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肺癌のターミナルケア : とくに呼吸困難への対応について 利用統計を見る

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平成9年9月1日

肺癌のターミナルケア―とくに呼吸困難への対応について―

前日本大学第一内科教授 ピースハウス病院顧問 岡安大仁  1.肺癌の死因  一 剖検例から 一  肺癌のターミナルケアを述べるにあたって、肺癌の死因を、国立がんセンターの剖 検例(1962,7∼1979,12,764例)についての報告をみると、呼吸不全71.6%、腫瘍死・ 悪液質5.2%、出血死5.1%、心不全4.6%、肝不全2.6%、脳浮腫(転移性脳腫瘍)2.6% などであり、呼吸不全の約半数は肺炎で、その他うっ血水腫、広汎な肺転移、胸膜転移、 間質性肺炎、出血などの順である。換言すれば、肺癌のターミナルケアにあたっては、 呼吸困難が最も主要な症状として重視されると共に、その病態の多様性が知られる。最 近は教育病院における剖検率が著しく減少しているが、それは画像診断や生検診断の進 歩によると思われるがターミナルケアの医学的究明の面からもこれは必ずしも全面的に 肯定し得るものではないと思われる。希少疾患例の剖検でなくとも剖検例については、 単に生前の診断治療にとどまらず、ケアないしマネージメントについての貴重な資料 として尊重する態度が望まれる。  【症例1】は、日大第1内科の最近の肺癌剖検例である。 【症例1】       50歳    男性 病名 肺癌    (扁平上皮癌) ○平成6年9月初旬から咳、疾、労作性息切れ出現。近医で肺炎として加療。平成7  年4月10日、日大呼吸器科受診。胸部X−Pで左下葉無気肺・胸水。気管支鏡で左  気管支上・下分岐部腫瘤。扁平上皮癌と診断され、5月10日入院。CDDPによる  胸膜癒着術およびCVM療法を行う。8月3日退院。 ○平成8年1月26日:呼吸困難増強し再入院し放射線療法。肩痛強く、アンペック  坐薬、MSコンチン開始。3月29日退院。 ○平成8年6月19日:左肩痛、呼吸困難i増強し再入院。MSコンチン60mg→240mg。  左第4趾化膿創(皮膚転移)。3度房室ブロック。塩モヒ持続皮下注開始。IVH挿  入、不穏状態で自己抜去あり再挿入。右上肺野浸潤影出現(9月7日)。 ○平成8年9月10日:突然の呼吸停止で死亡。 [剖検所見] 1、低分化扁平上皮癌(左肺)   著明な転移を伴う。  ①左主気管支完全閉塞、腫瘤(7×5×7cm) ②転移巣  肝、脾、右副腎、回腸、後腹膜部、心臓および心包、傍気管・肺門・傍大動脈各  リンパ節、左第4趾、皮膚。

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山梨肺癌研究会会誌 10巻2号 1997 2、右気管支肺炎 3、脳には転移無し。  本症例は左肺の扁平上皮肺癌で、高度の無気肺を呈し、多臓器の広範な転移、右肺の 肺炎を合併して死亡している。経過において房室ブロックの併発や、精神混乱状態が指 摘されている。除痛処置として、アンペック坐薬、MSコンチンの使用など、少なくと も10年前とは異なった薬剤が使用されている点が注目される。剖検上では、心臓転移 が房室ブロックの原因となっていたこと、また脳転移がなかったことと精神混乱とがケ アカンファランス上貴重といえよう。直接の死因は、右肺炎併発と心臓転移による伝導 障害の双方に求められるであろう。 Il.肺癌末期患者の症状  肺癌末期患者では、前述したような病態が注目されるが、その他骨転移による高Ca 血症による眠気、悪心、口渇、多尿などもしばしば併発する。 1)身体的症状への対応の基本は①的確な判断、②説明の必要、③早期対応、④患者   の状態と療養環境を考慮した治療法の選択などにあろう。 2)肺癌末期患者の呼吸器症状  ①咳、疾、血疾、喀血  ②呼吸困難  ③胸痛  ④喘鳴  ⑤死前喘鳴  などがあげられる。 3)呼吸困難  ①頻度:肺癌の65%あるいはそれ以上  ②原因:i)腫瘍あるいはリンパ節腫大または喀血による気道の狭窄ないし閉塞      ii)腫瘍の増大、胸水貯留、閉塞性肺炎、肺炎、心不全による肺水腫など        による呼吸面積の減少      iii)間質性肺炎(薬剤性)、放射性肺臓炎などによる肺コンプライアンス        の低下およびガス交換障害      iv)呼吸筋力の減弱      v)発熱、貧血などによる換気数の増加      vi)不安・恐怖による換気量増加  ③症状とその把握:      i)自覚症 突発性、進行性、慢性の別、程度(VAスケール、ボーグスケー       ル《20あるいは10段階評価》フェイススケールなどがよい。 (ヒュージョー       ン分類は不適)     ii)他覚症 呼吸数、換気量、努力呼吸、聴診所見(副雑音)、チアノーゼ     iii)検査所見 胸部x−P、血液ガス値、パルスオキシメーターなど

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平成9年9月1日 川.呼吸困難への対策 1)突発性の場合 ①気道閉塞(疾や食物や気管内出血)が考えられる場合、苦悶が比較的軽度ならば   直ちに吸引(できれば気道の観察)をする。苦悶が強ければジアゼバム(5∼   10mg)静注によって意識を消失させたうえで気道の観察、異物(疾)の吸引・   除去する。 ②気胸では胸部X−Pを参考にし、脱気、酸素吸入を行う。 ③急性循環不全(心筋梗塞・心タンポナーデ)では、ECGを参考に酸素吸入、ニト   ロール、モルヒネを使用する。 2)進行性の場合 ①進行性気道閉塞では副腎皮質ステロイドホルモン対症的放射線治療。症例によっ  ては一時的に挿管、気管切開、経気管支鏡的処置、咳漱を伴えば燐酸コデイン、  あまり有効でないこともあるが酸素吸入を試みる。 ②肺内病変、胸膜病変の増大では、まず酸素吸入、副腎皮質ステロイドホルモン、  その上でモルヒネ(疾痛時の半量程度)を使用する。 ③胸水貯留、腹水貯留では、胸腔穿刺、薬剤として、利尿剤、副腎皮質ステロイド   ホルモンなどを適宜使用する。 3)基本的対応 ①体位の工夫 ②呼吸の仕方(腹式呼吸、呼気重視) ③不安、恐怖の除去 4)酸素吸入とモルヒネの使用 ①酸素吸入は肺癌の末期ではあまり有効でないことが多い。 (イギリスのホスピス  ではほとんど使用していない。) ②原則的にはモルヒネの使用が最も重視される。 ③最近では吸入モルヒネが効果が速く、全身的副作用が少なく、患者の意向で適時   中止できるなどの利点があり、試みられている。 5)精神的サポートの必要性  呼吸困難は不安、恐怖、孤独感などの精神的因子との関連が強いので、これらに   対応し、音楽療法、芸術療法その他、日常的療養生活のQOLに注意する。 剖検症例の提示にご協力いただいた日本大学第一内科学教室 堀江孝至教授、 古屋佳昭助手に感謝する

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参照

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