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16. 在宅移行後にQOLが向上した一症例―医療を暮らしにあわせる―(第18回群馬緩和医療研究会)

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Academic year: 2021

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症状コントロールが出来たころより, 自 の闘病生活や ホスピスのことを伝えたいと希望し, ホスピス関係の機 関誌に闘病記を掲載. 家族との温泉旅行の目標を達成後 スピリチュアルペインの表出があった. これまでの S氏 の生き方や会話時の表情の変化から「生きる希望」に繫 がるのではないかと え, レシピ集を作成. 最初は看護 師がリードしていたレシピ集作成であったが, 患者が リードしていくレシピ集作成へと変化して行った. そし て,S氏自身の力でレシピ集は完成した.レシピ集を手に した S氏は「子供達に残すものができた. これで私が死 んだ後も生き続けることができる」と話し, S氏が亡く なった後, 夫は「妻は生き抜くことが出きた」と語った. 【 察】 S氏にとって料理は好きなことの一つであ り, 20年間会社勤めをしながら家族のために料理を作っ てきたことは誇りに思うことであった. そのような背景 からレシピ集作成は S氏のライフレビューをするきっ かけとなり, スピリチュアリティを覚醒させ, 一人の人 間としての存在価値を取り戻したのではないかと え る. 【おわりに】 この事例から, 患者に寄り添い, 患者 と向き合い, 傾聴し, その人らしさを引き出していくケ アのプロセスが重要であること. そして, 最後まで見守 り支え続けることの大切さ, 患者のスピリチュアルケア は家族のケアにも繫がることを学んだ. 15.自宅と病院が遠距離であっても,終末期の在宅療養 を可能にした連携 ―訪問看護の立場からの検討― 亘 智絵,鳥海 尚美,大沢 広美 荒井 千夏 (訪問看護ステーションたてばやし) 在宅への移行の際, 往診医への引継ぎまたは紹介がな い状態で退院というケースは珍しくない. 患者家族は 「信頼関係ができている病院主治医から離れたくない, 見捨てられる」という思いが強く, また症状悪化時の処 置, 例えば穿刺排液など開業医では物理的に難しい場合 もあるためである. しかし病院主治医は通常往診しない ため, 症状悪化や緊急時の対応への不安が大きい. 病院 と訪問看護 ST との連携により, 入退院を繰り返しなが ら, 病院と自宅が遠距離であるにもかかわらずサポート 感を持ち終末期を過ごす事ができた事例を経験したので 報告する. 【事 例】 A 氏 60歳代女性,子宮体癌,肺転 移, 右胸水貯留. 病院で胸水穿刺などの治療後, 2週間毎 の受診で胸水の確認や穿刺で症状コントロールしながら 在宅に移行. 病院は自宅から車で 1時間以上の距離があ り, 状態観察のため, 訪問看護開始となった. A 氏は「福 祉の世話になるなんて」と,初めは拒否的であった. 【連 携の実際および 察】 退院前に訪問看護 ST と病院側 スタッフが顔をあわせて, 問題点・疑問点を明確にし検 討したことで, 症状アセスメント, マネジメントができ, 受診のタイミングを判断することができた. すでに信頼 関係が築けていた病院側が, 訪問看護師を信頼すべき存 在と言ってくれたことで, 当初困難と思われた受け入れ がスムーズになり, モルヒネに対する抵抗感も徐々に払 拭された. また訪問看護師が A 氏の家に何回も足を運 び, 傾聴し, 症状悪化時にも丁寧に対応したことで信頼 関係が築けた. 感冒や胃腸炎時の対応では, 地域の診療 所医師と連携し, 患者家族も「何かあったらすぐ来ても らえる」という安心感をもつことができた. 入院中およ び在宅での様子は PCT 看護師・訪問看護師の間で情報 換し, ケアの方向性などについて電話やメールで話し 合うことができた. 退院時のみではなく退院後の症状 コントロールも視野に入れて, 訪問看護師が病態を理解 し症状に対応する 用薬の準備や対処法を確認しておい たこと, 退院後も病院と訪問看護 ST との連携を取りな がら, アセスメントと評価を繰り返しケアを継続したこ とで, 病院と自宅が遠距離であっても終末期における在 宅生活の継続が可能となったと思われる. 最後は病院で 亡くなったが, 在宅では安心して過ごし, 家族旅行を楽 しむなど, QOL の高い生活を送ることができた. 16.在宅移行後に QOLが向上した一症例 ―医療を暮 らしにあわせる― 見 忍,津久井利恵,福田 元子 萬田 緑平,小笠原一夫 (緩和ケア診療所・いっぽ) 【はじめに】 私は, 癌の患者さんが自宅に帰る=短い予 後イメージをし て い た. し か し A さ ん は, CV以 外 の ルートを結果として外す事が出来, 私達の予想を遙かに 上回る長い期間において, 症状のコントロールを可能と した. 病院訪問時の A さんは, ベットに横たわり, O2, CV, 塩モヒの持続注入, イレウスチューブを 用中で あった. 家に帰りたいです 帰りたい.」涙を溜ながら訴 えた A さんの目は真っすぐで, そこに強い意志を感じ た.そして「家に帰るお手伝いをさせてください」と握手 をした. そこから始まった A さんの暮らしを中心とした ケアを紹介する. 【患者紹介】 40代 女性 娘と息子 夫 婦 孫 と 同 居. 2008年 1月 膵 頭 部 癌 と 診 断 2月 胃空腸バイパス術施行, 術後腸閉塞症状あり CV管理. 癌性疼痛に対して放射線療法, 温熱療法施行 5月 腹 痛,嘔吐増強,癌性腹膜炎・腸閉塞に対してイレウス管挿 入,疼痛コントロール開始.在宅の希望あり,5月 17日退 院. 緩和ケア診療所いっぽでの在宅ケア開始. 【問題点 と経過】 ①嘔気・嘔吐に伴う苦痛 チューブの違和感, 拘束感による苦痛あり. 入院時, 排液は 2000ml前後で あったが, 退院直後 700ml前後に減少した時点で, 5/21 185

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抜去. 結果として 1回/週程度のドレナージにて症状コ ントロール可能となった. これがなければ外出しても 人の目が気にならない」②腹痛に伴う苦痛 塩モヒの持 続注入からデュロテップパッチ 2, 5 mg に変 , 8/21現 在 17,5mg まで増量.自ら運転し,買い物などの外出が可 能な状態. ③親としての苦悩 (引き篭りの娘に対して) A さんが病気になる以前は, 母親とさえコミュニケー ションが難しい状態であった. 自宅療養を通し, 衝突し ながらも, 徐々にお互いを受容できるようになり, 娘の こころの成長も見られている. 【まとめ】 退院して 3 か月経ち, 体重は 5kg 減少したが, K さんの真っ直ぐな 目は泣いたり, 笑ったりして益々輝いている. それは, 暮 らしの中で, 母と子が関係を深める事ができた表れと える. その中で, 暮らし, こころを視点に置いた医療を展 開し, 察したのでここに報告する. 17.疼痛緩和チームが関わった呼吸器症状に対するチー ムアプローチ 奥澤 直美,小林 剛,眞中 章弘 (独立行政法人国立病院機構西群馬病院) 【はじめに】 疼痛緩和チームが関わった呼吸困難患者の 対 応 に つ い て 報 告 す る. 【症 例】 症 例 1:肺 が ん がん性胸膜炎 肋骨転移の患者 治療の効果がなく病状 は進行, 呼吸困難が出現. それに伴い, 病状や他に治療法 があるかなど今後の不安が強かった. 主治医へ病状と今 後起こりうる状況の説明や抗不安薬投与を伝え, 傾聴と 呼吸指導をし, 不安の軽減に努め, 呼吸困難の訴えが少 なくなった. 症例2:肺がん 胸膜浸潤 胸椎転移の 患者 胸膜浸潤の悪化で疼痛が増強し, 痛みで息がで きなく苦しい. でも薬を増やすと眠気が心配.」と訴えが あった. 眠気の苦痛を え, 鎮痛補助薬を追加. 疼痛が軽 減し「吸う時痛くない.」という言葉があった. 症例3: 肺がん がん性胸膜炎の患者 胸痛と呼吸困難があり, オキシコドンの内服と酸素を 用. 会話時に眠ってしま うほどの眠気が出現. オキシコドンの眠気も疑い, 減量 すると「眠気はよくなったけど, 痛いのと苦しいのは何 とかなるか.」と訴えがあり, フェンタニルの持続皮下注 射に変 .その後「せいは切れるけど苦しくない.痛みも いい.」という言葉があった. 【 察】 症例 1は呼吸機 能の低下もあったが, 今後の不安から呼吸困難が増強し, さらに不安が増強. まず不安の軽減で呼吸困難の緩和を 図った. 2は疼痛増強による呼吸困難があった. 鎮痛補助 薬を追加し, 疼痛コントロールを図り, 呼吸困難も軽減. 原因の除去で呼吸困難の緩和を図った. 3は眠気により 呼吸困難の訴えが少なかったが, 日常生活に支障があっ た. オピオイドローテーションを行い適切な薬剤の 用 で, 呼吸困難の緩和を図った. 【結 果】 呼吸困難の対 応は, 不安の軽減, 原因の除去, 適切な説明や薬剤の 用 が重要である. 【おわりに】 呼吸困難の原因は様々な ため, 合的にアセスメントし, 個々にあったケアを見 出す必要があると える. 18.慢性呼吸器疾患末期の呼吸困難に,モルヒネを 用 してみて えた事 笹本 肇,内田 信之,荻原 博 森田 廣樹 (原町赤十字病院 外科) 命を脅かす疾患は, がんに限らない. がん対策基本法 により, 緩和医療はようやく医療制度上広く認知される 事となったが, がん以外の疾患に関しては体系化されて おらず, それぞれの領域で試行錯誤がなされている状況 である. 近年, 慢性呼吸器疾患の末期の呼吸困難に対しても, モルヒネは有効とされているが, 実際にはあまり 用さ れていない. 私自身は消化器外科医なので, もともと関 わる事さえほとんどなく, 経験の集積は困難である. 今 回経験した 2症例を通して, 問題点を検討したい. 【症 例1】 60代男性. 間質性肺炎. 2カ月前に呼吸困難増悪 のため入院したが, 末期と判断され当院内科に転院. 酸 素投与, ベネトリン吸入を行っていた. 咳, 呼吸困難が強 度で, 以前 CO2ナルコーシスを起こしたため睡眠薬は 制限され, 不眠が続いていた. 人工呼吸器装着の希望は なく, 緩和ケア依頼となった. 喋る事も内服も困難なた め, モルヒネ 6 mg/日のペースで持続皮下注を開始した. 開始後 4時間の間に早送りを 4回行い, 少しウトウトし て, 話しかければ喋れる状態となった. モルヒネ 9 mg/日 のペースに増量し, その後 3時間眠った後, 大 夫, 深 く眠れた」と話された.しかし翌朝は目覚めず,モルヒネ 開始後 1日半で亡くなられた. 【症例2】 70代女性. 肺気腫,認知症.半年前 HOT 導入したが,せん妄,不穏行 動が強くなり, 1カ月前に精神科の病院に入院していた. 急に呼吸困難となり, 当科に転院. 右緊張性気胸で持続 的胸腔ドレナージ開始. 手術は人工呼吸器から離脱でき ない可能性が高いとの判断で, 保存的治療のみ行ってい た. その後肺炎, DIC を発症し, 低酸素血症となるが, 酸 素マスクは苦しがって外してしまった. 家族は積極的な 治療を希望しなかった. 酸素投与法を工夫し, モルヒネ 3 mg/日のペースで持続皮下注を開始すると, あ, り, が, と,」と話された. モルヒネ開始後半日で亡くなられた. 186 第 18回群馬緩和医療研究会

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