 純 水 に 加 え, 25℃ で 所 定 時 間 振 と う後 遠 心 分 離 し,上 澄 み 液 中 の イ オ ン 濃 度 をICP発 光 分 析 法 に て 測 定 す る こ と に よ り,水 中 に 溶 出 したAl3+, Cu2+, Zn2+の 各 イ オ ン 量 を 求 め た.ま た,イ オ ン 交 換 後 に 再 溶 出 す るMnO4一 イ オ ン の 量 に つ い て は560nmに お け る 吸 光 度 の 測 定 に よ り求 め た. 2・4 大 腸 菌 に 対 す る殺 菌 実 験 合 成 した 各 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物0.05gを, E.coli K-12を10-7CFU・cm-3程 度 含 む 純 水100cm3 に 添 加 し,定 速 で5分 間 か くは ん した 後 静 置 して, 所 定 時 間経 過 後 の 生 菌 数 を 測 定 した.合 成 した ハ イ ド ロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 を 添 加 し な い ブ ラン ク 液 の 生 菌 数 も測 定 し,こ れ に 対 す る生 菌 数 の 比 よ り生 菌 率 を 求 め た.生 菌 数 の 測 定 に は デ ス オ キ シ コ ー ル 酸 塩 培 地 を 用 い た 寒 天 平 板 培 養 法(35℃,2日 間 培 養)に よ り行 っ た. 3 結 果 お よ び 考 察 3・1 合 成 化 合 物 の 特 性 3・1・1 合 成 化 合 物 の 結 晶 構 造 の 評 価 CuZnAl-NO3系,MgAl-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4系 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 粉 末X線 回 折 図 形 を 図1に 示 す.湿 式 法 に よ っ て 合 成 したCuZn-A1-NO3系,MgA1-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4系 は い ず れ も天 然 の ハ イ ドロ タ ル サ イ トと同 様 の 構 造 を も っ たX線 回 折 図 形 を 示 し,ハ イ ドロ タ ル サ イ ト型 構 造 を もつ 化 合 物 を 合 成 で き た こ とが 確 認 さ れ た.表1 に は,化 合 物 の 化 学 組 成 式 と基 底 面 の(003)面 反 射 か ら 求 め た 各 種 試 料 の 基 底 面 間 隔d003を 示 す.CuZn-Al-NO3系 化 合 物19あ た り そ れ ぞ れCu2+イ オ ン を 3.22mmo1お よ びZn2+イ オ ン を3.14mmol含 み, CuMgAl-SO4系 で はCu2+イ オ ン を3.86mmolお よ びMg2+イ オ ン を3.86mmo1含 ん で い た.ま た,各
化 合 物 の 基 底 面 間 隔d003は8∼8.53Å の 範 囲 に あ り, こ の う ちCuZnAl-NO3系 の8.53Aが も っ と も大 き な 値 を 示 した.同 じNO3系 で あ っ て もCuZnAl-NO3系 の 面 間 隔 がMgAl-NO3系 の そ れ よ り大 き な 値 を と っ た の は,Miyata15)とCavani16)ら が 指 摘 し て い る よ う に,層 間 に 挿 入 さ れ たNO3-イ オ ン の 量 が 多 く,し た が っ てNO3-イ オ ン 間 の 相 互 斥 力 が 大 き く な っ た こ とに よ り,NO3-イ オ ン が層 間 に 対 して 若 干 角 度 の 傾 き を も っ て 配 列 して 取 り込 ま れ た た め で は な い か と 考 え られ る. 各 試 料 の赤 外 吸 収 ス ペ ク トル を 図2に 示 す.図 よ り 全 試 料 と も3570cm-1付 近 に0-H伸 縮 振 動 に も とつ く 鋭 い 吸 収 帯 が 認 め ら れ た.CuZnAl-NO3系 と MgA1-NO3系 で は1380cmー1付 近 にNO3-イ オ ン 基 に よ る,CuMgAl-SO4系 で は1150cm-1付 近 に SO42-イ オ ン 基 に よ る強 い 吸 収 帯 が 出 現 して い る .合 成 した 化 合 物 の 層 間 にNO3ーイ オ ン やSO42一 イ オ ン が 取 り込 ま れ て い る こ とが 判 明 した. 3・1・2 MnO4-イ オ ン に 対 す る イ オ ン交 換 特 性 CuZnAl-NO3系,MgA1-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4系 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 に つ い て,濃 度 の 異 な るKMnO4溶 液 を 用 い て イ オ ン 交 換 実 験 を 行 っ た.図3に は 初 期MnO4-イ オ ン 濃 度1.0mmol・dm-3 と きの,イ オ ン交 換 に と も な うMnO4-イ オ ン 濃 度 の 経 時 変 化 を 示 す.い ず れ の 試 料 と も,イ オ ン 交 換 反 応 の 速 度 は 早 く,約1時 間 で 平 衡 に 達 し た.CuZnAl-NO3系 で のMnO4-イ オ ン に 対 す る イ オ ン 交 換 率 は 49%と な り,こ れ ら の ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の な か で は 最 大 で あ っ た.こ れ に 対 してCuMgAl-SO4系 とMgAl-NO3系 の イ オ ン 交 換 率 は そ れ ぞ れ Table 1 Compositions and basal spacings of the hydrotalcite-like compounds .
Fig. 1 XRD patterns of the hydrotalcite-like com-pounds obtained by the wet method.
Fig. 2 FT-IR absorption spectra of the hydrotalcite-like compounds obtained by wet method.
19%と10%に と どま っ た.MnO4-イ オ ン が 正 四 面 体 構 造 を もつ た め に,層 間 隔 の 大 きい ほ う に イ ソ タ ー カ レ ー トしや す い 結 果,CuZnAl-NO3系 で はMnO4-イ オ ン に対 す る イ オ ン 交 換 率 が 高 くな っ た と考 え た.一 方,CuMgA1-SO4系 はCuZnAl-NO3系 と ほ ぼ 同 程 度 の 層 間 隔 を も っ て い る に もか か わ ら ず,イ オ ン交 換 率 は 低 か っ た.こ れ は 層 間 のSO42-イ オ ン が2価 で あ るた め,1価 の 陰 イ オ ン よ り もハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の イ オ ン 交 換 選 択 性 が 高 く17),そ の た め に MnO4-イ オ ン と の イ オ ン 交 換 が 起 こ りに く くな っ た 結 果 だ と考 え られ る. 図4に はMnO4-イ オ ン を 取 り込 ん だ 各 試 料 のX 線 回 折 図 形 を 示 す.CuZnAl-NO3系 で は,層 間 に 取 り込 ま れ たMnO4-イ オ ン の 増 加 に と も な い 基 底 面 の (003)面 の 反 射 ピ ー ク は,高 さ が 低 くな り,幅 が 広 が っ た.ま た 面 間 隔d003は,8.7Å と増 加 した.こ れ に 対 し てCuMgA1-SO4系 とMgAl-NO3系 で は 層 間 に 取 り込 ま れ たMnO4-イ オ ン の 量 が 少 な か っ た た め, X線 回 折 図 形 に は ほ とん ど変 化 が み ら れ な か っ た. イ オ ン 交 換 後 の 各 試 料 の 赤 外 吸 収 ス ベ ク トル を 図5に 示 す.905cm-1付 近 にMnO4-イ オ ン に よ る 吸 収 帯 が 出 現 し て お り,も っ と も交 換 率 の 高 か っ たCuZn-Al-NO3系 に お い て も っ と もつ よ い ピ ー ク を 示 し た. こ の こ とか ら も,イ オ ン 交 換 反 応 に よ りハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 層 間 にMnO4一 イ オ ン が 取 り込 ま れ て い た こ とが わ か る. 3・1・3 合 成 試 料 か らの 各 イ オ ンの 溶 出 特 性 CuZnAl-NO3系 化 合 物 中 の 各 陽 イ オ ン の 純 水 に 対 す る溶 出 挙 動 を し らべ た 結 果,基 本 層 に あ るAl3+イ Fig. 3 Time dependences of anion-exchange
reac-tions with 1 mM KMn04.
Fig. 4 XRD patterns of the hydrotalcite-like com-pounds after the exchange reactions with Mn04- ion.
Fig. 5 FT-IR absorption spectra of the hydrotalcite-like compounds after the exchange reactions
オ ン は ほ とん ど溶 出 して な い が,Cu2+, Zn2+お よ び Mg2+の 各 イ オ ン は 水 に あ る 程 度 溶 出 して い た こ と が わ か っ た.溶 出 実 験 開 始30分 後 のCuZnAl-NO3系 と CuMgAl-SO4系 中 のCu2+イ オ ン の 溶 出 濃 度 は そ れ ぞ れ1.46×10-2mmol・dm-3(0.93mg・dm-3)と1.32× 10-2mmol・dm-3(0.84mg・dm-3)で あ っ た .24時 間 後 で は,溶 出 したCu2+イ オ ン の 最 大 濃 度 はCuZnAl -NO3系 に お け る2.52×10-2mmol・dm-3(1.60mg・ dm}3)で あ っ た.し か し こ れ は 基 本 層 中 の 総Cu2+イ オ ン の 総 量 の0.8%に す ぎ な か っ た. ま た 図6に はMnO4-イ オ ン を イ オ ン 交 換 に よ り担 持 さ せ た ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 か ら のMnO4一 イ オ ン の 溶 出量 を測 定 した 結 果 を示 した.い っ た ん 交 換 さ れ たMnO4-イ オ ン は 再 溶 出 しに く く,溶 出 試 験 24時 間 後 の 濃 度 は,も っ と も交 換 量 の 多 か っ たCuZ-nAl-NO3系 で も1.5×10-3mmol・dm-3で ,こ れ は 層 間 に 取 り込 ま れ たMnO4-イ オ ン の 量 の1∼2%に す ぎな か っ た.こ れ は,四 面 体 構 造 で あ るMnO4-イ オ ン は ほ か の1価 陰 イ オ ン と イ オ ン 交 換 に よ り層 間 に 入 り に くい に も か か わ らず,い った ん 層 間 に取 り込 ま れ る と,そ の 四 面 体 の 頂 点 に あ る 四 つ の 酸 素 は基 本 層 のOH基 と緊 密 に 水 素 結 合 し,層 間 を 出 る の が む ず か し くな っ た た め と考 え ら れ る. 3・2 大 腸 菌 に 対 す る 殺 菌 効 果 合 成 したCuZnAl-NO3系,CuMgAl-SO4系 お よ び MgAl-NO3系 の 大 腸 菌 に 対 す る殺 菌 効 果 を 検 討 した . 図7に は 各 化 合 物 を 用 い た 場 合 の 大 腸 菌 の 生 存 率 の 経 時 変 化 を 示 す.図 か ら 明 ら か な よ う に,実 験 開 始5 分 後 で は,三 種 の ハ イ ドロ タル サ イ ト系 化 合 物 間 に よ る 生 存 率 の 低 下 に 差 は 見 られ な か っ た が,そ の 後 は 化 合 物 中 に 抗 菌 性 イ オ ン を含 む か 否 か で 生 存 率 が 大 き く 異 な る こ とが 明 らか とな っ た.す な わ ち,MgAl-NO3 系 で は30分 経 過 後 も1け た 程 度 の 生 菌 数 の 減 少 しか 認 め られ な か っ た の に 対 し,CuZrLAl-NO3系 とCuM-gAl-SO4系 で は,そ れ ぞ れ4け た お よ び3け た 以 上 の 顕 著 な 生 存 率 の 低 下 が 確 認 さ れ た. こ れ らの 結 果 を 以 下 の よ う に考 え た.Mg(OH)2(ブ ル サ イ ト)を 基 本 構 造 と す る ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 は,中 性,弱 ア ル カ リ性 領 域 に お い て は粒 子 表 面 か らのMg2+イ オ ン の 解 離 に と もな いOH一 イ オ ン 層 の 形 成 が 可 能 で あ る 特 性 が あ る(Zn(OH)2も 同様 な 性 質 を も つ).初 期 に お い て は このOH-イ オ ン 層 が お もに 試 料 の 表 面 に 吸 着 され た 大 腸 菌 に 対 して 殺 菌 作 用 を 及 ぼ した と考 え られ,三 つ の 試 料 と も殺 菌 効 果 の 差 が ほ とん ど あ ら わ れ な か っ た.し か しそ の 後,時 間 の 経 過 と と も に,CuZnAl-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4 系 で 顕 著 な 殺 菌 効 果 が 発 現 した の は,基 本 層 の 骨 格 に 含 ま れ て い る 抗 菌 性 イ オ ン のCu2+イ オ ン お よ び Zn2+イ オ ン が 粒 子 表 面 に裸 出 し,ま た 水 溶 液 中 へ 溶 出 す る よ う に な っ た か らで あ る と考 え た.し か し,こ れ ら抗 菌 性 イ オ ン を 含 む 水 溶 液 の 殺 菌 効 果 は こ の 結 果 ほ ど い ち じ る し い も の で は な い こ とが 報 告 さ れ て い る18).著 者 ら も確 認 の た め そ れ ぞ れ の 硝 酸 塩 を 水 に 添 加 して 殺 菌 効 果 を し らべ た.結 果 を表2に 示 した よ う に,1∼100mg・dm-3の 範 囲 で 濃 度 を 変 え たCu2+ イ オ ン やZn2+イ オ ン を 含 む 水 中 で は,1け た 程 度 の Fig. 6 Relationship between eluted amount of
殺 菌 効 果 が 認 め られ た に す ぎな か っ た.先 に 述 べ た よ う に,殺 菌 実 験 と 同 条 件 で はCu2+イ オ ン やZn2+イ オ ン の 溶 出 に よ り,水 中 で の そ れ ぞ れ の 濃 度 は1∼2 mg・dm-3で あ っ た.こ れ よ り,抗 菌 性 イ オ ン を 含 む ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 殺 菌 作 用 は,溶 出 した Cu2+イ オ ン やZn2+イ オ ン が 主 因 で は な く,基 本 層 の 表 面 に 存 在 す るCu2+イ オ ン やZn2+イ オ ン お よ び そ の 粒 子 表 面 に あ る程 度 形 成 さ れ たOH-イ オ ン 層 に よ り引 き起 こ さ れ た もの で あ る と考 え た. つ ぎ に,MnO4-イ オ ン と イ オ ン 交 換 前 後 の 各 種 試 料 の 大 腸 菌 に 対 す る 殺 菌 実 験 の 結 果 を 表3に 示 す. MnO4-イ オ ン と イ オ ン 交 換 後 の 各 種 試 料 は イ オ ン 交 換 前 の 試 料 よ り生 菌 率 の 減 少 が2け た 以 上 増 加 し, と くにMnO4-イ オ ン の 交 換 量 な ら び にMnO4-イ オ ン の 溶 出 量 が も っ と も多 か っ たCuZnAl-NO3系 で は 3け た 程 度 の 生 菌 数 の 減 少 が 認 め られ,よ り優 れ た 殺 菌 効 果 を 示 す こ とが 判 明 した.こ れ が 各 化 合 物 の 層 間 よ り溶 出 したMnO4-イ オ ン に よ る もの か 否 か を し ら べ る た め に,KMnO4溶 液 中 で の 殺 菌 実 験 も行 い,結 果 を 図8示 した.MnO4-イ オ ン 濃 度 が 高 くな れ ば 当 然 殺 菌 効 果 もつ よ くあ らわ れ て い た が,も っ と も高 い 6.3×10.3mmol・dm-3で も 生 存 率 は80%で あ っ た. 殺 菌 実 験 と 同 条 件 下 で,各 化 合 物 よ り再 溶 出 し た KMnO4濃 度 は0.4∼1.3×10-3mmo1・dm-3で あ っ た こ と と合 わ せ て み る と,MnO4-イ オ ン を イ オ ン 交 換 に よ っ て 担 持 させ た 化 合 物 の 場 合 も,そ れ に よ る 殺 菌 効 果 は 溶 出 した イ オ ン が 主 とは 考 え に くい.現 在 の と こ ろ,そ の メ カ ニ ズ ム は 不 明 で あ る が,こ の 場 合 もハ Table 2 Bactericidal activities of copper and zinc
ions against E. coli.
Fig. 8 Relationship between survival ratio of E. coli and contact time.
イ ドロ タル サ イ ト表 面 で の 作 用 に 起 因 に して い た. 以 上 述 べ た よ う に,本 研 究 で 新 し く合 成 した 抗 菌 性 の 金 属 イ オ ン と陰 イ オ ン の 両 方 を 含 む ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 で は,表 面 に 存 在 して い るCu2+イ オ ン やZn2+イ オ ン とOH-イ オ ン,さ ら に は 層 間 の MnO4-イ オ ン が 相 乗 的 に 働 く こ とに よ り,つ よ い 殺 菌 効 果 を 示 して い る と考 え られ る.こ の こ とは,イ オ ン 交 換 前 後 の 各 化 合 物 に よ る殺 菌 効 果 の 差 は,基 本 層 に担 持 さ れ た 抗 菌 性 金 属 イ オ ン の 種 類 と量,そ れ らの 水 溶 液 へ の 溶 出 量 お よ び 層 間 に 取 り込 ま れ たMnO4-イ オ ン の 量 と そ の 除 放 性 な どに 依 存 す る こ とを 示 め し て い る. 4 ま と め 抗 菌 性 を もつ 金 属 イ オ ン を 組 合 わ せ た 組 成 の ハ イ ド ロ タル サ イ ト系 化 合 物 を 合 成 した .ま た 層 状 構 造 で あ るハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 が 陰 イ オ ン 交 換 能 を も つ 性 質 を 利 用 して,合 成 物 の 層 間 に ,抗 菌 性陰 イオ ン を取 り込 ませ る こ と に よ り,殺 菌 機 能 を 付 与 した 新 し い 水 質 浄 化 無 機 材 料 の 開 発 を 試 み た.抗 菌 性 イ オ ン を 骨 格 に も つ ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 で あ るCuZ-nAl-NO3系 お よ びCuMgAl-SO4系 は ,こ れ らを含 ま な いMgAl-NO3系 よ り大 腸 菌 に 対 して 顕 著 な 殺 菌 効 果 を示 した.ま たMnO4-イ オ ン とイ オ ン交 換 す る こ とに よ り各 ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 殺 菌 効 果 は つ よ ま る こ と も 明 ら か と な っ た.そ の 殺 菌 作 用 は ,ハ イ ドロ タ ル サ イ ト系 化 合 物 の 表 面 に 存 在 して い る Cu2+イ オ ン,Zn2+イ オ ン と粒 子 表 面 に あ る 程 度 形 成 さ れ たOH-イ オ ン 層 お よ び 層 間 のMnO4-イ オ ン に 起 因 す る と考 え ら れ る.今 後,無 機 系 抗 菌 剤 と して の 使 用 が 期 待 さ れ る. 文 献 1) 鈴 木 喬,水 質 汚 濁 研 究,11, 293 (1988). 2) 鈴 木 喬,人 間 環 境 研 究 報 告 集,GO8, 148 (1989). 3) 鈴 木 喬,日 本 イ オ ン 交 換 学 会 誌,1, 3 (1990). 4) 杉 山 公 寿,鈴 木 喬,迫 田 直 一,石 膏 と 石 灰, No. 247, 26 (1993).
5) K. SUGIYAMA, T. SUZIKI, T. SATOH, J. Antibact. Antifung. Agents, 23, 67 (1995) . 6) 鈴 木 喬,日 本 イ オ ン 交 換 学 会 会 誌,9, 14 (1998). 7) 高 麗 寛 紀,防 菌 防 徽,24, 509 (1996). 8) 大 橋 文 彦,防 菌 防 徽,25, 105 (1997). 9) 芦 塚 一 夫,防 菌 防 徽,25, 379 (1997). 10) 田 中 敦,防 菌 防 徽,25, 417 (1997). 11) 荻 原 善 次,安 藤 聡,ゼ オ ラ イ ト,4, 1 (1987). 12) 大 谷 朝 男,防 菌 防 徽,20, 413 (1992). 13) 高 麗 寛 紀,中 河 貴 世,山 田 幸 生,防 菌 防 徽, 21, 77 (1993). 14) 内 田 真 志,防 菌 防 徽,24 , 735 (1996).
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