胸腔鏡下生検で確診したN2肺癌の一例
山梨医科大学 第二外科 喜納五月 高橋渉 福田尚司 吉井新平 鈴木章司 橋本良一 武藤俊治 多田祐輔 同 第二内科 池田フミ 西川圭一 小沢克良 はじめに 末梢型肺腫瘤の気管支鏡下生検を行 なう際には、生検鉗子が達しにくいと いう物理的要因の他に、透視下で生検 を行なうため、その解像度に限界があ り、腫瘤の局在の確認が困難な例も多 い。 図1に当院で一般に施行されている 諸検査の流れを示す。腫瘤と胸膜との 位置関係により、検査を定義づけたが、 気管支鏡下生検で確定診断が得られな い症例は、状況に応じて種々の検査を 行なっている。 今回著者らは、頻回の気管支鏡下生 検で確定診断が得られず、胸腔鏡下生 検で確診した末梢型肺腺癌N,症例を提 示し、あわせて当科で経験したN,症例 の検討から、特に末梢型肺癌の問題点 と対応などについて考察する。 症例 51歳 男性 主訴:精査加療目的 現病歴:平成4年7月、人間ドックに て胸部X線上、右中肺野に異常影を 指摘される。同年9月他院で経気管支鏡的肺生検(TBLB)を施行し
たが、確診はっかなかった。平成5 年4月、約7か月の観察期間をおいて再度TBLBを施行したが、同様
に確診はつかず、他の画像診断から は、悪性疾患が強く疑われるため、 同年6月当院第2内科へ紹介され、入院となった。当院でのTBLBで
も確診が得られず診断と治療をかねて、平成5年8月2日当科入院とな
る。 既往歴:2歳頃肺炎、21歳虫垂炎、 喫煙指数1000(50本/day,20年間: 20∼40歳まで) 家族歴:特記すべきことなし。 現症:身長166cm,体重69㎏,体表リ ンパ節触知せず。 血液生化学検査所見:異常なし。胸部X線(図2):平成4年7月、右
S6の異常影を認める。CT所見:平成4年7月のCT像には
胸膜の陥入を伴った境界不明瞭な腫 瘤を認める(図3)。平成5年4月、 腫瘤はやや増大し、CT上胸膜の陥 入像は同様に認めるが、境界はやや 明瞭になっている(図4)。 胸腔鏡下生検(図5):全麻下に図中 ④の後側方切開に沿いThoraco port 挿入、Endo−−GIAにてS6部分切除術 施行。D術中迅速病理で中分化型腺 癌の診断を得たため、開胸し右下葉 切除、R2bリンパ節郭清を行った。 手術所見:T,,N。,Pi,PM。,D。,E。 病理組織学的診断(図6):腫瘍周囲 をリンパ節がとり囲むように存在し ていた。このため、CT上境界が明 瞭となっていたと思われた。#2リ ンパ節は、直径5㎜程度と腫大はな いが、辺縁の一部に腫瘍細胞を認め た。 以上により、p−T、N,M。, Stage III Aと診断され、相対的治癒切除とな り、2}当院第二内科にて、術後化学療 法が施行された。 一39一考察 本症例は1群リンパ節転移を認めな い、いわゆる“skip metastasis”であ る。当科で手術を施行したpN,(+)症例 32例を原発巣毎に分類する(表1)。開院 以降の症例であり、skip metastasisが 18例と過半数を示している。表2は、術 前病期診断とN因子の関係である。我 々はこれまでCT上10㎜以上のリンパ 節腫大を陽性としてきたが、3}cN,(+) でpN2(+)であったtrue positiveの 割合は、pNi(+),pN2(+)14例のうち 5例、pN、(一),pN2(+)18例のうち6 例、といずれも低い。これは、診断技 術や能力によるものではなく、リンパ 節腫大に対する診断基準の問題であり、 上縦隔と肺門リンパ節を同じ尺度では かっていく限り、今後もN因子の正診 率の向上は望めないため、形状や組織 型を含めた新たな診断基準を設ける必 要がある。表3に組織型別にN因子を 検討したが、扁平上皮癌では、ほとん どがN。またはN1(+)でN2(+)症例 数が少なかったため、true positive の割合が低下している。しかし、当院 の扁平上皮癌のcN。,cNi(+)症例の true positiveの割合は70%で総じて 扁平上皮癌は術前病期診断と一致して いたといえる。一方腺癌では、1群、 2群、と系統的にリンパ節転移をする 場合、腫大も著しくなり、true posi− tiveの割合は高くなっていた。 pN、(一) のskip metastasisでは、微小転移の ことが多く、true positiveの割合が低 下していた。本症例のように末梢型に 限らず、腺癌は病期の進行と腫瘍の増 大は一致せず、早期からリンパ節移を きたしうると考えられ、またその転移 は、CTでは判定できない病変である ことが多いといえる.4)5} 今回の当院の検討では、左右とも上 葉原発の肺癌ほど縦隔リンパ節転移、 特に1群リンパ節転移のないskip metastasisを起こしやすい傾向にあっ た。 一方、T因子についてはpN2(+) 症例を検討したためさまざまだが、本 症例も含めて、直径2cm以下の末梢小 型肺癌でも特に腺癌においては進行例 を認めるため、腫瘍径による経過観察 はさけ、できるだけ早期に確定診断を つけるべきであると考えられた。 文献 1) Karl,A.Z.,e t・t乏a 1.:Surgical Lapa− roscopy Update. 2)日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約 第3班 金原出版,東京,1987. 3)山田耕三ほか:CTによる縦隔リ ンパ節の読影.肺癌,33(1):37∼42, 1993. 4)石松豊洋ほか:pN、非小細胞癌切除 の検討.肺癌,33(4):471∼480,1993. 5)pN2肺癌切除例におけるリンパ節転 移と術後成績.日本胸部外科学会雑 誌,40:8.1177∼1181,1992. 図1 肺野末梢型病変へのアプローチ 晶嘉)生検 経皮肺生検 CT下生検 一40一
臨 図2 図4 図3 図5 胸腔鏡下生検
:}φ11−一一
③ φ55mm Th。rac。 P。,t ⑧P。・ter。1・teral inCiSI。。11n。 ⑧・AXIII・・y in・isi。n l、ne 図6 病理組織学的診断 肉眼所見 腫瘍 ! 15mm三ト
一41一 組織学的診断 Moderately dlfferentiated papil[arV adenocarclnoma rtL B6b, p2 PTIN2Mo n1(一) n2 (十) # 1 (一) # 2(+)2/2 #3(一) #3a(一) #4(一) #7(一) #8(一) #9(一)表1 pN2(+)肺癌における原発巣と1群 リンパ節転移の関係 32症例 pN1 (一) (+) RU 10 7 3 RM 1 1 0 RL 7 2 5 LU 14 8 6 LL O 0 0 計 18 14 表3 pN 2(+)肺癌における組織型別 N因子正診率:%(割合) pN 1(十),pN2(十) pN1(一),pN2(十) Sq 33.3(2/6) 37.5(3/8) Ad 60(3/5) 28.5(2/7) 他 0(0/3) 33.3(1/3) Sq:Squamous cell Ca. Ad:Adeno Ca. 表2 術前病期診断とN因子 pN 1(十),pN 2(十) @ (14例) pN 1(一),pN 2(十) iskip metastasis) @ (18例) cNo,cN 1 i21例) 9