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日本水文科学会を編集委員会から眺める

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Academic year: 2021

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― 124 ―

日本水文科学会誌 第 50 巻,第 3 号,124–126(2020)

日本水文科学会を編集委員会から眺める

飯田 真一*

1

Perspectives for Japanese Association of Hydrological Sciences from

a viewpoint of the editorial board

Shin ichi IIDA

Ⅰ.はじめに 今回,編集委員長の井岡聖一郎氏から企画「日 本水文科学会を語る」へ寄稿依頼を受けたことを 契機として,小野寺(2015)による本企画の説 明を再読した。それによれば,『現在の危機に直 面する本学会が「さらに進むべき役割はあるの か」について明確にするとともに,会員すべてが 様々な視点,切り口,アイデアを提案し,まさに 学会としてネクストステップ(田瀬,2010)を 議論していくことを目的として』,本企画を開始 したと記述されている。私は,2013年5月発行 の43巻2号から編集委員会の副幹事あるいは副 委員長として,本学会誌の編集および発行に携 わってきた。この経験に基づいて,本学会誌の現 状を本学会員に理解して頂くとともに,今後取り うる方向性について述べ,学会としての議論の一 端に貢献できれば幸いである。 まずは,本稿で述べる個人的見解を解釈する上 での一助とするために,私が本学会に入会し,編 集委員会に参加するまでの経緯を簡単に記してお きたい。 私は筑波大学の水文科学分野で学生時代を過ご した。卒業論文の内容を発表する場として,先生 方や先輩方から推薦されたのが本学会であり,私 が最初に入会した学会である。1998年の三重大 学大会で卒業論文に基づく発表を行ったが,縦長 の教室がほぼ満員になっており,その中で緊張し ながら発表したことを記憶している。私は,その 当時から,蒸発散過程,特に樹液流速の計測によ る蒸散量の評価や遮断蒸発プロセスの研究を行っ ている。他方,研究を継続する中で,日本森林学 会や水文・水資源学会,日本地球惑星科学連合 (JpGU)等の学術大会にも参加するようになっ た。 このような状況の中で,2013年4月頃,編集 委員長への就任が決まっていた小野寺真一氏か ら,編集委員会副幹事の打診を受けた。本学会誌 に掲載されている研究内容は,上述した私の研究 分野とは合致しないものも多いため(例えば,井 岡,2017;森,2017),編集委員会での責務を全 うできるか不安に感じたのは事実である。しか し,私が最初に入会した学会でもあり,何がしか の貢献ができるのではないかと考え,この打診を 受諾し,今日に至っている。 Ⅱ.編集委員会副幹事・副委員長としての仕事 私が担当しているのは,受理された原稿が本学 会誌に掲載されるまでの校正過程全般,受理原稿 の早期公開のための手続き,ならびにJ-Stage公 開データのチェック等である。著者と出版社の間 に入り,事務的な手続きや管理が役割の大半を占 めるが,ここでの対応が遅れると出版時期に影響 1 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 Forestry and Forest Products Research Institute * 責任著者

(2)

― 125 ― 日本水文科学会を編集委員会から眺める が及ぶため,私のみで対応できるものは,可能な 限り,迅速に行うように心がけてきた。通信手段 は電子メールを専ら用いているが,日本水文科学 会用に設定したフォルダを見ると,概ね年間で 1500件,多い年では2000件を超えるメールを送 受信している。編集委員会以外のメールも当該 フォルダ内には存在しているため,これらすべて が編集委員会の仕事のみに関係しているわけでは ないが,その数は少なく無いと思われる。 仮に,校正過程やJ-Stage公開データのチェッ クを私一人で行っていたら,本学会誌には校正漏 れの多い原稿が掲載されてしまうことになる。こ れを防ぎ,正確さを確保するために,査読付き原 稿については,編集委員の戸崎裕貴氏,齋藤光代 氏の献身的なサポートを得ている。両氏のチェッ クは極めて正確で,引用文献情報の細部に渡る記 載ミスまで,到底,私には発見できないところを カバーしている。この校正体制は小野寺編集委員 長により構築されたもので,校正ミスの削減に大 きく寄与していることは疑いのない事実である。 Ⅲ.編集委員会から見えてくること 学会における学会誌は,その象徴の一つである と私個人は認識している。学会誌に掲載される査 読付き原稿の質はもちろんのこと,その掲載数の 多寡は,学術大会の参加者数と共に,学会の活力 を示す大きなバロメータであると思われる。小野 寺委員長および井岡委員長の体制で掲載された原 稿を集計した結果をFig. 1に示した。掲載数はあ る程度順調に推移しており,小寺(2020)は 『充実した誌面が継続されてきた』と評価してい る。しかし,本学会誌は2016年発行の46巻から 年間の号数を4から3に削減しているが,この後 も特集号のように編集委員会からの依頼を受けた ものが査読付き原稿の多くを占めていることが分 かる(Fig. 1)。また,査読無し原稿のほとんど は編集委員会からの執筆依頼に基づいていること も考慮すると,本学会誌を取り巻く環境は順調と は言い難い状況にあることが分かる。この状況は 小野寺(2015)が指摘した当時とほぼ変わって いない。このことを客観的に認識する必要がある と思われる。 私が編集委員会での仕事を開始してから7年間 の歳月が経過したが,この間に,編集委員に新た に加わった若手は,わずか1名である。査読付き 原稿に関する細部チェックは,若手編集委員の手 助けが必要不可欠であるが,このままでは若手編 集委員のマンパワーが不足する事態となりかね ず,抜本的な対策が必要となる可能性が極めて高

Fig. 1 Time series of number of published articles from Volume 43 Issue 2 (2013) to Volume 50 Issue 2 (2020).

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― 126 ― 飯田 い。私が初めて参加した1998年の三重大学での 学術大会の発表会場の賑わいは,もはや過去のも のとなっており,現在の本学会の状況は大きく様 変わりしていると感じている。学会員数の減少, とりわけ,若手会員の減少がもたらす編集委員会 への弊害は想像以上に大きいことを是非心に留め ていただきたい。 ここで他学会に目を向けてみると,校正過程や J-Stageでの論文公開等に関わる確認作業の一部 を業者に外注しているところもある。資金力を活 用することができれば,学会誌のより本質的な内 容の改善に編集委員会は集中することができる。 とは言え,これを実現するためには,学会に十分 な資金力がなければならない。学会員数の減少は 資金力の減退に直結しており,そのような条件下 で学会誌を一定の校正レベルで維持するために は,早急な対策が求められていると感じる。 COVID-19の影響のため,2020年9月に予定 されていた水文・水資源学会との合同学術大会が 中止となったが,両学会ともに,2021年度にお いても合同大会の開催を検討している。また, 水文・水資源学会が創刊したHydrological Re-search Letters(HRL)誌は,現在は本学会,日 本地下水学会,陸水物理学会を含む4学会で合同 出版されるようになっており,各学会から編集委 員を派遣する等,運営の工夫もなされている。 Fig. 1から分かるように,本学会誌を維持するた めには編集委員会からの執筆依頼が必要不可欠な 状態となっている。他学会の和文誌でも,掲載数 に関しては苦戦が続いていると聞き及んでいる。 学会誌は学会を象徴する重要なものであると私は 認識しているが,それ故に,和文誌の発行形態改 革の必要性が高まっていると感じている。例え ば,近年,オンラインオープンアクセスの国際誌 が多くなってきており,HRLも同様の形態を採 用している。紙媒体に固執しないオンラインオー プンアクセス形式は柔軟な発行形態であり,この 形式を取り入れることは検討に値するだろう。他 方,紙媒体の出版を継続するのであれば,年間2 号以下とするなど適切な発行回数について熟慮す ることが必要ではないだろうか?より抜本的な対 応としては,学会誌の充実を図るため学術的に関 係の深い他学会との連携なども含め,複数の学会 で一つの和文誌を維持するという選択肢も視野に 入るものと思われる。ここに記した案のいくつか が実現すれば,原稿不足の状況は改善し,資金面 でも余裕が生まれる可能性があると思われる。 Ⅳ.おわりに 編集委員会では井岡委員長を筆頭に,原稿数を 確保し,さらに校正ミスを減少させるための不断 の努力を行っている。学会員からの自発的投稿が 増加し,本学会誌がより魅力あるものになること を願ってやまない。本稿に記したことは私個人の 考えであるが,井岡(2017)が指摘しているよ うに,本学会員の中には多様な意見があるものと 考えられる。本企画は,そういった意見を述べる 場として開始された背景を有しており(小野寺, 2015),本学会員からの自発的かつ積極的な投稿 が望まれる。最後に,学会全体で建設的な議論が なされ,本学会と本学会誌がさらに発展し充実す ることを切に願う。 井岡聖一郎(2017)日本水文科学会誌の展望. 日本水文科学会誌,47,131–134. 小野寺真一(2015)連載企画『日本水文科学会 について語る』の連載にあたって.日本水文科 学会誌,45,15–16. 小寺浩二(2020)これからの日本水文科学会: 連携・連合と独立.日本水文科学会誌,50, 1–2. 田瀬則雄(2010)「ネクストステップ」.日本水 文科学会誌,40,19–20. 森 和紀(2017)水文科学:基礎科学としての 水文学.日本水文科学会誌,47,17–21.

Fig. 1  Time series of number of published articles from Volume 43 Issue 2 (2013) to Volume 50 Issue 2  (2020).

参照

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