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多発した肺胞上皮型腺癌の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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多発した肺胞上皮型腺癌の一例 小山敏雄 千葉成宏  山梨県立中央病院病理科、同外科* 1、はじめに   細気管支一肺胞上皮癌は一般に肺胞上皮型と杯細胞型の2種類に分類される。前者   は時に細胞異型が弱く、異型性腺腫性過形成(AAH)などの類縁疾患との鑑別が問  題となることがある。我々は右肺の上・中・下葉に3ヵ所に認められた細胞異型の比  較的軽度な肺胞上皮型の細気管支一肺胞上皮癌を経験したので報告する。

2、症例

  71歳、女性

  家族歴:特記すべきことなし。

 既往歴:昭和58年子宮筋腫にて手術。

 喫煙歴:なし。

 現病歴:平成4年1月検診にて胸部X線上異常陰影を指摘される。同年1月27日身

     延山病院にて気管支鏡による生検にて腺癌と診断される。2月12日手術目      的で山梨県立中央病院に入院する。  入院後経過:2月24日右下葉切除および右上葉、中葉部分切除を施行する。 3、術前術中所見   術前の胸部X線、CT等で右下葉に径2cm大の腫瘍が認められた(Fig.1)。上葉の   陰影にも気づかれていた(Fig.2)が肺結核を疑っていた。術時、下葉S6のmain

  tumor以外に上葉S2に2×1.5cm大の硬結があり、さらに中葉S4にも胸膜面に

  小結節があったので後2者をwedge resectionしていずれも術中迅速診断に提出した   ところfibrosisと診断された。 4、病理学的所見

  提出された右下葉切除標本のS6には2.5×2.5×2cm大の胸膜陥入像を伴う腫

  瘍が認められた(Fig.3)。気管支はB−6aの3回分岐後の1枝が腫瘍内にはいりこ   んでいた(Fig.4)。組織学的には胸膜陥入部を中心として弾性線維を主体とする線   維化巣がみられ(Fig.5,6)、そこより放射状に腫瘍細胞が肺胞壁、細気管支壁に沿   って進展していた(Fig.−7)。腫瘍の進展を伴った肺胞壁、細気管支壁にはところに   よりリンパ球を主体とした小円形細胞浸潤巣がみられた。腫瘍細胞は主として立方形   であり、一見細胞は異型に乏しくみえるが、強拡大をしてみると核異型はかなりみら   れる(Fig.8)。免疫組織化学的に低分子量ケラチンを認識するモノクローナル抗体   CAM5.2で染色したところ、腫瘍細胞の胞体にびまん性に強く染まった(Fig.9)   。CAM5.2では正常の1型、 ll型肺胞上皮には染まらないが、活性化されたll型   肺胞上皮には染色された。ただし、活性化ll型肺胞上皮よりも腫瘍細胞の方が明らか   に強く染色された。細気管支上皮にもCAM5.2は陽性であるが、内腔面に染まり   が強い傾向にある。癌細胞は胸膜弾性板には及んでおらず(PO)、癌の脈管侵襲も   認められなかった。また、別提出のリンパ節にも腫瘍の転移を全く認めなかった。        −85一

(2)

 上葉S2の腫瘤は1.8×1.2cm大であり、胸膜陥入像は伴っていないが、胸膜 直下には下葉のものと同様に広汎な弾性線維を主体とする線維化巣を認め、その線維 化巣の辺縁から癌細胞が肺胞壁に沿って進展するのが認められた(Fig.10,11)。 癌は断端付近まで及んでいるが一応腫瘍は採りきれていた。  中葉S4の小結節は組織学的に不規則な線維化巣と肺胞壁に沿って進展する類似の 癌がみられたが、やはり断端にまでは癌は及んでいなかった(Fig.12)。 5、考案    本症例で最も問題となるのはこの3つの病変が独立に発生したのか、それとも上・   中葉の病変が下葉から転移したのかということである。3病変ともに組織像が類似し   ていることから一元的な発生を考えることも不可能ではないが、本例のように葉を越   えて転移した可能性を考える場合にはリンパ行性に肺門まで癌がいってそこから末梢   までいくか、血行性に転移するかのいずれかと思われる。しかし、リンパ管浸潤や静   脈侵襲が下葉の腫瘍を全割しても認められず、かつリンパ節転移が肺門部を含めて全   くみられないことから、転移の可能性を示す根拠は今のところない。しかもElastica−   Van−Gieson染色を具さにみても間質浸潤の根拠も全くみられない。 H E染色で一見   間質浸潤のようにみえるところもElastica−Van−Gieson染色ではっぶれた弾性線維   の中に癌細胞が埋められているのみで基本的にはっぶれた肺胞腔内にあると考えられ

  る。以上のような論点から肺胞上皮型腺癌の3重複癌と考えた。MEDLINEの最

  近7年間の検索では、肺胞上皮型腺癌の多発例としては報告がなく、国内文献も含め   てさらに文献検索の必要はあるが、そう多いものではないと考えられる。    次に3病変にみられた弾性線維を主体とした線維化巣の問題であるが、本症例の腺   維化巣は通常の腺癌にみられるdesmoplasiaとは異なり、ほとんど弾性線維からなり   膠原線維には非常に乏しい。これは既存の弾性線維の残存と考えられるがそれだけで   は説明がっかず、反応性の弾性線維増生も胞隔内にあったと考えられる。術中迅速診   断ではこの線維化巣にとらわれすぎてその周囲に肺胞壁に沿って進展していた癌を見   落としてしまったが、反省点であるとともにこのような線維化巣をみた場合には肺胞   上皮型腺癌を念頭において迅速凍結標本をみるということが重要であろう。    第3にWengらの言うAAH1)や児玉、下里らの言う腺腫2)との鑑別が問題となるが・   本症例においては核のhyperchromat ismやクロマチンの不均等分布がAAHよりも目   立っこと、特有の肺胞壁のつぶれに伴う弾性線維による線維化巣を有していること、   病変の範囲が明瞭であること、下葉の病変では胸膜陥入像をみることなどが鑑別点と   考えられる。    本症例については今後断端の再発および左肺も含めた他の部位に新たな腫瘍の発生   がないかどうかに注意してfollow upする必要があると考えられる。 参考文献 1.Weng SY,Tsuchiya E, Satoh Y,Kitagawa T, Nakagawa, K and S㎎ano H.:Multiple   atypical adenomatous hyperplasia of type‖pne㎝ocytes and bronchiolo−   alveolar carcinoma. Histopathology 16:101−103, 1989 2.Kodama T, Biyajima S, Watanabe S and Shimosato Y, :Morphometric study of   adenocarcinomas and hyperplastic epithelial lesions in the peripheral lu㎎.   Am J. CIin. Patho l.85:146−151,1986

(3)

Fig・ユ  An arrow shows 七he tumor       i・1。w・r l。be。f・iqht lung. Fig.]  A slice of the tumor       wi七h p!euraユ indentation       in lower lobe of iight lung. 陥綿漁 Fig.2  An arrow shows the shadow       in upper lobe of right lung. 2、bXぴMlla丈 rNR Fig.4  The schema七ics o三 the tumor       in lower lobe of riqh七 lung・ 一87一

(4)

Fig.5 L。w p。wer view。f center。f the tum°「       sh。ws merked fibr。sis(HE xlO)・ Fig.6  The sarne picture as Fig.5       (Elastica−Van−Gieson stain) Fig.7 Tumor spreads radially       fibrosis  (HE x40). from cen亡raユ Fig.8 High power view of the tumor       indicates cuboidaユ tumor cells

(5)

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眠・’i..P’t i .㌦. lt Fig.9工mmunohistochemical staining using    CAM5.2 shows the positivity of    tumor cells (x工00) Fig.ユO  Half of the tumor in upper lobe of right lung.    Marked eユastofibピosis is seen as is in lower lobe.    (E⊥astica−Van−Gieson stain xlO} Fig.1工 Carcinoma cells are seen along the alveolar walls in the upper 工obe 〔HE x4e). Fig. ユ2  1」ow power view of ヒhe tumor    in middle lobe of riqht lung     (Elastica−Van−Gieson stain xlO) 一89一

参照

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