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12歳女児に発症した乳腺偽血管腫様過形成の1例

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Academic year: 2021

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した.マンモグラフィでは左乳房全体を占める境界明瞭な腫瘤を認め,乳房超音波検査 では内部不均一の低エコーの腫瘤を認めた.乳房造影MRIではT2 強調で内部不均一な 高信号,T1 強調で等信号,内部一部造影不良な腫瘤であった.針生検では筋線維芽細 胞で裏打ちされたスリット状の裂隙構造が認められPASHが示唆されたため,腫瘤摘出 術を施行した.病理組織学的所見では葉状構造を示す間質増生部分と類臓器型線維腺腫 様の像を示す部分が見られ,間質部分には腫瘍全体で広くPASHの像がみられたことか ら,葉状腫瘍様変化や線維腺腫様変化をきたしたPASHと診断した.免疫染色では, Vimentin(+),SMA(+),Desmin(-),CD34(+),CD31(-),D2-40(-),Factor Ⅷ (-),PgR(-)であった.術後 1 年の時点で再発所見はなく,整容性も保たれている. 索引用語:乳腺偽血管腫様過形成(PASH),若年 緒  言  乳腺偽血管腫様過形成(pseudoangiomatousstromal hyperplasia:PASH)は,乳腺間質の増生と不規則に 吻合した血管腔様の間隙を特徴とする良性間質変化と 定義される.閉経前の女性に好発するとされ,若年発 症はまれである.今回,12歳女児に発症したPASHの 1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. 症  例  患者:12歳,女児.  主訴:左乳房腫大.  既往歴・家族歴:特記すべきことなし.  月経歴:初経10歳.  現病歴:2018年 9 月ごろより左乳房の腫大を自覚し た.徐々に増悪するため,近医を通じて2018年11月に 当院を受診した.  視触診所見:肥満あり(157cm,78.5kg,BMI:31.9). 左乳房全体を占める弾性軟の腫瘤を認め,皮膚の発赤 と皮下静脈の怒張を伴っていた(Fig. 1).  マンモグラフィ:左乳房全体を占める境界明瞭な腫 瘤を認め,カテゴリー 3 と判断した(Fig. 2).  乳房超音波検査:左乳房全体を占拠し,周囲乳腺を 圧排するような境界比較的明瞭,軽度分葉状,内部不 均一低エコーの腫瘤を認めた(Fig. 3).  乳房造影MRI:左乳腺に大きさ128×102mmの境  2020年 5 月26日受付 2020年 8 月 7 日採用  〈所属施設住所〉  〒939-1395 砺波市新富町 1 -61 Fig. 1 初診時身体所見:左乳房全体を占める弾性軟の 腫瘤を認め,皮膚の発赤と皮下静脈の怒張を伴ってい た.

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界明瞭の腫瘤を認め,正常乳腺は背側尾側に圧排され ていた.T2 強調で内部不均一な高信号,T1 強調で等 信号,ほぼ均一に造影されるが内部に変性を疑わせる 造影不良域を認めた(Fig. 4).  針生検:筋線維芽細胞で裏打ちされたスリット状の 裂隙構造が認められた.免疫染色では,Vimentin(+), SMA(+),Desmin(-),CD34(+),CD31(-),D2- 40(-),FactorⅧ(-),PgR(-)であった.以上から PASHが示唆された(Fig. 5).  手術所見:乳房下溝線に沿い外側頭側に延長した皮 膚切開とした.腫瘤は薄い被膜で覆われており,被膜 を損傷しないように,また正常乳腺や集合乳管を損傷 しないように腫瘤を摘出した.乳腺を吸収糸で数針縫 合し形成した.  病理組織学的所見:大きさ150×120×90mm,重さ 791gの腫瘤で,割面は乳白色から黄白色調であった (Fig. 6).組織学的には葉状構造を示す間質増生部分 と類臓器型線維腺腫様の像を示す部分が見られ,膠原 Fig. 2 マンモグラフィ:左乳房全体を占める境界明瞭な腫瘤を認めた. Fig. 3 乳房超音波検査:左乳房全体を占拠する境界比較的明瞭,軽度分葉状,内部不均一低エコ ーの腫瘤を認めた.

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線維間には紡錘形細胞に裏打ちされたスリット構造が みられた(Fig. 7).良性葉状腫瘍とPASHとの鑑別 が問題になったが,間質部分には腫瘍全体で広く PASHの像がみられたことから,葉状腫瘍様変化や線 維腺腫様変化をきたしたPASHと診断した.  術後経過:術後 1 年の時点で再発所見はなく,整容 性も保たれている(Fig. 8). 考  察  PASHは1986年にVuitchらにより最初に報告され た,血管様の間隙を伴う乳腺間質の増生を特徴とする 過形成性病変である1).PASHそのものは病理所見の 一つとされ種々の乳腺疾患に合併する場合があるが, 抑制画像,b:T1 強調画像).Dynamic撮影では内部に一部造影不良域を認めた(c). Fig. 5 針生検標本の組織学的所見  a)筋線維芽細胞で裏打ちされたスリット状の裂隙構造が認められた(H.E.染色 ×200).  b)血管内皮細胞マーカーのCD31は,内因性コントロールの血管(矢印)では陽性であったが PASH部分では陰性であった(×100).  c)筋線維芽細胞マーカーのCD34は,PASH部分で陽性であった(×100). a b c

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腫瘤を形成するものは比較的まれである2)  組織学的には,乳腺間質にスリット状,血管様の間 隙が不規則に吻合して存在し,間隙は 1 層の紡錘形細 胞に覆われ,細胞異型や核分裂像は目立たないという 特徴がある1).免疫組織学的には,間質の紡錘形細胞は 筋線維芽細胞マーカーのCD34・Vimentin・αSMA・ Desminなどが陽性,内皮細胞マーカーのCD31・Fac-torⅧ(-)などが陰性であるとされる3)  本症例では組織学的に良性葉状腫瘍とPASHとの 鑑別が問題になった.前述の通り,PASHは種々の乳 腺疾患に合併するとされているが,最終的に腫瘤形成 性PASHと診断された報告で,定型的な間質細胞のス リット状増殖以外に上皮成分の所見を含む組織所見の 詳細な記載はみられず,純粋なPASHであったか,本 症例のように線維腺腫様変化や葉状腫瘍様変化など付 随する病変があったかは不明である.本症例は葉状腫 瘍や線維腺腫様にみえる間質部分に広くスリット状の 腫瘍細胞の増殖がみられたことより,葉状腫瘍の増殖 パターンを呈した腫瘤形成性PASHと考えた.  通常PASHは30~50歳台の閉経前の女性に好発す るとされ,10代発症のPASHは非常にまれである.医 学中央雑誌で「乳腺」「PASH」をキーワードに2001 年 5 月から2020年 2 月までの間で検索したところ,本 邦での10代発症の報告は本症例以外に 3 例のみであっ た4)~6).PASHは大きさが 3 ~ 5 cm程度で緩徐に増 大するものが多いとされるが,若年発症の場合は 10cmを超えるものがほとんどであり,かつ急速な増 大が特徴的である4)~13).このため,若年発症のPASH では腫瘤自覚よりも乳房腫大,左右差を主訴とするこ とが多く,視触診では本症例のように皮膚の発赤や静 脈の怒張を伴う例が散見される.  また,通常PASHは閉経前発症が多いこと,経口避 妊薬やホルモン剤服用の既往が多いこと,さらにプロ ゲステロンレセプター(PgR)陽性例が多いことから Fig. 8 術後経過:術後 1 年の時点で整容性は保たれて いた. Fig. 6 肉眼所見:大きさ150×120×90mm,重さ791g の腫瘤で,割面は乳白色から黄白色調であった. Fig. 7 切除標本の組織学的所見:葉状構造を示す部 分にも広くPASHの像が見られた(H.E.染色 a ×40,b×100).

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ためではないかと考察される.  治療としては,再発の報告もあり十分な切除が必要 とされるが,若年者の場合は正常乳腺の温存に留意す ること,整容性に配慮することも必要である15) 結  語  12歳女児に発症したPASHの 1 例を経験した.若年 発症のPASHは急速に増大し腫瘤径が大きいことが 特徴である.手術は十分な切除だけでなく正常乳腺の 温存や整容性に留意することも必要である.  なお,本論文の要旨は第 7 回日本臨床外科学会富山 県支部例会(2019年 7 月,富山)にて発表した. 利益相反:なし 文  献

 1) Vuitch MF, Rosen PP, Erlandson RA, et al: Pseudoangiomatous hyperplasia of mammary stroma.HumPathol1986;17:185-191  2) IbrahimRE,SciottoCG,WeidnerN,etal:Pseu-doangiomatoushyperplasiaofmammarystroma. Someobservationsregardingitsclinicopatholog-icspectrum.Cancer1989;63:1154-1160  3) 森谷卓也,遠藤希之,仙波秀峰他 :Pseudoangio-matousstromalhyperplasia(PASH).病理と臨  2001;19:518-520  4) 平原正隆,南 恵樹,黒木 保他:15歳小児に発 症 し た 乳 腺pseudoangiomatousstromalhyper-plasia(径20cm) の 1 例. 日 臨 外 会 誌 2012; 73:2489-2493  5) 山岸陽二,守屋智之,山崎民大他:若年乳腺偽血 管腫様過形成の 1 例.乳癌の臨 2016;31:519 -525 APMIS2006;114:389-392  9) TehHS,ChiangSH,LeungJW,etal:Rapidly enlargingtumoralpseudoangiomatousstromal hyperplasiain15-year-oldpatient:distinguish- ingsonographicandmagneticresonanceimag- ingfindingsandcorrelationwithhistologicfind-ings.JUltrasoundMed2007;26:1101-1106 10) SinghKA,LewisMM,RungeRL,etal:Pseudo- angiomatousstromalhyperplasia.Acaseforbi-lateralmastectomyina12-year-oldgirl.Breast J2007;13:603-606 11) BakerM,ChenH,LatchawL,etal:Pseudoangi-omatousstromalhyperplasiaofthebreastina 10-year-oldgirl.JPediatrSurg2011;46:e27-e31 12) SalemisNS:Gianttumouralpseudoangiomatous stromalhyperplasiaofthebreastintheadoles-cence.ANZJSurg2011;81:469-470

13) TestoriA,AlloisioM,ErricoV,etal:Pseudoan-giomatous stromal hyperplasia-a benign and rare tumor of the breast in an adolescent:a casereport.JMedCaseRep2017;11:284- 287

14) PolgerMR,DenionCM,LesterS,etal:Pseudo-angiomatous stromal hyperplasia:mammo-graphicandsonographicappearance.AJRAm JRoentgeol1996;166:349-352

15) 雄谷慎吾,宮田完志,湯浅典博他 :乳腺pseudo-angiomatousstromalhyperplasiaの 2 例.日臨外 会誌 2007;68:1660-1664

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BREASTPSEUDOANGIOMATOUSSTROMALHYPERPLASIAINA12-YEAR-OLDGIRL ―ACASEREPORT―

 

SakiHAYASHI1),ZenseiNOZAKI1),ToshikoKAKIUCHI2),

ShintaroTERAHATA2)andKaoruKIYOHARA1)

DepartmentsofSurgery1)andPathology2),TonamiGeneralHospital

    Wereportararecaseofpseudoangiomatousstromalhyperplasia(PASH)ina12-year-oldadolescent femalewhopresentedwithachiefcomplaintofenlargementofherleftbreast.Mammographyrevealeda well-definedleftbreastmass,whichappearedhypoechoiconultrasonography.Contrast-enhancedmag-neticresonanceimagingrevealedheterogeneouscontrastuptakeinthelesion.Shewasdiagnosedwith PASHbasedontheresultsofatissuebiopsy,andthetumorwasexcised.Histopathologicalexamination oftheresectedspecimenshowedPASHwithleaf-likeprojectionsandanorganoidgrowthpattern,similar tothatdescribedinfibroadenoma.   Immunohistochemicalevaluationrevealedhyperplasticcellswithimmunopositivityforvimentin, smoothmuscleactin,andCD34+andimmunonegativityfordesmin,CD31,D2-40,FactorVIII,andproges-teronereceptor.Nolocalrecurrencewasobservedat1-yearpostoperativefollow-up. Key words:pseudoangiomatousstromalhyperplasia(PASH),juvenile  

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