• 検索結果がありません。

半世紀を迎える沖縄振興の今後-計画策定と人材育成の視点から-: 沖縄地域学リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "半世紀を迎える沖縄振興の今後-計画策定と人材育成の視点から-: 沖縄地域学リポジトリ"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Author(s)

島田, 尚徳

Citation

沖縄大学法経学部紀要(29): 17-31

Issue Date

2018-09

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/23427

(2)

1 はじめに  2018年5月15日、沖縄地域の施政権が日本に返還されて46年となった。  1972年5月に施政権が日本に返還されて以降、現在も沖縄地域は国策として沖縄振興が進めら れている。そして2022年、沖縄地域は日本に復帰して50年、つまり半世紀を迎える。  現在の「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)」は2021年度までの計画だ。その後の 沖縄振興のあり方はどうあるべきであろうか。また、沖縄県内で働く自治体職員はどのような意 識で働いていくべきだろうか。  本稿は半世紀を迎える沖縄振興と自治体職員の今後のあり方について、特に産業振興の視点か ら論じる1 。「2これまでの沖縄振興の成果」では現在までの沖縄振興による実績を整理する。「3 沖縄経済の現状と課題」では各種統計データより現在の沖縄経済の現状と課題を整理する。「4 自立型経済の確立に向けて」では今後、目指すべき沖縄経済の方向性についてまとめ、その取り 組みの萌芽を紹介する。また、自治体が産業振興に携わる意味を論ずる。「5おわりに」では今 後の沖縄振興を考えていく際、自治体職員はどのようなスタンスで携わっていく事が重要なのか という点を論ずる。そして、今後の「沖縄振興」の方向性についても整理したい。 2 これまでの沖縄振興の成果  1972年5月15日に施政権が日本に返還され沖縄県として出発したものの、経済的には四つの問 題が存在していたとされる2 。第一は、ニクソンショックやオイルショックという世界的なパラ ダイムの転換の時代に遭遇した点。第二は、社会基盤が立ち遅れており、その整備に予想以上に 時間がかかった点。第三は、オイルショック後もプラザ合意、冷戦の終結、バブルの崩壊など時 代環境の変化が続き、地方経済が翻弄されていた点。第四は、輸出型製造業の分野における沖縄 の地理的・自然的な不利性である。 【論文】

半世紀を迎える沖縄振興の今後

-計画策定と人材育成の視点から-

The future of Okinawa Promotion

- From the perspective of planning and human resource development -

島 田 尚 徳* 

Shotoku SHIMADA 専 門 分 野:行政学、地方自治論

(3)

 このような環境の中で、沖縄の経済的な自立に向けた施策が実施されてきた。施策の大きな 方向性としては以下の2点があげられる3 。第一は、「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律」 に基づいて「激変緩和策」として内国消費税に関する特例などが定められた点である。そのなか でも「酒税の減免措置」や「揮発油税及び地方道路税の軽減措置」は現在まで延長されている。 第二は、「沖縄開発三法」と呼ばれる「沖縄振興開発特別措置法」、「沖縄開発庁設置法」、「沖縄 振興開発金融公庫法」に基づいて10年ごとの計画などが策定され高率補助や予算の一括計上とい う仕組みで沖縄振興政策が展開された点があげられる4  1972年度~2001年度までの第一次から第三次までの「沖縄振興開発計画」、および「沖縄振興 計画」(2002年度~2011年度)における施策等は図表1のとおりである。 図表1 4次にわたる計画における制度等と主要な事業および施策 制度等 主要な事業および施策 第1次沖 縄振興開 発計画 (1972~ 81年度) 予算の一括計上、高率 補助制度 復帰特別措置に伴う税 制特例等 工業開発地区の創設 自由貿易地域の創設 水、エネルギー、交通、生活環境、教育、医療、農業、漁業、工業等各 種社会資本の整備 離島架橋、離島空港、港湾、電気、水道等離島基盤整備の開始 沖縄復帰記念植樹祭(72)、若夏国体(73)、沖縄国際海洋博覧会(75) 沖縄自動車道(石川-名護)完成(75) 「中城湾港開発基本計画」(80) 琉球大学医学部設置(81) 第2次沖 縄振興開 発計画 (1982~ 91年度) 自由貿易地域(那覇地 区)の指定(87) 計画期間中、離島架橋(3か所)、離島海水淡水化施設(5か所)完成、 本島北部5ダム等完成 泊大橋完成(86)、那覇空港拡張(86) 沖縄自動車道(那覇-石川)完成(87) 沖縄海邦国体(87) 県立芸術大学開学(86) コンベンションセンター(87)、県庁舎(90) 「リゾート沖縄マスタープラン」(90) 第3次沖 縄振興開 発計画 (1992~ 2001年度) 「沖縄政策協議会」「特 別調整費」(96) 航空機燃料税等の軽減 措置の創設(97) 情報通信産業振興地域 の創設(98) 観 光 振 興 地 域 の 創 設 (98) 特別自由貿易地域の創 設(98) 沖縄型特定免税店制度 (99) 高速道路料金引き下げ (99) 計画期間中、離島架橋(10か所)、漢那、倉敷ダム、北谷海水淡水化セ ンター等完成 国営灌漑排水事業宮良川地区竣工(92)、ウリミバエ根絶(93)、中城湾 港1次埋め立て分竣工(94) 首里城公園(92)、全国植樹祭(93)、平和の礎(95) 沖縄職業能力開発大学校設置(99)、名桜大学開学(94)、県立看護大学 開学(99) 那覇新都心地区(基地跡地)供用開始(97) 那覇空港国内線旅客ターミナルビル完成(99) 那覇空港自動車道供用開始(2000) 万国津梁館完成(2000) 九州・沖縄サミット開催(2000) 琉球王国のグスクおよび関連遺産群世界遺産登録(2000) 「沖縄県産業創造アクションプログラム」(97) 「沖縄県マルチメディアアイランド構想」(98) 沖縄振興 計画 (2002~ 11年度) 情報通信産業特区の創 設(2002) 金融業務特別地区の創 設(2002) 産業高度化地域の創設 (2002) 計画期間中、古宇利架橋等3架橋、羽地、大保、金武ダム完成 国立沖縄工業高等専門学校開学(2004) 沖縄都市モノレール(2003) 博物館、美術館完成(2007) 那覇空港貨物ターミナル(2009) ANA国際航空貨物ハブ事業開始(2009) 那覇うみそらトンネル開通(2011) 沖縄科学技術大学院大学開学(2011) (出所)高良倉吉編『沖縄問題-リアリズムの視点から』、76-77頁より作成。

(4)

 1972年度~2001年度までの第一次から第三次までの沖縄振興開発計画は、「本土との格差是正」 と「自立発展の基礎条件の整備」が目的であった。また、沖縄振興開発特別措置法第4条におい て「沖縄県知事は、振興開発計画の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする」とされて おり、原案の策定権は有していたが、第4条2項において「内閣総理大臣は、前項の振興開発計 画の案に基づき、沖縄振興開発審議会の議を経るとともに、関係行政機関の長に協議して、振興 開発計画を決定する」とされており、計画の作成主体は国であった。  2002年度からは従来までの「沖縄振興開発特別措置法」が廃止され、「沖縄振興特別措置法」 に基づいて「沖縄振興計画」(2002年度~2011年度)が策定された。同計画策定当時、副知事だっ た牧野浩隆は、「従来の社会資本の整備拡充を継承することに加え、自立型経済の構築に向けた “産業振興策”に重点が置かれた」計画であると解説している5。「民間主導の自立型経済の構築」 が基本方向に掲げられた。  具体的な施策の特徴としては、特区制度をはじめとする「一国二制度」的な政策や、社会資本 整備中心の手法とは大きく異なる航空燃料税の減免や特定免税店の創設などが導入された点など があげられる6 。ただ、同計画の策定主体も国のままであった。  現在の「沖縄振興計画(21世紀ビジョン基本計画)」は2012年度からスタートしており、2021 年度までの計画となっている。同計画においても「自立型経済の確立」が基本的指針として盛り 込まれている。また、大きな特徴として、策定主体が国から沖縄県に変更になった点、高率補助 制度などは残りつつも、沖縄振興に資する事業を沖縄県が自主的な選択に基づいて実施できる仕 組みとして、沖縄振興一括交付金が導入された点があげられる。2021年度までの計画期間中、沖 縄関係予算は3000億円台を確保されることになった7 。  なお、内閣府沖縄担当部局予算額は、1972年度から2017年度までの累計で12.2兆円となってい る8 。分野別の沖縄振興の成果は以下のようになる9 。 図表2 県内総生産額(名目)の推移(1972年度~2014年度) (出所)内閣府「県民経済計算」より作成。※遡及推計等は行っていない 0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 1972 1975 1980 1985 1990 1995     2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (百万円) (年度) 4兆510億円 4兆510億円

(5)

 道路の整備には、約3.5兆円が使われ、国道の長さは約2倍となり、県道の質は大幅に改良さ れた。沖縄本島を縦貫(国頭村奥~糸満市伊原)する時間が、5時間弱だったのが3時間程度に まで短縮されている。港湾は、1兆円強をかけて整備されている。空港についても約4000億円か けて整備され、現在も那覇空港の滑走路の増設などの事業が進められている。ダムについても、 総額約4700億円かけて沖縄本島北部地域を中心に多目的ダム等が整備された。復帰直後には給水 制限が100日超もある年もみられたが、1994年以降、給水制限は行われていない。都市公園に関 しても、沖縄県総合運動公園、首里城、美ら海水族館などが整備され、一人当たり供用面積も全 国並みとなっている。農業基盤整備には、約1.4兆円が使われ、畑地のかんがい整備率は約6割 と全国平均を上回る。沖縄振興が継続的に実施された結果、各種基盤整備は顕著な進展が見られ たといえる10  県内総生産についても2014年度は4兆510億円となり、2009年以降、6年連続プラス成長が続 いている。1972年復帰時と比較すると9.1倍にまで拡大した。全国の同時期の伸びは5.3倍であっ たので、伸び率に関しては全国平均を上回っていた(図表2を参照)。 3 沖縄経済の現状と課題  近年、好調な観光客需要などにけん引され拡大傾向が持続している。日銀那覇支店が4半期ご とに公表している短期経済観測調査結果によれば、業績が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」 とした企業の割合を差し引いた業況判断指数(DI)は2012年6月調査以来、現在(2018年3月調査) までプラスが持続している11 。全国(全規模・全産業)との業況判断指数(DI)と比較しても、 全国よりもプラス幅が大きい状況が続いている。 図表3 沖縄県内への入域観光客数の推移 (出所)沖縄県「沖縄県入域観光客統計」より作成 1,5811,8102,029 2,9353,375 4,497 5,572 5,7055,892 5,934 5,689 5,7055,5285,925 6,580 7,168 7,936 8,769 9,580 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 (千人) (%) (年度) ※折れ線グラフは観光客総数に占める外国客の割合(左目盛) 外国客 国内客 2.1 3.8 3.7 5.5 4.0 4.3 2.5 1.7 3.2 4.0 4.3 5.0 5.5 6.5 9.5 13.8 21.0 24.3 28.1 外国客 国内客 2.1 3.8 3.7 5.5 4.0 4.3 2.5 1.7 3.2 4.0 4.3 5.0 5.5 6.5 9.5 13.8 21.0 24.3 28.1

(6)

 県内の金融機関系シンクタンクの調査においても「景気は、拡大の動きが強まる12」、「県内景 況は、拡大している13 」、「県内景気は拡大している14 」とそれぞれ分析がなされている。  主な要因としては、観光客の増加があげられる。2017年度の入域観光客数は958万人となり、 初めて900万人を突破し過去最高を更新した。外国人観光客も急増し、観光客数の約3割を占め るようになっている(図表3を参照)。今後も、那覇空港の増設、クルーズ拠点港の整備なども 図表5 全国の人口推移(1980~2015年実績値、2020年~推計値) (出所)国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」より作成 図表4 沖縄県の人口推移(1980~2015年実績値、2020年~推計値) (出所)国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」より作成 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 0 20,000,000 40,000,000 60,000,000 80,000,000 100,000,000 120,000,000 140,000,000 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 (人) (%) (年) 全国・高齢化率※右目盛 (75歳以上人口割合) 全国・高齢化率※右目盛 (65歳以上人口割合) 老年人口(人) 生産年齢人口(人) 年少人口(人) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 (人) (%) (年) 県・高齢化率※右目盛 (65歳以上人口割合) 全国・高齢化率※右目盛 (65歳以上人口割合) 年少人口(人) 生産年齢人口(人) 老年人口(人)

(7)

あり、好調に推移する見通しであり、多くの観光客の県内での消費活動が景気に大きく寄与して いるといえる。  また、人口の増加というのも大きなポイントである。2015年の国勢調査結果によれば15 、日本 の都道府県で人口が増加したのは8都県にとどまっている。増加率でみると沖縄県は2.9%で最 も高く、次いで東京都(2.7%)、埼玉県および愛知県(1%)となっている。また、国立社会保 障・人口問題研究所「将来推計人口」によると、沖縄県は2030年まで人口が増加すると予想され ている(図表4を参照)。一方、全国平均ではすでに人口減少社会に突入している(図表5を参照)。 人口の増減は地域経済に大きな影響を与える。特に人口の増減とサービス業付加価値額の増減は 相関関係があるとされており16 、実際、人口の増加や観光客の増加に伴い、県外企業の県内進出 が相次いでいる状況である。好景気が持続していることから、有効求人倍率は1972年の復帰以降、 初めて1倍を突破し、完全失業率も3.8%にまで低下している(2017年平均)17 。  各種経済指標は改善してきているが課題もある。一人当たり県民所得は2014年度で約213万円 だが都道府県別では全国最下位であり、全国平均と比較しても約7割の水準にとどまっている。  また、沖縄振興策は財政支出による社会資本の整備を行ってきたため、県民総所得に占める財 政依存の割合を示す財政依存度は1972年度時点では23.5%だったが、2014年度には37.6%に増大 してしまっている。  沖縄振興施策に携わっていた元県庁職員も、上記の指標などを例示し、沖縄振興計画終了時点 では「四次、40年に及ぶ「沖縄振興」の成果を、県民が生活のレベルで十分に実感できるまでに は至っていなかった」と結論づけている18 。 図表6 1人あたり県民所得の推移 沖縄県・全国(1972~2014年度) (出所)内閣府「県民経済計算」より作成。※遡及推計等は行っていない 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 1972 1975 1980 1985 1990 1995     2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (千円) (年度) 全国平均 沖縄県 2,1292,129

(8)

4 自立型経済の確立に向けて  現在の「沖縄振興計画(21世紀ビジョン基本計画)」においても「自立型経済の構築」が基本 的指針として掲げられているが、「自立型経済」が達成された状態とはどのような状態であろうか。  『沖縄21世紀ビジョン基本計画【改訂計画】』(2017年5月)では経済的自立に関して、「成長の エンジンともいえる移出型産業を地域経済成長の動因として組み込むと同時に、経済を安定的に 保つ翼として例えられる域内産業を成長の翼として機能させ、自立型経済の構築を図ります。加 えて、地方分権の流れを捉え、過度の従属性を克服した行財政システムを確立」すると掲げている。  ただ、同計画においては、自立型経済に関する数値目標等は記載されていない。しかし、この 文面から推察するならば、移出額や財政依存度といった点が自立型経済の構築に向けて重要な指 標であるといえるであろう。「移出型産業を地域経済成長の動因として組み込む」というのは、商品・ サービスを県外に販売し、沖縄に資金を呼び込む仕組みづくりを構築することとだといえる。  では、移出額の現状はどうなっているだろうか。図表8は「沖縄県産業連関表」より作成した 産業別県際収支である。移出が移入より大きければ移出超過(黒字)であり、地域内で消費する 以上に生産しており、地域外から稼いでいる産業だといえる。一方、移入が移出より大きければ 移入超過(赤字)であり、地域内の消費を満たす域内生産がなく地域外に生産を依存している産 業だといえる。  その視点から見ると、多くの産業で沖縄県内は域外に依存している状態だといえる。第一次産 業は、農業、林業は域外収支がマイナスであり、地域外に生産を依存している。一方、漁業に関 しては、域外収支がプラスであり、僅かではあるが稼いでいる産業だといえる。第二次産業は、 域外収支がプラスの産業はほとんど存在していない。さらに、産業として製造業比率が低いこと 図表7 県民総所得に占める財政依存度・基地依存度ならびに観光収入の推移 (出所)琉球銀行調査室編『戦後沖縄経済史』、沖縄県『沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)』(2017年3月)、 沖縄県『経済情勢 平成28年度版』(2017年5月)から作成。1960~1970までは1ドル=360円で計算した。 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 1960 1965 1970 1972 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2014 (%) (年/年度) (億円) 財政依存度 (%) 観光収入(億円) 基地依存度(%) 5.7 37.6 5.7 37.6

(9)

から、かなり大きな需要を域外に依存している状態となっている。第三次産業は、域外から稼い でいる産業は「運輸」や「対個人サービス業」などがある19。現状においては、移出型産業は沖 縄県内の経済成長の動因にはなりきれていないといえる20 。  ただ、沖縄が成長著しい東アジアの中心という“地の利”を活かした沖縄国際物流ハブが那覇 空港に整備されたことで、県内企業の県外進出、海外進出への関心が高まっている。実際、2016 年に実施された「県内の県外・海外へ商品・サービスを販売していると推察される企業を対象に 実施したアンケート調査」においても、回答企業の16.2%(53社)が海外への商品・サービスの 販売をすでに展開し、さらに13.4%(44社)が今後、海外への販売を検討しているとの回答であっ た21 。  那覇空港の国際線の貨物取扱量は、国際物流ハブがスタートして以降、大幅に伸び、16年度は 196,606トンとなった。国際貨物取扱量では、成田、羽田、関空に次ぐ第4位の規模にまで成長 している。ただ、海外の売上が全売上高の5%未満との回答が62.3%(33社)と最も多く、海外 取引による売り上げ規模は依然、小さい。しかし、現在のトレンドや調査から推察すると、海外 ビジネスに挑戦する県内企業は今後も増加していくと考えられる。観光関連産業とは別のビジネ スモデルによって、地域経済の拡大への貢献が期待されるが、いまだ道半ばの状態である22  一方、財政に関してはどうだろうか。屋嘉宗彦の分析によれば、国からの財政移転は県・市町 村財政支出合計の約7割程度である23。県民総所得に占める財政依存度が高く、なおかつ、国か らの移転財源の割合も高い状況が続いている。  民間主導で地域経済が拡大しているならば、県民総所得に占める財政依存度は下がるはずだが、 現状ではそうなっていない。県内の景気は好調さが持続しているとはいえ、依然として財政が沖 図表8 沖縄県の産業別県際収支(2011年) (出所)沖縄県「沖縄県 2011(平成23)年産業連関表」より作成 (出所)沖縄県「沖縄県 (平成 )年産業連関表」より作成 (百万円) 産 業 県際収支(移出-移入) 農業 林業 漁業 鉱業 食料品・たばこ・飲料 繊維製品 製材・木製品・家具 パルプ・紙・紙加工品 化学製品 石油製品・石炭製品 窯業・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 一般機械 電気機械 輸送機械 精密機械 (百万円) 産 業 県際収支(移出-移入) その他の製造工業製品 建築及び補修 土木建設 電気・ガス・熱供給 水道・廃棄物処理 商業 金融・保険 不動産 運輸 情報通信 公務 教育・研究 医療・保健・社会保障・介護 その他の公共サービス 対事業所サービス 対個人サービス その他

(10)

縄経済に占める割合は大きい。  また、沖縄振興策は、高率補助制度以外にも税における優遇措置(航空燃料税の軽減や酒税特 別措置など)も存在する。一括交付金などが含まれる国庫支出金を都道府県別に人口一人当たり で比較すると全国一位となる(岩手、宮城、福島、熊本を除く順位)24。地方債残高は類似県よ り少ない25 。  類似県と比較したら財政的にはそこまで優遇されていないとも言われるが26 、国の財政事情な どを勘案したとき、2022年度以降を見据えると、従来通りの高率補助制度や税制優遇措置が持続 されるかどうかは、不透明である27 。  従来までは、中央政府からの移転財源を利用し、政策を進めてきた。しかし、島袋純は、現在の「沖 縄振興体制」では、高率補助の仕組みにより、住民ニーズではなく高率補助のありなしが、事業 決定の最大の基準となっていると指摘している28 。また、現在の一括交付金を中心とした仕組み は「現場のニーズに関係なく、国対沖縄の政治的な情勢、政治的な意図によって、大きく左右さ れてしまう行財政制度であり、沖縄の自治にとって安定した発展が望める展望がない」と厳しく 批判している29。さらに、「高率補助の獲得の努力は、自治の基盤を自ら掘り崩していき、構造 的長期的な「負のスパイラル」となって、さらなる高率の補助金を求め、さらなる教育福祉費の 削減を招き、さらに深刻かつ拡大した社会的分断をもたらしている。沖縄の多くの人々が社会か ら孤立を余儀なくされ、人間としての尊厳を奪われている」とも指摘している30  したがって、住民のニーズにあった政策に取り組んでいくためにも、高率補助とは異なる財源 の確保が必要だといえる。そのためにも『21世紀ビジョン基本計画』にあるように、「自立型経 済の構築」という点を追求し31、自治体としても、地方税収を増やし、自主財源を増やしていく ことが求められている。自主財源を増やしていくことは、今後の自治体運営にとって必要不可欠 であり、地域経済の活性化の支援とは、安定した自治体運営を続けていくための取り組みなので ある。そのためにも自治体は、最終的には一人当たり県民所得の向上につながるような地域経済 の拡大に向けた施策が求められているのである32 。  屋嘉宗彦は「沖縄の自立」について以下のように指摘している。  沖縄の自立を、文字どおりに、日本への経済的依存に甘んじない完全な自立とみる立場から すると、高い財政依存は大きな問題と考えなければならない。もちろん、経済的に依存してい るから政治的その他の面で自立が制約されるということはない。いかなる状況のもとでも、個 人がその自立と尊厳を尊重されなければならないのと同様、地域もその政治的・文化的自主性 を制約されてはならない。すべての人が、あるいは地域がその尊厳を保ち自立できるよう援助 するのは、現代では一般的な義務と考えられている。ただ、援助に甘んじて、あるいは援助を 得るために自主性を放棄し、自立への努力を怠るものは、自らその尊厳を放棄し傷つけるもの と言わざるをえない。その観点からすれば、現に経済的に自立しているかどうか、あるいはそ の展望が間近にあるかどうかということ以上に、自立への真摯な姿勢を持ち、努力しているか どうかということが最大の問題となる33  つまり、「沖縄の自立」に向けては、「真摯な姿勢を持ち、努力しているかどうか」が問われる

(11)

のである。 5 おわりに  大森彌は自治体職員の「政策研究」を行っていくときの重要なポイントとして、「横の結びつき」 と「現地・現場主義」の重要性を指摘している34 。  「横の結びつき」とは、同じ部署の人や親しい仲間だけでなく職場や職種、考え方の異なる職 員が横断的に集まることである。そうすることで、のびやかで自由な論議が可能となると指摘し ている。  「現地・現場主義」とは、文字通り、現地に出て、自分の目で確かめることの重要性である。現地・ 現場で出かけていき話を聞き、考えることで、「問題の規定」、すなわち政策として何に取り組む べきかという点が明確になるのである。その現地・現場主義の精神を現わしている例として大森 は福岡県柳川市で水路再生に取り組んだ広松伝氏の以下の言葉を引用している。  「私は、全国の行政関係者に訴えたい。真に優れた地域施策とは、地域に根ざした施策である。 それは、地域の土地・風土・人々の生活を理解することから始まる。……プランニングに机は 要らない。必要なのは足と目と、土地の人と対話する耳と口、そして何よりも土地の人の気持 になりきる心である」35  復帰50年以降の沖縄を考えていくためには、自治体職員も現場を大切にし、縦横無尽にネット ワークを張り巡らせ、同僚だけでなく、ほかの市町村職員や市民とともに学び合いながら、アイ ディアを生み出していくしかない。もちろん、ネットワークとは行政職員だけでなく、民間企業 の方々、研究機関の方々など、多くの方々とつながっている方が望ましい。  沖縄県内で自治体職員の人材育成にも尽力している南風原町職員の前城充は「立方体ネット ワーク」という表現を用いて国家公務員、県庁職員、市町村職員そして民間の方々が連携して政 策形成をしていくことの重要性を強調している36 。  住民の抱えている「問題」は、住民にもっとも近い基礎自治体の職員がもっともよく知ってい なければならない。政策の立案においては、「社会で解決すべき公共的問題37 」の把握が致命的 に重要であり、その把握を間違うと、政策は意味をなさなってしまう。また、政策立案に携わる アクターの価値観や情報によって解決方向(目標)は異なってくる38  したがって、2022年度以降のあらたな県全体の「計画」が策定される際には、自治体職員(特 に市町村職員)が「現場」の人の声を聴き、住民の問題を正確に把握し、その問題を解決するた めの政策を盛り込んでいくための提案を行なっていく必要があるのではないだろうか39  ところで、大田県政時代、「国際都市形成構想」の具体化にあたって沖縄県は「霞が関」と交渉し、 施策立案が試みられたが、最終的に同構想は「失速」していったとされる。その理由のひとつと して、佐道明広は、「個別・具体案件について、当該案件に習熟した霞が関官僚と正面から渡り 合うのはかなり厳しかった」のではないかと推察している40。つまり、現在の国の制度と調整が 必要になる「計画」や「政策」を立案していくためには、自治体職員は相応の「理論武装」をし ていかなければならないという点を示唆している。自治体職員は、「現場の声」を大切にしつつも、

(12)

政策決定のための情報分析手法、政策案の設計のための技術、政策の評価の手法といった公共政 策学における「inの知識」(knowledge in process)を学び、「政策提言(政策評価)型」リサー チ手法を習得し41 、その手法に基づいて「理論武装」した政策を立案していかなければならない。  現在の「沖縄振興体制」は、住民のニーズに基づいた政策展開が行いにくい制度かもしれない。 制度が、「人々によって考案された制約であり、人々の相互作用を形づくる」ものである以上42 、 政治過程や政策立案時には「制度」がアクターの行動を規定するのは事実である43 。  しかし、「行政は人なり」ともいわれる。職員の「意識と能力とに行政活動の質が左右される 可能性が大きい」のである44 。今後の沖縄の振興にかかる政策についても自治体職員の意識や能 力次第でもある。  特に近年、沖縄においては、「子どもの貧困」が「社会で解決すべき公共的問題」だと認知さ れつつある45 。「子どもの貧困」は、従来の「振興」の視点だけでは解決できないような問題で もある。2022年度以降を見据えた時、それこそ「公共」が担うべき役割かもしれない。今後の沖 縄においては、「公共」が担うべき役割はなにか、という点も議論しつつ、政策を実施するため の財源を確保していかなければならないのである。  すなわち自主財源を伸ばしていくために地域経済の拡大を支援する施策も重要なのである。し かし、産業振興、公共事業を通しての「自立型経済の構築」という目標は、「生活保障46」を達 成するための「手段」の一つに過ぎない47「自立型経済の構築」というのは、最終的な目標で はなく市民の生活水準の向上や、地域経済を拡大させ自主財源を増加させていくための「手段」 なのである。  2022年度以降の沖縄地域の総合的な計画を策定する際の目標としては48、上記に記したように 「生活保障」という視点が重要ではないかと考えているが、その具体的な構想については、今後 の課題としたい49 。ただ、自治体職員は、現場の「問題」を適切に把握した上で、「政策」、「計画」 を策定していくべきであるという点をあらためて強調して、本稿の結びとしたい。         * 沖縄大学法経学部 非常勤講師 1 一般的な日本の自治体職員の職場の特徴と、その職場において自治体職員に求められる能力に ついては、大森彌『自治体職員再論~人口減少時代を生き抜く~』(ぎょうせい、2015年)を参照。 2 高良倉吉編『沖縄問題-リアリズムの視点から』(中公新書、2017年)、68-69頁を参照。 3 高良編、前掲書『沖縄問題』、70-72頁、ならびに宮田裕「沖縄政策のメカニズム」『經濟と社會』 (2015年3月・第30巻)、54-55頁を参照。 4 2001年の省庁再編により、沖縄開発庁は廃止され、内閣府沖縄担当部局が設置された。ただ、 沖縄問題に対応する特命担当大臣制は維持されている。 5 牧野浩隆『バランスのある解決を求めて-沖縄振興と基地問題-』(文進印刷、 2010年)、371頁。 6 山崎幹根・小磯修二・西村宣彦「新たな沖縄振興政策の比較研究」『助成研究論文集』(北海道 開発協会開発調査総合研究所、2009年)、211頁。 7 高良編、前掲書『沖縄問題』、215頁や首相官邸のホームページにおいても「平成33年度まで毎

(13)

年3,000億円台の予算を確保し、沖縄の成長を後押しします」と記載されている(首相官邸ホー ム ペ ー ジ「 沖 縄 振 興 予 算 と 主 な 施 策 」・https://www.kantei.go.jp/jp/headline/okinawa_ shinko/yosan_sesaku.html・2018年6月25日閲覧) 8 内閣府沖縄担当部局『沖縄の振興 2017年度版(8月改訂版)』、3頁。 9 以下の成果については『群星』(2017年特別号)を参照。なお、同誌において紹介されている各種、 社会資本の投資額については、あくまでも推計であり、大まかな目安と付記されている。 10 高良編、前掲書『沖縄問題』、79頁。 11 日本銀行那覇支店「短期経済観測調査結果(短観) 2018年3月調査」。 12 りゅうぎん総合研究所「県内の景気動向・概況(2018年4月)」『りゅうぎん調査』(No.584・ 2018年6月5日)。 13 おきぎん経済研究所「おきぎん県内景況・速報 2018年4月」(2018 年5月28日)。 14 海邦総研「県内景気動向調査(2018年1-3月実績、4-6月見通し)」(2018年4月12日)。 15 沖縄県「平成27年国勢調査 人口等基本集計結果の概要 沖縄県の人口と世帯数(平成27年10 月1日現在)・(確定数)」(2016年11月11日)、1頁参照。 16 細尾忠生「人口減少が地域経済に与える影響」『季刊 政策・経営研究』(2016年 vol.4)、137-8 頁を参照。 17 県内の労働環境については、島田尚徳「沖縄県内の労働環境の現状と課題-政策立案に向けた 一考察-」(近刊予定)を参照。 18 高良編、前掲書『沖縄問題』、80頁を参照。ただ、財政力指数0.3未満の類似10県(岩手県、秋 田県、和歌山県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、長崎県、宮城県、鹿児島県)との比較で は、県内総生産、県民所得からみると沖縄県経済の規模は必ずしも小さくない。にもかかわらず、 一人当たり県民所得が低い理由は、人口の増加率が高く、平均年齢が若く、年少人口(14歳以 下)の人口を多く抱えているためでもある(宮城和宏「沖縄経済の誤解と現実」『經濟と社會』 (2015年3月・第30巻)、80-82頁)。 19 戦前、米国施政権下時代などを含めた移出額、移入額の変遷については、島田尚徳「沖縄振興 政策のこれまでとこれから」『かいぎんエコマガ』(2011年7月号・vol.76)、6-9頁を参照。 20 総務省統計局が各都道府県・市町村ごとの産業別の「稼ぐ力」の分析を行っているがその統計 データにおいても、域外から稼いでいる産業は少ない(総務省統計局ホームページ「地域の産業・ 雇用創造チャート-統計で見る稼ぐ力と雇用力-」(http://www.stat.go.jp/info/kouhou/ chiiki/・2018年6月25日閲覧)を参照) 21 海邦総研『県内企業の域外取引の現状と課題について 報告書』(2016年5月)、44-45頁。 22 県内企業の海外展開の現状については、海邦総研、前掲『県内企業の域外取引の現状と課題に ついて 報告書』のほかに、島田尚徳「国際物流ハブを活用した県内企業の海外展開」『月刊金 融ジャーナル』(2017年2月号)、48-51頁を参照。 23 屋嘉宗彦『沖縄自立の経済学』(七つ森書館、2016年)、16-17頁。 24 沖縄県「沖縄県と他府県の国からの財政移転の比較」(http://www.pref.okinawa.jp/site/ kikaku/chosei/kikaku/documents/q 8zaiseiitennnohikaku.pdf・2018年6月25日閲覧) 25 前村昌健「地方債」池宮城秀正編著『国と沖縄県の財政関係』(清文社、2016年)、100頁を参照。

(14)

26 池宮城編著、前掲書『国と沖縄県の財政関係』が全体としてそのような視点で沖縄県財政を分 析している。また、当然ではあるが、筆者は、沖縄県財政が依存しているといっているわけで はない。あくまでも本稿は今後の沖縄の自治を考えていく際には、現状の制度を所与のものと して考えるべきではないという点を述べているに過ぎない。 27 沖縄タイムスの連載記事([沖縄振興 45年目の針路](39)/第3部 「自立」への模索/高 率補助/国民の理解「継続」の鍵に)によれば、「政府関係者は、学校の耐震化は必要としな がら「県がいう今後必要なインフラは、後は鉄軌道くらいではないか。これ以上、沖縄で必要 なものはあるのか」と、高率補助の次期振計での継続を疑問視する。自治体の持ち出しが少な いため、結果的に無駄な事業も生まれているとも。/インフラ整備でも、全国水準を満たして いる分野もあるとして、人口も増え、経済も成長している中で、「それでも沖縄だけは高率補 助を継続で、ということに国民の理解は得られるのか」と疑問を投げ掛ける」とコメントして いる政府関係者もおり、高率補助は絶対的な制度ではない(沖縄タイムス・2017年8月12日・ 2面)。 28 島袋純「沖縄振興体制のゆがみ 貧困と社会的排除の構造的問題」加藤彰彦・上間陽子、鎌田 佐多子ほか編『沖縄子どもの貧困白書』(かもがわ出版、2017年)、251-7頁。なお、島袋純は、「沖 縄振興体制」について、「沖縄返還交渉において米軍が要望した沖縄の全土基地化及び自由使 用の条件を日本政府が受け入れそのためになされた立法」や「基地問題」に関する施策を「ム チ」、「税制等を含む復帰特別措置及び沖縄振興開発等の特別措置法」を「アメの仕組み」と表 現したうえで、「ムチの部分を切り離し管轄外とし、さらに、基地問題の解決ではなく振興開 発こそが最重要な沖縄における争点と限定することで、沖縄の基地問題を国政レベルにおいて 非争点化する仕組み」としている(島袋純『「沖縄振興体制」を問う―壊された自治とその再 生に向けて』(法律文化社、2014年)、187頁)。そして、沖縄の自治のためには、「沖縄振興体制」 の改革を求めている(島袋、前掲「沖縄振興体制のゆがみ」、256-7頁)。 29 『沖縄振興一括交付金の導入と沖縄振興体制の変容』(研究代表・島袋純・2013年~16年度科学 研究費助成研究 基盤研究(C)、課題番号263801175、2017年3月)、82頁。 30 沖縄自治構想会議(島袋純・佐藤学・星野英一共同代表)『沖縄エンパワーメント―沖縄振興 と自治の新たな構想―』(2018年6月)、6頁。 31 「自立型経済の構築」に向けて必要なポイントは「付加価値額」を向上させていくことだと考 えているが、その点については、島田、前掲「沖縄県内の労働環境の現状と課題」を参照。 32 地域経済の活性化の必要性については、飯田泰之編『これからの地域再生』(晶文社、2017年) を参照。 33 屋嘉、前掲書『沖縄自立の経済学』、18頁。 34 以下の議論は、大森彌『自治体行政学入門』(良書普及会、1987年)、197-99頁を参照。 35 広松氏の言葉は、「『水思想』――水路再生に取り組んで」『季刊自治体学研究』23、1984年冬 に掲載されているが、本稿では大森、前掲書、199頁より。 36 前城充「公務員の立方体ネットワーク構築の必要性」(2018年度自治体職員政策形成セミナー「オ リエンテーション」配布資料、2018年5月10日)より。 37 秋吉貴雄・伊藤修一郎・北山俊哉『公共政策学の基礎 [新版]』(有斐閣、2015年)、4頁。

(15)

38 新藤宗幸『概説 日本の公共政策』(東京大学出版会、2004年)、14頁。 39 計画策定とは異なるが、「子どもの貧困対策」の一環として、南風原町が「非行の連鎖を断ち切る」 ことを目的とした「子どもの居場所」、「子ども元気ROOM」の設置は、問題を正確に把握し、 政策につなげていった好例である。同取組については、前城充「365日の居場所づくり 子ども の孤立(貧困)対策」加藤彰彦・上間陽子、鎌田佐多子ほか編、前掲書『沖縄子どもの貧困白 書』、77-83頁を参照。 40 佐道明広「現在の中央・地方関係への一考察――沖縄における「自立論」を中心に」坂本一登・ 五百旗頭薫編『日本政治史の新地平』(吉田書店、2013年)、593-4頁を参照。当然ではあるが、 佐道は、同構想が失速した理由をそれだけには求めていない。同構想の推進役であった吉元政 矩が議会で副知事への再任を拒否されたことや、同時期に「全県フリーゾーン」が提起され、 既成制度に挑戦するものとみられ自民党税調や大蔵省が反対したことなども「失速」した理由 として挙げている。 41 秋吉貴雄『入門 公共政策学』(中公新書、2017年)28-33頁、伊藤修一郎『政策リサーチ入門』(東 京大学出版会、2011年)、4頁を参照。なお、沖縄県内において現在、南部広域市町村事務組 合・中部広域市町村事務組合の主催で行われている「自治体職員政策形成セミナー」は約半年 間、さまざま「問題」関する事柄を学んだあとに政策立案を行う研修である。ここで記した点 の一部は行われている。 42

Douglass C. North, Institutions, Institutional change, and Economic Performance (Cambridge University Press, 1990), p.3、ダグラス C. ノース(竹下公視訳)『制度・制度変化・ 経済成果』(晃洋書房、1994年)、3頁。 43 制度論などについての筆者の考え方は以下の論文を参照。島田尚徳「戦後沖縄の政治行政研究 とガバナンス論」山口いずみ・《人の移動と21世紀ブローバル社会》総括班編『「人の移動と21 世紀のグローバル社会」大学院生調査研究報告書』琉球大学人文社会科学研究科、2011年1月。 44 大森彌、前掲書『自治体行政学入門』、17頁。なお、本稿では「質」を太字にしているが、引 用元の文中では「質」には傍点が付されている。 45 沖縄における「子どもの貧困」の問題を多面的に分析したものとして、加藤彰彦・上間陽子、 鎌田佐多子ほか編、前掲書『沖縄子どもの貧困白書』。 46 「生活保障」という言葉は多義的ではあるが、ここでは、希望する大多数の方々が働くことが でき、何らかのやむを得ぬ事情で働けなくなった時には所得が保証され、あるいは再び働くこ とができるような支援を受けられるような仕組みであり、人々を「排除しない社会」という意 で用いている(宮本太郎『生活保障 排除しない社会へ』(岩波新書、2009年)を参照)。 47 「生活保障」の視点が重要であるという考え方については、沖縄自治研究会における2018年5 月19日の金井利之氏の講演(「「自治領土」における為政者と被治者の行動原理:自治における 勘違いと陶酔 ~『行政学講義』に書けなかった/書かなかった/書き忘れたこと~ 」)から 示唆を得た。 48 本稿においては、そもそも「総合計画」策定の是非については触れていないが、筆者としては「自 治体を戦略的に経営するために、自治体全体の方向性を定め、行政各部課の職員をはじめとし て、自治体関係者の分業と協業を整合的に調整することは重要」だと考えている。また、各職

(16)

員が自治体の戦略的方向性を見失わないための「経営戦略計画」は必要であり、2022年度以降 もそのような計画は策定すべきではないかと考えている(金井利之『実践自治体行政学 自治 基本条例・総合計画・行政改革・行政評価』(第一法規出版、2010年)、101-103頁を参照)。

49 なお、さしあたり労働政策の方向性については、島田、前掲「沖縄県内の労働環境の現状と課

参照

関連したドキュメント

1970 年には「米の生産調整政策(=減反政策) 」が始まった。

この小論の目的は,戦間期イギリスにおける経済政策形成に及ぼしたケイ

他方、今後も政策要因が物価の上昇を抑制する。2022 年 10 月期の輸入小麦の政府売渡価格 は、物価高対策の一環として、2022 年 4 月期から価格が据え置かれることとなった。また岸田

社会システムの変革 ……… P56 政策11 区市町村との連携強化 ……… P57 政策12 都庁の率先行動 ……… P57 政策13 世界諸都市等との連携強化 ……… P58

◆後継者の育成−国の対応遅れる邦楽・邦舞   

 そこで,今回はさらに,日本銀行の金融政策変更に合わせて期間を以下 のサブ・ピリオドに分けた分析を試みた。量的緩和政策解除 (2006年3月

EC における電気通信規制の法と政策(‑!‑...

瀬戸内海の水質保全のため︑特別立法により︑広域的かつ総鼠的規制を図ったことは︑政策として画期的なもので